説明

合成樹脂タイルおよびその製造方法

【課題】交換可能なフィルムにより被覆されてなるタイルであって、フィルムの接着力を弱く設定しても使用時にフィルムが剥離することなく、また外観上の問題も有さないタイルを提供する。
【解決手段】略矩形平板のタイル基材2と、タイル基材2の上面に形成された接着層4と、接着層4を介して、タイル基材2の上面側に剥離可能に接着されている表面シート3からなり、表面シート3の寸法はタイル基材2の上面の寸法より大きく、全ての端面において、タイル基材2の端面32が表面シート3の端面31より内側となるように位置決め裁断されていることを特徴とする合成樹脂タイル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下地面に接着等で固定されずに置敷施工される合成樹脂タイルに関する。より特には、合成樹脂タイルの表面に汚れまたは損傷が生じた際に、ワックス等のメンテナンスを行うことなく、合成樹脂タイル自体を新たなものと交換でき、しかも交換したタイルの構成部材の大部分を再使用できる合成樹脂タイルに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の合成樹脂タイルをコンクリートの打設等で形成された床下地面に敷くことにより仕上げられるタイル敷き床は、清掃の容易さや清潔感から店舗、飲食店、事務所、公共施設等の各種建物において多数採用されている。従来、このタイル床材は床下地面に接着剤等で固定されていたが、近年、床下地面に接着剤を使用することなく置くだけの置き敷き型であって、交換可能なタイル床材が開発されつつある。このようなタイル床材は、汚れ、損傷等が生じた際に全体的に、またはこれらの問題が発生した部分のみを容易に交換でき、タイル床材敷設現場でのワックス剤による保護膜形成等のメンテナンスが不要となるので好ましいものである。
【0003】
前記置き敷きタイル床材としては、例えば、タイル本体と、少なくとも該タイル本体の上面に被せられている保護用フィルムとからなり、そして該保護用フィルムは該タイル本体に対して剥離可能となっているプラスチックタイルが挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。このプラスチックタイルは、タイル本体と保護用フィルムとが剥離可能であるため、損耗時に保護用フィルムをタイル本体から剥離し、代わりに新たな保護用フィルムをタイル本体に被せ、タイル本体を再利用して新たなプラスチックタイルとすることができる。
【0004】
また、タイル本体と、該タイル本体に剥離可能に固定される保護用フィルムとからなり、該保護用フィルムは、少なくとも該タイル本体の上面、側面、および下面のうち側面近傍の一部を連続して被覆してなるタイルも知られている(例えば、特許文献2参照。)。このタイルでは、置き敷き時に、互いに隣接するタイルの側面を被覆する保護用フィルム同士が突き合わされて保護用フィルムの剥離を防止できる。また水拭き等により置き敷きしたタイルの目地から水が侵入したとしても、タイルの側面が保護用フィルムで被覆されているためタイル本体が吸水することもない。
【特許文献1】特開2004−44272公報
【特許文献2】国際公開第WO2004/007867号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1または特許文献2に開示されているプラスチックタイルでは、保護用フィルムをタイル基材から剥離可能な状態で固定しているために、タイル基材の上面のみに保護用フィルムを設けたものは、このプラスチックタイルが施工された床を人が歩行したり、荷物や棚等を引きずったりした場合に、これらと保護用フィルムの端部の接触により、保護用フィルムが部分的な剥離を起したり、またプラスチックタイル自体が置き敷きであるために、ずれてしまったりし易いものであった。この部分的な剥離が発生すると、この剥離した部分にゴミや埃が入り込み、タイル基材と保護用フィルムとを固定していた接着剤に付着し、床面の外観を著しく損ねた状態となる。また、この部分的な剥離が発生してしまうと、剥離部分が徐々に拡大し、最後には保護用フィルム全体が剥がれてしまう可能性もある。さらに、プラスチックタイルを施工された床面は日常的に水拭き程度のモップがけや、ほうき等による清掃が行われるため、こうして生じた部分的な剥離は次第に増大す
る傾向にある。
【0006】
このような部分的な剥離を防止するために、特許文献1または特許文献2においては、タイル基材の端面または下面まで保護用フィルムによって被覆する方法が開示されている。しかし、端面または下面まで保護用フィルムで被覆してしまうと、施工された隣り合うプラスチックタイルの間に保護用フィルムが介在することとなり、プラスチックタイル間の目地が目立ってしまい、施工外観を損ねるものであった。
さらに、下面の一部まで保護用フィルムを被覆した場合においては、保護用フィルムの厚さ分だけプラスチックタイルの裏面に段差を生じることになる。この段差は、製造された当初は裏面だけの段差であるが、プラスチックタイルを複数枚重ねた状態で保管、運搬した場合や施工された状態において、プラスチックタイルの表面部に該段差が表れてしまい、外観的に問題が生じる可能性があるものであった。この段差は、タイル基材が歩行性、施工性等を考慮して柔軟性を有するものである場合には、より顕著なものとなる。
特許文献1において、タイル基材全体を保護用フィルムで被覆することも開示されているが、プラスチックタイルの何れかの場所にフィルムの接合部が生じることとなり、この接合部が目地の外観を損ねたり、段差の原因となるものであった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、交換可能な表面シートにより被覆されてなる合成樹脂製のタイルにおいて、表面シートの接着力を剥離可能な状態としても使用時に表面シートが剥離することなく、また外観上の問題も有さないタイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明の合成樹脂タイルは、
略矩形平板のタイル基材と、
該タイル基材の上面に形成された接着層と、
該接着層を介して、該タイル基材の上面側に剥離可能に接着されている表面シート
からなり、
該表面シートの寸法は該タイル基材の上面の寸法より大きく、
全ての端面において、該タイル基材の端面が該表面シートの端面より内側となるように位置決め裁断されていることを特徴とする。
【0009】
好ましい本発明の合成樹脂タイルは、
少なくとも、前記表面シートの下面の端縁から前記タイル基材の端面までが連続した保護被膜で被覆されていることを特徴とする前記合成樹脂タイル
である。
【0010】
また本発明は、
略矩形平板のタイル基材の上面に接着層を設け、次いで大面積のシート材を、該接着層を介して、該タイル基材の上面側に剥離可能に接着し、その後、該シート材を、該タイル基材の上面の寸法と同等かもしくはより大きい寸法にて、かつ全ての端面において、該タイル基材の端面が該シート材の端面より内側となるように位置決めし裁断することにより表面シートを作り上げることを特徴とする、合成樹脂タイルの製造方法
に関する。
【0011】
好ましい本発明の合成樹脂タイルの製造方法は、
前記シート材が帯状の連続シート材であり、該連続シート材を複数の前記タイル基材の上面側に接着し、そして該タイル基材と隣の該タイル基材との間のシート材を裁断することを特徴とする前記合成樹脂タイルの製造方法
である。
【0012】
さらに本発明は、
使用後に回収され、表面シートが剥離された前記合成樹脂タイルのタイル基材の上面側に、新たな表面シートを剥離可能に、かつ位置決めされて接着したことを特徴とする、再生合成樹脂タイル
に関する。
【0013】
好ましい本発明の再生合成樹脂タイルは、
少なくとも、前記表面シートの下面の端縁から前記タイル基材の端面までが連続した保護被膜で被覆されていることを特徴とする前記再生合成樹脂タイル
である。
【0014】
加えて、本発明は、
略矩形平板のタイル基材と、
該タイル基材の上面に形成された接着層と、
該接着層を介して、該タイル基材の上面側に剥離可能に接着されている表面シート
からなり、
該表面シートの寸法は該タイル基材の上面の寸法と同等もしくはより大きい寸法であり、縦方向および横方向に関して各々、一方の端面において、該タイル基材の端面が該表面シートの端面より内側となるように、かつ、該端面と対向する反対側の端面では、該タイル基材の端面が該表面シートの端面より外側となるように位置決め裁断されていることを特徴とする、合成樹脂タイル
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の合成樹脂タイルでは、表面シートの寸法がタイル基材の上面の寸法より大きく、そして合成樹脂タイルの全ての端面において、該タイル基材の端面が該表面シートの端面より内側となるように位置決め裁断されているため、合成樹脂タイルを置き敷き施工した際に、隣り合う合成樹脂タイルでは、表面シートの端面同士が当接し、タイル基材の端面同士は当接しない。従って、表面シートの形状が正確であるならば、タイル基材と表面シートとの位置関係について個々の合成樹脂タイル間で多少の差異があったとしても、置き敷き施工した際に合成樹脂タイル間の目地が目立つことは無い。
【0016】
また上記したように、本発明の合成樹脂タイルでは、タイル基材と表面シートとの位置関係について、個々の合成樹脂タイル間で多少の誤差が許容可能であるため、製造時にタイル基材と表面シートとの位置関係を厳密に規定する必要が無く、製造がより容易になる。
【0017】
また、複数のタイル基材を一定の間隔をおいて連続的に搬送して、タイル基材より大きい寸法に裁断した略矩形状のシート材または帯状の連続シート材と接着し、連続シート材の場合は個々のタイル基材毎に切り離した後、シート材の上面を押圧しながら左右一対の切断具の間に該タイル基材を通過させてシート材を切断する製造方法は、高品質の合成樹脂タイルの大量生産に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0019】
図1に図示される本発明の合成樹脂タイル1は、タイル基材2の上面に表面シート3が接着層4により接着されてなる。即ち、合成樹脂タイル1は上面側から順に、表面シート3、接着層4、タイル基材2が積層されている。また合成樹脂タイル1の端部で、タイル
基材2の端面21から表面シート3の下面の端縁32まで接着層4の端面41を含み保護被膜5により覆われている。
【0020】
合成樹脂タイル1の形状は長方形や正方形等の矩形であり、その寸法は一般に使用されているタイル床材と同等であって、通常は一辺が約200〜1000mm程度である。合成樹脂タイル1は、床下地面に置き敷いて使用されるため、床下地面の形状によっては矩形以外の形状のものであってよい。
【0021】
タイル基材2は、合成樹脂タイル1に対応した形状および寸法の略矩形平板の部材であり、その厚さについては2〜10mm程度が好ましい。2mm未満であると、置き敷きした場合に床下地面の不陸が十分に吸収されずに合成樹脂タイル1の表面に現れてしまい、外観上好ましくない。また、隣接するタイル間の接触面の減少、自重自体の軽量化等の理由により、使用時に折り曲がったり位置ずれが発生する惧れが生じる。他方10mmを超えると、コスト高となるばかりでなく合成樹脂タイル1の重量が重くなり、運搬性、施工性、作業性の面で好ましくない。
【0022】
タイル基材2の材料および構造は、経時変化によって反り等の発生がなく床材として問題のないものであれば特に限定されない。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の合成樹脂を材料として用いることができ、さらに繊維質生布等を含むこともできる。またその構造についても、既知のタイル床材において用いられる単層構造または積層構造であり得る。
【0023】
タイル基材2が床下地面の不陸により大きく変形すると、タイル基材2に接着された表面シート3は該変形に追従し難いため、タイル基材2からの表面シート3の剥離が発生する惧れがある。よってタイル基材2はある程度の剛直性を有する必要がある。この観点から好ましいタイル基材2は、伸縮性のないガラス繊維不織布を少なくとも1層以上含む積層体である。このガラス繊維不織布はタイル基材2を剛直化し、床下地面の不陸をタイル基材2に伝達しない役割を果たす。さらに2層以上のガラス繊維不織布を積層した場合には、タイル基材2の厚さ方向に間隔をおいて剛直な層が存在することとなるので、タイル基材2の剛直性はより向上する。この剛直性は、ガラス繊維不織布の間隔を大きくする程、剛直性が増し、該ガラス繊維不織布の間隔を小さくする程、剛直性が減少し、ドレープ性(下地の形状に馴染み易い性質)が増す。しかしながら、タイル基材2の切断を困難にすること、不陸を吸収するためにタイル基材2はある程度変形しなければならないこと、費用の高騰等に鑑みて、ガラス繊維不織布の積層数や間隔は適宜選択される。
【0024】
タイル基材2がガラス繊維不織布を含む場合には、ガラス繊維不織布を境界として積層する合成樹脂層の厚さを調節することにより、タイル基材2の反りを防止できる。例えば、1層のガラス繊維不織布を積層する場合にはタイル基材2の厚さ方向中心より上面側に積層することが好ましく、またガラス繊維不織布を2層積層する場合には上面側のガラス繊維不織布より上面側に積層される合成樹脂層より、下面側のガラス繊維不織布より下面側に積層される合成樹脂層を厚くすることが好ましい。下面側に積層するガラス繊維不織布の下面側により厚い合成樹脂層を積層することは、タイル基材2により床下地面の不陸を吸収する観点からも好ましい。
【0025】
好ましいタイル基材2の具体的な態様を図2に図示する。図2(a)に図示する態様のタイル基材2は、0.2mm厚の着色塩化ビニル樹脂シート211、0.3mm厚の塩化ビニルペースト含浸ガラス繊維不織布212、2.7mm厚の塩化ビニルリサイクルシート213、0.3mm厚の塩化ビニルペースト含浸ガラス繊維不織布214、および0.9mm厚の塩化ビニルリサイクルシート215が上からこの順で積層されてなる。この態様のタイル基材2は、2層のガラス繊維不織布を含み高い剛直性を示すものである。また
上側のガラス繊維不織布212より上側に0.2mm厚の着色塩化ビニル樹脂シート211が積層され、また下側のガラス繊維不織布214より下側に0.9mm厚の塩化ビニルリサイクルシート215が積層されていて、着色塩化ビニル樹脂シート211より塩化ビニルリサイクルシート215が厚く、タイル基材2は上反りを防止するような構成となっている。
【0026】
また図2(b)に図示する態様のタイル基材2では、図2(a)に図示する態様に加え、着色塩化ビニル樹脂シート211の上にさらに50μm厚のPETフィルム216が積層されている。PETフィルム216は局部荷重が加わった場合の補強層または剥離可能な接着剤への可塑剤の移行防止層として働く。特に、塩化ビニル樹脂シートに含まれる可塑剤の移行による接着剤の凝集力低下防止に効果がある。
【0027】
図2に図示した態様のタイル基材2は、合成樹脂層の伸縮に伴う上下方向の反り、特に実用上致命的欠陥となる上反り(上面側への反り)が基本的に生じない構造を有し、かつ合成樹脂層の伸縮自体を抑制し、接着剤を使用しない置き敷き施工方法との適合性が良好となる。また高い剛直性を有して床下地面の不陸を合成樹脂タイル1の表面に伝えず、合成樹脂タイル1上での移動荷重、例えば重量物の引き摺り等により折れ曲がったり捲れたりすることもない。
【0028】
表面シート3は、タイル基材2の上面より大きな寸法を有するシートであり、その端面31は、全ての端面において、タイル基材2の端面21が表面シート3の端面31より合成樹脂タイル1の中心に向けて内側となるように位置決め裁断されている。つまり、表面シート3は、表面シート3の寸法がタイル基材2の寸法より大きな分だけ、合成樹脂タイル1の4辺の端面において、タイル基材2から合成樹脂タイル1の外側に向けてはみ出して突出している。表面フィルム3のはみ出した部分の長さは、例えば0.1〜5mmの範囲内にあることが好ましい。0.1mm以下であると、合成樹脂タイル1の製造時に、タイル基材2と表面シート3の相対的な位置関係を厳密に規定することが必要となり、製造が容易になるという本発明の効果が得られない。他方、5mm以上であると、置き敷き施工した際、隣り合う合成樹脂タイル1の間で、表面フィルム3のタイル基材2により支持されていない領域が大きくなり、歩行や重量物の引き摺りによりタイル基材2により支持されていない表面フィルム3の領域が陥没し、凹み跡を残したり破損したりして合成樹脂タイル1間の目地が目立つようになり、外観を損ねてしまう。
【0029】
表面シート3の厚さは、施工場所、要求される耐久性能等に依存して適宜選択できるが、0.5mm〜3mmが好ましい。厚さが0.5mm未満の場合、合成樹脂タイル1としたときの耐摩耗性が悪く、静止荷重または移動荷重により伸長して凹み跡を残したり破損したりする可能性が高くなる。他方、3mmを超えると、現場施工時の切断性が悪化すると共に、合成樹脂タイル1を交換、回収して再生する際に廃棄処分される使用済みの表面シート3の量が増えるのでリサイクルの観点から好ましくなく、また再生に要する費用も増加して経済性の観点からも好ましくない。従って、0.5mm〜3mmという範囲は、耐摩耗性、シート材被覆時の作業性、現場施工性、環境負荷、経済性等の面からの好ましいものである。
【0030】
表面シート3は、合成樹脂タイル1について要求される所望の特性に依存して適宜選択される様々な材料から製造でき、またその構造についても単層構造または多層構造の何れでもよい。
【0031】
表面シート3を構成する材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−エチレン共重合樹脂、ウレタン−アクリル共重合樹
脂等に加え、様々な合成樹脂および/または共重合樹脂の単独またはブレンド等を使用できる。ここで、表面シート3として可塑剤、プロセスオイル等の移行し易い添加物を配合した合成樹脂組成物、合成ゴム組成物、天然ゴム組成物等を使用した場合には、該添加剤の移行を防止するためにポリエステル樹脂、アクリル樹脂等からなるフィルムを表面シート3の裏面に積層することが好ましい。
【0032】
さらに、表面シート3を異なった樹脂層を積層してなる多層構造として、表面シート3の物理的および外観的性質を改良したり、耐磨耗性や耐久性を向上させたり、帯電防止性等の所望の特性を付与したりできる。
【0033】
例えば、表面シート3を繊維質生布を積層した多層構造とすることにより、表面シート3の剛直性および寸法安定性を改良できる。該繊維質生布としては、例えばタイル基材2について上記したものを使用でき、特にガラス繊維不織布が好ましい。なお、繊維質生布を積層する際には、表面シート3が上側に反って表面シート3が剥離し易くなることを防止するために、表面シート3の厚さ方向の中心より上側に積層することが好ましい。
【0034】
また表面シート3の表面に保護作用を有する機能性層を設けて、表面シート3の耐傷性、耐磨耗性および耐久性を向上できる。これにより、例えば人の歩行が多い場所に使用しても、合成樹脂タイル1の交換期間を長くできる。また油等のこぼれに対する耐性を付与でき、染色し易い色素を含むカレー、タバスコソース等の食品、靴墨、染髪料、ヨードチンキ、イソジン等の薬品、塗料(例えば、木材用オイルステイン)による染色が大きく抑制される。また、合成樹脂タイル1がゴムキャップ、ゴムキャスター、自転車、バイク、自動車等のタイヤと接触したときに、ゴムにより表面シート3が着色されることも防止できる。さらに、ドライモップや水に濡らしたモップ等での清掃作業が楽になり、清掃業者の負担が大幅に軽減される。
【0035】
前記機能層は、所望の機能を有する樹脂の層または所望の機能を有する添加剤を添加した樹脂の層からなるが、該機能層は表面シート3の表面にこれらを塗布または貼り合せすることにより設けることができる。塗布の方法としては、スプレー塗布、刷毛塗り、ロールコーター、ダイコーター、カーテンフローコーター等、通常使用されるものを使用でき、また機能層の材料は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン−アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フッ素系材料、有機シリコン系材料(例えば、アルコキシシランとN−プロピルアルコールとアルミニウムキレート化合物との混合物)、無機シリコン系材料(例えば、シリコンガラス)、エポキシ系樹脂、セラミック系樹脂、各種反応性モノマーやオリゴマー等、通常の材料から適宜選択され、これらを溶剤系、水性エマルジョン系、無溶剤系の常温乾燥型塗料、加熱乾燥型塗料、加熱硬化型塗料、紫外線硬化型塗料、電子線硬化型塗料として塗布し、任意の手段で硬化形成できる。またフィルムに成形したものは、通常の手段で貼り合せることで該機能層を形成できる。
【0036】
さらにアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、前記機能層を形成する各種塗料やフィルムに、帯電防止剤、マイナスイオン等を発生する無機物等を添加したものからなる機能層を設けることにより、例えば、帯電防止剤を添加した場合においては歩行時の静電気の発生を防止できる。このような合成樹脂タイル1は、静電気の発生を避けねばならない事務所やクリーンルーム内での使用に適している。
本願の表面シート3において、全ての端面は、少なくとも端面上部部分で、上面側がタイル基材2の中心側に傾斜した帯状傾斜面になっていることが好ましい。表面シート3の全ての端面がこのような帯状傾斜面となっていることにより、合成樹脂タイル1が施工されたときに、表面シート3の端面が引っ掛かり難くなり、歩行者や荷物の移動による表面
シート3の剥離発生をより防止することが可能となる。
【0037】
好ましい表面シート3の具体的な態様を図3に図示する。
図3(a)に図示する態様の表面シート3は、5μm厚のハードコート321、125μm厚の両面易接着処理PETフィルム322、20μm厚の接着剤323、80μm厚の塩化ビニル印刷フィルム324、0.4mm厚の塩化ビニルリサイクルシート325、および50μm厚の両面易接着処理PETフィルム326が上からこの順で積層されたシートである。
図3(b)に図示する態様の表面シート3は、5μm厚のハードコート321、125μm厚の両面易接着処理PETフィルム322、20μm厚の接着剤323、80μm厚の塩化ビニル印刷フィルム324、0.3mm厚の塩化ビニルペースト含浸ガラス不織布328、0.4mm厚の塩化ビニルリサイクルシート325、および50μm厚の両面易接着処理PETフィルム326が上からこの順で積層されたシートである。
【0038】
タイル基材2の上面に接着層4を形成して、タイル基材2に表面シート3を剥離可能に接着することにより本発明の合成樹脂タイル1が製造される。接着層4としては、表面シート3をタイル基材2に剥離可能な状態で固定でき、施工時に障害となる不要な凹凸が合成樹脂タイル1の表面に生じず、施工時および使用時に表面シート3が剥離しないよう十分な固定力を発揮し得るものであれば任意の材料を適宜選択できる。例えば、接着層4は接着剤、粘着剤、粘着テープ等からなり、常温で、または加熱、加圧等により接着性、粘着性を発揮するものや、2液型等の反応性の接着剤または粘着剤であることができる。
【0039】
また接着層4による接着の強度は、交換時に表面シート3をタイル基材2から容易に剥離可能とする必要があるため、0.3〜4.0kg/25mm幅であることが好ましい。0.3kg/25mm幅未満であると、運搬時、施工時のカッティングや出隅、入り隅の敷き込みおよび/または使用時に表面シート3が剥離する可能性があるばかりでなく、床下地面の不陸にタイル基材2が追従した際にも剥離が生じる惧れがある。他方、4.0kg/25mm幅を超えると、表面シート3の剥離に大きな力が必要となったり、タイル基材2に強く接着した表面シート3が剥離時に破れ、タイル基材2に接着されたままとなった表面シート3の破片を除去せねばならないために剥離作業の効率が著しく低下する。
【0040】
接着層4の材料としては、一般に使用される溶剤型、水性エマルジョン型、水性ラテックス型、無溶剤型、ホットメルト型等を使用できる。またタイル基材2および/または表面シート3の材料として可塑剤を含む軟質または半硬質の合成樹脂組成物を使用する場合は、該可塑剤に対して接着層4が耐性を有するべきである。そのような接着層4の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等から選択される1種または2種以上の混合物がある。
【0041】
接着層4の形成方法は、接着剤や粘着剤を使用する場合、タイル基材2にそれらを例えば、スプレー塗布、刷毛塗り、グラビア塗布、ロールコーター、ダイコーター、ホットメルト塗布等の通常の方法により塗布する方法を採用できる。また接着層4は、タイル基材2の上面全体に形成しても部分的に形成してもよい。部分的に形成する場合には、例えば接着層4を線状または斑点状に形成できる。接着層4の材料を選択することに加え、接着層4を部分的に形成するパターンを適宜選択することにより、巻き込みエアの発生防止や接着の強度を調節できる。
【0042】
接着層4の材料として、加熱により接着性または粘着性を発揮するものを採用すると、接着層4の形成後には接着性または粘着性を有さずにタイル基材2と表面シート3とは固定されないので、表面シート3をタイル基材2に覆った後、接着する前に両者を位置決め
することが可能となる。そして位置決め完了後、加熱により、両者は所望の容易に剥離できる程度の強度で接着される。このような加熱により接着性または粘着性を発揮する材料としては、例えば、SBR、SEBS、クロロプレン等の合成ゴム、アクリル酸エステル、変性ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂や、ポリエステル樹脂溶液を挙げることができる。また加熱によるものに加え、例えば加圧により接着性または粘着性を発揮する材料も同様に使用でき、位置決めが容易になる効果を奏する。
【0043】
表面シート3とタイル基材2を剥離する場合に、表面シート3と接着層4の界面またはタイル基材2と接着層4の界面で剥離しても、接着層4間で剥離してもよいが、表面シート3と接着層4との界面で剥離し、再度の接着性を有するような接着剤を採用することが好ましい。このような接着剤には、例えば、粘着剤や、加熱等により接着性や粘着性を発揮するような接着剤がある。このような接着剤により接着層4を形成しておけば、合成樹脂タイル1を回収し、汚れたり傷付いたりした表面シート3を剥離しても、タイル基材2の上面には剥離可能な接着性を有する接着層4が存在するために、既存の接着層4を除去することなく、また新たに接着層4を形成することなく、新たな表面シート3を剥離可能な状態で接着することができ、表面シート3の交換作業性を良いものとすることができる。
【0044】
図示する本発明の合成樹脂タイル1には、所望により、表面シート3の下面の端縁32からタイル基材2の端面21までを、接着層4の端面41を含み、連続して被覆する保護被膜5を設けることができる。なお、置き敷き施工時の合成樹脂タイル1間の目地を綺麗にする観点から、表面シート3の端面31には保護被膜5を形成しないことが好ましい。保護被膜5は、防湿性および/または耐水性を有する材料から形成することが好ましく、タイル基材2と接着層4の界面および接着層4と表面シート3の界面への水の侵入を防止する。保護皮膜5の材料は、一般に防湿性および/または耐水性を備えたものであれば如何なる材料をも使用でき、また天然または合成ワックス、シリコン系撥水剤、シリコン系撥油剤、フッ素系撥水剤、フッ素系撥油剤等を添加して、さらに撥水性および/または撥油性を改良することもできる。また、ゴミや埃の付着を防止する観点から、保護被膜5の材料はベタ付のないものが好ましい。
【0045】
保護被膜5の厚さとしては、1μm〜0.5mmの範囲が好ましい。1μm未満であると、保護被膜5の強度が十分でなくなり、また所望の防湿性および/または耐水性が得られない。また、0.5mmを超えると、多量の材料が必要となり、費用が高騰して経済性に劣るものとなることに加え、保護被膜5の端部に瘤状に盛り上がった部分が形成されがちになり、目地の仕上がりが悪くなるばかりか、それらが歩行時等に摩擦を増加させる原因となって、表面シート3の剥離を生じさせ易くなる。
【0046】
保護被膜5は、スプレー塗布、刷毛塗り、ロール塗布、ダイコート、ホットメルト塗布等、通常採用されている方法により形成することができる。
【0047】
本発明の他の態様の合成樹脂タイル1を図4に図示する。図4に図示する態様では、表面シート3の寸法はタイル基材2の上面の寸法と同等もしくはより多きく、そして縦方向および横方向に関して各々、一方の端面において、タイル基材2の端面21が表面シート3の端面31より合成樹脂タイル1の中心に向けて内側となるように、かつ該端面と対向する反対側の端面では、タイル基材2の端面21が表面シート3の端面31より合成樹脂タイル1から外側となるように位置決め裁断されている。つまり、表面シート3は、合成樹脂タイル1のある端面において、タイル基材2から合成樹脂タイル1の外側に向けてはみ出して突出しており、該端面と対向する端面では、表面シート3はタイル基材2の端部まで覆っておらず、タイル基材2の端面21近傍ではタイル基材2の上面が露出している
。表面フィルム3のはみ出した部分の長さは、図1に図示する態様の合成樹脂タイル1の場合と同様に、例えば0.1〜5mmの範囲内にあることが好ましい。
【0048】
図4に図示する態様の合成樹脂タイル1では、表面シート3の寸法はタイル基材2の上面の寸法と同じかまたはそれより大きい。よって、両者の寸法が同じ場合には、ある端面において表面フィルム3のはみ出した部分の長さと、該端面と対向する端面においてタイル基材2が露出した部分の長さとは等しくなる。また表面シート3の寸法がタイル基材2の上面の寸法とより大きい場合には、ある端面において表面フィルム3のはみ出した部分の長さは、該端面と対向する端面においてタイル基材2が露出した部分の長さより長くなる。
【0049】
図1に図示する態様の本発明の合成樹脂タイル1は、予め作製した矩形平板のタイル基材2の上面に接着層4を設け、次いで大面積のシート材を、接着層4を介して、タイル基材2の上面側に剥離可能に接着し、その後、該シート材をタイル基材2の上面の寸法と同等もしくはより大きい寸法にて、かつ全ての端面において、タイル基材2の端面21がシート材の端面31より内側となるように位置決め裁断することにより製造できる。この場合において、該シート材が帯状の連続シート材である場合には、該連続シート材を複数のタイル基材2の上面側に接着し、そしてタイル基材2と隣のタイル基材2との間のシート材を裁断した後に裁断工程を行ってもよい。
【0050】
一例を示すと、タイル基材2を作製した後、矩形平板のタイル基材2の上面に接着層4を設け、接着層4を上面に有する複数のタイル基材2を一定の間隔をおいて連続的に搬送すると共に、予めタイル基材2より大きい寸法に裁断した略矩形状のシート材または帯状の連続シート材を、接着層4を介して、タイル基材2の上面側に剥離可能に接着した後、予めタイル基材2より大きい寸法に裁断した略矩形状のシート材を使用した場合はそのまま、また連続シート材を使用した場合には個々のタイル基材2毎に連続シート材をタイル基材2の寸法以上の寸法に裁断、切り離し、各タイル基材2をシート材の上面を押圧した状態で左右一対の切断具の間に通過させることにより、シート材の対向する2つの端面を裁断し、続いてタイル基材2を90°回転した後、シート材の上面を押圧した状態で左右一対の切断具の間にタイル基材2を通過させることにより、シート材の残りの対向する2つの端面を裁断して、全ての端面において、タイル基材2の端面21が表面シート3の端面31より内側となるように位置決め裁断して表面シート3を作り上げることによって、本発明の合成樹脂タイル1を製造できる。このように予めタイル基材2より大きい寸法に裁断した略矩形状のシート材または帯状の連続シート材を使用して、一貫した工程で製造する方法は、高品質の合成樹脂タイル1の大量生産により適している。
【0051】
前記切断具としては、例えば回転刃、ナイフ、ルーター、レーザーカッター、超音波カッター、ウォータージェットカッター等を使用できる。
さらに本発明の合成樹脂タイル1の製造方法では、表面シート3の切断成形後、少なくとも、表面シート3の下面31からタイル基材2の端面21までを連続して覆う保護被膜5を設けることもできる。
【0052】
図1に図示する本発明の合成樹脂タイル1の製造方法を、ホットメルト型接着剤を用いた場合についての流れを模式的に図示する図5を参照して説明する。平板フォームをその上面または下面に対して略垂直に切断することにより予めタイル基材2を作製し、そして図5に図示するようにタイル基材2を搬送装置Tにより連続して搬送する。すると先ず予備加熱されたタイル基材2の上面に、接着剤塗布装置Aによりホットメルト型接着剤が塗布されて接着層4が形成される。ホットメルト型接着剤からなる接着層4は、加熱装置Bにより接着剤の融点以上の温度に維持されて溶融状態が保持される。次いで、この適度な粘着力を保持した接着層4の上にロール状に巻かれた帯状の連続シート材が貼り合せ装置
Cにより戴置され、その後冷却装置Dにより接着剤が冷却固化されて、連続シート材がタイル基材2に接着される。この時点では連続シート材は依然として帯状であり、搬送される各タイル基材2は帯状の連続シート材を介して互いに繋がっている。その後、搬送されている各タイル基材2の間で裁断装置Eにより連続シート材が切断され、タイル基材2が個々に分離される。個々に分離されたタイル基材2は、任意形状の回転刃を有する第1切断装置F1により矩形のタイル基材2における対向する2辺のシート材が切断され、そして、少なくとも、表面シート3の下面の端縁32からタイル基材2の端面21までを連続して覆う保護被膜5が端面塗布装置G1により形成される。次いでタイル基材2を90°回転し、残る対向する2辺のシート材が同様に第2切断装置F2により切断され、そして、少なくとも、表面シート3の下面の端縁32からタイル基材2の端面21までを連続して覆う保護被膜5が端面塗布装置G2により形成され、乾燥装置Hにより乾燥冷却して、本発明の合成樹脂タイル1が製造される。
【0053】
切断装置F1、F2を模式的に図示する図7により、シート材の切断についてより詳細に説明する。図7(a)に図示するように、切断装置F1、F2では、上側から順にシート材および接着層4が積層されたタイル基材2が搬送装置Tに戴置されて搬送されるが、さらにシート材の切断を容易にするために、シート材の上側を押え搬送装置F101により押圧されて搬送される。こうして搬送されるタイル基材2の左右には、一対の切断具F102が切断具固定装置F103により固定されて設けられており、加えて、タイル基材2の左右両端面は、タイル基材押え搬送装置F104により固定されている。ここで切断具F102は表面シート3の上面または下面に垂直に切断具固定装置F103により固定されており、従ってタイル基材2の搬送に伴って切断具F102によりシート材が切断されて表面シート3となる。ここで、切断具F102はタイル基材2と直接接触せず、切断具F102によりタイル基材2が切断されることはない。
また図7(b)に図示するように、切断具F102および切断具固定装置F103に替えて、回転刃F105および回転刃駆動手段F106を用い、シート材を切断して表面シート3とすることも可能である。
【0054】
図1に図示する態様の本発明の合成樹脂タイル1の施工状態を図7に図示する。図7に図示するように、合成樹脂タイル1は床下地面に隙間なく置き敷きされており、隣り合う合成樹脂タイル1の表面シート3の端面31同士が当接しているが、タイル基材2の端面21同士は当接しておらず、隣り合う合成樹脂タイル1のタイル基材2の間には隙間が存在する。よって、表面シート3の端面31同士が当接しているのみであるので、タイル基材2の膨張や収縮等の寸法変化により合成樹脂タイル1間の目地に隙間が生じて外観を損ねることはない。また、製造時にタイル基材2と表面シート3との位置関係について個々の合成樹脂タイル1に多少の差異が存在しても、合成樹脂タイル1を置き敷きした場合にはタイル基材2の間に隙間が存在することとなるので、該隙間が個々の合成樹脂タイル1におけるタイル基材2と表面シート3との位置関係の差異を吸収することができる。
【0055】
図4に図示する態様の本発明の合成樹脂タイル1の施工状態を図8に図示する。図8に図示するように、図4に図示する態様の本発明の合成樹脂タイル1では、タイル基材2の端面21が表面シート3の端面31より内側となるように接着されている合成樹脂タイル1の端面が、タイル基材2の端面21が表面シート3の端面31より外側となるように接着されている合成樹脂タイル1の端面と当接するように床下地面に隙間なく置き敷きする。このように置き敷きすることにより、タイル基材2の端面21からはみ出した表面シート3が、隣り合う合成樹脂タイル1の露出したタイル基材2の上面を覆うことができ、その結果、図7に図示したのと同様の施工状態を得ることができる。また表面シート3の寸法をタイル基材2の上面の寸法より大きくした場合には、図7に図示したのと同様に、隣り合う合成樹脂タイル1のタイル基材2の間には隙間が存在し、製造時にタイル基材2と表面シート3との位置関係を厳密に規定する必要がなくなるという効果が得られる。
【0056】
さらに、このように本発明の合成樹脂タイル1は接着剤により床下地面に固定する必要はなく、従って接着剤に含まれる揮発性有機化合物等による空気汚染の問題はない。
【0057】
本発明の合成樹脂タイル1の施工は、通常行われている置き式タイルの施工方法と同様に行うことができる。より容易な施工を行うために、施工される床下地面の中心部に置かれる合成樹脂タイル1の少なくとも数枚を剥離可能な両面テープ等で仮止めしておき、基準となる合成樹脂タイル1の並びを形成した後に、その基準に合わせた施工を行うことが好ましい。これにより、施工途中での部分的なタイルの移動等を防止でき、作業性の向上と綺麗な施工面の形成が可能となる。なお、仮止めに使用した両面テープ等は、全てのタイルが施工された後に除去することが好ましい。除去することで合成樹脂タイル1を汚染したり、合成樹脂タイル1表面に段差等を発生させる惧れがなくなる。合成樹脂タイル1を汚染したり、段差等の発生する惧れのない仮止め手段であれば、そのまま放置することもできる。
【0058】
こうして施工された本発明の合成樹脂タイル1は、使用により表面シート3が損傷したり表面が汚れたりした場合において、損傷および/または汚れが生じた合成樹脂タイル1のみ、または施工された合成樹脂タイル1の全てを取り除き、新たな合成樹脂タイル1と交換できる。合成樹脂タイル1自体は床下地面に置き敷きされているだけであって、接着固定はなされていないので、該交換は短時間で容易に行うことができ、施工場所の使用状態に大きな影響を及ぼすことはない。
