説明

合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法

【課題】 合成樹脂製義歯床の製造方法における脱ろう工程を1工程で、簡単にかつ確実に実施し、ろうの略すべてを回収する。清掃作業に手間がかからず、大規模な脱ろう設備が不要で、安全性の高い圧力鍋式脱ろう方法を提供する。
【解決手段】 圧力容器の中に溶融ろう収納用内部容器3を備え、該内部容器3の貫通孔25を有する上壁の上面に義歯床成形用フラスコ10を、これのスプルー孔22およびベント孔23のうちのいずれか一方の孔を下側に位置するようにかつ該孔と貫通孔25とが連通するように載置して固定する。加熱手段11による加熱により、圧力容器内に水蒸気を発生させ、フラスコ10内のろう製義歯床模型を溶融させ、溶融ろうを内部容器3内に落下させ、圧力容器内の水蒸気をフラスコ10のろう製義歯床模型跡の空間部21内を通過させて、水蒸気排出手段13により圧力容器の外部に逃がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製義歯床の製造方法としては、例えば下記の特許文献1に記載のように、ろう製義歯床模型埋没工程、脱ろう工程、乾燥・離型剤塗布工程、合成樹脂注入工程、重合工程、義歯床取り出し工程よりなるものが知られている。
【特許文献1】特公平7−4395号公報 特許文献1に開示されている義歯床の製造方法では、ろう製義歯床模型埋没工程において、セラミック製ないしプラスチック製の義歯を載せたろう製の義歯床模型をフラスコ内に配して、プラスチック製底板に固定用石膏で固定する。固定位置は義歯床模型の上端とフラスコのベント口の高さがほぼ等しくなるように設定する。つぎに、義歯床模型の側部にフラスコのベント口に至るベント用ろう線を設けると共に義歯床模型の頂部にろうスプルー用ろう線を立ち上がり状に設ける。そして、フラスコ内に埋没用石膏を流入して義歯床模型を石膏中に埋没させる。その後、フラスコに蓋をし、蓋のスプルー口にスプルー用ろう線を通し、蓋をボルトでフラスコの上端面に固定する。
【0003】
脱ろう工程では、2つのフラスコをポット内に配置してフラスコ蓋のスプルー口に分岐管の各射出ノズルをそれぞれ差し込み、分岐管の基端部を導管に接続具によって接続する。そして、瞬間湯沸機から導管を経て来る温度95〜100℃程度の熱湯を射出ノズルによって約15分間射出し、義歯床模型のろうを融解して、融解物をベント口から排出させる。このとき、ポット内には熱湯が溜まり、排水口よりオーバーフローする。融解したろうは熱湯と共にポットから排出される。ついで、ポットの排水弁を開いて熱湯を排出する。水位の低下後、ベント口からろうの排出がないことを確認し、さらに25分間熱湯射出を続け、脱ろうを完了する。こうして、脱ろうによって石膏型を形成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された方法では、脱ろう工程において、ポット内に配置したフラスコ蓋のスプルー口に分岐管の射出ノズルを差し込み、瞬間湯沸機から温度95〜100℃程度の熱湯を射出ノズルによって射出して、フラスコ内に注入し、義歯床模型のろうを融解して融解物をベント口から排出させ、ポット内には熱湯が溜まるとともに、排水口よりオーバーフローし、融解したろうは熱湯と共にポットから排出されており、従って、このような特許文献1に記載の脱ろう方法では、融解したろうが熱湯と共に広くポット内に分散するために、ポット内がろうによって汚されるし、その後、排水口よりオーバーフローして排出された融解ろうを含む排出水は、通常、冷却してろうを凝固させ、固化したろうを回収するが、融解ろう含有排出水の処理量が非常に多いため、ろうの回収作業が非常に困難であるという問題があった。しかもろう含有排出水の処理を充分に行なわないで、これを廃棄すると、河川が汚染されるなどの環境汚染の問題が生じるし、上記のように、熱湯に含まれるろうによって汚されたポットの清掃作業は、非常に面倒であり、結局、脱ろう工程に手間がかゝるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、合成樹脂製義歯床の製造方法における義歯床成形用フラスコ内のろう製義歯床模型の脱ろう工程を1工程で、非常に簡単にかつ確実に実施することができて、作業性に優れているとともに、ろうをほゞすべて回収することができ、しかも脱ろう用圧力容器の内部をろうで汚すことが全くなく、かつろうの飛散等は皆無で、脱ろう用圧力容器等の清掃作業が非常に簡単で手間がかからず、また、規模の大きな脱ろう設備が不要であり、さらに、フラスコキャビティに対して洗浄能力を持つため、完全な脱ろう工程を非常に効率よく実施することができ、なおかつ安全性が非