説明

合成樹脂パイプ及びパイプ接続構造

【課題】 パイプ本体の伸びと撓みを防止しながらリサイクルを容易にする。
【解決手段】 複数の層1,2の間に、パイプ本体A′の軸方向へ延びる補強線材3を該パイプ本体A′の軸方向全長に亘って埋設し、これら複数の層1,2及び補強線材3をオレフィン系樹脂で形成することにより、その接続時にパイプ本体A′の軸方向端部を加熱すると、複数の層1,2と補強線材3が一体に溶着し、補強線材3がパイプ本体A′内で移動して抜けることがなく、それによって該パイプ本体A′の使用環境が高温になっても軸方向への伸びと弓状の撓みが抑制され、また複数の層1,2と補強線材3が同一のオレフィン系樹脂であるからパイプ本体A′の全体がそのまま廃棄処理可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水やその他の流体又は気体の導管として用いられ、熱溶着で配管施工する合成樹脂パイプ、及びそれを用いたパイプ接続構造に関する。
詳しくは、複数の層を積層してパイプ本体が形成され、熱溶着によりパイプ本体同士を接続する合成樹脂パイプ及びパイプ接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の合成樹脂パイプとして、パイプ本体の内側層、中間層及び外側層が同一のポリマー材料(ポリプロピレン・ランダム共重合体)で形成され、この中間層のポリマー材料の非晶領域に、上記内側層から外側層への添加剤の移動を抑える遮断材料として、短切断のガラス繊維または混合過程で粉砕されるエンドレス繊維、ガラス球、またはガラス粉、あるいはこれら材料の混合物からなる充填剤、並びにこれらを結合する結合添加剤が含まれるものがある(例えば、特許文献1参照)。
さらに、そのパイプ接続構造として、パイプ端部と、取付部品ないし成形品の穴の内壁とを工具でプラスチックが流れるまで加熱し、次いでパイプと取付部品を工具から離し、パイプ端部を取付部品の穴に押し込んで、両方の部分を相互に溶接している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−355767号公報(第3−4頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の合成樹脂パイプでは、パイプ本体の内側層、中間層及び外側層が熱可塑性樹脂と短切断のガラス繊維やガラス球などで形成されるため、このパイプ本体を使用する環境が熱湯などにより高温になると、これら内側層、中間層及び外側層が軟化して、該パイプ本体の全体が軸方向へ伸びたり、弓状に撓んだり、耐圧性能も著しく低下するという問題があった。
さらに、パイプ本体を廃棄処理する際には、中間層からガラス繊維、ガラス球又はガラス粉或いはこれら材料の混合物からなる充填剤、並びにこれらを結合する結合添加剤を分別しなければならず、リサイクルが行い難いという問題もあった。
また、このような従来のパイプ接続構造では、取付部品の穴にパイプ端部を押し込む際に、加熱部分から溶融した樹脂が流出して、パイプ内周面よりも内側へ環状に盛り上がって硬化すると、その流路を部分的に絞って、所定の流量を確保できないおそれがあるという問題もあった。
またさらに、中間層のポリマー材料の非晶領域に、内側層から外側層への添加剤の移動を抑える遮断材料が含まれているため、耐衝撃性に劣り、それにより例えば振動や地震により破損し易くなって、耐震性を確保できないおそれがあるという問題もあった。
【0005】
本発明のうち第一の発明は、パイプ本体の伸びと撓みを防止しながらリサイクルを容易にすることを目的としたものである。
第二の発明は、第一の発明の目的に加えて、パイプ本体の耐圧性能を向上させることを目的としたものである。
第三の発明は、パイプ接続部において溶融樹脂がパイプ内周面に盛り上がって硬化することを防止することを防止することを目的としたものである。
第四、第五の発明は、第三の発明の目的に加えて、パイプ内周面への溶融樹脂の流出硬化を確実に防止することを防止することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち第一の発明は、複数の層の間にパイプ本体の軸方向へ延びる補強線材を該パイプ本体の軸方向全長に亘って埋設し、これら複数の層及び補強線材をオレフィン系樹脂で形成することを特徴とするものである。
第二の発明は、第一の発明の構成に、前記パイプ本体の周方向に前記補強線材を更に螺旋状に巻き付ける構成を加えたことを特徴とする。
第三の発明は、第一の発明または第二の発明の合成樹脂パイプと、この合成樹脂パイプの軸方向端部に嵌合する継手管とを備え、これら合成樹脂パイプの軸方向端部と上記継手管との対向面を加熱手段により溶融し、相互に圧接させて溶着するパイプ接続構造であって、上記合成樹脂パイプの軸方向端部と上記継手管との圧接部分から該合成樹脂パイプの内側へ向かう溶融樹脂の流れを抑制する流動規制手段を設けることを特徴とするものである。
第四の発明は、第三の発明の構成に、前記流動規制手段として封止カバーを、前記合成樹脂パイプの軸方向端部と前記継手管との接続部分に、上記合成樹脂パイプの内側から覆うように取り付ける構成を加えたことを特徴とする。
第五の発明は、第三の発明の構成に、前記流動規制手段として貯留部を、前記合成樹脂パイプの軸方向端部と前記継手管との圧接部分に形成する構成を加えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち第一の発明は、複数の層の間に、パイプ本体の軸方向へ延びる補強線材を該パイプ本体の軸方向全長に亘って埋設し、これら複数の層及び補強線材をオレフィン系樹脂で形成することにより、その接続時にパイプ本体の軸方向端部を加熱すると、複数の層と補強線材が一体に溶着し、補強線材がパイプ本体内で移動して抜けることがなく、それによって該パイプ本体の使用環境が高温になっても軸方向への伸びと弓状の撓みが抑制され、更に耐衝撃性も著しく向上し、また複数の層と補強線材が同一のオレフィン系樹脂であるからパイプ本体の全体がそのまま廃棄処理可能になる。
したがって、パイプ本体の伸びと撓みを防止しながらリサイクルを容易にすることができる。
その結果、パイプ本体が熱可塑性樹脂とで形成される従来のものに比べ、パイプ本体の直線強度が保たれるとともに、パイプ相互の接続後においては、その接続部に無理な力が掛からず、漏れなどの事故の発生を完全に防止でき、更に例えば振動や地震により破損し難くなるため、十分な耐震性を備えることができ、しかも廃棄処理する際には、分別することなくパイプ全体の再利用・再資源化が簡単に行える。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の効果に加えて、パイプ本体の周方向に補強線材を更に螺旋状に巻き付けることにより、パイプ本体の拡径が抑制される。
したがって、パイプ本体の耐圧性能を向上させることができる。
【0009】
第三の発明は、第一の発明または第二の発明の合成樹脂パイプと、この合成樹脂パイプの軸方向端部に嵌合する継手管とを備え、これら合成樹脂パイプの軸方向端部と上記継手管との対向面を加熱手段により溶融し、相互に圧接させて溶着するパイプ接続構造であって、上記合成樹脂パイプの軸方向端部と上記継手管との圧接部分から該合成樹脂パイプの内側へ向かう溶融樹脂の流れを抑制する流動規制手段を設けることにより、上記圧接に伴って対向面から溢れ出る溶融樹脂が合成樹脂パイプAの内周側へ流出しない。
したがって、パイプ接続部において溶融樹脂がパイプ内周面に盛り上がって硬化することを防止することを防止することができる。
その結果、パイプ接続部の内周面が部分的に盛り上がって流路を絞ることがないため、所定の流量を確保できる。
【0010】
第四の発明は、第三の発明の発明の効果に加えて、流動規制手段として封止カバーを、合成樹脂パイプの軸方向端部と継手管との接続部分に、上記合成樹脂パイプの内側から覆うように取り付けることにより、上記圧接に伴って対向面から溢れ出る溶融樹脂が、上記合成樹脂パイプの外周面沿いに誘導されて硬化する。
