説明

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス

【課題】遮熱性に優れており、かつ発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜を提供する。
【解決手段】1層の構造の場合には、本発明に係る合わせガラス用中間膜21Aは、熱可塑性樹脂と可塑剤と赤外線吸収剤とを含有する第1の層21を備える。2層以上の積層構造の場合には、本発明に係る合わせガラス用中間膜1は、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第1,第2の層2,3を備えており、第1の層2又は第2の層3が、赤外線吸収剤を含有する。第1の層2,21中の熱可塑性樹脂に占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分の割合は7.4%以上であるか、又は、第1の層2,21中の熱可塑性樹脂に占める、ポリスチレン換算分子量100万以上の高分子量成分の割合は9%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車及び建築物などの合わせガラスに用いられる合わせガラス用中間膜に関し、より詳細には、熱可塑性樹脂と可塑剤と赤外線吸収剤とを含む合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
上記合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、ポリビニルアセタール樹脂100重量部と、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキサノエートとトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートとの混合物20〜60重量部とを含有する中間膜が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、アセタール化度が60〜85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001〜1.0重量部と、30重量部以上の可塑剤とを含む遮音層が開示されている。この遮音層は、単層で中間膜として用いられ得る。
【0005】
さらに、下記の特許文献2には、上記遮音層と他の層とが積層された多層中間膜も記載されている。遮音層に積層される他の層は、アセタール化度が60〜85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001〜1.0重量部と、30重量部以下の可塑剤とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−097745号公報
【特許文献2】特開2007−070200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の中間膜を用いて合わせガラスを構成した場合には、合わせガラスの2000Hz付近の周波数領域における遮音性が充分ではなく、従ってコインシデンス効果による遮音性の低下が避けられないことがある。特に、この合わせガラスの20℃付近での遮音性が充分ではないことがある。
【0008】
ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射したとき、ガラス板の剛性と慣性とによって、ガラス面上を横波が伝播して横波と入射音とが共鳴し、その結果、音の透過が起こる現象をいう。
【0009】
上記特許文献2に記載の遮音層を単層で中間膜として用いて合わせガラスを構成した場合でも、合わせガラスの20℃付近での遮音性が十分ではないことがある。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の遮音層と他の層とが積層された多層中間膜を用いて合わせガラスを構成した場合には、合わせガラスの20℃付近での遮音性をある程度高めることができる。しかし、多層中間膜が上記遮音層を有するため、該多層中間膜を用いた合わせガラスに発泡が生じることがある。
【0011】
さらに、近年、合わせガラスの遮音性を高めるために、中間膜中の可塑剤の含有量を多くすることが検討されている。中間膜中の可塑剤の含有量を多くすると、合わせガラスの遮音性を改善できる。しかしながら、可塑剤の含有量を多くすると、合わせガラスに発泡が生じることがある。
【0012】
さらに、従来の合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを構成した場合には、合わせガラスの遮熱性が低いという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、遮熱性に優れており、かつ発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【0014】
本発明の限定的な目的は、遮音性にも優れた合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の広い局面によれば、1層の構造又は2層以上の積層構造を有する合わせガラス用中間膜であって、1層の構造を有する合わせガラス用中間膜である場合には、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第1の層を備え、該第1の層が赤外線吸収剤を含有し、2層以上の積層構造を有する合わせガラス用中間膜である場合には、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、該第1の層の一方の面に積層されており、かつ熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、該第1の層が赤外線吸収剤を含有するか、又は該第2の層が赤外線吸収剤を含有し、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂が絶対分子量100万以上の高分子量成分を含み、かつ上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分の割合が7.4%以上であるか、又は、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂がポリスチレン換算分子量100万以上の高分子量成分を含み、かつ上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分の割合が9%以上である、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0016】
上記赤外線吸収剤は遮熱粒子を含むことが好ましい。上記赤外線吸収剤は金属酸化物粒子を含むことが好ましい。
【0017】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂が絶対分子量100万以上の高分子量成分を含み、かつ上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分の割合が7.4%以上である。
【0018】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂がポリスチレン換算分子量100万以上の高分子量成分を含み、かつ上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分の割合が9%以上である。
【0019】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂である。
【0020】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は31モル%以下である。
【0021】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに他の特定の局面では、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が40〜80重量部の範囲内である。
【0022】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、該合わせガラス用中間膜は、2層以上の積層構造を有し、上記第1の層と上記第2の層とを備える。上記第2の層が上記赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0023】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに別の特定の局面では、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量は、上記第2の層中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量よりも多い。
【0024】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、3層以上の積層構造を有する合わせガラス用中間膜である場合には、上記第1の層と、上記第2の層と、上記第1の層の他方の面に積層されており、かつ熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第3の層とがさらに備えられる。
【0025】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、該合わせガラス用中間膜は、3層以上の積層構造を有し、上記第1の層と上記第2の層と上記第3の層とを備える。上記第3の層は、赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0026】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに他の特定の局面では、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量は、上記第3の層中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量よりも多い。
【0027】
なお、例えば、上記第1の層と上記第2の層との間で、可塑剤が移行することがある。また、上記第1の層と上記第3の層との間で、可塑剤が移行することがある。
【0028】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、該ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、かつアセタール化度が70モル%以上であるか、又は上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、該ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%を超える。上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、該ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、かつアセタール化度が70モル%以上であることが好ましい。さらに、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、該ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%を超えることも好ましい。
【0029】
本発明に係る合わせガラスは、第1,第2の合わせガラス構成部材と、該第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明に従って構成された合わせガラス用中間膜である。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第1の層を備える1層の構造を有するか、又は熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備える2層以上の積層構造を有し、1層の構造の場合には上記第1の層が赤外線吸収剤を含有し、2層以上の積層構造の場合には上記第1の層又は上記第2の層が赤外線吸収剤を含有するので、中間膜を用いた合わせガラスの遮熱性を高めることができる。
【0031】
さらに、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記第1の層を備えるか、又は上記第1,第2の層を備えており、更に上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂が絶対分子量100万以上の高分子量成分を含み、かつ上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分の割合が7.4%以上であるか、又は上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂がポリスチレン換算分子量100万以上の高分子量成分を含み、かつ上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分の割合が9%以上であるので、中間膜を用いた合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0034】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、1層の構造又は2層以上の積層構造を有する。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、1層の構造を有する場合には、熱可塑性樹脂と可塑剤と赤外線吸収剤とを含有する第1の層を備える。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、2層以上の積層構造を有する場合には、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、該第1の層の一方の面(第1の表面)に積層されており、かつ熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備える。本発明に係る合わせガラス用中間膜が2層以上の積層構造を有する場合には、上記第1の層が赤外線吸収剤を含有するか、又は上記第2の層が赤外線吸収剤を含有する。本発明に係る合わせガラス用中間膜が2層以上の積層構造を有する場合には、上記第1の層と上記第2の層との双方が赤外線吸収剤を含有していてもよい。
【0035】
また、本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂は、絶対分子量100万以上の高分子量成分(以下、高分子量成分Xと記載することがある)を含むか、又は上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂は、ポリスチレン換算分子量(以下、分子量yと記載することがある)100万以上の高分子量成分(以下、高分子量成分Yと記載することがある)を含む。該高分子量成分X,Yは、熱可塑性樹脂である。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分Xの割合が7.4%以上であるか、又は上記第1の層中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分Yの割合が9%以上である。
【0036】
図1に、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図で示す。
【0037】
図1に示す中間膜1は、2層以上の積層構造を有し、より詳細には3層以上の積層構造を有し、多層の中間膜である。具体的には、中間膜1は、3層の積層構造を有する。中間膜1は、第1の層2と、第1の層2の一方の面2a(第1の面)に積層された第2の層3と、第1の層2の他方の面2b(第2の面)に積層された第3の層4とを備える。中間膜1は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。
【0038】
第1の実施形態では、第1の層2は中間層であり、かつ第2,第3の層3,4は表面層である。このように、第2,第3の層3,4の双方を用いることが好ましい。ただし、第3の層4を用いずに、第2の層3のみを用いてもよい。第2,第3の層3,4の外側の表面3a,4aに、他の合わせガラス用中間膜がさらに積層されていてもよい。
【0039】
第1〜第3の層2〜4はそれぞれ、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する。第1の層2中の上記熱可塑性樹脂は、絶対分子量100万以上の高分子量成分Xを含み、かつ第1の層2中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分Xの割合は7.4%以上である。第1の層2中の上記熱可塑性樹脂は、分子量yが100万以上である高分子量成分Yを含み、かつ第1の層2中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分Yの割合が9%以上であってもよい。
【0040】
なお、第1の層2中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分Xの割合は、上記絶対分子量を測定する際に得られる熱可塑性樹脂成分のピーク面積に占める、上記高分子量成分Xに相当する領域の面積の割合を百分率(%)で表した値で定義される。また、第1の層2中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分Yの割合は、上記ポリスチレン換算分子量を測定する際に得られる熱可塑性樹脂成分のピーク面積に占める、上記高分子量成分Yに相当する領域の面積の割合を百分率(%)で表した値で定義される。
【0041】
第2,第3の層3,4の組成はそれぞれ、第1の層2の組成と異なることが好ましい。第2,第3の層3,4中の熱可塑性樹脂は、絶対分子量100万以上の高分子量成分Xを含み、かつ第2,第3の層3,4中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分Xの割合が7.4%以上であってもよく、分子量yが100万以上である高分子量成分Yを含み、かつ第2,第3の層3,4中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分Yの割合が9%以上であってもよい。
