説明

合成樹脂管埋設装置

【課題】 合成樹脂管を地中に直接埋設する推進工法で、安定した長距離推進が可能な合成樹脂管埋設装置を提供すること。
【解決手段】 掘進機によって掘削する地中に埋設して推進方向に結合する所定長さの塩ビ管2A,2Bと、この塩ビ管2A,2Bの内部に配置して前記掘進機の推進方向に結合することにより掘進機に推進力を伝達するインナー管12A,12Bとを備え、インナー管12A,12Bは、このインナー管12A,12Bを屈折可能に結合する結合部13と、前記塩ビ管2A,2Bの許容推進力の範囲となる所定間隔で塩ビ管2A,2Bの推進力を負荷するプッシャー52とを有し、前記プッシャー52を推進方向と交差する方向に突出させて前記塩ビ管2A,2Bの結合部の後端面に係合させることにより、塩ビ管2A,2Bを推進させる推進力を前記プッシャー52の前面で受けて負荷するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質塩化ビニル管等の合成樹脂管を推進工法で地中に直接埋設するための合成樹脂管埋設装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に下水道の管路や他の管路を埋設する工法として、先導する掘進機に後続させて管を推進する推進工法が知られている。この推進工法は、図16の推進工法を模式的に示す断面図のように、埋設すべき管路の予定埋設線上に発進立坑201と到達立坑202とを構築し、発進立坑201に設置した元押装置203によって管204に推進力を与え、この管204を介して掘進機205に推進力を伝達して推進させるものである。そして、掘進機205を到達立坑202まで推進させることにより、発進立坑201と到達立坑202との間に連続する管204を直接的に埋設して管路を形成している。
【0003】
上記管路を構成する管としては、200mm〜400mm程度の直径のコンクリート管や硬質塩化ビニル管等が一般的に採用されているが、例えば、直径が300mm程度の管の場合には、製作上の関係や耐食性等から硬質塩化ビニル管(この明細書及び特許請求の範囲では、単に「塩ビ管」ともいう)等の合成樹脂管が多く採用されている。
【0004】
例えば、近年、合成樹脂管として多く採用されている塩ビ管を例に説明すると、この塩ビ管を埋設する場合には、塩ビ管によって伝達し得る推進力が小さいため、上記図16に示すように、塩ビ管204には掘進機205を推進するための推進力が直接伝達しないように、塩ビ管204の内部に掘進機205の推進力を伝達するための金属製インナー管206を挿通し、このインナー管206を介して掘進機に推進力を伝達するようにしている。この場合、塩ビ管への推力伝達は、発進立坑201に設けられた元押装置203によって行われている。
【0005】
一方、このような塩ビ管の推進工法では、所定長さの塩ビ管の推進が終了する毎に発進立坑に設けられた元押装置と埋設した塩ビ管との間に新たな塩ビ管が結合され、この塩ビ管の内部に新たなインナー管が配置されると共に、先導する掘進機に動力を伝える動力線や制御信号を伝送する信号線や、掘進機から地山との間に滑材を充填する滑材供給管等、各種線類や管類が配置されて接続される。また、泥水工法の掘進機を採用した場合には、前記線類や管類に加えて送泥管や排泥管等の管が配置されて接続される。
【0006】
さらに、掘進機の推進方向を監視して掘進機を常に正しい方向へ推進させるように制御するために、発進立坑から管路の予定埋設線に沿ってレーザー光が掘進機に向けて照射されている。このレーザー光は、インナー管に沿って掘進機に設けられたターゲットに照射される。
【0007】
なお、この種の掘進機と元押装置との間に設ける推力伝達装置に関する従来技術として、外周の一部に全長にわたる開放部を形成した伝達部材と、U字状棚と、接続部等を備え、U字状棚によって、上部にレーザー通過エリアを確保しつつ、必要配管・配線材を簡単に埋設または撤去できるようにしたものがある。この推力伝達装置の接続部としては、端板とネジ、カラー、ボルト等により構成され、カラーをネジとボルトの間に挿入しておくことによって、端板の間に隙間を持たせて、この隙間分の屈折が可能な推力伝達装置を構成し、掘進機と推力伝達装置の推進方向におけるズレを修正できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、他の従来技術として、埋設管の耐力に合わせてこの埋設管を内側から摩擦力で保持固定する保持機構を駆動軸体に設け、この保持機構によって駆動軸体の推進に伴って埋設管に内側から推進力を伝達するようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−248885号公報
【特許文献2】特開平2−144498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年、下水道管等の塩ビ管(合成樹脂管)を埋設する環境としては、地上の制約や周辺の交通事情に与える影響を極力小さくするため、及び発進・到達立坑築造コストダウンの関係から、立坑を設ける間隔を広げたいという要求がある。その要求として、例えば、200m近くの長距離推進工法の開発が、業界の高いニーズとなっている。
【0011】
しかしながら、上記した塩ビ管を200m近く埋設しようとした場合、細長い構造物であるインナー管によって200m先の掘進機に推進力を伝達することから生ずる座屈が塩ビ管に影響することへの対応や、上記図16に示すように元押装置203で推力伝達される塩ビ管204と地山207との周面摩擦力208の増加に対応するための装置を狭い掘削断面内に備え、且つ、レーザー光の照射空間、送排泥管等の管、電気配線等の線類等、多くの構成を狭い塩ビ管の内部に設置ことが難しくなる。
【0012】
特に、塩ビ管の推進力は、施工距離が増すことによって周面摩擦力が大きく増加するので、その周面摩擦力の増加に耐えるような塩ビ管を製作することは非常に難しい。つまり、従来の塩ビ管等の合成樹脂管を埋設する推進工法の施工距離は、塩ビ管等の合成樹脂管の許容推進力によって限定されており、100m以下の短距離施工しか行われていないのが現状である。
【0013】
しかも、塩ビ管の地中への埋設が完了すると、内部のインナー管は全て回収され、これに伴って電線類,管類も回収される。このとき、一般的にインナー管の内部に挿通された電線類や管類も一緒に発進立坑側に回収されるので、インナー管は回収可能な機能・構造を有する必要があると共に、その大きな引き力に耐えうる必要があるが、200mの推進距離でインナー管を回収するのは大変困難である。
【0014】
その上、推進工法では、掘進機の推進方向が管路の予定埋設線からズレることがあり、常に掘進機の推進方向を予定埋設線に一致させるように制御する必要があるため、安定してレーザー通過エリアを確保する必要がある。
【0015】
なお、上記特許文献1では、上部が開放したU字状棚に配管・配線を配置し、その上部をレーザー通過エリアとして確保しているため、インナー管の上部への他の部品装備ができない。しかも、U字状棚に配置した配管・配線が軸方向の一箇所ででも跳ね上がってしまうと、レーザー通過エリアを塞いでしまい、計測に支障を来たす。その上、このように上部が開放したU字状棚の場合、合成樹脂管埋設後の回収のために要求される高引き力を満たそうとすると、接続部における端板の寸法拡大やボルトの大型化等を伴い、各種装置の設置や配管・配線・レーザー通過エリア等の確保が困難になる。
【0016】
また、上記特許文献2では、埋設管の内面を保持機構によって押し付けて、その摩擦力によって推進力を伝達するため、大きな推進力を伝達するためには押し付け面積が大きくなり、しかも保持機構の設置台数も増え、内部に配置する必要がある装置や配管・配線・レーザー通過エリア等の確保が困難になる。その上、このように摩擦力に依存した構造の場合、接触面の状態によっては、保持機構の設置の管理が困難となる。
【0017】
そこで、本発明は、合成樹脂管を地中に直接埋設する推進工法で、安定した長距離推進が可能な合成樹脂管埋設装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、元押装置で推進力を与える掘進機によって掘削する地中に埋設して推進方向に結合する所定長さの合成樹脂管と、該合成樹脂管の内部に配置して前記掘進機の推進方向に結合することにより該掘進機に推進力を伝達する所定長さのインナー管と、を備えた合成樹脂管埋設装置であって、前記インナー管は、該インナー管を屈折可能に結合する結合部と、前記合成樹脂管の許容推進力の範囲となる所定間隔で前記合成樹脂管の推進力を負荷するプッシャーとを有し、前記合成樹脂管は、推進方向に結合された前記合成樹脂管の結合部に前記プッシャーを係合させる後端面を有し、前記プッシャーを推進方向と交差する方向に突出させて前記合成樹脂管の結合部の後端面に係合させることにより、前記合成樹脂管を推進させる推進力を前記プッシャーの前面で受けて負荷するように構成している。これにより、合成樹脂管の推進力を元押装置だけで伝えるのではなく、合成樹脂管が負荷できる許容推進力の範囲内となるように所定の長さ単位でインナー管によって合成樹脂管に推進力を伝えるので、インナー管の許容推進力まで施工距離を伸ばすことが可能となる。しかも、屈曲可能な結合構造により、掘進機の推進方向と地山から合成樹脂管が受ける力とによる合成樹脂管の追随方向が異なっても、インナー管の結合部が屈折して掘進機に後続させる合成樹脂管を円滑に方向変更させることができる。
【0019】
また、前記インナー管が、軸方向に貫通する空間を有する管体で形成されていてもよく、これにより、インナー管の軸方向に貫通する空間をレーザー通過エリアとして使用して掘進機の方向制御を安定して行うことができる。
【0020】
さらに、前記プッシャーは、前記インナー管の外部から径方向に突出した状態で前記合成樹脂管と係合し、径方向に格納した状態で前記合成樹脂管から離脱するように構成され、前記プッシャーをインナー管の外部から前記合成樹脂管の結合部に向けて突出又はインナー管に向けて格納させる推力支持突出・格納機構を具備していてもよい。この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、合成樹脂管の径方向の移動を突出/格納という。このようにすれば、合成樹脂管を埋設した後、プッシャーを突出・格納機構で格納させて合成樹脂管との係合を解除すれば、インナー管と合成樹脂管との係合を断ち、インナー管を元押装置側に回収する作業を迅速に行うことができる。
【0021】
また、前記プッシャーは、前記インナー管の上下位置に配置されていてもよい。このようにすれば、合成樹脂管の埋設時に左右方向への方向制御を行っても、インナー管の上下位置で推力伝達を行って安定した掘進が行える。
【0022】
さらに、前記推力支持突出・格納機構は、前記掘進機の推進方向に結合するインナー管の元押装置側から前記所定間隔で具備させた前記プッシャーを格納させる格納操作部を具備していてもよい。このようにすれば、合成樹脂管を埋設した後、元押装置側から格納操作部を操作することによってプッシャーを格納して合成樹脂管との係合を断つことができるので、作業性良く容易にプッシャーの係合を断つことができる。
【0023】
また、前記格納操作部は、前記元押装置側から順に時間差を設けて前記プッシャーを格納させる機能を具備していてもよい。このようにすれば、元押装置側からプッシャーの係合を解除する操作時に、各プッシャーの係合を順に解除することができるので、解除操作に要する力を抑えて操作性良く作業することができる。
【0024】
さらに、前記インナー管は、前記合成樹脂管の外部に滑材を注入する滑材注入部を具備していてもよい。このようにすれば、合成樹脂管の長距離埋設時でも、所定間隔で合成樹脂管と地山との接触面積によって決まる周面摩擦力を抑えて、合成樹脂管の推進抵抗を抑えることができる。
【0025】
その上、前記滑材注入部は、径方向に突出した状態で前記合成樹脂管と係合し、径方向に格納した状態で前記合成樹脂管から離脱する滑材注入管と、該滑材注入管を前記インナー管の外部から前記合成樹脂管に向けて突出又はインナー管に向けて格納させる滑材注入突出・格納機構とを具備し、前記合成樹脂管は、前記滑材注入管の滑材注入位置に、前記滑材注入管から合成樹脂管外部への滑材注入は可能で、前記合成樹脂管外部からの逆流は防止する逆止機構を具備していてもよい。このようにすれば、合成樹脂管を埋設してインナー管を回収するときに滑材注入装置の滑材注入管をインナー管に向けて格納させれば、滑材注入装置を合成樹脂管から切り離すことが容易にでき、切り離した滑材注入管の位置から滑材や地下水が合成樹脂管内に入るのは逆止機構で防止することができる。
【0026】
また、前記滑材注入突出・格納機構は、前記滑材注入管を前記合成樹脂管周方向の所定位置に止める回り止め部を有すると共に、前記掘進機の推進方向に結合するインナー管の元押装置側から前記回り止め部を格納させる格納操作部を具備していてもよい。このようにすれば、合成樹脂管を埋設した後、元押装置側から格納操作部を操作することによって回り止め部を格納して合成樹脂管との係合を断つことができるので、作業性良く容易に回り止め部の係合を断つことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以上説明したような手段により、合成樹脂管が負荷する推進力を許容推進力の範囲に抑えて、インナー管の許容推進力の範囲で合成樹脂管を地中に直接埋設する推進工法による長距離推進を安定して行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態に係る合成樹脂管埋設装置の通常結合部を示す軸方向の断面図である。
【図2】図1に示す通常結合部の斜視図である。
【図3】(a) は図2に示す通常結合部の平面図であり、(b) は同通常結合部における結合金具の平面図である。
【図4】図1に示すIV−IV断面図である。
【図5】(a),(b) は、図4に示す送排泥管の結合部を示す断面図である。
【図6】図1に示す合成樹脂管埋設装置の推力支持部を示す図面であり、(a) は軸方向の断面図、(b) は平面図である。
【図7】(a) は、図6に示す推力支持部を示す斜視断面図であり、(b) は、引き戻しロッドの連結部を示す分解斜視図である。
【図8】図6に示すVIII−VIII断面図である。
【図9】図6に示す推力支持部の突出/格納動作を示す図面であり、(a) は突出状態の断面図、(b) は格納状態の断面図である。
【図10】本発明に係る合成樹脂管埋設装置による推進工法を模式的に示す断面図である。
【図11】図1に示す合成樹脂管埋設装置の滑材注入部を示す図面であり、(a) は軸方向の断面図、(b) は平面図である。
【図12】図11に示す滑材注入部を示す斜視断面図である。
【図13】図11に示すXIII−XIII断面図である。
【図14】図11に示す滑材注入部における逆止機構の例を示す断面図である。
【図15】図11に示す滑材注入部における逆止機構の他の例を示す断面図である。
【図16】推進工法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の説明でも、合成樹脂管として塩ビ管を例にし、掘進機は泥水式を例にして、図の右側を発進側とした例を説明する。また、この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、掘進機が掘進する前方を前側、後方を後側という。なお、特に前側の構成を指す場合は「A」、後側の構成を指す場合は「B」を付し、両方を含む場合はこれらを付さずに説明する。また、上述した図16に示す構成と同一の構成には、同一符号を付して説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施の形態に係る合成樹脂管埋設装置の通常結合部を示す軸方向の断面図であり、図2は、図1に示す通常結合部の斜視図、図3(a) は、図2に示す通常結合部の平面図であり、(b) は同通常結合部における結合金具の平面図である。図4は、図1に示すIV−IV断面図であり、図5(a),(b) は、図4に示す送排泥管の結合部を示す断面図である。
【0031】
図1に示すように、通常結合部1は、所定長さの塩ビ管2の結合部3から少し発進側(右側)に離れた位置にインナー管12A,12Bの結合部13が設けられている。この塩ビ管2の結合部3には、その外周にカラー5が設けられ、このカラー5と塩ビ管2との間がシール材6によってシールされている。このシール材6により、地山207から塩ビ管2の結合部3へ地下水等が浸入するのを防いでいる。
【0032】
また、通常結合部1は、図3(a),(b) に示すように、前側のインナー管12Aの後端に設けられた位置合せ金具14の爪部15と、後側のインナー管12Bの前端に設けられた位置合せ金具16の爪部17とが係合させられた状態で、これらの位置合せ金具14,16の爪部15,17が上下方向に突出するように形成した段部18に係合するように上下方向から締結金具19が被せられている。
【0033】
そして、図2にも示すように、これらの締結金具19は、締結金具保持部品21によってインナー管12の左右両側部と上下部とで連結されている。この締結金具保持部品21は、各締結金具19の間を連結するものであり、インナー管12の左右位置に配置された締結金具19を連結する横連結プレート22と、インナー管12の上下位置に配置された締結金具19を前後位置で連結する縦連結プレート23とを有している。これらの連結プレート22,23は、ボルト24,25で締結金具19に固定されている。このように締結金具19の左右位置と上下位置とをプレート22,23で連結することにより、締結金具19をインナー管12に固定することなく位置合せ金具14,16でインナー管12A,12Bを結合している。
【0034】
図3(a),(b) に示すように、上記したように結合された前側のインナー管12Aと後側のインナー管12Bとは、爪部15,17を係合させた状態で、上記位置合せ金具14,16の間に軸方向隙間S1と左右方向隙間S2とが形成されるようになっている。これにより、インナー管12A,12Bの結合部13を、軸方向隙間S1,左右方向隙間S2の範囲で左右方向に屈折可能としている。つまり、インナー管12A,12Bは、位置合せ金具14,16、締結金具19、締結金具保持部品21によって、インナー管12A,12Bの結合部13を屈折可能な柔軟結合構造としている。
【0035】
このような構造とすることにより、掘進機205の推進方向を制御すれば、インナー管12A,12Bの製作精度による直進性の方向と、掘進機205が通過した後、地山から受ける塩ビ管2の追随方向とが逆になった場合等でも、位置合せ金具14,16の隙間S1,S2で屈折して掘進機205に後続させる塩ビ管2を円滑に方向変更することができる。
【0036】
また、このような構造とすることにより、軸方向に大きな引抜き力を作用させたとしても、締結金具19によって係止された位置合せ金具14,16によって大きな引抜き力を受けることができるので、大きな引抜き力でインナー管12の全体を引抜くことも可能としている。
【0037】
図4に示すように、上記インナー管12は、矩形断面の中空管で形成されており、軸方向に貫通する空間28が形成されている、この空間28がレーザー通過エリアとして利用される。この矩形断面のインナー管12の上下位置には支持ローラ31がそれぞれ設けられている。このインナー管12の両側方にはL型断面の管支持金具30が固定され、この管支持金具30の外部にはスペーサ32がそれぞれ設けられている。このスペーサ32は、合成樹脂材等によって形成されている。これらの支持ローラ31とスペーサ32とによって、インナー管12が塩ビ管2の中心部に位置すようになっている。
【0038】
インナー管12の上下位置に設けられた支持ローラ31は、インナー管12の軸心に対して左右均等に固定されたローラ支持台33に回動可能に設けられており、インナー管12の上部に2個、下部に2個が対称配置されている。上記矩形状断面のインナー管12の上下面が、これらのローラ支持台33の座面として利用されている。また、この実施の形態では、インナー管12の前方下部に仮受けローラ34が設けられている。この仮受けローラ34は、塩ビ管2の内部に挿入されるインナー管12の重量を一旦仮受けし、その後の結合作業が容易に行えるようにするものである。この仮受けローラ34は、インナー管12に設けられた台座35に固定されたローラ支持台36に設けられている。この台座35は、後述する下側の格納操作部たる引き戻しロッド66を跨いで設けられている。
【0039】
さらに、上記管支持金具30には、下向きに環状の送排泥管サポート37が設けられ、この送排泥管サポート37に送泥管41と排泥管42とが支持されている。この管支持金具30の上向きの開放した空間38には、電力線43や送水管44が配置されている。
【0040】
一方、図5(a) に示すように、上記送泥管41と排泥管42の接合部45は、前側の送泥管41Aと排泥管42Aの後端に大径管46を設けると共にシール材47を設け、後側の送泥管41Bと排泥管42Bの前端に上記シール材47が接するシール部48を形成している。これにより、図5(b) に示すように、送泥管41B及び排泥管42Bが接合部45で屈曲可能となっており、上記屈折可能なように結合されているインナー管12の屈曲に追随して同様に屈折することができる。
【0041】
上記したように構成される通常結合部1は、掘進機205の推進方向に結合される所定長さの塩ビ管2及び所定長さのインナー管12における通常の結合部であり、このような通常結合部1の間の所定位置に以下に説明する推力支持部50と滑材注入部80とが備えられる。
【0042】
図6は、図1に示す合成樹脂管埋設装置の推力支持部を示す図面であり、(a) は軸方向の断面図、(b) は平面図である。平面図は、カラー5とシール材6を除いて示している。図7(a) は、図6に示す推力支持部を示す斜視断面図であり、(b) は、引き戻しロッドの結合部を示す分解斜視図である。図8は、図6に示すVIII−VIII断面図、図9は、図6に示す推力支持部の突出/格納動作を示す図面であり、(a) は突出状態の断面図、(b) は格納状態の断面図である。この実施の形態では、インナー管の上下位置に推力支持部が設けられている。図7は、全長を短くして記載している。
【0043】
図6(a),(b) 、図7(a),(b) に示すように、合成樹脂管埋設装置120に備えられた推力支持部50は、上記したように推進方向に結合される所定長さの塩ビ管2に所定間隔で設けられる。この推力支持部50は、推進方向に結合された複数の塩ビ管2を推進させるための推進力が塩ビ管2の許容推進力を超えない位置の結合部3に設けられ、その結合部3から前側に位置する塩ビ管2の推進力をインナー管12によって支持するようにしている。推力支持部50が備えられる塩ビ管2の結合部3には、後側の塩ビ管2Bの前端に係合凹部9が形成されており、インナー管12には、この係合凹部9に向けて径方向に突出される係合部材たるプッシャー52が設けられている。このプッシャー52は、インナー管側に円筒部53が形成され、外側に塩ビ管2の係合凹部9に挿入されて前側の塩ビ管2Aの後端面と前面が接する係合部54が突設されている。
【0044】
図8にも示すように、この実施の形態では、プッシャー52を突出/格納させる推力支持突出・格納機構たるプッシャー出入装置51として、上記プッシャー52の円筒部53を径方向に案内する円形の開口を有するプッシャーケース55と、このプッシャーケース55をインナー管12に固定された支持ベース56に固定するためのプッシャーケース押え金具57と、上記プッシャーケース55に設けられた挿入穴58に外部ローラ59が挿入されて保持された案内ローラ体60と、この案内ローラ体60の内部ローラ61が挿入される案内溝65を有する格納操作部たる引き戻しロッド66とを備えている。このように、格納操作部たる引き戻しロッド66の案内溝65によって案内ローラ体60を介してプッシャー52を径方向に突出又は格納させる機構としている。
【0045】
また、プッシャー52が係合する塩ビ管2の結合部3には、その外周に上記カラー5とシール材6とが設けられ、地山207から塩ビ管2の結合部3への地下水等の浸入が防がれている。
【0046】
一方、上記引き戻しロッド66に設けられた案内溝65は、発進側である図の右側が径方向外側に位置し、到達側である図の左側が径方向内側に位置するように前向きで外側から内側に傾斜して形成されている。さらに、上記支持ベース56には、プッシャー52の円筒部53がインナー管12の径方向に格納させられる円筒形の空間62が設けられている。
【0047】
また、上記引き戻しロッド66は、インナー管12の外部に固定された支持ベース56の間でインナー管12の推進方向に移動可能なように設けられており、インナー管12の外面に設けられた案内環63(図1)によって推進方向に移動可能な状態で設けられている。この引き戻しロッド66は、プッシャーケース55とプッシャー52との下部を推進方向に貫通して設けられており、インナー管12と同様に推進方向に分割され、インナー管12の結合部に近接した発進側の位置で、前側の引き戻しロッド66の後端に形成された厚みが薄い差し込み部68が後側の引き戻しロッド66の前端に形成されたU状部69に差し込まれ、この差し込み位置に設けられた穴部70と長穴71とがピン67(図7(b) 参照)によって連結されている。
【0048】
この引き戻しロッド66の結合部におけるピン67の連結位置としては、プッシャー52を一斉に格納しようとすると過大な引き戻し力が必要になることから、図7に示すように、前側の引き戻しロッド66の後端に形成される差し込み部68の長穴71を、発進側から順に推進方向の遊びが大きくなるような長穴とすることにより、発進側の引き戻しロッド66が引かれても前側の引き戻しロッド66は遊びの分で引かれないようにして、発進側のプッシャー52から順に時間差をもって格納されるようにしている。つまり、ピン67と係合する穴部70に推進方向の遊びにより、引き戻しロッド66の引き初めは発進側の引き戻しロッド66のみが発進側に引かれて発進側のプッシャー52を格納し、その後、推進方向前側の引き戻しロッド66の連結部における長穴71の遊びが順に無くなって発進側から順に連結された引き戻しロッド66が引かれるようにすることにより、発進側のプッシャー52から順にインナー管12側に格納されるようにしている。これにより、同時に格納されるプッシャー52の数を減らして、引き戻しロッド66の引き力を軽減している。
【0049】
図9(a),(b) に示すように、この推力支持部50によれば、プッシャー52を突出させて塩ビ管2と係合させた状態では、塩ビ管2によって負荷する推進抵抗をプッシャー52の位置でインナー管12によって支持し(図9(a) )、塩ビ管2の埋設後には、引き戻しロッド66を発進立坑側に引くことによって、案内ローラ体60の内部ローラ61が引き戻しロッド66の案内溝65に案内されてインナー管12の径方向内側に格納され、その格納に伴って案内ローラ体60の外部ローラ59と係合しているプッシャー52がプッシャーケース55に案内されてインナー管12側に強制的に格納される(図9(b) )。このような操作により、発進側からプッシャー52を塩ビ管2の内径部と干渉しない位置まで縮めて格納することができる。このプッシャー52の格納は、プッシャー52がプッシャーケース55に案内されて径方向に格納され、プッシャー52の係合部54を塩ビ管2の内面と干渉しない位置まで格納させられる。
【0050】
従って、このような推力支持部50を備えさせた合成樹脂管埋設装置120によれば、図10にも示すように、上記インナー管12から塩ビ管2の結合部3に設けられた係合凹部9に向けてプッシャー52を突出させて係合させることにより、このプッシャー52が設けられた位置よりも前側の塩ビ管2を推進させる推進力をこのプッシャー52を介してインナー管12で負荷し、後側に設置する塩ビ管2で前側の塩ビ管2の推進抵抗力を負荷しないようにできる。
【0051】
つまり、塩ビ管2の推進に要する推進力を元押装置203(図10)だけで伝えるのではなく、塩ビ管2の許容推進力に達する前の位置に、この塩ビ管2の推進力をインナー管12で支持する推力支持部50を備えさせることにより、塩ビ管2の埋設時には、塩ビ管2の推進力を所定間隔でインナー管12によって負荷することにより、ある長さ単位で塩ビ管2が負荷する推進力を限定し、塩ビ管2を許容推進力の範囲で使用して長距離の推進ができるようにしている。そして、これにより、塩ビ管2が低強度であることによって限定されていた施工距離を、高強度であるインナー管12の許容推進力による施工距離まで伸ばすことを可能としている。
【0052】
また、この実施の形態では、インナー管12の上下位置に上記プッシャー52を設けて塩ビ管2の推進力をインナー管12の上下で負荷するようにしているので、上述したようにインナー管12の両側部に設けられたスペーサ32による左右方向の支持とによって、掘進機205の曲進時も上下にもけられたプッシャー52による推進力の負荷と、左右方向の力のスペーサ32による支持とができるので、曲進時の塩ビ管2の推力伝達も安定してできる。
【0053】
