説明

合成床版

【課題】コンクリートの充填性を良好にし床鋼板とコンクリートとの一体化を強固にするとともに、材料費や作業工数を削減してコストの削減を図る。
【解決手段】合成床版100は、床鋼板10、付着材20、コンクリート30を備える。また、合成床版100は、コンクリート30の上部内に、上側配力鉄筋31と上側主鉄筋32とを備える。床鋼板10は、複数のリブ11を有し、上面に付着材20が塗布されてコンクリート30が充填されている。これにより、従来のスタッドジベルなどを不要とし、材料費や作業工数を削減してコストの削減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、床鋼板とコンクリートとを合成させてなる合成床版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物などにおいて、床鋼板とコンクリートとを合成させてなる合成床版が知られている。この合成床版としては、例えば、床鋼板に固着等されたリブ(ウエブと称されることもある)の頂部に左右に張り出し部を設け、打設したコンクリートを拘束することによって床鋼板等とコンクリートの一体化を強固にしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、図3に示すような合成床版90も知られている。この合成床版90は、床鋼板91に複数のリブ92と複数のスタッドジベル93とを所定間隔ごとに設け、コンクリート94を打設し、このコンクリート94の上部内に上側配力鉄筋95と上側主鉄筋96を配した構造からなり、スタッドジベル93は頂部93aに張り出しを有して、上記と同様に床鋼板91とコンクリート94との一体化を図っている。
【特許文献1】特開2003−239439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている合成床版では、床鋼板上に張り出し部を有したリブを複数設けなければならないため、材料費がかかるとともに作業工数も増えてしまい、コストの削減が難しいという問題がある。
同様に、図3に示した合成床版90でも、床鋼板91に多数のスタッドジベル93を設けなければならないため、コストと手間がかかってしまう。
【0005】
また、橋梁設置の現場にて、合成床版90上にコンクリートを充填する際においては、前述した多数のスタッドジベル93が、コンクリートの流れに影響を与える可能性があり、特に、構造上、リブの頂部に張り出し部を設けたり、スタッドジベル93を多数配している場合等には、コンクリートを隅々まで充填することが品質上の大きな課題である。従って、前述した従来技術の合成床版を使用する場合には、慎重にコンクリートを充填する必要があって、施工に注意が必要である。
【0006】
また、橋梁施工現場の状況や、橋梁の仕様により、スランプの小さい、いわゆる充填性の良くないコンクリートを使用しなければならないケースもあるが、そのような場合において、前述した従来技術の合成床版では、コンクリートの充填不良に、特に注意しなければならない。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、コンクリートの充填性が良好で床鋼板とコンクリートとの一体化を強固にすることができるとともに、材料費や作業工数を削減してコストの削減を図ることができる合成床版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る合成床版は、梁上に設置された複数のリブを有する床鋼板と、前記床鋼板の上面に塗布される付着材と、前記付着材を介して前記床鋼板上に充填され打設されるコンクリートとからなることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る合成床版は、上記のように構成したことにより、張り出しのあるリブやスタッドジベルが不要なシンプルな構造となり、コンクリートの充填性を良好にして床鋼板とコンクリートとの一体化を強固にすることができるとともに、材料費や作業工数を削減してコストの削減を図ることができる。
【0010】
なお、前記複数のリブが、張り出し部を有さない板リブであっても良い。
【0011】
また、前記付着材が、炭素繊維を含有した無機系塗料にセメント系のコンパウンドを混合した付着材であっても良い。
【0012】
前記付着材は、例えばセメント系充填材又は樹脂系接着材からなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る合成床版によれば、コンクリートの充填性が良好で床鋼板とコンクリートとの一体化を強固にすることができるとともに、材料費や作業工数を削減してコストの削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、添付の図面を参照して、この発明に係る合成床版の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る合成床版の全体構成の例を示す一部断面斜視図である。また、図2は、図1のA−A’断面図である。
【0016】
図1および図2に示すように、合成床版100は、例えば橋梁用に用いられ、複数の主桁(梁)1上に配された床鋼板10と、リブ11と、この床鋼板10の上面に塗布された付着材20と、この付着材20を介して床鋼板10上に充填され打設されたコンクリート30とを備える。また、床鋼板10の複数の主桁1の並設方向端部には、それぞれ立設する側鋼板40が備えられている。
【0017】
さらに、合成床版100は、打設されたコンクリート30の上部内に、熱応力などによるコンクリート30のひび割れや変形などを防止するための上側配力鉄筋31と上側主鉄筋32とを有し、これらは、例えばコンクリート30の上部内に格子状に配設されている。
【0018】
床鋼板10は、図1に示すように、この床鋼板10に立設する複数のリブ11を配している。これらのリブ11は、主桁1の軸方向にリブ間隔L1が例えば500mm〜750mm程度と適切な間隔となるように並設されている。また、リブ11の並設方向の厚さFは、例えば15mm〜30mm程度となるように形成されている。
【0019】
そして、床鋼板10は、厚さTが例えば8mm〜10mm程度に形成され、図示しない水抜き孔を備えている。また、この床鋼板10上に打設されるコンクリート30の厚さH1は、例えば20cm〜30cmに設定されている。
【0020】
付着材20は、無機質系塗料にセメント系のコンパウンドを混合した材料、あるいはモルタルなどのセメント系充填材や樹脂系接着材からなるもので、リブ11とコンクリート30との付着力を高めるために床鋼板10の上面、並びにリブ11の表面に塗布されている。このように付着材20が塗布されることにより、床鋼板10とコンクリート30との付着面積を増加させることができる。
【0021】
このように構成された合成床版100では、従来の合成床版のようなリブやスタッドジベルを床鋼板10上に設置する必要がないため、材料費や作業工数を削減することができ、コストの削減を図ることができる。また、リブ11に張り出しなどがないため、コンクリート30の充填性が高まり、良好にコンクリート30を打設することができる。さらに、床鋼板10とコンクリート30との付着性を付着材20によって確保しているため、剛性が高く強固な合成床版をシンプルな構造で製造することが可能となる。
【0022】
以下、図1に概観を示した本実施形態による合成床版100の製造方法について、その好ましい1例を説明する。
【0023】
まず、第1工程として、床鋼板10上に、リブ11を一定間隔で複数枚並べて配置して、床鋼板10とリブ11の下端部を溶接して固着することにより、床鋼板10上に複数枚のリブ11を並設する。なお、本実施形態において使用したリブ11は、上部に張り出し部等の突起がない板状のリブ(板リブ)11である。
【0024】
次に、第2工程として、床鋼板10において、前述したリブ11の長手方向となる側の両端部に、リブ11と直交する方向に伸びる側鋼板40を配置し、側鋼板40の下端部を床鋼板10の側面部に当接させた状態で溶接、又はボルト止め等にて固着する。
【0025】
次に、第3工程として、合成床版100のコンクリート30の充填部分(床鋼板10の上面及びリブ11の表面等のコンクリートが接触する部分)に対して、コテ又はスプレー等を利用して、付着材を塗布する。なお、本実施形態においては、付着材として、炭素繊維を含有した無機系塗料にセメント系のコンパウンドを混合したものを0.5mm程度の塗膜厚みとなるよう塗布した。
【0026】
本実施形態による合成床版100では、リブ11の頂部に張り出し部がなく、さらに従来のようなスタッドジベル93等もないので、付着材を合成床版100の表面全体に均一に塗布し易く、作業効率が良い。
【0027】
また、本実施形態による合成床版100の製造方法の例においては、コテ又はスプレー等を利用して、付着材を塗布したが、本発明に適応できる塗布方法はこれに限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、他の公知の塗布方法を利用しても良いことはもちろんである。
【0028】
なお、前記付着材を塗布する厚みの好ましい範囲は、付着材の種類等、条件によって多少異なるものの、その要求された機能を発揮できる最低限の厚み(概ね0.1mm〜1mm程度)に塗布されることが、コストや作業の効率化という点で好ましい。
【0029】
ここで、従来技術においても合成床版90等を現場に搬送する際においては、防錆のために、その表面全体に、例えば、無機ジンクリッチペイント等の防錆剤を塗布することによって、防錆加工しておく必要がある。本実施形態においては、付着材として、炭素繊維を含有した無機系塗料にセメント系のコンパウンドを混合した材料(例えば、商品名 マイティCF(登録商標):マイティ化学株式会社)等を使用したが、このような付着材には付着材自体に強い防錆効果がある。
【0030】
したがって、本実施形態においては、付着材によって合成床版100の防錆効果が期待できるため、従来技術の合成床版90等を使用する際に必要であった防錆塗装等について、少なくともコンクリート接触面の部分の作業を省略化することが可能になる。その結果、鋼板防食のための表面処理費用が削減できる。
【0031】
また、万一、コンクリートのひび割れ等からコンクリート内部に雨水等が浸入した場合においても、付着材の優れた防錆効果により床鋼板10等の鋼板の、腐食の進行を著しく遅らせることができる。コンクリートの内部の点検が目視で困難な合成床版の橋梁にとって、大きな利点である。
【0032】
なお、前述した第1工程から第3工程までは、橋梁を設置する現場ではなく、作業環境の整った工場内で予め作成して、橋梁施工の現場に搬送する。
【0033】
次に、第4工程に進み、前記側鋼板40と前記リブ11とが取り付けられ、また付着材が塗布された床鋼板10を現場に搬送して、橋梁の主桁1上に設置し、ボルト止め等により、主桁1と合成床版100を固着する。
【0034】
前述した第4工程によって床鋼板10を現場の主桁1上に設置後、第5工程に進み、床鋼板10のリブ11上方に、図示しないスペーサー等を使用して、上側配力鉄筋31と上側主鉄筋32とを格子状に重ねて配設する。
【0035】
その後、第6工程に進み、床鋼板10、リブ11、側鋼板40、上側配力鉄筋31、及び上側主鉄筋32等が、組み上げられた合成床版100に、コンクリートミキサー車とポンプ車等により、生コンクリートを供給して、コンクリートを充填し、そこで硬化させることにより橋梁のコンクリート合成床版を製造する。
【0036】
以上述べたように、本実施形態に係る合成床版100であれば、リブ11の頂部に張り出し部がなく、さらに、従来のようなボルト状のスタッドジベル93等もない。従って従来の合成床版を使用する場合と比較して、コンクリートの充填が容易で作業効率が良いという優れた利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係る合成床版は、橋梁用合成床版に有用であり、特に、土木建築分野などに適している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る合成床版の全体構成の例を示す一部断面斜視図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】従来の合成床版を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 主桁(梁)
10 床鋼板
11 リブ
20 付着材
30 コンクリート
31 上側配力鉄筋
32 上側主鉄筋
40 側鋼板
100 合成床版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁上に設置された複数のリブを有する床鋼板と、
前記床鋼板の上面に塗布される付着材と、
前記付着材を介して前記床鋼板上に充填され打設されるコンクリートとからなる
ことを特徴とする合成床版。
【請求項2】
前記複数のリブが板リブであることを特徴とする請求項1記載の合成床版。
【請求項3】
前記付着材は、炭素繊維を含有した無機系塗料にセメント系のコンパウンドを混合した付着材であることを特徴とする請求項1又は2記載の合成床版。
【請求項4】
前記付着材は、セメント系充填材又は樹脂系接着材からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の合成床版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−31613(P2010−31613A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197735(P2008−197735)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】