【0042】
また、中間膜1では、第1の層2が赤外線吸収剤を含有するか、又は第2の層3が赤外線吸収剤を含有する。第1の層2のみが赤外線吸収剤を含有していてもよく、第2の層3のみが赤外線吸収剤を含有していてもよく、第1の層2と第2の層3との双方が赤外線吸収剤を含有していてもよい。第3の層4は赤外線吸収剤を含有していてもよく、含有していなくてもよい。中間層である第1の層2は比較的薄かったり、厚みばらつきが生じやすかったりする。表面層である第2,第3の層3,4は、第1の層2に比べて、比較的厚かったり、厚みばらつきが生じ難かったりする。このため、第2,第3の層3,4に赤外線吸収剤を用いることで、遮熱性を均一にかつ良好にすることができる。また、第1の層2が第2の層3よりも薄かったり、第1の層2が第3の層4よりも薄かったりする場合には、第2,第3の層3,4に赤外線吸収剤を用いることで、遮熱性の均一性が高くなる。
【0043】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性を効果的に高める観点からは、第2の層3が上記赤外線吸収剤を含有することが好ましく、更に第3の層4が赤外線吸収剤を含有することが好ましい。この場合に、第1の層2は、赤外線吸収剤を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
【0044】
図2に、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図で示す。
【0045】
図2に示す合中間膜21Aは、第1の層21を備える。中間膜21Aは、第1の層21のみの1層の構造を有し、単層の中間膜である。中間膜21Aは、第1の層21である。中間膜21Aは、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜21Aは、合わせガラス用中間膜である。
【0046】
第1の層21は、熱可塑性樹脂と可塑剤と赤外線吸収剤とを含有する。第1の層21中の上記熱可塑性樹脂は、絶対分子量100万以上の高分子量成分Xを含み、かつ第1の層21中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分Xの割合は7.4%以上である。第1の層21中の上記熱可塑性樹脂は、分子量yが100万以上である高分子量成分Yを含み、かつ第1の層21中の上記熱可塑性樹脂に占める、上記高分子量成分Yの割合が9%以上であってもよい。
【0047】
単層の中間膜21Aよりも、多層の中間膜1の方が好ましい。第1の層2の両面に第2,第3の層3,4が積層されている場合には、第1の層2の接着力が低くても、第2,第3の層3,4の接着力を高くすることにより、多層の中間膜1と合わせガラス構成部材との接着力を高めることができる。このため、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。
【0048】
さらに、多層の中間膜1の場合には、単層の中間膜21Aの場合と比べて、合わせガラスに発泡が生じやすい傾向がある。特に、第1の層2中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が、第2,第3の層3,4中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量よりも多いと、発泡がより一層生じやすい傾向がある。さらに、発泡が一旦生じると、発生した発泡が核となり、発泡が成長する傾向がある。しかし、第1の実施形態では、第1の層2中の上記熱可塑性樹脂が絶対分子量100万以上の高分子量成分Xを上記特定の割合で含むので、合わせガラスに発泡が生じるのを抑制できる。第1の層2中の上記熱可塑性樹脂の分子量yが100万以上である高分子量成分Yを上記特定の割合で含んでいても、合わせガラスに発泡が生じるのを抑制できる。
【0049】
合わせガラスの遮音性をより一層高め、かつ発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制する観点からは、第1の層2,21中の上記熱可塑性樹脂に占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分Xの割合の好ましい下限は8%、より好ましい下限は8.5%、更に好ましい下限は9%、特に好ましい下限は9.5%、最も好ましい下限は10%である。合わせガラスの遮音性をより一層高め、かつ発泡の発生及び発泡の成長を更に一層抑制できることから、高分子量成分Xの割合は、好ましくは11%以上、より好ましくは12%以上、更に好ましくは14%以上、特に好ましくは16%以上である。上記高分子量成分Xの割合の上限は特に限定されないが、好ましい上限は40%、より好ましい上限は30%、更に好ましい上限は25%である。
【0050】
第1の層2,21中の上記熱可塑性樹脂が、分子量yが100万以上である高分子量成分Yを含む場合には、高分子量成分Yを含む第1の層2,21中の上記熱可塑性樹脂に占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Yの割合の好ましい下限は10%、より好ましい下限は11%、更に好ましい下限は11.5%、特に好ましい下限は12%である。合わせガラスの遮音性をより一層高め、かつ発泡の発生及び発泡の成長を更に一層抑制できることから、高分子量成分Yの割合は、好ましくは12.5%以上、より好ましくは13.5%以上、更に好ましくは14%以上、特に好ましくは15%以上、最も好ましくは18%以上である。上記高分子量成分Yの割合の上限は特に限定されないが、好ましい上限は40%、より好ましい上限は30%、更に好ましい上限は25%である。高分子量成分Yの割合が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高め、かつ発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制することができる。
【0051】
合わせガラスの耐貫通性をより一層高める観点からは、多層の中間膜1及び単層の中間膜21Aの厚みの好ましい下限は0.05mm、より好ましい下限は0.25mm、好ましい上限は3mm、より好ましい上限は1.5mmである。多層の中間膜1及び単層の中間膜21Aの厚みが上記好ましい下限及び上記好ましい上限をそれぞれ満たすと、合わせガラスの耐貫通性及び透明性をより一層高めることができる。
【0052】
(熱可塑性樹脂)
上記第1〜第3の層に含まれている上記熱可塑性樹脂の種類は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
【0054】
上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量の好ましい下限は100,000、より好ましい下限は300,000、好ましい上限は10,000,000、より好ましい上限は5,000,000である。上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が上記好ましい下限以下であると、中間膜の強度が低下することがある。上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が上記好ましい上限を超えると、得られる中間膜の強度が強くなりすぎることがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0055】
上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス構成部材に対する中間膜の接着力をより一層高くすることができる。上記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂である場合には、上記高分子量成分X,Yはポリビニルアセタール樹脂である。
【0056】
さらに、上記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂である場合には、中間膜を用いた合わせガラスに発泡が特に生じやすい傾向がある。しかし、ポリビニルアセタール樹脂が、絶対分子量100万以上の高分子量成分X又は分子量yが100万以上である高分子量成分Yを上記特定の割合で含むので、合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を充分に抑制できる。
【0057】
中間層である上記第1の層及び単層の中間膜である上記第1の層がポリビニルアセタール樹脂を含む場合には、上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、31モル%以下であることが好ましい。この場合には、合わせガラスの遮音性をより一層高くすることができる。なお、ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が低いと、ポリビニルアセタール樹脂の親水性が低くなる。このため、可塑剤の含有量を多くすることができ、この結果、合わせガラスの遮音性をより一層高くすることができる。
【0058】
上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の好ましい下限は13モル%、より好ましい下限は18モル%、更に好ましい下限は20モル%、特に好ましい下限は21.5モル%、より好ましい上限は30モル%、更に好ましい上限は28モル%、特に好ましい上限は26モル%である。上記水酸基の含有率が上記好ましい下限を満たすと、上記第1の層の接着力をより一層高くすることができる。上記水酸基の含有率が上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。さらに、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱性をより一層高めることができる。
【0059】
上記第2,第3の層がポリビニルアセタール樹脂を含む場合には、上記第2,第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の好ましい下限は26モル%、より好ましい下限は27モル%、更に好ましい下限は28モル%、好ましい上限は35モル%、より好ましい上限は33モル%、更に好ましい上限は32モル%、特に好ましい上限は31.5モル%である。上記水酸基の含有率が上記好ましい下限を満たすと、上記第2,第3の層の接着力をより一層高くすることができる。上記水酸基の含有率が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱性をより一層高めることができる。
【0060】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、上記第2,第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の水酸基の各含有率よりも低いことが好ましい。合わせガラスの遮音性をさらに一層高める観点からは、上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、上記第2,第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の水酸基の各含有率よりも1モル%以上低いことが好ましく、3モル%以上低いことがより好ましく、5モル%以上低いことが更に好ましく、7モル%以上低いことが特に好ましい。
【0061】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0062】
上記第1の層がポリビニルアセタール樹脂を含む場合には、上記第1の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)の好ましい下限は0.1モル%、より好ましい下限は0.4モル%、更に好ましい下限は0.8モル%、好ましい上限は30モル%、より好ましい上限は25モル%、更に好ましい上限は20モル%、特に好ましい上限は15モル%である。上記第2,第3の層がポリビニルアセタール樹脂を含む場合には、上記第2,第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度の好ましい下限は0.1モル%、より好ましい下限は0.4モル%、好ましい上限は20モル%、より好ましい上限は5モル%、更に好ましい上限は2モル%、特に好ましい上限は1.5モル%である。上記アセチル化度が上記好ましい下限を満たすと、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性がより一層高くなり、かつ中間膜のガラス転移温度を十分に低下させることができる。上記アセチル化度が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の耐湿性をより一層高めることができる。
【0063】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記第2,第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも高いことが好ましい。合わせガラスの遮音性をさらに一層高める観点からは、上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記第2,第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも0.1モル%以上高いことが好ましく、1モル%以上高いことがより好ましく、5モル%以上高いことが更に好ましく、10モル%以上高いことが特に好ましい。
【0064】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、上記第2,第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度よりも高いことが好ましい。
【0065】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0066】
絶対分子量100万以上の高分子量成分Xを上記特定の割合で含む上記第1の層がポリビニルアセタール樹脂を含む場合には、上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は50モル%、より好ましい下限は53モル%、更に好ましい下限は60モル%、特に好ましい下限は63モル%、好ましい上限は85モル%、より好ましい上限は80モル%、更に好ましい上限は78モル%である。上記第2,第3の層がポリビニルアセタール樹脂を含む場合には、上記第2,第3の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は55モル%、より好ましい下限は60モル%、更に好ましい下限は65モル%、特に好ましい下限は67モル%、好ましい上限は75モル%、より好ましい上限は72モル%、更に好ましい上限は71モル%である。上記アセタール化度が上記好ましい下限を満たすと、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性がより一層高くなり、かつ中間膜のガラス転移温度を十分に低下させることができる。上記アセタール化度が上記好ましい上限を満たすと、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0067】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0068】
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、アセチル基量とビニルアルコール量(水酸基の含有率)とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、ついで、100モル%からアセチル基量とビニルアルコール量とを差し引くことにより算出され得る。
【0069】
なお、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0070】
上記第1の層がポリビニルアセタール樹脂を含む場合、中間膜の遮音性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂は、アセチル化度aが8モル%以下であり、かつアセタール化度aが70モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂Aであるか、又はアセチル化度bが8モル%を超えるポリビニルアセタール樹脂Bであることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂は、アセチル化度aが8モル%以下であり、かつアセタール化度aが70モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂Aであってもよく、アセチル化度bが8モル%を超えるポリビニルアセタール樹脂Bであってもよい。