したがって、パイプ内周面への溶融樹脂の流出硬化を確実に防止することができる。
【0011】
第五の発明は、第三の発明の発明の効果に加えて、流動規制手段として貯留部を、合成樹脂パイプの軸方向端部と継手管との圧接部分に形成することにより、前記圧接に伴って対向面から溢れ出る溶融樹脂が貯留部へ流れ込んで硬化する。
したがって、パイプ内周面への溶融樹脂の流出硬化を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の合成樹脂パイプAの実施形態は、図1〜図2に示す如く、熱可塑性樹脂からなる複数の層1,2を積層し、この複数の層1,2の間に、その軸方向へ延びる補強線材3を該層1,2の軸方向略全長に亘って埋設し、これら複数の層1,2及び補強線材3を例えばポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂で形成し、それらを一体的に積層することでパイプ本体A′が形成され、このパイプ本体A′の軸方向端部をヒータなどの加熱手段で加熱することにより、相互に熱溶着して接続される。
【0013】
上記パイプ本体A′の製造方法は、上記複数の層1,2として少なくとも内層と外層を順次押出し成形し、これら内層1と外層2の間に後述する補強線材3を配置して埋設する。
また、その他の例としては図示せぬが、上記内層1と外層2の間に中間層を押出し成形し、これら内層1と中間層の間及び該中間層と外層2の間に後述する補強線材3を夫々配置して埋設することも可能である。
【0014】
なお、図示せぬが必要に応じて上記内層1の内側に、パイプ本体A′内を通る流体又は気体に合わせた材料からなる最内層を設けたり、上記外層2の外側に保護用の材料からなる最外層を設けることも可能である。
【0015】
上記補強線材3は、上記複数の層1,2と同じポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂で形成された例えばモノフィラメント(monofilament:単繊維)などの糸や補強繊維などであり、その具体例として、上記パイプ本体A′の軸方向へ直線状に延びる太いモノフィラメント(延伸モノフィラメント)を周方向へ複数本夫々適宜間隔ごとに配置すれば、剛性に優れながらパイプ本体A′の切断が容易で軽量化も図れることから好ましい。
【0016】
また、その他の例として、細いモノフィラメントが編まれたマルチフィラメントを複数本、上記パイプ本体A′の軸方向へ直線状に延びるように周方向へ夫々適宜間隔ごとに配置するとともに、上記パイプ本体A′の周方向へ螺旋状に編組して中空円筒形の均一な網状にするか、あるいはニット編みなどで中空円筒形の均一な網状に編み込んで配置することも可能である。
さらに、上記延伸モノフィラメントやマルチフィラメントに代えて、テープ状の糸からなるフラットヤーン(又はテープヤーン)を用いることも可能であり、この場合には該補強線材3の肉厚寸法が薄くなって、パイプ本体A′全体の肉厚寸法を薄くすることができるという利点がある。
【0017】
そして、本発明の合成樹脂パイプAを用いたパイプ接続構造の実施形態は、図1(b)に示す如く、加熱された2本の合成樹脂パイプAの軸方向端面同士を突き合わせて溶着すか、又は図3〜図5に示す如く、後述する継手管Bを介して複数本の合成樹脂パイプAが熱溶着される。
このパイプ接続構造は、上述した構造の合成樹脂パイプAと、この合成樹脂パイプAの軸方向端部A1に嵌合する継手管Bと、これら合成樹脂パイプAの軸方向端部A1と継手管Bとの対向面を夫々溶融する加熱手段(図示しない)とを備え、この加熱手段により溶融された対向面を相互に圧接させて溶着している。
【0018】
その具体例としては、上記継手管Bの内径を上記合成樹脂パイプAの軸方向端部A1の外径と同じ又はそれよりも小径に形成し、これら合成樹脂パイプAの軸方向端部A1の外周面A2と継手管Bの内周面B1を夫々加熱した後に、この継手管B内に合成樹脂パイプAを押し込むことにより、これら継手内周面B1とパイプ外周面A2を互いに圧接させて熱溶着している。
【0019】
上記継手管Bは、上記合成樹脂パイプAの層1,2と同じ熱可塑性樹脂、詳しくは例えばポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂で形成され、接続される合成樹脂パイプAの数に対応した開口を開設して、例えば直管やT字管などに一体成形される。
図示例では、該継手管Bの2つの開口を一直線上に開設し、これら開口に2本の合成樹脂パイプAが夫々押し込まれて接続される直管の場合を示している。
【0020】
さらに必要に応じて、上記合成樹脂パイプAの軸方向端部A1が接続される開口の内周面B1には、それに挿入した合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3が突き当たる段部B2を周方向へ環状に突出するように一体成形することが好ましい。
この場合には、上記継手管Bに対する合成樹脂パイプAの押し込みにより、上記継手内周面B1と上記パイプ外周面A2が圧接すると同時に、上記継手管B内の段部B2と上記合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3が圧接して、これらの圧接部分が夫々溶着される。
【0021】
ところで、図6(a)(b)に示す如く、上述のように継手管Bの開口に合成樹脂パイプAを押し込み、その対向するパイプ外周面A2と継手内周面B1を圧接させることによって、これら対向面から溶融した樹脂Rが溢れ出ると、この圧接部分から合成樹脂パイプAの内側へ向かう溶融樹脂Rは、該合成樹脂パイプAの内周面A4からパイプ内側へ盛り上がって流出し、そのまま環状に突出して硬化する。
また、これと逆に上記圧接部分からパイプ外周面A2に沿って上記継手管Bの端面B3へ向かう溶融樹脂Rは、該継手管Bの端面B3からパイプ外側に盛り上がって流出し、そのまま環状に突出して硬化する。
それにより、上記パイプ内周面A4よりも内側へ盛り上がって硬化した環状の樹脂Rは、流路を部分的に絞って、所定の流量を確保できないおそれがあり、またパイプ外周面A2よりも外側へ盛り上がって硬化した環状の樹脂Rは、外観を低下させるおそれがある。
【0022】
そこで、このような問題点を解決するため、本発明では上記合成樹脂パイプAの軸方向端部A1と上記継手管Bと圧接部分から合成樹脂パイプAの内側へ向かう溶融樹脂Rの流れを抑制する流動規制手段Cを設けている。
この流動規制手段Cとしては、図3(a)(b)に示す如く、上記合成樹脂パイプAの軸方向端部A1と上記継手管Bとの接続部分を封止カバーC1で該合成樹脂パイプAの内側から覆うように取り付けることにより、該合成樹脂パイプAの押し込み及び圧接に伴って溢れ出る溶融樹脂Rを、上記パイプ外周面A2沿いに上記継手管Bの端面B3へ向け誘導して硬化させることが好ましい。
【0023】
その他の例として、図4(a)(b)及び図5(a)(b)に示す如く、上記合成樹脂パイプAの軸方向端部A1と上記継手管Bとの圧接部分に貯留部C2,C3を形成することにより、該合成樹脂パイプAの押し込み及び圧接に伴って溢れ出る溶融樹脂Rを、該貯留手段C2,C3内へ流し込んで硬化させることも可能である。
【0024】
また、上記複数の層1,2及び補強線材3を構成するポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂としては、そのパイプ接続構造において、合成樹脂パイプAの軸方向端面同士を突き合わせて溶着させる場合には、軟質のオレフィン系樹脂及び硬質のオレフィン系樹脂のどちらで成形しても良いが、継手管Bを介して複数本の合成樹脂パイプAが熱溶着される場合には、継手管Bの開口に対して合成樹脂パイプAを挿入する必要があるため、ある程度硬質なオレフィン系樹脂で成形することが好ましい。
以下、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0025】
この実施例1は、図1(a)に示す如く、前述した合成樹脂パイプAが、前記内層1を押出し成形した後に、この内層1の外周面1aに沿って、軸方向へ直線状に延びる太いモノフィラメント(延伸モノフィラメント)などの補強線材3を周方向へ複数本夫々適宜間隔ごとに配置し、その外側に外層2を押出し成形することにより、これら内層1、補強線材3及び外層2を一体化してパイプ本体A′が形成される場合を示すものである。
【0026】
次に、斯かる合成樹脂パイプAの接続例について説明する。
図1(b)に示す如く、先ず、各パイプ本体A′の軸方向端部又は軸方向端面のみを、例えばヒータなどの加熱手段(図示しない)で加熱した後に、これらパイプ本体A′が一直線上になるように各端面を突き合わせて相互に圧接させると、夫々の内層1、外層2及び補強線材3の軸方向端部が溶融して一体になり、該補強線材3が内層1及び外層2に熱溶着される。
【0027】
それにより、特にパイプ本体A′を屈曲させるなど変形させても、補強線材3が内層1と外層2の間で移動して抜けることがなく、その結果として、このパイプ本体A′を使用する環境が高温雰囲気になっても、該パイプ本体A′が軸方向へ伸びたり、弓状に撓むことが抑制されて、パイプ本体A′の直線強度が保たれ、更に各パイプ本体A′の接続部分に無理な力が掛からない。
【0028】
また、上記内層1、外層2及び補強線材3が同一のオレフィン系樹脂であるため、パイプ本体A′を分解することなく、そのまま廃棄処理が可能である。
なお、図示例の場合には、各パイプ本体A′の軸方向端面同士から流出した溶融樹脂Rが、内層1の内側及び外層2の外側に夫々盛り上がって環状に突出して硬化した例を示しているが、上述したように少なくとも内層1の内側には環状に盛り上がって硬化しないようにすることが好ましい。
【実施例2】
【0029】
この実施例2は、図2に示す如く、前述した合成樹脂パイプAが、前記内層1を押出し成形した後に、この内層1の外周面1aに沿って、マルチフィラメントやフラットヤーンなどの補強線材3を複数本、軸方向へ直線状に延びるように周方向へ夫々適宜間隔ごとに配置するとともに、周方向へ螺旋状に編組し、その外側に外層2を押出し成形して、これら内層1、補強線材3及び外層2を一体化してパイプ本体A′が形成される構成が、前記図1に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1に示した実施例1と同じものである。
【0030】
したがって、図2に示す実施例2も、上述した実施例1と同様な作用効果が得られ、更に加えて、周方向へ螺旋状に巻き付けた補強線材3により上記内層1の拡径が抑制されるため、パイプ本体A′の耐圧性能を向上できるという利点がある。
また、上記補強線材3として前記太いモノフィラメント(延伸モノフィラメント)よりも厚み寸法が薄いマルチフィラメントやフラットヤーンを使用するため、実施例1に比べて合成樹脂パイプA全体の厚み寸法を薄くできて軽量化が図れるという利点もある。
【実施例3】
【0031】
この実施例3は、図3(a)(b)に示す如く、前記図1に示した実施例1の合成樹脂パイプA又は前記図2に示した実施例2の合成樹脂パイプAのどちらか一方を用いたパイプ接続構造が、前記パイプ先端面A3と前記継手B内の段部B2が突き当たる部分に、前記流動規制手段Cとして封止カバーC1を上記合成樹脂パイプAの内側から被着した場合を示すものである。
【0032】
上記封止カバーC1は、前記合成樹脂パイプA及び継手Bを構成する例えばポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂よりも溶融温度が高い合成樹脂又は金属などで形成され、必要に応じてこれら合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3と継手B内の段部B2との間に挟み込まれる挟持部C1′を突設することが好ましい。
【0033】
次に、斯かるパイプ接続構造を工程順に従って詳しく説明する。
