合成移植片
本発明は角膜細胞、特に輪部角膜上皮幹細胞の増殖用基材としての塑性圧縮コラーゲンゲルの使用に関する。このような基材上で増殖させた細胞を培養して人工眼上皮を産生させ、眼毒性試験又は移植に使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は角膜細胞、特に輪部角膜上皮幹細胞の増殖用基材としての塑性圧縮コラーゲンゲルの使用に関する。このような基材上で増殖させた細胞を培養して人工眼上皮又は人工角膜組織を産生させ、眼毒性試験又は移植に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
商品化に先立ち、新規薬品や化粧品はこれらの新規薬品/化粧品の毒性を判定するためにドレイズウサギ眼刺激性試験等の眼毒性試験で試験する必要がある。眼は我々の日常環境に最も多く暴露され、化学的に感受性の末端器官であるため、この関連で使用されている。毎年何千羽ものウサギがこのような試験で使用されており、薬品や化粧品をウサギの目で試験するこの方法は過去50年間に殆ど変化していない。だが、ドレイズウサギ眼試験は倫理的な理由のみならず、ウサギとヒトの眼には大きな違いがあるため、科学的な理由からも批判されている。しかし、ドレイズ試験の代用として現在受け入れられている非動物試験はなく、ヨーロッパ法制の差し迫る変化に伴い、このような代用の必要が増すと思われる。
【0003】
動物モデルのインビトロ代用物の使用は臓器培養、ヒト細胞株及びヒトドナー組織を使用して従来検討されているが、これらのモデルの有効性は遺伝的不安定性、二次元組織培養の限界(上皮バリア機能をモデル化できない)、正常増殖及び分化の不足、種間の遺伝的多様性、並びに入手しにくさにより阻まれている。これらの理由から、三次元(3D)角膜モデルの必要性により、2種類の市販上皮モデル(SkinEthic Laboratories及びEpiOcular,MatTek Corp)が眼刺激試験のインビトロ代用物として最近開発されている。SkinEthicモデルは不死化ヒト角膜上皮細胞を使用しており(Doucet,O.et al.Toxicol In Vitro,2006.20(4):p.499−512)、MatTekモデルは正常ケラチノサイトを使用している(Van Goethem,F.et al.Toxicol.In Vitro,2006.20(1):p.1−17)。これらのモデルはどちらも角膜様上皮構造を示すが、生理的基材を使用していないばかりか、角膜幹細胞が角膜上皮の機能維持に果たす重要な役割をモデル化していない。
【0004】
角膜により生体内で提供される生理的基材に類似する角膜細胞の増殖用基材を提供する試みが行われている。羊膜、温度感受性ハイドロゲル、プラズマポリマーコート基材並びにコラーゲン、フィブリン及びフィブロネクチン/フィブリンゲルを含む多様な基材が試験されている。回収した角膜幹細胞の担体として羊膜、コラーゲンゲル及びコラーゲンシールドを比較すると、羊膜が最も優れた担体であることが判明した(Schwab,I.R.Trans.Am.Opthalmol.Soc.1999,97:p.891−986)。羊膜上で細胞を増殖させると、増殖、接着及び分化し易いため、それ以来、羊膜は標準角膜細胞基材として使用されている。羊膜は眼表面移植用角膜幹細胞の優れた臨床増殖用基材であることも分かっている(例えばKoizumi N et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2000;41:2506−2513)。
【0005】
しかし、羊膜は構造と化学組成の試料間及び試料内変動が大きく(Hopkinson,A.et al.Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,2006.47(10):p.4316−4322)、臨床使用前に必ずしも性状決定されない。最も重要な点として、基材としての羊膜は人工ポリマー構築物のスケーラビリティを欠く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、羊膜以外の基材上で増殖させた輪部幹細胞から角膜上皮移植片構築物を生体外で作製する試みが行われている。角膜幹細胞を使用するインビトロ眼毒性試験に適切な基材は、(i)幹細胞増殖を維持し、(ii)細胞重層化の確実な支持体を提供するという基本的要件を満たす必要がある。従って、本発明の1つの目的は、羊膜に似た組織加工性を示しながら、入手し易く、標準化し易い新規型の基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1側面において、本発明は角膜細胞の増殖用基材としての塑性圧縮コラーゲンゲルの使用を提供する。
【0008】
未圧縮コラーゲンゲルは間質液の周囲に連続足場を形成するコラーゲンフィブリルのマトリックスを含む。例えば、溶解したコラーゲンを希アルカリの添加により重合/凝集させ、架橋コラーゲンフィブリルのゲル化網目構造を形成することができる。フィブリルのゲル化網目構造は溶解したコラーゲン繊維の元の体積を維持し、間質液を保持する。このようなコラーゲンゲルの一般的な製造方法は当分野で周知である(例えばWO2006/003442、WO2007/060459及びWO2009/004351)。
【0009】
本願で使用する「塑性圧縮コラーゲンゲル」なる用語は、元の体積が外部圧縮/脱水処理により減少しており、元の間質液の一部又は大部分がゲルから除去されており、外部処理の停止後にコラーゲンゲルがその新しい(減少した)体積を維持しているようなコラーゲンゲルを意味する。塑性圧縮コラーゲンゲルは脱水されていると言うこともできる。
【0010】
(その重量の45倍の血液を吸収することが可能であると言われている)商標名Gelfoam(登録商標)として製造されているもの等の従来技術のコラーゲンゲルとは対照的に、本発明の塑性圧縮コラーゲンゲルは永久的に圧縮され、基本的に非吸収性である。この点で、「塑性圧縮」なる用語は圧縮がゲルの構造の永久的圧縮/変形をもたらすことを意味する。
【0011】
本願に記載する塑性圧縮ゲルはガラス化されず(即ち剛性のガラス様材料となる程度まで乾燥されない)、非ガラス様であり、非剛性であり、可撓性である。本願で使用されるコラーゲンゲルは線維芽細胞及び/又はケラチノサイト等の生細胞をその構造内に封入することが可能である。
【0012】
コラーゲンゲルで使用されるコラーゲンは任意のフィブリル形成コラーゲンとすることができる。フィブリル形成コラーゲンの例はI、II、III、V、VI、IX及びXI型である。ゲルは単一型のコラーゲンから構成してもよいし、異なる型のコラーゲンの混合物でもよい。好ましくは、ゲルはI型コラーゲンを含むか又はそれから構成される。本発明の所定態様において、ゲルはコラーゲンフィブリルのみから又は実質的にコラーゲンフィブリルから構成され、即ちコラーゲンフィブリルはゲルにおける唯一又は実質的に唯一のポリマーである。
【0013】
本発明の他の態様において、コラーゲンゲルは更に他の天然ポリマー、例えば絹、フィブロネクチン、エラスチン、キチン及び/又はセルロースを含むことができる。一般に、非コラーゲン天然ポリマーの量はゲルの5%未満、好ましくは4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満(wt/wt)とする。同様の量の非天然ポリマー(例えばポリラクトン、ポリラクチド、ポリグリコン(polyglycone)、ポリカプリルラクトン及び/又はリン酸塩ガラス)もゲルに存在することができる。
【0014】
間質液はコラーゲンフィブリルを溶解することができ、コラーゲンフィブリルをゲル化させることができる任意液体とすることができる。一般に、水性液体、例えば水性緩衝液又は細胞培養液である。
【0015】
本発明の所定態様では、角膜細胞の接着性を改善するために、コラーゲンゲルの一つ以上の表面にラミニン又は一つ以上のラミニンドメインをコートする。細胞外マトリックス(ECM)マルチドメイン三量体糖蛋白質であるラミニンは基底膜の主要な非コラーゲン成分であり、接着、増殖及び分化を助ける。ラミニンはマウスEngelbreth−Holm−Swarm(EHS)腫瘍(ラミニン−1)から最初に単離された。ラミニン蛋白は動物組織における構造足場の構成成分である。ラミニンはエンタクチンとペルレカンを介してIV型コラーゲンと会合し、インテグリン受容体、ジストログリカン糖蛋白複合体及びルーテル式血液型糖蛋白を介して細胞膜と結合する。
【0016】
本願で使用する「ラミニンドメイン」なる用語は特に、α鎖のRGD配列とIKVAV配列、β鎖のYIGSR、及びγ鎖のRNIAEIIKDIを包含する。
【0017】
好ましくは、ラミニンはEngelbreth−Holm−Swarmマウス肉腫基底膜に由来する。
【0018】
ラミニン又はラミニンドメインは例えば1〜2μg/cm2の濃度で使用することができる。ラミニン又はラミニンドメインは圧縮前又は後にコラーゲンゲルに塗布することができる。角膜細胞を配置する表面のみにコートすることが好ましい。これは例えば(使用時の)コラーゲンゲルの上面とすることができる。
【0019】
所定態様において、未圧縮コラーゲンゲルはゲル内に細胞を内包しなくてもよい。更に他の態様において、未圧縮コラーゲンゲルは1種以上の細胞を内包することができる。このような播種細胞の例としては、分化又は未分化形態の角膜線維芽細胞(ケラチノサイト)等の間質前駆細胞が挙げられる。好ましくは、これらの角膜線維芽細胞は周囲輪部又は輪部環を約0.02%コラゲナーゼの存在下で約37℃にて一晩インキュベートすることにより得られる。
【0020】
このような細胞が存在する場合には、一般に、例えば重合/凝集前にコラーゲン溶液と混合することにより、圧縮(即ち脱水)前にコラーゲンゲルに播種する。
【0021】
(ゲルに細胞を内包するか否かを問わずに)適切なゲル圧縮方法の例としては、
(i)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に圧縮力を加える方法;
(ii)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に脱水力を加える方法;
(iii)1面もしくは2面(例えば長さ及び/又は幅)にゲルを延伸する方法;又は
(iv)(i)〜(iii)の1種以上の組合せ
が挙げられる。
【0022】
ゲルの表面又は縁部の一つ以上に間質液吸収材を直接付着させる(即ち接触させる)方法と上記方法の各々を組合せてもよい。
【0023】
所定態様では、ゲルの表面又は縁部の一つ以上に圧縮力を加えることによりコラーゲンゲルの圧縮を生じさせておくことができる。圧縮力を加える間にゲルを拘束することが好ましい。ゲルの上面に圧縮力を加えることが好ましい。例えば、場合により間質液吸収材をゲルに付着させながら、ゲルの上面に荷重を加えることができる。荷重の量と圧縮時間は所望される圧縮レベルにより異なる。所定態様において、荷重は20〜100g、好ましくは40〜60g、最も好ましくは約50gとする。所定態様において、圧縮時間は10〜600秒間、好ましくは20〜400秒間、最も好ましくは約5分間とする。
【0024】
他の態様では、ゲルの一つ以上の表面又は縁部に脱水力を加えることによりコラーゲンゲルの圧縮を生じさせておくことができる。例えば、間質液吸収材をゲルの上面及び/又は下面に付着させることができる。このような液体吸収材の例としては、1枚以上のティッシュペーパー又は吸い取り紙が挙げられる。間質液吸収材を付着させる時間は所望される圧縮レベルにより異なる。
【0025】
更に他の態様では、1面又は2面(例えば長さ及び/又は幅)にゲルを延伸することによりコラーゲンゲルの圧縮を生じさせておくことができる。このような延伸の効果は間質液の一部を排出させることであると考えられる。例えば、ゲルを第1の縁部から吊り下げ、第2の(例えば対向する)縁部に荷重を加えることができる。荷重はゲルを破壊せずに延伸することが可能な量とする。ゲルの異なる軸方向に異なる荷重を加えることができる。荷重を加える時間と荷重の量は所望される圧縮レベルにより異なる。好ましい1態様では、例えば荷重を加えるゲルの一方又は両方の縁部に間質液吸収材を配置することにより、荷重と同一軸に沿って間質液排出力ないし脱水力を加えることができる。
【0026】
ゲルの圧縮の前又は後に、(a)一軸引張荷重を加える工程と、(b)前記荷重を除去する工程からなる1サイクル以上の反復サイクルをゲルに実施することができる。荷重の負荷と解除からなるこのような反復サイクルは圧縮ゲル内でコラーゲンフィブリルが配向するように融合するのを強化すると考えられる(例えばWO2007/060459参照)。
【0027】
圧縮コラーゲンゲルの他の製造方法も当分野で公知である(例えばWO2006/003442、WO2007/060459及びWO2009/004351)。
【0028】
外部圧縮/脱水処理下で、間質液は圧縮ゲルから永久的に除去される。得られたゲルは元の(未圧縮)ゲルに比較して体積が永久的に減少し、密度が増加し、強度が増加する。
【0029】
例えばコラーゲンゲルの体積を少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は99.9%減少させておくことができる。好ましくは、ゲルの体積は元の体積の0.1〜2.0%となる。
【0030】
圧縮を行うために必要な時間は適用する外部処理により変動し得る。例えば、圧縮を24時間未満、12時間未満、6時間未満、3時間未満又は1時間未満実施することができる。他の態様では、圧縮を30分未満、20分未満、10分未満、5分未満又は2分未満実施することができる。
【0031】
ゲルから失われる間質液の量は元のゲルに含まれる量に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%とすることができる。
【0032】
移植用又は眼毒性試験用又は本願に開示する他の任意用途用の人工眼上皮を製造するために、塑性圧縮コラーゲンゲルは好ましくは長さ1〜60mm、より好ましくは長さ20〜40mmとする。また、幅0.5〜60mm、好ましくは幅20〜40mmとすることができる。
【0033】
本発明の所定態様において、塑性圧縮コラーゲンゲルは厚さ5〜10000μm、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは厚さ20〜100μm、最も好ましくは厚さ約50μmのシート状である。
【0034】
塑性圧縮コラーゲンゲルの組成は一般にコラーゲン3〜4%(好ましくは3.3〜3.5%、より好ましくはコラーゲン約3.4%)であり、残余は緩衝液からの水と塩類/糖類である。この残余のうち、水が一般に>99%を構成する。
【0035】
圧縮コラーゲンゲルにおけるコラーゲンフィブリルの直径は好ましくは10〜100nmである。圧縮コラーゲンゲルにおけるコラーゲンフィブリルの間隔は好ましくは1〜200nmである。これらのパラメータは以下の方法により測定することができる。コラーゲンゲルを2.5%グルタルアルデヒドのPBS溶液で室温にて1時間、次いで1%四酸化オスミウムで室温にて1時間固定した後、エタノール濃度を(100%まで)上昇させて脱水し、次いで酸化プロピレンでガス処理した後、Agar 100樹脂を60℃で24時間重合して包埋する。70nm切片を切断し、クエン酸鉛と酢酸ウラニルで対比染色後、透過型電子顕微鏡(TEM)で試験し、コラーゲンフィブリル直及び間隔を定量することができる。この方法によりコラーゲンフィブリルの配向、例えば高度(又は低度)配向を定性的に評価することもできる。
【0036】
別の側面において、本発明は角膜細胞を増殖させるための基材としての塑性圧縮コラーゲンゲルの使用を提供する。
【0037】
本発明は更に、角膜幹細胞又は角膜幹細胞を含有する組成物を塑性圧縮コラーゲンゲル基材上で培養する段階を含む人工眼上皮の製造方法であって、基材上に人工眼上皮を産生する角膜上皮細胞集団を提供するような条件下で前記細胞又は組成物を培養する方法も提供する。
【0038】
本発明で使用される塑性圧縮ゲルは角膜細胞を増殖させるための基材を提供し、この基材は上皮なし角膜基質と形態的に類似する。細胞はこの基材の表面上で増殖し、このような細胞は基材の内側には全く又は基本的に全く増殖しない。塑性圧縮コラーゲンゲルの圧縮レベルは付着させた上皮細胞が圧縮ゲルの内側に内方増殖しないように選択される。
【0039】
所定態様では、その後、人工眼上皮を基材から分離する。
【0040】
本発明の他の態様では、人工眼上皮を塑性圧縮コラーゲンゲル基材上に保持し、前記基材を人工角膜基質として使用する。本願で使用する「人工角膜基質」なる用語は好ましくは本願に記載する塑性圧縮コラーゲンゲルを意味し、場合により角膜線維芽細胞及び/又はケラチノサイトを封入することができ、及び/又は場合により(好ましくはリボフラビン/UVを使用して)架橋することができる。
【0041】
所定態様では、人工眼上皮をその後、場合により人工眼上皮として使用するための説明書と共に、基材から分離するか又は分離せずにヒト組織の保存と防腐に適した培地、好ましくはコンドロイチン硫酸系保存培地、例えばOptisol(登録商標)(Bausch & Lomb)で保存する。
【0042】
好ましくは、塑性圧縮コラーゲンゲル基材は本願に記載の方法により取得されるか又は取得可能である。
【0043】
本発明は上記方法により取得されるか又は取得可能人工眼上皮も提供する。
【0044】
本発明は更に基底細胞の内側及び下側の基底膜成分(例えばラミニン、インテグリン、半接着斑)と共に、CK3(サイトケラチン3)分化マーカーとCK14(サイトケラチン14)未分化マーカーの双方を発現する3〜7層の細胞層からなる連続重層化上皮を含み、好ましくは本願に記載する方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮も提供する。
【0045】
人工眼上皮は好ましくは450nmにおける光学密度(OD)が0.00〜0.50である。好ましくはケラチノサイトと人工眼上皮を包埋したラミニンコート塑性圧縮コラーゲンゲルはOD(450nm)が0.01〜0.10、好ましくは約0.073である。
【0046】
人工眼上皮内における接着斑及び半接着斑(夫々細胞−細胞及び細胞−基材接着複合体)の存在を使用し、その下のマトリックスとの組織一体性及び接着性を定量することができる。特に、本発明は一部もしくは全基底細胞に半接着斑が存在しており、及び/又は一部もしくは全隣接上皮細胞が接着斑構造を介して相互に結合している人工眼上皮に関する。
【0047】
角膜幹細胞を含有する組成物は好ましくは輪部上皮細胞を含有しており、即ち角膜の縁部の輪部から取得可能な幹細胞と分化細胞の不均一混合物を含有する。換言するならば、角膜幹細胞を含有する組成物は角膜幹細胞とまだ完全には角膜上皮表現型に移行していない細胞の混合物を含有することができる。
【0048】
本願で使用する「角膜細胞」なる用語は動物(好ましくは哺乳動物)角膜から得られた細胞を意味する。好ましくは、細胞は角膜の輪部環、即ち結膜、虹彩及び中心角膜を除く角膜の外縁部から得られる。細胞は上皮細胞を含むか又は前記細胞から構成することができる。細胞は角膜幹細胞、好ましくは輪部角膜上皮幹細胞を含むか又は前記細胞から構成することができる。好ましくは、角膜幹細胞はヒト角膜幹細胞である。
【0049】
ゲルの機械的特性を改善するために、圧縮前又は後に圧縮コラーゲンゲルにおけるコラーゲンを架橋することができる。好ましくは、架橋はリボフラビンとUV(好ましくはUVA、最も好ましくは約365nm)を使用して実施される。例えば、架橋は圧縮ゲルをリボフラビン溶液(好ましくは15〜25%デキストラン溶液中0.05〜0.2%リボフラビン)中で室温にて20〜40分間インキュベートすることにより実施することができる。その後、未使用リボフラビンが存在する場合には、例えばPBSを使用してゲルから洗い流すことができる。このように処理されたコラーゲンゲルは未処理ゲルに比較して大きな荷重に耐えることができ、眼表面に移植した場合に縫合糸により良好に固定される。
【0050】
本発明の所定態様において、架橋は1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)又はN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又は他の任意のカルボジイミド系もしくはスクシンイミド系架橋剤を使用して実施されない。
【0051】
本発明の好ましい1態様では、(好ましくはリボフラビン/UVを使用して架橋された)架橋塑性圧縮コラーゲンゲルを使用し、圧縮ゲルは細胞を封入していない。
【0052】
本発明は更に、コラーゲン繊維が(好ましくはUV光を使用して)リボフラビンを使用して架橋された塑性圧縮コラーゲンゲルと、人工眼上皮を増殖させることができる基材としての用途及び本願に開示する他の用途における前記ゲルの使用も提供する。好ましくは、塑性圧縮コラーゲンゲルは本願に開示する方法により製造されたものである。
【0053】
前記組成物又は幹細胞は基材の表面に人工眼上皮を産生する角膜上皮細胞集団を提供するような条件下で培養される。このような条件は当分野で周知である(例えばEbato B.,et al.Invest.Opthalmol.Vis.Sci.1988;29:1533−1537;de Paiva C.S.et al.Stem Cells 2005;23:63−73)。
【0054】
本発明は更に本発明の人工眼上皮を含む人工眼組織と、本発明の方法により取得されるか又は取得可能な塑性圧縮コラーゲンゲル基材も提供し、人工眼上皮は塑性圧縮コラーゲンゲル基材の表面で増殖中であるか又は増殖していることが好ましい。
【0055】
本発明は更に人工眼上皮又は人工眼組織に及ぼす試験化合物の効果を評価する方法であって、
(a)本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織を準備する段階と;
(b)人工眼上皮又は人工眼組織を一定量の試験化合物と接触させる段階と;
(c)人工眼上皮又は人工眼組織に及ぼす化合物の効果を評価する段階
を含む方法も提供する。
【0056】
化合物の効果は例えば任意分析、生化学、光学、顕微鏡又は他の手段により評価することができる。
【0057】
所定態様において、評価する効果は人工眼上皮もしくは組織の光学特性の変化、又は人工眼上皮もしくは組織の透過性の変化である。例えば試験化合物の添加前後に前記変化を測定することができ、又は前記変化を対照と比較することができる。
【0058】
他の態様では、人工眼上皮もしくは組織の組織学試験、又は前炎症メディエーターの産生の測定により化合物の効果を評価することができる。
【0059】
本発明は更に哺乳動物角膜に対する試験化合物の毒性の指示を提供するための本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織の使用も提供する。
【0060】
他の態様において、本発明は角膜上皮の基礎/基本生物学、例えば増殖、分化、結合及び重層化の分子制御を研究するためのモデルを提供するための、本発明の方法により取得されるか又は取得可能な眼上皮又は組織の使用を提供する。
【0061】
本発明は更に本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織の人工角膜としての使用も提供する。
【0062】
本発明は更に細胞の送達を必要とする組織への細胞組織剤としての本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織の使用も提供する。
【0063】
本発明は更に、
(a)本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織を準備する段階と;
(b)眼損傷を前記人工眼上皮又は組織と接触させる段階と;場合により
(c)前記人工眼上皮又は組織を眼損傷部位に固定する段階
を含む眼損傷の治療方法も提供する。
【0064】
治療することができる眼損傷としては、幹細胞機能を維持するために不十分な間質微小環境に関連するもの(例えば無虹彩症、角膜炎、神経栄養性角膜症及び慢性角膜輪部炎);又は輪部幹細胞を破壊する外部因子に関連するもの(例えば化学もしくは熱傷害、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼瘢痕性類天疱瘡、コンタクトレンズ使用又は広範な微生物感染症)が挙げられる。
【0065】
本発明は更に治療方法、好ましくは上記のもの等の眼損傷の治療方法で使用するための上記方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織も提供する。
【0066】
本発明は更に治療方法、好ましくは上記のもの等の眼損傷の治療方法で使用するための組成物の製造における上記方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織の使用も提供する。
【0067】
本発明は更に、
(a)本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織を準備する段階と;
(b)哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する段階
を含む哺乳動物対象における角膜置換方法も提供する。
【0068】
本発明は更に、外科処置方法で使用するための上記方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織も提供し、好ましくは哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する。
【0069】
本発明は更に、外科処置方法で使用するための組成物の製造における上記方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織の使用も提供し、好ましくは哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ウシ角膜基質の輪部に由来するケラチノサイトによる一次スフィア形成。夫々5日間(A)、7日間(B)及び9日間(C)培養した代表的なスフィア。(D):一次スフィアから分化した子孫。目盛線=50μm。
【0071】
【図2】包埋されたケラチノサイトの生死染色。A:7日間培養後に圧縮コラーゲンゲル内に包埋されたケラチノサイト。B:ケラチノサイトはその緑色染色により生存していると判断された。C:赤色染色を示す死んだケラチノサイトは検出されなかった。
【0072】
【図3】3A−B。ヒト角膜(図3A)及び羊膜(図3B)の透過型電子顕微鏡写真(TEM)。
【0073】
【図4】4A−B。羊膜のX線回折(図4A)にX線回折パターン(図4B)を横断するトランセクトを示す。
【0074】
【図5】各種足場の走査型電子顕微鏡写真。A:圧縮コラーゲンゲル;B:上皮なし羊膜。
【0075】
【図6】角膜上皮シートと正常ウシ角膜上皮の透過型電子顕微鏡画像。A:基底細胞は半接着斑結合(矢印)により圧縮コラーゲン足場と良好に接着するようであった;B:正常ウシ角膜上皮における半接着斑結合(矢印);C:隣接細胞は圧縮ゲル上で接着斑結合(矢印)を明白に示した;D:正常角膜上皮における接着斑結合(矢印)。目盛線:800nm。
【0076】
【図7】透明度の評価。A:1本目(「コラーゲン」)ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル;2本目(「AM」)上皮なし羊膜;3本目(「コラーゲン+」)LECを圧縮コラーゲンゲル上で増殖させた組合せ;4本目(「AM+」)LECを上皮なし羊膜上で増殖させた組合せ。組織を96ウェルプレートに入れた。B:得られたOD測定値。棒グラフは平均と標準偏差を示す。
【0077】
【図8】図8A−C。単離した輪部細胞の羊膜上への重層化。基礎培地で11日間インキュベーション後の輪部小片からの増殖細胞(A)と14日後の懸濁細胞(B)。脱水コラーゲンシート上で増殖させた細胞は同等レベルの細胞密度と重層化を示す(C)。染色は細胞核を示す。
【0078】
【図9】図9A−B。11日間培養後の角膜輪部細胞のK3(赤)及びK14(緑)、DAPI(青)二重標識の20倍顕微鏡写真。懸濁培養細胞(A)と外植片培養細胞(B)。目盛線:100μm。
【0079】
【図10】増殖させた輪部上皮細胞の免疫蛍光染色。A:ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル上のLEC(赤)のCK3染色(緑)。B:上皮なし羊膜上のLEC(青)のCK3染色(赤)。C:ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル上のLEC(赤)のCK14(緑)染色。D:上皮なし羊膜上のLEC(青)のCK14(緑)染色。目盛線=50μm。
【0080】
【図11】ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル(コラーゲン)と上皮なし羊膜(AM)上で培養したLECのCK3(A−「K3」)及びCK14(B−「K4」)発現のウェスタンブロッティング及びイムノブロッティング。
【0081】
【図12】ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル(コラーゲン)と上皮なし羊膜(AM)上で培養したLECのCK12mRNA発現。
【0082】
【図13】コラーゲンゲルの塑性圧縮。A:安定化した未圧縮コラーゲンゲル;B:安定化したコラーゲンゲルのPC法を示す図;C:圧縮コラーゲンゲル。
【0083】
【図14】輪部上皮外方増殖。A:未圧縮コラーゲンゲル上の外植片外方増殖;B:圧縮コラーゲンゲル上の外植片外方増殖;C:コラーゲン足場上の外植片外方増殖面積を示すグラフ。目盛線=50μm。
【0084】
【図15】各種足場の走査型電子顕微鏡写真。A:未圧縮コラーゲンゲル;B:圧縮コラーゲンゲル;C:上皮なしウシ角膜基質。
【0085】
【図16】コラーゲンゲルと正常角膜上のLECの走査型電子顕微鏡。A:未圧縮コラーゲンゲル上の細胞;B:圧縮コラーゲンゲル上の細胞;C:正常ウシ角膜上皮。
【0086】
【図17】コラーゲン繊維、角膜上皮シート及び正常ウシ角膜上皮の透過型電子顕微鏡画像。A−C:各種足場、即ち未圧縮コラーゲンゲル(A)、圧縮コラーゲンゲル(B)及び正常ウシ角膜基質(C)に由来するコラーゲン繊維;D:基底細胞は未圧縮コラーゲンゲルとさほど良好に接着しない;E:基底細胞は半接着斑結合(矢印)により圧縮コラーゲン足場と良好に接着するようである;F:正常ウシ角膜上皮における半接着斑結合(矢印);G:未圧縮ゲル上では細胞層間に大きな間隙(矢印)が目立つ;H:隣接細胞は圧縮ゲル上で接着斑結合(矢印)を明白に示す;I:正常角膜上皮における接着斑結合(矢印)。目盛線:(A−C)10μm;(D−I)1μm。
【0087】
【図18】コラーゲンゲルと正常ウシ角膜上皮上で増殖させた細胞の免疫染色。ヨウ化プロピジウム(赤)とCK3(緑)。A:細胞は未圧縮コラーゲンゲル上で増殖した;B:細胞は圧縮コラーゲンゲル上で増殖した;C:正常ウシ角膜上皮。目盛線=50μm。
【0088】
【図19】未処理(左)及びリボフラビン/UV処理後(右)の圧縮コラーゲンゲル。
【0089】
【図20】圧縮コラーゲンゲルの破壊応力を解析するために使用した装置。
【0090】
【図21】未処理(図21A)及びリボフラビン/UV処理後(図21B)の圧縮コラーゲンゲルの時間に対する荷重増加の例。
【0091】
【図22】リボフラビン/UV処理したコラーゲンゲル上で増殖させた細胞の免疫染色。ヨウ化プロピジウム(赤)とCK3(緑)。角膜輪部細胞はリボフラビン処理した圧縮コラーゲンゲル内で増殖することができる。
【0092】
【図23】ウサギの眼表面に移植した圧縮コラーゲンゲル(ラメラ移植片)。A:一旦移植した圧縮コラーゲンゲルは縫合糸を有効に固定しない;B:リボフラビン処理した圧縮コラーゲンゲルはより良好に縫合・固定できるため、移植を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、実施例中、特に指定しない限り、部及び百分率は重量に基づき、温度は摂氏である。当然のことながら、これらの実施例は本発明の好ましい態様を示すものであるが、例証に過ぎない。上記記載とこれらの実施例から、当業者は本発明の基本的な特徴を把握することができ、発明の趣旨と範囲内で、各種用途及び条件に適応するように本発明の種々の変更及び改変を行うことができる。従って、本願に提示及び記載するものに加えて本発明の種々の改変が以下の記載から当業者に想到されよう。このような改変も特許請求の範囲に含むものとする。本願に記載する各資料の開示は全体を本願に援用する。
【実施例1】
【0094】
一次スフィア形成アッセイを使用したケラチノサイトの単離
現地食肉処理場(Chity卸売食肉処理場,Guildford,UK)から死亡後2時間以内に正常ウシ眼球を入手し、4℃の実験室に輸送し、すぐに使用した。標準アイバンク技術を使用して角強膜を切離した。要約すると、角強膜組織をダルベッコ最小必須培地(DMEM,GIBCO)で3回リンスした。中心角膜、余分な強膜、虹彩、角膜内皮、結膜及びテノン嚢を注意深く除去した後、残りの輪部周辺部を約25mm2の小片に裁断した。次にこれらの小片から輪部基質ケラチノサイトと上皮細胞を単離した。輪部基質ケラチノサイト単離には、輪部周辺部の小片を0.02%コラゲナーゼ(GIBCO)の存在下で37にて一晩インキュベートした。次に残りの輪部基質小片を採取し、0.2% EDTA(Sigma,UK)で37℃にて5分間処理後、21ゲージ針で吸引し、シングルセルに分離した。遠心後、B27(Invitrogen,UK)、上皮増殖因子(EGF,Sigma,UK)20ng/ml、塩基性線維芽細胞増殖因子(Mary Ann Liebert,Inc.,140 Huguenot Street,New Rochelle,NY 10801)(bFGF,Sigma,UK)40ng/ml、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100μg/ml、及びアンホテリシンB250ng/mlをDMEM/ハムF12培地(DMEM/F12,1:1)に添加した基礎培地に細胞を再懸濁した。スフィア形成アッセイを利用し、メチルセルロースゲルマトリックス(0.8%,Sigma−Aldrich)を添加した基礎培地を使用してこれらの単離した輪部ケラチノサイトを培養した。生存細胞10個/μlの密度で60mm培養皿27に播種した。
【実施例2】
【0095】
スフィアコロニーの分化
懸濁した輪部ケラチノサイトから7日間培養後に形成された一次スフィアを顕微鏡試験のために、ポリ−L−リジン(Sigma,UK)50μg/mlとフィブロネクチン(Sigma,UK)10μg/mlをコートしたガラスカバースリップに移した。輪部ケラチノサイトの分化を促進するために、1%胎仔ウシ血清を基礎培地に加え、7日間培養を続けた。得られた分化ケラチノサイトを0.25%トリプシンと0.02% EDTA(Sigma,UK)で消化し、細胞2.0×105個の密度で基礎培地に再懸濁した。
【0096】
輪部基質をシングルセルに分解して9日間培養すると、この期間中に細胞の生存可能なスフィアが増殖した。5日間、7日間、9日間培養した代表的なスフィアの写真を夫々図1A、1B及び1Cに示す。各スフィアから分化した子孫は典型的な線維芽細胞様形態を示した(図1D)。
【実施例3】
【0097】
無細胞コラーゲンゲルの形成
1モル水酸化ナトリウム(Merck,Leicestershire,UK)0.5mLを添加した10倍濃度イーグル最小必須培地(Gibco,Paisley,UK)1mLで滅菌ラット尾I型コラーゲン(First Link Ltd.West Midlands,UK)4mLを中和することにより、従来記載されているように無細胞コラーゲンゲルを作製した(Brown et al.,Adv.Funct.Mater.,2005,15:1762−1770)。ゲルを長方形金型(33mm×13mm×4mm)に注入し、37℃ 0.5% CO2インキュベーターで30分間硬化/安定化させた。硬化及びインキュベーション後、加圧とナイロンメッシュ層及び紙シートを使用する吸取法の併用によりゲルを圧縮した(Brownらは更に金属ワイヤーメッシュも使用したが、これは使用しなかった)。ゲルの圧縮を行うために、ナイロンメッシュ1層(50μmメッシュサイズ)を吸収紙の二重層に重ね、コラーゲンゲルをナイロンメッシュに載せ、第2のナイロンメッシュを被せ、50g荷重を5分間室温で加え、2枚のナイロンメッシュ間に保護された平坦なコラーゲンシート(厚さ20〜40μm)を形成した。
【実施例4】
【0098】
線維芽細胞を組込んだコラーゲンゲルの形成
新鮮な角膜組織又は線維芽細胞株から抽出した間質線維芽細胞のペレットを10倍濃度イーグル最小必須培地(Gibco,Paisley,UK)1mL中で滅菌ラット尾I型コラーゲン(First Link Ltd.West Midlands,UK)4mに懸濁し、1モル水酸化ナトリウム(Merck,Leicestershire,UK)0.5mLで中和する。細胞を含むゲルを長方形金型(33mm×13mm×4mm)に注入し、37℃ 0.5% CO2インキュベーターで30分間硬化/安定化させる。硬化及びインキュベーション後、加圧とナイロンメッシュ層及び濾紙シートを使用する吸取法の併用によりゲルを圧縮する。ゲルの圧縮を行うために、ナイロンメッシュ1層(50μmメッシュサイズ)を吸収紙の二重層に重ね、コラーゲンゲルをナイロンメッシュに載せ、第2のナイロンメッシュを被せ、50g荷重を5分間室温で加え、2枚のナイロンメッシュ間に保護された平坦なコラーゲンシート(厚さ20〜40μm)を形成する。
【実施例5】
【0099】
コラーゲンゲルのラミニンコーティング
場合により、得られたケラチノサイト包埋圧縮コラーゲンゲルを次に6ウェルプレート(transwells,costar)に移し、各ゲルにラミニン溶液(50μg/ml,Sigma,UK)をコートし、37℃で2時間インキュベートし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄すると、その時点でコラーゲン足場はLEC増殖に使用可能な状態になった。
【実施例6】
【0100】
ケラチノサイト生存アッセイ
FBS(Sigma,UK)10%、DMSO(Sigma,UK)0.5%、EGF(Sigma,UK)10ng/ml、インスリン(Sigma,UK)5mg/ml、ペニシリン100IU/ml及びストレプトマイシン100mg/mlを添加したDMEM/ハムF12(DMEM/F12)培地で7日間培養後に生死二重染色キット(Calbiochem,German)を使用して圧縮ゲル内に包埋されたケラチノサイトの生存を試験した。キットは細胞透過性緑色蛍光色素であるcyto−dyeを利用して生細胞を染色し、透過を生じる膜損傷がある場合にしか細胞に侵入することができない非透過性赤色蛍光色素であるヨウ化プロピジウム(PI)により死細胞を染色した。共焦点顕微鏡(LEICA DMIRE2,German)を使用して生死ケラチノサイト比を検出した。
【0101】
包埋されたケラチノサイトを7日間培養したが、この間にコラーゲンゲルはその寸法がさほど変化しなかった。ゲル内の細胞を生死二重染色で処理し、共焦点顕微鏡により試験した(図2A)。ゲル内の種々の深度に焦点を当てることにより、細胞は依然として生存可能であり(図2B)、死細胞は認められない(図2C)ことが検出され、ケラチノサイトをコラーゲンゲル内に封入した後に圧縮してもこの期間中に細胞生存能に影響しないと判断された。
【実施例7】
【0102】
角膜、羊膜及びコラーゲンゲルの構造詳細
ヒト角膜及び羊膜を透過型電子顕微鏡(TEM)で解析した処、コラーゲン繊維直径、間隔及び/又は配向の点で構造の類似性が判明した(図3,A及びB)。羊膜のX線回折の結果、フィブリル直径43nm、フィブリル間隔46nmであり、フィブリル組織化を示した(図4)。
【実施例8】
【0103】
輪部細胞からの細胞懸濁液の調製
輪部上皮細胞単離のために輪部環構造を維持しながら、角膜の外縁部の輪部環を結膜、虹彩及び中心角膜から切離した。輪部環を長さ約1cmの数個の小片に裁断し、DMEM,FM12(1:1)培地(Fisher Sci,U.K.)、抗生物質50μg/ml、FBS 5%、ジメチルスルホキシド0.5%、ヒト上皮増殖因子2ng/ml、インスリン5μg/ml、B27サプリメント培地(Fisher Sci,U.K.)を含有する基礎培地中、0.02% IA型コラゲナーゼ(Sigma−Aldrich)の存在下、加湿5%二酸化炭素及び95%空気、37℃の雰囲気下で37℃にて12時間インキュベートした。
【0104】
酵素の存在下でインキュベートした輪部小片から先細ピンセットで上皮シートを剥離し、0.05%トリプシン/EDTAを加えた15ml管に移し、37℃で10〜15分間インキュベートし、最後に21ゲージ針で撹拌することによりシングルセルに解離した。FBSを添加した基礎培地を加えることによりトリプシン/EDTAを除去した後、室温にて1000rpmで5分間の遠心を数回実施した。細胞を基礎培地に再懸濁し、コラーゲンゲル又は羊膜に播種した。
【実施例9】
【0105】
輪部幹細胞を含む外植片の作製
輪部環構造を各々5mm×5mm平方の小片8〜10個に均等に裁断し、最後に下部の輪部基質(基質の厚さの約3分の2)も注意深く除去した。輪部小片を滅菌PBSで3回洗浄後、ペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質溶液(Gibco)で3分間リンスした。上皮側を上にして角膜輪部小片をシャーレに入れ、基礎培地に浸した。輪部小片を加湿5%二酸化炭素及び95%空気の雰囲気下で37℃にて2〜3日間インキュベートした。輪部上皮細胞がシャーレ上で輪部外植片の縁部に沿って遊走しているのを(倒立光学顕微鏡により)確認できたら、「健康」であり、更に培養するのに適しているとみなした。このような輪部小片をプラスチック皿から注意深く取り出し、蓋付き6ウェルプレート内の培養インサートにより静かに基材(コラーゲンゲル又は羊膜)に移した。
【実施例10】
【0106】
圧縮コラーゲンゲル及び上皮なし羊膜上の輪部上皮細胞の増殖
羊膜(AM)を滅菌PBS緩衝液で3回洗浄後、37℃にて30分間0.25%トリプシン処理した。インキュベーション後、膜上の上皮細胞をスクレーパで掻き取った。次に、基底膜表面を上に向けて無細胞AMを6個のトランスウェルに移した。ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAMに単離したLSCを106個/mlの密度で播種した。14日後に、培地液面を下げることにより、増殖させたLECを更に7日間空気に暴露した。3週間インキュベーション後に、複数の細胞層をもつ角膜上皮膜を更に試験に供した。
【実施例11】
【0107】
電子顕微鏡解析
圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAMの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により試験した。圧縮コラーゲンゲル上で増殖させたLECを透過型電子顕微鏡(TEM)により試験した。全試料を2.5%(v/v)グルタルアルデヒドで固定し、PBSで10分間3回洗浄し、1%四酸化オスミウム水溶液で2時間後固定した。次に試料をPBSで更に3回洗浄後、段階的エタノール系列(50%、70%、90%及び100%)に通した。SEMでは、試料をヘキサメチルジシラザンに20分間移し、風乾した。次にこれらの試料をアルミニウムスタブにマウントし、金をスパッターコートした後、SEM(FEI Quanta FEG 600,UK)を使用して試験した。TEMでは、脱水した試料をエポキシ樹脂(Agar 100;Agar Scientific,Ltd.,Stansted,UK)で包埋した。超薄(70nm)切片を銅グリッド上で採取し、酢酸ウラニルと1%ホスホタングステン酸で1時間染色後、レイノルズ法のクエン酸鉛で20分間染色した後、透過型電子顕微鏡(Philips CM20,Holland)を使用して試験した。
【0108】
圧縮ゲル(図5A)内のコラーゲン繊維のSEM解析によると、稠密・均質であり、上皮なしAM(図5B)と同様の形態及び構造であると思われた。
【0109】
TEM解析によると、圧縮ゲル上で増殖させたLECは正常角膜上皮(図6B)と同様に基底細胞に半接着斑形成(図6A)を示すことから、明確な基底膜層を生じることが判明した。更に、隣接細胞はやはり正常角膜上皮(図6D)で認められると同様に、接着斑構造を介して相互に結合していた(図6C)。
【実施例12】
【0110】
透明度の評価
LEC増殖前後の圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAMの透明度を評価するために、得られた角膜構築物をトレフィンで直径3.5mmの小片に裁断し、96ウェル培養プレートのウェルに1個ずつ入れた。Bio−Tek Instrument(Elx800UV,UK)を使用して組織光学密度(OD)を測定した。
【0111】
圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAM上で増殖させたLECの透明度の比較を容易にするように光学密度(450nmのOD)測定を行った(図7A)。ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル(0.003±0.001)と上皮なしAM(0.003±0.001)からのOD値は非常に低く、相互間に有意差はなかった(P>0.05)。各々増殖させたLECを添加後にケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAMから測定したOD値は夫々0.073±0.003及び0.072±0.003であり、相互間に有意差はなかった(P>0.05)(図7B)。
【実施例13】
【0112】
コラーゲンゲル又は羊膜上への輪部細胞の重層化
核(DAPI)染色は輪部外植片(図8A)と輪部懸濁培地(図8B)を使用して増殖させた10〜14日間培養後の細胞間の角膜輪部細胞の重層化の程度を示した。培養した輪部細胞の重層化は10〜14日間培養後に3〜6層であった。脱水(塑性圧縮)コラーゲンゲル上で増殖させた輪部細胞でも同等レベルまでの重層化が認められた(図8C)。
【実施例14】
【0113】
免疫化学分析
圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAM上でLEC増殖後に得られた角膜構築物を免疫蛍光顕微鏡により試験した。角膜構築物をOCT(TissueTek)で包埋し、液体窒素で凍結後、凍結切片を作成した。免疫化学分析前に、0.4% Triton X−100を含有する50mMトリス緩衝生理食塩水(TBS;pH7.2)中、5%ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して各切片(厚さ10μm)を60分間室温にてブロックした。次に0.4% Triton X−100を含有する1%BSA/TBSで希釈したサイトケラチン(CK)3(50倍;Chemicon,UK)とCK14(100倍,Chemicon,UK)に対する一次抗体の存在下で切片を4℃にて一晩インキュベートした。FITC標識二次抗体(50倍,Sigma,UK)を室温で1時間使用した。切片をヨウ化プロピジウム(Sigma,UK)で共染色し、蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Meditec,Germany)で観察した。
【実施例15】
【0114】
培養輪部細胞内のK14及びK3発現
懸濁した輪部上皮細胞は基底層細胞内で強いK14発現(未分化細胞のマーカー)を示し、エアリフト前にCK3(分化細胞のマーカー)陰性であった(図9A)。3〜4層の厚い基底細胞が緊密な細胞空間配置を示し、細胞間空間は殆どなかった。細胞核は高い核/細胞質比を示した。有棘層細胞は平坦になる傾向が強く、細胞境界が明確であり、これらの細胞はCK14陰性であると同時にCK3陰性であった。
【0115】
同一条件下の輪部外植片培養細胞もCK14陽性染色を示し(図9B)、CK3も外植片培養細胞内で陰性又は非常に弱い染色であった。懸濁培養細胞と異なり、全細胞層(3〜4層)にCK4陽性細胞が認められ、最上層の有棘層上の一部の個々の細胞にも認められた。これらの全細胞は核/細胞質比が大きく、非常に緊密であった。
【0116】
角膜上皮細胞の特異的マーカーとして使用されることが多いCK3は圧縮コラーゲンゲル(図10A)と上皮なしAM(図10B)のどちらで増殖させたLECでも表面細胞層で強く発現された。別の角膜上皮マーカーであるCK14(推定前駆細胞マーカー)は圧縮コラーゲンゲル(図10C)と上皮なしAM(図10D)のどちらで増殖させたLECでも全細胞層で発現されることが判明した。
【実施例16】
【0117】
ウェスタンブロッティング
ケラチノサイトを包埋した圧縮コラーゲン足場と皮なしAM上で増殖させたLECに由来する蛋白質(各条件で蛋白質合計4μg;変形ローリー法を使用して推算)を10%ゲルで一次元ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分離した。蛋白質をポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に転写し、1倍トリス緩衝生理食塩水−Tween(TBS−T)(20mMトリス塩基,0.14M NaCl,0.1% Tween(登録商標)−20;pH7.6)に溶解した5%(w/v)脱脂粉乳の存在下でインキュベートすることにより膜との非特異的結合をブロックした。2%(w/v)脱脂粉乳を1倍TBS−Tに溶解した溶液で希釈した抗CK3一次抗体(1μgml−1)及び抗CK14一次抗体(1μgml−1)の存在下で膜を4℃にて一晩インキュベートした。ブロットを1倍TBS−Tで45分間洗浄後、マウス共役二次抗体(6000倍希釈)の存在下で室温にて2時間インキュベートした。増幅化学発光システムを使用して蛋白質をX線フィルムで検出した。
【0118】
どちらの足場(圧縮コラーゲンと上皮なしAM)上で培養したLECでもCK3蛋白質発現が認められ、CK3は上皮なしAM上で培養したLECよりも圧縮コラーゲン基材上で培養したLECのほうが強く発現された。CK14蛋白質もどちらの足場上で培養したLECでも認められ、2種類の足場の間に発現レベルの識別可能な差はなかった(図11)。
【実施例17】
【0119】
リアルタイム定量的PCR
TRI試薬(Sigma,Poole,UK)を製造業者のプロトコルに従って使用し、ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲン足場と上皮なしAM上の両方で培養したLECから全RNAを単離した。全RNAを分光計(GE healthcare,UK)により定量し、RevertAid H Minus First Strand cDNA合成キット(Fermentas,UK)を製造業者のプロトコルに従って使用し、RNA 1ngを逆転写した。オーダーメードPerfectProbeアッセイ(PrimerDesign,UK)を使用してケラチン12(アクセション番号:XM_001255461)遺伝子発現を定量した。2X qPCR Mastermix(Primerdesign,UK)10μl、再構成したパーフェクトプローブプライマー/プローブミックス(Primerdesign,UK)1μl、PCRグレード水(Primerdesign,UK)4μl及びcDNA(元の濃度の10倍希釈)5μlで最終反応容量20μlとなるように、各反応を3回ずつ実施した。非鋳型対照も試験した。ABI PRISM 7700 Sequence Detector(Applied Biosystem,UK)で96ウェルプレート(Fisher,UK)上でリアルタイム反応を実施した。
【0120】
Microsoft Excelを使用して(対応のない)スチューデントのt検定を実施し、ODとリアルタイムPCRデータを解析した。3回の独立した実験の平均と平均の標準誤差として結果を表し、P値≦0.05を有意とみなした。
【0121】
CK12は(その対応物であるCK3と同様に)分化角膜上皮細胞のマーカーである。ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHを対照として使用したリアルタイムPCRの結果、ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル上で増殖させたLECにおけるCK12 mRNA発現レベル(1.18±0.09)は上皮なしAM上で増殖させたLEC(1.00±0.07)よりもやや高いことが判明した。この差は有意でないことが分かった(P>0.05)(図12)。
【実施例18】
【0122】
コラーゲンゲル上の輪部上皮外方増殖
上記のように無細胞コラーゲンゲルを作製した。インキュベーターで30分間硬化後、コラーゲンゲルが良好に形成され(図13A)、加圧とナイロンメッシュ層及び紙シートを使用する吸取法の併用により圧縮ゲルから液体を排出した(図13B)。圧縮コラーゲンゲルは稠密で機械的強度が高く、透明度が高かった(図13C)。
【0123】
コラーゲンゲル上の輪部上皮外方増殖
輪部外植片から角膜上皮細胞を増殖させた。前段階である単離段階から残存している無傷の輪部周辺部を小片(約2×2mm)に裁断し、上皮側を上にして2個の小片を圧縮コラーゲンゲルと未圧縮コラーゲンゲルの表面に直接載せ、上記のような細胞培養培地で培養した。細胞を倒立顕微鏡で観察しながら組織培養プレートの上面に外方増殖面積を記録した。3日目、6日目及び9日目に総外方増殖面積を正確に記録し、測定し、定量分析した。
【0124】
Microsoft Excelを使用して(対応のない)スチューデントのt検定を実施し、未圧縮コラーゲンゲルと圧縮コラーゲンゲル上のLSC外方増殖を比較した。3回の独立した実験の平均と平均の標準誤差として結果を表し、P値≦0.05を有意とみなした。
【0125】
3日後に、LECは未圧縮コラーゲンゲル(図14A)と圧縮(図14B)コラーゲンゲルのどちらに載せた外植片からも外方増殖し、外方増殖内の細胞は小さく規則的であることが認められた。外方増殖面積を記録し、3日目、5日目、7日目及び9日目に未圧縮コラーゲンゲル(14.1±0.4;35.7±1.2;63.0±2.4;117.5±5.1;mm2)上と圧縮コラーゲンゲル(12.3±0.4;41.4±1.3;57.1±3.2;147.2±4.8;mm2)上で夫々測定した。上皮外方増殖面積の定量分析によると、どちらのゲル型でも同等の指数的増殖であった(P>0.05)(図14C)。
【0126】
コラーゲンゲル上でのLSC懸濁液のエクスビボ増殖
滅菌条件下で未圧縮コラーゲンゲルと圧縮コラーゲンゲルを滅菌PBS緩衝液で3回洗浄後、トランスウェルインサート(Corning,UK)の底に置いた。単離したLECの100μl懸濁液を細胞106個/mlの密度で各ゲルに播種した。細胞を上記のような培地で2週間培養後、培地液面を下げることにより7日間空気に暴露した。培養物の表面とちょうど一致するように培地液面を下げ、培地で表面を湿潤させ、組織構築物がその先端面で湿潤状態に維持されるようにすることが重要であった。3週間インキュベーション後に、複数の細胞層をもつ角膜上皮構築物を試験に供した。
【0127】
電子顕微鏡解析
LEC増殖前後の圧縮コラーゲンゲル及び未圧縮コラーゲンゲルとコラゲナーゼ消化後の輪部環を走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)により試験した。試料を2.5%(v/v)グルタルアルデヒドで固定し、PBSで10分間3回洗浄し、1%四酸化オスミウム水溶液で2時間後固定した。次に試料をPBSで更に3回洗浄後、段階的エタノール系列(50%、70%、90%及び100%)に通した。SEMでは、試料をヘキサメチルジシラザンに20分間移し、風乾した。次にこれらの試料をアルミニウムスタブにマウントし、金をスパッターコートした後、SEM(FEI Quanta FEG 600,UK)を使用して試験した。TEMでは、脱水した試料をエポキシ樹脂(Agar 100;Agar Scientific,Ltd.,Stansted,UK)で包埋した。超薄(70nm)切片を銅グリッド上で採取し、酢酸ウラニルと1%ホスホタングステン酸で1時間染色後、レイノルズ法のクエン酸鉛で20分間染色した後、透過型電子顕微鏡(Philips CM20,Holland)を使用して試験した。
【0128】
コラーゲンゲルのSEM解析によると、未圧縮ゲル内のコラーゲン繊維は非常に緩く配置されている(図15A)が、圧縮ゲル内のコラーゲン繊維は稠密・均一であり(図15B)、上皮なし角膜基質(図15C)と同様の形態であると思われた。相対細孔寸法(コラーゲン繊維間の間隙)を比較すると、圧縮ゲルは上皮なし基質と同等であり、未圧縮ゲルよりも著しく小さく、一定した細孔寸法であった。
【0129】
異なる足場上のLEC分布の走査型電子顕微鏡解析
LECは未圧縮コラーゲンゲル上と圧縮コラーゲンゲル上のどちらでも増殖することが認められた。未圧縮ゲル上の細胞のSEM画像によると、細胞は不均一に分布しており、細胞形状は不規則であった(図16A)が、圧縮ゲル上の細胞の画像は正常ウシ角膜上の上皮(図16C)で見られると同様に、細胞が均等に分布し、形状と寸法が均一であることを明白に示した(図16B)。
【0130】
異なる足場上のLECの構造の透過型電子顕微鏡解析
未圧縮コラーゲンゲル内のコラーゲン繊維は緩く、直径が一定していない(図17A)が、圧縮ゲル内の線維は稠密で直径の変動が少なく、より規則的であった(図17B)。圧縮ゲル内のコラーゲン繊維は未圧縮足場に由来する繊維よりもウシ角膜に由来する正常間質繊維(図17C)とよく似ていた。TEM解析によると、未圧縮コラーゲンゲル上に播種したLECは細胞マトリックス結合も実質的な基底膜層も形成しないことが分かった(図17D)。他方、圧縮ゲル上で増殖させたLECは正常角膜上皮(図17F)で見られると同様に、明確な基底膜層を生じ、基底細胞に半接着斑形成を示した(図17E)。未圧縮コラーゲンゲル上には複数の細胞層が形成されたが、これらの細胞間には大きな間隙が存在し、細胞間結合は不良であることが分かった(図17G)。圧縮ゲル上で隣接細胞はやはり正常角膜上皮(図17I)と同様に接着斑構造を介して相互に結合していた(図17H)。
【0131】
免疫組織化学分析
コラーゲンゲル上でLEC増殖後に得られた角膜構築物を免疫蛍光法により試験した。0.4% Triton X−100を含有する50mMトリス緩衝生理食塩水(TBS;pH7.2)中、60分間室温にて凍結切片(厚さ10μm)を5%ウシ血清アルブミン(BSA)で処理した。次に0.4% Triton X−100を含有する1%BSAのTBS溶液で希釈したサイトケラチン(CK)3(50倍;Chemicon,UK)とCK14(100倍,Chemicon,UK)に対する一次抗体の存在下で切片を4℃にて一晩インキュベートした。FITC標識二次抗体(Sigma,UK)を使用した。切片をヨウ化プロピジウム(Sigma,UK)で共染色し、蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Meditec,Germany)で観察した。
【0132】
LECはどちらの型のコラーゲン足場上でも増殖及び重層化するのに成功したが、圧縮ゲル(図18B)上のほうが未圧縮ゲル(図18A)上よりも多くの細胞層を形成するため、圧縮群のほうが正常角膜上皮(図18C)と似ていることが分かった。ヨウ化プロピジウム(赤)で染色した組織切片は圧縮群よりも未圧縮群内のほうが核間距離が著しく長いことを明白に示した。未圧縮、圧縮及び正常ウシ基質上のmm2当たりの細胞密度は夫々0.41、0.72、0.81であった。分化角膜上皮細胞の特異的マーカーとして使用されることが多いCK3(緑)は正常角膜上皮(図18C)と同様に未圧縮コラーゲンゲル(図18A)及び圧縮コラーゲンゲル(図18B)上で増殖させた表面上皮細胞で検出された。
【実施例19】
【0133】
毒性試験
十分に性状決定されている眼表面毒素と新規ナノ粒子を使用して人工眼上皮が眼毒性を正確に測定する能力を上皮バリア機能、細胞生存能及び形態について評価する。
【0134】
眼刺激能について薬品を分類するECETOCデータバンク(ECETOC,Eye Irritation:ECETOC Technical Report.1998,Reference Chemicals Data Bank,ECETOC,Brussels,Belgium,p.236)から選択した試験薬品を一連の眼刺激性(即ち無刺激、低度、中度、重度)に割り当てる。液体試料濃度は歴史的インビボドレイズ試験記録に従って希釈用に脱イオン水を使用し、0.3% Triton X−100の陽性対照を使用する。種々の暴露時間(10分、20分、30分及び60分)にわたり、試験材料を上皮培養物の表面に直接添加する(液体/懸濁液100μl又は固体/粉末100mg)。粒径10〜20nmの金ナノ粒子を0.1nM、0.5nM及び1nMの濃度で角膜等価物の表面に24時間、48時間及び72時間滴下することによりナノ粒子毒性を評価する。各金ナノ粒子の周囲にコロナ層を形成する感熱性ブロックコポリマーであるポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)と共役した金ナノ粒子とペグ化金ナノ粒子も細胞及び組織毒性について評価する。誘導された細胞毒性(細胞増殖の変化)を常用のMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)比色アッセイ(Mosmann,T.J Immunol Methods,1983.65(1−2):p.55−63)により定量し、生存率百分率を計算する。毒性の定性的測定は細胞表面破裂の頻度及び程度と、細胞の微細な襞状構造及び微絨毛の外観を走査型電子顕微鏡(SEM)で評価することにより行う。角膜上皮の相対損傷を分類し易くするために、従来開発されている数値評価システムを使用する(Burstein,N.Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,1980.19(3):p.308−313)。他の毒性測定としては、トリパンブルー排除細胞生存率アッセイと、ストレス、毒性及びDNA損傷関連遺伝子に対するPCRアレーが挙げられる。ナノ金粒子局在及び検証用としてX線微量分析法(EDAX)も挙げられる。
【0135】
ECETOCデータベースに報告されているような角膜に及ぼす影響を定量する採点システムであるインビボ修正最大平均スコア(MMAS)とインビトロ幹細胞アッセイの実施可能性の関係を調べることによりモデルの予測性を評価する。ECETOC報告以外に、他の(インターネット)インビボデータソース(Toxnet,(http://toxnet.nlm.nih.gov):毒性、危険薬品及び関連領域に関するデータベース群)と他の代替試験モデル(例えばウシ摘出角膜の混濁及び透過性試験(Bovine Corneal Opacity and Permeability test);ナメクジ粘膜刺激試験(Slug Mucosal Irritation test);市販上皮モデル)で得られる結果も角膜幹細胞モデル最終妥当性評価に含まれる。
【0136】
上記実施例で使用した羊膜はクイーン・メアリーズ病院(UK)とノッティンガム大学(UK)を通して匿名女性ドナーから入手した。ノッティンガム大学から許可を得た。ヒト角膜はロイヤル・バークシャー病院(UK)を通して匿名ドナーから入手した。角膜細胞の使用については地域倫理委員会の承認を得た。
【実施例20】
【0137】
圧縮コラーゲンゲルのリボフラビン/UV架橋
圧縮コラーゲンゲルの機械的性質を改善するために、リボフラビンとUVを使用してこれらのゲルにおけるコラーゲン繊維を架橋した。基本的方法はWollensak G.et al.(American Journal of Ophthalmology,Volume 135,Issue 5,May 2003,pages 620−627)に記載されている。基本的に、圧縮コラーゲンゲルを0.1%リボフラビン溶液(20%デキストラン溶液10mL中リボフラビン10mg)中で30分間室温にてインキュベートした。コラーゲンゲルとUVAランプの間に5cmの距離をおいて365nmで30分間照射を行った。次にゲルをPBSで洗浄し、未使用リボフラビンを除去した。
【0138】
8個の圧縮ゲルに関するデータを以下に示す。他の情報を図19〜21に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
角膜上皮細胞の特異的マーカーとして使用されることが多いCK3は圧縮コラーゲンゲル(図10A)と上皮なしAM(図10B)上で増殖させたLECと同様にリボフラビン/UV処理した圧縮コラーゲンゲル(図22)上で増殖させたLECの表面細胞層でも強く発現された。
【実施例21】
【0141】
圧縮コラーゲンゲル及びリボフラビン/UV処理した圧縮コラーゲンゲルの移植の臨床評価
角膜移植用としての圧縮コラーゲンゲルの適性を評価するために、圧縮コラーゲンゲル(図23A)とリボフラビン/UV処理したコラーゲンゲル(図23B)を損傷したウサギ角膜に縫合した。ウサギ角膜は予めその眼表面、即ち角膜上皮細胞層とその下の基質(コラーゲンマトリックス)の一部を外科的に除去しておいた。リボフラビン/UV処理したコラーゲンゲルはその機械的強度の増加(実施例20)により、より良好に固定することができ、より完成度の高い移植片が得られた。
【技術分野】
【0001】
本発明は角膜細胞、特に輪部角膜上皮幹細胞の増殖用基材としての塑性圧縮コラーゲンゲルの使用に関する。このような基材上で増殖させた細胞を培養して人工眼上皮又は人工角膜組織を産生させ、眼毒性試験又は移植に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
商品化に先立ち、新規薬品や化粧品はこれらの新規薬品/化粧品の毒性を判定するためにドレイズウサギ眼刺激性試験等の眼毒性試験で試験する必要がある。眼は我々の日常環境に最も多く暴露され、化学的に感受性の末端器官であるため、この関連で使用されている。毎年何千羽ものウサギがこのような試験で使用されており、薬品や化粧品をウサギの目で試験するこの方法は過去50年間に殆ど変化していない。だが、ドレイズウサギ眼試験は倫理的な理由のみならず、ウサギとヒトの眼には大きな違いがあるため、科学的な理由からも批判されている。しかし、ドレイズ試験の代用として現在受け入れられている非動物試験はなく、ヨーロッパ法制の差し迫る変化に伴い、このような代用の必要が増すと思われる。
【0003】
動物モデルのインビトロ代用物の使用は臓器培養、ヒト細胞株及びヒトドナー組織を使用して従来検討されているが、これらのモデルの有効性は遺伝的不安定性、二次元組織培養の限界(上皮バリア機能をモデル化できない)、正常増殖及び分化の不足、種間の遺伝的多様性、並びに入手しにくさにより阻まれている。これらの理由から、三次元(3D)角膜モデルの必要性により、2種類の市販上皮モデル(SkinEthic Laboratories及びEpiOcular,MatTek Corp)が眼刺激試験のインビトロ代用物として最近開発されている。SkinEthicモデルは不死化ヒト角膜上皮細胞を使用しており(Doucet,O.et al.Toxicol In Vitro,2006.20(4):p.499−512)、MatTekモデルは正常ケラチノサイトを使用している(Van Goethem,F.et al.Toxicol.In Vitro,2006.20(1):p.1−17)。これらのモデルはどちらも角膜様上皮構造を示すが、生理的基材を使用していないばかりか、角膜幹細胞が角膜上皮の機能維持に果たす重要な役割をモデル化していない。
【0004】
角膜により生体内で提供される生理的基材に類似する角膜細胞の増殖用基材を提供する試みが行われている。羊膜、温度感受性ハイドロゲル、プラズマポリマーコート基材並びにコラーゲン、フィブリン及びフィブロネクチン/フィブリンゲルを含む多様な基材が試験されている。回収した角膜幹細胞の担体として羊膜、コラーゲンゲル及びコラーゲンシールドを比較すると、羊膜が最も優れた担体であることが判明した(Schwab,I.R.Trans.Am.Opthalmol.Soc.1999,97:p.891−986)。羊膜上で細胞を増殖させると、増殖、接着及び分化し易いため、それ以来、羊膜は標準角膜細胞基材として使用されている。羊膜は眼表面移植用角膜幹細胞の優れた臨床増殖用基材であることも分かっている(例えばKoizumi N et al.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2000;41:2506−2513)。
【0005】
しかし、羊膜は構造と化学組成の試料間及び試料内変動が大きく(Hopkinson,A.et al.Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,2006.47(10):p.4316−4322)、臨床使用前に必ずしも性状決定されない。最も重要な点として、基材としての羊膜は人工ポリマー構築物のスケーラビリティを欠く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、羊膜以外の基材上で増殖させた輪部幹細胞から角膜上皮移植片構築物を生体外で作製する試みが行われている。角膜幹細胞を使用するインビトロ眼毒性試験に適切な基材は、(i)幹細胞増殖を維持し、(ii)細胞重層化の確実な支持体を提供するという基本的要件を満たす必要がある。従って、本発明の1つの目的は、羊膜に似た組織加工性を示しながら、入手し易く、標準化し易い新規型の基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1側面において、本発明は角膜細胞の増殖用基材としての塑性圧縮コラーゲンゲルの使用を提供する。
【0008】
未圧縮コラーゲンゲルは間質液の周囲に連続足場を形成するコラーゲンフィブリルのマトリックスを含む。例えば、溶解したコラーゲンを希アルカリの添加により重合/凝集させ、架橋コラーゲンフィブリルのゲル化網目構造を形成することができる。フィブリルのゲル化網目構造は溶解したコラーゲン繊維の元の体積を維持し、間質液を保持する。このようなコラーゲンゲルの一般的な製造方法は当分野で周知である(例えばWO2006/003442、WO2007/060459及びWO2009/004351)。
【0009】
本願で使用する「塑性圧縮コラーゲンゲル」なる用語は、元の体積が外部圧縮/脱水処理により減少しており、元の間質液の一部又は大部分がゲルから除去されており、外部処理の停止後にコラーゲンゲルがその新しい(減少した)体積を維持しているようなコラーゲンゲルを意味する。塑性圧縮コラーゲンゲルは脱水されていると言うこともできる。
【0010】
(その重量の45倍の血液を吸収することが可能であると言われている)商標名Gelfoam(登録商標)として製造されているもの等の従来技術のコラーゲンゲルとは対照的に、本発明の塑性圧縮コラーゲンゲルは永久的に圧縮され、基本的に非吸収性である。この点で、「塑性圧縮」なる用語は圧縮がゲルの構造の永久的圧縮/変形をもたらすことを意味する。
【0011】
本願に記載する塑性圧縮ゲルはガラス化されず(即ち剛性のガラス様材料となる程度まで乾燥されない)、非ガラス様であり、非剛性であり、可撓性である。本願で使用されるコラーゲンゲルは線維芽細胞及び/又はケラチノサイト等の生細胞をその構造内に封入することが可能である。
【0012】
コラーゲンゲルで使用されるコラーゲンは任意のフィブリル形成コラーゲンとすることができる。フィブリル形成コラーゲンの例はI、II、III、V、VI、IX及びXI型である。ゲルは単一型のコラーゲンから構成してもよいし、異なる型のコラーゲンの混合物でもよい。好ましくは、ゲルはI型コラーゲンを含むか又はそれから構成される。本発明の所定態様において、ゲルはコラーゲンフィブリルのみから又は実質的にコラーゲンフィブリルから構成され、即ちコラーゲンフィブリルはゲルにおける唯一又は実質的に唯一のポリマーである。
【0013】
本発明の他の態様において、コラーゲンゲルは更に他の天然ポリマー、例えば絹、フィブロネクチン、エラスチン、キチン及び/又はセルロースを含むことができる。一般に、非コラーゲン天然ポリマーの量はゲルの5%未満、好ましくは4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満(wt/wt)とする。同様の量の非天然ポリマー(例えばポリラクトン、ポリラクチド、ポリグリコン(polyglycone)、ポリカプリルラクトン及び/又はリン酸塩ガラス)もゲルに存在することができる。
【0014】
間質液はコラーゲンフィブリルを溶解することができ、コラーゲンフィブリルをゲル化させることができる任意液体とすることができる。一般に、水性液体、例えば水性緩衝液又は細胞培養液である。
【0015】
本発明の所定態様では、角膜細胞の接着性を改善するために、コラーゲンゲルの一つ以上の表面にラミニン又は一つ以上のラミニンドメインをコートする。細胞外マトリックス(ECM)マルチドメイン三量体糖蛋白質であるラミニンは基底膜の主要な非コラーゲン成分であり、接着、増殖及び分化を助ける。ラミニンはマウスEngelbreth−Holm−Swarm(EHS)腫瘍(ラミニン−1)から最初に単離された。ラミニン蛋白は動物組織における構造足場の構成成分である。ラミニンはエンタクチンとペルレカンを介してIV型コラーゲンと会合し、インテグリン受容体、ジストログリカン糖蛋白複合体及びルーテル式血液型糖蛋白を介して細胞膜と結合する。
【0016】
本願で使用する「ラミニンドメイン」なる用語は特に、α鎖のRGD配列とIKVAV配列、β鎖のYIGSR、及びγ鎖のRNIAEIIKDIを包含する。
【0017】
好ましくは、ラミニンはEngelbreth−Holm−Swarmマウス肉腫基底膜に由来する。
【0018】
ラミニン又はラミニンドメインは例えば1〜2μg/cm2の濃度で使用することができる。ラミニン又はラミニンドメインは圧縮前又は後にコラーゲンゲルに塗布することができる。角膜細胞を配置する表面のみにコートすることが好ましい。これは例えば(使用時の)コラーゲンゲルの上面とすることができる。
【0019】
所定態様において、未圧縮コラーゲンゲルはゲル内に細胞を内包しなくてもよい。更に他の態様において、未圧縮コラーゲンゲルは1種以上の細胞を内包することができる。このような播種細胞の例としては、分化又は未分化形態の角膜線維芽細胞(ケラチノサイト)等の間質前駆細胞が挙げられる。好ましくは、これらの角膜線維芽細胞は周囲輪部又は輪部環を約0.02%コラゲナーゼの存在下で約37℃にて一晩インキュベートすることにより得られる。
【0020】
このような細胞が存在する場合には、一般に、例えば重合/凝集前にコラーゲン溶液と混合することにより、圧縮(即ち脱水)前にコラーゲンゲルに播種する。
【0021】
(ゲルに細胞を内包するか否かを問わずに)適切なゲル圧縮方法の例としては、
(i)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に圧縮力を加える方法;
(ii)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に脱水力を加える方法;
(iii)1面もしくは2面(例えば長さ及び/又は幅)にゲルを延伸する方法;又は
(iv)(i)〜(iii)の1種以上の組合せ
が挙げられる。
【0022】
ゲルの表面又は縁部の一つ以上に間質液吸収材を直接付着させる(即ち接触させる)方法と上記方法の各々を組合せてもよい。
【0023】
所定態様では、ゲルの表面又は縁部の一つ以上に圧縮力を加えることによりコラーゲンゲルの圧縮を生じさせておくことができる。圧縮力を加える間にゲルを拘束することが好ましい。ゲルの上面に圧縮力を加えることが好ましい。例えば、場合により間質液吸収材をゲルに付着させながら、ゲルの上面に荷重を加えることができる。荷重の量と圧縮時間は所望される圧縮レベルにより異なる。所定態様において、荷重は20〜100g、好ましくは40〜60g、最も好ましくは約50gとする。所定態様において、圧縮時間は10〜600秒間、好ましくは20〜400秒間、最も好ましくは約5分間とする。
【0024】
他の態様では、ゲルの一つ以上の表面又は縁部に脱水力を加えることによりコラーゲンゲルの圧縮を生じさせておくことができる。例えば、間質液吸収材をゲルの上面及び/又は下面に付着させることができる。このような液体吸収材の例としては、1枚以上のティッシュペーパー又は吸い取り紙が挙げられる。間質液吸収材を付着させる時間は所望される圧縮レベルにより異なる。
【0025】
更に他の態様では、1面又は2面(例えば長さ及び/又は幅)にゲルを延伸することによりコラーゲンゲルの圧縮を生じさせておくことができる。このような延伸の効果は間質液の一部を排出させることであると考えられる。例えば、ゲルを第1の縁部から吊り下げ、第2の(例えば対向する)縁部に荷重を加えることができる。荷重はゲルを破壊せずに延伸することが可能な量とする。ゲルの異なる軸方向に異なる荷重を加えることができる。荷重を加える時間と荷重の量は所望される圧縮レベルにより異なる。好ましい1態様では、例えば荷重を加えるゲルの一方又は両方の縁部に間質液吸収材を配置することにより、荷重と同一軸に沿って間質液排出力ないし脱水力を加えることができる。
【0026】
ゲルの圧縮の前又は後に、(a)一軸引張荷重を加える工程と、(b)前記荷重を除去する工程からなる1サイクル以上の反復サイクルをゲルに実施することができる。荷重の負荷と解除からなるこのような反復サイクルは圧縮ゲル内でコラーゲンフィブリルが配向するように融合するのを強化すると考えられる(例えばWO2007/060459参照)。
【0027】
圧縮コラーゲンゲルの他の製造方法も当分野で公知である(例えばWO2006/003442、WO2007/060459及びWO2009/004351)。
【0028】
外部圧縮/脱水処理下で、間質液は圧縮ゲルから永久的に除去される。得られたゲルは元の(未圧縮)ゲルに比較して体積が永久的に減少し、密度が増加し、強度が増加する。
【0029】
例えばコラーゲンゲルの体積を少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は99.9%減少させておくことができる。好ましくは、ゲルの体積は元の体積の0.1〜2.0%となる。
【0030】
圧縮を行うために必要な時間は適用する外部処理により変動し得る。例えば、圧縮を24時間未満、12時間未満、6時間未満、3時間未満又は1時間未満実施することができる。他の態様では、圧縮を30分未満、20分未満、10分未満、5分未満又は2分未満実施することができる。
【0031】
ゲルから失われる間質液の量は元のゲルに含まれる量に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%とすることができる。
【0032】
移植用又は眼毒性試験用又は本願に開示する他の任意用途用の人工眼上皮を製造するために、塑性圧縮コラーゲンゲルは好ましくは長さ1〜60mm、より好ましくは長さ20〜40mmとする。また、幅0.5〜60mm、好ましくは幅20〜40mmとすることができる。
【0033】
本発明の所定態様において、塑性圧縮コラーゲンゲルは厚さ5〜10000μm、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは厚さ20〜100μm、最も好ましくは厚さ約50μmのシート状である。
【0034】
塑性圧縮コラーゲンゲルの組成は一般にコラーゲン3〜4%(好ましくは3.3〜3.5%、より好ましくはコラーゲン約3.4%)であり、残余は緩衝液からの水と塩類/糖類である。この残余のうち、水が一般に>99%を構成する。
【0035】
圧縮コラーゲンゲルにおけるコラーゲンフィブリルの直径は好ましくは10〜100nmである。圧縮コラーゲンゲルにおけるコラーゲンフィブリルの間隔は好ましくは1〜200nmである。これらのパラメータは以下の方法により測定することができる。コラーゲンゲルを2.5%グルタルアルデヒドのPBS溶液で室温にて1時間、次いで1%四酸化オスミウムで室温にて1時間固定した後、エタノール濃度を(100%まで)上昇させて脱水し、次いで酸化プロピレンでガス処理した後、Agar 100樹脂を60℃で24時間重合して包埋する。70nm切片を切断し、クエン酸鉛と酢酸ウラニルで対比染色後、透過型電子顕微鏡(TEM)で試験し、コラーゲンフィブリル直及び間隔を定量することができる。この方法によりコラーゲンフィブリルの配向、例えば高度(又は低度)配向を定性的に評価することもできる。
【0036】
別の側面において、本発明は角膜細胞を増殖させるための基材としての塑性圧縮コラーゲンゲルの使用を提供する。
【0037】
本発明は更に、角膜幹細胞又は角膜幹細胞を含有する組成物を塑性圧縮コラーゲンゲル基材上で培養する段階を含む人工眼上皮の製造方法であって、基材上に人工眼上皮を産生する角膜上皮細胞集団を提供するような条件下で前記細胞又は組成物を培養する方法も提供する。
【0038】
本発明で使用される塑性圧縮ゲルは角膜細胞を増殖させるための基材を提供し、この基材は上皮なし角膜基質と形態的に類似する。細胞はこの基材の表面上で増殖し、このような細胞は基材の内側には全く又は基本的に全く増殖しない。塑性圧縮コラーゲンゲルの圧縮レベルは付着させた上皮細胞が圧縮ゲルの内側に内方増殖しないように選択される。
【0039】
所定態様では、その後、人工眼上皮を基材から分離する。
【0040】
本発明の他の態様では、人工眼上皮を塑性圧縮コラーゲンゲル基材上に保持し、前記基材を人工角膜基質として使用する。本願で使用する「人工角膜基質」なる用語は好ましくは本願に記載する塑性圧縮コラーゲンゲルを意味し、場合により角膜線維芽細胞及び/又はケラチノサイトを封入することができ、及び/又は場合により(好ましくはリボフラビン/UVを使用して)架橋することができる。
【0041】
所定態様では、人工眼上皮をその後、場合により人工眼上皮として使用するための説明書と共に、基材から分離するか又は分離せずにヒト組織の保存と防腐に適した培地、好ましくはコンドロイチン硫酸系保存培地、例えばOptisol(登録商標)(Bausch & Lomb)で保存する。
【0042】
好ましくは、塑性圧縮コラーゲンゲル基材は本願に記載の方法により取得されるか又は取得可能である。
【0043】
本発明は上記方法により取得されるか又は取得可能人工眼上皮も提供する。
【0044】
本発明は更に基底細胞の内側及び下側の基底膜成分(例えばラミニン、インテグリン、半接着斑)と共に、CK3(サイトケラチン3)分化マーカーとCK14(サイトケラチン14)未分化マーカーの双方を発現する3〜7層の細胞層からなる連続重層化上皮を含み、好ましくは本願に記載する方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮も提供する。
【0045】
人工眼上皮は好ましくは450nmにおける光学密度(OD)が0.00〜0.50である。好ましくはケラチノサイトと人工眼上皮を包埋したラミニンコート塑性圧縮コラーゲンゲルはOD(450nm)が0.01〜0.10、好ましくは約0.073である。
【0046】
人工眼上皮内における接着斑及び半接着斑(夫々細胞−細胞及び細胞−基材接着複合体)の存在を使用し、その下のマトリックスとの組織一体性及び接着性を定量することができる。特に、本発明は一部もしくは全基底細胞に半接着斑が存在しており、及び/又は一部もしくは全隣接上皮細胞が接着斑構造を介して相互に結合している人工眼上皮に関する。
【0047】
角膜幹細胞を含有する組成物は好ましくは輪部上皮細胞を含有しており、即ち角膜の縁部の輪部から取得可能な幹細胞と分化細胞の不均一混合物を含有する。換言するならば、角膜幹細胞を含有する組成物は角膜幹細胞とまだ完全には角膜上皮表現型に移行していない細胞の混合物を含有することができる。
【0048】
本願で使用する「角膜細胞」なる用語は動物(好ましくは哺乳動物)角膜から得られた細胞を意味する。好ましくは、細胞は角膜の輪部環、即ち結膜、虹彩及び中心角膜を除く角膜の外縁部から得られる。細胞は上皮細胞を含むか又は前記細胞から構成することができる。細胞は角膜幹細胞、好ましくは輪部角膜上皮幹細胞を含むか又は前記細胞から構成することができる。好ましくは、角膜幹細胞はヒト角膜幹細胞である。
【0049】
ゲルの機械的特性を改善するために、圧縮前又は後に圧縮コラーゲンゲルにおけるコラーゲンを架橋することができる。好ましくは、架橋はリボフラビンとUV(好ましくはUVA、最も好ましくは約365nm)を使用して実施される。例えば、架橋は圧縮ゲルをリボフラビン溶液(好ましくは15〜25%デキストラン溶液中0.05〜0.2%リボフラビン)中で室温にて20〜40分間インキュベートすることにより実施することができる。その後、未使用リボフラビンが存在する場合には、例えばPBSを使用してゲルから洗い流すことができる。このように処理されたコラーゲンゲルは未処理ゲルに比較して大きな荷重に耐えることができ、眼表面に移植した場合に縫合糸により良好に固定される。
【0050】
本発明の所定態様において、架橋は1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)又はN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又は他の任意のカルボジイミド系もしくはスクシンイミド系架橋剤を使用して実施されない。
【0051】
本発明の好ましい1態様では、(好ましくはリボフラビン/UVを使用して架橋された)架橋塑性圧縮コラーゲンゲルを使用し、圧縮ゲルは細胞を封入していない。
【0052】
本発明は更に、コラーゲン繊維が(好ましくはUV光を使用して)リボフラビンを使用して架橋された塑性圧縮コラーゲンゲルと、人工眼上皮を増殖させることができる基材としての用途及び本願に開示する他の用途における前記ゲルの使用も提供する。好ましくは、塑性圧縮コラーゲンゲルは本願に開示する方法により製造されたものである。
【0053】
前記組成物又は幹細胞は基材の表面に人工眼上皮を産生する角膜上皮細胞集団を提供するような条件下で培養される。このような条件は当分野で周知である(例えばEbato B.,et al.Invest.Opthalmol.Vis.Sci.1988;29:1533−1537;de Paiva C.S.et al.Stem Cells 2005;23:63−73)。
【0054】
本発明は更に本発明の人工眼上皮を含む人工眼組織と、本発明の方法により取得されるか又は取得可能な塑性圧縮コラーゲンゲル基材も提供し、人工眼上皮は塑性圧縮コラーゲンゲル基材の表面で増殖中であるか又は増殖していることが好ましい。
【0055】
本発明は更に人工眼上皮又は人工眼組織に及ぼす試験化合物の効果を評価する方法であって、
(a)本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織を準備する段階と;
(b)人工眼上皮又は人工眼組織を一定量の試験化合物と接触させる段階と;
(c)人工眼上皮又は人工眼組織に及ぼす化合物の効果を評価する段階
を含む方法も提供する。
【0056】
化合物の効果は例えば任意分析、生化学、光学、顕微鏡又は他の手段により評価することができる。
【0057】
所定態様において、評価する効果は人工眼上皮もしくは組織の光学特性の変化、又は人工眼上皮もしくは組織の透過性の変化である。例えば試験化合物の添加前後に前記変化を測定することができ、又は前記変化を対照と比較することができる。
【0058】
他の態様では、人工眼上皮もしくは組織の組織学試験、又は前炎症メディエーターの産生の測定により化合物の効果を評価することができる。
【0059】
本発明は更に哺乳動物角膜に対する試験化合物の毒性の指示を提供するための本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織の使用も提供する。
【0060】
他の態様において、本発明は角膜上皮の基礎/基本生物学、例えば増殖、分化、結合及び重層化の分子制御を研究するためのモデルを提供するための、本発明の方法により取得されるか又は取得可能な眼上皮又は組織の使用を提供する。
【0061】
本発明は更に本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織の人工角膜としての使用も提供する。
【0062】
本発明は更に細胞の送達を必要とする組織への細胞組織剤としての本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織の使用も提供する。
【0063】
本発明は更に、
(a)本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織を準備する段階と;
(b)眼損傷を前記人工眼上皮又は組織と接触させる段階と;場合により
(c)前記人工眼上皮又は組織を眼損傷部位に固定する段階
を含む眼損傷の治療方法も提供する。
【0064】
治療することができる眼損傷としては、幹細胞機能を維持するために不十分な間質微小環境に関連するもの(例えば無虹彩症、角膜炎、神経栄養性角膜症及び慢性角膜輪部炎);又は輪部幹細胞を破壊する外部因子に関連するもの(例えば化学もしくは熱傷害、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼瘢痕性類天疱瘡、コンタクトレンズ使用又は広範な微生物感染症)が挙げられる。
【0065】
本発明は更に治療方法、好ましくは上記のもの等の眼損傷の治療方法で使用するための上記方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織も提供する。
【0066】
本発明は更に治療方法、好ましくは上記のもの等の眼損傷の治療方法で使用するための組成物の製造における上記方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織の使用も提供する。
【0067】
本発明は更に、
(a)本発明の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織を準備する段階と;
(b)哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する段階
を含む哺乳動物対象における角膜置換方法も提供する。
【0068】
本発明は更に、外科処置方法で使用するための上記方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織も提供し、好ましくは哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する。
【0069】
本発明は更に、外科処置方法で使用するための組成物の製造における上記方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮又は組織の使用も提供し、好ましくは哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ウシ角膜基質の輪部に由来するケラチノサイトによる一次スフィア形成。夫々5日間(A)、7日間(B)及び9日間(C)培養した代表的なスフィア。(D):一次スフィアから分化した子孫。目盛線=50μm。
【0071】
【図2】包埋されたケラチノサイトの生死染色。A:7日間培養後に圧縮コラーゲンゲル内に包埋されたケラチノサイト。B:ケラチノサイトはその緑色染色により生存していると判断された。C:赤色染色を示す死んだケラチノサイトは検出されなかった。
【0072】
【図3】3A−B。ヒト角膜(図3A)及び羊膜(図3B)の透過型電子顕微鏡写真(TEM)。
【0073】
【図4】4A−B。羊膜のX線回折(図4A)にX線回折パターン(図4B)を横断するトランセクトを示す。
【0074】
【図5】各種足場の走査型電子顕微鏡写真。A:圧縮コラーゲンゲル;B:上皮なし羊膜。
【0075】
【図6】角膜上皮シートと正常ウシ角膜上皮の透過型電子顕微鏡画像。A:基底細胞は半接着斑結合(矢印)により圧縮コラーゲン足場と良好に接着するようであった;B:正常ウシ角膜上皮における半接着斑結合(矢印);C:隣接細胞は圧縮ゲル上で接着斑結合(矢印)を明白に示した;D:正常角膜上皮における接着斑結合(矢印)。目盛線:800nm。
【0076】
【図7】透明度の評価。A:1本目(「コラーゲン」)ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル;2本目(「AM」)上皮なし羊膜;3本目(「コラーゲン+」)LECを圧縮コラーゲンゲル上で増殖させた組合せ;4本目(「AM+」)LECを上皮なし羊膜上で増殖させた組合せ。組織を96ウェルプレートに入れた。B:得られたOD測定値。棒グラフは平均と標準偏差を示す。
【0077】
【図8】図8A−C。単離した輪部細胞の羊膜上への重層化。基礎培地で11日間インキュベーション後の輪部小片からの増殖細胞(A)と14日後の懸濁細胞(B)。脱水コラーゲンシート上で増殖させた細胞は同等レベルの細胞密度と重層化を示す(C)。染色は細胞核を示す。
【0078】
【図9】図9A−B。11日間培養後の角膜輪部細胞のK3(赤)及びK14(緑)、DAPI(青)二重標識の20倍顕微鏡写真。懸濁培養細胞(A)と外植片培養細胞(B)。目盛線:100μm。
【0079】
【図10】増殖させた輪部上皮細胞の免疫蛍光染色。A:ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル上のLEC(赤)のCK3染色(緑)。B:上皮なし羊膜上のLEC(青)のCK3染色(赤)。C:ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル上のLEC(赤)のCK14(緑)染色。D:上皮なし羊膜上のLEC(青)のCK14(緑)染色。目盛線=50μm。
【0080】
【図11】ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル(コラーゲン)と上皮なし羊膜(AM)上で培養したLECのCK3(A−「K3」)及びCK14(B−「K4」)発現のウェスタンブロッティング及びイムノブロッティング。
【0081】
【図12】ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル(コラーゲン)と上皮なし羊膜(AM)上で培養したLECのCK12mRNA発現。
【0082】
【図13】コラーゲンゲルの塑性圧縮。A:安定化した未圧縮コラーゲンゲル;B:安定化したコラーゲンゲルのPC法を示す図;C:圧縮コラーゲンゲル。
【0083】
【図14】輪部上皮外方増殖。A:未圧縮コラーゲンゲル上の外植片外方増殖;B:圧縮コラーゲンゲル上の外植片外方増殖;C:コラーゲン足場上の外植片外方増殖面積を示すグラフ。目盛線=50μm。
【0084】
【図15】各種足場の走査型電子顕微鏡写真。A:未圧縮コラーゲンゲル;B:圧縮コラーゲンゲル;C:上皮なしウシ角膜基質。
【0085】
【図16】コラーゲンゲルと正常角膜上のLECの走査型電子顕微鏡。A:未圧縮コラーゲンゲル上の細胞;B:圧縮コラーゲンゲル上の細胞;C:正常ウシ角膜上皮。
【0086】
【図17】コラーゲン繊維、角膜上皮シート及び正常ウシ角膜上皮の透過型電子顕微鏡画像。A−C:各種足場、即ち未圧縮コラーゲンゲル(A)、圧縮コラーゲンゲル(B)及び正常ウシ角膜基質(C)に由来するコラーゲン繊維;D:基底細胞は未圧縮コラーゲンゲルとさほど良好に接着しない;E:基底細胞は半接着斑結合(矢印)により圧縮コラーゲン足場と良好に接着するようである;F:正常ウシ角膜上皮における半接着斑結合(矢印);G:未圧縮ゲル上では細胞層間に大きな間隙(矢印)が目立つ;H:隣接細胞は圧縮ゲル上で接着斑結合(矢印)を明白に示す;I:正常角膜上皮における接着斑結合(矢印)。目盛線:(A−C)10μm;(D−I)1μm。
【0087】
【図18】コラーゲンゲルと正常ウシ角膜上皮上で増殖させた細胞の免疫染色。ヨウ化プロピジウム(赤)とCK3(緑)。A:細胞は未圧縮コラーゲンゲル上で増殖した;B:細胞は圧縮コラーゲンゲル上で増殖した;C:正常ウシ角膜上皮。目盛線=50μm。
【0088】
【図19】未処理(左)及びリボフラビン/UV処理後(右)の圧縮コラーゲンゲル。
【0089】
【図20】圧縮コラーゲンゲルの破壊応力を解析するために使用した装置。
【0090】
【図21】未処理(図21A)及びリボフラビン/UV処理後(図21B)の圧縮コラーゲンゲルの時間に対する荷重増加の例。
【0091】
【図22】リボフラビン/UV処理したコラーゲンゲル上で増殖させた細胞の免疫染色。ヨウ化プロピジウム(赤)とCK3(緑)。角膜輪部細胞はリボフラビン処理した圧縮コラーゲンゲル内で増殖することができる。
【0092】
【図23】ウサギの眼表面に移植した圧縮コラーゲンゲル(ラメラ移植片)。A:一旦移植した圧縮コラーゲンゲルは縫合糸を有効に固定しない;B:リボフラビン処理した圧縮コラーゲンゲルはより良好に縫合・固定できるため、移植を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、実施例中、特に指定しない限り、部及び百分率は重量に基づき、温度は摂氏である。当然のことながら、これらの実施例は本発明の好ましい態様を示すものであるが、例証に過ぎない。上記記載とこれらの実施例から、当業者は本発明の基本的な特徴を把握することができ、発明の趣旨と範囲内で、各種用途及び条件に適応するように本発明の種々の変更及び改変を行うことができる。従って、本願に提示及び記載するものに加えて本発明の種々の改変が以下の記載から当業者に想到されよう。このような改変も特許請求の範囲に含むものとする。本願に記載する各資料の開示は全体を本願に援用する。
【実施例1】
【0094】
一次スフィア形成アッセイを使用したケラチノサイトの単離
現地食肉処理場(Chity卸売食肉処理場,Guildford,UK)から死亡後2時間以内に正常ウシ眼球を入手し、4℃の実験室に輸送し、すぐに使用した。標準アイバンク技術を使用して角強膜を切離した。要約すると、角強膜組織をダルベッコ最小必須培地(DMEM,GIBCO)で3回リンスした。中心角膜、余分な強膜、虹彩、角膜内皮、結膜及びテノン嚢を注意深く除去した後、残りの輪部周辺部を約25mm2の小片に裁断した。次にこれらの小片から輪部基質ケラチノサイトと上皮細胞を単離した。輪部基質ケラチノサイト単離には、輪部周辺部の小片を0.02%コラゲナーゼ(GIBCO)の存在下で37にて一晩インキュベートした。次に残りの輪部基質小片を採取し、0.2% EDTA(Sigma,UK)で37℃にて5分間処理後、21ゲージ針で吸引し、シングルセルに分離した。遠心後、B27(Invitrogen,UK)、上皮増殖因子(EGF,Sigma,UK)20ng/ml、塩基性線維芽細胞増殖因子(Mary Ann Liebert,Inc.,140 Huguenot Street,New Rochelle,NY 10801)(bFGF,Sigma,UK)40ng/ml、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100μg/ml、及びアンホテリシンB250ng/mlをDMEM/ハムF12培地(DMEM/F12,1:1)に添加した基礎培地に細胞を再懸濁した。スフィア形成アッセイを利用し、メチルセルロースゲルマトリックス(0.8%,Sigma−Aldrich)を添加した基礎培地を使用してこれらの単離した輪部ケラチノサイトを培養した。生存細胞10個/μlの密度で60mm培養皿27に播種した。
【実施例2】
【0095】
スフィアコロニーの分化
懸濁した輪部ケラチノサイトから7日間培養後に形成された一次スフィアを顕微鏡試験のために、ポリ−L−リジン(Sigma,UK)50μg/mlとフィブロネクチン(Sigma,UK)10μg/mlをコートしたガラスカバースリップに移した。輪部ケラチノサイトの分化を促進するために、1%胎仔ウシ血清を基礎培地に加え、7日間培養を続けた。得られた分化ケラチノサイトを0.25%トリプシンと0.02% EDTA(Sigma,UK)で消化し、細胞2.0×105個の密度で基礎培地に再懸濁した。
【0096】
輪部基質をシングルセルに分解して9日間培養すると、この期間中に細胞の生存可能なスフィアが増殖した。5日間、7日間、9日間培養した代表的なスフィアの写真を夫々図1A、1B及び1Cに示す。各スフィアから分化した子孫は典型的な線維芽細胞様形態を示した(図1D)。
【実施例3】
【0097】
無細胞コラーゲンゲルの形成
1モル水酸化ナトリウム(Merck,Leicestershire,UK)0.5mLを添加した10倍濃度イーグル最小必須培地(Gibco,Paisley,UK)1mLで滅菌ラット尾I型コラーゲン(First Link Ltd.West Midlands,UK)4mLを中和することにより、従来記載されているように無細胞コラーゲンゲルを作製した(Brown et al.,Adv.Funct.Mater.,2005,15:1762−1770)。ゲルを長方形金型(33mm×13mm×4mm)に注入し、37℃ 0.5% CO2インキュベーターで30分間硬化/安定化させた。硬化及びインキュベーション後、加圧とナイロンメッシュ層及び紙シートを使用する吸取法の併用によりゲルを圧縮した(Brownらは更に金属ワイヤーメッシュも使用したが、これは使用しなかった)。ゲルの圧縮を行うために、ナイロンメッシュ1層(50μmメッシュサイズ)を吸収紙の二重層に重ね、コラーゲンゲルをナイロンメッシュに載せ、第2のナイロンメッシュを被せ、50g荷重を5分間室温で加え、2枚のナイロンメッシュ間に保護された平坦なコラーゲンシート(厚さ20〜40μm)を形成した。
【実施例4】
【0098】
線維芽細胞を組込んだコラーゲンゲルの形成
新鮮な角膜組織又は線維芽細胞株から抽出した間質線維芽細胞のペレットを10倍濃度イーグル最小必須培地(Gibco,Paisley,UK)1mL中で滅菌ラット尾I型コラーゲン(First Link Ltd.West Midlands,UK)4mに懸濁し、1モル水酸化ナトリウム(Merck,Leicestershire,UK)0.5mLで中和する。細胞を含むゲルを長方形金型(33mm×13mm×4mm)に注入し、37℃ 0.5% CO2インキュベーターで30分間硬化/安定化させる。硬化及びインキュベーション後、加圧とナイロンメッシュ層及び濾紙シートを使用する吸取法の併用によりゲルを圧縮する。ゲルの圧縮を行うために、ナイロンメッシュ1層(50μmメッシュサイズ)を吸収紙の二重層に重ね、コラーゲンゲルをナイロンメッシュに載せ、第2のナイロンメッシュを被せ、50g荷重を5分間室温で加え、2枚のナイロンメッシュ間に保護された平坦なコラーゲンシート(厚さ20〜40μm)を形成する。
【実施例5】
【0099】
コラーゲンゲルのラミニンコーティング
場合により、得られたケラチノサイト包埋圧縮コラーゲンゲルを次に6ウェルプレート(transwells,costar)に移し、各ゲルにラミニン溶液(50μg/ml,Sigma,UK)をコートし、37℃で2時間インキュベートし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄すると、その時点でコラーゲン足場はLEC増殖に使用可能な状態になった。
【実施例6】
【0100】
ケラチノサイト生存アッセイ
FBS(Sigma,UK)10%、DMSO(Sigma,UK)0.5%、EGF(Sigma,UK)10ng/ml、インスリン(Sigma,UK)5mg/ml、ペニシリン100IU/ml及びストレプトマイシン100mg/mlを添加したDMEM/ハムF12(DMEM/F12)培地で7日間培養後に生死二重染色キット(Calbiochem,German)を使用して圧縮ゲル内に包埋されたケラチノサイトの生存を試験した。キットは細胞透過性緑色蛍光色素であるcyto−dyeを利用して生細胞を染色し、透過を生じる膜損傷がある場合にしか細胞に侵入することができない非透過性赤色蛍光色素であるヨウ化プロピジウム(PI)により死細胞を染色した。共焦点顕微鏡(LEICA DMIRE2,German)を使用して生死ケラチノサイト比を検出した。
【0101】
包埋されたケラチノサイトを7日間培養したが、この間にコラーゲンゲルはその寸法がさほど変化しなかった。ゲル内の細胞を生死二重染色で処理し、共焦点顕微鏡により試験した(図2A)。ゲル内の種々の深度に焦点を当てることにより、細胞は依然として生存可能であり(図2B)、死細胞は認められない(図2C)ことが検出され、ケラチノサイトをコラーゲンゲル内に封入した後に圧縮してもこの期間中に細胞生存能に影響しないと判断された。
【実施例7】
【0102】
角膜、羊膜及びコラーゲンゲルの構造詳細
ヒト角膜及び羊膜を透過型電子顕微鏡(TEM)で解析した処、コラーゲン繊維直径、間隔及び/又は配向の点で構造の類似性が判明した(図3,A及びB)。羊膜のX線回折の結果、フィブリル直径43nm、フィブリル間隔46nmであり、フィブリル組織化を示した(図4)。
【実施例8】
【0103】
輪部細胞からの細胞懸濁液の調製
輪部上皮細胞単離のために輪部環構造を維持しながら、角膜の外縁部の輪部環を結膜、虹彩及び中心角膜から切離した。輪部環を長さ約1cmの数個の小片に裁断し、DMEM,FM12(1:1)培地(Fisher Sci,U.K.)、抗生物質50μg/ml、FBS 5%、ジメチルスルホキシド0.5%、ヒト上皮増殖因子2ng/ml、インスリン5μg/ml、B27サプリメント培地(Fisher Sci,U.K.)を含有する基礎培地中、0.02% IA型コラゲナーゼ(Sigma−Aldrich)の存在下、加湿5%二酸化炭素及び95%空気、37℃の雰囲気下で37℃にて12時間インキュベートした。
【0104】
酵素の存在下でインキュベートした輪部小片から先細ピンセットで上皮シートを剥離し、0.05%トリプシン/EDTAを加えた15ml管に移し、37℃で10〜15分間インキュベートし、最後に21ゲージ針で撹拌することによりシングルセルに解離した。FBSを添加した基礎培地を加えることによりトリプシン/EDTAを除去した後、室温にて1000rpmで5分間の遠心を数回実施した。細胞を基礎培地に再懸濁し、コラーゲンゲル又は羊膜に播種した。
【実施例9】
【0105】
輪部幹細胞を含む外植片の作製
輪部環構造を各々5mm×5mm平方の小片8〜10個に均等に裁断し、最後に下部の輪部基質(基質の厚さの約3分の2)も注意深く除去した。輪部小片を滅菌PBSで3回洗浄後、ペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質溶液(Gibco)で3分間リンスした。上皮側を上にして角膜輪部小片をシャーレに入れ、基礎培地に浸した。輪部小片を加湿5%二酸化炭素及び95%空気の雰囲気下で37℃にて2〜3日間インキュベートした。輪部上皮細胞がシャーレ上で輪部外植片の縁部に沿って遊走しているのを(倒立光学顕微鏡により)確認できたら、「健康」であり、更に培養するのに適しているとみなした。このような輪部小片をプラスチック皿から注意深く取り出し、蓋付き6ウェルプレート内の培養インサートにより静かに基材(コラーゲンゲル又は羊膜)に移した。
【実施例10】
【0106】
圧縮コラーゲンゲル及び上皮なし羊膜上の輪部上皮細胞の増殖
羊膜(AM)を滅菌PBS緩衝液で3回洗浄後、37℃にて30分間0.25%トリプシン処理した。インキュベーション後、膜上の上皮細胞をスクレーパで掻き取った。次に、基底膜表面を上に向けて無細胞AMを6個のトランスウェルに移した。ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAMに単離したLSCを106個/mlの密度で播種した。14日後に、培地液面を下げることにより、増殖させたLECを更に7日間空気に暴露した。3週間インキュベーション後に、複数の細胞層をもつ角膜上皮膜を更に試験に供した。
【実施例11】
【0107】
電子顕微鏡解析
圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAMの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により試験した。圧縮コラーゲンゲル上で増殖させたLECを透過型電子顕微鏡(TEM)により試験した。全試料を2.5%(v/v)グルタルアルデヒドで固定し、PBSで10分間3回洗浄し、1%四酸化オスミウム水溶液で2時間後固定した。次に試料をPBSで更に3回洗浄後、段階的エタノール系列(50%、70%、90%及び100%)に通した。SEMでは、試料をヘキサメチルジシラザンに20分間移し、風乾した。次にこれらの試料をアルミニウムスタブにマウントし、金をスパッターコートした後、SEM(FEI Quanta FEG 600,UK)を使用して試験した。TEMでは、脱水した試料をエポキシ樹脂(Agar 100;Agar Scientific,Ltd.,Stansted,UK)で包埋した。超薄(70nm)切片を銅グリッド上で採取し、酢酸ウラニルと1%ホスホタングステン酸で1時間染色後、レイノルズ法のクエン酸鉛で20分間染色した後、透過型電子顕微鏡(Philips CM20,Holland)を使用して試験した。
【0108】
圧縮ゲル(図5A)内のコラーゲン繊維のSEM解析によると、稠密・均質であり、上皮なしAM(図5B)と同様の形態及び構造であると思われた。
【0109】
TEM解析によると、圧縮ゲル上で増殖させたLECは正常角膜上皮(図6B)と同様に基底細胞に半接着斑形成(図6A)を示すことから、明確な基底膜層を生じることが判明した。更に、隣接細胞はやはり正常角膜上皮(図6D)で認められると同様に、接着斑構造を介して相互に結合していた(図6C)。
【実施例12】
【0110】
透明度の評価
LEC増殖前後の圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAMの透明度を評価するために、得られた角膜構築物をトレフィンで直径3.5mmの小片に裁断し、96ウェル培養プレートのウェルに1個ずつ入れた。Bio−Tek Instrument(Elx800UV,UK)を使用して組織光学密度(OD)を測定した。
【0111】
圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAM上で増殖させたLECの透明度の比較を容易にするように光学密度(450nmのOD)測定を行った(図7A)。ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル(0.003±0.001)と上皮なしAM(0.003±0.001)からのOD値は非常に低く、相互間に有意差はなかった(P>0.05)。各々増殖させたLECを添加後にケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAMから測定したOD値は夫々0.073±0.003及び0.072±0.003であり、相互間に有意差はなかった(P>0.05)(図7B)。
【実施例13】
【0112】
コラーゲンゲル又は羊膜上への輪部細胞の重層化
核(DAPI)染色は輪部外植片(図8A)と輪部懸濁培地(図8B)を使用して増殖させた10〜14日間培養後の細胞間の角膜輪部細胞の重層化の程度を示した。培養した輪部細胞の重層化は10〜14日間培養後に3〜6層であった。脱水(塑性圧縮)コラーゲンゲル上で増殖させた輪部細胞でも同等レベルまでの重層化が認められた(図8C)。
【実施例14】
【0113】
免疫化学分析
圧縮コラーゲンゲルと上皮なしAM上でLEC増殖後に得られた角膜構築物を免疫蛍光顕微鏡により試験した。角膜構築物をOCT(TissueTek)で包埋し、液体窒素で凍結後、凍結切片を作成した。免疫化学分析前に、0.4% Triton X−100を含有する50mMトリス緩衝生理食塩水(TBS;pH7.2)中、5%ウシ血清アルブミン(BSA)を使用して各切片(厚さ10μm)を60分間室温にてブロックした。次に0.4% Triton X−100を含有する1%BSA/TBSで希釈したサイトケラチン(CK)3(50倍;Chemicon,UK)とCK14(100倍,Chemicon,UK)に対する一次抗体の存在下で切片を4℃にて一晩インキュベートした。FITC標識二次抗体(50倍,Sigma,UK)を室温で1時間使用した。切片をヨウ化プロピジウム(Sigma,UK)で共染色し、蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Meditec,Germany)で観察した。
【実施例15】
【0114】
培養輪部細胞内のK14及びK3発現
懸濁した輪部上皮細胞は基底層細胞内で強いK14発現(未分化細胞のマーカー)を示し、エアリフト前にCK3(分化細胞のマーカー)陰性であった(図9A)。3〜4層の厚い基底細胞が緊密な細胞空間配置を示し、細胞間空間は殆どなかった。細胞核は高い核/細胞質比を示した。有棘層細胞は平坦になる傾向が強く、細胞境界が明確であり、これらの細胞はCK14陰性であると同時にCK3陰性であった。
【0115】
同一条件下の輪部外植片培養細胞もCK14陽性染色を示し(図9B)、CK3も外植片培養細胞内で陰性又は非常に弱い染色であった。懸濁培養細胞と異なり、全細胞層(3〜4層)にCK4陽性細胞が認められ、最上層の有棘層上の一部の個々の細胞にも認められた。これらの全細胞は核/細胞質比が大きく、非常に緊密であった。
【0116】
角膜上皮細胞の特異的マーカーとして使用されることが多いCK3は圧縮コラーゲンゲル(図10A)と上皮なしAM(図10B)のどちらで増殖させたLECでも表面細胞層で強く発現された。別の角膜上皮マーカーであるCK14(推定前駆細胞マーカー)は圧縮コラーゲンゲル(図10C)と上皮なしAM(図10D)のどちらで増殖させたLECでも全細胞層で発現されることが判明した。
【実施例16】
【0117】
ウェスタンブロッティング
ケラチノサイトを包埋した圧縮コラーゲン足場と皮なしAM上で増殖させたLECに由来する蛋白質(各条件で蛋白質合計4μg;変形ローリー法を使用して推算)を10%ゲルで一次元ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分離した。蛋白質をポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に転写し、1倍トリス緩衝生理食塩水−Tween(TBS−T)(20mMトリス塩基,0.14M NaCl,0.1% Tween(登録商標)−20;pH7.6)に溶解した5%(w/v)脱脂粉乳の存在下でインキュベートすることにより膜との非特異的結合をブロックした。2%(w/v)脱脂粉乳を1倍TBS−Tに溶解した溶液で希釈した抗CK3一次抗体(1μgml−1)及び抗CK14一次抗体(1μgml−1)の存在下で膜を4℃にて一晩インキュベートした。ブロットを1倍TBS−Tで45分間洗浄後、マウス共役二次抗体(6000倍希釈)の存在下で室温にて2時間インキュベートした。増幅化学発光システムを使用して蛋白質をX線フィルムで検出した。
【0118】
どちらの足場(圧縮コラーゲンと上皮なしAM)上で培養したLECでもCK3蛋白質発現が認められ、CK3は上皮なしAM上で培養したLECよりも圧縮コラーゲン基材上で培養したLECのほうが強く発現された。CK14蛋白質もどちらの足場上で培養したLECでも認められ、2種類の足場の間に発現レベルの識別可能な差はなかった(図11)。
【実施例17】
【0119】
リアルタイム定量的PCR
TRI試薬(Sigma,Poole,UK)を製造業者のプロトコルに従って使用し、ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲン足場と上皮なしAM上の両方で培養したLECから全RNAを単離した。全RNAを分光計(GE healthcare,UK)により定量し、RevertAid H Minus First Strand cDNA合成キット(Fermentas,UK)を製造業者のプロトコルに従って使用し、RNA 1ngを逆転写した。オーダーメードPerfectProbeアッセイ(PrimerDesign,UK)を使用してケラチン12(アクセション番号:XM_001255461)遺伝子発現を定量した。2X qPCR Mastermix(Primerdesign,UK)10μl、再構成したパーフェクトプローブプライマー/プローブミックス(Primerdesign,UK)1μl、PCRグレード水(Primerdesign,UK)4μl及びcDNA(元の濃度の10倍希釈)5μlで最終反応容量20μlとなるように、各反応を3回ずつ実施した。非鋳型対照も試験した。ABI PRISM 7700 Sequence Detector(Applied Biosystem,UK)で96ウェルプレート(Fisher,UK)上でリアルタイム反応を実施した。
【0120】
Microsoft Excelを使用して(対応のない)スチューデントのt検定を実施し、ODとリアルタイムPCRデータを解析した。3回の独立した実験の平均と平均の標準誤差として結果を表し、P値≦0.05を有意とみなした。
【0121】
CK12は(その対応物であるCK3と同様に)分化角膜上皮細胞のマーカーである。ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHを対照として使用したリアルタイムPCRの結果、ケラチノサイトを包埋したラミニンコート圧縮コラーゲンゲル上で増殖させたLECにおけるCK12 mRNA発現レベル(1.18±0.09)は上皮なしAM上で増殖させたLEC(1.00±0.07)よりもやや高いことが判明した。この差は有意でないことが分かった(P>0.05)(図12)。
【実施例18】
【0122】
コラーゲンゲル上の輪部上皮外方増殖
上記のように無細胞コラーゲンゲルを作製した。インキュベーターで30分間硬化後、コラーゲンゲルが良好に形成され(図13A)、加圧とナイロンメッシュ層及び紙シートを使用する吸取法の併用により圧縮ゲルから液体を排出した(図13B)。圧縮コラーゲンゲルは稠密で機械的強度が高く、透明度が高かった(図13C)。
【0123】
コラーゲンゲル上の輪部上皮外方増殖
輪部外植片から角膜上皮細胞を増殖させた。前段階である単離段階から残存している無傷の輪部周辺部を小片(約2×2mm)に裁断し、上皮側を上にして2個の小片を圧縮コラーゲンゲルと未圧縮コラーゲンゲルの表面に直接載せ、上記のような細胞培養培地で培養した。細胞を倒立顕微鏡で観察しながら組織培養プレートの上面に外方増殖面積を記録した。3日目、6日目及び9日目に総外方増殖面積を正確に記録し、測定し、定量分析した。
【0124】
Microsoft Excelを使用して(対応のない)スチューデントのt検定を実施し、未圧縮コラーゲンゲルと圧縮コラーゲンゲル上のLSC外方増殖を比較した。3回の独立した実験の平均と平均の標準誤差として結果を表し、P値≦0.05を有意とみなした。
【0125】
3日後に、LECは未圧縮コラーゲンゲル(図14A)と圧縮(図14B)コラーゲンゲルのどちらに載せた外植片からも外方増殖し、外方増殖内の細胞は小さく規則的であることが認められた。外方増殖面積を記録し、3日目、5日目、7日目及び9日目に未圧縮コラーゲンゲル(14.1±0.4;35.7±1.2;63.0±2.4;117.5±5.1;mm2)上と圧縮コラーゲンゲル(12.3±0.4;41.4±1.3;57.1±3.2;147.2±4.8;mm2)上で夫々測定した。上皮外方増殖面積の定量分析によると、どちらのゲル型でも同等の指数的増殖であった(P>0.05)(図14C)。
【0126】
コラーゲンゲル上でのLSC懸濁液のエクスビボ増殖
滅菌条件下で未圧縮コラーゲンゲルと圧縮コラーゲンゲルを滅菌PBS緩衝液で3回洗浄後、トランスウェルインサート(Corning,UK)の底に置いた。単離したLECの100μl懸濁液を細胞106個/mlの密度で各ゲルに播種した。細胞を上記のような培地で2週間培養後、培地液面を下げることにより7日間空気に暴露した。培養物の表面とちょうど一致するように培地液面を下げ、培地で表面を湿潤させ、組織構築物がその先端面で湿潤状態に維持されるようにすることが重要であった。3週間インキュベーション後に、複数の細胞層をもつ角膜上皮構築物を試験に供した。
【0127】
電子顕微鏡解析
LEC増殖前後の圧縮コラーゲンゲル及び未圧縮コラーゲンゲルとコラゲナーゼ消化後の輪部環を走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)により試験した。試料を2.5%(v/v)グルタルアルデヒドで固定し、PBSで10分間3回洗浄し、1%四酸化オスミウム水溶液で2時間後固定した。次に試料をPBSで更に3回洗浄後、段階的エタノール系列(50%、70%、90%及び100%)に通した。SEMでは、試料をヘキサメチルジシラザンに20分間移し、風乾した。次にこれらの試料をアルミニウムスタブにマウントし、金をスパッターコートした後、SEM(FEI Quanta FEG 600,UK)を使用して試験した。TEMでは、脱水した試料をエポキシ樹脂(Agar 100;Agar Scientific,Ltd.,Stansted,UK)で包埋した。超薄(70nm)切片を銅グリッド上で採取し、酢酸ウラニルと1%ホスホタングステン酸で1時間染色後、レイノルズ法のクエン酸鉛で20分間染色した後、透過型電子顕微鏡(Philips CM20,Holland)を使用して試験した。
【0128】
コラーゲンゲルのSEM解析によると、未圧縮ゲル内のコラーゲン繊維は非常に緩く配置されている(図15A)が、圧縮ゲル内のコラーゲン繊維は稠密・均一であり(図15B)、上皮なし角膜基質(図15C)と同様の形態であると思われた。相対細孔寸法(コラーゲン繊維間の間隙)を比較すると、圧縮ゲルは上皮なし基質と同等であり、未圧縮ゲルよりも著しく小さく、一定した細孔寸法であった。
【0129】
異なる足場上のLEC分布の走査型電子顕微鏡解析
LECは未圧縮コラーゲンゲル上と圧縮コラーゲンゲル上のどちらでも増殖することが認められた。未圧縮ゲル上の細胞のSEM画像によると、細胞は不均一に分布しており、細胞形状は不規則であった(図16A)が、圧縮ゲル上の細胞の画像は正常ウシ角膜上の上皮(図16C)で見られると同様に、細胞が均等に分布し、形状と寸法が均一であることを明白に示した(図16B)。
【0130】
異なる足場上のLECの構造の透過型電子顕微鏡解析
未圧縮コラーゲンゲル内のコラーゲン繊維は緩く、直径が一定していない(図17A)が、圧縮ゲル内の線維は稠密で直径の変動が少なく、より規則的であった(図17B)。圧縮ゲル内のコラーゲン繊維は未圧縮足場に由来する繊維よりもウシ角膜に由来する正常間質繊維(図17C)とよく似ていた。TEM解析によると、未圧縮コラーゲンゲル上に播種したLECは細胞マトリックス結合も実質的な基底膜層も形成しないことが分かった(図17D)。他方、圧縮ゲル上で増殖させたLECは正常角膜上皮(図17F)で見られると同様に、明確な基底膜層を生じ、基底細胞に半接着斑形成を示した(図17E)。未圧縮コラーゲンゲル上には複数の細胞層が形成されたが、これらの細胞間には大きな間隙が存在し、細胞間結合は不良であることが分かった(図17G)。圧縮ゲル上で隣接細胞はやはり正常角膜上皮(図17I)と同様に接着斑構造を介して相互に結合していた(図17H)。
【0131】
免疫組織化学分析
コラーゲンゲル上でLEC増殖後に得られた角膜構築物を免疫蛍光法により試験した。0.4% Triton X−100を含有する50mMトリス緩衝生理食塩水(TBS;pH7.2)中、60分間室温にて凍結切片(厚さ10μm)を5%ウシ血清アルブミン(BSA)で処理した。次に0.4% Triton X−100を含有する1%BSAのTBS溶液で希釈したサイトケラチン(CK)3(50倍;Chemicon,UK)とCK14(100倍,Chemicon,UK)に対する一次抗体の存在下で切片を4℃にて一晩インキュベートした。FITC標識二次抗体(Sigma,UK)を使用した。切片をヨウ化プロピジウム(Sigma,UK)で共染色し、蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Meditec,Germany)で観察した。
【0132】
LECはどちらの型のコラーゲン足場上でも増殖及び重層化するのに成功したが、圧縮ゲル(図18B)上のほうが未圧縮ゲル(図18A)上よりも多くの細胞層を形成するため、圧縮群のほうが正常角膜上皮(図18C)と似ていることが分かった。ヨウ化プロピジウム(赤)で染色した組織切片は圧縮群よりも未圧縮群内のほうが核間距離が著しく長いことを明白に示した。未圧縮、圧縮及び正常ウシ基質上のmm2当たりの細胞密度は夫々0.41、0.72、0.81であった。分化角膜上皮細胞の特異的マーカーとして使用されることが多いCK3(緑)は正常角膜上皮(図18C)と同様に未圧縮コラーゲンゲル(図18A)及び圧縮コラーゲンゲル(図18B)上で増殖させた表面上皮細胞で検出された。
【実施例19】
【0133】
毒性試験
十分に性状決定されている眼表面毒素と新規ナノ粒子を使用して人工眼上皮が眼毒性を正確に測定する能力を上皮バリア機能、細胞生存能及び形態について評価する。
【0134】
眼刺激能について薬品を分類するECETOCデータバンク(ECETOC,Eye Irritation:ECETOC Technical Report.1998,Reference Chemicals Data Bank,ECETOC,Brussels,Belgium,p.236)から選択した試験薬品を一連の眼刺激性(即ち無刺激、低度、中度、重度)に割り当てる。液体試料濃度は歴史的インビボドレイズ試験記録に従って希釈用に脱イオン水を使用し、0.3% Triton X−100の陽性対照を使用する。種々の暴露時間(10分、20分、30分及び60分)にわたり、試験材料を上皮培養物の表面に直接添加する(液体/懸濁液100μl又は固体/粉末100mg)。粒径10〜20nmの金ナノ粒子を0.1nM、0.5nM及び1nMの濃度で角膜等価物の表面に24時間、48時間及び72時間滴下することによりナノ粒子毒性を評価する。各金ナノ粒子の周囲にコロナ層を形成する感熱性ブロックコポリマーであるポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)と共役した金ナノ粒子とペグ化金ナノ粒子も細胞及び組織毒性について評価する。誘導された細胞毒性(細胞増殖の変化)を常用のMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)比色アッセイ(Mosmann,T.J Immunol Methods,1983.65(1−2):p.55−63)により定量し、生存率百分率を計算する。毒性の定性的測定は細胞表面破裂の頻度及び程度と、細胞の微細な襞状構造及び微絨毛の外観を走査型電子顕微鏡(SEM)で評価することにより行う。角膜上皮の相対損傷を分類し易くするために、従来開発されている数値評価システムを使用する(Burstein,N.Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,1980.19(3):p.308−313)。他の毒性測定としては、トリパンブルー排除細胞生存率アッセイと、ストレス、毒性及びDNA損傷関連遺伝子に対するPCRアレーが挙げられる。ナノ金粒子局在及び検証用としてX線微量分析法(EDAX)も挙げられる。
【0135】
ECETOCデータベースに報告されているような角膜に及ぼす影響を定量する採点システムであるインビボ修正最大平均スコア(MMAS)とインビトロ幹細胞アッセイの実施可能性の関係を調べることによりモデルの予測性を評価する。ECETOC報告以外に、他の(インターネット)インビボデータソース(Toxnet,(http://toxnet.nlm.nih.gov):毒性、危険薬品及び関連領域に関するデータベース群)と他の代替試験モデル(例えばウシ摘出角膜の混濁及び透過性試験(Bovine Corneal Opacity and Permeability test);ナメクジ粘膜刺激試験(Slug Mucosal Irritation test);市販上皮モデル)で得られる結果も角膜幹細胞モデル最終妥当性評価に含まれる。
【0136】
上記実施例で使用した羊膜はクイーン・メアリーズ病院(UK)とノッティンガム大学(UK)を通して匿名女性ドナーから入手した。ノッティンガム大学から許可を得た。ヒト角膜はロイヤル・バークシャー病院(UK)を通して匿名ドナーから入手した。角膜細胞の使用については地域倫理委員会の承認を得た。
【実施例20】
【0137】
圧縮コラーゲンゲルのリボフラビン/UV架橋
圧縮コラーゲンゲルの機械的性質を改善するために、リボフラビンとUVを使用してこれらのゲルにおけるコラーゲン繊維を架橋した。基本的方法はWollensak G.et al.(American Journal of Ophthalmology,Volume 135,Issue 5,May 2003,pages 620−627)に記載されている。基本的に、圧縮コラーゲンゲルを0.1%リボフラビン溶液(20%デキストラン溶液10mL中リボフラビン10mg)中で30分間室温にてインキュベートした。コラーゲンゲルとUVAランプの間に5cmの距離をおいて365nmで30分間照射を行った。次にゲルをPBSで洗浄し、未使用リボフラビンを除去した。
【0138】
8個の圧縮ゲルに関するデータを以下に示す。他の情報を図19〜21に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
角膜上皮細胞の特異的マーカーとして使用されることが多いCK3は圧縮コラーゲンゲル(図10A)と上皮なしAM(図10B)上で増殖させたLECと同様にリボフラビン/UV処理した圧縮コラーゲンゲル(図22)上で増殖させたLECの表面細胞層でも強く発現された。
【実施例21】
【0141】
圧縮コラーゲンゲル及びリボフラビン/UV処理した圧縮コラーゲンゲルの移植の臨床評価
角膜移植用としての圧縮コラーゲンゲルの適性を評価するために、圧縮コラーゲンゲル(図23A)とリボフラビン/UV処理したコラーゲンゲル(図23B)を損傷したウサギ角膜に縫合した。ウサギ角膜は予めその眼表面、即ち角膜上皮細胞層とその下の基質(コラーゲンマトリックス)の一部を外科的に除去しておいた。リボフラビン/UV処理したコラーゲンゲルはその機械的強度の増加(実施例20)により、より良好に固定することができ、より完成度の高い移植片が得られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工眼上皮と塑性圧縮コラーゲンゲル基材を含む人工眼組織であって、角膜幹細胞又は角膜幹細胞を含有する組成物を塑性圧縮コラーゲンゲル基材上で培養する段階を含む方法により取得されるか又は取得可能であり、塑性圧縮コラーゲンゲル基材上に人工眼上皮を産生する角膜上皮細胞集団を提供するような条件下で前記細胞又は組成物を培養する前記人工眼組織。
【請求項2】
角膜幹細胞又は角膜幹細胞を含有する組成物を塑性圧縮コラーゲンゲル基材上で培養する段階を含む人工眼上皮の製造方法であって、基材上に人工眼上皮を産生する角膜上皮細胞集団を提供するような条件下で前記細胞又は組成物を培養する前記方法。
【請求項3】
その後、人工眼上皮を基材から分離する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
その後、人工眼上皮をヒト組織の保存と防腐に適した培地に保存し、眼上皮を塑性圧縮コラーゲンゲル基材から分離するか又は分離せずに保存する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
角膜幹細胞が輪部角膜上皮幹細胞、好ましくはヒト輪部角膜上皮幹細胞である請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
間質液中にコラーゲンフィブリルのマトリックスを含むコラーゲンゲルを準備した後に、
(i)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に圧縮力を加える方法;
(ii)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に脱水力を加える方法;
(iii)1面もしくは2面にゲルを延伸する方法;又は
(iv)(i)〜(iii)の1種以上の組合せ
によりゲルを塑性圧縮し、
場合により、
(a)ゲルの軸方向に一軸荷重を加える工程と、
(b)前記荷重を除去する工程
からなる1サイクル以上の反復サイクルを圧縮後のゲルに実施する方法により、塑性圧縮コラーゲンゲル基材を製造する請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ゲルの表面又は縁部の一つ以上に間質液吸収材を付着させる方法と(i)〜(iv)の1種以上を組合せる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材が長さ1〜60mm、好ましくは長さ20〜40mm及び/又は幅0.5〜60mm、好ましくは幅20〜40mmである請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材が厚さ10〜1000μm、好ましくは厚さ20〜100μmである請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材におけるコラーゲンフィブリルが直径10〜100nmであり、及び/又はフィブリルの間隔が1〜200nmである請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材のコラーゲン含有率が3〜4%である請求項2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
圧縮コラーゲンゲルの少なくとも一つの表面にラミニン又は一つ以上のラミニンドメインをコートし、角膜幹細胞又は組成物をラミニン/ラミニンドメイン表面上で培養する請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
圧縮コラーゲンゲルが間質前駆細胞、好ましくは角膜線維芽細胞をゲル内に封入している請求項2から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
圧縮コラーゲンゲルにおけるコラーゲンが好ましくはリボフラビンとUV照射を使用して架橋されている請求項2から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ゲル内への角膜幹細胞の内方増殖を防ぐ程度まで塑性圧縮コラーゲンゲルを圧縮する請求項2から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
塑性圧縮コラーゲンゲルが可撓性で非剛性である請求項2から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
その後、人工眼上皮を基材上に保持し、人工眼組織を形成する請求項2又は4から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項2から16のいずれか一項に記載の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮。
【請求項19】
基底細胞の内側及び下側の基底膜成分と共に、CK3分化マーカーとCK14未分化マーカーの双方を発現する3〜7層の細胞層からなる連続重層化上皮を含み、好ましくは請求項2から16のいずれか一項に記載の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮。
【請求項20】
一部もしくは全基底細胞に半接着斑が存在しており、及び/又は一部もしくは全隣接上皮細胞が接着斑構造を介して相互に結合している請求項18又は19に記載の人工眼上皮。
【請求項21】
請求項17に記載の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼組織。
【請求項22】
(i)請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮と;
(ii)請求項2から16のいずれか一項に記載の塑性圧縮コラーゲンゲル基材
を含む人工眼組織。
【請求項23】
人工眼上皮又は人工眼組織に及ぼす試験化合物の効果を評価する方法であって、
(a)請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織を準備する段階と;
(b)人工眼上皮又は人工眼組織を一定量の試験化合物と接触させる段階と;
(c)人工眼上皮又は人工眼組織に及ぼす化合物の効果を評価する段階
を含む前記方法。
【請求項24】
哺乳動物角膜に対する試験化合物の毒性の指示を提供するための請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織の使用。
【請求項25】
人工角膜としての請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織の使用。
【請求項26】
細胞の送達を必要とする組織への細胞送達剤としての請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織の使用。
【請求項27】
(a)請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織を準備する段階と;
(b)眼損傷を前記人工眼上皮又は人工眼組織と接触させる段階と;場合により
(c)前記人工眼上皮又は人工眼組織を眼損傷の部位に固定する段階
を含む眼損傷の治療方法。
【請求項28】
治療方法、好ましくは眼損傷の治療方法で使用するための請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織。
【請求項29】
治療方法、好ましくは眼損傷の治療方法で使用するための組成物の製造における請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織の使用。
【請求項30】
眼損傷が幹細胞機能を維持するために不十分な間質微小環境に関連するもの(例えば無虹彩症、角膜炎、神経栄養性角膜症及び慢性角膜輪部炎);又は輪部幹細胞を破壊する外部因子に関連するもの(例えば化学もしくは熱傷害、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼瘢痕性類天疱瘡、コンタクトレンズ使用又は広範な微生物感染症)である請求項27に記載の方法、請求項28に記載の人工眼上皮もしくは組織又は請求項29に記載の使用。
【請求項31】
(a)請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織を準備する段階と;
(b)哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する段階
を含む哺乳動物対象における角膜の置換方法。
【請求項32】
外科処置方法で使用するための請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織であって、好ましくは哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する前記人工眼上皮又は組織。
【請求項33】
外科処置方法で使用するための組成物の製造における請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織の使用であって、好ましくは哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する前記使用。
【請求項34】
角膜細胞の増殖用基材としての塑性圧縮コラーゲンゲルの使用。
【請求項35】
間質液中にコラーゲンフィブリルのマトリックスを含むコラーゲンゲルを準備した後に、
(i)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に圧縮力を加える方法;
(ii)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に脱水力を加える方法;
(iii)1面もしくは2面にゲルを延伸する方法;又は
(iv)(i)〜(iii)の1種以上の組合せ
によりゲルを塑性圧縮し、
場合により、
(a)ゲルの軸方向に一軸荷重を加える工程と、
(b)前記荷重を除去する工程
からなる1サイクル以上の反復サイクルを圧縮後のゲルに実施する方法により、塑性圧縮コラーゲンゲル基材を製造する請求項34に記載の使用。
【請求項36】
ゲルの表面又は縁部の一つ以上に間質液吸収材を付着させる方法と(i)〜(iv)の1種以上を組合せる請求項35に記載の使用。
【請求項37】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材が長さ1〜60mm、好ましくは長さ20〜40mmであり、及び/又は幅0.5〜60mm、好ましくは幅20〜40mmである請求項34から36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材が厚さ10〜1000μm、好ましくは厚さ20〜100μmである請求項34から37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材におけるコラーゲンフィブリルが直径10〜100nmであり、及び/又はフィブリルの間隔が1〜200nmである請求項34から38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材のコラーゲン含有率が3〜4%である請求項34から39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
コラーゲンゲルの少なくとも一つの表面にラミニンをコートする請求項34から40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
コラーゲンゲルが好ましくはリボフラビン/UVを使用して架橋されている請求項34から41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
コラーゲン繊維が好ましくはUV光を使用してリボフラビン処理により架橋されている塑性圧縮コラーゲンゲル。
【請求項44】
ゲルが請求項2から14のいずれか一項に記載のものである請求項43に記載の塑性圧縮コラーゲンゲル。
【請求項45】
人工眼上皮を増殖させるための基材としての請求項43又は44に記載の塑性圧縮コラーゲンゲルの使用。
【請求項1】
人工眼上皮と塑性圧縮コラーゲンゲル基材を含む人工眼組織であって、角膜幹細胞又は角膜幹細胞を含有する組成物を塑性圧縮コラーゲンゲル基材上で培養する段階を含む方法により取得されるか又は取得可能であり、塑性圧縮コラーゲンゲル基材上に人工眼上皮を産生する角膜上皮細胞集団を提供するような条件下で前記細胞又は組成物を培養する前記人工眼組織。
【請求項2】
角膜幹細胞又は角膜幹細胞を含有する組成物を塑性圧縮コラーゲンゲル基材上で培養する段階を含む人工眼上皮の製造方法であって、基材上に人工眼上皮を産生する角膜上皮細胞集団を提供するような条件下で前記細胞又は組成物を培養する前記方法。
【請求項3】
その後、人工眼上皮を基材から分離する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
その後、人工眼上皮をヒト組織の保存と防腐に適した培地に保存し、眼上皮を塑性圧縮コラーゲンゲル基材から分離するか又は分離せずに保存する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
角膜幹細胞が輪部角膜上皮幹細胞、好ましくはヒト輪部角膜上皮幹細胞である請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
間質液中にコラーゲンフィブリルのマトリックスを含むコラーゲンゲルを準備した後に、
(i)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に圧縮力を加える方法;
(ii)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に脱水力を加える方法;
(iii)1面もしくは2面にゲルを延伸する方法;又は
(iv)(i)〜(iii)の1種以上の組合せ
によりゲルを塑性圧縮し、
場合により、
(a)ゲルの軸方向に一軸荷重を加える工程と、
(b)前記荷重を除去する工程
からなる1サイクル以上の反復サイクルを圧縮後のゲルに実施する方法により、塑性圧縮コラーゲンゲル基材を製造する請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ゲルの表面又は縁部の一つ以上に間質液吸収材を付着させる方法と(i)〜(iv)の1種以上を組合せる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材が長さ1〜60mm、好ましくは長さ20〜40mm及び/又は幅0.5〜60mm、好ましくは幅20〜40mmである請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材が厚さ10〜1000μm、好ましくは厚さ20〜100μmである請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材におけるコラーゲンフィブリルが直径10〜100nmであり、及び/又はフィブリルの間隔が1〜200nmである請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材のコラーゲン含有率が3〜4%である請求項2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
圧縮コラーゲンゲルの少なくとも一つの表面にラミニン又は一つ以上のラミニンドメインをコートし、角膜幹細胞又は組成物をラミニン/ラミニンドメイン表面上で培養する請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
圧縮コラーゲンゲルが間質前駆細胞、好ましくは角膜線維芽細胞をゲル内に封入している請求項2から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
圧縮コラーゲンゲルにおけるコラーゲンが好ましくはリボフラビンとUV照射を使用して架橋されている請求項2から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ゲル内への角膜幹細胞の内方増殖を防ぐ程度まで塑性圧縮コラーゲンゲルを圧縮する請求項2から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
塑性圧縮コラーゲンゲルが可撓性で非剛性である請求項2から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
その後、人工眼上皮を基材上に保持し、人工眼組織を形成する請求項2又は4から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項2から16のいずれか一項に記載の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮。
【請求項19】
基底細胞の内側及び下側の基底膜成分と共に、CK3分化マーカーとCK14未分化マーカーの双方を発現する3〜7層の細胞層からなる連続重層化上皮を含み、好ましくは請求項2から16のいずれか一項に記載の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼上皮。
【請求項20】
一部もしくは全基底細胞に半接着斑が存在しており、及び/又は一部もしくは全隣接上皮細胞が接着斑構造を介して相互に結合している請求項18又は19に記載の人工眼上皮。
【請求項21】
請求項17に記載の方法により取得されるか又は取得可能な人工眼組織。
【請求項22】
(i)請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮と;
(ii)請求項2から16のいずれか一項に記載の塑性圧縮コラーゲンゲル基材
を含む人工眼組織。
【請求項23】
人工眼上皮又は人工眼組織に及ぼす試験化合物の効果を評価する方法であって、
(a)請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織を準備する段階と;
(b)人工眼上皮又は人工眼組織を一定量の試験化合物と接触させる段階と;
(c)人工眼上皮又は人工眼組織に及ぼす化合物の効果を評価する段階
を含む前記方法。
【請求項24】
哺乳動物角膜に対する試験化合物の毒性の指示を提供するための請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織の使用。
【請求項25】
人工角膜としての請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織の使用。
【請求項26】
細胞の送達を必要とする組織への細胞送達剤としての請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織の使用。
【請求項27】
(a)請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織を準備する段階と;
(b)眼損傷を前記人工眼上皮又は人工眼組織と接触させる段階と;場合により
(c)前記人工眼上皮又は人工眼組織を眼損傷の部位に固定する段階
を含む眼損傷の治療方法。
【請求項28】
治療方法、好ましくは眼損傷の治療方法で使用するための請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織。
【請求項29】
治療方法、好ましくは眼損傷の治療方法で使用するための組成物の製造における請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織の使用。
【請求項30】
眼損傷が幹細胞機能を維持するために不十分な間質微小環境に関連するもの(例えば無虹彩症、角膜炎、神経栄養性角膜症及び慢性角膜輪部炎);又は輪部幹細胞を破壊する外部因子に関連するもの(例えば化学もしくは熱傷害、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼瘢痕性類天疱瘡、コンタクトレンズ使用又は広範な微生物感染症)である請求項27に記載の方法、請求項28に記載の人工眼上皮もしくは組織又は請求項29に記載の使用。
【請求項31】
(a)請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織を準備する段階と;
(b)哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する段階
を含む哺乳動物対象における角膜の置換方法。
【請求項32】
外科処置方法で使用するための請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織であって、好ましくは哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する前記人工眼上皮又は組織。
【請求項33】
外科処置方法で使用するための組成物の製造における請求項18から20のいずれか一項に記載の人工眼上皮又は請求項21もしくは22に記載の人工眼組織の使用であって、好ましくは哺乳動物対象の角膜を前記人工眼上皮又は組織で置換する前記使用。
【請求項34】
角膜細胞の増殖用基材としての塑性圧縮コラーゲンゲルの使用。
【請求項35】
間質液中にコラーゲンフィブリルのマトリックスを含むコラーゲンゲルを準備した後に、
(i)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に圧縮力を加える方法;
(ii)ゲルの表面もしくは縁部の一つ以上に脱水力を加える方法;
(iii)1面もしくは2面にゲルを延伸する方法;又は
(iv)(i)〜(iii)の1種以上の組合せ
によりゲルを塑性圧縮し、
場合により、
(a)ゲルの軸方向に一軸荷重を加える工程と、
(b)前記荷重を除去する工程
からなる1サイクル以上の反復サイクルを圧縮後のゲルに実施する方法により、塑性圧縮コラーゲンゲル基材を製造する請求項34に記載の使用。
【請求項36】
ゲルの表面又は縁部の一つ以上に間質液吸収材を付着させる方法と(i)〜(iv)の1種以上を組合せる請求項35に記載の使用。
【請求項37】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材が長さ1〜60mm、好ましくは長さ20〜40mmであり、及び/又は幅0.5〜60mm、好ましくは幅20〜40mmである請求項34から36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材が厚さ10〜1000μm、好ましくは厚さ20〜100μmである請求項34から37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材におけるコラーゲンフィブリルが直径10〜100nmであり、及び/又はフィブリルの間隔が1〜200nmである請求項34から38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
塑性圧縮コラーゲンゲル基材のコラーゲン含有率が3〜4%である請求項34から39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
コラーゲンゲルの少なくとも一つの表面にラミニンをコートする請求項34から40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
コラーゲンゲルが好ましくはリボフラビン/UVを使用して架橋されている請求項34から41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
コラーゲン繊維が好ましくはUV光を使用してリボフラビン処理により架橋されている塑性圧縮コラーゲンゲル。
【請求項44】
ゲルが請求項2から14のいずれか一項に記載のものである請求項43に記載の塑性圧縮コラーゲンゲル。
【請求項45】
人工眼上皮を増殖させるための基材としての請求項43又は44に記載の塑性圧縮コラーゲンゲルの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2012−527283(P2012−527283A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511342(P2012−511342)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001024
【国際公開番号】WO2010/133853
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511282634)ユニヴァーシティ オヴ レディング (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001024
【国際公開番号】WO2010/133853
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511282634)ユニヴァーシティ オヴ レディング (1)
【Fターム(参考)】
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