【0071】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセチル化度aの上限は8モル%、好ましい上限は7.5モル%、より好ましい上限は7モル%、更に好ましい上限は6.5モル%、特に好ましい上限は5モル%、好ましい下限は0.1モル%、より好ましい下限は0.5モル%、更に好ましい下限は0.8モル%、特に好ましい下限は1モル%である。上記アセチル化度aが上記上限以下及び上記下限以上であると、可塑剤の移行を容易に制御でき、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0072】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセタール化度aの下限は70モル%、好ましい下限は70.5モル%、より好ましい下限は71モル%、更に好ましい下限は71.5モル%、特に好ましい下限は72モル%、好ましい上限は85モル%、より好ましい上限は83モル%、更に好ましい上限は81モル%、特に好ましい上限は79モル%である。上記アセタール化度aが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセタール化度aが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Aを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0073】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aの水酸基の含有率aの好ましい下限は18モル%、より好ましい下限は19モル%、更に好ましい下限は20モル%、特に好ましい下限は21モル%、好ましい上限は31モル%、より好ましい上限は30モル%、更に好ましい上限は29モル%、特に好ましい上限は28モル%である。上記水酸基の含有率aが上記好ましい下限を満たすと、中間膜の接着力をより一層高くすることができる。上記水酸基の含有率aが上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0074】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aはポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0075】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル化度bは、8モル%を超え、好ましい下限は9モル%、より好ましい下限は9.5モル%、更に好ましい下限は10モル%、特に好ましい下限は10.5モル%、好ましい上限は30モル%、より好ましい上限は28モル%、更に好ましい上限は26モル%、特に好ましい上限は24モル%である。上記アセチル化度bが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセチル化度bが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0076】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセタール化度bの好ましい下限は50モル%、より好ましい下限は53モル%、更に好ましい下限は55モル%、特に好ましい下限は60モル%、好ましい上限は80モル%、より好ましい上限は78モル%、更に好ましい上限は76モル%、特に好ましい上限は74モル%である。上記アセタール化度bが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセタール化度bが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0077】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bの水酸基の含有率bの好ましい下限は18モル%、より好ましい下限は19モル%、更に好ましい下限は20モル%、特に好ましい下限は21モル%、好ましい上限は31モル%、より好ましい上限は30モル%、更に好ましい上限は29モル%、特に好ましい上限は28モル%である。上記水酸基の含有率bが上記好ましい下限を満たすと、中間膜の接着力をより一層高くすることができる。上記水酸基の含有率bが上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0078】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bはポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0079】
上記ポリビニルアセタール樹脂A及び上記ポリビニルアセタール樹脂Bは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することで得られる。上記アルデヒドは炭素数1〜10のアルデヒドであることが好ましく、炭素数4又は5のアルデヒドであることがより好ましい。
【0080】
上記ポリビニルアセタール樹脂A及び上記ポリビニルアセタール樹脂Bは、重合度が1600〜3000のポリビニルアルコールXをアルデヒドでアセタール化することで得られるポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を充分に抑制できることから、上記ポリビニルアルコールXの重合度は、1700以上であることが好ましく、1700を超えることが好ましく、1800以上であることが好ましく、2000以上であることが好ましく、2100以上であることが好ましく、2200以上であることが好ましく、2900以下であることが好ましく、2800以下であることが好ましい。上記重合度は、平均重合度を示す。なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0081】
(絶対分子量100万以上の高分子量成分X又は分子量yが100万以上である高分子量成分Yを含むポリビニルアセタール樹脂の製造方法)
絶対分子量100万以上の高分子量成分X又は分子量yが100万以上である高分子量成分Yを上記下限以上の割合で含む上記熱可塑性樹脂の一例として、絶対分子量100万以上の高分子量成分X又は分子量yが100万以上である高分子量成分Yを含むポリビニルアセタール樹脂の具体的な製造方法を以下説明する。
【0082】
まず、ポリビニルアルコールを用意する。該ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%の範囲内であり、75〜99.8モル%の範囲内であることが好ましく、80〜99.8モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0083】
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、より好ましい下限は500、更に好ましい下限は1,000、特に好ましい下限は1,500、好ましい上限は3,000、より好ましい上限は2,900、更に好ましい上限は2,800、特に好ましい上限は2,700である。上記重合度が低すぎると、合わせガラスの耐貫通性が低下する傾向がある。上記重合度が高すぎると、中間膜の成形が困難となることがある。
【0084】
次に、上記ポリビニルアルコールとアルデヒドとを触媒を用いて反応させ、ポリビニルアルコールをアセタール化する。このとき、上記ポリビニルアルコールを含む溶液を用いてもよい。該ポリビニルアルコールを含む溶液に用いられる溶媒としては、水等が挙げられる。
【0085】
上記第1の層に含まれているポリビニルアセタール樹脂の製造方法は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを触媒を用いて反応させ、ポリビニルアルコールをアセタール化することにより、ポリビニルアセタール樹脂を得る製造方法であることが好ましい。
【0086】
上記第1の層の製造方法は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを触媒を用いて反応させ、ポリビニルアルコールをアセタール化することにより、ポリビニルアセタール樹脂を得る工程と、得られたポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを混合した混合物を用いて、上記第1の層を得る工程とを備えることが好ましい。この第1の層を得る工程において、又は第1の層を得た後に、該第1の層に、第2の層を積層することにより、更に必要に応じて第3の層を積層することにより、多層の中間膜を得ることができる。また、第1の層及び第2の層を共押出することにより多層の中間膜を製造してもよく、第1の層、第2の層及び第3の層を共押出することにより多層の中間膜を製造してもよい。
【0087】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
絶対分子量100万以上又は分子量yが100万以上の高分子量成分X,Yを上記特定の割合で含むポリビニルアセタール樹脂を容易に得る観点からは、例えば、アルデヒドによるアセタール化反応の前又は途中で、隣接するポリビニルアルコールの主鎖を架橋させるために、ジアルデヒド等の架橋剤を添加する方法や、過剰のアルデヒドを投入することにより、分子間のアセタール化反応を進行させる方法や、重合度が高いポリビニルアルコールを添加する方法等が挙げられる。また、これらの方法は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0089】
上記触媒は、酸触媒であることが好ましい。該酸触媒としては、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸及びパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0090】
上記ポリスチレン換算分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算での分子量を示す。上記熱可塑性樹脂に占める、上記分子量yが100万以上である高分子量成分Yの割合(%)は、上記熱可塑性樹脂のGPCによるポリスチレン換算分子量の測定時に、RI検出器で検出されるピーク面積のうち、分子量yが100万以上の領域に相当する面積の割合から算出される。なお、ピーク面積とは、測定の対象となる成分のピークとベースラインとの間の面積を意味する。
【0091】
ポリスチレン換算分子量は、例えば、以下のようにして測定される。
【0092】
ポリスチレン換算分子量を測定するために、分子量既知のポリスチレン標準試料のGPC測定を行う。ポリスチレン標準試料(昭和電工社製「Shodex Standard SM−105」、「Shodex Standard SH−75」)としては、重量平均分子量580、1,260、2,960、5,000、10,100、21,000、28,500、76,600、196,000、630,000、1,130,000、2,190,000、3,150,000、3,900,000の14試料を用いる。それぞれの標準試料ピークのピークトップが示す溶出時間に対して重量平均分子量をプロットし得られる近似直線を検量線として使用する。例えば、表面層と中間層と表面層とがこの順に積層された多層の中間膜における中間層中の熱可塑性樹脂に占める、上記分子量yが100万以上である高分子量成分Yの割合(%)を測定する場合、恒温恒湿室(湿度30%(±3%)、温度23℃)に1ヶ月放置した多層の中間膜から表面層と中間層とを剥離する。剥離された中間層をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、0.1重量%の溶液を調製する。得られた溶液をGPC装置により分析し、中間層中の熱可塑性樹脂のピーク面積を測定する。次いで、中間層中の熱可塑性樹脂の溶出時間と検量線から、中間層中の熱可塑性樹脂のポリスチレン換算分子量が100万以上の領域に相当する面積を算出する。中間層中の熱可塑性樹脂のポリスチレン換算分子量が100万以上の領域に相当する面積を、中間層中の熱可塑性樹脂のピーク面積で除算した値を百分率(%)で表すことにより、上記熱可塑性樹脂に占める、上記分子量yが100万以上である高分子量成分Yの割合(%)を算出できる。例えば、Gel Permeation Chromatography(GPC)装置(日立ハイテク社製「RI:L2490、オートサンプラー:L−2200、ポンプ:L−2130、カラムオーブン:L−2350、カラム:GL−A120−SとGL−A100MX−Sの直列」)を用いて、ポリスチレン換算分子量を測定することができる。
【0093】
(可塑剤)
上記第1〜第3の層に含まれている上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0094】
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0095】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0096】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0097】
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0098】
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0099】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。このジエステル可塑剤の使用により、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0100】
【化1】

【0101】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数6〜10の有機基であることが好ましい。
【0102】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも一種を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0103】
合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量は特に限定されない。
【0104】
上記熱可塑性樹脂が絶対分子量100万以上の高分子量成分Xを上記特定の割合で含む上記第1の層の場合は、該第1の層中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量の好ましい下限は40重量部、より好ましい下限は50重量部、更に好ましい下限は55重量部、特に好ましい下限は60重量部、好ましい上限は80重量部、より好ましい上限は78重量部、更に好ましい上限は75重量部、特に好ましい上限は72重量部である。上記熱可塑性樹脂の分子量yが100万以上である高分子量成分Yを上記特定の割合で含む上記第1の層の場合にも、該第1の層中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量の好ましい下限は40重量部、より好ましい下限は50重量部、更に好ましい下限は55重量部、特に好ましい下限は60重量部、好ましい上限は80重量部、より好ましい上限は78重量部、更に好ましい上限は75重量部、特に好ましい上限は72重量部である。上記可塑剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。上記可塑剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の透明性をより一層高めることができる。
【0105】
上記第2,第3の層の場合には、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量の好ましい下限は25重量部、より好ましい下限は30重量部、更に好ましい下限は35重量部、好ましい上限は50重量部、より好ましい上限は45重量部、更に好ましい上限は43重量部、特に好ましい上限は38重量部である。上記可塑剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、中間膜の接着力が高くなり、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。上記可塑剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の透明性をより一層高めることができる。
【0106】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層中の熱可塑性樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量は、上記第2,第3の層中の熱可塑性樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量よりも多いことが好ましい。合わせガラスの遮音性をさらに一層高める観点からは、上記第1の層中の熱可塑性樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量は、上記第2,第3の層中の熱可塑性樹脂100重量部に対する可塑剤の含有量よりも5重量部以上多いことが好ましく、10重量部以上多いことがより好ましく、15重量部以上多いことが更に好ましく、20重量部以上多いことが特に好ましい。
【0107】
(赤外線吸収剤)
1層の構造の場合には第1の層が上記赤外線吸収剤を含有し、2層以上の積層構造の場合には上記第1の層又は上記第2の層が上記赤外線吸収剤を含有することにより、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスの遮熱性を効果的に高めることができる。
【0108】
上記赤外線吸収剤としては、遮熱粒子が挙げられ、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分(以下、成分Xと記載することがある)も挙げられる。上記赤外線吸収剤は、遮熱粒子又は上記成分Xであることが好ましい。
【0109】
ところで、近年、例えば、米国において、カリフォルニア大気資源委員会(CARB(California Air Resources Board))は、温室効果ガスを削減するために、自動車から排出される二酸化炭素の量を減らすことを提案していた。自動車から排出される二酸化炭素の量を減らすために、上記CARBは、合わせガラスを透過して自動車内に流入する熱エネルギーを規制して、エアコンで消費される燃料を低減し、自動車の燃費を改善することを検討していた。具体的には、上記CARBは、クールカー規制(Cool Cars Standards)の導入を予定していた。
【0110】
上記クールカー規制では、具体的には、2012年に、自動車に用いられる合わせガラスのTts(Total Solar Transmittance)が50%以下であることが要求される予定であった。2016年には、上記合わせガラスの上記Ttsが40%以下であることが要求される予定であった。上記Ttsは、熱線の遮蔽性の指標である。
【0111】
なお、一般的に熱反タイプと呼ばれる、金属薄膜を蒸着したガラス又は熱線反射PETを用いた熱線反射合わせガラスは、赤外線だけでなく通信波長領域の通信波を反射する。熱線反射合わせガラスをウインドシールドに用いる場合、多くのセンサー類に対応するため、熱線反射部分をくり抜く必要がある。この結果、Ttsが50%である熱線反射合わせガラスを用いたウインドシールド全面の平均のTtsは約53%となる。従って、通信波を透過し、赤外線を吸収するタイプの合わせガラスでは、Ttsが53%まで許容される見通しであった。
【0112】
2010年9月の時点では、上記クールカー規制の導入は見送られたものの、上記Ttsが低い合わせガラスが求められる傾向にあることに変わりはない。
【0113】
このように、近年、合わせガラスの遮熱性を高める要求がかなり高まっている。また、上記赤外線吸収剤を含む中間膜を用いた合わせガラスには、高い遮熱性と高い可視光線透過率(Visible Transmittance)とを両立することが求められる。すなわち、合わせガラスでは、上記可視光線透過率を高く維持したままで、遮熱性を高くする必要がある。
【0114】
上記第1〜第3の層のうち上記赤外線吸収剤を含む層は、上記赤外線吸収剤として、上記遮熱粒子と上記成分Xとの双方を含有することが好ましい。この場合には、合わせガラスの遮熱性と可視光線透過率とを効果的に高めることができる。
【0115】
本発明者らは、遮熱粒子と特定の上記成分Xとを含む層の使用により、合わせガラスの遮熱性と可視光線透過率との双方を高くすることができることを見出した。
【0116】
上記第1〜第3の層のうちの上記熱可塑性樹脂と上記赤外線吸収剤とを含む層において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記赤外線吸収剤の含有量の好ましい下限は0.01重量部、より好ましい下限は0.1重量部、より一層好ましい下限は0.14重量部、更に好ましい下限は0.2重量部、更に一層好ましい下限は0.55重量部、特に好ましい下限は0.6重量部、好ましい上限は3重量部、より好ましい上限は2重量部、より一層好ましい上限は1.8重量部、更に好ましい上限は1.65重量部である。上記赤外線吸収剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、遮熱性をより一層高くすることができる。上記赤外線吸収剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。
【0117】
上記熱可塑性樹脂と上記赤外線吸収剤とを含む層中上記遮熱粒子の含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂と上記赤外線吸収剤とを含む層100重量%中、赤外線吸収剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3.0重量%以下である。上記熱可塑性樹脂と上記赤外線吸収剤とを含む層中の赤外線吸収剤の含有量が上記好ましい範囲内であると、遮熱性を充分に高めることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。
【0118】
上記熱可塑性樹脂と上記遮熱粒子とを含む層において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記遮熱粒子の含有量を含有量Aとし、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記成分Xの含有量を含有量Bとしたときに、上記含有量Aが0.1〜3重量部の範囲内であり、かつ、上記含有量Aの上記含有量Bに対する比(上記含有量A/上記含有量B)が3〜2000の範囲内であることが好ましい。この場合には、遮熱性が充分に高く、かつ上記可視光線透過率が充分に高い合わせガラスを得ることができる。但し、上記含有量Aは0.01重量部以上であっても、遮熱性及び可視光線透過率は高くなる。
【0119】
遮熱粒子:
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記赤外線吸収剤は、遮熱粒子を含むことが好ましく、金属酸化物粒子を含むことがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。遮熱粒子は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0120】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質にいったん吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収することができる粒子を意味する。
【0121】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。なかでも、熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0122】
上記酸化タングステン粒子は、下記式(X1)又は下記式(X2)で一般に表される。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、下記式(X1)又は下記式(X2)で表される酸化タングステン粒子が好適に用いられる。
【0123】
WyOz ・・・式(X1)
上記式(X1)において、Wはタングステン、Oは酸素を表し、y及びzは2.0<z/y<3.0を満たす。
【0124】
MxWyOz ・・・式(X2)
上記式(X2)において、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta及びReからなる群から選択される少なくとも1種の元素、Wはタングステン、Oは酸素を表し、x、y及びzは、0.001≦x/y≦1、及び2.0<z/y≦3.0を満たす。
【0125】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0126】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WOで表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0127】
上記遮熱粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、より好ましい下限は0.02μm、好ましい上限は0.1μm、より好ましい上限は0.05μmである。平均粒子径が上記好ましい下限を満たすと、熱線の遮蔽性を充分に高めることができる。平均粒子径が上記好ましい上限を満たすと、遮熱粒子の分散性を高めることができる。
【0128】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA−EX150」)等を用いて測定できる。
【0129】
上記第1〜第3の層のうちの上記熱可塑性樹脂と上記遮熱粒子とを含む層において、上記遮熱粒子の含有量を示す上記含有量Aは0.1〜3重量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量Aが上記範囲内である場合には、遮熱性を充分に高くすることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。また、上記含有量Aが3重量部以下であると、得られる合わせガラスのヘーズ値がより一層低くなる。上記含有量Aの好ましい下限は0.14重量部、より好ましい下限は0.2重量部、更に好ましい下限は0.55重量部、特に好ましい下限は0.6重量部、好ましい上限は2重量部、より好ましい上限は1.8重量部、更に好ましい上限は1.65重量部である。上記含有量Aが上記好ましい下限を満たすと、遮熱性をより一層高くすることができる。上記含有量Aが上記好ましい上限を満たすと、上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。
【0130】
上記熱可塑性樹脂と上記遮熱粒子とを含む層中上記遮熱粒子の含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂と上記遮熱粒子とを含む層100重量%中、遮熱粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3.0重量%以下である。上記熱可塑性樹脂と上記遮熱粒子とを含む層中の遮熱粒子の含有量が上記好ましい範囲内であると、遮熱性を充分に高めることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。
【0131】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記遮熱粒子を0.1〜12g/mの割合で含有することが好ましい。上記遮熱粒子の割合が上記範囲内である場合には、遮熱性を充分に高くすることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。上記遮熱粒子の割合の好ましい下限は、0.5g/m、より好ましい下限は0.8g/m、更に好ましい下限は1.5g/m、特に好ましい下限は3g/mであり、好ましい上限は11g/m、より好ましい上限は10g/m、更に好ましい上限は9g/m、特に好ましい上限は7g/mである。上記割合が上記好ましい下限を満たすと、遮熱性をより一層高くすることができ、上記割合が上記好ましい上限を満たすと、上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。
【0132】
成分X:
上記成分Xは、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分である。上記成分Xは特に限定されない。上記成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0133】
上記遮熱粒子と成分Xとの併用により、赤外線(熱線)を充分に遮断できる。上記金属酸化物粒子と成分Xとの併用により、赤外線をより一層効果的に遮断できる。上記ITO粒子又は上記酸化タングステン粒子と成分Xとの併用により、赤外線を更に一層効果的に遮断できる。
【0134】
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
【0135】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くし、かつ上記可視光線透過率を充分に高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0136】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xはバナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましく、バナジウム原子を含有することがより好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体、バナジウム原子又は銅原子を含有するナフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも一種であることが好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性をさらに一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子を含有する構造を有することが好ましい。
【0137】
上記第1〜第3の層のうちの上記熱可塑性樹脂と上記遮熱粒子とを含む層において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記成分Xの含有量(含有量B)は特に限定されないが、上記成分Xの含有量Bの好ましい下限は0.0005重量部、好ましい下限は0.001重量部、より好ましい下限は0.0014重量部、更に好ましい下限は0.002重量部、特に好ましい下限は0.0025重量部、好ましい上限は0.05重量部、より好ましい上限は0.025重量部、更に好ましい上限は0.02重量部、特に好ましい上限は0.01重量部である。上記含有量Bが上記好ましい下限を満たすと、遮熱性をより一層高くすることができる。上記含有量Bが上記好ましい上限を満たすと、上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。また、上記含有量Bが上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの彩度を低くすることができる。なお、彩度は、JIS Z8729に準拠して測定することができる。合わせガラスの上記彩度の好ましい上限は65、より好ましい上限は50、更に好ましい上限は40、特に好ましい上限は35である。上記彩度が上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの着色を抑制することができる。
【0138】
また、上記熱可塑性樹脂と上記遮熱粒子とを含む層100重量%中、成分Xの含有量は好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.18重量%以下、さらに好ましくは0.16重量%以下、特に好ましくは0.15重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性を充分に高めることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。
【0139】
(黄色染料)
上記第1〜第3の層はそれぞれ、必要に応じて、黄色染料を含んでいてもよい。また、上記第1〜第3の層のうちの上記黄色染料を含む層は、該黄色染料を含む層全体に上記黄色染料を含んでいてもよく、部分的に黄色染料を含んでいてもよい。
【0140】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、透明又は不透明な着色領域と、該着色領域とは異なる第2の領域を有していてもよい。中間膜は、透明又は不透明な着色領域R1(第1の領域)と、該着色領域R1とは異なる第2の領域R2とを有していてもよい。この場合に、着色領域R1が黄色染料を含むことが好ましい。着色領域R1が黄色染料を含むと、着色領域の遮熱性を高めることができ、この結果、遮熱性が高い上記着色領域に由来して、合わせガラスの遮熱性を高めることができる。着色領域R1は、中間膜の上端側の縁部に設けられていることが好ましい。着色領域R1は、中間膜の上端側の縁部以外の領域に設けられていてもよく、例えば、中間膜の下端側の縁部に設けられていてもよい。さらに、着色領域R1は、中間膜の上端側の縁部と下端側の縁部との双方に設けられていてもよい。
【0141】
上記第2の領域R2の可視光線透過率は、上記着色領域R1の可視光線透過率よりも高いことが好ましい。この場合には、上記第2の領域R2において、視野を良好にすることができる。上記着色領域R1は、上記第2の領域R2よりも濃く着色していることが好ましい。
【0142】
上記着色領域R1は、少なくとも一端側の縁部に帯状に存在することが好ましい。自動車などの車両用の合わせガラス、特にフロントガラスにおいては、太陽光線又は屋外照明等により、運転中のドライバーが眩しさを感じるのを防ぐことなどを目的として、帯状の着色領域が設けられることがある。
【0143】
上記第1〜第3の層のうちの上記赤外線吸収剤を含む層は、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分Xと、黄色染料とを含むことが好ましい。この場合には、遮熱性がより一層高く、かつ可視光線透過率がより一層高い合わせガラスを得ることができる。
【0144】
上記黄色染料は特に限定されない。上記黄色染料は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記黄色染料は、380〜500nmの透過光を効果的に吸収することが好ましく、390〜480nmの透過光を効果的に吸収することがより好ましく、395〜460nmの透過光を効果的に吸収することが更に好ましく、400〜450nmの透過光を効果的に吸収することが特に好ましい。この結果、上記遮熱粒子及び上記成分Xに加えて、黄色染料を用いることにより、遮熱性をより一層高めることができる。熱線の遮蔽性を充分に高めることができることから、黄色染料の極大吸収波長の好ましい下限は380nm、より好ましい下限は390nm、更に好ましい下限は395nm、特に好ましい下限は400nm、好ましい上限は500nm、より好ましい上限は480nm、更に好ましい上限は460nm、特に好ましい上限は450nmである。例えば、上記黄色染料の極大吸収波長は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)100重量部に対して、上記黄色染料0.01重量部を溶解させた溶液(セル長1mm、石英セル)を用いて、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)にて測定することができる。
【0145】
上記黄色染料の具体例としては、アンスラキノン染料、キノリン染料、イソキノリン染料、モノアゾ染料、ジスアゾ染料、キノフタロン染料、ペリレン染料、トリフェニルメタン染料及びメチン染料等が挙げられる。なかでも、合わせガラス用中間膜の遮熱性をより一層高める観点からは、アンスラキノン染料が好ましい。
【0146】
市販されている黄色染料として、チバ・ジャパン社製の「ORACET Yellow GHS」(アンスラキノン染料、極大吸収波長450nm)、紀和化学工業社製の「KP Plast Yellow G」(メチン染料、極大吸収波長400nm)、「KP Plast Yellow 2G」(キノフタロン染料、極大吸収波長420nm)、「KP Plast Yellow 3G」(モノアゾ染料、極大吸収波長395nm)、「KP Plast Yellow F」(イソキノリン染料、極大吸収波長415nm)、「KP Plast Yellow 7G」(ペリレン染料、極大吸収波長460nm)等が挙げられる。
【0147】
上記第1,第3の層のうちの上記熱可塑性樹脂と上記黄色染料とを含む層において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記黄色染料の含有量は0.005〜0.24重量部の範囲内であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂と上記黄色染料とを含む層中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記黄色染料の含有量のより好ましい下限は0.01重量部、更に好ましい下限は0.04重量部、特に好ましい下限は0.06重量部であり、より好ましい上限は0.2重量部、更に好ましい上限は0.15重量部、特に好ましい上限は0.1重量部である。上記黄色染料が部分的に含まれる場合には、該黄色染料を含む部分(例えば着色領域)における黄色染料の好ましい含有量の下限及び上限は上述した値と同様である。上記黄色染料の含有量が上記範囲内であると、遮熱性をより一層高くすることができ、かつ上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。
【0148】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記黄色染料を0.025〜1.45g/mの割合で含有することが好ましい。合わせガラス用中間膜中の上記黄色染料の含有量のより好ましい下限は0.05g/m、更に好ましい下限は0.2g/m、特に好ましい下限は0.3g/mであり、より好ましい上限は1.2g/m、更に好ましい上限は1g/m、特に好ましい上限は0.8g/mである。上記黄色染料の含有割合が上記範囲内であると、遮熱性をより一層高くすることができ、かつ上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。
【0149】
上記第1,第3の層のうちの上記熱可塑性樹脂と上記成分Xと上記黄色染料とを含む層において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記成分X及び上記黄色染料の合計の含有量の好ましい下限は0.005重量部、より好ましい下限は0.03重量部、更に好ましい下限は0.04重量部、特に好ましい下限は0.07重量部であり、より好ましい上限は0.24重量部、更に好ましい上限は0.2重量部、特に好ましい上限は0.18重量部、最も好ましい上限は0.15重量部である。上記黄色染料が部分的に含まれる場合には、該黄色染料を含む部分における上記成分X及び上記黄色染料の合計の含有量の好ましい含有量の下限及び上限は上述した値と同様である。上記黄色染料及び上記成分Xの合計の含有量が上記範囲内であると、遮熱性をより一層高くすることができ、かつ上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。
【0150】
合わせガラス用中間膜中の上記成分X及び黄色染料の合計の含有量の好ましい下限は0.005g/m、より好ましい下限は0.03g/m、更に好ましい下限は0.2g/m、特に好ましい下限は0.25g/mであり、好ましい上限は1.5g/m、より好ましい上限は1.2g/m、更に好ましい上限は1g/m、特に好ましい上限は0.7g/mである。上記成分X及び上記黄色染料の合計の含有量が上記好ましい下限を満たすと、合わせガラスの遮熱性をより一層高めることができる。上記成分X及び上記黄色染料の合計の含有量が上記好ましい上限を満たすと、上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。
【0151】
(金属塩)
上記第1〜第3の層はそれぞれ、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含有することが好ましい。上記第1の層は金属塩Mを含むことが好ましい。特に上記第2,第3の層がそれぞれ、金属塩Mを含有することが好ましい。上記金属塩Mの使用により、合わせガラス構成部材と中間膜との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。さらに、第1の層が上金属塩Mを含有することで、遮熱粒子などの赤外線吸収剤の分散性がより一層良好になり、この結果、中間膜の耐候性がより一層高くなり、高い可視光線透過率をより一層長期間に渡り維持できる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0152】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。該金属塩Mは、金属イオン、水和金属イオン、錯化金属イオン、金属の無機塩、又は、金属の有機酸エステルの状態で、中間膜における層中に含まれていることが好ましい。金属イオン、水和金属イオン、又は、錯化金属イオンの状態で存在している場合、合わせガラス構成部材と中間膜との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易である。中間膜の層中に含まれている金属塩Mは、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0153】
また、上記金属塩Mは、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩又は炭素数2〜16の有機酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
【0154】
上記炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム及び2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0155】
上記第1〜第3の層の内の金属塩Mを含む層において、金属塩Mの含有量は、金属イオンの含有量(例えばマグネシウムイオンの場合はマグネシウム濃度、カリウムイオンの場合にはカリウム濃度)として、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。金属塩Mの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラス構成部材と中間膜との接着性又は中間膜における各層間の接着性をより一層良好に制御できる。さらに、上記金属塩Mの含有量が上記下限以上であると、中間膜の耐候性がさらに一層高くなり、高い可視光線透過率をさらに一層長期間に渡り維持できる。
【0156】
(紫外線遮蔽剤)
本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記第1の層が紫外線遮蔽剤を含有するか、又は上記第2の層が紫外線遮蔽剤を含有することがより好ましい。具体的には、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、1層の構造の場合には、上記第1の層が紫外線遮蔽剤を含有することが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、2層以上の積層構造の場合には、上記第1の層が紫外線遮蔽剤を含有するか、又は上記第2の層が紫外線遮蔽剤を含有することが好ましく、上記第2の層が紫外線遮蔽剤を含有することが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、2層以上の積層構造の場合には、上記第1の層と上記第2の層との双方が、紫外線遮蔽剤を含有していてもよい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含有することが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率が低下し難くなる。該紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記第1,第2,第3の層に用いる紫外線遮蔽剤は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0157】
本発明者らが検討した結果、遮熱粒子と特定の上記成分Xとを含む中間膜を用いて合わせガラスを作製しただけでは、得られる合わせガラスが長期間使用されたときに、遮熱性が低下する傾向があることがわかった。そこで、本発明者らが更に検討した結果、高い遮熱性を長期間維持することが可能な合わせガラス用中間膜の構成も見出した。
【0158】
すなわち、本発明者らは、合わせガラス用中間膜を敢えて2層以上の多層にし、上記赤外線吸収剤を含む層と上記紫外線遮蔽剤を含む層とを備える構成を採用することによって、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率が低下し難くなることを見出した。特に紫外線遮蔽剤の使用により、上記成分Xの化学変化及び上記成分Xの化学変化に伴う樹脂の劣化を抑制できる。このため、優れた遮熱性を長期間にわたり維持できる。
【0159】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0160】
従来広く知られている一般的な紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属系紫外線遮蔽剤、金属酸化物系紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤(ベントトリアゾール化合物)、ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤(ベンゾフェノン化合物)、トリアジン系紫外線遮蔽剤(トリアジン化合物)、マロン酸エステル系紫外線遮蔽剤(マロン酸エステル化合物)、シュウ酸アニリド系紫外線遮蔽剤(シュウ酸アニリド化合物)及びベンゾエート系紫外線遮蔽剤(ベンゾエート化合物)等が挙げられる。
【0161】
上記金属系紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0162】
上記金属酸化物系紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物系紫外線遮蔽剤として、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物系紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0163】
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
【0164】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等のベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤が挙げられる。紫外線を吸収する性能に優れることから、上記ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤はハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
【0165】
上記ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0166】
上記トリアジン系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(BASF社製、「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0167】
上記マロン酸エステル系紫外線遮蔽剤としては、2−(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2−(p−メトキシベンジリデン)−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル4−ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0168】
上記マロン酸エステル系紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B−CAP、Hostavin PR−25、Hostavin PR−31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0169】
上記シュウ酸アニリド系紫外線遮蔽剤としては、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−フェニル)シュウ酸ジアミド、2−エチル−2’−エトキシ−オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0170】
上記ベンゾエート系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(BASF社製、「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0171】
中間膜及び合わせガラスの経時後の可視光線透過率の低下を抑制するために、上記紫外線遮蔽剤は、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、又は2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)であることが好ましく、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールであってもよい。
【0172】
上記紫外線遮蔽剤の含有量は特に限定されない。経時後の可視光線透過率の低下をより一層抑制する観点からは、上記第1〜第3の層のうちの上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。特に、上記第1の層100重量%中の上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であるか、又は上記第2,第3の層100重量%中の上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスの経時後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0173】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、中間膜全体で、上記遮熱粒子と全ての上記紫外線遮蔽剤とを重量(重量%)比(遮熱粒子:全ての紫外線遮蔽剤)で、4:1〜1:200で含むことが好ましく、2:1〜1:100で含むことがより好ましい。上記遮熱粒子と全ての上記紫外線遮蔽剤との重量(重量%)比が上記範囲内であると、中間膜及び合わせガラスの遮熱性及び可視光線透過率、並びに中間膜及び合わせガラスの経時後の可視光線透過率をより一層高めることができる。なお、上記重量比とは、中間膜100重量%中の上記遮熱粒子の含有量(重量%)と、中間膜100重量%中の全ての上記紫外線遮蔽剤の含有量(重量%)との比を示す。
【0174】
(酸化防止剤)
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は酸化防止剤を含有することが好ましく、上記第2,第3の層は酸化防止剤を含有することが好ましい。該酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0175】
上記酸化防止剤としては、フェール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0176】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤であることが好ましい。該フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0177】
中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率をより一層効果的に長期間に渡り維持する観点からは、上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0178】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製の商品名「IRGANOX 245」、BASF社製の商品名「IRGAFOS 168」、BASF社製の商品名「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製の商品名「スミライザーBHT」、並びにチバガイギー社製の商品名「イルガノックス1010」等が挙げられる。
【0179】
中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記第1〜第3の層のうちの上記酸化防止剤を含む層100重量%中又は中間膜100重量%中、酸化防止剤の含有量は0.75重量%以上であるであることが好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記酸化防止剤を含む層100重量%中又は中間膜100重量%中、酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。なお、中間膜及び合わせガラスの経時後の可視光線透過率を高く維持するためには、酸化防止剤の含有量は多いほどよい。
【0180】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性及び可視光線透過率、並びに中間膜及び合わせガラスの経時後の可視光線透過率をより一層高める観点からは、上記第1〜第3の層のうちの酸化防止剤を含む層100重量%中又は中間膜100重量%中、酸化防止剤の含有量は好ましくは0.75重量%以上、より好ましくは0.8重量%以上である。また、酸化防止剤の影響による周辺部の色変化を抑制するために、記酸化防止剤を含む層100重量%中又は中間膜100重量%中、酸化防止剤の含有量は好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.8重量%以下である。
【0181】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、中間膜全体で、上記遮熱粒子と上記酸化防止剤とを重量比(遮熱粒子:酸化防止剤)で、10:1〜1:100で含むことが好ましく、5:1〜1:50で含むことがより好ましい。上記遮熱粒子と上記酸化防止剤との重量比が上記範囲内であると中間膜及び合わせガラスの遮熱性及び可視光線透過率、並びに中間膜及び合わせガラスの経時後の可視光線透過率をより一層高めることができる。なお、上記重量比とは、中間膜100重量%中の上記遮熱粒子の含有量(重量%)と、中間膜100重量%中の上記酸化防止剤の含有量(重量%)との比を示す。
【0182】
(他の成分)
上記第1〜第3の層はそれぞれ、必要に応じて、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤及び蛍光増白剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0183】
(合わせガラス)
本発明に係る合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記可塑剤とを含む樹脂組成物を用いて、上記第1〜第3の層をそれぞれ形成した後に、例えば、上記第2の層と上記第1の層と上記第3の層とをこの順に積層する方法、並びに該樹脂組成物を、押出機を用いて共押出することにより、上記第2の層と上記第1の層と上記第3の層とをこの順に積層する方法等が挙げられる。中間膜の製造効率が優れることから、上記第2,第3の層に、同一の可塑剤が含まれていることが好ましく、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2,第3の層に、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2,第3の層が同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0184】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、合わせガラスを得るために用いられる。
【0185】
図3に、図1に示す多層の中間膜1を用いた合わせガラスの一例を模式的に断面図で示す。
【0186】
図3に示す合わせガラス11は、第1の合わせガラス構成部材12と、第2の合わせガラス構成部材13と、多層の中間膜1とを備える。多層の中間膜1は、第1,第2の合わせガラス構成部材12,13の間に挟み込まれている。
【0187】
第1の合わせガラス構成部材12は、第2の層3の外側の表面3aに積層されている。第2の合わせガラス構成部材13は、第3の層4の外側の表面4aに積層されている。従って、合わせガラス11は、第1の合わせガラス構成部材12と、第2の層3と、第1の層2と、第3の層4と、第2の合わせガラス構成部材13とがこの順で積層されて構成されている。
【0188】
上記第1,第2の合わせガラス構成部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0189】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0190】
上記第1の層の厚みの好ましい下限は0.01mm、より好ましい下限は0.04mm、更に好ましい下限は0.07mm、好ましい上限は0.3mm、より好ましい上限は0.2mm、更に好ましい上限は0.18mm、特に好ましい上限は0.16mmである。上記第1の層の厚みが上記下限を満たすと、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができ、上記上限を満たすと、合わせガラスの透明性をより一層高めることができる。上記第2,第3の層の厚みの好ましい下限は0.1mm、より好ましい下限は0.2mm、更に好ましい下限は0.25mm、特に好ましい下限は0.3mm、好ましい上限は0.6mm、より好ましい上限は0.5mm、更に好ましい上限は0.45mm、特に好ましい上限は0.4mmである。上記第2,第3の層の厚みが上記下限を満たすと、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができ、上記上限を満たすと、合わせガラスの透明性をより一層高めることができる。また、上記第1の層の厚みの中間膜の厚みに対する比((上記第1の層の厚み)/(上記中間膜の厚み))が小さく、上記第1の層に含まれる可塑剤の含有量が多いほど、合わせガラスにおける発泡が発生し、発泡が成長する傾向にある。特に、中間膜における上記比が0.05〜0.35であり、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記可塑剤の含有量が55重量部以上である場合に、本発明に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長を十分に抑制し、かつ合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記比((上記第1の層の厚み)/(中間膜の厚み))の好ましい下限は0.06、より好ましい下限は0.07、更に好ましい下限は0.08、特に好ましい下限は0.1、好ましい上限は0.3、より好ましい上限は0.25、更に好ましい上限は0.2、特に好ましい上限は0.15である。
【0191】
上記第1,第2の合わせガラス構成部材の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス構成部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、1〜3mmの範囲内であることが好ましい。上記合わせガラス構成部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、0.03〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0192】
合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に、中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、上記第1,第2の合わせガラス構成部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。
【0193】
上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラスは、これら以外にも使用できる。合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましく、車両用の合わせガラスであることがより好ましい。合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
【0194】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0195】
先ず、以下のポリビニルアセタール樹脂A〜F,I〜M,O,U〜Zを合成した。
【0196】
(合成例1)
ポリビニルアセタール樹脂Aの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度2300、けん化度87.5モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35重量%塩酸を、塩酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド14.2gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド170gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、35重量%塩酸を、塩酸濃度が3.9重量%となるように添加し、45℃に加熱し、45℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Aを得た。
【0197】
得られたポリビニルブチラール樹脂Aに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は11.5%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Aに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は13.8%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Aの数平均分子量は102,000、重量平均分子量は750,000、水酸基の含有率は22.3モル%、アセチル化度は12.5モル%、ブチラール化度は65.2モル%であった。
【0198】
(合成例2)
ポリビニルアセタール樹脂Bの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度2300、けん化度87.5モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35重量%塩酸を、塩酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド14.2gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド175gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、35重量%塩酸を、塩酸濃度が3.9重量%となるように添加し、45℃に加熱し、45℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Bを得た。
【0199】
得られたポリビニルブチラール樹脂Bに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は15.4%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Bに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は17.3%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Bの数平均分子量は105,000、重量平均分子量は1,175,000、水酸基の含有率は22.0モル%、アセチル化度は12.5モル%、ブチラール化度は65.5モル%であった。
【0200】
(合成例3)
ポリビニルアセタール樹脂Cの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度2300、けん化度87.5モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35重量%塩酸を、塩酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド14.2gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド186gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、35重量%塩酸を、塩酸濃度が3.9重量%となるように添加し、45℃に加熱し、45℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Cを得た。
【0201】
得られたポリビニルブチラール樹脂Cに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は20.9%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Cに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は24.5%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Cの数平均分子量は120,000、重量平均分子量は2,565,000、水酸基の含有率は23.0モル%、アセチル化度は12.5モル%、ブチラール化度は64.5モル%であった。
【0202】
(合成例4)
ポリビニルアセタール樹脂Dの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2400ml、平均重合度1700、けん化度99.2モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.45重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド27gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド181gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が2.1重量%となるように添加し、48℃に加熱し、48℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Dを得た。
【0203】
得られたポリビニルブチラール樹脂Dに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は8%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Dに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は9.1%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Dの数平均分子量は100,000、重量平均分子量は520,000、水酸基の含有率は21.7モル%、アセチル化度は0.8モル%、ブチラール化度は77.5モル%であった。
【0204】
(合成例5)
ポリビニルアセタール樹脂Eの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3000ml、平均重合度2300、けん化度87.5モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド14gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド165gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が1.3重量%となるように添加し、42℃に加熱し、42℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Eを得た。
【0205】
得られたポリビニルブチラール樹脂Eに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は16.4%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Eに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は18.7%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Eの数平均分子量は125,000、重量平均分子量は1,062,000、水酸基の含有率は27.0モル%、アセチル化度は12.5モル%、ブチラール化度は60.5モル%であった。
【0206】
(合成例6)
ポリビニルアセタール樹脂Fの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度99.2モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35重量%塩酸を、塩酸濃度が0.2重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド23gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド143gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、35重量%塩酸を、塩酸濃度が1.8重量%となるように添加し、60℃に加熱し、60℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Fを得た。
【0207】
得られたポリビニルブチラール樹脂Fの数平均分子量は125,000、重量平均分子量は1,062,000、水酸基の含有率は30.4モル%、アセチル化度は0.8モル%、ブチラール化度は68.8モル%であった。
【0208】
(合成例7)
ポリビニルアセタール樹脂Iの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3000ml、平均重合度2300、けん化度86.9モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド13gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド180gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が1.7重量%となるように添加し、52℃に加熱し、52℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Iを得た。
【0209】
得られたポリビニルブチラール樹脂Iに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は9%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Iに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は11.6%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Iの数平均分子量は165,000、重量平均分子量は550,000、水酸基の含有率は22.9モル%、アセチル化度は13.1モル%、ブチラール化度は64.0モル%であった。
【0210】
(合成例8)
ポリビニルアセタール樹脂Jの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度2500、けん化度99.2モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド13gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド200gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が2.0重量%となるように添加し、52℃に加熱し、52℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Jを得た。
【0211】
得られたポリビニルブチラール樹脂Jに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は9.5%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Jに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は11.8%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Jの数平均分子量は167,000、重量平均分子量は448,000、水酸基の含有率は21.2モル%、アセチル化度は0.8モル%、ブチラール化度は78.0モル%であった。
【0212】
(合成例9)
ポリビニルアセタール樹脂Kの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3000ml、平均重合度2320、けん化度94.4モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド13gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド205gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が2.3重量%となるように添加し、51℃に加熱し、51℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Kを得た。
【0213】
得られたポリビニルブチラール樹脂Kに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は9.8%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Kに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は12.0%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Kの数平均分子量は155,000、重量平均分子量は530,000、水酸基の含有率は21.9モル%、アセチル化度は5.6モル%、ブチラール化度は72.5モル%であった。
【0214】
(合成例10)
ポリビニルアセタール樹脂Lの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2700ml、平均重合度1700、けん化度87.5モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド13gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド175gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が1.9重量%となるように添加し、53℃に加熱し、53℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Lを得た。
【0215】
得られたポリビニルブチラール樹脂Lに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は7.5%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Lに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は9.0%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Lの数平均分子量は158,000、重量平均分子量は546,000、水酸基の含有率は23.5モル%、アセチル化度は12.5モル%、ブチラール化度は64.0モル%であった。
【0216】
(合成例11)
ポリビニルアセタール樹脂Mの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3200ml、平均重合度2300、けん化度99.2モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.4重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド17gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド170gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が2.1重量%となるように添加し、55℃に加熱し、55℃で2.5時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Mを得た。
【0217】
得られたポリビニルブチラール樹脂Mに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は6.9%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Mに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は8.4%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Mの数平均分子量は148,000、重量平均分子量は410,000、水酸基の含有率は20.4モル%、アセチル化度は0.8モル%、ブチラール化度は78.8モル%であった。
【0218】
(合成例12)
ポリビニルアセタール樹脂O合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3000ml、平均重合度2000、けん化度93.5モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド11gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド170gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が1.8重量%となるように添加し、58℃に加熱し、58℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Oを得た。
【0219】
得られたポリビニルブチラール樹脂Oに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は6.6%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Oに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は7.6%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Oの数平均分子量は138,000、重量平均分子量は402,000、水酸基の含有率は20.4モル%、アセチル化度は6.5モル%、ブチラール化度は73.1モル%であった。
【0220】
(合成例13)
ポリビニルアセタール樹脂Uの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3200ml、平均重合度2380、けん化度90.5モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.55重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド13gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド180gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が1.8重量%となるように添加し、55℃に加熱し、55℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Uを得た。
【0221】
得られたポリビニルブチラール樹脂Uに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は9.4%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Uに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は11.5%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Uの数平均分子量は170,000、重量平均分子量は530,000、水酸基の含有率は23モル%、アセチル化度は9.5モル%、ブチラール化度は67.5モル%であった。
【0222】
(合成例14)
ポリビニルアセタール樹脂Vの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3400ml、平均重合度2450、けん化度82.5モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.65重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド13gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド175gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度1.9重量%となるように添加し、55℃に加熱し、55℃で2.5時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Vを得た。
【0223】
得られたポリビニルブチラール樹脂Vに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は8.5%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Vに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は10.9%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Vの数平均分子量は150,000、重量平均分子量は500,000、水酸基の含有率は23.2モル%、アセチル化度は17.5モル%、ブチラール化度は59.3モル%であった。
【0224】
(合成例15)
ポリビニルアセタール樹脂Wの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3500ml、平均重合度2500、けん化度77.7モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.5重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド15gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド185gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が2.0重量%となるように添加し、51℃に加熱し、51℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Wを得た。
【0225】
得られたポリビニルブチラール樹脂Wに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は12.5%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Wに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は15%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Wの数平均分子量は170,000、重量平均分子量は650,000、水酸基の含有率は24モル%、アセチル化度は22.3モル%、ブチラール化度は53.7モル%であった。
【0226】
(合成例16)
ポリビニルアセタール樹脂Xの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水2900ml、平均重合度1700、けん化度92.6モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.5重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド14gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド200gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が2.1重量%となるように添加し、50℃に加熱し、50℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Xを得た。
【0227】
得られたポリビニルブチラール樹脂Xに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は17.3%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Xに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は19.8%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Xの数平均分子量は160,000、重量平均分子量は670,000、水酸基の含有率は22モル%、アセチル化度は7.4モル%、ブチラール化度は70.6モル%であった。
【0228】
(合成例17)
ポリビニルアセタール樹脂Yの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3300ml、平均重合度2350、けん化度95.8モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド14gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド200gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が2.3重量%となるように添加し、52℃に加熱し、52℃で2.5時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Yを得た。
【0229】
得られたポリビニルブチラール樹脂Yに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は14.2%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Yに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は17.6%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Yの数平均分子量は160,000、重量平均分子量は620,000、水酸基の含有率は21.9モル%、アセチル化度は4.2モル%、ブチラール化度は73.9モル%であった。
【0230】
(合成例18)
ポリビニルアセタール樹脂Zの合成:
攪拌装置を備えた反応器に、イオン交換水3700ml、平均重合度2400、けん化度98.7モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として60重量%硝酸を、硝酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド17gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド205gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、60重量%硝酸を、硝酸濃度が2.3重量%となるように添加し、53℃に加熱し、53℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール樹脂Zを得た。
【0231】
得られたポリビニルブチラール樹脂Zに占める、絶対分子量100万以上の高分子量成分X(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は11.3%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Zに占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Y(ポリビニルブチラール樹脂)の割合は15.3%であった。得られたポリビニルブチラール樹脂Zの数平均分子量は165,000、重量平均分子量は600,000、水酸基の含有率は20.5モル%、アセチル化度は1.3モル%、ブチラール化度は78.2モル%であった。
【0232】
また、下記のポリビニルブチラール樹脂R〜Tを用意した。
【0233】
ポリビニルブチラール樹脂R:水酸基の含有率:30.4モル%、アセチル化度:0.8モル%、ブチラール化度:68.8モル%
ポリビニルブチラール樹脂S:水酸基の含有率:30.5モル%、アセチル化度:0.8モル%、ブチラール化度:68.7モル%
ポリビニルブチラール樹脂T:水酸基の含有率:30.7モル%、アセチル化度:0.8モル%、ブチラール化度:68.5モル%
【0234】
得られたポリビニルアセタール樹脂A〜Zを用いて、以下のようにして、合わせガラス用多層中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0235】
(実施例1)
(1)分散液の作製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)37.5重量部、ITO粒子(三菱マテリアル社製)0.98重量部、及び、ナフタロシアニン化合物(銅ナフタロシアニン化合物、富士フイルム社製「FF IRSORB203」)0.0182重量部を混合し、さらに、分散剤であるリン酸エステル化合物を添加した後、水平型のマイクロビーズミルにて混合し、混合液を得た。その後、混合液にアセチルアセトン0.1重量部を撹拌下で添加し、分散液を作製した。なお、リン酸エステル化合物の含有量は遮熱粒子の含有量の1/10となるように調整した。
【0236】
(2)多層中間膜の作製
得られたポリビニルブチラール樹脂A100重量部に、可塑剤としてのトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、中間層用樹脂組成物を得た。さらに、得られたポリビニルブチラール樹脂F100重量部に、分散液全量を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、表面層用樹脂組成物を得た。
【0237】
得られた中間層用樹脂組成物及び表面層用樹脂組成物を用いて、共押出することにより、表面層(厚み350μm)と中間層(厚み100μm)と表面層(厚み350μm)とが順に積層された多層中間膜を作製した。
【0238】
(3)耐貫通性試験に用いる合わせガラスの作製
得られた多層中間膜を縦30cm×横30cmの大きさに切断した。次に、透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)2枚の間に、多層中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、耐貫通性試験に用いる合わせガラスを得た。
【0239】
(4)遮音性測定に用いる合わせガラスの作製
多層中間膜を縦30cm×横2.5cmの大きさに切断し、透明なフロートガラス(縦30cm×横2.5cm×厚さ2.5mm)を用いたこと以外は耐貫通性試験に用いる合わせガラスと同様の方法で、遮音性測定に用いる合わせガラスを得た。
【0240】
(5)発泡試験A及びBに用いる合わせガラスの作製
得られた多層中間膜を縦30cm×横15cmの大きさに切断し、温度23℃の環境下にて、10時間保管した。なお、得られた多層中間膜の両面にはエンボスが形成されており、そのエンボスの十点平均粗さは30μmであった。切断された多層中間膜において、多層中間膜の端部から縦方向にそれぞれ内側に向かって8cmの位置と、多層中間膜の端部から横方向にそれぞれ内側に向かって5cmの位置との交点4箇所に、直径6mmの貫通孔を作製した。
【0241】
透明なフロートガラス(縦30cm×横15cm×厚さ2.5mm)2枚の間に、貫通孔を有する多層中間膜を挟み込み、積層体を得た。積層体の外周縁は、熱融着により端部から幅2cmを封止することにより、エンボスに残留した空気及び貫通孔に残留した空気を封じ込めた。この積層体を135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着することで、残留した空気を多層中間膜中に溶かし込み、発泡試験A及びBに用いる合わせガラスを得た。
【0242】
(実施例2〜21及び比較例1,2)
第1〜第3の中間膜の組成、及び分散液の組成(可塑剤の配合部数)を下記の表1〜3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、多層中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0243】
(評価)
(1)遮音性
合わせガラスをダンピング試験用の振動発生機(振研社製「加振機G21−005D」)により加振し、そこから得られた振動特性を機械インピーダンス測定装置(リオン社製「XG−81」)にて増幅し、振動スペクトルをFFTスペクトラムアナライザー(横河ヒューレッドパッカード社製「FFTアナライザー HP3582A」)により解析した。
【0244】
このようにして得られた損失係数と合わせガラスとの共振周波数との比から、20℃における音周波数(Hz)と音響透過損失(dB)との関係を示すグラフを作成し、音周波数2,000Hz付近における極小の音響透過損失(TL値)を求めた。このTL値が高いほど、遮音性が高くなる。TL値が35dB以上の場合を「○」、TL値が35dB未満の場合を「×」として、結果を下記の表1〜3に示した。
【0245】
(2)発泡試験A(発泡の状態)
発泡試験Aに用いる合わせガラスを、各多層中間膜について5枚作製し、50℃のオーブン内に100時間放置した。放置後の合わせガラスにおいて、発泡の有無及び発泡の大きさを平面視にて目視で観察し、発泡の状態を下記の判定基準で判定した。
【0246】
[発泡試験Aにおける発泡の状態の判定基準]
5枚の合わせガラスに発生した発泡を、楕円で近似し、その楕円面積を発泡面積とした。5枚の合わせガラスにて観察された楕円面積の平均値を求め、合わせガラスの面積(30cm×15cm)に対する楕円面積の平均値(発泡面積)の割合(百分率)を求めた。
【0247】
○○:5枚全ての合わせガラスに発泡が観察されなかった
○:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が5%未満であった
△:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が5%以上、10%未満であった
×:楕円面積の平均値(発泡面積)の割合が10%以上であった
【0248】
(3)発泡試験B(発泡の状態)
発泡試験Bに用いる合わせガラスを、各多層中間膜について30枚作製し、50℃のオーブン内に24時間放置した。放置後の合わせガラスにおいて、目視で発泡が観察された合わせガラスの枚数を確認し、下記の判定基準で判定した。
【0249】
[発泡試験Bにおける発泡の状態の判定基準]
○○:目視で発泡が観察された合わせガラスは5枚以下であった
○:目視で発泡が観察された合わせガラスは6枚以上10枚以下であった
△:目視で発泡が観察された合わせガラスは11枚以上15枚以下であった
×:目視で発泡が観察された合わせガラスは16枚以上であった
【0250】
(4)耐貫通性
耐貫通性試験に用いる合わせガラス(縦30cm×横30cm)を、表面温度が23℃となるように調整した。次いで、JIS R3212に準拠して、4mの高さから、6枚の合わせガラスに対してそれぞれ、質量2260g及び直径82mmの剛球を、合わせガラスの中心部分に落下させた。6枚の合わせガラス全てについて、剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった場合を合格とした。剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった合わせガラスが3枚以下であった場合は不合格とした。4枚の場合には、新しく6枚の合わせガラスの耐貫通性を評価した。5枚の場合には、新しく1枚の合わせガラスを追加試験し、剛球が衝突した後5秒以内に剛球が貫通しなかった場合を合格とした。同様の方法で、5m及び6mの高さから、6枚の合わせガラスに対してそれぞれ、質量2260g及び直径82mmの剛球を、合わせガラスの中心部分に落下させ、合わせガラスの耐貫通性を評価した。
【0251】
(絶対分子量の測定)
上述した合成例1〜5,7〜18に記載の高分子量成分X,Yの割合を求めるための絶対分子量及びポリスチレン換算分子量は、得られた多層中間膜から表面層と中間層とを剥離して、以下のようにして求めた値である。
【0252】
絶対分子量を測定するために、まず多層中間膜を恒温恒湿室(湿度30%(±3%)、温度23℃)に1ヶ月放置した。1ヶ月放置後、多層中間膜から表面層と中間層とを剥離した。剥離された中間層をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、0.1重量%の溶液を調製した。得られた溶液をGel Permeation Chromatography(GPC)装置(日立ハイテク社製「RI:L2490、オートサンプラー:L−2200、ポンプ:L−2130、カラムオーブン:L−2350、カラム:GL−A120−SとGL−A100MX−Sの直列」)により分析した。また、このGPC装置にはGPC用光散乱検出器(VISCOTEK社製「Model270(RALS+VISCO)」)が接続されており、各検出器によるクロマトグラムの分析ができる。RI検出器及びRALS検出器のクロマトグラムにおけるポリビニルブチラール樹脂成分のピークを、解析ソフト(OmniSEC)を用いて解析することにより、ポリビニルブチラール樹脂の各溶出時間における絶対分子量を求めた。RI検出器で検出されるポリビニルブチラール樹脂のピーク面積に占める、ポリビニルブチラール樹脂の絶対分子量が100万以上となる領域の面積の割合を百分率(%)で表した。
【0253】
クロマトグラムにおける各成分のピークには以下の式が成り立つ。
【0254】
RI=c×(dn/dc)×KRI ・・・式(1)
RALS=c×M×(dn/dc)×KRALS ・・・式(2)
【0255】
ここで、cは溶液中のポリマー濃度、(dn/dc)は屈折率増分、Mは絶対分子量、Kは装置定数である。
【0256】
具体的な測定手順として、まず、c、M、および(dn/dc)が既知であるポリスチレン標準試料(VISCOTEK社製 PolyCAL(登録商標) TDS−PS−NB Mw=98390 dn/dc=0.185)を用い、0.1重量%のTHF溶液を調製する。得られたポリスチレン溶液のGPC測定結果から式(1)及び(2)を用いて、各検出器の装置定数Kを求める。
【0257】
次に、剥離した中間層をTHFに溶解させ、THF溶液を調製する。得られたポリビニルブチラール樹脂溶液のGPC測定結果から式(1)及び(2)を用いて、ポリビニルブチラール樹脂の絶対分子量Mを求めた。
【0258】
ただし、中間層(ポリビニルブチラール樹脂と可塑剤とを含む)について分析を行うためには、ポリビニルブチラール樹脂溶液中のポリビニルブチラール樹脂の濃度を求める必要がある。ポリビニルブチラール樹脂の濃度の求め方は、以下の(可塑剤の含有量の測定)の結果から計算した。
【0259】
(分子量yの測定)
上記絶対分子量の測定方法と同様にして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算分子量を測定して、RI検出器で検出されるピーク面積(GPCの測定結果)のうち、分子量が100万以上の領域に相当する面積の割合から、ポリビニルブチラール樹脂に占める、分子量yが100万以上である高分子量成分Yの割合(%)を算出した。
【0260】
ポリスチレン換算分子量を測定するために、分子量既知のポリスチレン標準試料のGPC測定を行う。ポリスチレン標準試料(昭和電工社製「Shodex Standard SM−105」、「Shodex Standard SH−75」)としては、重量平均分子量580、1,260、2,960、5,000、10,100、21,000、28,500、76,600、196,000、630,000、1,130,000、2,190,000、3,150,000、3,900,000の14試料を用いた。それぞれの標準試料ピークのピークトップが示す溶出時間に対して重量平均分子量をプロットし得られる近似直線を検量線として使用した。恒温恒湿室(湿度30%(±3%)、温度23℃)に1ヶ月放置した多層中間膜から表面層と中間層とを剥離した。剥離された中間層をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、0.1重量%の溶液を調製した。得られた溶液をGPC装置により分析し、中間層中の熱可塑性樹脂のピーク面積を測定した。次いで、中間層中の熱可塑性樹脂の溶出時間と検量線から、中間層中の熱可塑性樹脂のポリスチレン換算分子量が100万以上の領域に相当する面積を算出した。中間層中の熱可塑性樹脂のポリスチレン換算分子量が100万以上の領域に相当する面積を、中間層中の熱可塑性樹脂のピーク面積で除算した値を百分率(%)で表すことにより、上記熱可塑性樹脂に占める、上記分子量yが100万以上である高分子量成分Yの割合(%)を算出した。
【0261】
(可塑剤の含有量の測定)
可塑剤の含有量が、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%及び50重量%となるように、THFに可塑剤を溶解させ、可塑剤−THF溶液を調製した。得られた可塑剤−THF溶液をGPC測定し、可塑剤のピーク面積を求めた。可塑剤の濃度に対し可塑剤のピーク面積をプロットし、近似直線を得た。次に、中間層をTHFに溶解させたTHF溶液をGPC測定し、可塑剤のピーク面積から近似直線を用いることにより、可塑剤の含有量を求めた。
【0262】
結果を下記の表1〜3に示す。下記の表1〜3において、「PVB」はポリビニルブチラールを示し、「PVA」はポリビニルアルコールを示し、「3GO」はトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを示し、「3GH」はトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートを示す。
【0263】
【表1】

【0264】
【表2】

【0265】
【表3】

【符号の説明】
【0266】
1…中間膜
2…第1の層
2a…一方の面
2b…他方の面
3…第2の層
3a…外側の表面
4…第3の層
4a…外側の表面
11…合わせガラス
12…第1の合わせガラス構成部材
13…第2の合わせガラス構成部材
21A…中間膜
21…第1の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層の構造又は2層以上の積層構造を有する合わせガラス用中間膜であって、
1層の構造を有する合わせガラス用中間膜である場合には、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第1の層を備え、該第1の層が赤外線吸収剤を含有し、
2層以上の積層構造を有する合わせガラス用中間膜である場合には、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、該第1の層の一方の面に積層されており、かつ熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、該第1の層が赤外線吸収剤を含有するか、又は該第2の層が赤外線吸収剤を含有し、
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂が絶対分子量100万以上の高分子量成分を含み、かつ前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂に占める、前記高分子量成分の割合が7.4%以上であるか、又は、前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂がポリスチレン換算分子量100万以上の高分子量成分を含み、かつ前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂に占める、前記高分子量成分の割合が9%以上である、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記赤外線吸収剤が遮熱粒子を含む、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記赤外線吸収剤が金属酸化物粒子を含む、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂が絶対分子量100万以上の高分子量成分を含み、かつ前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂に占める、前記高分子量成分の割合が7.4%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂がポリスチレン換算分子量100万以上の高分子量成分を含み、かつ前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂に占める、前記高分子量成分の割合が9%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が31モル%以下である、請求項6に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が40〜80重量部の範囲内である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
2層以上の積層構造を有し、前記第1の層と前記第2の層とを備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記第2の層が前記赤外線吸収剤を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも多い、請求項1〜10のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
3層以上の積層構造を有する合わせガラス用中間膜である場合には、前記第1の層と、前記第2の層と、前記第1の層の他方の面に積層されており、かつ熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する第3の層とをさらに備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
3層以上の積層構造を有し、前記第1の層と前記第2の層と前記第3の層とを備える、請求項12に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
前記第3の層が赤外線吸収剤を含有する、請求項12又は13に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項15】
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量が、前記第3の層中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記可塑剤の含有量よりも多い、請求項12〜14のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項16】
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、該ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、かつアセタール化度が70モル%以上であるか、又は、前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、該ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%を超える、請求項1〜15のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項17】
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、該ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、かつアセタール化度が70モル%以上である、請求項16に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項18】
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂であり、該ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%を超える、請求項16に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項19】
第1,第2の合わせガラス構成部材と、
前記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備え、
前記中間膜が、請求項1〜18のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−6724(P2013−6724A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139846(P2011−139846)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】