先ず、図3(a)の二点鎖線に示す如く、前記合成樹脂パイプAの軸方向端部A1の外周面A2と、それに対向する前記継手管Bの内周面B1とを、それらに例えばヒータなどの加熱手段(図示しない)を接触させるなどして夫々が加熱される。
【0034】
該パイプ外周面A2及び継手内周面B1の表面部分が溶融可能な温度に達したところで、これら合成樹脂パイプAと継手管Bとの間に上記封止カバーC1を挟み入れる。
その後、図3(b)に示す如く、この加熱された継手内周面B1に沿って、加熱されたパイプ外周面A2を挿入することで、これら両者を圧接させるとともに、上記パイプ先端面A3を上記継手管B内の段部B2に突き当てる。
【0035】
それにより、これら合成樹脂パイプAの押し込み及びパイプ外周面A2及び継手内周面B1の圧接に伴って流出する溶融樹脂Rは、上記パイプ先端面A3と継手段部B2との隙間が上記封止カバーC1で封鎖されるため、そこからパイプ内周面A4側には流れ出ず、そのすべてがパイプ外周面A2に沿って上記継手管Bの端面B3へ向け誘導され、それから流出し外側へ環状に盛り上がって突出して硬化する。
したがって、図3(a)(b)に示す実施例3は、合成樹脂パイプAと継手管Bとのパイプ接続部において溶融樹脂Rがパイプ内周面A4に盛り上がって硬化することを防止でき、流路を絞ることがないため、所定の流量を確保できる。
【実施例4】
【0036】
この実施例4は、図4(a)(b)に示す如く、前記図3(a)(b)に示した実施例3の封止カバーC1に代え、前記継手B内の段部B2に前記流動規制手段Cとして貯留部C2を、前記パイプ内周面A3と対向するように凹設することにより、前記合成樹脂パイプAの押し込み及び圧接に伴って流出する溶融樹脂Rを、該貯留部C2内へ流し込んで硬化させる構成が、前記図3に示した実施例3とは異なり、それ以外の構成は図3に示した実施例3と同じものである。
【0037】
上記貯留部C2は、上記段部B2の端面の周方向全周に亘って環状に形成することが好ましく、その容量を増やすために前記継手内周面B1側へ拡張することも可能である。
【0038】
したがって、図4に示す実施例4も、上述した実施例3と同様な作用効果が得られ、更に加えて、実施例3のように封止カバーC1を更に必要としないから、その接続作業が容易になるとともに、その分だけ部品点数が減少してコストの低減が図れるという利点がある。
また、合成樹脂パイプAの押し込み及びパイプ外周面A2及び継手内周面B1の圧接に伴って流出する溶融樹脂Rの一部又はほとんどが貯留部C2内へ流れ込むため、パイプ外周面A2に沿って継手管Bの端面B3へ向かう溶融樹脂Rの量が減り、それにより、パイプ外周面A2よりも外側へ盛り上がって硬化する樹脂Rが大幅に減少して目立たなくなり、外観の低下が緩和されるという利点もある。
【実施例5】
【0039】
この実施例5は、図5(a)(b)に示す如く、前記図4(a)(b)に示した実施例4の貯留部C2に代え、前記流動規制手段Cとして貯留部C3を前記パイプ先端面A3と対向するように凹設することにより、前記合成樹脂パイプAの押し込み及び圧接に伴って流出する溶融樹脂Rを、該貯留部C3内へ流し込んで硬化させる構成が、前記図4に示した実施例4とは異なり、それ以外の構成は図4に示した実施例4と同じものである。
【0040】
上記貯留部C3は、図示例のように上記パイプ先端面A3においてパイプ外周面A2側が最も凹むように直線状又は湾曲状に傾斜させて、パイプ内周面A4側への流出を防ぎながら、その容量を増やすことが好ましい。
その他の例として、合成樹脂パイプAの軸方向と垂直なパイプ先端面A3に環状の貯留部C3を形成することも可能である。
【0041】
したがって、図5に示す実施例5も、上述した実施例4と同様な作用効果が得られ、更に加えて、図示例のように上記パイプ先端面A3を貯留部C3の容量が増えるように傾斜させた場合には、合成樹脂パイプAの押し込み及びパイプ外周面A2及び継手内周面B1の圧接に伴って流出する溶融樹脂Rのほとんどが貯留部C3内へ流し込むため、パイプ外周面A2に沿って継手管Bの端面B3へ向け流出する量が著しく減少し、それにより、パイプ外周面A2よりも外側へ盛り上がって硬化する樹脂Rが無くなって、外観が向上するという利点もある。
