説明

可食性リンタンパク質フィルム

本発明は、カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分的に架橋することにより得られたリンタンパク質調製物、1つまたは複数の生理学的に許容可能な陽イオンの供給源、および可塑剤を含むフィルムを提供する。フィルムは、好ましくは可食性であり、そして実質的に可溶性である。特に好ましい実施形態では、1つまたは複数の生理学的に許容可能な陽イオンの供給源は天然乳リン酸カルシウムを含み、そして可塑剤はグリセロールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、フィルム、特に可食性フィルムに関する。特に本発明は、リンタンパク質調製物を含む可食性フィルム組成物に、そしてその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口中浄化および口中清涼化は、所望される口中清涼化の性質ならびに口中清涼化が実行されなければならない状況によって、時としては困難であるかまたは面倒である。種々の用具および組成物を用いたブラッシング、フロッシングおよびうがいのような方法は、家の中でひそかに実行するのに適している一般的口腔ケア動作である。
【0003】
しかしながらこのような用具および組成物は、バスルーム設備が利用可能でないかまたは非衛生的である場合のように家から離れて用いるにはあまり便利でない。これらの状況で用いるためにあまり目立たない口腔ケア製品、例えば口中清涼ガム、ロゼンジ、マウススプレーおよび可食性フィルムが開発されてきた。
【0004】
種々の可食性フィルムが当該技術分野で既知である。
例えば米国特許第4,562,020号には、プルランまたはエルシナンを含む水溶液から調製される自立性グルカンフィルムが記載されている。これらのフィルムは、可食性水溶性包装材料として使用可能であると述べられている。
【0005】
米国特許第4,623,394号には、プルランおよびヘテロマンナンを含む可食性フィルムが記載され、これは含水条件下で制御崩壊性を示すと述べられている。
【0006】
米国特許第4,851,394号には、多価アルコールおよびグルコマンナンならびに任意にその他の天然多糖の反応産物を基礎にした可食性フィルムが開示されている。これらのフィルムは、望ましい特性、例えば耐水性、耐熱性および強度を有すると述べられている。
【0007】
欧州特許公開第1,008,343 A1号には、経口薬剤送達のための、そして迅速溶解性を有し、薬剤、可食性ポリマーおよび糖を含むと述べられたフィルム調製物が開示されている。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0150544 A1号には、口腔中に用いるための治療薬および/または口中清涼剤を含有する可食性フィルムであって、水溶性ポリマー、多価アルコール、化粧品的および/または製薬的活性剤、例えば口中清涼剤、ならびに風味剤の混合物を含むフィルムが開示されている。
【0009】
米国特許出願公開第2003/008008 A1号には、抗微生物作用を有する可食性フィルムであって、水溶性ポリマー、例えばプルラン、ならびにチモール、サリチル酸メチル、ユーカリプトールおよびメントールから選択される精油を含むフィルムが開示されている。
【0010】
米国特許出願公開第2003/0035841 A1号には、経口粘膜付着のための可食性フィルムであって、少なくとも3つのフィルム形成剤、即ちマルトデキストリン、ヒドロコロイドおよび充填剤を含むが、しかしプルランを含まないフィルムが記載されている。
【0011】
米国特許出願公開第2002/131990 A1号には、フィルム形成剤(例えばカラギーナン)、バルク充填剤および可塑剤を含む無プルラン可食性フィルムも開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来技術における迅速可溶性可食性フィルムの存在にもかかわらず、このようなフィルムにおける改良の余地が依然として存在する。例えば利用可能なプルランベースのフィルムは、消費者の口との接触時に、それらが溶解すると望ましくない「保持」感覚を付与し得るような高溶解度を有する。したがってこのようなフィルムの溶解時の口中感覚は、理想ほど爽快でないかもしれない。
【0013】
本発明の一目的は、上記の欠点の克服に向けて少なくとも何らかの点で役立つ可食性フィルムを提供すること、あるいは少なくとも、有用な選択を公に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって第一の態様において、本発明は、
(a)カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分的に架橋することにより得られたリンタンパク質調製物、
(b)1つまたは複数の生理学的に許容可能な陽イオンの供給源、および
(c)可塑剤
を含むフィルムを提供する。
【0015】
好ましい実施形態では、フィルムは可食性である。
好ましい実施形態では、フィルムは実質的に可溶性である。
好ましい実施形態では、陽イオンは二価である。
好ましい実施形態では、陽イオンの供給源は陽イオンの実質的に水不溶性の塩を含む。
好ましい実施形態では、陽イオンはカルシウムイオンを含む。
【0016】
特に好ましい実施形態では、陽イオンの供給源はリン酸カルシウムを含む。
ある種の好ましい実施形態では、いくつかのまたは全てのリン酸カルシウムはカルシウムヒドロキシアパタイトの形態である。
特に好ましい実施形態では、カルシウムの供給源は天然乳リン酸カルシウム、例えばアラミン(商標)の商品名出入手可能なものを含む。
【0017】
好ましい実施形態では、可塑剤は多価アルコール、好ましくはグリセロールを含む。
好ましい実施形態では、カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物は酸性カゼイン、レンネットカゼインまたはカゼイン塩の酵素的加水分解により得られた。
好ましい実施形態では、酵素はトリプシンであり、そして部分的加水分解は約7〜約8のpHで実行された。
【0018】
好ましい実施形態では、好ましくは約7〜約8のpHで、部分架橋はトランスグルタミナーゼを用いて酵素的に実行された。
好ましい実施形態では、可食性フィルムは1つまたは複数の乳化剤をさらに含む。一実施形態では、乳化剤はモノ−およびジグリセリドのクエン酸エステル、例えばラメギン609ZEの商品名出市販されているものを含む。
【0019】
さらなる実施形態では、可食性フィルムは、1つまたは複数の付加的作用物質、例えば風味剤または口中清涼剤、甘味剤、着色剤、pH制御剤および安定剤をさらに含む。
ある種の実施形態では、可食性フィルムは、口腔ケア剤、薬学的または獣医学的作用物質、ニュートラシューティカル剤、唾液刺激剤、ビタミン、無機質およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の作用物質をさらに含み得る。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、可食性フィルムの製造方法であって、
(a)カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分架橋することにより得られたリンタンパク質調製物(a)、1つまたは複数の生理学的に許容可能な陽イオンの供給源(b)、ならびに可塑剤(c)を含む混合物を加工処理してフィルムを生成し;そして
(b)任意にフィルムを乾燥して、含水量を所望レベルに低減する
工程を含む方法を提供する。
【0021】
好ましい実施形態では、混合物は水を含む。
ある種の好ましい実施形態では、加工処理は、混合物を表面に適用し、その後乾燥してフィルムを生成する工程を含む。
その他の好ましい実施形態では、加工処理は、混合物を押出成型してフィルムを生成することを含む。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、可食性フィルムを製造するために加工処理され得る混合物であって、(a)カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分的に架橋することにより得られたリンタンパク質調製物、(b)1つまたは複数の生理学的に許容可能な陽イオンの供給源、および(c)可塑剤を含む混合物を提供する。
【0023】
上記のように本発明は広範に存在するが、しかし本発明はそれらに限定されないし、以下の詳細な説明が提供する実施例の実施形態も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
望ましい感覚受容的および物理的特性を有する、そして口中で迅速に溶解する薄い可食性フィルムが、適切な陽イオンと組合せた場合、ある種のリンタンパク質から調製され得る、ということを意外にも本出願人等は見出した。したがって本発明は、新規のフィルム、好ましくは可食性フィルム、ならびにその製造および使用方法を提供する。
【0025】
本発明のフィルムは、多数の用途を有する。例えばそれらは、口中清涼剤またはその他の口腔ケア剤を送達するために用いられ得る。代替的にまたは付加的に、それらは、薬学的または獣医学的作用物質、ニュートラシューティカル剤、唾液刺激剤、ビタミン、無機質またはそれらの組合せのための担体として作用し得る。その他の実施形態では、本発明の可食性フィルムは、食品のための易溶解性および/または可食性コーティングとして用いられ得る。さらに別の実施形態では、フィルムは、皮膚に局所的に活性作用物質を適用するためのビヒクルとして用いられ得る。
【0026】
本発明のフィルムは、少なくともある種の好ましい実施形態では、依然として口中で迅速に溶解するが、しかし一般的に利用可能なある種のプルランベースのフィルムより低い溶解度を有する。これは同様に、少なくともある種の好ましい実施形態では、本発明の可食性フィルムは口中で「保持性」がなく、溶解時に相対的にすがすがしい口中感を提供するという利点を有する、ということを意味する。
【0027】
したがって本発明のフィルムは、好ましくは実質的に可溶性である。本明細書中で用いる場合、「実質的に可溶性の」という用語は、フィルムが消費者の口中で全体として容易に崩壊し、溶解する、ということを意味する。しかしながら、フィルムのいくつかの構成成分、特に塩構成成分は、非常に小さい粒子サイズを有するいくつかの非溶解性物質は残留し得るので、技術的意味で完全に溶解するわけではない、と理解される。このような小粒子は、一般に消費者には非検出可能である。
【0028】
上記のように本発明の可食性フィルムは、リンタンパク質調製物、1つまたは複数の生理学的許容可能な陽イオンの供給源および可塑剤を含む。
【0029】
本発明の可食性フィルムに用いるのに適したリンタンパク質調製物は、カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物、即ちいくつかの(しかし全てではない)ペプチド結合が加水分解されたカゼインまたはカゼイン塩を部分架橋することにより生成され得る。
【0030】
本明細書中で用いる場合、「架橋する」という用語は、カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分的に架橋するという状況で用いられる場合には、部分加水分解物を含むカゼイン分子および/またはカゼイン分子断片のアミノ酸残基間の分子間共有結合の形成を意味する。好ましくは分子間共有結合は、グルタミンおよびリシン残基間の結合、即ちグルタミル/リシル共有結合を含む。いくつかの分子内架橋(即ち同一カゼイン分子またはカゼイン断片上のアミノ酸残基間の)が起こる見込みがある、とも理解される。
【0031】
「部分的」という用語は、「部分的架橋」という状況で用いられる場合、アミノ酸残基の全てが架橋されるわけではないことを意味する、即ち、架橋反応後に、いくつかの非架橋アミノ酸残基が残存する。
【0032】
部分架橋の程度は、本明細書中では、タンパク質1g当たりの架橋のマイクロモル数に換算して表される。
【0033】
部分加水分解物を調製するために用いられるカゼインは、任意の形態であり得る。酸性カゼイン、レンネットカゼインまたはカゼイン塩が全て用いられ得る。化学的加水分解は全く排除されないが、しかし部分加水分解は水性溶液中で酵素的に実行される、というのが好ましい。
【0034】
部分加水分解を実施するための適切な酵素としては、プロテアーゼ、例えばトリプシンおよびキモトリプシンが挙げられる。しかしながら用いられる酵素は、ウシ由来またはブタ膵臓トリプシンのようなトリプシンである、というのが特に好ましい。
【0035】
部分加水分解は、用いられている酵素に適した温度およびpHで実行されるべきである。例えばウシ由来トリプシンが用いられる場合、部分加水分解は、約7〜約8のpHで、そして約37℃の温度で実行され得るのが便利である。このpHでは、カゼインは、反応溶液中に用いられる緩衝剤によって、カゼイン塩、例えばカゼインナトリウムとして存在する、とも理解される。
【0036】
反応は、カゼインを部分的に加水分解させる、即ちペプチド結合の全てではなくいくつかを加水分解させるのに十分な時間および適切な条件下、例えば酵素およびカゼイン濃度下で実行されるべきである。部分加水分解が達成された場合、反応は、酵素を不活性化することにより、例えば酵素を変性させる温度に、例えば約80℃に反応混合物を加熱することにより、終結されるか、または少なくとも実質的に終結され得るのが便利である。加水分解反応が完全に終結される、ということは重要でないが、但し、所望の程度の加水分解が一旦達成されると、部分架橋反応(下記のような)が開始される。即ち、部分架橋反応が実行されている間は、少量の加水分解は依然として継続し得る。
【0037】
カゼインの部分加水分解のレベルは約0.5%〜10%の範囲であり、即ち、カゼイン中のペプチド結合の0.5%〜10%が加水分解される、というのが一般に好ましい。部分加水分解のレベルは約2%〜約8%、例えば約3%〜約6%の範囲であるのがさらに好ましい。
【0038】
加水分解の程度は、当業者に既知の方法により確定され、TNBS(2,4,6トリニトロベンゼンスルホン酸)法によるのが好都合である。
【0039】
加水分解の程度は、カゼインまたはカゼイン塩の約15%またはそれ未満が部分加水分解によりpH7で不溶性にされる、というのも好ましい。
【0040】
純粋に例として、本発明のフィルムに用いるのに適した部分加水分解化カゼインは、先ず、50℃で、NaOHでpH7にした10%等電沈殿カゼイン溶液を可溶化することにより調製され得る。次に溶液は37℃に冷却され、ブタ膵臓トリプシン調製物が約0.01%w/wカゼインで付加され、15分間インキュベートされる。適切なブタ膵臓トリプシン調製物は、分子量23,400 Da、活性4500 USP単位/mgのNovo. 4500Kのような市販のものである。一旦部分加水分解が実行されたら、80℃に加熱し、そして5分間保持することにより、酵素不活性化が達成され得る。
【0041】
部分加水分解化カゼインが調製されたら、それは次に部分的に架橋されて、本発明のフィルムに用いるのに適したリンタンパク質調製物を生成する。
【0042】
部分架橋は、酵素的にまたは化学的に実行され得る。しかしながら、部分架橋は酵素的に実行されるのが好ましく、酵素リシルオキシダーゼまたはトランスグルタミナーゼのいずれかを用いるのが便利である。
【0043】
酵素トランスグルタミナーゼが用いられ、そして部分架橋反応は約7〜約8のpHで実行される、というのが特に好ましい。反応は、望ましい程度の架橋を起こさせるのに適切な条件下で、十分な時間、実行される。その結果生じるリンタンパク質調製物中の架橋の程度が約10μmol/タンパク質1gまたはそれ以上、さらに好ましくは約10〜約250μmol/タンパク質1g、さらに好ましくは約50〜160μmol/タンパク質1g、例えば約110〜150μmol/タンパク質1gの架橋を含むような条件下で実行される、というのが好ましい。
【0044】
部分架橋の程度は、グルタミル/リシル結合の量に換算して、適切な酵素、便利であるのはプロナーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、プロリダーゼおよびカルボキシペプチダーゼを用いて架橋化タンパク質のタンパク質分解的消化実行し、その後、タンパク質分解的消化物のHPLCならびにε−(γ−グルタミル)リシン(G−L)ピークの定量を実行することにより、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確定され得るのが便利である。
【0045】
さらにまた部分架橋反応が一旦実行されたら、反応は酵素の不活性化により、典型的には酵素を変性するのに十分な温度に、例えば約80℃に約5分間、反応混合物を加熱することにより反応を終結させるのが便利である。部分架橋および酵素の非活性化後、その結果生じたリンタンパク質含有溶液が、好都合には約10,000 Da〜約14,000 Daの分子量カットオフを示す膜を用いて、透析されるかまたはフィルターに通されて、任意の残留低分子量ペプチドおよび塩を除去する、というのも一般的に好ましい。精製リンタンパク質含有溶液は、凍結乾燥されるかまたは噴霧乾燥されて、リンタンパク質調製物を固体形態で生成し得る。
【0046】
トランスグルタミナーゼの任意の市販の供給源を用いて、部分架橋反応を実行し得る。例として、適切な酵素は、アクティバMPとしてAjinomoto Co.から市販されている1%トランスグルタミナーゼ調製物である。
【0047】
純粋に例として、本発明のフィルムに用いるのに適したリンタンパク質調製物は、部分加水分解カゼイン(上記のように調製)を4.5%w/wカゼインの比で付加されたトランスグルタミナーゼ調製物(アクティバMP)で処理し、そして40℃で18時間、反応混合物をインキュベートすることにより生成され得る。
【0048】
あるいはプラステイン反応(当業者に既知の酵素反応である)が用いられ得る。架橋は、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素を用いてチロシン残基間でも実行され得る。
【0049】
上記のように、部分架橋は酵素的に実行されるのが好ましいが、しかし適切な試薬を用いた化学的手段による部分架橋は決して除外されない。例えば二機能性アルデヒド、例えばグルタルアルデヒドが用いられ得る。
【0050】
上記のようなリンタンパク質調製物は有意量の陽イオン塩、特にカルシウムおよびその他の二価陽イオンの塩と結合し、したがって可溶化し得る、ということを本出願人等は意外にも見出した。さらにリンタンパク質調製物は、非修飾化カゼインより高い溶解度を有する。リンタンパク質調製物を陽イオンの供給源と組合せることにより、上記の望ましい特性を有する安定な薄いフィルムを生成し得るようにさせる方法で、リンタンパク質の溶解度が制御され得る、ということを本出願人等は意外にも見出した。いかなる理論にも結びつけずに考えると、陽イオンの供給源、例えばカルシウム塩を付加することにより、リンタンパク質の水結合能力は低減され、それにより口中で迅速に溶解する薄い安定したフィルムの生成を可能にする。
【0051】
したがって本発明のフィルムは、1つまたは複数の生理学的に許容可能な陽イオンの供給源を含む。陽イオンは二価であり、そして好ましくはカルシウム、亜鉛およびマグネシウムイオンからなる群から選択される、というのが好ましい。陽イオンの供給源は、無機または有機塩、例えばリン酸塩、クエン酸塩または塩化物であると便利である。しかしながら塩は水に実質的に不溶性である塩である、というのが好ましい。
【0052】
陽イオンはカルシウムイオンであるというのが特に好ましい。カルシウムイオンの供給源は、好ましくはリン酸カルシウムを、さらに好ましくはカルシウムヒドロキシアパタイトの形態で含む。特に好ましい実施形態では、カルシウムイオンの供給源は、天然乳カルシウム、例えばアラミン(商標)の商品名でNew Zealand Milk Products Ltdから入手可能なものを含み、これらは以下の典型的割合で、カルシウム、リン酸塩を、そしてタンパク質、ラクトース、脂肪、水分、ナトリウム、カリウムおよび塩化物も含む。
総無機質含量70%(w/w):28%カルシウムおよび48%リン酸塩
タンパク質(N×6.38) 7%
ラクトース 4%
脂肪 1%
自由水 3%
結合水 8%
カルシウム 28,000 mg/100 g
リン 16,000 mg/100 g
ナトリウム 400 mg/100 g
カリウム 300 mg/100 g
塩化物 100 mg/100 g
【0053】
天然乳リン酸カルシウムにおいて、リン酸カルシウムは一般にカルシウムヒドロキシアパタイトの形態で存在するとみなされる。天然乳リン酸カルシウムは、当業界で既知の方法により、典型的には酸性乳清透過物を清澄にし、そして低温殺菌して、透過物を限外濾過し、その後過熱して、pH調整し、そして無機物、例えばリン酸カルシウムが沈殿されるよう高温に保持し、そして沈殿物を回収することにより生成され得る。
【0054】
天然乳リン酸カルシウムの別の適切な供給源は、DMV Internationalからラクトバルの商標で入手可能な製品である。
【0055】
あるいはリン酸三カルシウムの形態のリン酸カルシウムが用いられ得る。
カルシウムイオンの供給源が天然乳リン酸カルシウムを含む方法あの実施形態が特に好ましい。これらの好ましいフィルムは、口中での溶解および飛び出し促進を示す。いかなる理論にも縛られずに考えると、天然乳リン酸カルシウムの不溶性部分は、充填剤としても作用して、フィルムの構造の弱体化を助長し、したがって崩壊を促進し得る。
【0056】
その他の実施形態では、フィルムは別のカルシウム源、例えばクエン酸カルシウムまたは塩化カルシウムを含む。これらの実施形態では、フィルムは充填剤、例えばタルクも含むのが一般に好ましい。
【0057】
本発明の可食性フィルム中の陽イオンの供給源とリンタンパク質調製物の相対的割合は、多数の因子によって変わる。これらの例としては、用いられている特定のリンタンパク質調製物の特性、顕著には溶解度および陽イオン結合特性、用いられている陽イオンおよび塩の種類、ならびに当該可食性フィルムの所望の特性、例えばその所望の厚みおよび溶解度が挙げられる。これらは今度は、フィルムの意図された最終用途、例えばそれが口中清涼剤、風味剤またはその他の活性作用物質の送達のためのスタンド−アローンフィルムとして用いられるか否か、あるいはそれが何らかのその他の用途、例えば食品用の可食性コーティングまたはパッケージのために用いられるか否かによっている。
【0058】
しかしながら一般的用語では、カルシウムまたはその他の陽イオン供給源は、柔軟性および粘着性フィルムの生成を手助けするのに十分な量でフィルム処方物中に含まれるべきである。含まれるべき陽イオンの最適量は、過剰な実験を必要とせずに当業者により容易に確定され得る。
【0059】
実例として、上記のように陽イオンがカルシウムであり、そして陽イオン供給源が天然乳リン酸カルシウムである本発明の実施形態では、カルシウムイオン:リンタンパク質の比(w/w)は約0.05:1〜約0.0136:1の範囲であり、ヒドロキシアパタイト:リンタンパク質の比(w/w)は約0.2:1〜約0.92:1の範囲であり、そして天然乳リン酸カルシウム:リンタンパク質の比(w/w)は約0.3:1〜約1.3:1の範囲であり得る。
【0060】
本発明の可食性フィルムは、望ましくは可塑剤(柔軟剤)も含み得る。可塑剤は、可食性フィルム中に含入するのに適した任意の可塑剤、例えば多価アルコール、例えばグリセロール、ソルビトール(好ましくはグリセロールと組合せて)、ポリエチレングリコールまたはプロピレングリコール、あるいは水素化デンプン加水分解物またはコーンシロップであり得る。好ましい実施形態では、可塑剤はグリセロールを含む。
【0061】
可塑剤は、フィルムの乾燥重量の約10%〜25%、さらに好ましくは約15〜18%を構成するのが便利である。
【0062】
重要ではないが、しかし本発明の可食性フィルムは望ましくは1つまたは複数の乳化剤も含み得る。乳化剤は、任意の適切な天然または合成食品等級乳化剤であり得る。例えば乳化剤としては、モノおよびジアシルグリセリド、モノおよびジグリセリドのクエン酸エステル、部分硬化植物油、レシチン、脂肪酸、ポリグリセロールエステル、ポリエチレンソルビタンエステル、プロピレングリコール、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレートまたはソルビタントリステアレートならびにその他の同様の乳化剤が挙げられ得る。
【0063】
乳化剤(単数または複数)は、フィルムの乾燥重量の0.5%〜3%を構成するのが便利である。
【0064】
フィルムの意図された用途によって、それは1つまたは複数の付加的作用物質、例えば風味剤または口中清涼剤、甘味剤、着色剤、pH制御剤および安定剤も含み得る。
【0065】
用いられ得る風味剤または口中清涼剤としては、例えば精油、合成風味剤または混合物、例えば植物および果実由来の油、例えば柑橘油、果実精油、例えばオレンジ、ペパーミント油、スペアミント油、その他のミント油、クローブ油、冬緑樹、アニス等の油、殺菌特性を有する風味油、例えばメントール、ユーカリプトール、オイゲノール、チモール、ならびに商標名製品リステリン内に見出されるような殺菌剤、ならびにそれらの組合せが挙げられる。付加される風味剤または口中清涼剤の量は、特定の作用物質の特性によっているが、しかし概して風味剤または口中清涼剤は、フィルムの乾燥重量の約2%〜10%を構成し得る。
【0066】
適切な甘味剤としては、天然甘味剤、例えばスクロース、デキストロースおよびマルトース、ならびに人工甘味剤、例えばスクラロース、アスパルターム、およびAce Kのようなアセスルファームの塩が挙げられる。
【0067】
適切な着色剤としては、食品用途に適した食品着色料および染料、例えばFD&Cレーキおよび染料が挙げられる。
pH制御剤の例としては、経口的に許容可能な緩衝剤が挙げられる。
【0068】
ある種の実施形態では、可食性フィルムは、1つまたは複数の活性作用物質、例えば口腔ケア剤、唾液刺激剤、薬学的または獣医学的作用物質、ニュートラシューティカル剤、ビタミン、無機質およびそれらの組合せを含み得る。
【0069】
本発明のフィルム中に組入れられ得る口腔ケア剤としては、リン酸塩およびフッ化物、ならびに抗プラーク/抗歯肉炎剤、例えばクロロヘキシジン、塩化セチルピリジニウムおよびトリクロサン、ならびに唾液刺激剤が挙げられる。
【0070】
本発明の可食性フィルム組成物内に組入れられ得る薬学的、獣医学的およびニュートラシューティカル作用物質ならびにビタミンおよび無機質としては、口腔消費に適している作用物質が挙げられる。
【0071】
例えばフィルムは、ワクチン、抗生物質、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、バクテリオシンまたは局所麻酔薬、例えばノボカインのための送達ベクターとして用いられ得る。フィルムは、小動物およびその他の動物、例えばウシ、ブタ、シカおよびウマに経口的に治療薬を送達するためにも用いられ得る。
【0072】
一般的言い方では、本発明の可食性フィルムは、上記のようなリンタンパク質調製物、1つまたは複数の生理学的に許容可能な陽イオンの供給源および可塑剤を含む混合物を適切な方法で加工処理して、フィルムを生成し、任意にフィルムを乾燥して、含水量を所望レベルに低減することにより調製され得る。
好ましい実施形態では、混合物は水を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、フィルムは成型により調製され得る。調製方法は、フィルム処方物の乾燥成分を水およびその他の液体成分の配合物と併合する過程を包含するのが便利である。乾燥成分は、液体成分の配合物に徐々に付加される前に一緒に配合される、というのが好ましい。液体成分の配合物を調製する場合、これを徐々に加熱して、乳化剤(存在する場合)の溶解を助けるのも望ましい。成分は、十分に混合されるべきである。さらに水を付加して、乾燥のために支持体上に広げられ得る粘稠度の溶液を得るために混合中の溶液の粘稠度を調整するのが、および/またはフィルムの厚みを調整するのが望ましい。溶液は、任意に乳化されおよび/または脱気され得る。
【0074】
溶液のpHは、好ましくは約6〜約8、さらに好ましくは約7.2〜7.8、さらに好ましくは約7.5に保持されるべきである。これは、適切なpH制御剤、例えば水酸化ナトリウムを付加することにより達成され得るのが便利である。
【0075】
次に溶液は適切な支持体、例えば乾燥ガラス板上に、またはコーティングを生成するよう意図された表面に注がれるかまたは別の方法で適用され得る。本発明のフィルムは、自立性であるか、あるいはそれらは、熱い場合には、紙のような構造表面に接着し、したがって所望によりコーティングとして役立ち得る。
【0076】
フィルムは、任意の適切な方法で、例えば風乾、炉乾燥、反射窓乾燥またはローラー乾燥で乾燥され得る。
【0077】
代替的な好ましい実施形態では、本発明のフィルムは、フィルム成分を含む混合物を押出すことにより調製され得る。この実施形態では、押出し混合物中に含まれる水の割合、ならびに押出しフィルムの最終含水量によって、フィルムの押出し後に乾燥過程を包含することは、不可欠であるというわけではない。フィルムは、液体成分を併合し、それらを乾燥成分の混合物に徐々に付加し、混合物が熱可塑性塊を生成するようpHを調整し(例えば約7.5に)、塊が崩れ易くなるよう混合物を冷却し、そして塊を押出しに適した粉末に磨り潰すことにより調製され得るのが便利である。
【0078】
本発明におけるフィルムの所望の厚みは、フィルムの意図された用途によって変わる。しかしながら本発明の可食性フィルムの厚みは、望ましくは約30〜約80μm、例えば約40〜50μm、例えば約43〜47μmの範囲であり得る。フィルムの厚みは、種々のパラメーター、例えば可塑剤の割合、乾燥物質中の水の割合、展延および乾燥のために用いられる方法、湿潤フィルムの初期厚み、そしてある程度までpHを、調整することにより制御され得る。
【0079】
ここで、以下の実施例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の例示のためであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0080】
実施例1
成分 % 調整%1
リンタンパク質(MAP112) 30 18.75
アラミン(商標) 30 18.75
Ace−K 1 0.625
乳化剤−ラメギン609ZE 1.5 0.935
風味剤−ペパーミント油 6 3.75
グリセロール 15 9.38
水 16.5 47.8
1余分量の水を溶液に付加して、乾燥のためにガラス板上に広げさせた。
【0081】
調製方法:
乾燥成分(リンタンパク質、アラミンおよびAce−K)を配合した。リンタンパク質を、実施例3に記載されているように調製した。
【0082】
液体成分(乳化剤、風味剤、グリセロールおよび水)を配合した。混合物を必要な場合は徐々に30〜40℃に加熱して、乳化剤を溶解した。
【0083】
乾燥成分を液体に徐々に付加し、全ての成分が十分に混合されるまで撹拌した。余分量の水を溶液に付加して、乾燥のためにガラス板上に広げさせた。
4MのNaOHでpHを7.5に調整した。
【0084】
溶液を乾燥ガラス板上に広げて(0.25mm厚)、100〜110℃で約4〜5分間乾燥した。板を室温で再水和させておいて、次に刃を用いてフィルムを板から剥ぎ取った。
【0085】
実施例2
成分 % 調整%1
リンタンパク質(MAP112) 30 18.75
アラミン 30 18.75
Ace−K 1 0.625
乳化剤−ラメギン609ZE 1.5 0.935
風味剤−ペパーミント油 6 3.75
グリセロール 13 8.125
水 18.5 49.065
1余分量の水を溶液に付加して、乾燥のためにガラス板上に広げさせた。
実施例1に関して上記したような調製方法を用いて、可食性フィルムを調製した。
【0086】
実施例3
リンタンパク質(MAP112)の調製
トリプシン加水分解
最終濃度が522Lとなるよう、55kgのカゼインナトリウムを50℃脱イオン水中に分散させた。溶液を37℃に冷却し、pHをNaOHで7.06に調整して、ブタ由来トリプシン(Novo.4500K、分子量23,400 Da、活性4500 USP単位/mg)を0.01%w/wカゼインで付加し、そして5分間インキュベートした。溶液を15分掛けて80℃に加熱し、4分間保持して、45℃に冷却した。
【0087】
以下のようにゲル濾過により、部分加水分解調製物の分子量プロフィールを確定した。1%タンパク質溶液を、緩衝剤として50 mMリン酸ナトリウム、pH7.5を用いて、6M尿素中に調製した。この溶液を10000×gで10分間遠心分離し、0.2μmフィルターに通した。試料容積500μlを、Superdex 200 10/30HRカラムを装備したPharmaciaFPLCの100μl試料ループ中に注入した。用いたランニング緩衝液は6 M尿素で、50mMリン酸ナトリウム、pH7.5を伴い、流速は0.5ml/分であった。検出は、UV吸光度(280nm)によった。タンパク質吸光度曲線を統合して、随意に以下の4つの分子量群に分けた。
1)約30,000ダルトンより大きい
2)約30,000ダルトン未満および約21,000ダルトンより大きい
3)約21,000ダルトン未満および約12,000ダルトンより大きい
4)約12,000ダルトン未満。
【0088】
加水分解後の分子量プロフィール
分子量範囲 パーセンテージ
≧30,000 10.7
<30,000、≧21,000 57.87
<21,000、≧12,000 57.87
<12,000 15.8
【0089】
トランスグルタミナーゼ処理
pHを7.0に再調整し、トランスグルタミナーゼ(1%市販調製物、アクティバMP、Ajinomoto Co)を4.5%w/wカゼインの比率で付加し、そして15時間インキュベートした(インキュベーション終了時の温度は32℃であった)。溶液を80℃に加熱し、5分間保持した。溶液を1000 Lに希釈し、5℃に冷却した。最終濃度が20%固体になるまで溶液を限外濾過し、次に噴霧乾燥した。30,000 Daより大きい分子量物質を100%増大させると、タンパク質中の架橋の数は92μmol/gであった。
【0090】
実施例4
押出フィルムの調製
Brabender二軸押出機で以下の処方物を用いて、押出フィルムを調製した。
成分 押出1 押出2
タンパク質MAP112(実施例3) 32.40 30.0
乳由来リン酸カルシウム 32.40 30.0
Ace−K 0.99 1.0
乳化剤 1.62 1.5
風味ペパーミント油 6.48 6.0
グリセロール 16.20 13.0
水 100.0 100.0
【0091】
調製方法
液体成分(水、グリセロール、ペパーミント油および乳化剤)を混合し、乾燥混合物(タンパク質MAP112、乳由来リン酸カルシウムおよびアセスルファームK)に徐々に付加し、全成分が十分に混合されるまで撹拌した。NaOHでpHを7.5に調整した。その結果生じた混合物は、18℃より低い温度で崩れやすくなる熱可塑性塊を生成した。混合物を0℃に冷却し、そして粉末に磨り潰した。
【0092】
押出機条件
供給ホッパースクリュー速度5RPM
押出機スクリュー速度8RPM
バレル温度プロフィール(供給末端から)
セクション1 50℃
セクション2 60℃
セクション3 65℃
セクション4 75℃
ノズル 80℃
ノズル開口 100μm
【0093】
砕片をホッパーに供給し、薄いフィルムとして押出した。フィルムがノズルから出されたら、紙のストリップ(ケイ素裏打ち、0.25μm厚、 2m長)によりそれを集めた。紙速度を変えて、40μmから150μmまでの範囲の厚みを有するフィルムを達成した。フィルムを箔積層袋に入れた。
【0094】
実施例5
高速液体クロマトグラフィーを用いた架橋度の確定
化学物質および試薬
ε−(γ−グルタミル)リシン(G−L)およびトリフルオロ酢酸(TFA、タンパク質シーケンシング等級)、プロリダーゼ(ブタ腎臓)、ロイシンアミノペプチダーゼおよび食用ブタ腎臓からのサイトゾル、カルボキシペプチダーゼA(ウシ膵臓)およびプロナーゼ(放線菌ストレプトミセス−グリセウス)ならびにトリス[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]を、Sigma Chem. Co.(Sydney, Australia)から購入した。アセトニトリルはBiolab (Christchurch, New Zealand)から購入した。
【0095】
架橋タンパク質のタンパク質分解性消化
タンパク質試料の48〜50mgアリコートを、ガラス試験管中に計量した(総容積15mL)。チモールの結晶および2mlの0.2 Mトリス(pH8.0, HCl)を付加し、溶液をかき回して、次に40℃で1時間インキュベートして、タンパク質の分散を可能にした。プロナーゼ(0.4 U/タンパク質1mg)のアリコートを混合物に付加し、これを次に37℃で24時間インキュベートした。プロナーゼの別の等しいサイズのアリコートの付加により、プロナーゼ消化をさらに24時間継続した。100℃(水浴)で10分間加熱することによるプロナーゼの不活性化後、消化を継続して、ロイシンアミノペプチダーゼ(0.4 U/タンパク質1mg)を付加し、プロナーゼインキュベーションと同様に溶液を処理した。プロリダーゼ(0.45 U/タンパク質1mg)を、次にカルボキシペプチダーゼA(0.2 U/タンパク質1mg)を用いて、消化を継続した。最終インキュベーション後、混合物を超純水(MilliQ水精製系)(Millipore, North Ryde, Australia)で7.5gに希釈した。
【0096】
G−LのHPLC分析
HPLC系は、ICI Instruments 1210 UV/Vis検出器に接続されたDionex GP40勾配ポンプ溶媒送達系で構成された。データをITNS Acquisition Boardにより捕捉し、AZURクロマトグラフィーソフトウェア バージョン1.1を用いて分析した。試料(100μl)を、ガードカラム(C18ODS、4mm×3.0mm内径)(Phenomenex)および2μmプレフィルターに接続されたInertsil ODS-2カラム(5μm, 150×7.6mm)(Phenomenex, Auckland, New Zealand)で分離した。分析は2.5℃で実施した。移動相は0.1%TFA(v/v)(溶媒A)および0.1%TFA(v/v)(溶媒B)を含有するアセトニトリルであった。溶媒プログラムを以下に示す:100%溶媒Aを20分間、0%〜100%溶媒Bを20〜25分間、100%溶媒Bを25〜50分間。検出器波長を210nmに設定し、流量は1.0ml/分であった。
【0097】
タンパク質分解性消化からの全試料を、0.45 μmMillex-HA Milliporeフィルターユニットで濾過した。200μlの試料を100μlの蒸留水および100μlのTFA(2%w/w)と混合した。標準との溶離時間との比較によりG−Lピークを同定し、試料へのG−L標準溶液の標準付加により確証した。
【0098】
実施例6
成分 5A 5B 5C
質量%/質量
リンタンパク質
Lot2/18 22.5 − −
MAP106 − 30 −
MAP109 − − −
乳リン酸カルシウム 22.5 10 30
Ace−K 0.75 1 1
乳化剤−ラメギン609ZE 1.13 1.5 1.5
風味ペパーミント油B&J 4.5 6 6
グリセロール 7.5 18 15
水 41.12 33.5 16.5
【0099】
調製方法
乾燥成分(リンタンパク質、アラミンおよびAce−K)を配合した。
調製に用いたリンタンパク質の特性を以下に示す:Lot102:加水分解度(DH)8.8%、架橋度150mol/タンパク質1 g;MAP106:DH4.4%、架橋度155mol/タンパク質1g;MAP109:DH5.7%、架橋度155mol/タンパク質1g。
【0100】
液体成分(乳化剤、風味剤、グリセロールおよび水)を配合した。必要な場合には混合物を徐々に30〜40℃に加熱して、乳化剤を溶解した。
【0101】
乾燥成分を徐々に液体成分に付加し、全成分が十分に混合するまで撹拌した。
pHを4MのNaOHで7.5に調整した。
【0102】
溶液を乾燥ガラス板上に広げて(0.25mm厚)、100〜110℃で約4〜5分間乾燥した。板を室温で再水和させておいて、次に刃を用いてフィルムを板から剥ぎ取った。
【0103】
フィルムの説明
Lot2/18およびMAP106は、迅速に溶解する柔軟性のわずかに粘性のフィルムを作製した。MAP109も非常に柔軟性で、味を有し、わずかに湿り気を有し、且つ舌にしばらく粘着した後、迅速に溶解した。フィルムは全て、強風味激発も示した。
【0104】
実施例7
成分 6A 6B 6C 6D 6E
質量%/質量
リンタンパク質(MAP112) 30 27 27 22.5 23.1

CaCl2 3 − − − −
CaCO3 − 13.6 − − −
Caクエン酸塩 − − 13.6 − −
Ca3PO4 − − − 27.1 −
MgCl2 − − − − 23.1
Ace−K 1 0.9 0.9 0.8 0.8
乳化剤−ラメギン609ZE 1.5 1.4 1.4 1.1 1.2
風味ペパーミント 6 5.4 5.4 4.5 4.6
グリセロール 15 10.9 10.9 13.5 11.5
水 43.5 40.8 40.8 24.9 35.8
【0105】
調製方法
実施例6に示されたように、フィルムを調製した。
【0106】
フィルムの説明
フィルムは全て、薄く、柔軟性で、そして迅速に溶解した。フィルムは全て、強風味激発も示した。炭酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩フィルムは色が不透明であったが、一方、塩化物フィルムは透明であった。塩化物を含有するフィルムはわずかに粘着性であった。
【0107】
実施例8
加水分解度または部分加水分解カゼインの確定方法
蒸留水中の0.1%または1%タンパク質(w/w)溶液として、試料を調製した。試料の100μlアリコートを800μlの0.2125Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.20に付加した。これに、800μlの0.1%TNBS試薬を付加し、試薬を十分に混合して、箔に包み、被覆水浴中で50℃でインキュベートした。正確に60分後、1600μlの100mMHClの付加により反応を終結させて、試料を放置して室温に冷却し、30分後に340nmで緩衝液/TNBSブランクに対する吸光度を読取った。
【0108】
産業用途
上記のように、本発明のフィルムは多数の用途を有する。例えばそれらは、口中清涼剤またはその他の口腔ケア剤を送達するために用いられ得る。代替的にまたは付加的に、それらは薬学的または獣医学的作用物質、ニュートラシューティカル剤、唾液刺激剤、ビタミン、無機質またはそれらの組合せのための担体として作用し得る。他の用途において、本発明の可食性フィルムは、食品、例えば果物または菓子製品のための易可溶性および/または可食性コーティングとして用いられ得る。それらは食品ラベリング、例えばチーズラベリングにも用いられ得る。さらなる用途は、新規糖菓、例えばtongue tattooの調製においてである。
【0109】
さらにその他の用途では、フィルムは、皮膚に局所的に活性作用物質を適用するためのビヒクルとして用いられ得る。例えば日焼け止め(SPF)剤、熱傷回復剤、単純ヘルペス治療薬および局所的抗真菌性疾患薬は、本発明のフィルム中に組入れられ得る。
【0110】
さらなる用途では、フィルムは、特に免疫学におけるまたは法廷用途における診断キットに用いられ得る。
【0111】
少なくとも好ましい実施形態では、本発明の可食性フィルムは、ある種の一般的に入手可能なプルランベースのフィルムと比較した場合、口中に「保持」され難く、そして溶解時に相対的にさわやかな口中感を提供するという利点を有する。本発明のフィルムの口中での迅速飛び出しまたは突発性風味剤放出に用いるための可能性をそれらに提供する。
【0112】
本発明を詳細に、そしてその特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、しかしこれらの実施形態の種々の変更および修正は、当業者には明らかである。このような変更および修正は、添付の特許請求の範囲に定義されているような本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、なされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分的に架橋することにより得られたリンタンパク質調製物、
(b)1つまたは複数の生理学的に許容可能な陽イオンの供給源、および
(c)可塑剤
を含むフィルム。
【請求項2】
可食性である請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
実質的に可溶性である、請求項1または2記載のフィルム。
【請求項4】
陽イオンが二価である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】
陽イオンの供給源が陽イオンの実質的に水不溶性の塩を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項6】
陽イオンがカルシウムイオンを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項7】
陽イオンの供給源がリン酸カルシウムを含む、請求項6記載のフィルム。
【請求項8】
全てのリン酸カルシウムのうちの一部がカルシウムヒドロキシアパタイトの形態である、請求項7記載のフィルム。
【請求項9】
カルシウムの供給源が天然乳リン酸カルシウムを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項10】
天然乳リン酸カルシウムおよびリンタンパク質調製物が約0.3:1〜約1.3:1の質量比でフィルム中に存在する、請求項9記載のフィルム。
【請求項11】
可塑剤が1つまたは複数の多価アルコールを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項12】
多価アルコールがグリセロールを含む、請求項11記載のフィルム。
【請求項13】
部分架橋前のカゼインまたはカゼイン塩の加水分解の程度がペプチド結合の総数の約0.5%〜約10%の範囲である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項14】
部分架橋前のカゼインまたはカゼイン塩の加水分解の程度がペプチド結合の総数の約2%〜約8%の範囲である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項15】
カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物が酸性カゼイン、レンネットカゼインまたはカゼイン塩の酵素的加水分解により得られた、請求項1〜14のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項16】
酵素がトリプシンであり、そして部分的加水分解が約7〜約8のpHで実行された、請求項15記載のフィルム。
【請求項17】
部分架橋がトランスグルタミナーゼを用いて酵素的に実行された、請求項1〜16のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項18】
部分架橋の程度が、その結果生じるリンタンパク質調製物がタンパク質1g当たり約10μmolまたはそれ以上の架橋を含むようなものである、請求項1〜17のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項19】
部分架橋の程度が、その結果生じるリンタンパク質調製物がタンパク質1g当たり約10μmol〜250μmolの架橋を含むようなものである、請求項1〜18のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項20】
部分架橋の程度が、その結果生じるリンタンパク質調製物がタンパク質1g当たり約50μmol〜160μmolの架橋を含むようなものである、請求項1〜19のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項21】
1つまたは複数の乳化剤をさらに含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項22】
乳化剤がモノ−およびジグリセリドのクエン酸エステルを含む、請求項21記載のフィルム。
【請求項23】
風味剤または口中清涼剤、甘味剤、着色剤、pH制御剤および安定剤からなる群から選択される1つまたは複数の付加的作用物質をさらに含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項24】
口腔ケア剤、薬学的または獣医学的作用物質、ニュートラシューティカル剤、唾液刺激剤、ビタミン、無機質およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の付加的作用物質をさらに含む、請求項1〜23のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載のフィルムを含む可食性コーティングを含む食料品。
【請求項26】
可食性フィルムの製造方法であって、
(i)(a)カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分架橋することにより得られたリンタンパク質調製物、(b)1つまたは複数の生理学的に許容可能な陽イオンの供給源、ならびに(c)可塑剤、を含む混合物を加工処理してフィルムを生成すること、および
(ii)任意にフィルムを乾燥して、含水量を所望レベルに低減すること
の工程を含む方法。
【請求項27】
混合物が水を含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
混合物を表面に適用し、その後乾燥してフィルムを生成する工程を含む、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
混合物を押出成型してフィルムを生成することを含む、請求項26または27記載の方法。
【請求項30】
可食性フィルムを製造するために加工処理され得る混合物であって、
(a)カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分的に架橋することにより得られたリンタンパク質調製物、
(b)1つまたは複数の生理学的に許容可能な陽イオンの供給源、および
(c)可塑剤
を含む混合物。
【請求項31】
熱可塑性であり且つ押出成型可能である請求項30記載の混合物。
【請求項32】
粉末の形態である請求項31記載の混合物。

【公表番号】特表2006−506981(P2006−506981A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545096(P2004−545096)
【出願日】平成15年10月20日(2003.10.20)
【国際出願番号】PCT/NZ2003/000231
【国際公開番号】WO2004/035029
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(505144245)
【出願人】(505144256)
【出願人】(505144267)
【出願人】(505144315)
【Fターム(参考)】