説明

合成ガス又は炭化水素生成物の製造方法

【課題】炭素質燃料から合成ガス又は炭化水素生成物、特にメタノールを高効率で製造すること。
【解決手段】(a)ガス化反応器のバーナーに炭素質燃料及び酸素含有流を供給する工程であって、CO含有輸送ガスを使用してバーナーに固体炭素質燃料を輸送する該工程、(b)ガス化反応器中で炭素質燃料を部分酸化してCO、CO及びHを含むガス流を得る工程、(c)ガス化反応器から工程(b)で得られたガス流を取出す工程を含み、工程(a)でのCOと炭素質燃料との重量比が乾燥基準で0.5未満である、炭素質燃料からの合成ガス又は炭化水素生成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素質燃料からの合成ガス(即ち、CO及びH)又は炭化水素生成物の製造方法に向けたものである。更に特に本発明は、
(a)ガス化反応器のバーナーに炭素質燃料及び酸素含有流を供給する工程であって、CO含有輸送ガスを使用してバーナーに固体炭素質燃料を輸送する該工程、
(b)ガス化反応器中で炭素質燃料を部分酸化して、CO、CO及びHを少なくとも含むガス流を得る工程、
を少なくとも含む、炭素質燃料からの合成ガス又は炭化水素生成物の製造方法に向けたものである。
【背景技術】
【0002】
炭素質燃料から合成ガス又はメタノールのような炭化水素を製造する各種方法が知られている。
石炭から合成ガス及びメタノールを製造する方法は、van der Burgt及びJ.E.Naberの“シェル石炭ガス化法の開発”と題する論文(1983年9月ロンドンで開催された第3回BOCプリーストリー(Priestley)会議の議事録に発表)に記載されている。ここに記載されたシステム及び方法では、粉砕乾燥石炭を閉鎖(lock)ホッパー中で加圧し、空気圧でガス化反応器に供給し、ここで酸素及び水蒸気又は空気を含有する送風と反応させて、ガス状燃料基材に転化する。このガス状燃料基材は、COシフト転化器、CO除去工程及びメタノール合成反応器を含む下流システムに供給される。
【0003】
多くの従来法では、特に意図する生成物の一つがアンモニアである場合、炭素質燃料の輸送用輸送ガスとしてNが使用されている。輸送ガスとしてNを使用する場合の問題は、比較的不活性であるが、下流プロセスでの触媒効率を低下させる恐れがあり、望ましくない。この問題は、特にN原子を含まない炭化水素の製造法を意図する場合、なお一層関係する。特に、窒素はメタノールの形成反応に悪影響を与えることが見出された。
【0004】
EP−A−444684には、固体廃棄材料からメタノールを製造する方法が記載されている。この方法では固体廃棄物は、周囲圧力下、酸素及び二酸化炭素流により燃焼させる。この燃焼は、頂部から固体廃棄材料を、また底部から酸素及び二酸化炭素流を供給した炉中で起こる。二酸化炭素を供給するのは、メタノールの建造ブロックとして炉内の温度を抑えるのに役立つからである。炉で製造された合成ガスは、メタノールの作製に使用される。合成ガス中に存在する二酸化炭素の一部は炉に再循環される。
【0005】
EP−A−444684の方法の欠点は、周囲圧力で操作することである。高い能力を所望する場合、特に固体石炭燃料から出発した場合、大きな炉が必要となる。
【0006】
US−A−3976442には高圧で操作する方法が記載されている。この文献では、固体炭素質燃料をCO豊富ガス中で、約50バールで操作する加圧ガス化反応器のバーナーに輸送している。同文献の実施例によれば、COと石炭との重量比が約1.0である石炭及び二酸化炭素の流れを、150フィート/秒の速度で環状バーナーの環状路に供給している。酸素はバーナーの中央路に300°Fの温度及び250フィート/秒の速度で通す。こうして、US−A−3976442は、加圧反応器で部分酸化を行なうと共に、輸送ガスとして窒素を使用することを回避している。しかし、輸送ガスとして二酸化炭素を使用することは、30年間、全くなかったか、或いは重大には考えられていなかった。これは恐らく、この文献に開示された方法が低効率であったからである。
【特許文献1】EP−A−444684