常に高い、合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、脱ろう用圧力容器本体の中に内部容器を備え、内部容器の貫通孔を有する上壁上面に義歯床成形用フラスコを載置してセットした後、圧力容器本体の底部に水を入れておき、ついで加熱手段によって圧力容器本体を加熱して、圧力容器本体内に水蒸気を発生させることにより、義歯床成形用フラスコ内のろう製義歯床模型が融解して、溶融ろうが内部容器内に落下し、脱ろうによって形成されたフラスコ内のろう製義歯床模型跡の空間部(キャビティ)に水蒸気が侵入し、この水蒸気を、内部容器の中から水蒸気逃がし手段を通して圧力容器本体の外部に逃がすことにより、ろう製義歯床模型を完全に溶融除去し得ることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法であって、圧力容器本体の中に溶融ろう収納用内部容器を備え、該内部容器の貫通孔を有する上壁の上面に、義歯床成形用フラスコを、これのスプルー孔およびベント孔のうちのいずれか一方の孔を下側に位置するようにかつ該孔と貫通孔とが連通するように載置して固定し、内部容器と圧力容器本体の側壁部との間には、ろう溶融時に義歯床成形用フラスコのろう製義歯床模型跡の空間部内に侵入する水蒸気を圧力容器本体の外部に逃がす水蒸気排出手段を設けておき、圧力容器本体の底部内に水を入れた後、圧力容器本体の上面に蓋を被せてセットし、ついで加熱手段によって圧力容器を加熱して、圧力容器内に水蒸気を発生させるとともに、義歯床成形用フラスコ内のろう製義歯床模型を溶融させ、溶融ろうを、フラスコのスプルー孔およびベント孔のうちの下側に位置する孔および内部容器上壁の貫通孔を通って内部容器内に落下させ、脱ろう中または脱ろう後に、圧力容器内の水蒸気を、義歯床成形用フラスコのスプルー孔およびベント孔のうちの上側に位置する孔より、ろう製義歯床模型跡の空間部内を通過して、同フラスコのスプルー孔およびベント孔のうちの下側に位置する孔から内部容器上壁の貫通孔を経て内部容器内に侵入させた後、水蒸気排出手段により圧力容器の外部に逃がすようになされていることを特徴としている。
【0008】
本発明の合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法における圧力容器は、圧力鍋であることが好ましい。
【0009】
また、上記において、溶融ろう収納用内部容器の上壁が、内部容器の上端開口部に被せ止められた内蓋によって構成され、内部容器の中にろう受け皿が出し入れ自在に収められているのが、好ましい。
【0010】
さらに、上記において、溶融ろう収納用内部容器の上壁上面に、義歯床成形用フラスコを固定具により固定することが好ましい。
【0011】
また、上記において、溶融ろう収納用内部容器の上壁にろう加熱用補助ヒータ(内部加熱手段)が組み込まれており、ガスこんろ等の外部加熱手段によって圧力容器本体を加熱し、圧力容器内に水蒸気を発生させて、義歯床成形用フラスコ内のろう製義歯床模型を溶かす際に、同時に補助ヒータにより義歯床成形用フラスコを加熱して、その中のろう製義歯床模型を溶かし、溶融ろうを、内部容器内に落下せしめることが好ましい。
【0012】
本発明による上記脱ろう方法においては、脱ろう後、さらに圧力容器本体の蓋を取り外して、義歯床成形用フラスコを圧力容器本体より取り出し、内部容器内のろうを回収するものである。
【0013】
請求項7の発明は、本発明による上記の脱ろう方法において、水蒸気排出手段の圧力容器本体外側部分に、切替えバルブを設けて、水蒸気排出手段による流路が、水蒸気排出ノズル側の出口と、リリーフ弁側の出口とに切り替えられるようにして、加熱手段による加熱で圧力容器内に水蒸気を発生させる初期の段階では、切替えバルブにより水蒸気排出手段の流路を水蒸気排出ノズル側の出口に連なるように設定ししておき、この状態で、圧力容器を加熱して、義歯床成形用フラスコ内のろう製義歯床模型を溶融させ、溶融ろうを、フラスコのスプルー孔およびベント孔のうちの下側に位置する孔および内部容器上壁の貫通孔を通って内部容器内に落下させるとともに、圧力容器内の水蒸気を、義歯床成形用フラスコのろう製義歯床模型跡の空間部内を通過させて、水蒸気排出手段の水蒸気排出ノズルより圧力容器の外部に逃がすようにし、ついで、切替えバルブを操作して、水蒸気排出手段の流路をリリーフ弁側の出口に連なるように設定し、さらに加熱手段によって圧力容器を加熱して、圧力容器内を所定の高温高圧に保持し、圧力容器の内部圧力が所定の高温高圧に達すると、水蒸気がリリーフ弁側の出口よりリークして、圧力容器内の高温高圧の水蒸気が、フラスコのろう製義歯床模型跡の空間部内を通過して、水蒸気排出手段を通じて、圧力容器の外部に一挙に逃がされ、フラスコ内のろう製義歯床模型を完全に溶融除去することを特徴としている。
【0014】
なお、この場合、リリーフ弁に代えて、水蒸気排出ノズルの口径より小さい口径を有する小口径穴排出ノズルを用いることもできる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法であって、圧力容器本体の中に溶融ろう収納用内部容器を備え、該内部容器の貫通孔を有する上壁の上面に、義歯床成形用フラスコを、これのスプルー孔およびベント孔のうちのいずれか一方の孔を下側に位置するようにかつ該孔と貫通孔とが連通するように載置して固定し、内部容器と圧力容器本体の側壁部との間には、ろう溶融時に義歯床成形用フラスコのろう製義歯床模型跡の空間部内に侵入する水蒸気を圧力容器本体の外部に逃がす水蒸気排出手段を設けておき、圧力容器本体の底部内に水を入れた後、圧力容器本体の上面に蓋を被せてセットし、ついで加熱手段によって圧力容器を加熱して、圧力容器内に水蒸気を発生させるとともに、義歯床成形用フラスコ内のろう製義歯床模型を溶融させ、溶融ろうを、フラスコのスプルー孔およびベント孔のうちの下側に位置する孔および内部容器上壁の貫通孔を通って内部容器内に落下させ、脱ろう中または脱ろう後に、圧力容器内の水蒸気を、義歯床成形用フラスコのスプルー孔およびベント孔のうちの上側に位置する孔より、ろう製義歯床模型跡の空間部内を通過して、同フラスコのスプルー孔およびベント孔のうちの下側に位置する孔から内部容器上壁の貫通孔を経て内部容器内に侵入させた後、水蒸気排出手段により圧力容器の外部に逃がすようになされているもので、本発明の方法によれば、1工程で確実に脱ろうすることができて、作業性に優れている。溶融ろうは、内部容器内に落下させるので、ほゞすべてのろうを回収することができる。しかも、脱ろう用圧力容器の内壁部には、ろうが全く付着しないので、ろうで圧力容器を汚すことが全くなく、かつろうの飛散等が皆無で、脱ろう工程に手間がかからない。また、規模の大きな脱ろう設備は、全く不要であり、さらに、脱ろう後のフラスコキャビティ(ろう製義歯床模型跡の空間部)内を水蒸気が通過するために、フラスコキャビティに対して洗浄能力を持つことになり、確実な脱ろう工程を、簡単な作業で、効率よく実施することができる。なおかつ、作業員は、水蒸気や融解ろうには、接触しないので、安全性が非常に高いという効果を奏する。
【0016】
請求項7の発明は、上記の脱ろう方法であって、水蒸気排出手段の圧力容器本体外側部分に、切替えバルブを設けて、水蒸気排出手段による流路が、水蒸気排出ノズル側の出口と、リリーフ弁側の出口とに切り替えられるようにして、加熱手段による加熱で圧力容器内に水蒸気を発生させる初期の段階では、切替えバルブにより水蒸気排出手段の流路を水蒸気排出ノズル側の出口に連なるように設定ししておき、この状態で、圧力容器を加熱して、義歯床成形用フラスコ内のろう製義歯床模型を溶融させ、溶融ろうを、フラスコのスプルー孔およびベント孔のうちの下側に位置する孔および内部容器上壁の貫通孔を通って内部容器内に落下させるとともに、圧力容器内の水蒸気を、義歯床成形用フラスコのろう製義歯床模型跡の空間部内を通過させて、水蒸気排出手段の水蒸気排出ノズルより圧力容器の外部に逃がすようにし、ついで、切替えバルブを操作して、水蒸気排出手段の流路をリリーフ弁側の出口に連なるように設定し、さらに加熱手段によって圧力容器を加熱して、圧力容器内を所定の高温高圧に保持し、圧力容器の内部圧力が所定の高温高圧に達すると、水蒸気がリリーフ弁側の出口よりリークして、圧力容器内の高温高圧の水蒸気が、フラスコのろう製義歯床模型跡の空間部内を通過して、水蒸気排出手段を通じて、圧力容器の外部に一挙に逃がされ、フラスコ内のろう製義歯床模型を完全に溶融除去するもので、本発明によれば、ろうを完全にかつ確実に回収することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の合成樹脂床義歯の製造方法の第1実施形態において使用される脱ろう装置の縦断面図、図2は、同分解縦断面図である。図3は、本発明の合成樹脂床義歯の製造方法において使用される脱ろう装置の概略斜視図である。図4は、本発明の合成樹脂床義歯の製造方法において使用される脱ろう装置の圧力蓋を取り外した状態の平面図、図5は、図1のAーA線に沿う断面図である。
【0019】
図1〜図5を参照すると、本発明の合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう装置において、(1)は例えばステンレス鋼製の圧力鍋本体よりなる圧力容器本体、(2)はその蓋、(3)は圧力容器本体(1)の内部に設けられた上方開口内部容器、(4)はこの上方開口内部容器(3)内に出し入れ自在に収められたろう受け皿、(5)は内部容器(3)の上面に被せられた内蓋で、内蓋(5)は、一対の貫通孔(25)(25)を有している。
【0020】
(6)は圧力容器本体(1)内において内部容器(3)の内蓋(5)上に載置された義歯床成形用フラスコ(10)を固定する固定具で、これには、圧力容器本体(1)内の上部に渡し止められる固定バー(30)と、固定バー(30)の雌ねじ孔(33)にねじ込まれたボルト(32)の下端部に取り付けられかつ固定バー(30)と略平行な押えバー(31)と、押えバー(31)に立設されかつ固定バー(30)のピン挿通孔(34)(34)に挿通された一対の有頭抜け止めピン(35)(35)とを備えている。押えバー(31)には、義歯床成形用フラスコ(10)の上部孔(スプルー孔)(22)に連通する水蒸気通過孔(36)が設けられている。
【0021】
(7)(7)は圧力容器本体(1)の胴壁部内面の上部に互いに対向状に設けられた固定具取付用内方凸部で、この実施形態では、固定具取付用内方凸部(7)(7)に連なりかつ圧力容器本体(1)の胴壁部内面に互いに対向状に取り付けられた垂直状連結板(8)(8)と、両連結板(8)(8)の下端に連なりかつ圧力容器本体(1)の底部寄り部分に水平状に渡された取付板(9)とが、1枚のステンレス鋼製の帯板によって構成されている。
【0022】
(10)はろう製義歯床模型が埋没された義歯床成形用フラスコで、セラミック製ないしプラスチック製の義歯を載せたろう製の義歯床模型の埋没方法は、従来の方法と同じである。各フラスコ(10)は、2つの割り型(10a)(10b)よりなり、これらの割り型(10a)(10b)同士がボルト等の締結手段(図示略)で締結されている。
【0023】
(11)は圧力容器本体(1)を加熱するガスこんろ、(12)は圧力容器本体(1)の底部分に入れられた水で、この実施形態では、内部容器(3)が、圧力容器本体(1)の底部寄り部分に水平状に渡された取付板(9)上に固定されて、内部容器(3)より下方の圧力容器本体(1)の底部分に、水が入れられるようになされている。
【0024】
(13)は水蒸気逃がし手段(水蒸気逃がしパイプ)で、これは、内部容器(3)の側壁上部に貫通状に取り付けられた第1管継手(14)と、圧力容器本体(1)の胴壁上部に貫通状に取り付けられかつ圧力容器本体(1)外の管継手端部寄り部分に水蒸気排出ノズル(16)を有する第2管継手(15)とを連結し、内部容器(3)内に侵入する水蒸気を、圧力容器本体(1)の外部に逃がすためのものである。
【0025】
(18)は圧力容器本体(1)の胴壁上端部に所定間隔おきに設けられた6個の係合用外方凸部で、これらは、圧力容器本体(1)の上端部に蓋(2)が被せられた際、蓋(2)の垂下状周壁(37)下端部に所定間隔おきに設けられた6個の係合用内方凸部(38)と係り合わせられるものである。圧力容器本体(1)の胴壁上端部と蓋(2)の周縁部内面との間には、パッキン(19)が介在させられている。
【0026】
(20)は義歯床成形用フラスコ(10)内の空間部で、ろう製義歯床模型埋没工程においては、セラミック製ないしプラスチック製の義歯を載せたろう製の義歯床模型をフラスコ(10)の空間部(20)内に配して、固定用石膏で固定する。つぎに、義歯床模型の側部にフラスコ(10)の上部孔(スプルー孔)(22)に至るスプルー用ろう線(図示略)を設けるとともに、義歯床模型の頂部にベント用ろう線(図示略)をに設ける。そして、フラスコ(10)の空間部(20)内に埋没用石膏を流入して義歯床模型を石膏中に埋没させる。
【0027】
なお、各義歯床成形用フラスコ(10)は、これの上部孔(スプルー孔)(22)と下部孔(ベント孔)(23)を上下にしてかつフラスコ(10)の下部孔(ベント孔)(23)および内蓋(5)の貫通孔(25)を相互に連通させるように内蓋(5)の上面に載置する。
【0028】
(21)は脱ろう工程において義歯床成形用フラスコ(10)内のろう製義歯床模型が溶かされて、フラスコ(10)内に形成されたろう製義歯床模型跡の空間部である。このろう製義歯床模型跡の空間部(21)は、フラスコ(10)の上部孔(スプルー孔)(22)と、同下部孔(ベント孔)(23)とに連通している。
【0029】
(24)(24)は義歯床成形用フラスコ(10)の下面に設けられた一対の位置決め用凹部で、これらには、内部容器(3)の内蓋(5)上面の所定の4箇所に設けられた位置決め用凸部(28)(28)が嵌め入れられて、内蓋(5)の上面に、2個の義歯床成形用フラスコ(10)が正しい位置に載置される。このとき、義歯床成形用フラスコ(10)は、これの上部孔(スプルー孔)(22)と下部孔(ベント孔)(23)を上下にしてかつフラスコ(10)の下部孔(ベント孔)(23)および内蓋(5)の貫通孔(25)を相互に連通させるように、内蓋(5)の上面に載置される。なお、フラスコ(10)の下部孔(ベント孔)(23)の周縁部および内蓋(5)の貫通孔(25)の周縁部には、パッキン(O−リング)(26)が介在させられている。また、内蓋(5)は、中央の厚肉部(5a)と、これの周縁に連なる薄肉周縁部(5b)とによって構成され、内蓋厚肉部(5a)の周面と、内部容器(3)の胴壁部(3a)上端部の内面との間にパッキン(27)が介在させられている。
【0030】
(40)(41)は圧力容器本体(1)の胴壁上端部の外面に互いに対向状に設けられた一対の下部把手で、これらの上面には、係合用凹溝(42)(42)が平面よりみて反時計回りの方向に開口するように設けられている。(44)(45)は蓋(2)側互いに対向状に設けられた一対の上部把手で、これらの下面には、上記係合用凹溝(42)(42)に嵌まり合う係合用凸部(43)(43)が設けられている。蓋(2)の中央部には摘み部(46)が取り付けられている。
【0031】
本発明の合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法において、この実施形態では、圧力容器本体(1)の内部において上方開口内部容器(3)が、圧力容器本体(1)の底部寄り部分に水平状に渡された取付板(9)上に固定されており、内部容器(3)より下方の圧力容器本体(1)の底部内に水を入れるとともに、内部容器(3)内にろう受け皿(4)を出し入れ自在に収めておく。ついで、内部容器(3)の上面に、貫通孔(25)を有する内蓋(5)を被せた後、2個の義歯床成形用フラスコ(10)を、それぞれの上部孔(スプルー孔)(22)と下部孔(ベント孔)(23)を上下にしてかつフラスコ(10)の下部孔(ベント孔)(23)および内蓋(5)の貫通孔(25)を相互に連通させるように内蓋(5)の上面に載置する。このとき、義歯床成形用フラスコ(10)の下面に設けられた一対の位置決め用凹部(24)(24)に、内部容器(3)の内蓋(5)上面の所定の4箇所に設けられた位置決め用凸部(28)(28)を嵌め入れることにより、内蓋(5)の上面に、2個の義歯床成形用フラスコ(10)が正しい位置に載置される。
【0032】
なお、義歯床成形用フラスコ(10)の上部孔(スプルー孔)(22)と下部孔(ベント孔)(23)とは、これらのうちのいずれか一方を上に、同他方を下にして、内蓋(5)の上面に載置すればよいので、図示の場合とは逆に、スプルー孔(22)を下に、ベント孔(23)を上にして、かつフラスコ(10)の下側のスプルー孔(22)および内蓋(5)の貫通孔(25)を相互に連通させるように内蓋(5)の上面に載置する場合もあるものとする。
【0033】
そして、固定具(6)により2個の義歯床成形用フラスコ(10)(10)を上から固定する。すなわち、内部容器(3)に被せられた内蓋(5)に載置された義歯床成形用フラスコ(10)(10)上に、固定具(6)の押えバー(31)を渡すように載せた状態で、ボルト(32)を固定バー(30)の雌ねじ孔(33)にねじ込むことにより、相対的に固定バー(30)が上昇して、固定バー(30)の両端部が、圧力容器本体(1)の胴壁部内面上部の内方凸部(7)(7)に下から係り合わせられるとともに、押えバー(31)が下方に押し込まれて、2個の義歯床成形用フラスコ(10)(10)が内部容器(3)の内蓋(5)上面に押し付けられて同時に固定される。
【0034】
両フラスコ(10)(10)の固定後、圧力容器本体(1)の上面に蓋(2)を被せてセットする。このとき、圧力容器本体(1)の上面に被せた蓋(2)を平面よりみて時計回りの方向に回すと、蓋(2)側の上部把手(44)(45)の下面に設けられた係合用凸部(43)(43)が、圧力容器本体(1)側の下部把手(40)(41)の上面の係合用凹溝(42)(42)に嵌まり合い、圧力容器本体(1)の上面に蓋(2)がしっかりと被せ止められる。
【0035】
ついで、ガスこんろ(加熱手段)(11)によって圧力容器本体(1)を加熱して、圧力容器内に水蒸気を発生させるとともに、義歯床成形用フラスコ(10)内のろう製義歯床模型を溶かし、溶融ろうを、フラスコ(10)の下部孔(ベント孔)(23)および内蓋(5)の貫通孔(25)を通って内部容器(3)内のろう受け皿(4)上に落下せしめる。
【0036】
そして、脱ろう中または脱ろう後に、水蒸気が義歯床成形用フラスコ(10)の上部孔(スプルー孔)(22)よりろう製義歯床模型跡の空間部(21)内に侵入し、さらに水蒸気が同フラスコ(10)の下部孔(ベント孔)(23)および内蓋(5)の貫通孔(25)を通って内部容器(3)内に侵入した後、水蒸気逃がし手段(13)によって圧力容器の外部に逃がされる。このように、義歯床成形用フラスコ(10)内のろう製義歯床模型跡の空間部(21)に水蒸気を通すことにより、ろう製義歯床模型を完全に溶融除去するものである。
【0037】
脱ろう操作の終了後は、圧力容器本体(1)上面の蓋(2)を、平面よりみて反時計回りの方向に回して取り外し、固定具(6)による義歯床成形用フラスコ(10)の固定を解除して、圧力容器本体(1)内より義歯床成形用フラスコ(10)を取り出す。さらに、内部容器(3)上面の内蓋(5)を取り外して、溶融ろう入りのろう受け皿(4)を取り出して、ろうを回収する。
【0038】
本発明の上記の方法によれば、義歯床成形用フラスコ(10)内のろう製義歯床模型を、1工程で確実に脱ろうすることができて、作業性に優れている。溶融ろうは、内部容器(3)内のろう受け皿(4)上に落下させるので、ほゞすべてのろうを回収することができる。しかも、脱ろう用圧力容器本体(1)および蓋(2)の内壁部には、ろうが全く付着しないので、ろうで圧力容器本体(1)および蓋(2)を汚すことが全くなく、かつろうの飛散等が皆無で、脱ろう工程に手間がかからない。また、規模の大きな脱ろう設備は、全く不要であり、さらに、脱ろう後のフラスコキャビティ(ろう製義歯床模型跡の空間部)(21)内を水蒸気が通過するために、フラスコキャビティに対して洗浄能力を持つことになり、確実な脱ろう工程を、簡単な作業で、効率よく実施することができる。なおかつ、作業員は、水蒸気や融解ろうには、接触しないので、安全性が非常に高いものである。
【0039】
図6は、本発明の合成樹脂床義歯の製造方法の第2実施形態において使用される脱ろう装置の例を示す概略斜視図である。
【0040】
同図を参照すると、本発明の合成樹脂床義歯の製造方法の第2実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、水蒸気排出手段(13)の構造にある。
【0041】
すなわち、水蒸気逃がし手段(水蒸気逃がしパイプ)(13)の第2管継手(15)の圧力容器本体(1)外側の管継手端部寄り部分に、三方ボールバルブ(切替えバルブ)(50)が取り付けられており、該バルブ(50)の切替えレバー(51)の操作により、第2管継手(15)による流路が、水蒸気排出ノズル(52)側の出口と、リリーフ弁(53)側の出口とに切り替えられるものである。
【0042】
このような本発明の第2実施形態においては、ガスこんろよりなる加熱手段(11)によって圧力容器を加熱して、圧力容器内に水蒸気を発生させる初期の段階では、三方ボールバルブ(50)の切替えレバー(51)を操作して、水蒸気排出手段(13)の第2管継手(15)による流路を水蒸気排出ノズル(52)側の出口に連なるように設定しておく。
【0043】
そして、圧力容器を加熱して、義歯床成形用フラスコ(10)内のろう製義歯床模型を溶融させ、溶融ろうを、フラスコ(10)のスプルー孔(22)およびベント孔(23)のうちの下側に位置する孔および内部容器(3)上壁の貫通孔(25)を通って内部容器(3)内に落下させるとともに、圧力容器内の水蒸気を、義歯床成形用フラスコ(10)のろう製義歯床模型跡の空間部(21)内を通過させて、水蒸気排出手段(13)の水蒸気排出ノズル(52)より圧力容器の外部に逃がすようにする。
【0044】
その後、三方ボールバルブ(50)の切替えレバー(51)を操作して、第2管継手(15)による流路をリリーフ弁(53)側の出口に連なるように設定する。そして、さらに加熱手段(11)によって圧力容器を加熱すると、圧力容器内の圧力は上昇し、温度も高くなる。
【0045】
この場合、圧力容器内は、例えば100〜130℃の温度、および例えば0.10〜0.20MPa(約1.0〜2.0kg/cm)、好ましくは0.10〜0.17MPa(約1.0〜1.7kg/cm)の内部圧力に保持する。
【0046】
上記リリーフ弁(53)は、例えば内部圧力が0.10MPa(約1.0kg/cm)で水蒸気がリークするように設定されており、圧力容器の内部圧力が0.10MPa(約1.0kg/cm)に達すると、水蒸気がリークし、圧力容器内の高温高圧の水蒸気が、フラスコ(10)のろう製義歯床模型跡の空間部(21)内を通過して、水蒸気排出手段(13)を通じて、圧力容器の外部に一挙に逃がされ、フラスコ(10)内のろう製義歯床模型を完全に溶融除去することができるとともに、ろう製義歯床模型跡の空間部(21)内が洗浄されるものである。
【0047】
上記のようなリリーフ弁(53)としては、例えば、山本産業株式会社製の逆止弁(クラッキング圧1.0kg/cm)を使用するのが、好ましい。
【0048】
なお、図6のその他の点は、上記図3の場合と同様であるので、図面において同一のものには同一の符号を付した。
【0049】
その他、図示は省略したが、内部容器(3)の上面に被せられた内蓋(5)に、ろう加熱用補助ヒータを組み込んでおき、ガスこんろ(外部加熱手段)(11)によって圧力容器本体(1)を加熱し、圧力容器内に水蒸気を発生させて、義歯床成形用フラスコ(10)内のろう製義歯床模型を溶かす際に、同時に補助ヒータを作動させて、内蓋(5)上に載置された義歯床成形用フラスコ(10)を急速に加熱し、その中のろう製義歯床模型を速やかに溶かして、溶融ろうを、内部容器(3)内のろう受け皿(4)上に落下せしめるようにしても、良い。
【0050】
また、図示は省略したが、リリーフ弁(53)に代えて、水蒸気排出ノズル(52)の口径より小さい口径を有する小口径穴排出ノズルを用いても良い。
【0051】
ここで、水蒸気排出ノズル(52)の口径は、例えば2.5mm〜3.0mmであり、小口径穴排出ノズルの口径は、水蒸気排出ノズル(52)の口径より小さく、例えば0.8mm〜1.2mmである。
【0052】
上記の三方ボールバルブ(50)の切替えレバー(51)を操作して、第2管継手(15)による流路を、水蒸気排出ノズル(52)の口径より小さい口径を有する小口径穴排出ノズル(図示略)側に切り替えると、該小口径穴排出ノズルは、ノズル出口が狭いために、さらに加熱手段(11)による圧力容器を加熱により、圧力容器本体(圧力鍋)内の圧力が次第に上昇し、圧力容器内は、例えば100〜130℃の温度、および例えば0.10〜0.20MPa(約1.0〜2.0kg/cm)、好ましくは0.10〜0.17MPa(約1.0〜1.7kg/cm)の内部圧力に達する。
【0053】
その後、例えば三方ボールバルブ(50)の切替えレバー(51)を操作して、第2管継手(15)による流路を、大きい口径穴を有する水蒸気排出ノズル(52)の出口に連なるように戻すと、水蒸気が吐出し、圧力容器内の高温高圧の水蒸気が、フラスコ(10)のろう製義歯床模型跡の空間部(21)内を通過して、水蒸気排出手段(13)を通じて、圧力容器の外部に一挙に逃がされ、フラスコ(10)内のろう製義歯床模型を完全に溶融除去することができるとともに、ろう製義歯床模型跡の空間部(21)内が洗浄されるものである。
【0054】
なお、小口径穴排出ノズル(図示略)は、リリーフ弁(53)に比べて、構造が簡単で、故障しにくいので、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の合成樹脂床義歯の製造方法の第1実施形態において使用される脱ろう装置の縦断面図である。
【図2】同分解縦断面図である。
【図3】図1の脱ろう装置の概略斜視図である。
【図4】図1の脱ろう装置の圧力蓋を取り外した状態の平面図である。
【図5】図1のAーA線に沿う断面図である。
【図6】本発明の合成樹脂床義歯の製造方法の第2実施形態において使用される脱ろう装置の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1:圧力容器本体(圧力鍋)
2:蓋
3:上方開口内部容器
4:ろう受け皿
5:内蓋
6:固定具
7:固定具取付用内方凸部
10:義歯床成形用フラスコ
11:ガスこんろ(加熱手段)
12:水
13:水蒸気逃がし手段(水蒸気逃がしパイプ)
21:ろう製義歯床模型跡の空間部(フラスコキャビティ)
22:上部孔(スプルー孔)
23:下部孔(ベント孔)
25:貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法であって、圧力容器本体(1)の中に溶融ろう収納用内部容器(3)を備え、該内部容器(3)の貫通孔(25)を有する上壁の上面に、義歯床成形用フラスコ(10)を、これのスプルー孔(22)およびベント孔(23)のうちのいずれか一方の孔を下側に位置するようにかつ該孔と貫通孔(25)とが連通するように載置して固定し、内部容器(3)と圧力容器本体(1)の側壁部との間には、ろう溶融時に義歯床成形用フラスコ(10)のろう製義歯床模型跡の空間部(21)内に侵入する水蒸気を圧力容器本体(1)の外部に逃がす水蒸気排出手段(13)を設けておき、圧力容器本体(1)の底部内に水を入れた後、圧力容器本体(1)の上面に蓋(2)を被せてセットし、ついで加熱手段(11)によって圧力容器を加熱して、圧力容器内に水蒸気を発生させるとともに、義歯床成形用フラスコ(10)内のろう製義歯床模型を溶融させ、溶融ろうを、フラスコ(10)のスプルー孔(22)およびベント孔(23)のうちの下側に位置する孔および内部容器(3)上壁の貫通孔(25)を通って内部容器(3)内に落下させ、脱ろう中または脱ろう後に、圧力容器内の水蒸気を、義歯床成形用フラスコ(10)のスプルー孔(22)およびベント孔(23)のうちの上側に位置する孔より、ろう製義歯床模型跡の空間部(21)内を通過して、同フラスコ(10)のスプルー孔(22)およびベント孔(23)のうちの下側に位置する孔から内部容器(3)上壁の貫通孔(25)を経て内部容器(3)内に侵入させた後、水蒸気排出手段(13)により圧力容器の外部に逃がすようになされていることを特徴とする、合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法。
【請求項2】
圧力容器が、圧力鍋であることを特徴とする、請求項1に記載の合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法。
【請求項3】
溶融ろう収納用内部容器(3)の上壁が、内部容器(3)の上端開口部に被せ止められた内蓋(5)によって構成され、内部容器(3)の中にろう受け皿(4)が出し入れ自在に収められていることを特徴とする、請求項1または2に記載の合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法。
【請求項4】
溶融ろう収納用内部容器(3)の上壁上面に、義歯床成形用フラスコ(10)を固定具(6)により固定することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の脱ろう方法。
【請求項5】
溶融ろう収納用内部容器(3)の上壁にろう加熱用補助ヒータが組み込まれており、外部加熱手段(11)によって圧力容器本体(1)を加熱し、圧力容器内に水蒸気を発生させて、義歯床成形用フラスコ(10)内のろう製義歯床模型を溶かす際に、同時に補助ヒータにより義歯床成形用フラスコ(10)を加熱して、その中のろう製義歯床模型を溶かし、溶融ろうを、内部容器(3)内に落下せしめることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の脱ろう方法。
【請求項6】
脱ろう後、さらに圧力容器本体(1)の蓋(2)を取り外して、義歯床成形用フラスコ(10)を圧力容器本体(1)より取り出し、内部容器(3)内のろうを回収することを特徴とする、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の脱ろう方法。
【請求項7】
水蒸気排出手段(13)の圧力容器本体外側部分に、切替えバルブ(50)を設けて、水蒸気排出手段(13)による流路が、水蒸気排出ノズル(52)側の出口と、リリーフ弁(53)側の出口とに切り替えられるようにして、加熱手段(11)による加熱で圧力容器内に水蒸気を発生させる初期の段階では、切替えバルブ(50)により水蒸気排出手段(13)の流路を水蒸気排出ノズル(52)側の出口に連なるように設定ししておき、この状態で、圧力容器を加熱して、義歯床成形用フラスコ(10)内のろう製義歯床模型を溶融させ、溶融ろうを、フラスコ(10)のスプルー孔(22)およびベント孔(23)のうちの下側に位置する孔および内部容器(3)上壁の貫通孔(25)を通って内部容器(3)内に落下させるとともに、圧力容器内の水蒸気を、義歯床成形用フラスコ(10)のろう製義歯床模型跡の空間部(21)内を通過させて、水蒸気排出手段(13)の水蒸気排出ノズル(52)より圧力容器の外部に逃がすようにし、ついで、切替えバルブ(50)を操作して、水蒸気排出手段(13)の流路をリリーフ弁(53)側の出口に連なるように設定し、さらに加熱手段(11)によって圧力容器を加熱して、圧力容器内を所定の高温高圧に保持し、圧力容器の内部圧力が所定の高温高圧に達すると、水蒸気がリリーフ弁(53)側の出口よりリークして、圧力容器内の高温高圧の水蒸気が、フラスコ(10)のろう製義歯床模型跡の空間部(21)内を通過して、水蒸気排出手段(13)を通じて、圧力容器の外部に一挙に逃がされ、フラスコ(10)内のろう製義歯床模型を完全に溶融除去することを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法。
【請求項8】
リリーフ弁(53)に代えて、水蒸気排出ノズル(52)の口径より小さい口径を有する小口径穴排出ノズルを用いることを特徴とする、請求項7に記載の合成樹脂製義歯床の製造方法において用いられる脱ろう方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−167810(P2008−167810A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1503(P2007−1503)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(507008703)
【Fターム(参考)】