説明

合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びそれを被覆してなる合成樹脂製床材

【課題】耐摩耗性及び耐擦り傷性に優れた合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】分子量5.0×10以下の二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a1)および分子量5.0×10以下の三官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a2)からなるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、二官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)および一分子中に三つ以上の不飽和二重結合を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)からなる(メタ)アクリレートモノマー(B)を含有してなり、重量比が(A):(B)=20:80〜80:20である合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びそれを被覆してなる合成樹脂製床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物や車輌などの床仕上げ材としてポリ塩化ビニルなどの合成樹脂製床材が広く使用されている。この合成樹脂製床材は靴を履いて歩行する際の靴底との摩擦による汚れ(ヒールマーク)が付きやすいなど、一般的に耐汚染性に劣る為、通常施工後にワックス処理などの防汚処理が施されるが、防汚性を維持する為に定期的に古いワックスを除去してから再度ワックス処理を行うといったメンテナンスを行わなければならない。それらメンテナンス作業はコストと時間がかかる上、廃液が大量に出るなどの環境面でのデメリットも多い。
【0003】
ワックスなどの防汚処理が不要な床材として、紫外線や電子線などの活性エネルギー線により硬化する樹脂組成物を被覆した合成樹脂製床材が提案されている(特許文献1、2)。活性エネルギー線硬化性樹脂は活性エネルギー線を照射することにより瞬時に架橋反応によって硬化する樹脂であり、床材に被覆することにより優れた耐汚染性を付与することが可能である。
【0004】
しかしながら、これら活性エネルギー線により硬化する樹脂組成物を被覆した合成樹脂製床材は耐汚染性には優れていても、耐摩耗性及び耐擦り傷性が十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−136668
【特許文献2】特許平6−256444
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題を解決するものであり、耐摩耗性及び耐擦り傷性に優れた合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することであり、またこのような合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を被覆してなる合成樹脂製床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特定のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と(メタ)アクリレートモノマー(B)を含有することで上記課題を解決したものであって、より詳細には、二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a1)及び三官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a2)からなるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、二官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)及び一分子中に三つ以上の不飽和二重結合を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)からなる(メタ)アクリレートモノマー(B)を含有することを要旨とする。
係る課題を解決する為の具体的手段としては、分子量5.0×10以下の二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a1)及び分子量5.0×10以下の三官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a2)からなるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、二官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)及び一分子中に三つ以上の不飽和二重結合を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)からなる(メタ)アクリレートモノマー(B)を含有し、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と(メタ)アクリレートモノマー(B)の重量比が(A):(B)=20:80〜80:20であることを特徴とする合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、さらに、二官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)と多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)の重量比が(b1):(b2)=10:90〜90:10であることを特徴とする合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、さらに、平均粒径が10μm以下の有機粒子あるいは無機粒子を含有していることを特徴とする合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。またさらに上記合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を表面に被覆硬化してなる合成樹脂製床材を提供することである。
【発明の効果】
【0008】
上記のような構成としたことにより、耐摩耗性および耐擦り傷性に優れた合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物となるため、これを被覆した合成樹脂製床材は簡単なメンテナンスのみで長期にわたって美観を維持することができ、また歩行量の多い場所にも好適に使用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細を説明する。以下の説明で合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を単に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物と記載する場合がある。
【0010】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、一分子中に二つの不飽和二重結合を有する二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a1)および一分子中に三つの不飽和二重結合を有する三官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a2)であり、実用上の作業性に関わる硬化反応前の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度や反応性の観点から分子量5.0×10以下のものが使用でき、分子量が1.0×10〜3.0×10のものが好適に用いられる。また、耐光性を考慮すると、脂肪族ウレタンアクリレートが好適に用いられる。
【0011】
二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a1)としてはEBECRYL210、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL8402、EBECRYL9270、EBECRYL215、EBECRYL6202、EBECRYL244、EBECRYL245、EBECRYL284、EBECRYL285(以上ダイセル・サイテック製)、紫光UV−6630B、紫光UV−3310B、紫光UV−6640B(以上日本合成化学工業製)、UA−122P、U−200PA、UA−4200(以上新中村化学工業製)、アートレジンUN−333、アートレジンUN−2600、アートレジンUN−2700、アートレジンUN−9000PEP(以上根上工業製)などが市販品として入手できる。
三官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a2)としては、EBECRYL8701、EBECRYL9260、EBECRYL204、EBECRYL205、EBECRYL264、EBECRYL265、EBECRYL294/25HD、EBECRYL4820(以上ダイセル・サイテック製)、紫光UV−7550B(以上日本合成化学工業製)等が市販品として入手できる。
なお、これら市販品のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが希釈剤として(メタ)アクリレートモノマーを含有する場合、後述の(メタ)アクリレートモノマーとの重量比となるように調整して使用すれば良い。
【0012】
二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a1)と三官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a2)の重量比は特に限定されないが、硬化反応前の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度や耐汚染性を考慮すると、重量比が(a1):(a2)=10:90〜90:10であることが好ましく、より好ましくは30:70〜80:20である。
【0013】
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、一分子中に二つの不飽和二重結合を有する二官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)及び一分子中に三つ以上の不飽和二重結合を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)である。
二官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)としては1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを単独または併用して用いることができる。
【0014】
多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを単独または併用して用いることができる。
【0015】
二官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)と多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)の重量比は(b1):(b2)=10:90〜90:10が好ましく、より好ましくは(b1):(b2)=20:80〜80:20である。このような範囲の組成とすることにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は適度な柔軟性と優れた耐汚染性を有するものとなり、柔軟な長尺シート状の合成樹脂製床材にも好適に使用でき、なおかつこれを被覆した合成樹脂製床材はより汚れの付きにくい床材となる。
【0016】
これら二官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)及び一分子中に三つ以上の不飽和二重結合を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)の中には皮膚刺激性が大きいものもあるため、作業上の安全性を考慮するとドレーズ法により測定した皮膚一次刺激性インデックス(PII)が2以下のものを使用することが好ましい。さらに硬化反応後の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の柔軟性も考慮すると、アルキレンオキサイドなどによって変性したものがより好適に用いられる。
【0017】
また耐汚染性や硬化反応の反応性の面からは多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)としては不飽和二重結合を多く有するものが有利であるが、硬化反応後の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の柔軟性を考慮すると一分子中に三つまたは四つの不飽和二重結合を有するものが好ましい。
【0018】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と(メタ)アクリレートモノマー(B)の重量比は、(A):(B)=20:80〜80:20であり、好ましくは(A):(B)=30:70〜60:40である。(A):(B)の重量比が20:80より(A)の比率が小さいと耐摩耗性や耐擦り傷性などの性能を満足するものが得られず、(A):(B)の重量比が80:20より(A)の比率が大きいと硬化反応前の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が高くなるため合成樹脂製床材の表面に塗工する際に均一な厚みに塗工できないなど、塗工性に問題が生じてくる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と(メタ)アクリレートモノマー(B)の重量比を上記の範囲とすることにより、耐摩耗性及び耐擦り傷性に優れた合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物となる。
【0019】
光重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン、アミノアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、ベンゾフェノン、チオキサンソン、フォスフィンオキサイド、グリオキシエステル、オキシ酢酸エステルなどの従来公知のものを単独または併用して用いることができる。上記光重合開始剤の添加量は反応性樹脂成分(ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と(メタ)アクリレートモノマー(B)の総量)100重量部に対して、1〜20重量部であり、好ましくは3〜15重量部である。なお、電子線により硬化させる場合は、光重合開始剤は不要である。
【0020】
さらに活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に有機粒子又は無機粒子を添加することにより、より耐擦り傷性に優れるものとすることができる。本発明で用いられる有機粒子としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン、メラミン樹脂、スチレン樹脂などが挙げられ、無機粒子としては炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化チタン、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられ、それらを単独あるいは併用して用いる事ができるが、好ましくはアルミナが用いられる。また上記の有機粒子及び無機粒子の平均粒径は10μm以下のものが好ましい。上記有機粒子及び無機粒子は粒子単体で添加してもよく、あるいは適切な分散媒にあらかじめ分散してから添加してもよい。上記有機粒子及び無機粒子の添加量は反応性樹脂成分(ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と(メタ)アクリレートモノマー(B)の総量)100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。
【0021】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物にはその他添加剤として、光増感剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、艶消し材など従来公知のものを添加することができる。また、機能性を付与する目的で抗菌剤、帯電防止剤などを必要に応じて適宜添加することができる。
【0022】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は前述の各成分を通常の方法により混合して製造することができる。製造された該組成物の粘度はハンドリング性や合成樹脂製床材への塗工性を考慮すると、25℃においてB型粘度計により測定した粘度が2000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは200mPa・s〜1500mPa・sである。
【0023】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工する合成樹脂製床材に用いられる合成樹脂には熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としてはポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。それらのうち、加工性や床材としての施工容易性の面から、熱可塑性樹脂が好ましく、中でも塩化ビニル系樹脂が好ましく用いられる。
【0024】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は合成樹脂製床材の表面に公知の方法により塗工した後、活性エネルギー線を照射し硬化させることにより合成樹脂製床材に積層される。合成樹脂製床材への塗工はグラビアコーター、ロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、ダイコーターなどの公知の方法により行うことができるが、表面外観を考慮するとロールコーターによる塗工が好ましい。また硬化後の塗膜の厚みは耐久性及び柔軟性を考慮すると、通常5μm〜100μm程度であり、好ましくは10μm〜50μmである。このような厚みとすることにより、巻物状にして運搬する長尺の床材にも好適に用いることができる。
【0025】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を上記方法にて合成樹脂製床材に塗工した後、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射して硬化させるが、紫外線の場合の照射エネルギーは硬化性や硬化後の柔軟性などを考慮すると365nm積算光量にて200mJ/cm〜1500mJ/cmが好ましい。
【0026】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を被覆した合成樹脂製床材は必要に応じて種々の形状のエンボス加工を施すことができる。エンボス加工を施す際の合成樹脂製床材表面の加熱温度は110℃〜140℃が好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例および比較例に使用した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の配合を表1および表2に示す。各配合剤の名称あるいはグレード名は以下の通りである。
二官能ウレタンアクリレートオリゴマー1(表中「a1−1」):
EBECRYL9270(ダイセル・サイテック製,分子量1.0×10
二官能ウレタンアクリレートオリゴマー2(表中「a1−2」):
紫光UV−6630B(日本合成化学工業製,分子量3.0×10
三官能ウレタンアクリレートオリゴマー(表中「a2−1」):
EBECRYL9260(ダイセル・サイテック製,分子量1.5×10
二官能アクリレートモノマー1(表中「b1−1」):
TPGDA(ダイセル・サイテック製,PII値:1.9)
二官能アクリレートモノマー2(表中「b1−2」):
HPNDA(ダイセル・サイテック製,PII値:0.8)
三官能アクリレートモノマー(表中「b2−1」):
TMPEOTA(ダイセル・サイテック製,PII値:0.4)
四官能アクリレートモノマー(表中「b2−2」):
EBECRYL40(ダイセル・サイテック製,PII値:1.5)
単官能アクリレートモノマー(表中「単官能モノマー」):
IBOA−B(ダイセル・サイテック製,PII値:1.8)
光重合開始剤:
IRUGACURE754(BASFジャパン製)
アルミナ粒子:
AX3−32(新日鉄マテリアルズ製,平均粒径(d50):2.5〜4.5μm)









【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
<実施例1〜9>
上記表1および表2の配合No.1〜9の各組成物をディスパーにて混合・攪拌して塗料を作製し、厚さ2mmの軟質塩ビシートにバーコーターを用いて硬化後の塗膜の厚さが30μmになるように塗工し、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス社製)にて500mJ/cmの365nm積算光量で硬化させて床シートを得た。
【0032】
<比較例1〜4>
表2の配合No.10〜13の各組成物を用いて実施例と同様に床シートを得た。
【0033】
上記実施例および比較例の床シートについて、塗工性、耐摩耗性、耐擦り傷性、耐汚染性(耐ヒールマーク性、耐溶剤性)、柔軟性の評価を行った。
【0034】
<塗工性>
床シートを作製する際の塗料の塗工作業性と床シートの表面状態を観察した。
○:塗工作業性が良く、平滑に塗工できて表面状態も良好である。
△:塗工作業性は問題ないが、若干塗工ムラが発生する。
×:塗工作業性に問題あり、塗料として使用できない。
【0035】
<耐摩耗性>
JIS K 7204に準拠して試験した。テーバー摩耗試験機にて、摩耗輪CS−17、片腕荷重1kgの条件で塗膜面を1000回転させた後の摩耗減厚を測定した。
※摩耗減厚=試験前の床シートの厚み−試験後の床シートの厚み
○:摩耗減厚が20μm未満
△:摩耗減厚が20μm以上30μm未満
×:摩耗減厚が30μm以上
【0036】
<耐擦り傷性>
平面摩擦試験機(東洋精機製作所製)のアーム先端にスチールウールNo.000を取り付け、500gの荷重をかけて塗膜表面を10往復ラビングした後の傷の有無を観察した。
◎:非常に目立たない
○:目立たない
△:やや目立つ
×:かなり目立つ
【0037】
<耐汚染性(耐ヒールマーク性)>
JIS K 3920に記載のスネルカプセルテスターに標準ゴムブロックを5個入れ、床シートを塗膜面がゴムブロックと接触する向きにセットして40rpmの回転数で正転5分・反転5分を2サイクル回転させたあと、床シートを取り出して塗膜面を乾いた布で拭いた後のヒールマークの付着の程度を観察した。
○:付着なし
△:やや付着あり
×:激しく付着あり
【0038】
<耐汚染性(耐溶剤性)>
JIS A 1454(汚染性試験)に準拠して試験した。塗膜に溶剤としてクロロホルムを滴下し、シャーレをかぶせて1日静置後に中性洗剤を含む水で洗浄し、ついでエタノールをしみこませた布で塗膜表面を洗浄した後の材質変化の有無を観察した。
○:変化なし
△:やや変化
×:大きく変化
【0039】
<柔軟性>
JIS A 1454(柔軟性試験)に記載のマンドレル装置の直径が10mmの円柱に塗膜面が外側になるように床シートを巻きつけた後の塗膜のヒビ割れの有無を観察した。
○:ヒビ割れなし
△:1mm未満の細かいヒビがややみられる
×:1mm以上のヒビ割れあり
【0040】
評価結果を表3および表4に示す。



【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
表3,4に示したとおり、実施例1〜9は耐摩耗性、耐擦り傷性、耐汚染性、柔軟性と床材としての性能をバランスよく有したものであった。また無機粒子であるアルミナ粒子を添加したものについては、更に耐擦り傷性に優れた結果となった(実施例2,3)。比較例1,2は二官能アクリレートモノマー(b1−1,b1−2)もしくは多官能アクリレートモノマー(b2−1,b2−2)の代わりに単官能アクリレートモノマーを配合したものであり、耐擦り傷性が不十分でさらに耐汚染性が悪い傾向であった。比較例3,4はウレタンアクリレートオリゴマーとアクリレートモノマーのいずれか一方のみを配合したものであり、アクリレートモノマーのみであると樹脂組成物の粘度が低いために塗工時に流れてしまい十分な厚みの塗膜が得られず、耐摩耗性が不十分であった(比較例3)。またウレタンアクリレートオリゴマーのみであると樹脂組成物の粘度が高過ぎて所定の厚みに均一に塗工することができなかった(比較例4)。
【産業上の利用可能性】
【0044】
合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を被覆した合成樹脂製床材は耐摩耗性および耐擦り傷性に優れる為、簡単なメンテナンスのみで長期にわたって美観を維持でき、店舗や病院、オフィス、学校などの施設や電車、バスなどの乗り物など、歩行量の多い場所の床材として好適である。また、良好な柔軟性を有するため、長尺の合成樹脂製床材の表面層としても利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量5.0×10以下の二官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a1)および分子量5.0×10以下の三官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(a2)からなるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、二官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)および一分子中に三つ以上の不飽和二重結合を有する多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)からなる(メタ)アクリレートモノマー(B)を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の重量比が(A):(B)=20:80〜80:20であることを特徴とする
合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記二官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)と前記多官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)の重量比が(b1):(b2)=10:90〜90:10であることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
平均粒径が10μm以下の有機粒子又は無機粒子を含有してなる請求項1または2のいずれかに記載の合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の合成樹脂製床材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を表面に被覆し硬化してなる合成樹脂製床材。

【公開番号】特開2012−136673(P2012−136673A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291509(P2010−291509)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】