説明

同定目的の少なくとも1種の標的物質の精製方法

同定目的であり細胞が培養される場合に細胞培地中に存在するまたは形成される少なくとも1種の標的物質の精製方法が開示される。当該方法では、その官能化された表面に標的物質が選択的に結合する磁性粒子(すなわちビーズ)が細胞培地に加えられ、標的物質が結合されている粒子が磁場の印加により細胞培地から選び出される。この方法は以下の工程を特徴とする:天然の血清から得られ、60kDaの最大質量、特に10kDaの最大質量を持つ低分子物質を有さないまたは実質的に有さない血清代替物を用意する工程;既に細胞を含んでいるか、または細胞が加えられる細胞培地に血清代替物を添加する工程;血清代替物の含量を高めた細胞培地中で細胞を培養する工程;培養中に形成される細胞培養上清の少なくともいくらかを分離する工程;限外ろ過処理により細胞培養上清をろ過して未透過物を得る工程;ビーズの官能化された表面が最大10本の側鎖(すなわち10世代)を含む複数のデンドリマー(各デンドリマーの最終世代の末端部分は変性されている)を含むようにビーズを供給する工程;ビーズおよび未透過物を緩衝液に混ぜて混合物を得る工程;未透過物に含まれる標的物質を培養しビーズに固定させる工程;ならびに混合物から磁気ビーズを磁気的に選び出す工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同定目的の少なくとも1種の標的物質の精製方法に関し、この標的物質は細胞が培養される場合に細胞培地に存在するかまたは形成され、この細胞培地には表面が官能化されその表面に標的物質が選択的に結合する磁性粒子(この磁性粒子はビーズともいわれる)が加えられ、標的物質が結合している粒子は磁場を印加することにより細胞培地から選び出される。
【背景技術】
【0002】
細胞性状および細胞のさらなる増殖挙動を研究するため、細胞培地中で細胞により放出される物質の分取には一般的な方法が好ましく使用されている。具体的な、関連する用途としては腫瘍細胞の調査があり、腫瘍細胞の制御されない増殖はヒトにおける最も一般的な死因である。
【0003】
ヒトにおいて検出された腫瘍と闘うために信頼できる治療法を提供するという目的では、まず腫瘍の種類(例えば、腫瘍が非侵襲性または侵襲性の種類であるか、すなわち非浸潤性乳管癌などかどうか)を決定する必要がある。それに続く治療は、腫瘍細胞の進行が腫瘍細胞の性質を変化させるので腫瘍の種類に依存する。例えば、非侵襲性の癌細胞株MCF−7はエストロゲン受容体を含んでおり、したがってこの種の腫瘍はエストロゲン受容体阻害剤(例えば、タモキシフェン)により治療することができる。進行中に、良性(すなわち非侵襲性)の腫瘍細胞は悪性(すなわち侵襲性)の種類の細胞(もはやその表面にエストロゲン受容体を有しておらず、よってホルモン療法の可能性がなくなる)に形質転換し得る。
【0004】
腫瘍進行は基本的には変異により引き起こされ、翻って変異は酸素欠乏(低酸素)などの外的効果により引き起こされる可能性がある。腫瘍細胞表面は、変異により種類、効果および量が大きく変化する受容体をとりわけ有するという事実に加えて、腫瘍細胞はまた異なる調節ペプチドおよびタンパク質の分泌に関連して挙動が変化する。
【0005】
現在のプロテオーム研究において血清/血漿から腫瘍マーカーを同定するための一手法としては、様々なクロマトグラフィー工程(すなわち、二次元ゲル電気泳動およびそれに続く質量分光法)の使用がある。しかしながら現在では、潜在的マーカーの探求はマーカーが血清/血漿中で非常に高度に濃縮されたタンパク質によりマスクされるために頓挫している。この理由で、腫瘍細胞株に対する試験がますます多く行なわれている。しかしながら腫瘍細胞に対するこれらの試験では、ペプチドおよびタンパク質は極めて低濃度(すなわち、10−12〜10−9Mの量)でのみ細胞により放出されることが示されている。現在の質量分光計の検出限界が10−9Mであり、質量分析計により検出されるためには物質が高純度状態で存在しなければならないため、細胞培養上清(例えば分泌分子)中の検体を濃縮する効率的な精製工程が必要である。
【0006】