【0042】
なお、前述したパイプ接続構造の実施例3〜実施例5では、前記合成樹脂パイプAの軸方向端部A1が接続される開口の内周面B1に、それに挿入される合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3が突き当たる段部B2を突出形成したが、これに限定されず、該段部B2無しで、接続する2本の合成樹脂パイプAの軸方向先端面A3同士が突き当たるようにして、これら先端面A3同士の圧接部分と、前記継手内周面B1及び前記パイプ外周面A2の圧接部分を夫々溶着するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の合成樹脂パイプの一実施例を示し、(a)が一部切欠斜視図で、(b)がその接続例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の合成樹脂パイプの他の実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図3】本発明のパイプ接続構造の一実施例を示す縦断面図で、(a)が接続前の状態を示しており、(b)が接続後の状態を示している。
【図4】本発明のパイプ接続構造の他の実施例を示す縦断面図で、(a)が接続前の状態を示しており、(b)が接続後の状態を示している。
【図5】本発明のパイプ接続構造の他の実施例を示す縦断面図で、(a)が接続前の状態を示しており、(b)が接続後の状態を示している。
【図6】パイプ接続構造の一例を示す縦断面図で、(a)が接続前の状態を示しており、(b)が接続後の状態を示している。
【符号の説明】
【0044】
A 合成樹脂パイプ A′ パイプ本体
1 内層 2 外層
3 補強線材 A1 軸方向端部
A2 外周面(パイプ外周面) A3 軸方向先端面(パイプ先端面)
A4 内周面(パイプ内周面) B 継手管
B1 内周面(継手内周面) B2 段部(継手段部)
B3 端面 C 流動規制手段
C1 封止カバー C1′ 挟持部
C2,C3 貯留部 R 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層(1,2)を積層してパイプ本体(A′)が形成され、熱溶着によりパイプ本体(A′)同士を接続する合成樹脂パイプにおいて、
前記複数の層(1,2)の間に、前記パイプ本体(A′)の軸方向へ延びる補強線材(3)を該パイプ本体(A′)の軸方向全長に亘って埋設し、これら複数の層(1,2)及び補強線材(3)をオレフィン系樹脂で形成することを特徴とする合成樹脂パイプ。
【請求項2】
前記パイプ本体(A′)の周方向に前記補強線材(3)を更に螺旋状に巻き付ける請求項1記載の合成樹脂パイプ。
【請求項3】
請求項1または2記載の合成樹脂パイプ(A)と、この合成樹脂パイプ(A)の軸方向端部(A1)に嵌合する継手管(B)とを備え、これら合成樹脂パイプ(A)の軸方向端部(A1)と上記継手管(B)との対向面を加熱手段により溶融し、相互に圧接させて溶着するパイプ接続構造であって、上記合成樹脂パイプ(A)の軸方向端部(A1)と上記継手管(B)との圧接部分から該合成樹脂パイプ(A)の内側へ向かう溶融樹脂(R)の流れを抑制する流動規制手段(C)を設けることを特徴とするパイプ接続構造。
【請求項4】
前記流動規制手段(C)として封止カバー(C1)を、前記合成樹脂パイプ(A)の軸方向端部(A1)と前記記継手管(B)との接続部分に、上記合成樹脂パイプ(A)の内側から覆うように取り付ける請求項3記載のパイプ接続構造。
【請求項5】
前記流動規制手段(C)として貯留部(C2,C3)を、前記合成樹脂パイプ(A)の軸方向端部(A1)と前記継手管(B)との圧接部分に形成する請求項3記載のパイプ接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate