説明

合成ジエンエラストマーとシリカのマスターバッチの製造方法

【課題】
シリカ/合成ジエンエラストマーマスターバッチの製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、下記の連続する工程を含むことを特徴とする、シリカ/合成ジエンエラストマーマスターバッチの製造方法に関する:
・シリカを少なくとも2価の金属元素でドーピングする工程;
・得られたドープシリカの少なくとも1種の水中分散液を調製する工程;
・合成ジエンエラストマーラテックスを上記水性ドープシリカ分散液と接触させ、これらを一緒に混合して凝固物を得る工程;
・凝固物を回収する工程;および、
・回収凝固物を乾燥させてマスターバッチを得る工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性シリカと合成ジエンエラストマーラテックス、特にスチレン/ブタジエンラテックスを少なくとも含むシリカ/合成ジエンエラストマーマスターバッチの製造に関する。用語“マスターバッチ”は、充填剤および必要に応じての他の添加剤を導入しているエラストマーをベースとする組成物を示す。
本発明は、特に、そのようなマスターバッチの、無機充填剤で補強したジエンゴム組成物の製造における使用に関する;これらの組成物は、タイヤまたはタイヤ用の半製品、特にこれらのタイヤ用のトレッドの製造を意図する。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッドにおいて充填剤によって付与される最適の補強特性および高耐摩耗性を得るには、この充填剤は、エラストマーマトリックス中で、できる限り微分割され且つできる限る均一に分布する双方の最終形で存在することが適切であるが一般に知られている。しかしながら、そのような条件は、この充填剤が、一方では上記エラストマーとの配合中にマトリックス中に取込まれて且つ解凝固し、そして、他方ではこのマトリックス中に均一に分散する極めて良好な能力を有する場合にのみ得ることができる。
【0003】
知られているように、カーボンブラックはそのような能力を有するが、一般に、無機充填剤、特に、シリカの場合は異なる。このことは、相互親和性故に、これらの無機充填剤粒子がエラストマーマトリックス中で一緒に凝集する厄介な性向を有することによる。そのような相互作用は、充填剤の分散を、従って、補強特性を、配合操作中に生じさせ得る無機充填剤/エラストマー結合の全てを実際に得られるとした場合に達成することが理論的に可能であるレベルよりも実質に低いレベルに制限するという有害な結果を有する。これらの相互作用は、さらにまた、ゴム組成物の未硬化状態における粘度を上昇させ、従って、ゴム組成物を加工することをカーボンブラックが存在する場合よりも困難にしている傾向も有する。
【0004】
燃料節減および環境保護の必要性が優先事項となって以来、低下した負荷抵抗性を有するタイヤをその耐摩耗性を損なうことなく生産する必要性が判明してきている。
このことは、特に、これらのタイヤのトレッドにおいて、無機充填剤、特に、高分散性タイプの特定のシリカで補強した新規なゴム組成物を使用することによって可能になってきている;上記特定のシリカは、補強の点で通常のタイヤ級カーボンブラックと拮抗し得ると共に、これらの組成物に、これらの組成物を含有するタイヤにおける低い転がり抵抗性と同義である低いヒステリシスを、さらにまた、降雨、積雪または氷結地面上での改良されたグリップ性をも付与する。
【0005】
使用者に提供するエネルギー節減性故に“グリーンタイヤ”とも称する低転がり抵抗性を有するタイヤ(“グリーンタイヤ概念”)において使用することのできる、HD (高分散性)シリカまたはHDS (高分散性シリカ)を充填剤したトレッドは、数多く開示されている。特に、特許出願EP 501 227号、EP 692 492号、EP 692 493号、EP 735 088号、EP 767 206号、EP 786 493号、EP 881 252号、WO99/02590号、WO99/02601号、WO99/02602号、WO99/06480号、WO00/05300号およびWO00/05301号を参照し得る。
【0006】
これらの従来技術の文献は、100m2/gと250m2/gの間のBET比表面積を有するHDシリカの使用を教示している。実際に、“グリーンタイヤ”分野において使用されている高比表面積を有する1つのHDシリカは、特に、Rhodia社から販売されているシリカ“Zeosil 1165 MP”(約160m2/gのBET表面積を有する)である。このZeosil 1165 MPシリカの使用は、タイヤ性能、特に、満足し得る耐摩耗性と転がり抵抗性の点での良好な妥協点を得ることを可能にする。
【0007】
高比表面積を有するシリカを使用する利点は、主として、シリカ‐エラストマー結合数を増大させること、従って、エラストマーの補強レベルを増進させることが可能である点にある。このことが、タイヤトレッドゴム組成物において、通常使用する比表面積よりもおそらく高い、即ち、160m2/g辺りの高比表面積を有するシリカを使用して、特に、これらのトレッドの耐摩耗性を改良することが有利である理由である。しかしながら、充填剤の分散性と充填剤の比表面積の増大は、相反する性質であるとみなされている。このことが、高比表面積が充填剤粒子間の相互作用の増進を、ひいてはエラストマーマトリックス中での貧弱な充填剤分散および加工の困難性を意味する理由である。
【0008】
充填剤とエラストマーを“液”相中で配合することからなる、エラストマーマトリックス中での充填剤の分散性を改良するもう1つのタイプの解決法も構想されてきている。そうするためには、その方法は、水分散エラストマー粒子の形にあるラテックス形のエラストマーおよび充填剤の水性分散液、即ち、通常“スラリー”と称する水中に分散させたシリカに関連する。しかしながら、上記エラストマーラテックスを上記スラリーと接触させても、液媒中での凝固を可能にしない;この凝固は、乾燥後、所望のシリカ/エラストマーマスターバッチを得ることとなる固形物を得るためには必須である。このことは、シリカ凝結体(aggregate)が本来典型的に親和性であり、水との親和性を有することによる。そのように、シリカ凝結体は、エラストマー粒子自体とよりも水と高い親和性を有する。
【0009】
しかしながら、“液”相中でのこの凝固およびエラストマーマトリックス中の充填剤の良好な分散を得るための、エラストマーとシリカとの親和性を増進させるための薬剤、例えば、カップリング剤と、凝固を起させるための凝固剤と称する薬剤との組合せ使用による種々の解決法が提案されている。
即ち、例えば、特許 US 5 763 388号は、シリカを、ゴムラテックス中に、シリカを切断剤(cutting agent)で処理し、得られた処理シリカを通常の凝固剤と混合することによって取込ませることを提案している。
また、特許 EP 1 321 488号は、負荷電シリカの水性分散液を、ポリアミンのような凝固剤の存在下に、ジエンエラストマーラテックスおよびポリスルフィド切断剤含有エマルジョンと接触させることを提案している。
【発明の概要】
【0010】
本出願人等は、驚くべきことに、凝固剤もカップリング剤も使用しないで“液”相中で製造したシリカ/エラストマーマスターバッチを得る方法を見出した。そのような方法は、さらに、予め導入した充填剤の量に対して極めて良好な収率(80質量%よりも高い)のみならず充填剤のエラストマーマトリックス中での良好な分散も得ることを可能にする。
勿論、そのような方法は、上記したような高分散性シリカによって実施した場合に、なお一層有益であろう。
【0011】
本発明に従うシリカ/合成ジエンエラストマーマスターバッチの製造方法は、下記の連続する工程を含む:
・シリカを少なくとも二価の金属元素でドーピングする工程;
・得られたドープシリカの少なくとも1種の水中分散液を調製する工程;
・合成ジエンエラストマーラテックスを上記水性ドープシリカ分散液と接触させ、これらを一緒に混合して凝固物を得る工程;
・凝固物を回収する工程;および、
・回収凝固物を乾燥させてマスターバッチを得る工程。
【0012】
上記方法の1つの実施態様によれば、上記凝固物回収工程は、濾過操作によって実施する。
もう1つの実施態様によれば、上記凝固物回収工程は、遠心分離操作によって実施する。
好ましくは、合成ジエンエラストマーラテックスは、スチレン/ブタジエンコポリマー即ちSBRラテックスであり、さらにより好ましくは、上記合成エラストマーラテックスは、エマルジョン中で調製したSBRである。
【0013】
本発明の1つの実施態様によれば、シリカは、沈降シリカである。
有利には、上記金属元素はアルミニウムであり、好ましくは、下記の条件の1つを満たす:
(i) 配合物pHは3.5と5.5の間であり、シリカのアルミニウムドーピング量は0.5質量%以上である;
(ii) 配合物pHは5.5以上であり、シリカのアルミニウムドーピング量は(2×pH−10)以上である。
【0014】
本発明のもう1つの主題は、下記の連続する工程を含む方法に従って製造したシリカ/合成ジエンエラストマーマスターバッチである:
・シリカを少なくとも二価の金属元素でドーピングする工程;
・得られたドープシリカの少なくとも1種の水中分散液を調製する工程;
・合成ジエンエラストマーラテックスを上記水性ドープシリカ分散液と接触させ、これらを一緒に混合して凝固物を得る工程;
・凝固物を回収する工程;および、
・回収凝固物を乾燥させてマスターバッチを得る工程。
【0015】
本発明のさらにもう1つの主題は、上述の発明に従う本発明によって製造した少なくとも1種のシリカ/合成ジエンエラストマーマスターバッチをベースとするゴム組成物、さらにまた、少なくとも1種のそのようなゴム組成物を含む最終物品または半製品、タイヤトレッド、およびタイヤまたは半製品である。
【0016】
“シリカを金属元素でドーピングする”なる表現は、シリカの表面を修飾してこの金属元素をシリカの周辺層内部および/またはこのシリカの表面上に取込ませることを意味するものと理解されたい。拡大解釈すれば、用語“ドープシリカ”、特に、“アルミニウムドープシリカ”は、金属元素、特に、アルミニウムをその周辺層の内部におよび/またはその表面上に含むシリカを意味するものと理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
I. 測定および試験法
I‐1) アルミニウムドーピングの測定
この方法は、原子発光分析法(ICP‐AES)によりドープシリカの表面アルミニウムを測定するのに使用する。これらのシリカは、市販シリカをドーピングすることによって調製する。
上記シリカは消化されないので、この方法により、シリカの芯部に存在するアルミニウムを測定することはできない。
【0018】
a) 原理
アルミニウムを高温硫酸により溶解し、その後、誘導結合プラズマ‐原子発光分析法(ICP‐AES)により測定する。表面アルミニウム含有量は、出発市販シリカのアルミニウム含有量を差引くことによって算出する。使用する較正範囲は、0〜20mg/lのアルミニウムである。2回の測定を試験標本毎に実施する。
【0019】
b) 装置
・精密(0.1mgスケール)てんびん;
・漏斗:
・100mlクラスA容量フラスコ;
・250mlクラスA容量フラスコ;
・10mlメスシリンダーまたは10ml酸ディスペンサー;
・50mlメスシリンダー;
・0.1〜1ml容量可変目盛り付きマイクロピペット(例えば、エッペンドルフ型マイクロピペット);
・0.5〜5ml容量可変目盛り付きマイクロピペット(例えば、エッペンドルフ型マイクロピペット);
・0.45μm孔径を有する酢酸セルロースシリンジフィルター;
・30mlサンプルホルダー;
・ICP分光計(例えば、Jobin Yvon Activa M分光計);
・250ml広口エーレンマイヤーフラスコ;
・砂浴。
【0020】
c) 反応剤
・超純水;
・濃硝酸(例えば、RP NORMAPUR REF 20.422.297)
d = 1.41
%HNO3 = 65;
・濃塩酸(例えば、RP NORMAPUR REF 20.252.290)
d = 1.18
%HCl = 37;
・濃硫酸(例えば、RP MERCK REF 1.00731.1000)
d = 1.84
%H2SO4 = 95〜97;
・1g/lアルミニウム標準溶液(例えば、MERCK REF HC 812641)。
【0021】
d) 操作方法
d)‐1. 5容量%硫酸溶液の調製
200mlの脱塩水を、1リットルのクラスA容量フラスコに、メスシリンダーを使用して導入する。次に、50mlの濃(3.4)硫酸を、メスシリンダーを使用して導入する。均質化後、溶液を放置して冷却する。フラスコを脱塩水で容量ラインまでにする。
【0022】
d)‐2. 砂浴上の開放装置内でのシリカの調製
測定は、2回実施する。好ましくは、試験群毎に、ブランク試験を実施する(同じ条件下であるが試験標本を含まない調製物)。また、ドーピング前の原料シリカも分析する。
・250mgのシリカを、エーレンマイヤーフラスコ内に秤量する;
・20mlの5% (§5.1)硫酸を上記フラスコ内に注ぎ込む;
・砂浴を使用して、内容物を完全に乾燥するまで加熱する;
・フラスコを放置して冷却する;
・エーレンマイヤーフラスコの壁を少量の水で濯ぎ、その後、12.5mlの65% (§3.2)濃硝酸と12.5mlの37%濃塩酸を添加する(Alドープシリカに対してのみ) (§3.3);
・内容物を煮沸させる;
・フラスコを放置して冷却し、その後、内容物を250ml目盛り付きフラスコに定量的に移す;
・フラスコを、脱塩水を使用して容量ラインまでにする;
・溶液を、0.45μmシリンジフィルターを使用して濾過する;
・ICP‐AES分析を実施する。
【0023】
d)‐3. 較正範囲の調製物
アルミニウム較正範囲の調製物
下記の表に示す反応剤は、c項において上述した濃度に相応する。


これらの較正標準は、4ヶ月間保存可能である。
【0024】
10mg/lバリデーション対照の調製
検証対照は、測定群毎に、上記較正標準と同じ方法で、異なるバッチの1mlの1g/lアルミニウム標準溶液を導入することによって調製し、較正を検証することを可能にする。検証対照は、使用後保存しない。
【0025】
d)‐4. ICP‐AESによる測定
分析順序
1) 較正;
2) 10mg/l (マグネシウム)または10mg/l (アルミニウム)バリデーション対照;
3) 試験標本+ブランク試験;
4) E5 (20mg/lアルミニウム)検証標準。
【0026】
0〜50mg/lアルミニウム範囲における較正のバリデーション
バリデーション対照(理論値:20mg/l)
許容範囲:19.6mg/l < [アルミニウム] < 20.4mg/l。
0〜50mg/lアルミニウム範囲における分析順序のバリデーション(このバリデーションはドリフトが存在しないことを実証する)
E5検証標準(理論値:50mg/l)
許容範囲:49mg/l < [アルミニウム] < 51mg/l。
【0027】
Activa ICP‐AESパラメーター
・プラズマおよびスプレー設定:
・サイクロンスプレーチャンバー(スコットチャンバー);
・ポンプ速度:20rpm;
・プラズマガス流量:12 l/分;
・シースガス流量:0.2 l/分;
・補助ガス流量:0 l/分;
・スプレー流量*:0.87ml/分;
・スプレー圧*:2.97バール;
・濯ぎ時間:20秒;
・移送時間:30秒;
・安定化時間:20秒;
・同心スプレーノズル(Meinhard);
・ジェネレーター出力:1100W。
【0028】
検出パラメーター:


【0029】
e) 結果
試験標本の表面アルミニウム含有量(質量%での)は、下記によって得られる:
表面Al = %Alドープシリカ − %Al原料シリカ
例:Al160 MP = 0.23質量%。
測定不確定性は、Jobin Yvon Activa M ICP‐AES分光計において、6日間に亘って1日3回測定を用いて判定した。得られる不確定性は、3つの標準偏差である。2.53質量%Alドープシリカにおいては、不確定性は±0.23質量%であり、9.09%の相対的不確定性に相当する。
【0030】
I‐2) pH測定
pHは、ISO 787/9規格に由来する下記の方法を使用して測定する(水中5%懸濁液のpH)。
装置
・Mettler Toledo MP225 pHメーター;
・自動温度補償による電極:
Inlab (登録商標) Reach Pro電極 (スラリーの合成およびpH用);
Inlab (登録商標) Solids Pro電極 (配合物のpH用);
・Heidolph MR3003加熱マグネチックスターラー。
【0031】
小器具
・水性シリカ分散液のpH用の100mlガラスビーカー(直径:4.7cm、高さ:7cm);
・配合物のpH用の250mlガラスビーカー(直径:6.5cm、高さ:9.3cm);
・上記各ビーカーのサイズに合致した棒磁石;
・5Lガラス二重壁反応器。
【0032】
操作方法
水性分散液または配合物のpH測定のための操作方法:
1) 4.01、7.01および10.01pH緩衝液による電極の較正;
2) 磁力撹拌により500rpmで撹拌する水性分散液(または配合物);
3) ビーカー内での電極の浸漬およびpHの読取り。
ドーピング合成中のpH測定のための操作方法:
1) 4.01、7.01および10.01pH緩衝液による電極の較正;
2) 磁力撹拌(約650rpm)により撹拌する反応混合物;
3) 反応器内での電極の浸漬およびpHの読取り。
【0033】
I‐3) TGAによる充填剤量の測定
この操作方法の目的は、ゴムコンパウンドの各カテゴリーの構成成分を定量することである。構成成分の1つカテゴリーに相応する各々の3つの温度範囲を区分する:
・有機物、即ち、エラストマー、オイル、加硫剤等に相応する250℃と550℃の間の温度;
・損失物に相応する550℃と750℃の間の温度;
・灰分、即ち、ZnO、おそらくはシリカ等に相応する750℃よりも高い温度。
上記方法は、未硬化コンパウンドおよび硬化コンパウンドの双方に適用する。
【0034】
a) 装置
・Mettler Toledoアナライザーをベースとする熱重量分析装置:TGA 851またはDSC1 TGAモデル;
・1/100mgてんびん(てんびんの型式およびモデル);
・70μl(ふた無し)アルミナるつぼ(Mettler Toledo リファレンス 00024123)
・各種実験室器具品目:ピンセット、はさみ等。
【0035】
b) 原理
温度上昇に供したコンパウンド試験標本の質量損失をモニターする。温度上昇は、下記の2段階において生じる:
1) 揮発性物質を蒸発させ且つ有機物を熱分解させるための不活性(N2)雰囲気中での25℃から550℃までの加熱。これらの物質に由来する生成物の揮発は、先ず(300℃未満において)揮発性物質に相応し、次いでコンパウンド中に当初から存在する有機物に相応する質量損失をもたらす。
2) 酸化性雰囲気(空気またはO2)中でのカーボンブラック(および/または炭素物質)を焼失させるための750℃までの加熱継続。カーボンブラック等に由来する生成物の揮発は、カーボンブラック(および/または炭素物質)の初期量に相応する質量損失をもたらす。
これらの処理後に残存する生成物は、一般に、無機物質、例えば、ZnO、シリカ等からなる灰分を構成する。
【0036】
c) 測定
c)‐1. 試験標本の調製
分析する生成物の量は、0.01mg内まで秤量しなければならず、20mgと30mgの間である。その後、生成物を70μlのアルミナるつぼ(ふた無し)に入れる。
c)‐2. 上記“方法”の明確化(温度プログラム)
以下の区分を連続して明確にする:
・第1区分:窒素中50℃/分での25℃から550℃までの動的区分(40ml/分);
・第2区分:空気(またはO2)中10℃/分での550℃から750℃までの動的区分(40ml/分);
“ブランク曲線減算”フィールドを活性化する。
測定は、いずれもブランク曲線によって自動的に補正される。ブランク曲線は、測定と同じ条件であるが空のるつぼによって得られる。ブランク曲線は、保存し、全てのその後の測定に対して使用する(各測定の前に新たなブランク試験は必要でない)。
【0037】
c)‐3. 測定の開始
炉の制御窓口を調べることによって、事前チェックを行い、窒素および空気流量(40ml/分)が適切に設定されているかを確認する。適切でなければ、これらの流量を、“ガスボックス”上に設置した調整器を使用して調整する。
ブランク曲線
ブランク曲線は、TGA操作マニュアルに記載されている手順を使用して描く。
測定
測定は、TGA操作マニュアルに記載されている手順を使用して実施する。
【0038】
c)‐4. 上記曲線の活用
TGA操作マニュアルの使用説明に従う:
・活用すべき曲線を選択し、開く;
・揮発性物質に相応する第1プラトーを、この曲線において、それぞれ25℃とほぼ250℃の間で明確にする;
・揮発性物質の量に相応する質量損失(%での)を算出する;
・有機物に相応する第2プラトーを、この曲線において、それぞれほぼ250℃の第1プラトー温度と550℃の間で明確にする;
・有機物の量に相応する質量損失(%での)を算出する;
・損失物に相応する第3プラトーを、この曲線において、それぞれ550℃と750℃の間で明確にする;
・これらの損失物の量に相応する質量損失(%での)を算出する;そして、
・%での残留物または灰分含有量を算出する。
【0039】
c)‐5. 揮発性物質の存在
室温で蒸発し得る揮発性物質を含有するある種のコンパウンドにおいては、試験標本の調製と実際の測定開始の間で物質損失のリスクが存在する。
これらの損失を、装置は考慮しない。
【0040】
これらの損失を考慮し、コンパウンドの実際の組成を得るためには、下記の手順を実施し得る:
上記の工程c)‐1〜c)‐3を、下記の設定点によって実施する:
・試験標本の調製中:空のるつぼの質量(P0)と試験標本の質量(P1)を記録する;
・測定の実施中:“るつぼ質量”フィールドおよび“試験標本質量”フィールドを、それぞれ、P0およびP1で示す。
【0041】
実施(工程c)‐4)においては、TGA装置は、損失物の判定において、TGA装置が測定の有効な出発時にるつぼの質量から算出する試験標本の質量P2を考慮する、このことは、残留物を算出するのに最重要性を有する;P2は、時間T0−P0での質量P3 (るつぼ+試験標本)−P0を考慮するTGA装置が算出する。
各種構成成分および残留物の量は、調製中に明確にした試験標本質量P1に対して算出する(P2に対してではない)。
【0042】
装置がそのとき算出した揮発性物質の量は、揮発性物質MVの1部、即ち、(P1−P2)が調製と実際の測定開始の間の待期時間中に蒸発しているので間違いである。従って、MV値は、手入力で再算出しなければならない:
・質量に関して:MV (mgでの) = (P1−P2) (mgでの)+第1プラトー損失物(mgでの);
・量について:T×MV (%での) = 100×MV (mgでの)/P1、または100−第1プラトー残留物(%での)。
【0043】
c)‐6. %moでの充填剤量
この量は、%mo、即ち、有機物のパーセントで表し、TGA測定を下記の式を使用して解釈したときの計算によって得られる:
T×充填剤(%moでの) = 100×[(D)/(B+C)]
この式においては、Bは有機物(250℃と550℃の間の間隔における)のパーセントを示し、Cは損失物(550℃と750℃の間における)のパーセントを示し、Dは残留物(750℃よりも上における)のパーセントを示す。
【0044】
I‐4) 凝固収率の測定
凝固収率は、回収乾燥質量(上記の各パラグラフにおけるTGA測定プロトコールにおいて明確にしたような揮発性物質の質量を差引いた)対意図した出発質量の100を掛けた比に相当する。
【0045】
II. 本発明の詳細な説明