この理由で、プロテオーム研究の分野では低濃度で存在する物質の事前分析が現在注目されている。しかしながら、使用する容器の壁面と非特異的な結合を形成するため、低量のタンパク質に対して行なう一連の別個の逐次的な精製工程は、重篤な、ひいては完全なタンパク質の喪失をもたらす。精製工程を何度も行う場合に遭遇するさらなる問題としては、試料がますます汚染されて、これによりシグナルが干渉するため質量分光分析ができなくなるということである。この理由のため細胞分泌試験は非常に多い細胞数で行ない得るのみであった。
【0007】
初期の細胞数が10桁の細胞数であり、血清添加培地において増殖期が数日続き、その後、無血清環境中で培養をする試験では、総タンパクが数mgのみ産生されることが分かっている。例えば、10個の細胞数で細胞培養処理を完了した後の酵母細胞に対する試験では、上清中で30nMの濃度のAIPタンパク質が測定された。しかしながら、このような大量の細胞は一般に分析には利用できない。例えば、生検により腫瘍組織から除去された癌細胞に対する試験では、ニードルコア試料(needle core sample)1つ当たり最大約10個の細胞を単離することができるが、これに含まれる多くの細胞は腫瘍細胞ではない。分散した物質が非常に低濃度であるので、分泌分子が単一の精製工程で効率的に単離されること、およびその後の分析処理がいかなる中間工程もなく行なわれることが非常に重要である。
【0008】
過去5年間に、細胞により分泌されたペプチドおよびタンパク質をスクリーニングする方法として、SELDI−TOF MS(表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法)技術を使用する試みがなされている。この手法では、試験される試料は表面がほとんど疎水性である3mmチップに配置される。チップ上に結合したタンパク質は続いてレーザー衝突によりイオン化され、質量分析計中で検出され、続いて二次元グラフ上で視覚化される。この方法では、例えば異なった癌細胞株をお互いに比較することができる。しかしながら、制限要素としてはこの技術では感度が不十分であるということである。このシステムの検出限界は、一般に高々300nMであり、したがって現在はSELDI−TOF MS技術はなお血清試料のプロファイリングに関してのみ使用される。
【0009】
感度は、より小さなサイズの粒子を使用すること(これによりタンパク質の結合のためのより多くの総表面積がもたらされる)によってのみ増加することができる。タンパク質およびペプチドの結合のための担体として磁性粒子を使用することにより、この方法を自動化し、したがってより大きな試料処理量を達成することができる。磁気ビーズともいわれるタンパク質を単離するための磁性粒子の使用は、磁性ストレプトアビジンビーズに結合したビオチン化抗体で実証されており、血清から得られた前立腺特異抗原(PSA)に対する質量分光試験において結果よく使用されている。しかしながら磁性の「抗体粒子」を使用すると、一度に一種類のタンパク質を単離することしかできない。
【0010】
疎水性表面を有する粒子は、血漿、血清、尿または細胞培地などの溶液からできるだけ多くの異なるペプチドまたはタンパク質を結合させるには都合がよいことが分かっている。これら粒子は疎水的相互作用によりタンパク質と結合し、これにより広範囲のペプチドまたはタンパク質と結合することができる。疎水性表面を有するこの種の磁性微粒子(RP−ビーズ)は、例えば、脱塩のためならびに血清からのペプチドおよびタンパク質を濃縮させるためにますます使用されている。例えば、異なる血清からこの方法で得られた精製されたペプチドおよびタンパク質は、現在典型的には、例えば、ペプチドおよびタンパク質プロフィールを作成するためにMALDI−TOF MS標的プレートに直接適用される。
【0011】
血清は、大きく異なる濃度で存在する多数の物質からなる。例えば、アルブミンはmg/ml範囲の濃度で存在し、一方でインターロイキンはng/ml範囲の濃度でのみ存在する。これら高度に濃縮されたペプチドおよびタンパク質は、細胞培地中で増殖する細胞(例えば、腫瘍細胞)から細胞培地中に放出されるもののような低濃度のペプチドおよびタンパク質に対する検出能を阻害する。この種の調節ペプチドおよびタンパク質は極少量でのみ放出される。
【0012】
さらに、細胞はまた通常は細胞培地中で増殖するためにはウシ胎仔血清(FCS)の添加を必要とする。一方ではこの添加物は必要とされる成長因子を細胞に提供するが、他方ではこれは非常に高濃度の追加のタンパク質がさらに添加されることを意味する。疎水性の磁気ビーズに結合する処理の間に、これら高濃度物質はしたがって結合部位をめぐって競合し、よって低濃度のペプチドおよびタンパク質はこれら結合部位のごく一部分のみと結合する。
【0013】
したがって、血清または血漿試料を分析するため結果よく使用されてきた磁気ビーズは、腫瘍細胞により細胞培地中へ放出された調節ペプチドおよびタンパク質を選択的に分離するための細胞培地中での使用には限られた範囲内でのみ適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、同定目的であり細胞培地中で細胞により放出される少なくとも1種の標的物質の精製方法を開発することであり、この方法において、異なる官能化された表面を有する磁性粒子(ビーズともいわれる)は細胞培地に加えられ(この細胞培地の標的物質はビーズ表面に選択的に結合する)、磁場の印加により(細胞培地から標的物質を選択的に分離することが可能であり選択性の程度が向上しているような様式で)細胞培地から選び出される(標的物質は低量または低濃度で細胞培地中に存在する)。特に、細胞(特に腫瘍細胞)が培養される場合に、前記精製方法は目的とするやり方で、とりわけ分泌過程の結果として細胞培地中で10−12〜10−7Mの間の低濃度で存在する物質を抽出するはずである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、請求項1で規定の方法により達成される。本解決手法による方法はまた下位請求項で特定される特徴および明細書(特に実施例を参照して)から推測することができる特長により有利に発展される。
【0016】
本発明による、細胞培地中で細胞(特に腫瘍細胞)により放出される同定目的の少なくとも1種の標的物質(好ましくは調節ペプチドおよびタンパク質)の精製方法は、(a)血清代替物を使用して細胞培養を行なうこと、ならびに(b)標的物質が表面に選択的に結合する、表面が官能化された磁性粒子(磁気ビーズともいわれる)を細胞培地に加えることおよび磁場の印加により細胞培地から標的物質が結合されている粒子を選び出すことを伴い、以下の方法工程により特徴づけられる(1つ1つの主な処理工程に関するキーワードは、工程を理解し易いように太字で記載される)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
天然の血清から得られ、60kDa、30kDa以下、好ましくは10kDa以下の分子量を持つ低分子物質を有さないまたは実質的に有さない血清代替物の用意。血清代替物は、他の産生物と同様に細胞増殖に対して悪影響を及ぼさないが、特に大きさが10kDa未満のいかなるかく乱物質も含まないという事実により特に特徴づけられる。
【0018】
原理上は天然の血清として動物血清(ほんの数例を挙げれば、好ましくはウシ胎仔血清、牛または羊の血清)を使用してもよい。ヒト血清を使用してもよい。
血清代替物を調製および用意するため、好ましい実施形態では天然の血清はまず限外ろ過ユニットを使用して遠心分離され、未透過物ともいわれる上清および透過物を得る。使用されるフィルターの大きさに応じて、透過物は各場合で使用されるフィルター孔径よりも小さい粒径の物質を含んでいる。この目的のため、3kDa〜100kDaの間で適切に選択された孔径(すなわち排除限界)の膜が使用される。できるだけ微粒子を有さない血清を得るため、増殖培地は第1の遠心分離処理から得られた上清に加えられ、再び遠心分離が行なわれる。下記では洗浄手順と呼ばれるこの手順は、有利には複数回繰り返される。ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、IMDM、IMEM、ERDF、RPMI1640などの増殖培地またはPBS、MES、TRISなどの緩衝液を、各場合で得られる上清に加える洗浄液として使用してもよい。
【0019】
洗浄手順後に、得られた上清(すなわち未透過物)を次に逆遠心分離し(この処理では上清を含む容器は単に上下逆さまにされて再び遠心分離される)、未透過物はさらなる処理のために遠心分離ユニットから取り出され、使用されるそれぞれの増殖培地または緩衝液と混合(好ましくは使用された元々の体積を得るために十分な増殖培地を加えることによる)される。前述の方法で得られた血清上清と呼ばれる上清はさらなる精製および殺菌のためろ過滅菌処理(好ましくは0.2μmフィルターの使用による)に供され、次いで、本解決手法による方法により提供される血清代替物として、使用可能な量(例えば、500μlアリコート)に分割され、将来の使用のため−20℃〜−80℃で凍結される。
【0020】
細胞が加えられた細胞培地への上記の血清代替物の添加。この処理に関しては、上記の増殖培地(すなわち、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、IMDM、IMEM、ERDF、RPMI1640)が適する。血清代替物は1〜10%の体積分率で添加される、この体積分率では細胞は複数日(すなわち1〜14日)間培養される。細胞培地と細胞と血清代替物との混合物の培養期間中に物質が濃縮される細胞培養上清は次いで分割され、適切に成形された容器(バイアルともいわれる)に移され、任意に輸送または保管のため凍結される。
【0021】
細胞培養上清に含まれる物質のさらなる処理または精製のため、細胞培養上清は、必要に応じて解凍された後、限外ろ過ユニットを使用して遠心分離される。この場合、3kDa〜60kDa間の適切に選択された孔径(すなわち排除限界)を有する膜が好ましく使用される。ろ過により得られたろ液は次いで、適切に官能化された磁気ビーズで処理することにより精製される。
【0022】
本発明による方法を結果よく使用するため、官能化された磁性粒子(ビーズまたは磁気ビーズと略される)が特に供給され、これは現在まで市販されているビーズと比較してより高い結合力を有し物質に対する新規な結合方法(この方法は低濃度でのより高濃度の物質に特徴づけられる)の使用を可能にする。新規な磁気ビーズの官能化された表面はしたがって複数のデンドリマーを有し、それぞれ最大10本の側鎖(すなわち10世代)を含み、各デンドリマーの最終世代の末端部分は変性されている。
【0023】
この種の新規な磁気ビーズは次の方法で製造または形成することができる。
まず、ナノまたはミクロ規模で(すなわち、1nmまたはμm以上)かつ表面に例えばアミノ基が付加されている異なる粒径の市販の磁性粒子が用意される。アクリル酸メチルが添加されている有機溶媒にこのビーズを加え、アミノビーズ表面をさらに官能化させる。好ましくは2〜48時間の暴露時間後に、ビーズを反応液から分離し、新たな溶媒で洗浄する。このように調製されたビーズを次いでエチレンジアミンが添加されている有機反応液に加え、その表面にデンドリマーの第一世代(G1ビーズ)を形成させる。ビーズをこの環境中でさらに2〜48時間反応させる(反応浴を撹拌することにより反応処理が促進される)。ビーズを次いで反応液から分離し(好ましくは磁石を用いて)、再び洗浄する。複数のデンドリマー形成(これが新規な方法で官能化されたビーズの非常に高い結合力をもたらす)を達成するため、デンドリマーの第1世代G1の形成に関して上記した処理は、最大9回まで繰り返される。
【0024】
適切な処理後に得られる任意のデンドリマービーズは溶媒中に懸濁され、最終的に疎水性誘導体でデンドリマー鎖末端部分を変性させるため活性アルキル(C〜C30)または芳香族誘導体、単環芳香族化合物もしくは多環芳香族化合物を加え、これによりビーズに疎水性が付与される。これら官能化されたビーズはしたがってデンドリマー逆相ビーズ(G1RPビーズ〜G10RPビーズ)と呼ばれる。
【0025】
ビーズは、反応懸濁液からビーズを分離し、再び洗浄し、蒸留水または緩衝液(PBS、MES、TRISなど)に保存して提供される。
