説明

吊り下げ式グラップルの油圧ホースの取り回し装置

【課題】廃棄物やチップ等の処理作業において、グラップルの油圧アクチュエータへに接続される油圧ホースの損傷を防止しうる吊り下げ式グラップルの油圧ホースの取り回し装置を提供する。
【解決手段】グラップルに備えた油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ホース27〜31のガイドとして第1のホースガイド24と第2のホースガイド25とを備える。第1のホースガイド24は、吊り下げ用ブラケット上部側面の横ピン12取付け部近傍に設ける。第2のホースガイド25は、グラップル10のフレーム14の背面側または吊り下げ用ブラケット11の背面側でかつ縦ピン13取付け部近傍に設ける。ホースガイド24,25はピン12,13の近傍に設けてあるため、ピン12,13中心の回動動作に対し、油圧ホース27〜31の小さな変形で追従できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機のアームに取付けられ、各種廃棄物や各種チップ、木材等を把持して積み込み、積み降ろし、集積等の作業を行なう場合に使用するグラップルにおける油圧ホースの取り回し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物等のトラックへの積み込み、積み降ろし、集積等の作業を行なうグラップルは、特許文献1に記載されているように、例えば油圧ショベルのバケットの代わりに作業用アームの先端に吊り下げ用ブラケットおよび横ピン(左右向きのピン)、縦ピン(前後向きのピン)を介して、左右および前後に揺動可能に吊り下げて取付けられる。このようなグラップルは、作業機の作業用アームに取付けられる上部フレームと、この上部フレームの下部に旋回装置を介して旋回可能に取付けられる筒状の下部フレームと、この下部フレームの外側に周方向に間隔を有して設けられる複数個の爪取付け用のブラケットと、各ブラケットにそれぞれ根本部を外嵌して枢着軸を中心に内外方向に開閉可能に取付けられる複数本の爪と、爪開閉用の油圧シリンダとを備える。
【0003】
このような吊り下げ式グラップルにおいて、作業用アームに添設された鋼管からからなる油圧配管の先端と、上部フレームに設けられた旋回装置用ポートおよび爪開閉用の油圧シリンダのポートとの油圧回路は、通常、横ピン、縦ピンから離してこれらの間に弛ませて取付ける油圧ホースにより構成される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−146575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたようなグラップルの油圧ホースの取り回し構造においては、アームに対するグラップルの回動を許容するため、通常は油圧ホースを吊り下げ用ブラケットの周囲に弛ませて外側に膨らんだ構造で配置される。このため、廃棄物処理等を行う際に油圧ホースに鉄筋や鉄骨等が引っ掛かりやすく、油圧ホースを損傷してしまう恐れがあった。また、油圧ホースのうち、吊り下げ用ブラケットの前方に位置する油圧ホースは、吊り下げ用ブラケットの背面側に位置する運転室のオペレータから目視できないため、鉄筋や鉄骨等が油圧ホースに引っ掛かっているのに気がつかず、作業用アームを動かして油圧ホースを損傷し易いという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、廃棄物やチップ等の処理作業において、グラップルの油圧アクチュエータへに接続される油圧ホースの損傷を防止しうる吊り下げ式グラップルの油圧ホースの取り回し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の吊り下げ式グラップルの油圧ホースの取り回し装置は、作業用アームの先端に左右方向水平に設けた横ピンを中心に前後方向に揺動可能にグラップル吊り下げ用ブラケットを取付け、前記吊り下げ用ブラケットの下部に前後方向水平に設けた縦ピンを中心に左右方向に揺動可能にグラップルのフレームを取付けてなる作業機械において、
前記吊り下げ用ブラケット上部両側面の前記横ピン取付け部近傍に設けられ、前記グラップルに備えた油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ホースを通す第1のホースガイドと、
前記グラップルのフレームの背面側または前記吊り下げ用ブラケットの背面側でかつ前記縦ピン取付け部近傍に設けられ、前記第1のホースガイドを通した前記油圧ホースを通す第2のホースガイドとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の吊り下げ式グラップルの油圧ホースの取り回し装置は、請求項1に記載の吊り下げ式グラップルの油圧ホースの取り回し装置において、
前記第1のホースガイドは手前側を上方に傾けた傾斜構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明においては、吊り下げ用ブラケットの側面の横ピン近傍に第1のホースガイドを設けたので、作業用アームや吊り下げ用ブラケットから油圧ホースが外方に膨出する度合を少なくしても、吊り下げ用ブラケットが作業用アームに対して回動する際に、油圧ホースの小さな動きおよび変形で容易にこの吊り下げ用ブラケットの回動に追従することができる。
【0010】
また、同様に第2のホースガイドを縦ピン近傍に設けたので、吊り下げ用ブラケットやグラップルのフレームから油圧ホースが外方に膨出する度合を少なくしても、吊り下げ用ブラケットが作業用アームに対して回動する際に、油圧ホースの小さな動きおよび変形でこの吊り下げ用ブラケットやグラップルのフレームの回動に容易に追従することができる。
【0011】
このため、全体として作業用アームとグラップルとの間の油圧ホースの外方への膨出度合が小さくなり、廃棄物処理作業において、油圧ホースが鉄筋や鉄骨等に引っ掛かる頻度が減少し、油圧ホースの損傷を防止することができる。
【0012】
また、吊り下げ用ブラケットの側面に第1のホースガイドを設け、吊り下げ用ブラケットやグラップルのフレームの背面側に第2のホースガイドを設けたので、これらのホースガイドに通す油圧ホースは運転室内のオペレータから目視し易くなり、鉄筋や鉄骨等に油圧ホースが引っ掛かった状態を確認しやすくなり、無理な作業用アームの動作を避けることができるため、油圧ホースの損傷をさらに良く回避することが可能となる。
【0013】
請求項2の発明によれば、第1のホースガイドを手前側が上になるように斜めに設けたので、作業用アームとして多関節アームを用い、最先端のアームの下部を作業機本体側に引き寄せ、アームの先端が上下反転した場合であっても、第1のホースガイドが油圧ホースを過度に曲げることなく、無理なくスムーズに油圧ホースをガイドすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1はグラップルを備えた作業機、すなわち廃棄物処理機の一例を示す側面図である。この作業機は、下部走行体1上に旋回装置2を介して上部旋回体3を設置し、上部旋回体3上に油圧パワーユニット4および運転室5を設置すると共に、作業用アーム6を取付ける。この例の作業用アーム6は長尺のブーム7と長尺のアーム8とを有し、ブーム7はブームシリンダ7aにより上部旋回体3に起伏可能に取付けられ、アーム8はアームシリンダ8aにより回動可能に取付けられる。グラップル10は、アーム8の先端に吊り下げ用ブラケット11を介して吊り下げられる。
【0015】
図2、図3、図4はそれぞれこのグラップル10の油圧ホースの取り回し装置の一実施の形態を示す斜視図、側面図、背面図である。吊り下げ用ブラケット11は上部が二股構造を有し、この二股部でアーム8の先端部を挟み、左右方向水平に設けた横ピン12により連結する。吊り下げ用ブラケット11の下部には、前後方向水平に設けた縦ピン13により、グラップル10の上部フレーム14が左右揺動可能に取付ける。上部フレーム14には旋回モータ(図示せず)を有する旋回装置15を介して下部フレーム16を旋回可能に取付ける。旋回装置15を持たず、下部フレーム16と上部フレーム14とが一体をなす場合もある。
【0016】
下部フレーム16は筒状をなし、その周囲に周方向に等間隔を有して2枚の平行板を有する複数個のブラケット17を設ける。各ブラケット17にはそれぞれ断面形状が4角形の中空構造をなす複数本の爪19の根本部を被せ、枢着軸20により開閉可能に取付ける。各爪19には爪開閉用の油圧シリンダ21を備える。油圧シリンダ21は、一端をブラケット17にピン22により連結し、他端を爪19の中途部分にピン23により連結して取付ける。これらの油圧シリンダ21はチューブ側を爪19の中途部分に連結し、ピストンロッドをブラケット17に連結してもよい。また、油圧シリンダ21は爪19の外部に設けてもよい。この実施の形態においてはブラケット17および爪19が5本ずつ設けられた例を示しているが、本発明はこれらのブラケット17や爪19が2個以上設けられるグラップルに適用できる。
【0017】
次に油圧ホースの取り回し装置について説明する。24は吊り下げ用ブラケット11の上部両側面における横ピン12の近傍に設けた第1のホースガイドである。この第1のホースガイド24は断面形状が円形をなす棒(パイプを含む)をコ字形に曲成して溶接あるいは図示のようにボルト24aにより固定する。25はグラップル10の上部フレーム14の背面、すなわち運転室5側に設けた第2のホースガイドである。この第2のホースガイド25も断面形状が円形をなす棒(パイプを含む)をコ字形に曲成して溶接あるいは図示のようにボルト25aにより上部フレーム14の背面に固定する。
【0018】
図3において、26はアーム8の上面に添設した鋼管でなる油圧配管群であり、この油圧配管群26は、旋回装置15の旋回モータ用およびドレン用の油圧配管と、爪開閉用油圧シリンダ21用の油圧配管を含む。図2〜図4において、27〜31はそれぞれ油圧配管群26のうち、該当する配管に接続装置33において接続される油圧ホースであり、これらの油圧ホース27〜31はそれぞれ対応する油圧配管に対応した径を有する。これらの油圧ホース27〜31は、片側3本、すなわち太径の油圧ホース27とそれより細径の2本の油圧ホース28,29を一方(作業機の正面から見て右側)の第1のホースガイド24に通し、他方太径の油圧ホース30とそれより細径の油圧ホース31とを他方の第1のホースガイド24に通す。また、これらの油圧ホース27〜31を第2のホースガイド25に共通に通し、油圧ホース27,30をセンタージョイント32(図3、図4参照)のポートに接続し、油圧ホース28,29を旋回装置15の旋回モータのポートに接続し、油圧ホース31をドレンポートに接続する。
【0019】
この油圧ホースの取り回し装置においては、吊り下げ用ブラケット11の側面の横ピン12近傍に第1のホースガイド24を設けたので、作業用アーム6や吊り下げ用ブラケット11から油圧ホース27〜31が外方に膨出する度合を少なくしても、吊り下げ用ブラケット11が作業用アーム6に対して回動する際に、油圧ホース27〜31の小さな動き、変形でこの吊り下げ用ブラケット11の動きに容易に追従することができる。
【0020】
また、同様に第2のホースガイド25を縦ピン13の近傍に設けたので、吊り下げ用ブラケット11やグラップル10の上部フレーム14から油圧ホース27〜31が外方に膨出する度合を少なくしても、吊り下げ用ブラケット11が作業用アーム6に対して回動する際に、油圧ホース27〜31の小さな動き、変形で容易にこの吊り下げ用ブラケット11の動きに追従することができる。
【0021】
このため、全体として作業用アーム6とグラップル10との間の油圧ホース27〜31の外方への膨出度合が小さくなり、廃棄物処理作業において、油圧ホース27〜31が鉄筋や鉄骨等に引っ掛かる頻度が減少し、油圧ホース27〜31の損傷を防止することができる。
【0022】
また、吊り下げ用ブラケット11の側面に第1のホースガイド24を設け、吊り下げ用ブラケット11やグラップル10の上部フレーム14の背面側に第2のホースガイド25を設けたので、これらのホースガイドに24,25に通す油圧ホース27〜31は運転室5内のオペレータから目視し易くなり、鉄筋や鉄骨等に油圧ホース27〜31が引っ掛かった状態を確認しやすくなり、無理な作業用アーム6の動作を避けることができるため、油圧ホースの損傷をさらに良く回避することが可能となる。
【0023】
また、第1のホースガイド24を手前側(上部旋回体3側)が上となるように斜めに設けたので、作業用アーム6として多関節アームを用い、図1の二点鎖線および図6に示すように、最先端のアーム8の下部を作業機本体(上部旋回体3)側に引き寄せてアーム8の先端が上下反転した場合であっても、第1のホースガイド24が油圧ホース27〜31を過度に曲げることなく、すなわち油圧ホース27に無理な曲げ応力を発生させることなく、スムーズに油圧ホース27〜31をガイドすることができる。
【0024】
図7、図8は本発明の他の実施の形態であり、第2のホースガイド25を吊り下げ用ブラケット11の背面における縦ピン13の近傍部に設けたものである。この実施の形態においても、前記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0025】
本発明は、第1のホースガイド24を吊り下げ用ブラケット11の左右の片側のみに設ける構成としてもよい。ただし上記実施の形態のように、吊り下げ用ブラケット11の両側に第1のホースガイド24を設け、各第1のホースガイド24に油圧ホース27〜31を分割配置することにより、各第1のホースガイド24のサイズを小さくし、かつ油圧ホース27〜31の干渉を防止することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のグラップルの油圧ホースの取り回し装置を適用する作業機の一例を示す側面図である。
【図2】本発明のグラップルの油圧ホースの取り回し装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図3】図2のグラップルの側面図である。
【図4】図2のグラップルの背面図である。
【図5】この実施の形態のグラップルの一部省略斜視図である。
【図6】この実施の形態のグラップルをアーム先端を上下反転させて支持した状態を示す側面図である。
【図7】本発明のグラップルの油圧ホースの取り回し装置の他の実施の形態を示す側面図である。
【図8】図7の背面図である。
【符号の説明】
【0027】
1:下部走行体、2:旋回装置、3:上部旋回体、4:油圧パワーユニット、5:運転室、6:作業用アーム、7:ブーム、7a:ブームシリンダ、8:アーム、8a:アームシリンダ、10:グラップル、11:吊り下げ用ブラケット、12:横ピン、13:縦ピン、14:上部フレーム、15:旋回装置、16:下部フレーム、17:ブラケット、19:爪、20:枢着軸、21:油圧シリンダ、22,23:ピン、24:第1のホースガイド、25:第2のホースガイド、26:アーム上の油圧配管群、27〜31:油圧ホース、32:センタージョイント、33:接続装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用アームの先端に左右方向水平に設けた横ピンを中心に前後方向に揺動可能にグラップル吊り下げ用ブラケットを取付け、前記吊り下げ用ブラケットの下部に前後方向水平に設けた縦ピンを中心に左右方向に揺動可能にグラップルのフレームを取付けてなる作業機械において、
前記吊り下げ用ブラケット上部両側面の前記横ピン取付け部近傍に設けられ、前記グラップルに備えた油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ホースを通す第1のホースガイドと、
前記グラップルのフレームの背面側または前記吊り下げ用ブラケットの背面側でかつ前記縦ピン取付け部近傍に設けられ、前記第1のホースガイドを通した前記油圧ホースを通す第2のホースガイドとを備えたことを特徴とする吊り下げ式グラップルの油圧ホースの取り回し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り下げ式グラップルの油圧ホースの取り回し装置において、
前記第1のホースガイドは手前側を上方に傾けた傾斜構造を有することを特徴とする吊り下げ式グラップルの油圧ホースの取り回し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−274806(P2009−274806A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127093(P2008−127093)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】