説明

合成シリカガラス製造装置、合成シリカガラス製造方法

【課題】高品質の合成シリカガラスを製造することができる合成シリカガラス製造装置を提供する。
【解決手段】本合成シリカガラス製造装置は、ターゲット、バーナ等を内装する炉体に連通しこの炉体の下方に設けられた排気室と、この排気室に連通して設けられた排気流路と、この排気流路に連通して設けられた排気装置と、排気室内の圧力及び大気圧を検知する圧力検知手段と、排気流路に設けられこの排気流路への外気の取入量を制御可能な外気取入機構を備え、圧力検知手段により検知した排気室内の圧力と大気圧との差圧により、外気取入機構の外気取入量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成シリカガラス製造装置及びこれを用いた合成シリカガラス製造方法に係り、特に排気室内の圧力と大気圧との差圧により、排気流路への外気取入機構の外気取入量を制御する合成シリカガラス製造装置及びこれを用いた合成シリカガラス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に紫外線透過材料として、250nm以下の波長の光透過性が良く、不純物含有量の極めて少ない合成シリカガラスが用いられている。
【0003】
この合成シリカガラスの製造には火炎加水合成法が多く用いられ、この火炎加水合成法は、紫外線領域の波長を吸収する原因となる金属不純物の混入を避けるため、高純度の珪素化合物である四塩化珪素(SiCl)などの気体を、酸水素炎中に導入し、火炎加水分解させてガラス微粒子を直接回転する耐熱性基体上に堆積・溶融ガラス化させ、透明なガラスを製造する。
【0004】
このような火炎加水合成法によるシリカガラス製造法は、耐熱性基体上に堆積されなかったシリカガラス粉や反応ガスを、合成炉部の排気口から排気ダクトで連結されたフィルタ及び排気ファンを備えた排気装置を介して炉外に排出している。
【0005】
この排気装置の排気量の変動は、炉内温度の揺らぎとなり、シリカガラスの屈折率の不均質を生じさせる。また、排気口や排気流路にシリカガラス粉が付着することにより、排気量が減少し、炉内壁にもシリカガラスが付着し、インゴット中への気泡、異物混入の原因となり、排気量を一定に制御することは合成シリカガラスの品質上、極めて重要である。
【0006】
排気量を安定に制御する方法として、排気ダクト内に排気量を測定するためのセンサーを設け、排気ファンの回転数にフィードバックする方法(特許文献1)が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、排気ガス中には多量のシリカガラス粉が混入しているため、風量を測定するためのセンサー(風量計や差圧計)自体にシリカガラス粉が付着し正確な測定が不可能となり、排気量の変動により炉内温度の揺らぎとなり、シリカガラスの屈折率の不均質を生じさせ、さらに、インゴット中への気泡、異物混入の原因となり、高品質の合成シリカガラスを製造することができない。
【特許文献1】特開平7−109133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、高品質の合成シリカガラスを製造することができる合成シリカガラス製造装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、高品質の合成シリカガラスを製造することができる合成シリカガラス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するため、本発明に係る合成シリカガラス製造装置は、炉体内部に設けられたインゴット形成用のターゲットと、このターゲットを昇降させる昇降装置と、前記ターゲットに対向して炉体の上方に設けられ、珪素化合物を酸素水素火炎中で加水分解するバーナと、前記炉体に連通し、この炉体の下方に設けられた排気室と、この排気室に連通して設けられた排気流路と、この排気流路に連通して設けられた排気装置と、前記排気室内の圧力及び大気圧を検知する圧力検知手段と、前記排気流路に設けられ、この排気流路への外気の取入量を制御する外気取入機構を備え、前記圧力検知手段により検知した排気室内の圧力と大気圧との差圧により、前記外気取入機構の外気取入量を制御装置を介して制御することを特徴とする。
【0011】
また、上述した目的を達成するため、本発明に係る合成シリカガラス製造方法は、炉体内部に設けたインゴット形成用のターゲットに対向して炉体の上方に設けたバーナにより、珪素化合物を酸素水素火炎中で加水分解して、ターゲットに合成シリカガラスを堆積させるとともに、炉体に連通しこの炉体の下方に設けた排気室から排気流路を介して排気し、排気室内の圧力及び大気圧を検知し、排気室内の圧力及び大気圧の差圧により、排気流路への外気の取入量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る合成シリカガラス製造装置によれば、高品質の合成シリカガラスを製造することができる合成シリカガラス製造装置を提供することができる。
【0013】
また、本発明に係る合成シリカガラス製造方法によれば、高品質の合成シリカガラスを製造することができる合成シリカガラス製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1実施形態に係る合成シリカガラス製造装置について添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の第1実施形態に係る合成シリカガラスの製造装置の概念図である。
【0016】
図1に示すように、本第1実施形態の合成シリカガラスの製造装置1は、火炎加水合成法による合成シリカガラスを製造するための炉体2と、この炉体2内部に設けられたインゴット形成用のターゲット3と、このターゲット3を昇降させる昇降装置4、ターゲット3に対向して炉体2の上方に設けられ、珪素化合物を酸素水素火炎中で加水分解するバーナ5と、炉体2に連通しこの炉体2の下方に設けられた排気室6と、この排気室6に連通して設けられた排気流路7と、この排気流路7に連通して設けられ、フィルタ8a、排気ファン8bからなる排気装置8を備える。
【0017】
炉体2は耐火物で形成され、耐熱温度1300℃以上のものであれば使用可能であるが、合成インゴットへの不純物拡散を考慮すると、高純度アルミナ質、炭化珪素質、シリカガラスなどが好ましい。
【0018】
ターゲット3は円板形状をなし、このターゲット3に堆積する合成シリカガラス透明母材の堆積量に応じて、昇降装置4の働きで降下し、排気室6内に移動して、合成シリカ製造工程中は、常時、堆積した合成シリカの頂上部とバーナ5の距離がほぼ一定に保たれるようになっている。ターゲット3は堆積したシリカガラスへの不純物拡散を考慮すれば高純度なシリカガラスを使用することが好ましい。
【0019】
昇降装置4はターゲット3を昇降させるもので、いずれもボールネジからなるインゴット昇降軸4aと、このインゴット昇降軸4aを昇降移動させる昇降駆動用モータ(図示せず)で構成される。
【0020】
排気室6には、この排気室6内の圧力及び大気圧を検知して、両圧力の差圧を検知する圧力検知手段としての差圧センサー9が設けられる。
【0021】
外気取入機構10は排気流路7内の圧力を調整するためのもので、排気流路7に連通する外気取入管10aと、外気取入管10aの管流路を適宜開閉するダンパー機構10bからなる。さらに、このダンパー機構10bは管流路内に設けられた回動弁10bと、この回動弁10bを回動させるステッピングモータ10bからなる。
【0022】
従って、差圧センサー9で検知された差圧情報信号を合成シリカガラスの製造装置1全体を制御する制御装置11に送信し、この制御装置11により、ステッピングモータ10bを介して、回動弁10bの開度を調整することにより、排気流路7内の排気圧を容易かつ確実に調整して、排気室6の差圧が一定になるように排気量を制御する。
【0023】
また、差圧センサー9は排気口6aの下部に設ける。これにより、排気ガス中のシリカガラス粉が差圧センサー9に着するのを防止でき差圧を確実に測定できる。
【0024】
排気流路7はインゴット昇降軸4aに対して軸対称に、排気室6に複数個設けた排気口6aに連通されて2個設けられ、この排気流路7には各々この排気流路7を取り入れる外気取入機構10が設けられる。
【0025】
図2に示すように、バーナ5は、原料制御用マスフローコントローラ5a、高温に加温された恒温槽であるベーキング装置5bに連通され、また、マスフローコントローラ5aを介して支燃ガスOのO供給源に、可燃ガスHのH供給源に連通されており、メインタンク5cに溜められ、ベーキング装置5b、マスフローコントローラ5aを介して送られてくる珪素化合物を酸素水素火炎中で加水分解するものである。このマスフローコントローラ5aは、制御装置11により制御され、バーナ5のガス供給量を制御できるようになっている。
【0026】
図3に示すように、合成シリカガラスの製造装置1を用いた合成シリカガラスの製造工程中、制御装置11による駆動用モータ4b、マスフローコントローラ5a、排気ファン8b、ステッピングモータ10b等の制御は、事前に制御装置11にプログラムされた制御手順に従って行われ、必要に応じ制御装置11に設けられた入力手段(図示せず)からの入力により行われる。
【0027】
なお、本実施形態では、外気取入機構10を外気取入管10aとダンパー機構10bで構成したが、外気取入管を設けず、排気流路に外気取入口を開口し、この開口の開度制御をステッピングモータなどにより回動させる回動弁によって行ってもよい。
【0028】
次に本発明に係る合成シリカガラスの製造装置を用いた合成シリカガラスの製造方法について説明する。
【0029】
図1及び図3に示すように、制御装置11の制御により、最初に原料供給源から液体状の原料珪素化合物をメインタンク5cに供給する。次に、N供給源から加圧用Nをメインタンク5cに送り、このNの圧力により、液体状の珪素化合物をベーキング装置5bに所定量供給する。
【0030】
ベーキング装置5bに供給された液体状の珪素化合物は、加熱され、気化して、加圧用Nと共に、マスフローコントローラ5aに制御され所定流量だけ、バーナ5に供給される。これと同時に排気装置8を作動させ、排気流路7を介して炉体2、排気室6内の強制排気を開始する。バーナ5に供給された気体珪素化合物は、マスフローコントローラ5aを介してO供給源、H供給源から供給される支燃ガス用O、可燃ガスのHと共にバーナ5に供給され、珪素化合物は酸素水素火炎中で加水分解される。このバーナ5中で、加水分解された珪素化合物からSiOからなる合成シリカガラスが合成され、バーナ5の下方に設けられたターゲット3に堆積し、合成シリカガラス透明母材が製造される。
【0031】
この合成シリカガラスの製造工程において、差圧センサー9より排気室6内の差圧を検知し、差圧情報信号に基づき、ダンパー機構10bにフィードバックし、ダンパー機構10bの開閉度によって、外気取入機構10からの外気の取り入れ量を調整して、排気室6の差圧が一定になるように排気量の制御を行い、排気流路7内の圧力を調整し、炉体2内のSiO以外の反応生成ガスを排気室6に設けた2個の排気流路7から偏流なく強制排気する。
【0032】
従って、炉体2、排気室6内に排気ガスが停滞せず、堆積効率を向上させ、透明母材に変形した成長がなく、また、インゴット中への気泡及び異物混入がなく、さらに、排気量の変動がなく炉内温度の揺らぎもなくなり、シリカガラスの屈折率が均質になり、高品質の合成シリカガラスを製造することができる。
【0033】
本第1実施形態の合成シリカガラス製造装置によれば、高品質の合成シリカガラスが実現する。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態に係る合成シリカガラス製造装置について説明する。
【0035】
本発明の第2実施形態は、第1実施形態が1個の合成シリカガラス製造装置に設けた1個の排気装置を用いて排気を行うのに対して、複数個の合成シリカガラス製造装置を1個の排気装置を共用して、排気を行う。
【0036】
例えば、図4に示すように、本第2実施形態の合成シリカガラス製造装置21は、図1と同様の炉体2、ターゲット3、昇降装置4、バーナ5、排気室6、排気室6に連通する排気流路7、外気取入機構10からなり、排気室6に差圧センサー9を設け、これを複数個の制御装置11で制御する複数個の製造装置本体21Aを備え、この複数個の製造装置本体21Aは排気流路7を介して1個の排気装置8に接続される。なお、図4の炉体2は図1の炉体を簡略化して示す。
【0037】
これにより、各排気室6内の圧力と大気圧との差圧により、各排気流路7に設けた外気取入機構10の外気取入量を制御し、各排気室6の差圧がほぼ等しくなるように制御する。従って、1個の排気装置8により複数個の製造装置本体21Aの排気が可能となり、設備費用を低減でき、さらに、第1実施形態と同様に、炉体2、排気室6内に排気ガスが停滞せず、堆積効率を向上させ、透明母材に変形した成長がなく、また、インゴット中への気泡及び異物混入がなく、さらに、排気量の変動がなく炉内温度の揺らぎもなくなり、シリカガラスの屈折率が均質になり、高品質の合成シリカガラスを製造することができる。
【0038】
本第2実施形態の合成シリカガラス製造装置によれば、高品質の合成シリカガラスが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る合成シリカガラスの製造装置の概念図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る合成シリカガラスの製造装置に用いる制御回路図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る合成シリカガラスの製造装置の原料供給系統図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る合成シリカガラスの製造装置の概念図。
【符号の説明】
【0040】
1 合成シリカガラスの製造装置
2 炉体
3 ターゲット
4 昇降装置
4a インゴット昇降軸
4b 昇降駆動用モータ
5 バーナ
6 排気室
6a 排気口
7 排気流路
8 排気装置
8a フィルタ
8b 排気ファン
9 差圧センサー
10 外気取入機構
10a 外気取入管
10b ダンパー機構
10b 回動弁
10b ステッピングモータ
11 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体内部に設けられたインゴット形成用のターゲットと、
このターゲットを昇降させる昇降装置と、
前記ターゲットに対向して炉体の上方に設けられ、珪素化合物を酸素水素火炎中で加水分解するバーナと、
前記炉体に連通し、この炉体の下方に設けられた排気室と、
この排気室に連通して設けられた排気流路と、
この排気流路に連通して設けられた排気装置と、
前記排気室内の圧力及び大気圧を検知する圧力検知手段と、
前記排気流路に設けられ、この排気流路への外気の取入量を制御する外気取入機構を備え、
前記圧力検知手段により検知した排気室内の圧力と大気圧との差圧により、前記外気取入機構の外気取入量を制御装置を介して制御することを特徴とする合成シリカガラス製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の合成シリカガラス製造装置において、この合成シリカガラス製造装置を複数個用いるとともに、共通の1個の排気装置を設け、
この排気装置は各排気室に各々連なる複数個の排気流路に連通され、
前記各排気室内の圧力と大気圧との差圧により、前記各排気流路に設けた外気取入機構の外気取入量を制御し、前記各排気室の差圧がほぼ等しくなるように制御することを特徴とする合成シリカガラス製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の合成シリカガラス製造装置において、前圧力検知手段は、排気室に設けた差圧センサーであり、この差圧センサーが、前記排気流路より下方に配置されていることを特徴とする合成シリカガラス製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の合成シリカガラス製造装置において、前記排気流路は昇降装置のインゴット昇降軸に対して軸対称に、排気室に複数個設けることを特徴とする合成シリカガラス製造装置。
【請求項5】
炉体内部に設けたインゴット形成用のターゲットに対向して炉体の上方に設けたバーナにより、珪素化合物を酸素水素火炎中で加水分解して、ターゲットに合成シリカガラスを堆積させるとともに、
炉体に連通しこの炉体の下方に設けた排気室から排気流路を介して排気し、
排気室内の圧力及び大気圧を検知し、排気室内の圧力及び大気圧の差圧により、排気流路への外気の取入量を制御することを特徴とする合成シリカガラス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−137871(P2008−137871A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328125(P2006−328125)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(592104944)コバレントマテリアル徳山株式会社 (24)
【出願人】(000221122)東芝セラミックス株式会社 (294)
【Fターム(参考)】