本発明に従うシリカ/合成ジエンエラストマーマスターバッチの製造方法は、下記の連続する工程を含む:
・シリカを少なくとも二価の金属元素でドーピングする工程;
・得られたドープシリカの水中分散液を調製する工程;
・合成ジエンエラストマーラテックス、特に、スチレン/ブタジエンコポリマー即ちSBRラテックスを上記ドープシリカ分散液と接触させ、これらを一緒に混合する工程;および、
・そのようにして得られたマスターバッチを回収し、乾燥させる工程。
【0046】
II‐1) 水性シリカ分散液の調製
上記方法の第1工程においては、シリカを、少なくとも二価の金属元素によってドーピングする。少なくとも二価の金属元素としては、特に、アルミニウムを挙げることができる。シリカを“ドーピング”するこの工程は、有利には、特許出願WO 02/051750号に詳細に説明されているプロトコールに従って実施し得る。得られるドーピング量は、シリカの100質量部当りのアルミニウム質量パーセントに相応する。
【0047】
本発明においては、当業者にとって既知の任意のシリカ(SiO2)、特に、共に450m2/g未満であり、好ましくは30〜400m2/gの範囲にあるBET表面積およびCTAB比表面積を有する任意の沈降または焼成シリカを使用し得る。特に、高特異性シリカ(“HDS”)を使用し得る。例えば、下記のシリカ類を挙げることができる:Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類。
【0048】
好ましくは2質量%以上の、さらにより好ましくは2.5質量%よりも高いドーピング量を有するドープシリカを製造する;ドーピング量は、質量で示すドープシリカ中に存在するアルミニウム含有量を示す。
【0049】
その後、得られたドープシリカを水中に分散させ、好ましくは、容易に“取扱い可能”であるように十分な粘度を有する分散液を得るようにする。例えば、水中で4質量%のシリカ含有量を有するドープシリカ水性分散液を製造することができる。
有利には、上記分散液は、音波処理して凝結体を水中で安定化させるようにし、それによって後で製造するマスターバッチ中での上記水性ドープシリカの分散を改良することを可能にする。この音波処理は、特に、PTZ (レファレンス75010)結晶圧電コンバーター、プローブ用のブースターおよび直径19mm(127mmの高さに対して)のチタン合金プローブを備えたSonics and Materials社製の1500ワットVibracellジェネレーターを使用して実施し得る。
【0050】
この水性ドープシリカ分散液に強酸または弱酸のような酸化剤を添加して、この水性ドープシリカ分散液のpHを改変して下記で説明する2つの分散液を互いに接触させるときに所望の配合物pHを得るようにすることは、有用であり得る。
当業者であれば、その場合、数回の操作の細分化を実施して上記水性分散液のpHを調整して所望の配合物pHを得るようにしなければならない。当業者であれば、あるべき配合物のpHを、注入容量および分散液各々のpHに従い、先験的に判定することは、pH変化に対する影響を有するエラストマーラテックスの本質に伴う極めて多くの変動要因のために可能ではないことは承知していることである。
【0051】
II‐2) 合成ジエンエラストマーラテックス
知られている通り、用語“ジエン”エラストマーまたはゴムは、ジエンモノマー(共役型であり得るまたはあり得ない2個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも部分的に得られるエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
【0052】
これらジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に分類し得る。用語“本質的に不飽和”とは、一般に、共役ジエンモノマーに少なくとも部分的に由来し、15%(モル%)よりも多いジエン単位数またはジエン起源(共役ジエン類)単位数を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。従って、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエン/α‐オレフィンコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記の定義には属さず、特に“本質的に飽和”のジエンエラストマー(常に15%未満である、少ないまたは極めて少ないジエン起原単位数)と称し得る。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、用語“高不飽和”ジエンエラストマーとは、特に50%よりも多いジエン起源(共役ジエン)の単位数を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0053】
これらの定義を考慮すれば、“本発明に従う組成物において使用することのできる合成ジエンエラストマー”なる表現は、さらに詳細には、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンを他のジエンまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) 例えば、エチレンと、プロピレンと、特に1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンのような下記のタイプの非共役ジエンモノマーとから得られるエラストマーのような、エチレンと、3〜6個の炭素原子を有するα‐オレフィンとを、6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
【0054】
以下は、共役ジエンとして特に適している:1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン;1,3‐ペンタジエン;および2,4‐ヘキサジエン。適切なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン;オルソ‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン;市販の“ビニルトルエン”混合物;パラ‐tert‐ブチルスチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンおよびビニルナフタレンである。
【0055】
上記コポリマーは、99質量%と20質量%の間のジエン単位および1質量%と80質量%の間のビニル芳香族単位を含み得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。これらのエラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液としてまたは溶液中で調製し得る。これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型形状化剤(star‐configuring agent)或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型形状化し或いは官能化し得る。カーボンブラックにカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基、または、例えばアミノベンゾフェノンのようなアミン官能基を挙げることができる。シリカのような補強用無機充填剤にカップリングさせるには、例えば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号、US 6 013 718号およびWO 2008/141702号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号、US 6 503 973号、WO 2009/000750号またはWO 2009/000752号に記載されているような)を挙げることができる。また、他の官能化エラストマーの例としては、エポキシ化エラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0056】
以下が、適している:ポリブタジエン、特に、4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブジエンまたは80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と−60℃の間のASTM D3418に従って測定したTg (ガラス転移温度)、5質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−5℃と−50℃の間のTgを有するコポリマー。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマー類の場合は、特に適しているのは、5質量%と50質量%の間、特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分1,2‐+3,4‐単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するコポリマー、および、さらに一般的には、−5℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーである。
【0057】
要するに、本発明に従う1種以上の上記ジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(“BR”と略記する)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーのブレンドによって形成される高不飽和ジエンエラストマーの群から選択する。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、スチレン/ブタジエン(SBR)コポリマー、ブタジエン/イソプレン(BIR)コポリマー、スチレン/イソプレン(SIR)コポリマーおよびスチレン/ブタジエン/イソプレン(SBIR)コポリマーによって形成される群から選択する。
【0058】
合成ジエンエラストマーラテックス(または合成ゴムラテックス)は、エマルジョン形で既に入手し得る合成ジエンエラストマー(例えば、エマルジョン中で調製したスチレン/ブタジエンコポリマー即ちSBR)から、或いは有機溶媒/水混合物中に一般的には界面活性剤によって乳化させる当初は溶液中の合成ジエンエラストマー(例えば、溶液中で調製したSBR)からなり得る。
本発明において特に適するのは、SBRラテックス、特にエマルジョン中で調製したSBR (即ちESBR)または溶液中で調製したSBR (即ちSSBR)、特にエマルジョン中で調製したSBRである。
【0059】
2つの広いタイプのスチレンとブタジエンとのエマルジョン共重合方法が存在する。その1つは、高温処理(50℃近い温度で実施する)含み、高枝分れSBRの調製に適している;一方、他の方法は、低温処理(15℃〜40℃の範囲であり得る温度で実施する)を含み、より線状のSBRを得るのを可能にする。
上記高温処理において使用し得る数種の乳化剤の有効性(これらの乳化剤の量に依存する)の詳細な説明については、例えば、Journal of Polymer Science, Vol. V, No. 2, pp. 201‐206, 1950およびVol. VI, No. 1, pp. 73‐81, 1951において公表されている、ミネソタ州ミネアポリスのミネソタ大学のC. W. Carr、I. M. KolthoffおよびE. J. Meehanによる2つの論文を参照し得る。
【0060】
上記低温処理実施の比較例としては、例えば、デラウェア州ウィルミントンのHercules Powder Company社のE. J. VandenbergおよびG. E. HulseによるIndustrial and Engineering Chemistry, 1948, Vol. 40, No. 5, pp. 932‐937における論文、およびオハイオ州アクロンのB. F. Goodrich Chemical社のJ. R. MillerおよびH. E. DiemによるIndustrial and Engineering Chemistry, 1954, Vol. 46, No. 5, pp. 1065‐1073における論文を参照し得る。
【0061】
SBR(ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の中度のスチレン含有量または例えば35質量%〜45質量%の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する;そのようなSBRは、有利には、好ましくは90モル%よりも多いシス‐1,4結合を有するBRと一緒に使用し得る。
【0062】
II‐3) 2つの分散液を互いに接触させる工程
上記2つの分散液は、互いに接触させる。これらの液の良好な混合を可能にするためには、これらの液を、磁力撹拌によるビーカー内に注ぎ込み得る。また、2つの生成物の液相における“有効な”混合を可能にする任意のタイプの装置を使用することも、さらに、Noritake Co., Limited社、米国のTAH社、米国のKOFLO社またはTokushu Kika Kogyo社から販売されている静的ミキサーのような静的ミキサー、或いはTokushu Kika Kogyo社、ドイツのPUC社、ドイツのCavitron社または英国のSilverson社から販売されているミキサーのような高剪断ミキサーを使用することも可能である。
【0063】
混合工程が有効であるほど、分散も良好であるあることは明白である。従って、高剪断ミキサーのようなミキサーを使用することが好ましい。
2つの分散液を一緒に混合するこの段階においては、シリカ/エラストマー凝固物は、溶液中の単一の固形成分の形または数個の個々の固形成分の形のいずれかで生じる。
2つの分散液の接触が生じると直ぐに、この新たな分散液のpH、この場合は、配合物pHを、試験における上述のプロトコールを使用して測定する。
【0064】
驚くべきことに、凝固物を、エラストマーに対する初期充填剤質量比を順守するマスターバッチを得ることに相当し、そのように当初計算比に対する20%の違いは許容し得るものとみなす80%以上の処理終了時凝固物収率でもって効果的に得るためには、下記の場合の1つにあることが必要であるを見出した:
(i) 配合物pHは3.5と5.5の間であり、シリカのアルミニウムドーピング量は0.5質量%以上である;
(ii) 配合物pHは5.5以上であり、シリカのアルミニウムドーピング量は(2×pH−10)以上である。
【0065】
互いに接触させる2つの分散液の容量、特に、シリカ分散液の容量は、製造するマスターバッチにおいて意図するシリカ含有量による。従って、上記容量は、相応に適合化する。有利には、マスターバッチにおける意図するシリカ含有量は、20phrと150phrの間、好ましくは30phrと100phrの間、より好ましくは30phrと90phrの間、さらにより好ましくは30phrと70phrの間の量である(phr:ゴム100質量部当りの質量部)。
【0066】
II‐4) 形成させた固形物の回収
回収した1個以上の固形物を濾過または遠心分離する。濾過篩いを使用して実施し得る濾過操作は、凝固物が多数の細かい固体成分の形をとる場合不適切であることが判明し得ている。そのような場合、さらなる遠心分離操作を実施するのが好ましい。この濾過または遠心分離工程の後、得られた凝固物は、例えば、オーブン内で乾燥させる。
この操作の後、充填剤量をTGAによって測定し、凝固収率も測定する。
【0067】
II‐5) ゴム組成物
有利には、そのようにして製造したマスターバッチは、特にタイヤ用のゴム組成物において使用し得る。当業者であれば、そのようなゴム組成物における高過ぎるアルミニウム量が加硫に関しての困難性の原因となり得ることは承知していることであり、好ましくは、上記マスターバッチ中に存在するアルミニウム含有量を、シリカドーピング量を3.5質量%に限定することによって制限するであろう。
【0068】
また、本発明に従うマスターバッチをベースとするタイヤ用のゴム組成物は、知られている通り、カップリング剤および加硫系も含む。
用語“カップリング剤”とは、知られている通り、上記無機充填剤とエラストマー間に化学的および/または物理的性質の十分な結合を確立し得る薬剤を意味するものと理解すべきことを思い起されたい。そのような少なくとも二官能性のカップリング剤は、例えば、簡略化した一般式“Y‐Z‐X”を有し、式中、
Yは、無機充填剤に物理的および/または化学的に結合し得、そのような結合を、例えば、カップリング剤のシリコン原子と無機充填剤の表面上のヒドロキシル(OH)基(例えば、充填剤がシリカである場合の表面シラノール)間で確立させることが可能である官能基(“Y”官能基)を示し;
Xは、ジエンエラストマーに、例えば、イオウ原子により物理的および/または化学的に結合し得る官能基(“X”官能基)を示し;
Zは、YをXに連結させ得る2価の基である。
【0069】
カップリング剤、特に、シリカ/ジエンエラストマーカップリング剤は、多くの文献に記載されており、最も良く知られているのは、“Y”官能基を有するアルコキシル官能基と、“X”官能基としての、例えば、ポリスルフィド官能基のようなジエンエラストマーと反応し得る官能基とを担持する二官能性オルガノシラン(即ち、定義すれば、アルコキシシラン)である。
【0070】
特に挙げなければならない既知のアルコキシシランポリスルフィド化合物のうちには、特にDegussa社から品名“Si69”(または、カーボンブラック上に50質量%でもって支持されている場合の“X50S”)として販売されており、4に近い平均x値を有するポリスルフィドSxの市販ブレンドの形の式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPTと略称される)がある。
【0071】
カップリング剤をマスターバッチの製造中に導入して、カップリング剤も含有するシリカ/エラストマーマスターバッチを直接得ることを目論むこともできることに留意すべきである。従って、カップリング剤は、水性ドープシリカ分散液をジエンエラストマーラテックスと接触させる操作の前または操作中に添加し得る。
【0072】
また、本発明に従うこれらのゴム組成物は、例えば、可塑剤、オイル増量剤(後者は、性質的に芳香族系または非芳香族系のいずれかである);顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;疲労防止剤;補強用樹脂;出願WO 02/10269号に記載されているような、メチレン受容体(例えば、フェノール・ノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤および加硫活性化剤のような、タイヤ、特に、トレッドの製造を意図するエラストマー組成物において通常使用する添加剤の全部または1部も含有し得る。
【0073】
好ましくは、これらの組成物は、好ましい非芳香族系または極めて弱い芳香族系の可塑剤として、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、グリセリンエステル (特にトリオレアート)、好ましくは30℃よりも高い高Tgを示す炭化水素系可塑化用樹脂、およびそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
【0074】
また、これらの組成物は、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤;補強用無機充填剤の被覆剤(例えば、Y官能基のみを含む)、或いは、ゴムマトリックス中での無機充填剤の分散性を改良することについて、また、組成物の粘度を低下させることについて、未硬化状態における組成物の加工の容易性を改良することについて知られているより一般的な加工助剤も含有し得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシラン(特にアルキルトリエトキシシラン)のような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル (例えば、ポリエチレングリコール);第一級、第二級または第三級アミン類(例えば、トリアルカノールアミン類);ヒドロキシル化または加水分解性POS類、例えば、α,ω‐ジヒドロキシ‐ポリオルガノシロキサン類(特にα,ω‐ジヒドロキシ‐ポリジメチルシロキサン類);例えば、ステアリン酸のような脂肪酸である。
【0075】
また、上記の添加剤(オイル、酸化防止剤および被覆剤)も、マスターバッチ中に、凝固物の形成前に混入し得る。
【0076】
II‐6) ゴム組成物の製造
本発明のゴム組成物は、適切なミキサー内で、例えば、当業者にとって周知の一般的手順に従う2つの連続する製造段階、即ち、130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階とも称する)、並びに、その後の典型的には120℃よりも低い、例えば、60℃と100℃の間の低めの温度で機械加工する第2段階(“生産”段階とも称する)を使用して製造し、この仕上げ段階において架橋または加硫系を混入する。
【0077】
本発明の好ましい実施態様によれば、加硫系を除いた本発明の組成物の全てのベース構成成分、即ち、上記マスターバッチ、カップリング剤(カップリング剤がマスターバッチ中に既に存在しない場合)、および適切な場合のカーボンブラックを、混練により、上記非生産第1段階中のジエンエラストマー中に緊密に混入する、即ち、少なくともこれらの各種ベース構成成分を、ミキサー内に導入し、1回以上の工程で、130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する。
【0078】
1例を挙げれば、上記第1(非生産)段階は、1回の熱機械段階で実施し、その間に、全ての必須構成成分、必要に応じての補完的な被覆剤または加工剤、および加硫系を除いた他の各種添加剤を、標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは1分と15分の間である。上記非生産第1段階においてそのようにして得られたコンパウンドを冷却した後、加硫系を、低温において、一般的には2本ロールミルのような開放ミキサー内で混入し、その後、全ての成分を、数分間、例えば、2分と15分に間の時間混合する(生産段階において)。
【0079】
被覆剤を使用する場合、その混入は、上記非生産段階において、無機充填剤と同時に完全に、または上記生産段階において、加硫系と同時に完全に実施し得、或いは被覆剤は、上記2つの連続段階に亘って分割し得る。
被覆剤の全部または1部を、この化合物に相応する化学構造と適合性のある固体上に支持された形(被覆剤を前以って支持体上に配置しておく)で導入することも可能であることに留意すべきである。例えば、上記2つの連続段階間での分割においては、被覆剤の第2の部分を、開放ミキサー上で、支持体上に置いた後に導入して被覆剤の混入および分散を容易にすることが有利であり得る。
【0080】
架橋系は、好ましくは、加硫系、即ち、イオウ(またはイオウ供与体)と、一次加硫促進剤とをベースとする系である。酸化亜鉛、ステアリン酸または等価の化合物、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)等のような各種既知の加硫活性剤または二次促進剤を、このベース加硫系に添加する。これらは、下記で説明するように上記非生産第1段階および/または上記生産段階中に混入する。
イオウは、0.5phrと12phrの間、特に1phrと10phrの間の好ましい含有量で使用する。一次加硫促進剤は、0.5phrと10phrの間、より好ましくは0.5phrと5.0phrの間の好ましい含有量で使用する。
【0081】
促進剤(一次または二次)としては、イオウの存在下でのジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールタイプの促進剤およびその誘導体、チウラムタイプの促進剤またはジチオカルバミン酸亜鉛を使用し得る。これらの促進剤は、例えば、2‐メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(MBTSと略記する)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(DCBS)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンイミド(TBSI)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)およびこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる。
【0082】
その後、そのようにして得られた最終組成物は、特に実験室における特性決定のための、例えば、シートまたはプラークの形にカレンダー加工するか、或いは、例えば乗用車用のタイヤトレッドとして使用することのできるゴムストリップの形に押出加工する。
【0083】
III 本発明の典型的な実施態様
III.1 アルミニウムドープシリカの製造
実験室において実施したAlドーピング操作手法(意図するドーピング量:5質量%)
Rhodia社から品名Zeosil Z1165MPとして販売されているシリカに対する意図する5質量%でのAlドーピング操作(製造するドープ生成物の理論質量:165.30g):
・意図する5質量%Alに対して、6.2質量%のAlを導入する;ドーピング収率がほぼ70〜80質量%であることによる(情報源:特許WO 2002/051750 A1号);
・pHを、硫酸アルミニウムの添加中、7.5に保って媒質の粘度が強く上昇するのを防止する。
【0084】
装置
・6枚のテフロン(登録商標)パドルを有するブレード型撹拌機を装着した1個の5リットル二重壁反応器;
・1個のHeidoff撹拌用モーター、モデルRZR2101;
・1槽のHuber恒温槽、モデルCC245;
・イージーロードポンプヘッド(モデル7518‐60)を装着した2個のMasterflex蠕動ポンプ(10〜600rpm用のモデル7523‐25または1〜100rpm用のモデル7523‐37);
・1個の目盛り付き温度補償Mettler Toledo Inlab(登録商標) Reach Pro pH電極+1個のMP225 Mettler Toledo pHメーター;
・1個の磁力撹拌機+1本の棒磁石;
・タイゴンチューブ、ガラス製;
・シールジェネレーターシャフトを装着したUltra‐Turrax(登録商標) T25Bローター・スターターホモジナイザー、NタイプS25N‐18G、並びにPTZ (レファレンス75010)結晶圧電コンバーター、プローブ用のブースターおよび直径19mm(127mmの高さに対して)のチタン合金プローブを有するSonics and Materials社製の1500ワットVibracellジェネレーター。
【0085】
反応剤は、下記の表に示す。


【0086】
操作方法
2個のビーカーの内容物[2×(485.17gの水中83.97gの160MP)]を、上記のホモジナイザーを使用して、17500rpmで5分間剪断処理し、その後、1500Wプローブの100%最高出力にて8分間音波処理する。
そのようにして剪断処理した懸濁液を上記反応器内に導入し、2964.67mlの脱塩水を添加して40g/l、即ち、3.8質量%の初期濃度を得る。
媒体を650rpmで撹拌し、60℃に加熱する(電極中に一体化させ、この温度に設定した温度プローブを使用する)。Al2(SO4)3・18H2O塩を15ml/分で添加し、媒体のpHを、水酸化ナトリウムを同時に添加することによって7.5に安定化させる。
【0087】
反応混合物を、撹拌し加熱しながら、30分間放置し(pHの7.5への調整)、その後、pHを、H2SO4を添加することによって4.5に下げる。
媒体を、撹拌しながら温度にてさらに10分間放置して、pHを4.5に安定化させ、その後、脱水処理し、そのようにして生成させたフィルターケーキを10リットルの脱塩水で洗浄する。得られたケーキを、脱塩水中に約10質量%の濃度に再懸濁させる。
【0088】
懸濁液フラスコ内に収容した懸濁液(マスターバッチを製造するために使用する目的の)の揮発性物質を測定して、懸濁液の正確な質量濃度を知る。
装置
・コンピュータに接続したMettler Toledoハロゲン水分アナライザー(熱てんびん)、モデルHR73;
・使い捨てアルミニウムサンプル皿(上記装置に適する消耗品)。
【0089】
操作方法
試験標本および測定条件(温度傾斜無しの160℃、時間30分)についての情報を入手した後、さらに、上記アルミニウムサンプル皿を較正した後に、約2.5gの試験標本を上記サンプル皿に導入し、測定を開始する。
種々のドーピング量について従うべきプロトコールは、導入するアルミニウムプレカーサー塩の量を除いて同一であり、下記の表1に要約している;この表においては、使用するアルミニウム塩の量は、意図するドーピング量に対して示している。
【0090】
表1

【0091】
III.2 マスターバッチの製造
上記で得られたアルミニウムドープシリカを水中に分散させて、水中4質量%濃度のシリカを得る。
音波処理し、その後、撹拌しながら10分間放置した(最後の瞬間におけるpHの必要に応じての調整でもっての)各シリカ分散液を、磁力撹拌下に維持した濃縮天然ゴムラテックスと接触させる;水性シリカ分散液は、このラテックス中に極めて迅速に注ぎ込む。
【0092】
水性ドープシリカ分散液の容量は、シリカの濃度およびラテックスの濃度に従って、ラテックスの容量に対して変化させて、2つの分散液(シリカとエラストマーラテックス)を互いに接触させたときに所望の配合物pHを有するようにする。
例えば、この場合50%moに相当する、エラストマー100質量部当り50質量部のシリカ量を選択した(ここで説明するマスターバッチはシリカとジエンエラストマーのみを含むので)。
【0093】
全ての水性ドープシリカ分散液を注ぎ込み終えると直ぐに、pH測定電極を混合物中に挿入して配合物pHを測定する。先に説明したように、所望のpHを得るには、水性ドープシリカ分散液のpHを、この分散液を剪断処理した後であるがこの分散液をラテックスと接触させる前に調整することが必要である。従って、水性ドープシリカ分散液のpHを調整するための試験を実施する必要がある。
【0094】
混合物を、形成させた凝固物を回収する前に磁力撹拌しながら数分間保つ。各試験において同一の操作方法条件を有するには、形成させた凝固物、即ち、形成させた固形物(一般にクラムと称する)を、外観により濾過操作を想定することが可能である場合を含めて遠心分離する。250mlナルゲンボトル(Nalgene bottle)に移した後、遠心分離を、Sigma 4K15遠心分離機を使用して、8000rpmで10分間実施する。
そのようにして回収した凝固物を、ドラフト下に室温で24時間、次いで、オーブン内で300ミリバールの圧力下に65℃で24時間乾燥させて、最後の痕跡量の水分を除去する。
その後、充填剤含有量をTGAによって測定し、凝固収率を判定する。
【実施例1】
【0095】
III.3 実施例1
本実施例の目的は、本発明に従う方法の適切な操作を、特に測定した配合物pHに関して実証することである。
試験E1、E2およびE3を、下記によって、上記の項で詳述した方法に従って実施した:
・39%のスチレン、15%の1,2‐ポリブタジエン単位、74%のトランス‐1,4‐ポリブタジエン単位および11%のシス‐1,4‐ポリブタジエン単位を含む、エマルジョン中で調製したSBRラテックス (Tg = −33℃);
・1質量%のドーピング量を有するアルミニウムドープシリカ;および、
・50phrの、2つの分散液の相互接触時のシリカ量。
【0096】
これらの3つの試験における唯一の違いは、上記で詳述した操作方法において、上記水性ドープシリカ分散液のpHを変えて配合物pHを変えたことからなる。
従って、試験E1、E2およびE3は、下記のように、上記分散液(水性シリカ分散液とエラストマーラテックス)の接触時の配合物pHによって互いに異なっている:
・E1の場合、配合物pHは3.5であった。
・E2の場合、配合物pHは5.5であった。
・E3の場合、配合物pHは6.5であった(この配合物pHを得るのに、酸を水性シリカ分散液に添加する必要はなかったことに留意すべきである)。
【0097】
これらの3つの試験において得られた結果(収率および充填剤含有量)を、下記の表2に示している:

表2

【0098】
試験E3 (その配合物pHは6.5である)においては、上記の表は、凝固収率が80%よりも低く、従って、許容範囲外であることを示している。また、試験E3におけるシリカ含有量も許容範囲外であり(50%mo目標に対して20%の差)、このことは、エラストマーの1部のみしかシリカと一緒に凝固していないことを意味している。試験E1およびE2においては、許容し得るシリカ含有量(40%moと60%moの間の)が、80%よりも高い収率と同時に得られている。
【実施例2】
【0099】
III.4 実施例2
本実施例の目的は、本発明に従う方法の適切な操作を、特に実施例1と異なるシリカドーピング量において測定した配合物pHに関して実証することである。
E'1、E'2およびE'3を、上記の項で詳述した方法に従い、実施例1において説明したラテックスと同じSBRラテックスおよび2.5質量%のドーピング量を有するアルミニウムドープシリカによって実施し、これら2つの相互接触時のシリカ量は50phrであった。
製造した:
【0100】
実施例1におけるのと同様、上記の操作方法を実施するこれら3つの試験における唯一の違いは、下記のように、上記水性ドープシリカ分散液のpHを変えて配合物pHを変えたことからなる:
・E'1の場合、配合物pHは3.5である;
・E'2の場合、配合物pHは6である;
・E'3の場合、配合物pHは7.5である;
【0101】
これらの3つの試験において得られた結果を、下記の表3に示している。

表3

【0102】
この表は、試験E'3 (その配合物pHが7である)の場合においては、凝固収率が80%よりも低く、従って、許容範囲外であることを示している。また、試験E'3におけるシリカ含有量も許容範囲外であり(50%mo目標に対して20%の差)、さらに、得られた極めて高いシリカ含有量は、ほんの1部のエラストマーのみしかシリカと一緒に凝固していなことを示している。
対照的に、試験E'2およびE'3は、許容し得るシリカ含有量(40%moと60%moの間の)と80%よりも高い凝固収率の双方でもって、マスターバッチをえることを可能にしている。
【0103】
これらの2つの実施例は、得られる充填剤含有量および収率それぞれに関しての所望基準を満たすためには、所定のシリカドーピング量に対して所定の配合物pH範囲内にあることが重要であることを明白に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の連続する工程を含むことを特徴とする、シリカ/合成ジエンエラストマーマスターバッチの製造方法:
・シリカを少なくとも2価の金属元素でドーピングする工程;
・得られたドープシリカの少なくとも1種の水中分散液を調製する工程;
・合成ジエンエラストマーラテックスを前記水性ドープシリカ分散液と接触させ、これらを一緒に混合して凝固物を得る工程;
・凝固物を回収する工程;および、
・回収凝固物を乾燥させてマスターバッチを得る工程。
【請求項2】
前記凝固物の回収工程を、濾過操作によって実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記凝固物の回収工程を、遠心分離操作によって実施する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記合成エラストマーラテックスが、スチレン/ブタジエンコポリマー即ちSBRのラテックスである、請求項1〜3のいずれか1記載の方法。
【請求項5】
前記合成エラストマーラテックスが、エマルジョン中で調製したSBRである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
シリカが、沈降シリカである、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記金属元素が、アルミニウムである、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
下記の条件の1つを満たす、請求項7記載の方法:
(i) 配合物pHは3.5と5.5の間であり、シリカのアルミニウムドーピング量は0.5質量%以上である;
(ii) 配合物pHは5.5以上であり、シリカのアルミニウムドーピング量は(2×pH−10)以上である。
【請求項9】
前記2つの分散液を互いに接触させるときのシリカの量が、20phrと150phrの間の量である(phr = エラストマー100質量部当りの質量部)、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記2つの分散液を互いに接触させるときのシリカの量が、30phrと100phrの間の量である、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記2つの分散液を互いに接触させるときのシリカの量が、30phrと90phrの間である、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
水性カップリング剤分散液を、前記水性ドープシリカ分散液を前記SBRラテックスと接触させる前または接触させるときに添加する、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に従って製造したシリカ/合成ジエンエラストマーマスターバッチ。
【請求項14】
シリカ含有量が、20phrと150phrの間である、請求項13記載のマスターバッチ。
【請求項15】
シリカ含有量が、30phrと100phrの間である、請求項13および14のいずれか1記載のマスターバッチ。
【請求項16】
シリカ含有量が、30phrと90phrの間、好ましくは30phrと70phrの間である、請求項13〜15のいずれか1項記載のマスターバッチ。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に従って製造した少なくとも1種のシリカ/合成ジエンエラストマーマスターバッチをベースとするゴム組成物。
【請求項18】
請求項17記載の組成物を含む最終物品または半製品。
【請求項19】
請求項17記載の組成物を含むタイヤトレッド。
【請求項20】
請求項17記載の少なくとも1種のゴム組成物を含むタイヤまたは半製品。

【公表番号】特表2013−509471(P2013−509471A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535766(P2012−535766)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066045
【国際公開番号】WO2011/051216
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】