図11は、図1に示す合成樹脂管埋設装置の滑材注入部を示す図面であり、(a) は軸方向の断面図、(b) は平面図である。平面図は、カラー5とシール材6を除いて示している。図12は、図11に示す滑材注入部を示す斜視断面図、図13は、図11に示すXIII−XIII断面図、図14は、図11に示す滑材注入部における逆止機構の例を示す断面図、図15は、図11に示す滑材注入部における逆止機構の他の例を示す断面図である。上記合成樹脂管埋設装置120は、長距離推進を可能にするために、推進方向の所定位置に滑材注入部80を備えている。
【0054】
図11、図12に示すように、合成樹脂管埋設装置120に備えられた滑材注入部80は、上記したように推進方向に結合される所定長さの塩ビ管2の所定位置に設けられており、塩ビ管2の外面と地山との周面摩擦力を低減させる必要がある位置に設けられる。この滑材注入部80は、上記インナー管12の上部に設けられ、塩ビ管2の内面に近接した位置に配置されると共に、塩ビ管2に設けられた滑材注入用開口7に接する滑材注入管81と、塩ビ管2に係合して回り止めを図る回り止め部82を外側端部に有し、塩ビ管2の径方向に突出又は格納される滑材注入管支持金具83と、この滑材注入管支持金具83を塩ビ管2の径方向に案内する滑材注入管支持金具ケース84と、この滑材注入管支持金具ケース84をインナー管12に固定された支持ベース85に固定するためのケース押え金具86と、上記滑材注入管支持金具83に設けられた挿入穴87に外部ローラ88が挿入された案内ローラ体89と、この案内ローラ体89の内部ローラ90が挿入される案内溝65を有する格納操作部たる引き戻しロッド66と、上記滑材注入管81の先端に面する塩ビ管2の外部から内部へ地下水等が浸入するのを防止する逆止機構100(110)とが備えられている。上記滑材注入管支持金具83は、インナー管側に円筒部91が形成され、外側には上記回り止め部82が突設されている。また、上記支持ベース85には、滑材注入管支持金具83の円筒部91が塩ビ管2の径方向に格納させられる円筒形の空間92が設けられている。
【0055】
図13にも示すように、この実施の形態では、滑材注入管81と一体的に突出又は格納される滑材注入管支持金具83を突出又は格納させる滑材注入突出・格納機構たる滑材注入管出入装置94として、上記推力支持突出・格納機構と同様に、格納操作部たる引き戻しロッド66の案内溝65によって案内ローラ体89を介して滑材注入管支持金具83を径方向に突出又は格納させる機構を採用している。
【0056】
上記塩ビ管2に係合する回り止め部82は、滑材注入位置と塩ビ管2との関係がズレにくいようにするためのものであり、滑材注入部80が備えられる塩ビ管2の後端に形成される係合凹部10に係合して回り止めを図るようになっている。
【0057】
この滑材注入管支持金具83が係合する塩ビ管2の外周には、上記図6,9と同様にカラー5とシール材6とが設けられるとともに、そのカラー5の外周側に更に滑材用カラー8が設けられている。この滑材用カラー8と上記カラー5との間には後方に向けて開口する注入路93(図14,15参照)が設けられており、滑材用カラー8とカラー5との隙間から推進方向後方の塩ビ管2と地山207との間に滑材を供給することができるようになっている。地山207からの地下水等の浸入は、上記逆止機構100(110)とシール材6とによって防いでいる。
【0058】
上記引き戻しロッド66は、この実施の形態では、上述したプッシャー52を突出/格納させる上記引き戻しロッド66と同一の構成である。この引き戻しロッド66は、滑材注入管支持金具ケース84と滑材注入管支持金具83との下部を推進方向に貫通して設けられており、インナー管12と同様に推進方向に分割され、インナー管12の結合部に近接した位置で、前側の引き戻しロッド後端に形成された厚みが薄い差し込み部68が後側の引き戻しロッド前端に形成されたU状部69に差し込まれ、この差し込み位置に設けられた穴部70と長穴71とがピン67(図7(b) 参照)によって連結されている。
【0059】
従って、引き戻しロッド66を発進側に引くと、この引き戻しロッド66に設けられた案内溝65に沿って案内ローラ体89と共に滑材注入管支持金具83がインナー管12側に格納される。この滑材注入管支持金具83の格納は、滑材注入管支持金具ケース84に案内されて径方向に格納され、滑材注入管支持金具83の回り止め部82を塩ビ管2の内面と干渉しない位置まで格納させることができる。この動作は、上述した図9(a),(b) に示されるプッシャー52と同一の動作であり、詳細な説明は省略する。このように径方向に格納させる滑材注入管支持金具83により、この滑材注入管支持金具83と一体的に滑材注入管81を塩ビ管2の内面と干渉しない位置まで格納させることができるようにしている。
【0060】
一方、上記滑材注入管81の先端には、上記滑材注入管支持金具83に設けられた挿入穴95に挿入される位置決め部96が設けられ、この位置決め部96と直交して塩ビ管2の径方向に上記滑材注入管81が設けられている。位置決め部96は、上記挿入穴95に挿入され、この滑材注入管支持金具83と一体的に径方向に突出/格納されるようになっている。滑材注入管支持金具83は、この滑材注入管支持金具83に外部が係止された案内ローラ体89の内部ローラ90が、上記引き戻しロッド66をインナー管12の発進側に向けて軸方向に引くことにより、この引き戻しロッド66に設けられた案内溝65に沿ってインナー管12側に後退させられるので、この案内ローラ体89によって滑材注入管支持金具83と共に滑材注入管81が滑材注入管支持金具ケース84に沿って塩ビ管2と干渉しない位置までインナー管側に格納させられる。
【0061】
図14,図15に示すように、上記滑材注入管81の先端部において地下水等の浸入を防ぐ上記逆止機構100(110)としては、塩ビ管2の外部から滑材注入管81の先端部を介して塩ビ管2の内部へ地下水等が浸入するのを防止する機構が採用されている。
【0062】
