説明

吊り上げ式石詰篭及びその運搬方法

【課題】栗石が充填された大重量の石詰篭を底面が下方に湾曲しないように吊り上げて運搬するための手段を提供する。
【解決手段】底面網11と4つの側面網12a−13bとを有する四角い箱形をした篭本体10に、吊り上げ用の線条部材20を取り付け、前記線条部材20は、互いに相対する2つの線条部分20a,20bからなり、該2つの線条部分20a,20bは、相対する一対の側面網12a,12bの一方と他方とにそれぞれ網目を縫うように挿通されて中間部20cが該側面網に非固定状態に係合し、各線条部分20a,20bの下端部20dは篭本体10の内部を斜め下向きに延びて前記底面網11に係止され、各線条部分20a,20bの上端部20eは篭本体10の内側を上向きに延びて該上端部20eにリフタ手段を吊り掛けるための吊掛部20fが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に石詰めした状態で吊り上げることができる吊り上げ式石詰篭と、この石詰篭を吊り上げて運搬する方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、護岸工事や道路工事等の各種工事に使用される石詰篭(角形蛇篭)は、菱形金網によって六面体状に形成され、その設置に当たっては、空の石詰篭を工事現場に運搬して所定の場所に配置したあと、別途に搬入した栗石を充填するのが一般的であった。ところが、この場合の作業の主体は人力であるため、工事が完成するまでに多くの手数と時間とが必要であり、効率的とはいえなかった。
【0003】
このような問題を解決するため、特許文献1−特許文献5には、石詰篭に骨材である栗石を詰めることにより必要量の栗石が予め充填された石詰篭を形成し、この石詰篭を施工現場へ搬送して設置する方法が開示されている。この方法によれば、石詰篭と骨材とを施工現場に別々に搬送する必要がなく、しかも、現場での充填作業も必要ないため、作業が大幅に簡略化されることになる。
【0004】
しかし、これらの公知例は、栗石が充填された大重量の石詰篭を吊り上げるため、該石詰篭を特殊で頑丈な構造にするか、特殊なリフタ手段を用いる必要があり、吊り上げのための構造が複雑であったり、栗石の重量によって石詰篭の底面が下方に湾曲し易いなどの問題がある。
【0005】
即ち、特許文献1に記載のものは、石詰篭の胴網及び側網の上下端を横杆で補強すると共に、上下の横杆の間に縦杆を掛け渡し、該縦杆の上端に逆U字形の吊り手を溶接により固定し、この吊り手にクレーンのフックを掛けて吊り上げるようにしており、石詰篭の補強構造が複雑である。
【0006】
また、特許文献2に記載のものは、石詰篭の上面四隅に上向きに延びる吊りフックを形成し、これらの吊りフックに吊込装置の垂下フックを係止させて石詰篭を吊り上げるようにしており、石詰篭の底面が下方に湾曲し易いという問題がある。
【0007】
更に、特許文献3に記載のものは、石詰篭の内部に変形防止用の矩形の保護枠体を取り付けて石詰めしたあと、相対する一対の側面網の列線内にバー状の金物部材を挿通して係止させ、この金物部材にワイヤロープを掛けて石詰篭を吊り上げ、運搬後に前記保護枠体を取り外すようにしており、作業が面倒である。
【0008】
また、特許文献4に記載のものは、リフタ手段として厚鋼板や型鋼等を組み合わせて溶接加工したものを使用しているため、該リフタ手段の構成が非常に複雑である。
更に、特許文献5に記載のものは、相対する一対の側面網における列線の内部に、ワイヤロープを掛けるためのバー状の係止部材を挿通しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭61−23317号公報
【特許文献2】特開平5−132914号公報
【特許文献3】特開平7−109718号公報
【特許文献4】特開2002−97616号公報
【特許文献5】特開2007−224602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、石詰篭に簡単な線条部材を付加するだけで、栗石が充填された大重量の石詰篭を底面が下方に湾曲しないように吊り上げて運搬することができる、簡易で効率的な技術手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため本発明の吊り上げ式石詰篭は、底面網と4つの側面網とを有する四角い箱形をした篭本体に、吊り上げ用の線条部材を取り付けることにより形成され、前記線条部材は、相対する2つの線条部分からなっていて、該2つの線条部分は、相対する一対の側面網の一方と他方とに篭本体の内側から網目を縫うように挿通されて中間部が該側面網に非固定状態に係合し、2つの線条部分の下端部は、前記篭本体の内部を斜め下向きに延びて前記底面網に係止され、2つの線条部分の上端部には、リフタ手段を吊り掛けるための吊掛部が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
前記線条部材の2つの線条部分は、独立する線材によって別々に形成され、下端部が底面網の中央部係止されていても、あるいは、連続する1つの線材で一体に形成されていても良い。
【0013】
また、本発明に係る石詰篭の運搬方法は、四角い箱形をした篭本体における相対する一対の側面網の一方と他方とに、吊り上げ用の線条部材を形成する2つの線条部分の一方と他方とを網目を縫うように挿通し、各線条部分の中間部を前記側面網に非固定状態に係合させると共に、各線条部分の下端部を前記底面網に係止させ、各線条部分の上端部に吊掛部を形成する線条部材取付工程と、前記篭本体の内部に栗石を充填する石詰工程と、前記線条部材の吊掛部にリフタ手段を吊り掛け、該リフタ手段で石詰篭を吊り上げて目的の場所に運搬する運搬工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、石詰篭に線条部材を付加するという簡単な構成により、栗石が充填された大重量の石詰篭を前記線条部材により底面が下方に湾曲しないように吊り上げて運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る石詰篭の一実施形態を示す石詰め前の状態の斜視図である。
【図2】図1の石詰篭を線条部材に近接する位置で断面にして示す断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】菱形金網の列線の係合部に骨線を挿通した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図は本発明に係る石詰篭の一実施形態を示すもので、この石詰篭1は、菱形金網製の篭本体10に吊り上げ用の線条部材20を取り付けることにより形成されている。
【0017】
前記篭本体10は、底面網11と、相対する一対の第1側面網12a及び第2側面網12bと、他の相対する一対の第3側面網13a及び第4側面網13bと、必要に応じて取り付けられる上面網(不図示)とからなっていて、第1側面網12aと第2側面網12bとを結ぶ前後方向の篭幅より、第3側面網13aと第4側面網13bとを結ぶ左右方向の篭幅の方が長い矩形の箱形に形成され、内部に骨材としての栗石14を充填した状態で建設資材として取り扱われるものである。しかし、篭幅の大小関係は前記の場合と逆であっても良く、前後方向の篭幅と左右方向の篭幅が等しくても構わない。
【0018】
前記底面網11と第1側面網12a−第4側面網13bとは、それぞれ菱形金網によって矩形のパネル状に形成されている。この菱形金網は、扁平螺旋形状に折曲した複数の列線15を折曲部15aにおいて順次連繋してなるもので、前記第1側面網12a−第4側面網13bにおいては、前記列線15が横向き(水平方向)に配設され、底面網11においては、前記列線15が第1側面網12a及び第2側面網12bの列線15と同じ向き(篭本体10の左右方向)に配設されている。しかし、列線15の配設方向はこれと違っていても良く、第1側面網12a−第4側面網13bのうち少なくとも第3側面網13a及び第4側面網13bの列線15を篭本体10の高さ方向に配設することもできる。
【0019】
前記底面網11及び第1−第4側面網13bは、各々を個別に形成して相互に連結しても良いが、例えば、前記底面網11の列線15の向きが前記第1側面網12a及び第2側面網12bと同じ向きである場合には、これら底面網11と第1側面網12aと第2側面網12bとを一連の菱形金網によって一体に形成することもできる。また、隣接する面網同士の連結は、各面網の外周を取り囲む針金製の外周枠16の互いに対応する枠同士を、スクリューストッパーのような連結金具で結合することにより行われる。
【0020】
前記線条部材20は、針金やワイヤロープのような金属製の線材かあるいは化学繊維製の線材のような、引っ張り強度の大きい線材により形成されたもので、第1線条部分20a及び第2線条部分20bからなり、これら第1線条部分20aと第2線条部分20bとが、第1側面網12a側と第2側面網12b側との互いに相対する位置に向き合うように配設されている。換言すれば、前記第1線条部分20aと第2線条部分20bとが、篭本体10を前後に二分する仮想鉛直面に対して面対称をなすように配設されている。
【0021】
前記第1線条部分20aは、前記第1側面網12aに網目を縫うように挿通されて中間部20cが該第1側面網12aに係合し、該第1線条部分20aの前記中間部20cより下方の部分は、篭本体10の内部を斜め下向きに延び、下端部20dが前記底面網11の中央かその近傍の位置に固定的に係止され、該第1線条部分20aの前記中間部20cより上方の部分は、篭本体10の内側領域を斜め上向きに延びて該篭本体10の中央上部に達し、上端部20eにリフタ手段の吊り棒21を挿通して掛けるための環状の吊掛部20fが形成されている。
【0022】
また、前記第2線条部分20bは、前記第2側面網12bに網目を縫うように挿通されて中間部20cが該第2側面網12bに係合し、該第2線条部分20bの前記中間部20cより下方の部分は、篭本体10の内部を斜め下向きに延び、下端部20dが前記底面網11の中央かその近傍の位置に固定的に係止され、第2線条部分20bの前記中間部20cより上方の部分は、篭本体10の内側を斜め上向きに延びて該篭本体10の中央上部に達し、上端部20eにリフタ手段の吊り棒21を挿通して掛けるための環状の吊掛部20fが形成されている。該第2線条部分20bの吊掛部20fと前記第1線条部分20aの吊掛部20fとは、一カ所に集約されている。
【0023】
前記第1線条部分20a及び第2線条部分20bの下端部20dは、底面網11の中央の同じ位置に係止されていることが望ましいが、中央近くの互いに近接する別の位置に係止されていても良い。
【0024】
前記第1線条部分20a及び第2線条部分20bの中間部20cは、前記第1側面網12a及び第2側面網12bに対して非固定の状態に係合している。即ち、図3に詳細に示すように、前記第1線条部分20a及び第2線条部分20bは、前記第1側面網12a及び第2側面網12bに篭本体10の内側から網目を縫うように挿通され、前記中間部20cが、上下の列線15の折曲部15aが相互に連繋し合う部分即ち連繋部に篭本体10の外側から係合している。
【0025】
この場合、前記中間部20cが第1側面網12a及び第2側面網12bに対して係合する位置は、石詰篭1を吊り上げた場合のバランスを考慮すると、該石詰篭1の高さ方向の中央かそれより上方寄りの位置であることが好ましく、図示した例では、第1側面網12a及び第2側面網12bにおける上から2列目の列線15と3列目の列線15との連繋部である。
【0026】
また、前記第1線条部分20a及び第2線条部分20bの下端部20dも、底面網11における隣接する列線15が連繋し合う連繋部に係止されている。
【0027】
しかし、図4に示すように、前記第1側面網12a及び第2側面網12bと底面網11とにおいて、隣接する列線15の連繋部に骨線17が挿通されている場合には、この骨線17に前記中間部20c及び下端部20dを係合させることもできる。
前記線条部材20は、篭本体10の複数箇所に配設されている。図示した例では2カ所に配設されているが、3カ所以上であっても良い。
【0028】
前記構成を有する石詰篭1は、その内部に必要量の栗石14を充填し、必要に応じて上面に上面網を取り付けたあと、前記線条部材20の吊掛部20fにリフト手段の一部を構成する吊り棒21を挿通し、この吊り棒21にワイヤロープ等を掛けて吊り上げ、目的の場所に運搬する。前記ワイヤロープは、前記吊り棒21と共にリフト手段の一部を構成するものである。
なお、前記目的の場所とは、石詰篭1を一時的に保管するための保管場所や、トラックの荷台、あるいは工事現場における石詰篭1の設置場所等である。
【0029】
ここで、前記石詰篭1を吊り上げたとき、図2に示すように、前記線条部材20の第1線条部分20a及び第2線条部分20bには、篭本体10の底面網11に係止する下端部20dに、該線条部分20a,20bに沿う方向の吊上力Fがそれぞれ作用し、この吊上力Fの合力として、底面網11に上向きの力F1が作用する。この上向きの力F1は、前記底面網11が栗石14の重量により下方に湾曲するのを防止し、石詰篭1を底面が下方に湾曲しないように吊り上げて運搬することを可能にする。
【0030】
一方、前記第1線条部分20a及び第2線条部分20b部の中間部20cが前記第1側面網12a及び第2側面網12bに係合する部分では、該第1側面網12a及び第2側面網12bに内向きの力F2が作用するが、この力F2は、石詰篭1の内部に充填された栗石14に支持されて打ち消され、該第1側面網12a及び第2側面網12bが内側に変形するのが防止される。
【0031】
前記石詰篭1が目的の場所に運搬されると、前記吊り棒21及びワイヤロープは取り外され、前記線条部材20も必要に応じて取り外される。この線条部材20を取り外す場合に、該線条部材20の下端部20dが底面網11に固定されていて全体を取り外すことができないときは、外部に露出する部分をカッターで切断して取り外せば良い。
【0032】
前記第1線条部分20aと第2線条部分20bとは、独立する線材で別々に形成されているが、連続する1つの線材で一体に形成することもできる。一体に形成した場合、第1線条部分20aの下端部20dと第2線条部分20bの下端部20dとは一つに連なった状態になるが、この一つに連なった下端部20dは、底面網11にその網目を縫うように挿通させることにより非固定状態に係止させても、隣接する2つの列線15の連繋部や骨線17等に巻着するなどの方法によって固定的に係止させても良い。
【0033】
また、図示した例では、各々の線条部材20の位置で、該線条部材20の2つの線条部分20a,20bの上端部20e同士が互いに集約されているが、全ての線条部材20における全ての線条部分20a,20bの上端部20eを一点に集約し、この一点で石詰篭1を吊り上げるようにしても良い。
【0034】
あるいは、図2に鎖線で示すように、各線条部材20における2つの線条部分20a,20bの上端部20eを上方に向けて真っ直ぐ立ち上げ、吊掛部20fに吊り棒21を挿通して吊り上げるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 石詰篭
10 篭本体
11 底面網
12a,12b,13a,13b 側面網
14 栗石
20 線条部材
20a 第1線条部分
20b 第2線条部分
20c 中間部
20d 下端部
20e 上端部
20f 吊掛部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面網と4つの側面網とを有する四角い箱形をした篭本体に、吊り上げ用の線条部材を取り付けることにより形成され、
前記線条部材は、相対する2つの線条部分からなっていて、該2つの線条部分は、相対する一対の側面網の一方と他方とに篭本体の内側から網目を縫うように挿通されて中間部が該側面網に非固定状態に係合し、2つの線条部分の下端部は、前記篭本体の内部を斜め下向きに延びて前記底面網に係止され、2つの線条部分の上端部には、リフタ手段を吊り掛けるための吊掛部が形成されていることを特徴とする吊り上げ式石詰篭。
【請求項2】
前記線条部材の2つの線条部分は、独立する線材によって別々に形成され、該2つの線条部分の下端部が底面網の中央部に係止されていることを特徴とする請求項1に記載の吊り上げ式石詰篭。
【請求項3】
前記線条部材の2つの線条部分は、連続する1つの線材で一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吊り上げ式石詰篭。
【請求項4】
四角い箱形をした篭本体における相対する一対の側面網の一方と他方とに、吊り上げ用の線条部材を形成する2つの線条部分の一方と他方とを網目を縫うように挿通し、各線条部分の中間部を前記側面網に非固定状態に係合させると共に、各線条部分の下端部を前記底面網に係止させ、各線条部分の上端部に吊掛部を形成する線条部材取付工程、
前記篭本体の内部に栗石を充填する石詰工程、
前記線条部材の吊掛部にリフタ手段を吊り掛け、該リフタ手段で石詰篭を吊り上げて目的の場所に運搬する運搬工程、
を有することを特徴とする石詰篭の運搬方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate