説明

合成樹脂用金型の洗浄装置

【課題】 樹脂成形用金型から樹脂カスなどを確実に除去する。
【解決手段】 電解洗浄液を収容する薬液槽21と、該薬液槽内の電解洗浄液に超音波振動を発生させる振動子28と、内部に樹脂成形用金型からなる被洗浄物を収容し、該被洗浄物と共に上記薬液槽内に装着して電解洗浄液に浸漬される導電性を有する被洗浄物保持具(カゴ)20と、電解洗浄液内に浸漬される電極30と、薬液槽内に配管して電解洗浄液を排出する排出管43と、該排出管と連続して上記排出した電解洗浄液を吸収する循環用ポンプ24と、該循環用ポンプに接続して電解洗浄液を薬液槽内の電解洗浄液に対流が生じるように放出する供給管41とを備え、電極と被洗浄物保持具を介して被洗浄物とのいずれか一方に陽極を、いずれか他方に陰極を接続し、超音波方式と電解方式を併用して洗浄している。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は合成樹脂用金型の洗浄装置に関し、詳しくは、金型の樹脂成形面等に付着する樹脂カスやガス焼け等の付着物を短時間で確実に除去することが出来るようにするものである。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂用金型は、樹脂製品の成形量に伴ってその内面に樹脂カスや、ガスによる焼け跡等の付着物が着く。この付着物は、後から樹脂成形する製品の離型を悪くして、成形不良につながる等の不都合が生じる。
よって、合成樹脂用金型は定期的に取り外して洗浄し、上記付着物を除去しなければならない。
【0003】
従来、この種の洗浄作業は、金型を分解した金型構成部品を灯油に半日浸けた後に、作業者がブラシを用いて磨いている。しかし、この磨き作業は、金型が高価なものであるため損傷を加えないように慎重に行わなければならず、非常に面倒である。また、1個の金型構成部品を磨くのに、約15分の時間を要するため作業性が悪い問題もある。
【0004】
これに対し、従来より、電解洗浄液を収容した洗浄槽の内部に、陽極(+)と接続した電極板を浸漬すると共に、陽極(−)と接続した金型を浸漬し、上記電解洗浄液を介して通電させることにより、電極板と金型の内部より気泡状の電解ガスを発生させ、この電解ガスにより電解洗浄液を撹拌させながら、上記付着物を金型より浮き上がらせて金型の洗浄を行う電解方式の洗浄方法がある。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記電解方式による洗浄方法では、上記金型の洗浄する箇所が上記電極板と直線的に対向する位置でなければ、付着物を確実に除去することが出来ない。例えば、深さ3mm、幅2mmの凹状の溝の場合、該溝の底面、即ち、陰になる部分の洗浄を行うことが出来ない。
また、上記付着物は通電する電流の妨げとなるため電解ガスが発生しにくく、よって、作業時間の遅延につながる上に、作業時間が長くなりすぎると金型の表面にアルカリ焼けが発生する不都合が生じる。
さらに、分解ガスの発生による電解洗浄液の撹拌効率は乏しく、除去した付着物が再度、金型に付着してしまう場合がある。
【0006】
本考案は上記問題に鑑みてなされたもので、合成樹脂用金型に付着した付着物を短時間で確実に除去することが出来る合成樹脂用金型の洗浄装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本考案は請求項1で、電解洗浄液を収容する薬液槽と、 上記薬液槽内の電解洗浄液に超音波振動を発生させる振動子と、 内部に樹脂成形用金型からなる被洗浄物を収容し、該被洗浄物と共に上記薬液槽内に装着して上記電解洗浄液に浸漬される導電性を有する被洗浄物保持具と、 上記電解洗浄液内に浸漬される電極と、 上記薬液槽内に配管して電解洗浄液を排出する排出管と、 上記排出管と連続して上記排出した電解洗浄液を吸収する循環用ポンプと、 上記循環用ポンプに接続し、該循環用ポンプより排出される電解洗浄液を薬液槽内の電解洗浄液に対流が生じるように放出する供給管とを備え 上記電極と、上記被洗浄物保持具を介して被洗浄物とのいずれか一方に陽極を、いずれか他方に陰極を接続していることを特徴とする合成樹脂用金型の洗浄装置を提供している。
【0008】
また、請求項2では、上記排出管と循環用ポンプの間には、内部にろ布を備えた浄化タンクを介在させ、排出した電解洗浄液を洗浄して上記循環用ポンプにより、薬液槽内に供給していることを特徴とする洗浄装置を提供している。
【0009】
また、請求項3では、上記供給管の一端は薬液槽の隅部に垂直配置しており、先端部を閉塞すると共に、隣接する隅部側の側部に長手方向に所要間隔をあけて放出穴を穿設していることを特徴とする洗浄装置を提供している。
【0010】
本洗浄装置では、上記電解洗浄液として、水酸化ナトリウム、EDTA、グルコン酸ナトリュウム、および、アンモニウム化合物を混合したアルカリ溶液を用いている。
【0011】
本洗浄装置は、具体的には、例えば、電解洗浄液を収容する薬液槽と、 上記薬液槽の底面外側に配置され、上記電解洗浄液を振動させる振動子と、 枠体の内部に被洗浄物を収容し、枠体より突出する保持棒を介して被洗浄物と共に上記薬液槽に挿脱自在に装着して上記電解洗浄液に浸漬されると共に、陰極(−)と接続した導電性を有するメッシュ状のカゴと、 陽極(+)と接続すると共にその端部が上記薬液槽の中央に延在する軸部と、該軸部の端部より下方に屈折する下端が上記電解洗浄液内に浸漬する屈曲部とを備え、駆動手段により上記軸部の周方向に揺動する導電性を有する揺動軸と、 上記屈曲部の先端に連設されて上記軸部と並列する棒状の電極と、 一端を上記薬液槽の電解洗浄液の液面に配管して薬液槽内の電解洗浄液を排出する排出管と、 該排出管の他端側と接続し、内部に備えたろ布により上記排出した電解洗浄液を洗浄する浄化タンクと、 該浄化タンクと接続し、洗浄した電解洗浄液を吸収する循環用ポンプと、 該循環用ポンプの排出口に一端を接続すると共に他端を上記薬液槽の隅部に垂直に配管し、上記循環用ポンプより排出される洗浄された電解洗浄液を薬液槽内の電解洗浄液が対流するように放出する供給管とを備え、 振動子からの超音波により被洗浄物の外部より付着物を除去すると共に、上記揺動軸およびカゴを介して電極および被洗浄物を通電させて電解して内部から発生する水素ガスにより付着物を浮き上がらせ、上記循環用ポンプにより上記電解洗浄液を洗浄しながら循環させると共に薬液槽内を対流させて浮き上がらせた付着物を除去している。
【0012】
本考案の請求項1に記載の洗浄装置では、薬液槽に振動子を設け、薬液槽に収容した電解洗浄液を超音波により振動させて超音波方式と電解方式とを併用しさらに 電解洗浄液を循環させて薬液槽内で電解洗浄液に対流を発生させる方式とを採用していることにより 短時間で効率よく樹脂カスが付着した金型の洗浄を行うことができる 具体的には 超音波を発生させて被洗浄物の外部から付着物を除去し、電解方式の洗浄方法により被洗浄物の内部より付着物を浮き上がらせ、この浮き上がった付着物は、上記循環用ポンプによる電解洗浄液の対流により確実に剥離して除去する。このように電解方式と超音波方式の洗浄方法に加え、電解洗浄液を対流されることにより効率的な洗浄が行えるため、短い作業時間で付着物を被洗浄物より確実に除去することが出来る。
【0013】
請求項2の構成の洗浄装置は、上記排出管と循環用ポンプの間に、内部にろ布を備えた浄化タンクを介在させている。よって、上記のように被洗浄物より除去した付着物は、電解洗浄液の対流に乗って上記排出管を介して浄化タンクに排出され、該浄化タンク内のろ布により電解洗浄液と分離される。即ち、洗浄した電解洗浄液のみを薬液槽内に供給することにより、除去した付着物が被洗浄物に再度付着することを防止できる。
【0014】
請求項3の構成の洗浄装置は、上記供給管は薬液槽の隅部に垂直に配管しており、その先端部を閉塞すると共に、隣接する隅部側の側面に長手方向に所要間隔をあけて放出穴を穿設している。よって、電解洗浄液は薬液槽内を確実に対流することが出来、電解洗浄液の撹拌作用を行って付着物の除去時間を短縮することが出来る。
【0015】
【実施の形態】
以下、本考案を図面に示す実施形態を参照して詳細に説明する。
図1は本考案の合成樹脂用金型の洗浄装置を示し、該洗浄装置は超音波方式と電解方式の洗浄方法を併用して、金型等の被洗浄物10に付着した樹脂等の付着物11を短時間で確実に除去するものである。
【0016】
洗浄装置は、下端部に移動用ローラ13を備え、仕切板14により上下3段に区切られた基台15に、被洗浄物10(図3に図示)を収容する被洗浄物保持具からなるカゴ20を挿脱自在に装着する電解洗浄液26を収容した薬液槽21と、電源器22と、浄化タンク23および循環用ポンプ24をそれぞれ配置し、基台15の横に電解用変換器25を設置している。上記基板15はL字形状に屈曲した基板15aを溶着により組み立てている。