【0059】
損傷および/または汚れを受け交換された本発明の合成樹脂タイル1は、工場等に搬送した後、表面シート3が剥離される。そしてタイル基材2に損傷や汚れがない場合には、使用済みの合成樹脂タイル1のうちタイル基材2を再使用することができる。そして、図6に図示するのと同様な方法で、新たな表面シート3をタイル基材2に接着して新たな合成樹脂タイル1として再使用できる。
【0060】
使用済みのタイル基材に新たに接着する表面シート3は、以前に接着されていたのと同種類の表面シート3であることができるが、異なる種類の表面シート3を接着することもできる。例えば、透明な表面シート3が接着されていたタイル基材2に、不透明な表面シート3を接着することができる。
【0061】
本発明の合成樹脂タイル1では、使用中に損傷したり汚れたりした場合に新たな合成樹脂タイル1と容易に交換可能であり、また使用済みの合成樹脂タイル1から表面シート3を剥離し、そしてタイル基材2に新たな表面シート3を接着することにより、タイル基材2を廃棄せずに再使用できる。また剥離した表面シート3および再使用不可能な程に損傷を受けたタイル基材2は容易に再資源化できる。従って、本発明の合成樹脂タイル1により、本質的に廃棄物を排出しない再使用および再資源化を基本とする循環型の床メンテナンス系を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1(a)は本発明の合成樹脂タイルを図示する模式的な断面図であり、図1(b)は図1(a)の右側の上端部の拡大図である。
【図2】図2は、タイル基材の好ましい具体的な態様を図示する模式的な断面図である。
【図3】図3は、表面シートの好ましい具体的な態様を図示する模式的な断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の態様の合成樹脂タイルを図示する模式的な断面図である。
【図5】図5は、本発明の合成樹脂タイルの製造方法の流れを図示する模式図である。
【図6】図6は、図5の切断装置を図示する模式図である。
【図7】図7は、図1に図示する本発明の合成樹脂タイル1の施工状態を図示する模式図である。
【図8】図8は、図4に図示する本発明の合成樹脂タイル1の施工状態を図示する模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1 合成樹脂タイル
2 タイル基材
3 表面シート
4 接着層
5 保護被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形平板のタイル基材と、
該タイル基材の上面に形成された接着層と、
該接着層を介して、該タイル基材の上面側に剥離可能に接着されている表面シート
からなり、
該表面シートの寸法は該タイル基材の上面の寸法より大きく、
全ての端面において、該タイル基材の端面が該表面シートの端面より内側となるように位置決め裁断されていることを特徴とする、合成樹脂タイル。
【請求項2】
少なくとも、前記表面シートの下面の端縁から前記タイル基材の端面までが連続した保護被膜で被覆されていることを特徴とする、請求項1記載の合成樹脂タイル。
【請求項3】
略矩形平板のタイル基材の上面に接着層を設け、次いで大面積のシート材を、該接着層を介して、該タイル基材の上面側に剥離可能に接着し、その後、該シート材を、該タイル基材の上面の寸法と同等かもしくはより大きい寸法にて、かつ全ての端面において、該タイル基材の端面が該シート材の端面より内側となるように位置決めし裁断することにより表面シートを作り上げることを特徴とする、合成樹脂タイルの製造方法。
【請求項4】
前記シート材が帯状の連続シート材であり、該連続シート材を複数の前記タイル基材の上面側に接着し、そして該タイル基材と隣の該タイル基材との間のシート材を裁断することを特徴とする、請求項3記載の合成樹脂タイルの製造方法。
【請求項5】
使用後に回収され、表面シートが剥離された請求項1または2に記載の合成樹脂タイルのタイル基材の上面側に、新たな表面シートを剥離可能に、かつ位置決めされて接着したことを特徴とする、再生合成樹脂タイル。
【請求項6】
少なくとも、前記表面シートの下面の端縁から前記タイル基材の端面までが連続した保護被膜で被覆されていることを特徴とする、請求項5記載の再生合成樹脂タイル。
【請求項7】
略矩形平板のタイル基材と、
該タイル基材の上面に形成された接着層と、
該接着層を介して、該タイル基材の上面側に剥離可能に接着されている表面シート
からなり、
該表面シートの寸法は該タイル基材の上面の寸法と同等もしくはより大きい寸法であり、縦方向および横方向に関して各々、一方の端面において、該タイル基材の端面が該表面シートの端面より内側となるように、かつ、該端面と対向する反対側の端面では、該タイル基材の端面が該表面シートの端面より外側となるように位置決め裁断されていることを特徴とする、合成樹脂タイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−125025(P2006−125025A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313943(P2004−313943)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】