図14に示す逆止機構100は、上記滑材注入管81の先端が当接するシールケース101を塩ビ管2に接着して固定し、そのシールケース101と滑材注入管81との間はシール材102を設けてシールしている。そして、シールケース101の中央部に円錐形の一部の断面形状となるように外側が拡径した傾斜穴103を設け、この傾斜穴103に円錐形のシールパッキン104が設けられている。このシールパッキン104は、滑材注入管81側から滑材を注入する時には注入圧で外側に移動して傾斜穴103との間を開いて滑材が塩ビ管2の外部に注入されるのを許容し、外側からの地下水等の浸入は円錐形の傾斜穴103との間でシールして防ぐ。
【0063】
また、このシールパッキン104の外側には、地山からの土圧等が直接作用しないよう上記滑材用カラー8が設けられると共に、この滑材用カラー8とカラー5との間から塩ビ管2と地山207との間に滑材を供給する注入路93が形成されている。また、カラー5には、シールパッキン104の外側両端部に開口部105が設けられ、この開口部105から注入路93に滑材が注入されるようになっている。
【0064】
一方、図15に示す逆止機構110は、上記滑材注入管81の先端が当接するシールケース111を塩ビ管2に接着して固定し、そのシールケース111と滑材注入管81との間はシール材112を設けてシールしている。そして、シールケース111の略中央部に、滑材注入管81側と外側とで貫通する注入穴113を設け、その外側に注入穴113の外側を塞ぐ円形のシールパッキン114が設けられている。このシールパッキン114は、周囲がシールケース111に固定され、上記注入穴113から横方向にずれた位置に開口部115が設けられている。このようなシールパッキン114によれば、滑材注入管81側から滑材を注入する時には注入圧で外向きに変形して注入穴113から開口部115を介して滑材が塩ビ管2の外部に注入されるのを許容し、外側からの地下水等の浸入はシールパッキン114が注入穴113に密着して防ぐ。
【0065】
また、このシールパッキン114の外側にも、地山からの土圧等が直接作用しないように上記滑材用カラー8が設けられると共に、この滑材用カラー8とカラー5との間から塩ビ管2と地山207との間に滑材を供給する注入路93が形成されている。また、カラー5には、シールパッキン114の開口部115の外側に開口穴116が設けられ、この開口穴116から注入路93に滑材が注入されるようになっている。図14に示す逆止機構100か図15に示す逆止機構110のいずれを採用するかは、使用条件等に応じて決定すればよい。また、逆止機構はこれらの逆止機構以外の構成であってもよい。
【0066】
上記した滑材注入部80を備えさせる位置としては、例えば、塩ビ管2を100m程度推進させた位置で滑材注入部80が備えられたインナー管12を設置する。このように滑材注入部80を備えさせることにより、100m以下の短距離施工の場合には掘進機205に滑材注入部(図示略)を搭載すれば塩ビ管2と地山207との間の推進抵抗を軽減することができ、それ以上の長距離施工においても、塩ビ管2に備えられた滑材注入部80から滑材を注入して塩ビ管2と地山207との間の推進抵抗を軽減することができる。
【0067】
また、このような構造とすることにより、塩ビ管2を埋設した後、上記引き戻しロッド66を発進側に引くことによって、上記プッシャー52と同様に滑材注入管81を塩ビ管2の内径部と干渉しない位置まで径方向に縮めることができ、滑材注入部80を発進立坑側に回収することができる。
【0068】
さらに、滑材注入管81を塩ビ管2から径方向に縮めた際、この滑材注入管81と塩ビ管2の外部との間に設けられた逆止機構100(110)は塩ビ管2に残され、塩ビ管2の外部から内部に地下水等が浸入するのを防止することができる。
【0069】
以上のような合成樹脂管埋設装置120によれば、上記図10に示すように、塩ビ管2の周面摩擦力が塩ビ管2の耐力範囲となる所定間隔で設けたプッシャー52によって、推進時には塩ビ管2の端面を直接押すため、プッシャー52の受圧面積分の確実な推進抵抗をインナー管12で負荷することができる。このプッシャー52を設ける位置も、プッシャー52の受圧面積分×塩ビ管許容圧縮応力、から容易に決定することができる。そのため、塩ビ管2の何本ごとにプッシャー52が必要かの施工管理が容易に行える。その上、上記プッシャー52は、塩ビ管2の押し面が傾いていても追随できるように、周方向に動く構造となっているので、安定した推力支持ができる。
【0070】
また、インナー管12の中空空間28を、配管・配線を配置しない空間としてレーザー通過エリアとするので、確実なレーザー通過エリアが確保でき、掘進機205の全方向変化に対して正確に計測することが可能となる。しかも、インナー管12の中心部にレーザー通過エリアを確保することにより、このインナー管12の全周任意の箇所に各種装置・配管・配線を設置することができる。
【0071】
さらに、インナー管12は、上下位置に設けられた支持ローラ31と、左右位置に設けられたスペーサ32とによって、インナー管12を上下・左右方向で塩ビ管2(合成樹脂管)に支持するようにしているので、これらの支持点によってインナー管12の全方向に発生する可能性のある座屈を防止することができる。
【0072】
そして、塩ビ管2の埋設が完了した後、インナー管12は上記したように引き戻しロッド66を発進側に引くことにより、プッシャー52及び滑材注入管支持金具83を塩ビ管2と干渉しないインナー管側の位置まで容易に格納することができるので、インナー管12を発進立坑側に回収する作業を安定して行うことができる。しかも、インナー管12の上下支持点となる支持ローラ31は、インナー管12の回収時には、塩ビ管2(合成樹脂管)から発進立坑側に引き戻される時の抵抗を軽減させるので、インナー管12の回収作業を更に容易にする。
【0073】
なお、上記実施の形態における推力支持部50と滑材注入部80とを配置する所定間隔は、塩ビ管2を埋設する地質や環境に応じて決定されるものであり、一定間隔で設けられると限られたものではない。
【0074】
また、上記実施の形態では泥水式の掘進機205を例に説明したが、この掘進機205も地質等に応じて決定すればよく、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0075】
さらに、上述した実施の形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る合成樹脂管埋設装置は、下水道管等で直径が300mm程度の管を長距離埋設したい場合に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1…通常結合部
2…塩ビ管
3…結合部
9,10…係合凹部
12…インナー管
13…結合部
14,16…位置合せ金具
19…締結金具
21…締結金具保持部品
22…横連結プレート
23…縦連結プレート
28…空間
31…支持ローラ
32…スペーサ
37…送排泥管サポート
41…送泥管
42…排泥管
43…電力線
45…接合部
50…推力支持部
51…プッシャー出入装置(推力支持突出・格納機構)
52…プッシャー
53…円筒部
54…係合部
55…プッシャーケース
59…外部ローラ
60…案内ローラ体
61…内部ローラ
65…案内溝
66…引き戻しロッド(格納操作部)
67…ピン
70…穴部
71…長穴
80…滑材注入部
81…滑材注入管
82…回り止め部
83…滑材注入管支持金具
84…滑材注入管支持金具ケース
88…外部ローラ
89…案内ローラ体
90…内部ローラ
91…円筒部
94…滑材注入管出入装置(滑材注入突出・格納機構)
100…逆止機構
101…シールケース
104…シールパッキン
110…逆止機構
111…シールケース
114…シールパッキン
120…合成樹脂管埋設装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元押装置で推進力を与える掘進機によって掘削する地中に埋設して推進方向に結合する所定長さの合成樹脂管と、該合成樹脂管の内部に配置して前記掘進機の推進方向に結合することにより該掘進機に推進力を伝達する所定長さのインナー管と、を備えた合成樹脂管埋設装置であって、
前記インナー管は、該インナー管を屈折可能に結合する結合部と、前記合成樹脂管の許容推進力の範囲となる所定間隔で前記合成樹脂管の推進力を負荷するプッシャーとを有し、
前記合成樹脂管は、推進方向に結合された前記合成樹脂管の結合部に前記プッシャーを係合させる後端面を有し、
前記プッシャーを推進方向と交差する方向に突出させて前記合成樹脂管の結合部の後端面に係合させることにより、前記合成樹脂管を推進させる推進力を前記プッシャーの前面で受けて負荷するように構成したことを特徴とする合成樹脂管埋設装置。
【請求項2】
前記インナー管が、軸方向に貫通する空間を有する管体で形成されている請求項1に記載の合成樹脂管埋設装置。
【請求項3】
前記プッシャーは、前記インナー管の外部から径方向に突出した状態で前記合成樹脂管と係合し、径方向に格納した状態で前記合成樹脂管から離脱するように構成され、前記プッシャーをインナー管の外部から前記合成樹脂管の結合部に向けて突出又はインナー管に向けて格納させる推力支持突出・格納機構を具備している請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂管埋設装置。
【請求項4】
前記プッシャーは、前記インナー管の上下位置に配置されている請求項3に記載の合成樹脂管埋設装置。
【請求項5】
前記推力支持突出・格納機構は、前記掘進機の推進方向に結合するインナー管の元押装置側から前記所定間隔で具備させた前記プッシャーを格納させる格納操作部を具備している請求項3又は請求項4に記載の合成樹脂管埋設装置。
【請求項6】
前記格納操作部は、前記元押装置側から順に時間差を設けて前記プッシャーを格納させる機能を具備している請求項5に記載の合成樹脂管埋設装置。
【請求項7】
前記インナー管は、前記合成樹脂管の外部に滑材を注入する滑材注入部を具備している請求項1〜6のいずれか1項に記載の合成樹脂管埋設装置。
【請求項8】
前記滑材注入部は、径方向に突出した状態で前記合成樹脂管と係合し、径方向に格納した状態で前記合成樹脂管から離脱する滑材注入管と、該滑材注入管を前記インナー管の外部から前記合成樹脂管に向けて突出又はインナー管に向けて格納させる滑材注入突出・格納機構とを具備し、
前記合成樹脂管は、前記滑材注入管の滑材注入位置に、前記滑材注入管から合成樹脂管外部への滑材注入は可能で、前記合成樹脂管外部からの逆流は防止する逆止機構を具備している請求項7に記載の合成樹脂管埋設装置。
【請求項9】
前記滑材注入突出・格納機構は、前記滑材注入管を前記合成樹脂管周方向の所定位置に止める回り止め部を有すると共に、前記掘進機の推進方向に結合するインナー管の元押装置側から前記回り止め部を格納させる格納操作部を具備している請求項8に記載の合成樹脂管埋設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−12546(P2011−12546A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237178(P2010−237178)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【分割の表示】特願2008−110005(P2008−110005)の分割
【原出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(502218617)株式会社エム・シー・エル・コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】