【0017】
上記電解洗浄液26としては、水1lに対して水酸化ナトリウム45g、EDTA(エチレン、ジアミン、テトラ、酢酸)50g、グルコン酸ナトリュウム20g、および、アンモニウム化合物100gを混合したアルカリ溶液を用いている。
【0018】
上記カゴ20は、ステンレス等の導電性を有する材料で形成され、図2に示すように、上記薬液槽21より小とした直方体状の枠体20a(直径3mm)を設け、その上面部以外の全面に2mmメッシュの網部20bを張設している。また、枠体20aの上端の四隅には、それぞれ保持棒20cを上方に延在させて設けると共に、該保持棒20cの上部をそれぞれ幅方向外側へ屈折して位置決め部20dを設けている。カゴ20は、上記薬液槽21内に装着した状態で、下端面が薬液槽21の底面21aに接触しない程度に設定している。
【0019】
上記薬液槽21は、ステンレス製で、図3および図4に示すように、矩形状に開口した上面21bの端縁より下方にそれぞれ延在させて外周壁21cを設けている。また、長尺側の上端両側にそれぞれ樹脂等の絶縁材料よりなる別体のコ字形状の絶縁材27を長手方向に延在させて外嵌していると共に、上記位置決め部20dとの対向位置に溝27aを設けている。薬液槽21は、その内部容量が6l〜20l程度が好ましい。
【0020】
薬液槽21の底面21a外側には、超音波方式の洗浄を行うため、図6(A)に示すように、上記電源器22と接続して超音波を発信する振動子28を長手方向に所要間隔をあけて2個設置している。振動子28は薬液槽21の幅方向の中央に配置しており、これらの中間部には共振防止材29を設置している。
尚、上記振動子28から発生する超音波は直進性を有するため、図6(B)に示すように、上記薬液槽21の底面21aの所要位置に複数(図示では5個)設置しても良い。また、超音波が共振する場合には振動子28の間に上記共振防止材29を設置することが好ましい。
【0021】
薬液槽21の中央部には、該薬液槽21の長手方向に駆動手段を介して揺動する断面矩形状とした棒状の電極30を、上記電解洗浄液26内に挿脱自在に設けている。該電極30に後述する上記電解用変換器25を介して供給される直流の陽極(+)側を接続すると共に、上記カゴ20に陰極(−)側を接続し、上記電解洗浄液26を介して通電させて電解方式の洗浄を行うようにしている。電極30は、グラファイト(100%の炭素を1500℃で焼結したもの)を用いている。
【0022】
図4および図5に示すように、上記電極30の揺動機構は、上記基台15の水平配置された上段の基板15aに、軸受部32をネジ締め固定している。該軸受部32には駆動手段により回転される回転軸33を周方向に回転可能に取り付けている。また、該回転軸33の先端には、側面視倒L字形状の揺動軸34を垂直方向に回転可能に枢着し、該揺動軸34の下端部に電極30を連続させている。
【0023】
上記軸受部32は、鉄またはステンレス等により形成され、上記回転軸33を内嵌する筒部32aの一端に固定板部32bを設けると共に、該固定板部32bにネジ穴32cを穿設し、薬液槽21の長手方向の中央に対応するように上記基板15aに取り付けている。該軸受部32は、基板15aとの間にフェノール樹脂よりなる絶縁性を有するベーク板(図示なし)を介在させて取り付けている。
また、回転軸33も鉄またはステンレス製で、下方に突出する係止板33aを設け、該係止板33aに上記駆動手段を接続して周方向に揺動させるようにしている。該係止板33aにも上記と同様にベーク板を両側に配置あるいはフェノール樹脂を塗布して絶縁処理を施している。また、回転軸33の先端には、垂直方向の凹溝を設けると共に、水平方向に貫通する穴を設けている。
【0024】
上記揺動軸34は、ステンレス等の導電性材料により形成されており、軸部34aの一端に上記凹状溝と係合する凸部を備え、回転軸33に対してビス等により枢着している。また、軸部34aの他端側の先端は、上記薬液槽21の中央まで延在させており、その略中央部分を上記絶縁材27に形成する溝27bに対応させて安定状態を保持し、上記回転軸33と共に周方向に揺動するようにしている。軸部34aの先端には屈折して下方へ延在する屈曲部34bを2個、下広がりのV字状に形成している。図3に示すように、これら屈曲部34bの下方への延在長さは、その下端が上記電解洗浄液26に浸漬するように設定し、その下端部に上記電極30をそれぞれ上記軸部34aと並列するように設けている。
【0025】
上記駆動手段としては、電磁ソレノイド35を用いており、該電磁ソレノイド35を上記基板15aにネジ締め固定している。該電磁ソレノイド35は、駆動シリンダ35aと上記回転軸33の係止板33aとをバネ36により連結している。また、電磁ソレノイド35と反対側に位置する基板15aの所要位置に矩形状の取付板15bを溶着している。該取付板15bには、先端に環状の取付穴を備えたネジ37を取付板15bに螺着し、該ネジ37と上記係止板33aを電磁ソレノイド35と同様にバネ36により連結している。
【0026】
よって、電極30は、揺動軸34と回転軸33との取付部を支点として揺動軸34を回転させることにより、上記カゴ20の挿脱作業時に妨げにならないようにすることが出来ると共に、電解作業時には連続させた電極30を電解洗浄液26内に浸漬することが出来る。
【0027】
また、上記電磁ソレノイド35の駆動により、上記バネ36が係止板33aを引っ張り、あるいは、押圧して上記回転軸33を周方向に回転させ、該回転軸33と揺動軸34を介して連続した電極30を、図3に示すように、薬液槽21の長手方向に揺動させるようにしている。また、この電極30の揺動により電解洗浄液26が撹拌されるように設定している。この電極30の揺動は、上記ネジ37の締付けによりバネ36の張力を調節して、揺動範囲を微調節することが出来る。
【0028】
洗浄装置は、上記浄化タンク23にろ布とした設けた不織布40により電解洗浄液26を洗浄して上記循環用ポンプ24により薬液槽21内に放出して、該薬液槽21内の電解洗浄液26を対流させると共に、オーバーフローする余分な電解洗浄液26を上記浄化タンク23へ排出して電解洗浄液26を循環させるようにしている。
【0029】
即ち、図3および図7に示すように、基台15の下段に配置した浄化タンク23と循環用ポンプ24の吸入口とを供給管41により接続し、循環用ポンプ24の排出口と薬液槽21とを基台15に対応させて所要形状に屈曲させた供給管42により接続している。該供給管42は、上段に位置する部位で継管42aを介して2方に分岐しており、薬液槽21の長手方向両端の対角する隅部に供給管42−1,42−2を配管している。
【0030】
これら供給管42−1,42−2は、薬液槽21の隅部に上端面より垂直に底面21a近傍まで延在させており、その下端部をキャップ部42bにより閉塞すると共に、隣接する幅方向の隅部側の側部に長手方向(垂直方向)に所要間隔をあけて複数の放出穴42cを穿設している。尚、この供給管42−1,42−2は薬液槽21内に収容するカゴ20に当接しないように配管している。
また、薬液槽21において、内部に所要量の電解洗浄液26を収容した状態の液面位置に排出管43を配管し、該排出管43を下段の浄化タンク23に接続している。
【0031】
よって、図7に示すように、循環用ポンプ24の駆動で浄化タンク23より供給管41を介して電解洗浄液26を吸収し、該電解洗浄液26を該循環用ポンプ24より供給管42,42−1,42−2を介して薬液槽21内に放出する。該薬液槽21内には、上記供給管42−1,42−2の放出穴42aにより同一の周方向に放出して電解洗浄液26が対流される。この電解洗浄液26の対流は上記放出穴42aにより薬液槽21の上下間において均一な流量となっている。
また、この供給によりオーバーフローする電解洗浄液26は上記排出管43を介して浄化タンク23に排出され、上記不織布40により電解洗浄液26に混入した付着物11を除去して、再び、洗浄された電解洗浄液26が薬液槽21内に供給される。
【0032】
上記循環用ポンプ24による電解洗浄液26の吐出量は、少ない場合には電解洗浄液26の対流および撹拌効果が下がって除去効率が悪くなる一方、多い場合には液流により被洗浄物10同士が接触して損傷するため、被洗浄物10の大きさおよび薬液槽21の容量に対応して設定され、約5.5〜31l/minに設定している。
【0033】
尚、上記供給管42は、2方に分岐して薬液槽21に配置しているが、薬液槽21の1箇所の隅部にのみ配管しても電解洗浄液26を対流させることも出来る。一方、供給管42を複数配管した場合の方が電解洗浄液26を効率的に対流および撹拌効果を得ることが出来ることは言うまでも無い。
【0034】
さらに、薬液槽21の底面21aには廃液管44を配管し、ドレインコック46を設けた先端を上記浄化タンク23の近傍まで延在させている。かつ、浄化タンク23と循環用ポンプ24とを接続する供給管41の中間にも継管41aを介して先端にドレインコック46を設けた廃液管45を配管し、被洗浄物10の洗浄を行って汚れた電解洗浄液26をホース等により他の容器に排出することが出来るようにしている。
【0035】
上記電源器22は、作業場の電源より交流電流が供給され、その交流電流を振動子28に供給して超音波を発信させる。また、同時に交流電流を上記電解用変換器25に供給した後に、該電解用変換器25により変換された直流電流を受け取り、陽極電流を電極30に供給すると共に陰極電流をカゴ20に供給し、電解洗浄液26を介して通電させて電解させるようにしている。
【0036】
図1に示すように、電源器22には、上記電解用変換器25からの陽極(+)電流および陰極(−)電流が供給される陽極端子孔50および陰極端子孔51を前面側に設け、該陽極端子孔50と接続した接続コード48Aを上記揺動軸34の軸部34aにネジ締め接続すると共に、陰極端子孔51と接続した接続コード48Bを上記カゴ20の長手方向両側の位置決め部20dに端子49を介して着脱自在に接続している(図4参照)。このように、上記電解用変換器25からの直流電流を揺動軸34を介して電極30に、また、カゴ20を介して被洗浄物10に流して、電解洗浄液26を介して通電させて電解方式の洗浄をするようにしている。 尚、薬液槽21には上記絶縁材27により絶縁処理が施されていると共に、揺動軸34と連続する回転軸33の係止板33aおよび軸受部32の固定板部32bにも絶縁処理がなされているため、短絡等の問題が生じることは無い。
【0037】
また、電源器22には、作業タイマーと連動させる主電源52、上記電磁ソレノイド35を駆動させるスイッチ53、主電源52の通電時に点灯するパイロットランプ54、電磁ソレノイド35の通電時に点灯するパイロットランプ55、および、作業タイマーと連動してAC100Vを出力するコンセント56を設けている。
【0038】
上記電解用変換器25は、上記連動コンセント56に接続するACコード70を設けると共に、該ACコード70と連続したAC/DC変換器(図示なし)を設けている。また、該AC/DC変換器からの直流電流を出力するため、それぞれ陽極側の出力部65と陰極側の出力部66を設け、上記のように、陽極出力部65を上記電源器22の陽極端子孔50に接続コード(図示なし)により接続すると共に、陰極出力部66を上記陰極端子孔51に接続するようにしている。
【0039】
上記出力部65,66より出力される電圧は、高すぎると被洗浄物10にアルカリ焼けが生じてしまう一方、低すぎると洗浄効果が低下してしまうため、出力電圧を調整するための電圧調整ボリューム69を設け、出力電圧を4〜6Vに設定するようにしている。
また、電解用変換器25には、電源スイッチ67および電解用変換器25の作動を表示するパイロットランプ68を設けている。
尚、上記構成の電源器22と電解用変換器25とは、一体に形成することも出来る。
【0040】
上記構成の洗浄装置は、図8の回路図に示すように、上記主電源52と電磁ソレノイド35の設定タイマー57をスイッチ53を介して接続し、設定タイマー57と電磁ソレノイド35を接続している。上記設定タイマー57は、電磁ソレノイド35による電極30の揺動回数を設定するもので、この揺動回数は多い程、撹拌効果を向上させることが出来、本実施例では、1分間に約20〜60往復させ、全長約280mmの薬液槽21に対して揺動範囲を30〜50mmとしている。
【0041】
かつ、上記振動子28と接続する振動子用ドライバー58と上記主電源52は、作業タイマー59を介して接続されている。本実施例では、上記振動子用ドライバー58により振動子28から発信する超音波の出力は20〜40KHzとしている。
また、上記作業タイマー59に連動コンセント56および循環用ポンプ24を接続すると共に、AC/DC変換器60を介して作業終了を知らせるブザー61を接続している。
【0042】
上記洗浄装置は以下の工程で操作して樹脂カスが付着した金型からなる被洗浄物の洗浄を行う。
まず、主電源52がOFF状態となっていることを確認して、電解用変換器25のACコード70を電源器22の連動コンセント56に接続する。
また、電解用変換器25の出力部65,66と電源器22の陽極端子孔50および陰極端子孔51をそれぞれ極性を間違えないように、接続コードにより接続すると共に、揺動軸34の軸部34aと電源器22の陽極側のコード48A、および、カゴ20の位置決め部20dの端部と電源器22の陰極側のコード48Bを接続する。
【0043】
次に、電解洗浄液26を薬液槽21および浄化タンク23に収容する。
次いで、被洗浄物10をカゴ20の内部に収容させ、図5に示すように、上記揺動軸34を上方に回転配置させた状態で、上記カゴ20を薬液槽21の内部に挿入し、カゴ20の位置決め部20dを絶縁材27の溝27aに対応させて位置決め固定する。その後、上記回転させた揺動軸34を水平配置して、該揺動軸34に連続した電極30を電解洗浄液26に浸漬させる。
【0044】
その後、上記電源器22の主電源52を入力して作業タイマー59を作動させ、被洗浄物10の洗浄作業を行う。即ち、上記作業タイマー59の作動により上記振動子用ドライバー58を通電させ、振動子28から超音波を発振させると共に、上記循環用ポンプ24を駆動させて薬液槽21内の電解洗浄液26を対流および循環させる。同時に、連動コンセント56からはAC100Vの電流が流れ、上記電解用変換器25に電流が供給される。
【0045】
ついで、電源器22のスイッチ53と、電解用変換器25の電源スイッチ67を入力して、電磁ソレノイド35を作動させて揺動軸34を揺動させると共に、電解用変換器25を作動させて電源器22を介して薬液槽21に直流電圧を通電させる。この時、電解用変換器25の電圧調整ボリューム69により、出力する直流電圧の微調整を行い直流電圧5Vに設定する。
【0046】
上記電源器22の作業タイマー59は3分に設定しており、その設定時間が終了すると、上記作業タイマー59が連動コンセント56、ポンプ24および振動子用ドライバー58への電流の供給を止めて各部の作動を停止させる。即ち、振動子28による電解洗浄液26の振動、および、被洗浄物10と電極30の電解作用を停止する。同時に、作業タイマー59はAC/DC変換器60に電流を供給して、このAC/DC変換器60よりブザー61に直流電流を供給して作業者に終了を知らせる。
【0047】
3分間で被洗浄物10の付着物11を完全に除去出来なかった場合には、上記主電源52を一旦OFF状態とし、再度入力させることにより、更に3分間の洗浄作業を行う。また、3分間の洗浄作業中に主電源52をOFF状態とし、再度入力した場合には、作業タイマー59がリセット状態となり、入力した時点から3分間の洗浄作業が行なわれる。
【0048】
電解方式と超音波方式の洗浄方法を併用すると共に、電解液に対流を発生させる本考案の洗浄装置は、図9に示すように、超音波方式の洗浄方法により、被洗浄物10の外部より付着物11を打破すると共に、電解方式の洗浄方法により内部より発生する水素ガスにより被洗浄物10から付着物11を浮き上がらせ、電解洗浄液26の撹拌作用により付着物11を被洗浄物10より剥離して除去する。
【0049】
即ち、図9(A)に示すように、上記振動子28により発生する超音波が電解洗浄液26を介して被洗浄物10の表面に伝わると、この表面で真空状の気泡が発生すると共に、この気泡がはじける事で強力なエネルギーが発生して被洗浄物10に付着している付着物11を引き剥がす。この超音波方式の洗浄方法は、特に、形状が複雑で入り込んだエンジニアリングプラスチックを形成する金型を傷つけること無く洗浄するのに有効である。
【0050】
また、洗浄装置は、上記外部からの洗浄に加えて電解洗浄液26を介して被洗浄物10を通電させることで、被洗浄物10の表面から多量の水素ガスを発生させて、上記超音波方式により付着物11を浮き上がらせて、電解洗浄液26の撹拌作用により除去している。
【0051】
即ち、被洗浄物10には、上記カゴ20を介して陰極側の電圧が通電され、この電圧と上記電極30に通電される陽極側の電圧とが、電解洗浄液26を介して通電して被洗浄物10と電極30の内部より気泡状の水素ガスを発生させ、この水素ガスにより図9(B)に示すように、付着物11を浮き上がらせる。この通電作用は、上記超音波により被洗浄物10の付着物11を外部より破壊しているため、従来のように、付着物11が妨げになって通電することが出来ない等の問題は生じない。
【0052】
このように浮き上がった付着物11を、循環用ポンプ24による電解洗浄液26の対流、および、上記電磁ソレノイド35による電極30の揺動による電解洗浄液26の撹拌により、図9(C)に示すように、被洗浄物10より付着物11が剥離され、該付着物11が被洗浄物10より確実に分離除去できる。
【0053】
除去された付着物11は、上記電解洗浄液26の対流に乗って、上記排出管43より浄化タンク23へ排出され、該浄化タンク23の不織布40により、電解洗浄液26から分離除去される。即ち、除去した付着物11が、再度、被洗浄物10に付着することを防止しているため、被洗浄物10の洗浄効率をより向上させることが出来る。また、上記浄化タンク23により電解洗浄液26と付着物11とが混合して劣化することを防止することが出来るため、電解洗浄液26の寿命を延命させることが出来る。
【0054】
さらに、上記電磁ソレノイド35による電極30を揺動作用は、上記のように電解洗浄液26の撹拌作用をより効率的にすることのみならず、複雑な形状の被洗浄物10において、陰になる部分を無くすことが出来るため確実な通電作用を施すことが出来、よって、付着物11を確実に除去することが出来る。
【0055】
このように、本考案の洗浄装置は、超音波方式および電解方式の洗浄方法を併用し、かつ、循環用ポンプ24および電極30の揺動により電解洗浄液26を対流させて確実な撹拌効果を得ることが出来るようにしているため、被洗浄物10に付着した付着物11を短時間で、確実に除去することが出来る。例えば、エジェクタピン100本に付着した付着物を3分間で完全に除去することが出来る。
よって、長時間、電解洗浄液26に漬けておくことによる被洗浄物10のアルカリ焼け等の問題は生じることは無い。
【0056】
上記構成の洗浄装置は、循環用ポンプ24による電解洗浄液26の吐出量が多く、該電解洗浄液26の対流が強い場合には、超音波方式による洗浄効果が低下するため、上記図8に示す回路図において一点鎖線で示すように、作業タイマー59と循環用ポンプ24の間に遅延用タイマー100を介在させ、所要時間遅らせて循環用ポンプ24を作動させている。
【0057】
循環用ポンプ24が作動していない間に上記と同様に、超音波方式の洗浄方法により被洗浄物10から付着物11を除去すると共に、超音波方式では除去できない箇所などを上記電解方式により浮き上がらせる。この時、上記電極30は揺動させており、この揺動により電解洗浄液26は所要の撹拌は行なわれている。
【0058】
後に、上記遅延タイマーにより循環用ポンプ24が遅れて作動し、電解洗浄液26が対流されて効率的に撹拌が行なわれ、上記のように浮き上がらせた付着物11を確実に分離除去する。
このように、上記構成とすることにより、超音波方式による洗浄効果を低下させること無く、上記と同様に被洗浄物10より付着物11を確実に除去することが出来る。
【0059】
図10は洗浄装置の変形例を示し、該装置では、上記電極30を電解洗浄液26内に4個浸漬している。
即ち、上記揺動軸34の軸部34aより下広がりのV字形状に突出する屈曲部34b,34bを薬液槽21の幅方向に所要間隔をあけて設け、これらの先端に電極30'を幅方向に等間隔の隙間をあけて設けている。
【0060】
上記構成とすることにより、電解洗浄液26の撹拌効率を一層向上させることが出来ると共に、被洗浄物11が複雑な形状をしていてもより陰になる箇所を無くすことが出来、電解方式により除去作用を向上させることが出来る。
【0061】
図11(A)〜(F)は、上記電極30の変形例を示している。
図11(A)(B)(C)に示す棒状の電極30は、端面の形状を楕円形状、円形状または六角形状として、外側部を先細にしている。よって、電極30の揺動による電解洗浄液30の飛び散りを防止するようにして、上記電磁ソレノイド35による揺動速度を増すことが出来る。
より好ましくは、図11(D)(E)(F)に示すように、半円形状、三角形状または台形状とし、外側部を先細にすると共に内面側に屈曲部34bと並列な面を設ける。よって、電解洗浄液26の飛び散りを防止すると共に、電解洗浄液26の撹拌効率を向上させることが出来る。
【0062】
【考案の効果】
以上の説明から明らかなように、本考案に係る洗浄装置によると、超音波方式と電解方式に加え、電解液に対流を発生させ、該電解洗浄液の対流により確実に金型に付着している樹脂カス等を剥離して除去することが出来る。その結果、従来と比較して非常に短い作業時間で被洗浄物の洗浄作業を確実に行うことが出来る。
【0063】
請求項2の構成の洗浄装置は、上記排出管と循環用ポンプの間に、内部にろ布として不織布を備えた浄化タンクを介在させているため、上記のように被洗浄物より除去した付着物が、電解洗浄液の対流に乗って排出管より上記浄化タンクへ排出された際に、上記不織布により分離される。即ち、洗浄した電解洗浄液のみを薬液槽内に供給することにより、一旦除去した付着物が被洗浄物に再度付着することを確実に防止している。また、このように不織布により電解洗浄液を洗浄しているため、電解洗浄液の寿命を延命することが出来る。
【0064】
請求項3の構成の洗浄装置は、上記供給管は薬液槽の隅部に垂直に配管しており、その先端部を閉塞すると共に、隣接する隅部側の側面に長手方向に所要間隔をあけて放出穴を穿設している。よって、電解洗浄液は薬液槽内を確実に対流することが出来、電解洗浄液の撹拌作用を行って付着物の効率的に除去することが出来、被洗浄物を洗浄するのに要する作業時間を短縮することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本考案の洗浄装置を示す斜視図である。
【図2】 被洗浄物を収容するカゴを示す斜視図である。
【図3】 洗浄装置の1部を断面とした側面図である。
【図4】 洗浄装置の1部拡大図である。
【図5】 カゴを薬液槽に入れる状態を示す概略斜視図である。
【図6】 (A)(B)は薬液槽に超音波を発信する振動子を配置した状態を示す平面図である。
【図7】 循環する電解洗浄液の配管状態を示す斜視図である。
【図8】 洗浄装置の回路図である。
【図9】 (A)(B)(C)は洗浄装置による付着物の除去工程を示す概略図である。
【図10】 洗浄装置の変形例を示す斜視図である。
【図11】 (A)から(F)は電極の変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
10 被洗浄物(金型)
11 付着物
20 カゴ
21 薬液槽
22 超音波用電源機
23 浄化タンク
24 循環用ポンプ
25 電解用電源機
26 電解洗浄液
30 電極
34 揺動軸
34a 軸部
34b 屈曲部
35 電磁ソレノイド(駆動手段)
40 不織布(ろ布)
42 供給管
43 排出管

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 電解洗浄液を収容する薬液槽と、上記薬液槽内の電解洗浄液に超音波振動を発生させる振動子と、内部に樹脂成形用金型からなる被洗浄物を収容し、該被洗浄物と共に上記薬液槽内に装着して上記電解洗浄液に浸漬される導電性を有する被洗浄物保持具と、上記電解洗浄液内に浸漬される電極と、上記薬液槽内に配管して電解洗浄液を排出する排出管と、上記排出管と連続して上記排出した電解洗浄液を吸収する循環用ポンプと、上記循環用ポンプに接続し、該循環用ポンプより排出される電解洗浄液を薬液槽内の電解洗浄液に対流が生じるように放出する供給管とを備え上記電極と、上記被洗浄物保持具を介して被洗浄物とのいずれか一方に陽極を、いずれか他方に陰極を接続していることを特徴とする合成樹脂用金型の洗浄装置。
【請求項2】 上記排出管と循環用ポンプの間には、内部にろ布を備えた浄化タンクを介在させている請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】 上記供給管の一端は薬液槽の隅部に垂直配置しており、先端部を閉塞すると共に、隣接する隅部側の側部に長手方向に所要間隔をあけて放出穴を穿設していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【登録番号】第3036535号
【登録日】平成9年(1997)2月5日
【発行日】平成9年(1997)4月22日
【考案の名称】合成樹脂用金型の洗浄装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−9695
【出願変更の表示】特願平8−245183の変更
【出願日】平成6年(1994)1月31日
【出願人】(593047415)ソマックス株式会社 (8)