説明

合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体及び合成皮革製造用エンボス付き離型紙

【課題】ポリウレタン合成皮革、ポリ塩化ビニル合成皮革、セミ合成皮革等の何れの合成皮革の製造に共通して利用でき、耐熱性を有し繰り返し使用に耐え、しかも光沢のある風合いを持った合成皮革を高い転写性で製造することができる合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体及びこの支持体を用いてなる合成皮革製造用エンボス付き離型紙を提供する。
【解決手段】合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体は片面にクレーコート層を有する原紙からなる。原紙は、230℃において3分間放置しても、JISP8113による引張り強さは、少なくとも縦方向で10KN/m以上に維持され、JISP8116による引裂き強さが、縦方向、横方向共に500mN以上に維持される耐熱性を有する中性紙であり、且つ前記クレーコート層は、原紙のパルプ繊維による表面凹凸を吸収するように100秒以上のJISP8119による平滑度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革製造用エンボス付き離型紙用の支持体及びこの支持体を用いてなる合成皮革製造用エンボス付き離型紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子線照射硬化性アクリレート系塗料組成物をエンボス加工したアルミニウム板に塗布し、そのアクリレート系塗料組成物の塗布面に、顔料/バインダーからなるベース被覆が施された紙ウェブを押圧し、前記塗料組成物の塗膜に紙ウェブの層を通して電子線を照射して前記塗料組成物の塗膜を硬化させ、次いでアルミニウム板から紙ウェブ及び硬化させた前記組成物の塗膜をアルミニウム板を剥離して合成皮革製造用エンボス付き離型紙を製造することが知られている(特許文献1参照)。また、エチレン性不飽和結合を有する化合物を主成分として含むコーティング材料を紙の片面少なくとも片面にコーティングして未硬化のコート層を形成し、次いでエンボス加工を行い、しかるのち前記コート層に電子線又は紫外線を照射して電離放射線硬化膜を形成してなるエンボス付き離型紙が知られている(特許文献2参照)。更に、クレーコート層を有する工程紙原紙からなる支持体に放射線硬化性樹脂層を設け、この放射線硬化性樹脂層上にアクリロイル基を含有するシリコーン樹脂層を塗布した支持体にエンボス加工を施し、次いで紫外線或いは電子線を照射することにより、放射線硬化性樹脂層及びアクリロイル基を含有するシリコーン樹脂層を硬化させてなるエンボス付き離型紙が知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特公昭63−2780号公報
【特許文献2】特公昭64−10626号公報
【特許文献3】特開平5−269931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載のように、電子線照射硬化性アクリレート系塗料組成物をエンボス加工したアルミニウム板に塗布してエンボス柄をキャスティングしたものは、エンボス再現性に優れるという利点を有する反面、合成皮革の製造に用いられる2液反応型ポリウレタンに使われる硬化剤のイソシアネートが離型紙表面の樹脂と反応して、剥離できなくなるという欠点がある。また電子線照射により紙の強度劣化が起きて繰り返し使用すると耐熱性、耐久性が低下し、合成皮革製造時に乾燥炉内で高温で剥離紙にテンションがかかると破断し易くなる。また樹脂の塗布量も40〜150g/m2と多いためコストも非常に高くなる。一方、特許文献2及び特許文献3に記載のように、紙基材上に放射線硬化性樹脂層を形成後にエンボス加工を施すものは、エンボス前の放射線硬化性樹脂層の表面の履歴が離型紙の表面に残るため、最終的な合成皮革に要求された光沢のある風合いを有する離型紙とするには、エンボス前の放射線硬化性樹脂の表面状態が大きな影響を持つ。クレーコートした紙を支持体として用いた離型紙においても紙の繊維の凹凸がエンボス前の放射線硬化性樹脂層の表面に出てそれがエンボス加工後の離型紙の表面状態に大きく影響することがある。また、紙基材の耐熱性が充分でないと、塩化ビニル樹脂合成皮革の製造時に200〜250℃の高温の乾燥炉内で剥離紙に高いテンションがかかることにより離型紙に伸び変形が生じ離型紙の破断が起こり繰り返し使用できなくなる。
本発明の課題は、ポリウレタン合成皮革、ポリ塩化ビニル合成皮革、セミ合成皮革等の何れの合成皮革の製造に共通して利用でき、耐熱性を有し繰り返し使用に耐え、しかも光沢のある風合いを持った合成皮革を高い転写性で製造することができる合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体及びこの支持体を用いてなる合成皮革製造用エンボス付き離型紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、上記の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体に関する課題を解決するもので、片面にクレーコート層を有する原紙からなり、前記原紙は、230℃において3分間放置しても、JISP8113による引張り強さは、少なくとも縦方向で10KN/m以上に維持され、JISP8116による引裂き強さが、縦方向、横方向共に500mN以上に維持される耐熱性を有する中性紙であり、且つ前記クレーコート層は、原紙のパルプ繊維による表面凹凸を吸収するように100秒以上のJISP8119による平滑度を有することを特徴とする合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体を要旨とするものである。
【0005】
本発明の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体は、230℃の温度に耐える高い耐熱性を有するので、本発明の合成皮革製造用離型紙の支持体を用いてなる合成皮革製造用離型紙は、塩化ビニル樹脂合成皮革の製造に必要な230℃の温度に耐える高い耐熱性を有し、合成皮革の製造工程において5回以上の繰り返し使用に耐え、転写の過程で離型紙の伸び等を生ずることなく高い転写精度で離型紙の型を転写して風合いのある合成皮革を形成する。また、クレーコート層が原紙のパルプ繊維による表面凹凸を吸収する100秒以上のJISP8119による平滑度を有するので、このクレーコート層の上に光沢のある電離放射線硬化性樹脂膜を形成し、エンボス加工を施し、しかる後電離放射線を照射してエンボス付き電離放射線硬化膜を形成し、光沢のある風合いを持った合成皮革を得ることができる合成皮革製造用離型紙を製造することができる。
【0006】
また、本発明の合成皮革製造用離型紙の支持体において、原紙のパルプとしては、必要な強度と平滑性を得るために針葉樹パルプ(N材)と広葉樹パルプ(L材)を混合したものが適しており、その場合、平滑性を高めるため、広葉樹パルプ(L材)の混合率は50〜90%が好ましい。広葉樹のパルプ(L材)の混合率が50%より低いと平滑性が低下し好ましくない。一方90%よりも高くなると原紙の強度が低下し好ましくない。
【0007】
原紙は、離型紙の充分な耐熱性を得るために、中性紙であることが必要であり、サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを用いてサイズした中性紙が好ましい。
【0008】
原紙の坪量は、製品としての強度、合成皮革加工作業性、離型紙の繰り返し使用耐久性及びエンボス加工適性の面から100〜200g/m2であることが好ましい。坪量が100g/m2よりも低いと合成皮革の製造時にカールや波打ちが発生し易くなる。逆に坪量が200g/m2より高くなるとエンボス加工性が悪く、また離型紙が厚くなることによりその巻き径が大きくなって作業能率が低下する。
【0009】
クレーの塗工量は、5〜40g/m2が好ましい。5g/m2よりも少ないと必要な平滑性が得られない。一方40g/m2より多くなるとエンボスの賦型性が低下する。
【0010】
請求項6に記載の発明は、上記の合成皮革製造用エンボス付き離型紙に関する課題を解決するもので、請求項1乃至5に記載の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体を用い、この支持体のクレーコート層上に電離放射線硬化性樹脂膜を設け、電離放射線硬化性樹脂膜にエンボスを施し、しかる後電離放射線を照射してエンボス付き電離放射線硬化膜を形成してなるものであることを特徴とする合成皮革製造用エンボス付き離型紙を要旨とする。
【0011】
本発明の合成皮革製造用エンボス付き離型紙は、耐熱性の支持体を備えるものであるので、塩化ビニル樹脂合成皮革の製造に必要な230℃の温度に耐える高い耐熱性を有し、合成皮革の製造工程において5回以上の繰り返し使用に耐え、転写の過程で離型紙の伸び等を生ずることなく高い転写精度で合成皮革の表皮層用ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル等に離型紙の型を転写することができるという利点を有するものである。また、本発明の合成皮革製造用離型紙は、原紙のパルプ繊維による表面の凹凸の影響を受けないクレーコート層上に設けた電離放射線硬化膜は光沢のある表面を有するので、光沢のある風合いを持った合成皮革製造用離型紙を製造することができるという利点を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体は、片面にクレーコート層を有する原紙からなり、前記原紙は、230℃において3分間放置しても、JISP8113による引張り強さは、少なくとも縦方向で10KN/m以上に維持され、JISP8116による引裂き強さが、縦方向、横方向共に500mN以上に維持される耐熱性を有する中性紙であり、且つ前記クレーコート層は、原紙のパルプ繊維による表面凹凸を吸収するように100秒以上のJISP8119による平滑度を有するものであるので、塩化ビニル樹脂合成皮革の製造に必要な230℃の温度に耐える高い耐熱性を有し、合成皮革の製造工程において5回以上の繰り返し使用に耐え、転写の過程で離型紙の伸び等を生ずることなく高い転写精度で離型紙の型を転写することができる離型紙を製造することができる。また、原紙のパルプ繊維による表面凹凸を吸収するクレーコート層上に光沢のある電離放射線硬化性樹脂膜を形成し、エンボス加工を施し、しかる後電離放射線を照射してエンボス付き電離放射線硬化膜を形成し、光沢のある風合いを持った合成皮革を得ることができる合成皮革製造用離型紙を製造することができる。
【0013】
また、本発明の合成皮革製造用離型紙は、前記した合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体を用い、この支持体のクレーコート層上に電離放射線硬化性樹脂膜を設け、電離放射線硬化性樹脂膜にエンボスを施し、しかる後電離放射線を照射してエンボス付き電離放射線硬化膜を形成してなるものであるので、塩化ビニル樹脂合成皮革の製造に必要な230℃の温度に耐える高い耐熱性を有し、合成皮革の製造工程において5回以上の繰り返し使用に耐え、転写の過程で離型紙の伸び等を生ずることなく高い転写精度で表皮層用ポリウレタン樹脂等に離型紙の型を転写することができ、しかも原紙のパルプ繊維による表面凹凸を吸収するクレーコート層上に形成したエンボス付き電離放射線硬化膜は光沢を有するので、本発明の合成皮革製造用離型紙によれば、光沢のある風合いを持った合成皮革を得ることができるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に図面を参照して本発明の合成皮革製造用離型紙の支持体について説明する。
【0015】
図1は本発明の合成皮革製造用離型紙の支持体を示す。
【0016】
本発明の合成皮革製造用離型紙の支持体1は、原紙2とその上に形成したクレーコート層3とからなる。原紙2は230℃において3分間放置しても、JISP8113による引張り強さは、少なくとも縦方向で10KN/m以上に維持され、JISP8116による引裂き強さが、縦方向、横方向共に500mN以上に維持される耐熱性を有する中性紙からなる。またその上に形成したクレーコート層3は原紙のパルプ繊維による表面凹凸を吸収するように100秒以上のJISP8119による平滑度を有するものである。
【0017】
本発明の合成皮革製造用離型紙の支持体1は、230℃において3分間放置しても、JISP8113による引張り強さは、少なくとも縦方向で10KN/m以上に維持され、JISP8116による引裂き強さが、縦方向、横方向共に500mN以上に維持される耐熱性を有する原紙2を含むものであるので、塩化ビニル樹脂合成皮革の製造に必要な230℃の温度に耐える高い耐熱性を有し、合成皮革の製造において5回以上繰り返し使用に耐え得るものである。
【0018】
原紙2のパルプとしては、必要な強度と平滑性を得るために針葉樹パルプ(N材)と広葉樹パルプ(L材)を混合したものが適しており、その場合、平滑性を高めるため、広葉樹パルプ(L材)の混合率は50〜90%が好ましい。広葉樹のパルプ(L材)の混合率が50%より低いと平滑性が低下し好ましくない。一方90%よりも高くなると原紙2の強度が低下するので好ましくない。尚、パルプ原料には填料、紙力向上剤、安定剤等を添加してもよい。
【0019】
原紙2は、離型紙の充分な耐熱性を得るために、中性紙であることが必要である。中性抄紙のサイズ剤として、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸、及びカチオン性ポリマーがあるが、その中でも比較的安定なアルキルケテンダイマーが好ましい。また定着剤として硫酸バンドを用いて抄紙したものは、200℃以上の高温下において紙の強度が著しく低下するので、硫酸バンドは用いるべきではない。
【0020】
原紙2の坪量は、離型紙製品としての強度、合成皮革加工作業性、離型紙の繰り返し使用耐久性及びエンボス加工適性等の面から、100〜200g/m2であることが望ましい。坪量が100g/m2よりも低いと合成皮革の製造時にカールや波打ちが発生し易くなる。逆に坪量が200g/m2より高くなるとエンボス加工性が悪く、また離型紙が厚くなることによりその巻き径が大きくなって作業能率が低下する。
【0021】
原紙2の抄造は、長網多筒抄紙機、短網多筒抄紙機、円網多筒抄紙機、長網・短網コンビネーション多筒抄紙機、長網・円網コンビネーション多筒抄紙機、長網ヤンキー抄紙機等により行うことができる。
【0022】
クレーコート層3は、スチレン・ブタジエンラテックス、酢酸ビニルラテックス、アクリルラテックス、澱粉、カゼイン等をバインダーとして、それにカオリン、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の無機顔料を含む塗料からなり、これらの塗料をエアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、トランスファロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、ノッチバーコーター、キャストコーター等のコーター、或いはこれらを組みあわせて用いて塗工してなるものである。好ましい塗工量は、必要な平滑性、JISP8119による平滑度で100秒以上の平滑性を得るために5〜40g/m2である。5g/m2より少ないと必要な平滑性が得られず、一方40g/m2よりも多いとエンボスの賦型性が低下する。
【0023】
原紙2へのクレーコーティングは抄紙工程に連続して行ってもよく、或いは別工程で行ってもよい。また、塗料のコーティング後更にカレンダーロールを通して表面平滑性を高めてもよい。
【0024】
本発明の合成皮革製造用離型紙の支持体1の最も好ましい実施の形態は、原紙2が広葉樹パルプ(L材)の混合率が50〜90%の広葉樹パルプと針葉樹パルプの混合パルプからなり、230℃において3分間放置しても、JISP8113による引張り強さは、少なくとも縦方向で10KN/m以上に維持され、JISP8116による引裂き強さが、縦方向、横方向共に500mN以上に維持される耐熱性を有するように抄紙した中性紙であり、原紙2の上に5〜40g/m2の塗布量でJISP8119による平滑度100秒以上のクレーコート層を形成したものである。このような合成皮革製造用離型紙の支持体においては、クレーコート層3の上に平滑な電離放射線硬化性樹脂層を形成することができ、この電離放射線硬化性樹脂層にエンボス加工を施し、しかる後電離放射線を照射してなる電離放射線硬化膜の表面には原紙2の繊維の凹凸の影響が見られない。
【0025】
図2は本発明の合成皮革製造用離型紙の支持体1を用いて形成してなる合成皮革製造用離型紙4を示す。
【0026】
本発明の合成皮革製造用離型紙4は、前記した合成皮革製造用離型紙の支持体1を用い、クレーコート層3上に電離放射線硬化性樹脂膜を形成し、この電離放射線硬化性樹脂膜にエンボス加工を施し、しかる後電離放射線を照射してエンボス6付き電離放射線硬化膜5を形成してなるものである。
【0027】
本発明の合成皮革製造用エンボス付き離型紙は、塩化ビニル樹脂合成皮革の製造に必要な230℃の温度に耐える高い耐熱性を有し、合成皮革の製造工程において5回以上の繰り返し使用に耐え、転写の過程で離型紙の伸び等を生ずることなく高い転写精度で合成皮革の表皮層用ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル等に離型紙の型を転写することができ、しかも原紙のパルプ繊維による表面は凹凸の影響を受けない光沢のある表面であるので、光沢のある風合いを持った合成皮革製造用離型紙を製造することができるという利点を有する。
【0028】
本発明において、電離放射線硬化性樹脂として、エチレン性不飽和結合を有する化合物、即ち、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルメタクリルアミド等の単官能モノマー、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能モノマー、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレートエポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレートアクリレートエチレンアクリルアミド、N,N′−(オキシジメチレン)ビスメタクリルアミド不飽和ポリエステル等のオリゴマー、プレポリマー又はこれらの混合物等を用いることができる。
【0029】
前記した電離放射線硬化性樹脂ははそのままで電子線による硬化性を有するので電子線照射の場合は単独使用してもよいが、紫外線照射の場合は、光開始剤として、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾインアルキルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、4,4′−ジクロルベンゾフェノン等を電離放射線硬化性樹脂に対して0.5〜5重合%配合したものをコーティング材料として用いる。
【0030】
次に実施例をあげて本発明につき説明する。
【実施例1】
【0031】
L材80%:N材20%でL材とN材を混合した漂白クラフトパルプを含むパルプスラリーに中性サイズ剤としてアルキルケテンダイマーをパルプ量に対して0.1%添加し、長網・短網コンビネーション多筒抄紙機で坪量140g/m2の原紙を抄紙し、その後抄紙工程に連続して前記原紙上にエアナイフコーターにより9g/m2のクレーコート層を形成し、更にカレンダーロールを通して平滑性を付与してクレーコート層を有する原紙を作成した。
【0032】
上記のようにして作成したクレーコート層を有する原紙について、JISP8119による表面の平滑度の測定(東洋精機社製デジタルベック平滑度測定機を使用)を行った。またJISP8113による引張り強さの測定(オリエンテック社製テンシロンRTC−1310Aを使用)と、JISP8116による引裂き強さの測定(テスター産業社製エレメンドルフ引裂き試験機を使用)を条件(1):常温(23℃、50%RH)下の測定と、条件(2):230℃に3分間放置後の測定(オーブンはヤマト科学社製 MUFFLE FURANCE FP−31を使用)の二条件下で行った。その結果は表1に示す通り、平滑度は153.8秒であり、また、引張り強さ及び引裂き強さに関しては、条件(2)においても、縦方向の引張り強さ(kN/m)は13.4kN/mと10kN/m以上あり、引裂き強さ(mN)は縦方向627mN、横方向627mNと縦方向、横方向共に500mN以上であることが分かった。
【0033】
上記のようにして作成したクレーコート層を有する原紙に対して、紫外線硬化性樹脂(三菱化学社製 ユピマーV−3031)に反応開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製 イルガキュア907)を樹脂固定分に対して重量比3%加え、それらをメチルエチルケトンに溶解させたコーティング材料を、リバースコーターを用いて溶剤蒸発乾燥後の重量で10g/m2となるように塗工し、溶剤を蒸発乾燥させて紫外線硬化性樹脂層を有する塗工基材を作成した。
【0034】
上記の塗工基材を鏡面仕上げしたカレンダーロール(由利ロール社製)に通して、カレンダーロールの鏡面を紫外線硬化性樹脂層の面に転写させて転写性を調べた。具体的には110℃のカレンダーロールの面が塗工基材の紫外線硬化性樹脂面に当たるようにして、且つ圧胴とカレンダーロールの間に線圧100kN/mを加えて転写を行い、しかる後転写面に高圧水銀灯ランプ(出力120W/cm)を用いて600mJ/cm2の紫外線照射を行い、紫外線硬化性樹脂を固化させ評価基材を形成した。
【0035】
上記の評価基材について、転写面の60°鏡面光沢度(Gs(60°))をスガ試験機社製デジタル変角光沢計を用いて測定し、転写性を評価した。その結果、表2に示すように、Gs(60°)は74%であり、転写性は良好であることが分かった。尚、転写性の評価の判定は、Gs(60°)≧80%:特に良好(◎)、80%>Gs(60°)≧70%:良好(○)、70%>Gs(60°)≧60%:劣る(△)、60%>Gs(60°):特に劣り使用不可(×)で示す。
【0036】
また、上記の評価基材を用いて繰り返しポリ塩化ビニル合成皮革の製造テストを行い同一基材での使用回数を調べて耐熱性の評価を行った。その結果上記の評価基材は5回以上の使用に耐え耐熱性は良好であることが分かった。尚、耐熱性評価の判定は、評価基材が破断せずに5回以上の使用が可能であったもの:耐熱性良好(○)、評価基材が5回未満で破断したもの:耐熱性劣る(×)で示す。
【実施例2】
【0037】
L材80%:N材20%でL材とN材を混合した漂白クラフトパルプを含むパルプスラリーに中性サイズ剤としてアルキルケテンダイマーをパルプ量に対して0.1%添加し、長網・短網コンビネーション多筒抄紙機で坪量140g/m2の原紙を抄紙し、その後抄紙工程に連続して前記原紙上にブレードコーターとエアナイフコーターにより18g/m2のクレーコート層を形成し、更にカレンダーロールを通して平滑性を付与してクレーコート層を有する原紙を作成した。
【0038】
上記のようにして作成したクレーコート層を有する原紙について、JISP8119による表面の平滑度の測定(東洋精機社製デジタルベック平滑度測定機を使用)を行った。またJISP8113による引張り強さの測定(オリエンテック社製テンシロンRTC−1310Aを使用)と、JISP8116による引裂き強さの測定(テスター産業社製エレメンドルフ引裂き試験機を使用)を条件(1):常温(23℃、50%RH)下の測定と、条件(2):230℃に3分間放置後の測定(オーブンはヤマト科学社製 MUFFLE FURANCE FP−31を使用)の二条件下で行った。その結果は表1に示す通り、平滑度は462.3秒と高く、また、引張り強さ及び引裂き強さに関しては、条件(2)においても、縦方向の引張り強さ(kN/m)は12.8kN/mと10kN/m以上あり、引裂き強さ(mN)は縦方向638mN、横方向578mNと縦方向、横方向共に500mN以上であることが分かった。
【0039】
上記のようにして作成したクレーコート層を有する原紙に対して、実施例1と同様にして紫外線硬化性樹脂層を有する塗工基材を作成した。
【0040】
上記の塗工基材を、実施例1と同様にして鏡面仕上げしたカレンダーロール(由利ロール社製)に通して、カレンダーロールの鏡面を紫外線硬化性樹脂層の面に転写させ、しかる後転写面に高圧水銀灯ランプ(出力120W/cm)を用いて600mJ/cm2の紫外線照射を行い、紫外線硬化性樹脂を固化させ評価基材を形成した。
【0041】
得られた評価基材にいて実施例1と同様にして転写面の60°鏡面光沢度(Gs(60°))の測定と転写性の判定を行った。その結果、表2に示すように、Gs(60°)は83%であり、転写性は特に良好であることが分かった。
【0042】
また、上記の評価基材を用いて繰り返しポリ塩化ビニル合成皮革の製造テストを行い同一基材での使用回数を調べて耐熱性の評価を行った。その結果上記の評価基材は5回以上の使用に耐え耐熱性は良好であることが分かった。
【0043】
[比較例1]
L材80%:N材20%でL材とN材を混合した漂白クラフトパルプを含むパルプスラリーに中性サイズ剤としてアルキルケテンダイマーをパルプ量に対して0.1%添加し、長網・短網コンビネーション多筒抄紙機で坪量140g/m2の原紙を抄紙してクレーコート層のない原紙を作成した。
【0044】
上記のようにして作成したクレーコート層のない原紙について、JISP8119による表面の平滑度の測定(東洋精機社製デジタルベック平滑度測定機を使用)を行った。またJISP8113による引張り強さの測定(オリエンテック社製テンシロンRTC−1310Aを使用)と、JISP8116による引裂き強さの測定(テスター産業社製エレメンドルフ引裂き試験機を使用)を条件(1):常温(23℃、50%RH)下の測定と、条件(2):230℃に3分間放置後の測定(オーブンはヤマト科学社製 MUFFLE FURANCE FP−31を使用)の二条件下で行った。その結果は表1に示す通り、平滑度は77.2秒と低く、また、引張り強さ及び引裂き強さに関しては、条件(2)においても、縦方向の引張り強さ(kN/m)は14.0kN/mと10kN/m以上あり、引裂き強さ(mN)は縦方向655mN、横方向605mNと縦方向、横方向共に500mN以上であることが分かった。
【0045】
上記のようにして作成したクレーコート層のない原紙に対して、実施例1と同様にして紫外線硬化性樹脂層を有する塗工基材を作成した。
【0046】
上記の塗工基材を、実施例1と同様にして鏡面仕上げしたカレンダーロール(由利ロール社製)に通して、カレンダーロールの鏡面を紫外線硬化性樹脂層の面に転写させ、しかる後転写面に高圧水銀灯ランプ(出力120W/cm)を用いて600mJ/cm2の紫外線照射を行い、紫外線硬化性樹脂を固化させ評価基材を形成した。
【0047】
得られた評価基材にいて実施例1と同様にして転写面の60°鏡面光沢度(Gs(60°))の測定と転写性の判定を行った。その結果、表2に示すように、Gs(60°)は52%と低く、転写性は特に劣り使用不可であることが分かった。
【0048】
[比較例2]
L材80%:N材20%でL材とN材を混合した漂白クラフトパルプを含むパルプスラリーにロジン系サイズ剤と定着剤として硫酸バンドを添加し、長網・短網コンビネーション多筒抄紙機で坪量140g/m2の原紙を抄紙し、その後抄紙工程に連続して前記原紙上にエアナイフコーターにより9g/m2のクレーコート層を形成し、更にカレンダーロールを通して平滑性を付与してクレーコート層を有する原紙を作成した。
【0049】
上記のようにして作成したクレーコート層を有する原紙について、JISP8119による表面の平滑度の測定(東洋精機社製デジタルベック平滑度測定機を使用)を行った。またJISP8113による引張り強さの測定(オリエンテック社製テンシロンRTC−1310Aを使用)と、JISP8116による引裂き強さの測定(テスター産業社製エレメンドルフ引裂き試験機を使用)を条件(1):常温(23℃、50%RH)下の測定と、条件(2):230℃に3分間放置後の測定(オーブンはヤマト科学社製 MUFFLE FURANCE FP−31を使用)の二条件下で行った。その結果は表1に示す通り、平滑度は77.2秒と低く、また、引張り強さ及び引裂き強さに関しては、条件(2)において、縦方向の引張り強さ(kN/m)は4.2kN/mと10kN/mより下であり、引裂き強さ(mN)は縦方向158mN、横方向125mNと縦方向、横方向共に500mNより下であることが分かった。
【0050】
上記のようにして作成したクレーコート層のない原紙に対して、実施例1と同様にして紫外線硬化性樹脂層を有する塗工基材を作成した。
【0051】
上記の塗工基材を、実施例1と同様にして鏡面仕上げしたカレンダーロール(由利ロール社製)に通して、カレンダーロールの鏡面を紫外線硬化性樹脂層の面に転写させ、しかる後転写面に高圧水銀灯ランプ(出力120W/cm)を用いて600mJ/cm2の紫外線照射を行い、紫外線硬化性樹脂を固化させ評価基材を形成した。
【0052】
得られた評価基材について実施例1と同様にして転写面の60°鏡面光沢度(Gs(60°))の測定と転写性の判定を行った。その結果、表2に示すように、Gs(60°)は73%と高く、転写性は良好であるが、しかし二回目の転写で破断がおこり耐熱性がなく実用的価値が低いことが分かった。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体及びそれを用いた合成皮革製造用エンボス付き離型紙はポリ塩化ビニル合成皮革及びポリウレタン合成皮革の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体の断面図である。
【図2】本発明の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 合成皮革製造用離型紙の支持体
2 原紙
3 クレーコート層
4 合成皮革製造用離型紙
5 電離放射線照射硬化膜
6 エンボス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面にクレーコート層を有する原紙からなり、前記原紙は、230℃において3分間放置しても、JISP8113による引張り強さは、少なくとも縦方向で10KN/m以上に維持され、JISP8116による引裂き強さが、縦方向、横方向共に500mN以上に維持される耐熱性を有し、且つ前記クレーコート層は、原紙のパルプ繊維による表面凹凸を吸収するように100秒以上のJISP8119による平滑度を有することを特徴とする合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体。
【請求項2】
前記原紙は広葉樹パルプを50〜90%含む広葉樹パルプと針葉樹パルプの混合パルプを用いて抄紙してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体。
【請求項3】
前記原紙はアルキルケテンダイマーでサイズした中性紙であることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体。
【請求項4】
前記原紙は100〜200g/m2の坪量を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体。
【請求項5】
前記クレーコート層は5〜40g/m2の塗工量を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の合成皮革製造用エンボス付き離型紙の支持体を用い、この支持体のクレーコート層上に電離放射線硬化性樹脂膜を設け、電離放射線硬化性樹脂膜にエンボスを施し、しかる後電離放射線を照射してエンボス付き電離放射線硬化膜を形成してなるものであることを特徴とする合成皮革製造用エンボス付き離型紙。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−2264(P2006−2264A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177446(P2004−177446)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】