【特許文献2】US−A−3976442
【特許文献3】EP−A−551951
【非特許文献1】van der Burgt及びJ.E.Naberの“シェル石炭ガス化法の開発”と題する論文(1983年9月ロンドンで開催された第3回BOCプリーストリー(Priestley)会議の議事録に発表)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は高効率の方法を提供することである。
本発明の他の目的は、合成ガス又は炭化水素生成物、特にメタノールの代替製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的の一つ以上又は他の目的は、本発明による炭素質燃料からの合成ガス又は炭化水素生成物の製造方法により達成される。この方法は、
(a)ガス化反応器のバーナーに炭素質燃料及び酸素含有流を供給する工程であって、CO含有輸送ガスを使用してバーナーに固体炭素質燃料を輸送する該工程、
(b)ガス化反応器中で炭素質燃料を部分酸化して、CO、CO及びHを少なくとも含むガス流を得る工程、
(c)ガス化反応器から工程(b)で得られたガス流を取出す工程、
を少なくとも含み、工程(a)でのCOと炭素質燃料との重量比が乾燥基準で0.5未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、炭素質燃料を供給するための濃密相を用いて、合成ガス又は炭化水素生成物の高効率製造法が得られることが見出された。
本発明の他の利点は、ガス化反応器で部分酸化する所定量の炭素質燃料に対し、容量の少ない反応器が使用でき、したがって、設備費用が低下することである。
【0010】
また工程(a)でCOと炭素質燃料との重量比が比較的低いと、本方法中、酸素の消費量が低下することが見出された。
更に、その後、システムから除去されるCO量は、希釈相を用いた場合よりも少なくて済む。
本発明では、炭化水素生成物という用語は、いかなる炭化水素生成物、例えばアルカン、酸素化アルカン、及びアルコール、特にメタノールのようなヒドロキシル化アルカンも含むことを意図する。
【0011】
固体炭素質燃料という用語は、固体形態のいかなる炭素質燃料であってもよい。固体炭素質燃料の例は、石炭、石炭からのコークス、石油コークス、煤、バイオマス、並びにオイルシェール、タールサンド及びピッチから誘導される粒子状固体である。特に石炭が好ましく、亜炭、亜ビチューメン(sub-bituminous)、ビチューメン(bituminous)及びアンスラサイト等、いかなる種類でもよい。
【0012】
工程(a)に供給されるCO含有流は、いかなる好適なCO含有流であってもよい。CO含有流は、COを80%以上、好ましくは95%以上含有することが好ましい。更にCO含有流は、工程(c)で除去されたガス流に対して行ない、その後、本方法で行なう処理工程から得ることが好ましい。
【0013】
当業者は、炭素質燃料を部分酸化して、合成ガスを得るための好適な条件を熟知しているので、これらの条件はここでは更に検討しない。
工程(a)に供給されるCO含有流は、20m/s未満、好ましくは5〜15m/s、更に好ましくは7〜12m/sの速度で供給することが好ましい。更に、CO及び炭素質燃料は、単一流として、300〜600kg/m、好ましくは350〜500kg/m、更に好ましくは375〜475kg/mの密度で供給するのが好ましい。
【0014】
本発明方法の好ましい実施態様では、工程(a)での前記重量比は、乾燥基準で0.12〜0.49の範囲、好ましくは0.40未満、更に好ましくは0.30未満、なお更に好ましくは0.20未満、最も好ましくは0.12〜0.20である。
工程(c)で得られるガス流は、本発明方法を実施する際、COを乾燥基準で1〜10モル%、好ましくは4.5〜7.5モル%含有することが好ましい。
【0015】
工程(a)に供給される流れは、所望ならば、ガス化反応器に供給する前に、予備処理してもよいことは、当業者ならば容易に理解されよう。また工程(c)で得られるガス流は、更に処理することが好ましい。例えば工程(c)で得られるガス流は、炭化水素合成反応器に通して、炭化水素生成物、特にメタノールを得ることが好ましい。
【0016】
更に本方法は、
(d)COを少なくとも一部、COに転化してCO枯渇流を得ることにより、工程(c)で得られたガス流をシフト転化する工程、
を更に含むことが好ましい。
また本方法は、
(e)工程(d)で得られたCO枯渇流をCO回収システムに通して、CO豊富流及び及びCO欠乏流を得る工程、
を更に含むことが好ましい。
【0017】
工程(e)で得られたCO欠乏流にメタノール合成反応を行なって、メタノールを得ることがなお更に好ましい。
特に好ましい実施態様では、工程(e)で得られたCO豊富流が少なくとも一部、工程(a)に供給されるCO含有流として使用される。
【0018】
以下に、本発明を非限定的図面を参照して、実施例により説明する。
図1は、石炭からメタノールへの合成システムのプロセスブロック計画の概要を示す。
この図で同様な参照符号は同様な部品に関する。
【0019】
図1は、石炭からメタノールへの合成システムのプロセスブロック計画の概要を示す。簡略化のため、バルブ、その他の補助的特徴は図示しない。石炭からメタノールへの合成システムは、炭素質燃料供給システム(F)、合成ガス含有中間生成物のガス流を生成するためガス化法を行なうガス化システム(G)、及び中間生成物を更に最終有機物質(この場合はメタノールを含む)に処理するための下流システム(D)を備える。プロセス路は、ガス化システムG経由で燃料供給システムF及び下流システムDに延びている。
【0020】
この実施態様で燃料供給システムFは、仕切り(sluicing)ホッパー2及び供給ホッパー6を有する。ガス化システムGはガス化反応器10を有する。燃料供給システムは、プロセス路沿いに炭素質燃料をガス化反応器10に装入するように配置される。下流システムDは、任意の乾燥固体除去ユニット12、任意の湿潤スクラバー16、任意のシフト転化反応器18、CO回収システム22、及びメタノール生成反応を実施できるメタノール合成反応器24を有する。以下、これらの特徴を詳細に説明する。
【0021】
仕切りホッパー2は、乾燥固体炭素質燃料、好ましくは微粒子状石炭を、燃料を貯蔵する第一圧力から、第一圧力よりも高い第二圧力に仕切るために設けられる。通常、第一圧力は約1気圧の自然圧であるが、第二圧力は、ガス化法を行なう圧力より高い。
【0022】
ガス化法では圧力は10気圧より高くてよい。部分燃焼法の形態のガス化法では、圧力は10〜90気圧、好ましくは10気圧乃至90気圧より高く、更に好ましくは30〜60気圧であってよい。
【0023】
微粒子という用語は、材料の約90重量%以上が90μm未満であり、かつ水分が、通常、2〜12重量%、好ましくは約5重量%未満となるような粒度分布を有する少なくとも粉砕した粒子を含むことを意図する。
【0024】
仕切りホッパーは、ガス化反応器10への燃料の連続供給速度を確保するため、排出口4経由で供給ホッパー6に排出する。排出口4は排出コーン中に備えることが好ましく、この場合は、仕切りホッパー2の乾燥固体分に通気するための通気システム7を備える。
【0025】
供給ホッパー6は、燃料をコンベヤライン8経由で、ガス化反応器10中に設けた1個以上のバーナーに排出するように配置される。通常、ガス化反応器10は、全く正反対部分に複数のバーナーを有するが、これは本発明の要件ではない。ライン9は、1個以上のバーナーを酸素含有流(例えばほぼ純粋なO又は空気)の供給部に連結する。バーナーは、酸素含有ガス用通路と、燃料及び輸送ガス用通路を有する共同環状バーナーが好ましい。酸素含有ガスは、酸素を90容量%以上含有することが好ましい。窒素、二酸化炭素及びアルゴンは不純物として許容できる。空気分離ユニット(ASU)で製造されるような、ほぼ純粋な酸素が好ましい。水蒸気は、バーナーの通路を通るので、酸素含有ガス中に存在してよい。酸素と水蒸気との比率は、酸素1容量部当たり水蒸気0〜0.3容量部が好ましい。燃料と酸素含有流の酸素との混合物は、ガス化反応器10の反応帯中で反応する。
【0026】
炭素質燃料と酸素含有流体との反応はガス化反応器10中で起こり、CO、CO及びHを少なくとも含む合成ガスのガス流を生成する。炭素質燃料は1000〜3000℃の範囲の比較的高い温度及び約1〜70バールの範囲の圧力でどこでも部分燃焼して、合成ガスを発生する。スラグ、その他の固体は、ライン5経由でガス化反応器から排出できるが、その後、更に廃棄処理できる。
【0027】
供給ホッパー6は、多数の供給ホッパー排出口を有し、各排出口は反応器に付随する少なくとも1個のバーナーと流通可能である。通常、供給ホッパー6内の圧力は、石炭粉を反応器9に注入し易くするため、反応器内の圧力より高い。
【0028】
合成ガスのガス流は、頂部のライン11からガス化反応器10を出て、冷却される。この目的で、例えば高圧水蒸気を発生させるために回収した熱の若干又は殆どを保持させるため、ガス化反応器10の下流に合成ガス冷却器(図示せず)を備えてもよい。最後に合成ガスは、任意に乾燥固体除去ユニット12が配置されたプロセス路の下流路部分の下流システムDに入る。
【0029】
乾燥固体除去ユニット12は、サイクロン型のような、いかなる型であってもよい。図1の実施態様では、例えばEP−A−551951に記載されるような好ましいセラミックキャンドルフィルターユニットの形態で供給されている。ライン13は、セラミックキャンドルから離れたセラミックキャンドル上に蓄積した乾燥固体材料を吹付ける(blow)ため、計時間隔で吹き戻し(blow back)ガス圧パルスを与えるように、セラミックキャンドルフィルターユニットと流通可能である。乾燥固体材料は、ライン14経由で乾燥固体除去ユニットから排出され、ここから廃棄前に更に処理される。
【0030】
吹き戻しガス圧パルス用の吹き戻しガスは、好適には200〜260℃、好ましくは約225℃、或いは乾燥固体除去ユニット12内の一般的な温度に近い温度に予備加熱される。吹き戻しガスは、吹き戻しシステムが活性化された時、供給圧力効果を弱めるように、緩和することが好ましい。
【0031】
こうして乾燥固体を殆ど含まない濾過ガス流は、プロセス路の下流路部分に沿って下流システムに進行し、任意に湿潤スクラバー16及び任意のシフト転化反応器18経由でCO回収システム22に供給される。CO回収システム22は、ガス流をCO豊富流及びCO欠乏流(但し、CO及びHは豊富)流に分割することにより機能する。CO回収システム22は、プロセス路にCO豊富流排出用出口21及びCO欠乏流排出用出口23を有する。出口23は、メタノール合成反応器24と流通可能で、ここで、排出された(COは欠乏するが)CO及びHの豊富な流れに対し、メタノール形成反応を行なうことができる。
【0032】
ガス化反応器から排出された合成ガス10は、少なくともH、CO及びCOを含有する。この合成ガス組成物のメタノール形成反応適合性は、合成ガスの化学量論数SNとして表現され、これによりモル濃度〔H〕、〔CO〕及び〔CO〕で表すと、SN=(〔H〕−〔CO〕)/(〔CO〕+〔CO〕)で示される。炭素質燃料のガス化で製造された合成ガスの化学量論数は、メタノール合成反応器24でメタノールを形成するためには、約2.03の所望比よりも低いことが判った。シフト転化反応器18で水性シフト(water shift)反応を行ない、更にCO回収システム22で二酸化炭素の一部を分離することにより、SN数は向上できる。メタノール合成オフガスから分離された水素は、好ましくは更にSNを増大させるため、合成ガスに添加できる(図示せず)。
【0033】
いかなる種類のCO回収法も採用できるが、プロセス路からHSのような硫黄含有成分を除去できることからも、物理的又は化学的洗浄のような吸収を基本とするCO回収法が好ましい。
CO豊富流は、以下に例示するように、本方法を補助する各種用途に利用できる。
【0034】
下流システムDからのフィードバックガスを複数のフィードバック入口に案内する(bring)ため、フィードバックライン27が設けられる。これらフィードバック入口は、各々ライン27と流通可能で、好適には分岐ライン7、29、30、31、32の1つ以上を経由して出口21の上流にあるプロセス路中の1つ以上の他の点へのアクセスを与える。
【0035】
ガス化器の出口及び任意の合成ガス冷却器の入口に、吹く戻しラインを設けてもよい。このような吹く戻しラインは、図1には図示していないが、局部的沈着を浄化するための吹き戻しガスを供給するのに役立つ。フィードバックガスに、CO豊富流からのCOを含有させるため、ライン27は出口21と流通可能である。充分なCO豊富ガスは、このサイクルからライン26経由で除去できる。
【0036】
フィードバックガスの圧力を総合的に調節するため、ライン27中に圧縮機28を任意に設けてよい。必要に応じて、圧力低下又は(更に)圧縮により、1つ以上の分岐ラインの圧力を局部的に調節することも可能である。他の選択は、2つ以上の平行するフィードバックラインを、各フィードバックラインに圧縮を用いて、相互に異なる圧力に保持することである。最も魅力的な選択は、相対的な消費に依存する。
【0037】
こうして、追加のガスをプロセス路に案内するための別々の圧縮ガス供給源は回避される。従来法では、通常、例えばガス化反応器10に燃料を案内するため、キャリヤガスとして、或いは乾燥固体除去ユニット12に吹き戻しガスとして、窒素ガスが使用されている。そうすると、プロセス路中に不必要な不活性ガスが案内され、メタノール合成効率に悪影響を与える。いずれの方法でもCOはガス流から得られるが、本発明は特にこれを有利に利用することを提案する。
【0038】
操作中、炭素質燃料及びフィードバックガスを含む混合物が形成されるので、燃料供給システムには1つ以上のフィードバック入口を設けることが好ましい。これにより、炭素質燃料にフィードバックガス含有キャリヤガスを同伴した流れがコンベヤライン8に形成されて、ガス化反応器10に供給できる。図1の実施態様では、分岐ライン7及び29は、仕切りホッパー2を加圧し、及び/又はその内容物に通気するため、仕切りホッパー2に排出させる例、分岐ライン32が任意に供給ホッパーの内容物に通気するため、供給ホッパー6に排出させる例、及び分岐ライン30がフィードバックガスをコンベヤライン8に供給する例が見られる。
【0039】
フィードバックガスは、1つ以上の焼結金属バッドを通ってプロセス路に案内することが好ましい。この金属パッドは、例えば仕切りホッパー2の円錐部分に載せることができる。コンベヤライン8の場合、フィードバックガスは直接、注入してよい。
更に又は代りに、乾燥固体除去ユニット12に1つ以上のフィードバックガス入口を設け、このユニットで吹き戻しガスとして利用できる。
【0040】
再び又は代りに、フライアッシュのような乾燥固体堆積物をガス流中に吹き戻すため、フィードバックガスのパージ用部分をプロセス路に注入するためのパージ流入口の形態で、1つ以上のフィードバックガス入口を設けることができる。
【0041】
或いは本発明において、最も広い定義ではCO回収システム22は、COのかなりの画分は、一般に合成すべき有機物質に転化できないので、炭化水素合成反応器24の下流に配置できる。メタノール合成反応器24に対し上流に配置する利点は、CO及びHの豊富流が引続くメタノール合成反応用の改良出発混合物を形成することである。これは、該豊富流における(〔H〕−〔CO〕)/(〔CO〕+〔CO〕)(但し、〔X〕は分子Xのモル含有量を表し、Xはメタノールの合成に最適の化学量論数2.03に近いH、CO又はCOである)として定義される化学量論比が増大したからである。
【0042】
図1の実施態様では、最適のシフト転化器18は、CO回収システム22上流のプロセス路に配置される。このシフト転化反応器は、CO及び水蒸気をH及びCOに転化するために配置される。水蒸気は、ライン19経由でシフト転化反応器に供給できる。その利点は、化学量論比が更に増大するように、ガス混合物中のH量が増加することである。この反応で形成されたCOは、工程(a)における輸送ガスとして有利に使用できる。
【0043】
ライン33沿いのメタノール合成反応器24から排出されるメタノールは、当然、所望要件に適合するよう更に処理してよい。このような処理としては、例えば蒸留を含んでよい精製工程、或いは例えばガソリン、ジメチルエーテル(DME)、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン及び液化石油ガス(LPG)のような他の液体を製造するための転化工程が挙げられる。
【0044】
フィードバック入口は、例えば本方法の始動相中、CO、N又は他の好適なガスを供給するための外部ガス供給源に接続できることが注目される。充分な量の合成ガス、したがって、充分な量のCOを製造している時は、フィードバック入口は、内部で製造されたCO豊富流からのCOを含有するフィードバックガスを排出するために配置された出口に接続してよい。本方法の始動用外部ガスとしては、窒素を使用することが好ましい。始動状況では二酸化炭素は容易に得られない。工程(b)で作られたガス流から回収される二酸化炭素が充分な量になった時は、窒素の量はゼロに低下できる。窒素は、好適にはいわゆる空気分離ユニットで作られ、このユニットは、工程(b)の酸素含有流も作る。したがって、また本発明は、工程(e)で得られる二酸化炭素を工程(a)で使用する本発明の特定の実施態様の方法を開始させる方法に関する。この方法では、窒素は工程(e)で得られる二酸化炭素の量が窒素と置換するのに充分な量になるまで、工程(a)において輸送ガスとして使用される。
【実施例】
【0045】
実施例1
下記表Iは、図1を参照して図示し説明した陣容において、石炭供給及び吹き戻し目的のため、窒素に代って、CO回収システム22からのCOを用いた場合の合成ガス組成物に対する効果を示す。合成ガス生産能力(CO及びH)は72600NM/hrであるが、他のいずれの能力も同様である。中央の欄は、CO回収システム22からのCO豊富なフィードバックガスをガス化反応器10への石炭供給及び乾燥固体除去ユニット12の吹き戻しに用いた時、湿潤スクラバー16から出る合成ガスの組成を示す。右欄は、フィードバックガスの代りにNを用いた場合の対照を示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表Iから判るように、合成ガス中の窒素含有量は、本発明を用いると、対照に比べて10のファクターより多く増加する。CO含有量は、対照に比べて少し増加したが、これはCOが窒素ほど多くメタノール合成反応に負担をかけないので、窒素含有量を低下させる利点に比べて、重要性が低いと考えられる。更にCOは、特に水性シフト反応を行なった後、常に合成ガス組成物の一部である。
【0048】
実施例2
下記表IIは、図1を参照して図示し、説明した陣容において、US−A−976442の例Iで使用された重量比約1.0(希釈相)に比べて、本発明によるCOと固体石炭燃料との重量比0.5未満(濃密相)(T1〜T3)を用いた場合の効果を示す。表IIから判るように、本発明による酸素1kg当たりの酸素消費量は、US−A−976442の例Iの場合の酸素消費量よりも著しく少ない。COと石炭との重量比は、好ましくは0.12〜0.20である。
【0049】
【表2】

【0050】
ここでは本発明を石炭からメタノールを製造する方法及びシステムに従って説明した。しかし、本発明は、一般に他のアルコール、ジメチルエーテル(DME)又はアルカン、酸素化アルカンの合成を含むヒドロキシル化(hydroxygenated)アルカンの合成に類似した方法に利用できる。これらの化合物は、合成ガスのガス流に対し、例えばフィッシャー・トロプシュ反応を行なって形成できる。
【0051】
特に本発明は、Hの製造に有利な1つ以上の方法も提供する。当業者ならば、Hの製造には、メタノール形成用反応器24を必要としないが、代りに合成ガス流からH豊富ガスを分離するためのH分離器があってもよいと理解する。H分離器の例は、圧力スイング吸着器(PSA)、膜分離器、冷却箱分離器又はそれらの組合わせがある。PSAの利点は、分離Hが昇圧で容易に得られることである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】石炭からメタノールへの合成システムのプロセスブロック計画の概要を示す。
【符号の説明】
【0053】
2 仕切りホッパー
6 供給ホッパー
10 ガス化反応器
12 乾燥固体除去ユニット
16 湿潤スクラバー
18 シフト転化反応器
22 CO回収システム
24 メタノール合成反応器
28 圧縮機
D 下流システム
F 炭素質燃料供給システム
G ガス化システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ガス化反応器のバーナーに炭素質燃料及び酸素含有流を供給する工程であって、CO含有輸送ガスを使用してバーナーに固体炭素質燃料を輸送する該工程、
(b)ガス化反応器中で炭素質燃料を部分酸化して、CO、CO及びHを少なくとも含むガス流を得る工程、
(c)ガス化反応器から工程(b)で得られたガス流を取出す工程、
を少なくとも含み、工程(a)でのCOと炭素質燃料との重量比が乾燥基準で0.5未満であることを特徴とする炭素質燃料からの合成ガス又は炭化水素生成物の製造方法。
【請求項2】
工程(a)に供給されるCO含有流が20m/s未満、好ましくは5〜15m/s、更に好ましくは7〜12m/sの速度で供給される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)での前記重量比が乾燥基準で0.12〜0.49の範囲、好ましくは0.40未満、更に好ましくは0.30未満、最も好ましくは0.20未満である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)での前記重量比が0.12〜0.2の範囲である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)で得られるガス流が、COを乾燥基準で1〜10モル%、好ましくは4.5〜7.5モル%含む請求項1〜4のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項6】
固体炭素質燃料が石炭である請求項1〜5のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)で得られたガス流が、更に処理され、これにより炭化水素生成物、特にメタノールが得られる請求項1〜6のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項8】
(d)COを少なくとも一部、COに転化してCO枯渇流を得ることにより、工程(c)で得られたガス流をシフト転化する工程、
を更に含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(e)工程(d)で得られたCO枯渇流をCO回収システムに通して、CO豊富流及び及びCO欠乏流を得る工程、
を更に含む請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
工程(e)で得られたCO欠乏流にメタノール合成反応を行なって、メタノールを得る請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(e)で得られたCO豊富流が少なくとも一部、工程(a)に供給されるCO含有流として使用される請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
工程(e)で得られる二酸化炭素の量が窒素と取替えるのに充分な量になるまで、工程(a)での輸送ガスとして窒素が使用される請求項9及び10、又は請求項9及び11に記載の方法を開始させる方法。



【図1】
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【公表番号】特表2009−511692(P2009−511692A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535036(P2008−535036)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067363
【国際公開番号】WO2007/042562
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】