説明

吊持物の吊下げ支持具及びこれを用いた吊下げ支持構造

【課題】 吊持物を天井裏等の空間に簡単且つ確実に吊り下げて支持する吊持物の吊下げ支持具及びこれを用いた吊下げ支持構造を提供する。
【解決手段】 天井裏等に配設される線条のワイヤー体1と、パイプ等の吊持物Pを固定可能なワイヤー2と、前記ワイヤー2の一端に連結される取付具3と、よりなり、前記取付具3は、前記ワイヤー体1に掛止可能な掛止部31aを設けた本体部31と、前記ワイヤー2の上端部を固定した受部材32とより構成され、前記本体部31及び受部材32の一方に螺合部32aを形成すると共に、他方には前記螺合部32aに螺着し得る被螺合部31bを形成し、前記本体部31及び受部材32を着脱可能にしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井裏等の空間にワイヤーを介してパイプ等の吊持物を吊下げ支持する吊下げ支持具及びこれを用いた吊下げ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルや工場などの各種建築物の内部には、例えば、排水パイプ、空調用ダクト、電気配線類等の吊持物(以下、「吊持物」と略する。)が収容されており、当該吊持物は、建築物の天井裏等の空間に吊下げ支持具を用いて吊下げられた状態に保持されている。
【0003】
この種の吊下げ支持具及びこれを用いた吊下げ支持構造には様々な形態があるが、例えば、吊持物を固定可能なワイヤーと、当該ワイヤーの一端に連結される取付具と、より構成された吊下げ支持具は公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
具体的には、前記吊下げ支持具のワイヤーを吊持物に固定すると共に、このワイヤーの上端部を取付具を介して天井裏等に固定し、前記吊持物を天井裏等の空間に吊り下げて支持する構造にしている。
【0005】
更に詳しくは、従来の吊下げ支持具及びこれを用いた吊下げ支持構造においては、前記取付具を天井裏等に固定する手段として、天井裏等に取付具を直接埋設したり、或いは、接着剤や粘着テープを用いて天井裏等に取付具を接着、貼着したりするものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−225782号
【特許文献2】特開昭58−47073号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの吊下げ支持具及びこれを用いた吊下げ支持構造では、高重量物である吊持物を支持するための支持強度が弱いという問題がある。
【0007】
もっとも、通常の使用時では、特に支持強度の問題は生じないと思われるが、近年多発している地震などの災害時においては、縦揺れや横揺れによって、前記吊持物は勿論、天井裏等に異常な外力が負荷されるため、前記取付具が天井裏等から離脱する危険がある。
【0008】
又、前記取付具を固定する天井裏等に鉄骨材等が配置されていれば、当該鉄骨材等に前記取付具を溶接等して支持強度を高めることも考えられる。
【0009】
しかしながら、現実的には、天井裏等に鉄骨材等が外被している場合は殆どなく、しかも前記取付具の取付け位置は、天井裏等に複数点在しているため、溶接等を行うことはできない。
【0010】
そこで、本出願人は、かかる課題を解決することを目的として、従来の吊下げ支持具及びこれを用いた吊下げ支持構造を根本的に見直し、鋭意研究した結果、前記取付具を天井裏等に直接埋設したり、或いは、接着、貼着したりせず、天井裏等に線条のワイヤー体を配設し、このワイヤー体に前記取付具を掛止して、前記吊持物を天井裏等の空間に吊り下げて支持する吊持物の吊下げ支持具及びこれを用いた吊下げ支持構造を提供するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る吊持物の吊下げ支持具においては、天井裏等に配設される線条のワイヤー体と、パイプ等の吊持物を固定可能なワイヤーと、前記ワイヤーの一端に連結される取付具と、よりなり、更に、前記取付具は、前記ワイヤー体に掛止可能な掛止部を設けた本体部と、前記ワイヤーの上端部を固定した受部材とより構成してなる。
【0012】
そして、前記本体部及び受部材の一方に螺合部を形成すると共に、他方には前記螺合部に螺着し得る被螺合部を形成し、前記本体部及び受部材を着脱可能にしたものである。
【0013】
このような構成による本発明の吊下げ支持具は、従来のように取付具を天井裏等に直接埋設したり、或いは、接着、貼着するのではなく、先ず、天井裏等に線条のワイヤー体を配設し、このワイヤー体に取付具を掛止させて、吊持物を天井裏等の空間に吊り下げて支持せんとしたものである。
【0014】
具体的には、本体部は、上端が閉止された筒状体に形成され、この筒状体の側壁にワイヤー体が貫通される掛止穴を設けると共に、前記筒状体の開放端内面には、受部材の螺合部を螺合し得る被螺合部を形成してなるため、前記ワイヤー体を複数の本体部の掛止穴に順次貫通させたうえで、当該ワイヤー体の両端を天井裏等に配置されている鉄骨材等の建造物に直接固定すれば、固定されたワイヤー体に複数の本体部を取付けできる。
【0015】
そして、これら複数の本体部をワイヤー体の長手方向の所望位置にスライドさせると共に、ワイヤーの上端部を固定した受部材の螺合部を、前記本体部の被螺合部に螺合して連結し、前記ワイヤーに吊持物を吊下げて支持するのである。
【0016】
このように本発明の吊持物の吊下げ支持具を用いれば、天井裏等に線条のワイヤー体を配設すると共に、前記吊持物を固定した前記ワイヤーの上端部を取付具に固着し、この取付具を前記ワイヤー体に掛止して前記吊持物を前記天井裏等の空間に吊り下げて、吊持物を簡単且つ強固に支持することができる。
【0017】
また、本発明の本体部に設けた掛止穴に連続して、筒状体の側壁に向けて開放された溝部を形成しておけば、前記溝部を通じてワイヤー体を容易に掛止できるため、前述のように複数の本体部をワイヤー体の掛止穴に予め貫通させなくても、天井裏等に配置されたワイヤー体の所望位置に、本体部の溝部を通じて掛止穴に掛止することができ、作業性を一層向上できる。
【0018】
このとき、ワイヤー体は、全体が外被された状態でも構わないが、当該ワイヤー体が外被しては困るような場所であれば、当該ワイヤー体を、例えばコンクリート床等に埋設しておき、取付具の掛止する位置だけを部分的に開設すれば、前記ワイヤー体が外被されることはない。
【0019】
このように、本発明の吊持物の吊下げ支持具を用いれば、従来のように取付具を天井裏等に直接埋設したり、或いは、接着、貼着する必要がなく、ワイヤー体に取付具の本体部を掛止し、吊持物を固定したワイヤーの上端部を前記取付具の受部材に固定し、この受部材を前記本体部に螺着、固定し、前記吊持物を前記天井裏等の空間に吊り下げて、吊持物を簡単且つ強固に支持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る吊持物の吊下げ支持具及びこれを用いた吊下げ支持構造によれば、天井裏等に鉄骨材等が外被していなくても、前記鉄骨材等にワイヤー体を固定して配設しておくだけで、当該ワイヤー体に十分な強度を得ることができ、このように配設された線条のワイヤー体に取付具を掛止するだけで、地震などの災害時における縦揺れや横揺れなどによって、例えば、天井裏等に異常な外力が負荷されても、取付具が天井裏等から離脱する危険を確実に防止できる。
【0021】
また、本発明によれば、本体部及び受部材を着脱可能にしているので、ワイヤーの上端部に固定した前記受部材を、ワイヤー体に掛止された本体部に螺合するだけで簡単且つ確実に吊持部を吊下げ支持でき、作業性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る吊持物の吊下げ支持具及びこれを用いた吊下げ支持構造を図面とともに説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明に係る吊持物の吊下げ支持具Aの一実施例を示す分解斜視図である。
【0024】
本発明の吊下げ支持具Aは、天井裏等に配設される線条のワイヤー体1と、パイプ等の吊持物Pを固定可能なワイヤー2と、このワイヤー2の一端に連結される取付具3と、よりなり、当該取付具3は、ワイヤー体1に掛止可能な掛止部31aを設けた本体部31と、ワイヤー2の上端部を固定した受部材32とより構成している。
【0025】
ワイヤー体1は、市販の金属製ワイヤー又はピアノ線等を使用してコストダウンを図ることができる。
【0026】
ここで、「線条」とは、細長い長尺物を意味し、断面円形に限らず、断面楕円形、角形のものも含む意味である。
【0027】
本体部31は、上端が閉止された筒状体に形成され、この筒状体の側壁にワイヤー体1が貫通される掛止穴31a’を設けるか、或いは、本実施例で示すように、ワイヤー体1が貫通される掛止穴31a’に連続して前記筒状体の側壁に向けて開放された溝部31a”を形成してなる。
【0028】
また、本体部31の内面は、円筒状に形成し、この内面に、受部材32の螺合部(ネジ山)32aを螺合し得る被螺合部(ネジ溝)31bを形成してなる。
【0029】
そのため、受部材32の螺合部(ネジ山)32aは、本体部31の開放端及び内面によって確実且つ強固に螺合できると共に、受部材32を本体部31の閉止端まで十分に螺合できるため、ワイヤー体1を受部材32及び本体部31の間で確実に挟持して固定できる。
【0030】
受部材32は、ボルトの軸部にワイヤー2が貫通可能な貫通路32bを形成し、この貫通路32bの上端に嵌合段部32cを形成してなる。
【0031】
また、ワイヤー2の上端には、嵌合段部32cに嵌合される嵌合部材21を固着し、ワイヤー2の下端を、受部材32の貫通路32b上方から貫通させて、嵌合部材21を嵌合段部32cに嵌合し、ワイヤー2を受部材32に固定している。
【0032】
なお、ワイヤー2と受部材32の固定手段は特に限定されるものでなく、例えば、溶接等によって固定しても良く、要は、ワイヤー2と受部材32とが確実に固定できるものであれば良いのである。
【0033】
このようにして取付具3の本体部31に螺合部31bを形成すると共に、受部材32に被螺合部32aを形成し、これら本体部31及び受部材32aを着脱可能にしている。
なお、ワイヤー2の下端には、既存の手段と同様にして、吊持物Pを固定している。
【0034】
以上のように構成した本発明の吊下げ支持具Aは、以下の要領で施工する。
【0035】
図2は、図1で示した吊下げ支持具Aを用いた吊下げ支持構造Bの一実施例を示す使用状態図である。なお、図1との共通する部位には、同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0036】
先ず、天井裏等に配置されている支柱又は梁等の頑丈な鉄骨材(H鋼材等)等に、ワイヤー体1の両端を固定する。具体的には、ワイヤー体1の両端と、鉄骨材等をボルト、ナット又はターンバックル等の公知の固定手段によってワイヤー体1を緊張状態にして天井裏等に配設する〔図2(a)参照。〕。
【0037】
次に、配設されたワイヤー体1に本体部31の掛止部31aを引っ掛けて、ワイヤー体1に複数の本体部31を掛止し、更に、本体部31をワイヤー体1の長さ方向にスライドさせて各々の本体部31を適所に配置する〔図2(b)参照。〕。
【0038】
そして、この配置された本体部31の被螺合部31bと、ワイヤー2の上端部に固定された受部材32の螺合部32aを順次螺合するだけで、ワイヤー体1が受部材32及び本体部31の間で確実に挟持されて、本体部31のスライドが規制されると共に〔図2(c)参照。〕、吊持物Pを天井裏等の空間Qに簡単且つ確実に吊り下げて支持できる〔図2(d)参照。〕。
【0039】
このように本発明に係る吊持物の吊下げ支持具A及びこれを用いた吊下げ支持構造Bによれば、天井裏等に配設したワイヤー体1に取付具3を掛止するだけで簡単に施工できるうえ、地震などの災害時における縦揺れや横揺れなどによって、例えば、天井裏等に異常な外力が負荷されても、取付具3が前記ワイヤー体1に掛止した構造にしているので、当該ワイヤー体1の十分な強度を得ることができ、取付具3が天井裏等から離脱する危険を確実に防止できるのである。
【実施例2】
【0040】
図3は、図1で示した吊下げ支持具Aを用いた吊下げ支持構造Bの他の実施例を示す使用状態図である。なお、図1、図2との共通する部位には、同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0041】
この実施例2では、ワイヤー体1が外被しては困るような場所などで使用する場合に適しており、ここでは、ワイヤー体1をコンクリート床R等に埋設する手段を例示している。
【0042】
先ず、天井裏等の空間Qの上部であるコンクリート床R等に、ワイヤー体1を当該コンクリート床R等の建設段階で埋設しておく〔図3(a)参照。〕。
【0043】
また、図示しないが、前記コンクリート床R等の施工後であれば、ワイヤー体1を当該コンクリート床R等の下面に近接させて配置しても構わない。
【0044】
次に、前記コンクリート床R等の適所を、ドリル等の工具で下方から切削して開放穴B1を開設してワイヤー体1を外被させ、この開放されたワイヤー体1に本発明の本体部31の掛止部aを引っ掛けて、ワイヤー体1に本体部31を掛止する〔図3(b)参照。〕。
【0045】
なお、ワイヤー体1の埋設位置は、既存の検知器等で容易に検知することができる。
【0046】
そして、前記と同要領にして、掛止された本体部31の被螺合部31bと、ワイヤー2の上端部に固定された受部材32の螺合部32aを螺合するだけで、ワイヤー体1が受部材32及び本体部31の間で確実に挟持されて、本体部31のスライドが規制されると共に〔図3(c)参照。〕、吊持物Pを天井裏等の空間Qに簡単且つ確実に吊り下げて支持できる〔図3(d)参照。〕。
【0047】
このように本発明に係る吊持物の吊下げ支持具A及びこれを用いた吊下げ支持構造Bによれば、前記と同様の効果を得ることができるうえ、天井裏等に埋設されたワイヤー体1が更に強度を増すことができ、取付具3が天井裏等から離脱する危険を更に確実に防止できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る吊持物の吊下げ支持具Aの一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】図1で示した吊下げ支持具Aを用いた吊下げ支持構造Bの一実施例を示す使用状態図である。
【図3】図1で示した吊下げ支持具Aを用いた吊下げ支持構造Bの他の実施例を示す使用状態図である。
【符号の説明】
【0049】
A 吊持物の吊下げ支持具
B 吊持物の吊下げ支持構造
P 吊持物
Q 天井裏等の空間
1 ワイヤー体
2 ワイヤー
3 取付具
31 本体部
31a 掛止部
31a’掛止穴
31” 溝部
31b 被螺合部
32 受部材
32a 螺合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーをパイプ等の吊持物に固定すると共に、前記ワイヤーの上端部を取付具を介して天井裏等に固定し、前記吊持物を天井裏等の空間に吊り下げて支持する吊持物の吊下げ支持具であって、
天井裏等に配設される線条のワイヤー体と、
パイプ等の吊持物を固定可能なワイヤーと、
前記ワイヤーの一端に連結される取付具と、よりなり、
前記取付具は、前記ワイヤー体に掛止可能な掛止部を設けた本体部と、前記ワイヤーの上端部を固定した受部材とより構成され、
前記本体部及び受部材の一方に螺合部を形成すると共に、他方には前記螺合部に螺着し得る被螺合部を形成し、前記本体部及び受部材を着脱可能にしたことを特徴とする吊持物の吊下げ支持具。
【請求項2】
本体部は、上端が閉止された筒状体に形成され、この筒状体の側壁にワイヤー体が貫通される掛止穴を設けると共に、前記筒状体の開放端内面には、受部材の螺合部を螺合し得る被螺合部を形成してなる請求項1に記載の吊持物の吊下げ支持具。
【請求項3】
掛止穴に連続して筒状体の側壁に向けて開放された溝部を形成してなる請求項2に記載の吊持物の吊下げ支持具。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載したいずれかの吊持物の吊下げ支持具を用いて、吊持物を天井裏等の空間に吊り下げて支持する吊持物の吊下げ支持構造であって、
前記天井裏等に線条のワイヤー体を配設すると共に、前記吊持物を固定した前記ワイヤーの上端部を取付具に固着し、この取付具を前記ワイヤー体に掛止して前記吊持物を前記天井裏等の空間に吊り下げて支持することを特徴とする吊持物の吊下げ支持構造。
【請求項5】
請求項1乃至3に記載したいずれかの吊持物の吊下げ支持具を用いて、吊持物を天井裏等の空間に吊り下げて支持する吊持物の吊下げ支持構造であって、
ワイヤー体に取付具の本体部を掛止し、吊持物を固定したワイヤーの上端部を前記取付具の受部材に固定し、この受部材を前記本体部に螺着、固定し、前記吊持物を前記天井裏等の空間に吊り下げて支持することを特徴とする請求項4に記載の吊持物の吊下げ支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−74570(P2009−74570A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241836(P2007−241836)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(501390965)大阪コートロープ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】