説明

合わせガラス及び合わせガラスの製造方法

【課題】機械的強度を十分に得ることができ、安定的に生産可能で、視覚的な意匠効果を良好に得ることができる合わせガラスを提供する。
【解決手段】合わせガラス12の中間膜は、第1の中間膜22と第2の中間膜24とによって構成され、第1の中間膜22と第2の中間膜24との間に、粒径が0.5〜2.5mmの多数のガラスボール26、26…及びリング状のガラスビーズ28、28…が封入されて構成されている。この合わせガラス12は、衝撃が加わっても破断し難くいため機械的強度が十分にあり、窓や外壁用建材として好適である。また、気孔(気泡)入りガラス板が不要であり、平滑性に優れるガラス板を使用できるので、合わせガラスとして安定的に生産できる。更に、粒状感を十分に表現することができ、視覚的な意匠効果を良好に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合わせガラス及び合わせガラスの製造方法に係り、特に建築物の窓や外壁面等に使用される建材用の合わせガラスであって意匠性を持たせた合わせガラス及び合わせガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建材用のガラス板として、意匠性を持たせたものが従来から知られており、例えば特許文献1には、ガラス板に奥行き感を与える気孔入りガラス板が提案されている。この気孔入りガラス板は、薄片状、小片状、又は粒状のガラスをコージエライト等の耐火性容器内に充填し、高温(700〜1200℃)で熱処理することによって製造されるものであり、ガラス片や粒の隙間によってできる気孔、及びそれに加えてリボイルによりガラス板内部に生成される気孔を利用して製造されるものである。また、特許文献1には、熱処理温度を調整して気孔の数、大きさを制御することにより、ガラス板の可視光透過率を調整することも記載されている。
【0003】
一方、特許文献2には、2枚のガラス板を、樹脂製の中間膜を介して貼り合わせてなる合わせガラスにおいて、少なくとも1枚のガラス板を透光不透視なガラス板とすることにより、採光性、プライバシー性を得るようにした合わせガラスが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、少なくとも3層からなる合わせガラスの中間膜の、最外層以外の少なくとも一層中に透光性微粒子を均一に分散させてなる散光性の合わせガラスが開示されている。また、透光性微粒子としては、ガラスビーズやシリカゲルビーズ等の無機ビーズを使用することが開示され、この透光性微粒子の平均粒径を、中間膜の強度を低下させないために100μm以下とし、光屈折機能を低下させないために1μm以上とすることが記載されている。
【特許文献1】特開2001−180953号公報
【特許文献2】特開2005−8425号公報
【特許文献3】特開平7−330391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された気孔入りガラス板は、ガラス自体に気孔が内在されているため、機械的強度を十分に得ることは難しく、風圧力を受ける窓や外壁用建材として使用することは難しいという欠点があった。また、1枚のガラス板中で、気孔の数や大きさを調整することが困難なため、気孔の数や大きさを変えることによる視覚的な意匠効果を十分に得ることができないという問題もあった。
【0006】
一方、特許文献2の合わせガラスは、合わせガラスを構成する少なくとも1枚のガラス板として、透光不透視のガラス板である気泡含有ガラスを用いているが、気泡含有ガラスとフロートガラス板との熱膨張係数の違いや、気泡含有ガラス表面の凹凸のため、合わせガラス製造工程において割れが多発し、製造が極めて困難であった。
【0007】
また、特許文献3の合わせガラスは、合わせガラスの中間接着層に内在するガラスビーズの粒径が1〜100μmと小さいため、粒状感を十分に表現できず、視覚的な意匠効果を良好に得ることができないという欠点があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、機械的強度を十分に得ることができ、安定的に生産可能で、視覚的な意匠効果を良好に得ることができる合わせガラス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の合わせガラスの発明は、前記目的を達成するために、少なくとも2枚のガラス板の間に中間膜を介在させて構成される合わせガラスにおいて、前記中間膜を少なくとも第1の中間膜と第2の中間膜とによって構成し、第1の中間膜と第2の中間膜との間に、粒径が0.5〜2.5mmのガラスボール及び/又はガラスビーズを封入して構成されたことを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の合わせガラスは、合わせガラスの中間膜を第1の中間膜と第2の中間膜とによって構成し、第1の中間膜と第2の中間膜との間に、粒径が0.5〜2.5mmのガラスボール及び/又はガラスビーズを封入して構成される。
【0011】
この合わせガラスの製造方法は、請求項6に記載の如く、少なくとも2枚のガラス板の間に中間膜を介在させて構成される合わせガラスの製造方法において、前記ガラス板として少なくとも第1のガラス板と第2のガラス板とを備えるとともに、前記中間膜として第1の中間膜と第2の中間膜とを備え、前記第1のガラス板の上面に前記第1の中間膜を載置し、第1の中間膜上に粒径が0.5〜2.5mmのガラスボール及び/又はガラスビーズを所定量散布し、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズ上に前記第2の中間膜を載置し、第2の中間膜上に前記第2のガラス板を載置してガラス積層体を構成し、該ガラス積層体を所定の温度で加熱するとともに所定の圧力で加圧することによって合わせガラスに製造することを特徴としている。
【0012】
少なくとも2枚のガラス板間に中間膜を介在させてガラス板同士が互いに接着された合わせガラスは、衝撃が加わっても破断し難くいため機械的強度が十分にあり、窓や外壁用建材として好適である。また、衝撃によってガラス板が万が一破損した場合でも、破片は中間膜に接着されているため飛散が防止され、更に、貫通孔も生じ難いことから安全性、防犯性に優れるという利点がある。更に、この合わせガラスは、視覚的な奥行き感を与えるために、第1の中間膜と第2の中間膜との間にガラスボール及び/又はガラスビーズを内在させたものなので、気孔(気泡)入りガラス板に対して十分な強度を保証することができる。更にまた、ガラスボール及び/又はガラスビーズの粒径を0.5〜2.5mmとしたので、粒状感を十分に表現することができ、視覚的な意匠効果を良好に得ることができる。粒径が0.5mm未満であると、粒状感を十分に表現できないため視覚的意匠性を得ることができず、粒径が2.5mmを超えると、粒径の大きさに起因して、合わせガラスの加熱、加圧製造時にガラス板に内部応力が発生し、ガラス板が破損するおそれがあるので好ましくない。また、ガラスボール及び/又はガラスビーズ周辺に巻き込まれた気泡が、合わせガラスの加熱、加圧製造時に抜け切れず、製品に残存するおそれも高まるので好ましくない。意匠性を高めること、及びガラス板の破損を確実に阻止することを鑑みれば、粒径は1.4〜1.9mmがより好ましい。また、粒径が0.5〜2.5mmの範囲で異なる粒径のガラスボール及び/又はガラスビーズを散布することにより、より視覚的意匠性の高い合わせガラスを提供できる。
【0013】
合わせガラスのガラス板としては、フロート法によって製造されるソーダライムガラスを使用することが好ましい。このガラス板は、特許文献1に開示された気孔入りガラス板に比べて強度に優れ、表面が平滑であるため、合わせガラス製造工程において割れが多発することもなく、安定的に生産できる。なお、合わせガラスを構成するガラス板として、異なる組成のガラス板を組み合わせて使用することもできるが、熱膨張係数がほぼ同等のガラス板を組み合わせて使用するのが好ましく、同じ組成のガラス板を用いるのがより好ましい。
【0014】
中間膜としては、接着機能を有する周知のポリビニルブチラール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体からなる合成樹脂等の熱可塑性樹脂フィルムが使用される。通常の合わせガラスに用いられる中間膜の厚さ(合わせガラス化される前の厚さ。以下同様。)は0.4mmが一般的であり、この厚さの中間膜2枚の間に、例えば粒径が2.5mmのガラスボール及び/又はガラスビーズを封入すると、合わせガラスの加熱、加圧製造時にガラスボール及び/又はガラスビーズが中間膜を突き破り、ガラス板を傷付けるおそれがある。この不具合を防止するため、第1の中間膜および第2の中間膜として、厚さ0.4mmの中間膜を複数枚重ね合わせたものをそれぞれ用いて、第1の中間膜と第2の中間膜との間にガラスボール及び/又はガラスビーズを封入することが好ましい。第1の中間膜と第2の中間膜の厚さの合計は、封入されるガラスボール及び/又はガラスビーズの粒径の約1.2倍以上であるのが好ましい。粒径が1.4〜1.9mmの場合には、第1の中間膜と第2の中間膜として、厚さ0.4mmの中間膜を3枚重ね合わせたものをそれぞれ使用するのが好ましい。同様に、粒径が0.5〜2.5mmの場合には、第1の中間膜と第2の中間膜として、厚さ0.4mmの中間膜を4枚重ね合わせたものをそれぞれ使用するのが好ましい。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが、前記合わせガラスの面内の一部のエリアのみに封入されていることを特徴としている。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズを、前記合わせガラスの面内の一部のエリアのみ散布することを特徴としている。
【0017】
請求項2、7に記載の発明によれば、1枚の合わせガラスの面内において、ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入されているエリアとそれ以外のエリアとが形成されているため、視覚的意匠性の高い合わせガラスを提供できるので好ましい。この合わせガラスを窓、外壁用建材として使用した場合には、ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入されているエリアが視覚的意匠性の高いガラス板として機能し、それ以外のエリアが透視性の高いガラス板として機能するので、1枚のガラス板面内で各エリアの形状、大きさを適宜設定することにより、全体としてデザイン性の高い窓、外壁面を構成できる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入される前記一部のエリアを除く他のエリアには、前記第1の中間膜と第2の中間膜との間に、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズの封入によるガラス板間の隙間を揃えるための樹脂製膜が介在されていることを特徴としている。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入される前記一部のエリアを除く他のエリアの、前記第1の中間膜と第2の中間膜との間に、ガラスボール及び/又はガラスビーズの封入によるガラス板間の隙間を揃えるための樹脂製膜を介在させて、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズを散布することを特徴としている。
【0020】
請求項3、8に記載の発明によれば、中間膜と同等の接着機能のある樹脂製膜を他のエリアに介在させることが好ましい。この樹脂製膜が無い場合、合わせガラスの加熱、加圧製造時に、前記隙間の違いに起因してガラス板に内部応力が発生し、ガラス板が破損するおそれがあるが、隙間を揃えるための前記樹脂製膜を介在させることにより、前記内部応力の発生を抑制でき、ガラス板の破損を防止することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、前記2枚のガラス板のうち1枚のガラス板は、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入されている前記一部のエリアと該一部のエリアを除く他のエリアとが2分割されていることを特徴としている。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8において、前記2枚のガラス板のうち1枚のガラス板を、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入されている前記一部のエリアと該一部のエリアを除く他のエリアとに2分割していることを特徴としている。
【0023】
請求項4、9に記載の発明によれば、一部のエリアと他のエリアとにガラス板を2分割することにより、合わせガラスの加熱、加圧製造時にガラス板には内部応力が発生しないので好ましい。これによって、ガラス板の破損を防止することができる。また、分割された2枚のガラス板の境界部に、例えばポリカーボネート樹脂製の緩衝材を介在させることが好ましい。これにより、分割された2枚のガラス板の境界部同士が直接接触してガラス板の端面に欠けが発生することが抑制される。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記合わせガラスは、3枚のガラス板の各々の間に中間膜を介在させてなる3層構造の合わせガラスであり、各々の中間膜は少なくとも前記第1の中間膜と前記第2の中間膜とから構成され、各々の第1の中間膜と第2の中間膜との間に、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入されていることを特徴としている。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、3枚のガラス板の各々の間に中間膜を介在させてなる3層構造の合わせガラスを提供するものであり、各々の中間膜を構成する第1の中間膜と第2の中間膜との間に、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入されているので、視覚的な意匠効果を良好に得ることができ、かつ、風圧力をうける窓、外壁用建材としてより好適な強固な合わせガラスを提供できる。
【0026】
なお、合わせガラスのうち少なくとも1枚のガラス板の表面をフロスト加工してフロスト感を持たせることが好ましい。これにより、光拡散性や意匠性を付加する効果を持たせることができる。また、ガラス板の表面にフロスト調のフィルムを貼り付けても、光拡散性及び意匠性を合わせガラスに与えることができる。
【0027】
更に、合わせガラスのうち少なくとも1枚のガラス板を乳白ガラス等の着色ガラスとすることが好ましい。これにより、奥行き感に加えて色彩感覚を与えることができる。
【0028】
合わせガラスの少なくとも1枚のガラス板は、その表面が表面処理されたガラス、熱線反射ガラス、又は熱線吸収ガラスであってもよい。また、合わせガラスの少なくとも1枚の前記ガラス板は、その表面に熱線反射膜、又は熱線吸収膜がコーティングされていてもよい。更に、2枚の中間膜の接着層に、色付きの中間膜、又はPETフィルムを介在させてもよい。更にまた、ガラスボール及び/又はガラスビーズを着色してもよい。これらのガラス板や中間膜、PETフィルム、ガラスボール及び/又はガラスビーズを組み合わせることにより、窓、外壁建材として意匠性の高い合わせガラスを提供できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る合わせガラスによれば、2枚のガラス板間に中間膜が介在されているため、衝撃が加わっても破断し難く機械的強度が十分にあり、窓や外壁用建材として好適である。また、衝撃によってガラス板が万が一破損した場合でも、破片は中間膜に接着されているため飛散が防止され、更に、貫通孔も生じ難いことから安全性、防犯性に優れる。また、視覚的な奥行き感を与えるために、第1の中間膜と第2の中間膜との間にガラスボール及び/又はガラスビーズを内在させたものなので、気孔(気泡)入りガラス板に対して十分な強度を保証することができ、また、気孔(気泡)入りガラス板が不要であり、平滑性に優れるガラス板を使用できるので、合わせガラスとして安定的に生産できる。更に、ガラスボール及び/又はガラスビーズの粒径は0.5〜2.5mmであるので、粒状感を十分に表現することができ、視覚的な意匠効果を良好に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面に従って本発明に係る合わせガラスの好ましい実施の形態について説明する。
【0031】
図1は、合わせガラスによって外壁面が構成された建築物10の外観図である。この建築物10の外壁面は、実施の形態に係る2形態の合わせガラス12、14と、一般的な透明の合わせガラス16とを組み合わせることにより構成されている。各々の合わせガラス12、14、16は、建築物10の躯体を構成する枠材(不図示)に嵌め込まれたり、接合材(不図示)を介して躯体に固定されたりして躯体側に取り付けられるとともに、隣接する合わせガラスの目地部にシーリング材(不図示)が打設されて隣接する合わせガラス同士が接着固定されることにより、フラットな外壁面を構成している。
【0032】
図2(A)は、第1の実施の形態の合わせガラス12の平面図であり、(B)は(A)におけるB−B線に沿う合わせガラス12の断面図である。この合わせガラス12は、2枚のガラス板18、20の間に中間膜を介在させて構成される合わせガラスであり、中間膜は第1の中間膜22と第2の中間膜24とによって構成され、第1の中間膜22と第2の中間膜24との間に、粒径が0.5〜2.5mmの多数のガラスボール26、26…及びリング状のガラスビーズ28、28…が封入されて構成されている。なお、ガラスボール26、26…のみ封入してもよく、ガラスビーズ28、28…のみ封入して合わせガラス12を構成してもよい。
【0033】
この合わせガラス12の製造方法について説明すると、まず、ガラス板(第1のガラス板)18の上面に第1の中間膜22を載置し、次に、第1の中間膜22上に粒径が0.5〜2.5mmのガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…を図2(A)の如く均等に散布する。次いで、ガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…上に第2の中間膜24を載置し、そして、第2の中間膜24上にガラス板(第2のガラス板)20を載置してガラス積層体を構成する。この後、このガラス積層体を周知のオートクレーブ圧着装置(不図示)により所定の温度で加熱するとともに所定の圧力で加圧することによって製造される。
【0034】
このように製造された合わせガラス12は、衝撃が加わっても破断し難くいため機械的強度が十分にあり、図1の如く窓や外壁用建材として好適である。また、衝撃によってガラス板18、若しくはガラス板20が万が一破損した場合でも、破片は第1の中間膜22、若しくは第2の中間膜24に接着されているため飛散が防止され、更に、貫通孔も生じ難いことから安全性、防犯性に優れる。更に、この合わせガラス12は、視覚的な奥行き感を与えるために、第1の中間膜22と第2の中間膜24との間にガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…を内在させたものなので、気孔(気泡)入りガラス板に対して十分な強度を保証することができる。更にまた、ガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…の粒径を0.5〜2.5mmとしたので、粒状感を十分に表現することができ、視覚的な意匠効果を良好に得ることができる。
【0035】
ガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…の粒径が0.5mm未満であると、粒状感を十分に表現できないため視覚的意匠性を得ることができず、粒径が2.5mmを超えると、粒径の大きさに起因して、合わせガラス(ガラス積層体)のオートクレーブ圧着装置による加熱、加圧製造時にガラス板18、20に内部応力が発生し、ガラス板18、20が破損するおそれがあるので好ましくない。また、ガラスボール26及び/又はガラスビーズ28周辺に巻き込まれた気泡が、合わせガラスの加熱、加圧製造時に抜け切れず、製品に残存するおそれも高まるので好ましくない。意匠性を高めること、及びガラス板18、20の破損を確実に阻止することを鑑みれば、粒径は1.4〜1.9mmがより好ましい。また、粒径が0.5〜2.5mmの範囲で異なる粒径のガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…を散布することにより、より視覚的意匠性の高い合わせガラスを提供できる。
【0036】
合わせガラス12のガラス板18、20としては、何れも、フロート法によって製造されるソーダライムガラスを使用することが好ましい。このガラス板18、20は、表面が凸凹した、特許文献1に開示された気孔入りガラス板に比べて強度に優れ、表面が平滑であるため、合わせガラス製造工程において割れが多発することもなく、安定的に生産できる。また、フロート法によって製造されるソーダライムガラスは、工業的に安価に大量に製造され、大サイズから切り出すことにより各種サイズへの対応も容易であるので、建築用ガラス板として使用される本用途に好ましく使用できる。このガラス板18、20の板厚としては、呼び厚さ6ミリ〜12ミリとするのが好ましい。呼び厚さが19ミリ以上では、合わせガラスとしての総厚が厚くなり過ぎて好ましくない。また、呼び厚さが4ミリ以下では、使用条件によっては強度上の問題が生ずるおそれがあるので好ましくない。
【0037】
中間膜22、24としては、接着機能を有する周知のポリビニルブチラール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体からなる合成樹脂等の熱可塑性樹脂フィルムが使用される。通常の合わせガラスに用いられる中間膜の厚さは0.4mmが一般的であり、この厚さの中間膜2枚の間に粒径が2.5mmのガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…を封入すると、合わせガラス(ガラス積層体)の前記加熱、加圧製造時にガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…が中間膜を突き破り、ガラス板18、20を傷付けるおそれがある。この不具合を防止するため、図2(B)の如く0.4mmの厚さの中間膜a、b、c、dを4枚重ね合わした厚さ1.6mmの中間膜22、24間にガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…を封入することが好ましい。すなわち、第1の中間膜22と第2の中間膜24の厚さの合計は、封入されるガラスボール26、26…及び/又はガラスビーズ28、28…の粒径の約1.2倍以上であるのが好ましい。粒径が1.4〜1.9mmの場合には、第1の中間膜22と第2の中間膜24として、厚さ0.4mmの中間膜を3枚重ね合わせたものをそれぞれ使用するのが好ましい。
【0038】
図3(A)は第2の実施の形態の合わせガラス14の平面図、(B)は(A)におけるB−B線に沿う合わせガラス14の断面図である。同図に示す合わせガラス14は、図3(A)の如くガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…が、合わせガラス14の面内の一部の台形状のエリア14Aにのみ封入されて構成されている。このように1枚の合わせガラス14の面内において、ガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…が封入されているエリア14Aとそれ以外のエリア14Bとが形成すれば、視覚的意匠性の高い合わせガラス14を提供できるので好ましい。この合わせガラス14を窓、外壁用建材として使用した場合には、図1の如くガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…が封入されているエリア14Aが視覚的意匠性の高いガラス板として機能し、それ以外のエリア14Bが透視性の高いガラス板として機能するので、1枚の合わせガラス14の面内で各エリア14A、14Bの形状、大きさを適宜設定することにより、全体としてデザイン性の高い窓、外壁面を構成できる。
【0039】
また、この合わせガラス14は、図3(B)に示すように、ガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…が封入されるエリア14Aを除く他のエリア14Bには、第1の中間膜22と第2の中間膜24との間に、ガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…の封入によるガラス板18、20間の隙間を揃えるための樹脂製膜30が介在されている。この樹脂製膜30を第1の中間膜22に載置した後、エリア14Aにガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…が散布される。
【0040】
この樹脂製膜30が無い場合、合わせガラス14の前記加熱、加圧製造時に、前記隙間の違いに起因してガラス板18、20に内部応力が発生し、ガラス板18、20が破損するおそれがあるが、隙間を揃えるための樹脂製膜30を介在させることにより、内部応力の発生を抑制でき、ガラス板18、20の破損を防止することができる。この樹脂製膜30は中間膜22、24と同じ接着機能を有する材料とすることが好ましい。樹脂製膜30によって、隙間調整に加え、視覚的効果を高めることも可能である。
【0041】
なお、図3(B)では、第1の中間膜22および第2の中間膜24として、単一の中間膜を示したが、図2(B)と同様に、複数の中間膜を積層して、第1の中間膜22および第2の中間膜24を構成してもよい。
【0042】
更にまた、ガラス板20は、ガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…が封入されているエリア14Aと他のエリア14Bとがガラス板20Aとガラス板20Bとに2分割されている。
【0043】
このように、合わせガラス14を構成するガラス板18、20のうち1枚のガラス板20(ガラス板18でもよい)をガラス板20Aとガラス板20Bとに2分割することにより、合わせガラス14の加熱、加圧製造時にガラス板18、20には内部応力が発生しないので好ましい。これによって、ガラス板18、20の破損を防止することができる。また、分割された2枚のガラス板20Aとガラス板20Bとの境界部に、例えばポリカーボネート樹脂製の緩衝材32を介在させることが好ましい。これにより、分割された2枚のガラス板20Aとガラス板20Bとの境界部同士が直接接触してガラス板の端面に欠けが発生することが抑制される。
【0044】
緩衝材32は、合わせガラスの製造後にガラス板20A、20Bの表面から突出するのを防止するため、2枚のガラス板20A、20Bの厚さよりも薄いものを使用することが好ましい。この場合、ガラス板20の表面に緩衝材32に沿った凹部が形成されるため、この凹部を塞ぐようにシーリング材33を打設することが好ましい。この合わせガラス14は、緩衝材32と2枚のガラス板20A、20Bとの境界部から水が浸入するのを避けるため、外壁材として使用する場合には、境界部が室内側に面するように配置するのが好ましい。また、建物の躯体開口部にガラス板が内外に二重に配置されるダブルスキン構造の建築物の室内側ガラス板(内部スキン)に使用するのも好ましい。
【0045】
図4は、第3の実施の形態の合わせガラス34の断面図であり、この合わせガラス34は、3枚のガラス板18、20、36の各々の間に中間膜を介在させてなる3層構造の合わせガラスであり、各々の中間膜は第1の中間膜22と第2の中間膜24とから構成され、各々の第1の中間膜22と第2の中間膜24との間にガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…が散布された3層構造の合わせガラスである。
【0046】
この合わせガラス34は、前述の如く3層構造の合わせガラスであるので、風圧力をうける窓、外壁用建材としてより好適な強固な合わせガラス34となる。
【0047】
図5(A)は、第4の実施の形態の合わせガラス38の平面図であり、(B)はその断面図である。同図に示す合わせガラス38は、図3に示した合わせガラス14を3層構造の合わせガラスに適用したものであり、図5(B)の如く、中間層と最外層の2枚のガラス板20、20がそれぞれ、2枚の分割されたガラス板20A,20Bから構成されている。各々のガラス板20A、20Bも緩衝材32によって仕切られるとともに、最外層のガラス板20には、シーリング材33が緩衝材32によって形成される凹部に打設されている。なお、2枚のガラス板20、20を分割構造としたが、これに限定されるものではなく、最外層のガラス板20のみ分割構造としてもよい。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施の形態を図面により詳述してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。例えば、合わせガラス12、14、34、38のうち少なくとも1枚のガラス板18(又はガラス板20、又はガラス板36)の表面をフロスト加工してフロスト感を持たせることが好ましい。これにより、光拡散性や意匠性を付加する効果を合わせガラス12、14、34に持たせることができる。また、ガラス板18(又はガラス板20、又はガラス板36)の表面にフロスト調のフィルムを貼り付けても、光拡散性及び意匠性を合わせガラス12、14、34、38に与えることができる。
【0049】
更に、合わせガラス12、14、34、38のうち少なくとも1枚のガラス板18(又はガラス板20、又はガラス板36)を乳白ガラス等の着色ガラスとすることが好ましい。これにより、奥行き感に加えて色彩感覚を合わせガラス12、14、34、38に与えることができる。
【0050】
更にまた、合わせガラス12、14、34、38の少なくとも1枚のガラス板18(又はガラス板20、又はガラス板36)は、その表面が表面処理されたガラス、熱線反射ガラス、又は熱線吸収ガラスであってもよい。また、合わせガラス12、14、34、38の少なくとも1枚のガラス板18(又はガラス板20、又はガラス板36)は、その表面に熱線反射膜、又は熱線吸収膜がコーティングされていてもよく、また、強化ガラスを用いてもよい。更に、中間膜22、24の接着層に、色付きの中間膜、又はPETフィルムを介在させてもよい。更にまた、ガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…を着色してもよい。これらのガラス板や中間膜、PETフィルム、ガラスボール26、26…及びガラスビーズ28、28…を組み合わせることにより、窓、外壁建材として意匠性の高い合わせガラス12、14、34を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施の形態の合わせガラスによって外壁面が構成された建築物の外観斜視図
【図2】(A)は第1の実施の形態の合わせガラスの平面図、(B)はその断面図
【図3】(A)は第2の実施の形態の合わせガラスの平面図、(B)はその断面図
【図4】第3の実施の形態の合わせガラスの断面図
【図5】(A)は第4の実施の形態の合わせガラスの平面図、(B)はその断面図
【符号の説明】
【0052】
10…建築物、12…第1の実施の形態の合わせガラス、14…第2の実施の形態の合わせガラス、14A…ガラスボール及びガラスビーズが封入されたエリア、14B…ガラスボール及びガラスビーズが封入されていないエリア、16…合わせガラス、18…第1のガラス板、20…第2のガラス板、20A…分割されたガラス板、20B…分割されたガラス板、22…第1の中間膜、24…第2の中間膜、26…ガラスボール、28…ガラスビーズ、30…樹脂製膜、32…緩衝材、34…第3の実施の形態の合わせガラス、36…ガラス板、38…第4の実施の形態の合わせガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚のガラス板の間に中間膜を介在させて構成される合わせガラスにおいて、
前記中間膜を少なくとも第1の中間膜と第2の中間膜とによって構成し、第1の中間膜と第2の中間膜との間に、粒径が0.5〜2.5mmのガラスボール及び/又はガラスビーズを封入して構成されたことを特徴とする合わせガラス。
【請求項2】
前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが、前記合わせガラスの面内の一部のエリアのみに封入されている請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入される前記一部のエリアを除く他のエリアには、前記第1の中間膜と第2の中間膜との間に、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズの封入によるガラス板間の隙間を揃えるための樹脂製膜が介在されている請求項2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記2枚のガラス板のうち1枚のガラス板は、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入されている前記一部のエリアと該一部のエリアを除く他のエリアとが2分割されている請求項2又は3に記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記合わせガラスは、3枚のガラス板の各々の間に中間膜を介在させてなる3層構造の合わせガラスであり、各々の中間膜は少なくとも前記第1の中間膜と前記第2の中間膜とから構成され、各々の第1の中間膜と第2の中間膜との間に、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入されている請求項1〜4のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項6】
少なくとも2枚のガラス板の間に中間膜を介在させて構成される合わせガラスの製造方法において、
前記ガラス板として少なくとも第1のガラス板と第2のガラス板とを備えるとともに、前記中間膜として第1の中間膜と第2の中間膜とを備え、
前記第1のガラス板の上面に前記第1の中間膜を載置し、第1の中間膜上に粒径が0.5〜2.5mmのガラスボール及び/又はガラスビーズを所定量散布し、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズ上に前記第2の中間膜を載置し、第2の中間膜上に前記第2のガラス板を載置してガラス積層体を構成し、該ガラス積層体を所定の温度で加熱するとともに所定の圧力で加圧することによって合わせガラスに製造することを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項7】
前記ガラスボール及び/又はガラスビーズを、前記合わせガラスの面内の一部のエリアのみ散布する請求項6に記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項8】
前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入される前記一部のエリアを除く他のエリアの、前記第1の中間膜と第2の中間膜との間に、ガラスボール及び/又はガラスビーズの封入によるガラス板間の隙間を揃えるための樹脂製膜を介在させて、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズを散布する請求項7に記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項9】
前記2枚のガラス板のうち1枚のガラス板を、前記ガラスボール及び/又はガラスビーズが封入されている前記一部のエリアと該一部のエリアを除く他のエリアとに2分割している請求項7又は8に記載の合わせガラスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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