無菌でありろ過された細胞培養上清に含まれる物質(細胞により分泌される調節ペプチドおよびタンパク質を含む)のさらなる精製および分離のため、上記の方法で得られたデンドリマーRPビーズをろ過後に得られたろ液に加え、また緩衝液も加える。次いで培養処理を10〜120分の長さの滞留時間および周囲温度で行う。この処理において、細胞培養上清に含まれる物質はデンドリマー構造の変性末端に結合する。磁気ビーズは次いで混合物から磁気的に選び出され、デンドリマー構造に結合した物質、特に細胞により分泌された物質(具体的には調節ペプチドおよびタンパク質)が溶出される。磁気ビーズの官能化に応じて、目的とする方法でさらなる物質(例えば、代謝産物、ステロイドなど)を選び出すことももちろん可能である。
【0026】
本発明による精製方法の背後にある核心となる思想には基本的には2つの有利に協調する特徴が含まれる。すなわち、一方は、後の分析手順において同定される実際の標的物質と潜在的に競合する可能性のあるいかなる小さな粒径の干渉物質も最初は含んでいない細胞培養添加物(すなわち血清代替物)を用意すること、そして他方は、デンドリマー構造および逆相を有する新規な磁気ビーズ(ここでデンドリマー構造は最大10の分岐点を有し、これにより同定すべき標的物質との結合に関してその数が最適化されている)である。
【0027】
本解決手法による方法は、ウシ胎仔血清などの現在まで従来使用されてきた通常の血清よりもはるかに多くの物質を単離することができる。新規なビーズの使用により細胞培養上清に対する感度を、例えば、市販のビーズと比べて10〜100倍増加することが可能となる。要約すると前記ビーズおよび血清代替物の使用により、従来の血清および市販のビーズの使用に比べて最大で1000倍の感度を達成することができる。
【0028】
前記工程の具体的な実施形態のいくつかを以下に記載する。
【実施例1】
【0029】
(血清代替物の調製)
(a)例えばウシ胎仔血清またはヒト血清を遠心分離しダルベッコ変法イーグル培地で洗浄することにより低分子物質をウシ胎仔血清またはヒト血清から除去する。遠心分離処理は必要条件に応じて3kDa〜100kDaの間の孔径を有するろ過膜を使用して行う。遠心分離処理は1時間行なう。必要であれば、プロテアーゼ阻害剤(PMSF、EDTA、個々の阻害剤形態のプロテアーゼ阻害剤またはそのプロテアーゼカクテルなど)を処理前に血清に添加してもよい。
【0030】
(b)ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を遠心分離により得られた上清に加え、再び遠心分離を1時間(血清精製)行う。
(c)遠心分離および洗浄工程は合計2〜5回行う。
【0031】
(d)得られた上清を次いで容器内に逆遠心分離し、DMEMを加えて元々使用した体積にまで戻す。
(e)得られた血清代替物(血清上清とも呼ばれる)を0.2μmフィルターを使用して無菌ろ過する。
【0032】
(f)血清代替物を500μlアリコートに分割し、使用されるまで−20℃で凍結する。
【実施例2】
【0033】
(変性磁気ビーズの製造)
ビーズのアミノ表面から開始してデンドリマー構造を各アミノ基上で分岐鎖形成反応を行なうことにより形成させる。この処理はスターバースト分子の合成原理に基づき、デンドリマー構造中で1〜10の分岐鎖が形成されるまで行なわれ、これによりG1〜G10ビーズともいわれるものが得られる。この処理の最後に、とりわけマイクロ波合成による活性基を介した異なる長さ(C〜C30)のアルキル鎖によりデンドリマービーズの端末NH基を変性させる。
【0034】
(a)10〜2000mgのアミノビーズを用意し、容器中で10〜100mlのMeOH中で洗浄する。
(b)ビーズを10〜100mlのMeOHへ加え、10〜100mlの冷アクリル酸メチルを加える。2〜48時間撹拌器中で周囲温度にて反応させる。
【0035】
(c)磁石で反応液からビーズを分離し、毎回10〜200mlのMeOHでビーズを3回洗浄する。
(d)10〜100mlのMeOHを加え、10〜100mlの冷エチレンジアミンを徐々に加える。撹拌しながら2〜48時間室温にて反応させる(G1ビーズ)。
【0036】
(e)工程(c)参照。つまり、磁石で反応液からビーズを分離し、毎回10〜100mlのMeOHでビーズを3回洗浄する。
(f)工程(b)〜(e)をn回繰り返す(nは0〜9である)。
【0037】
(g)毎回10〜100mlのMeOHで3回および毎回10〜100mlのハロゲン化炭化水素で5回デンドリマービーズ洗浄する。
(h)50〜100mlのハロゲン化溶媒中にデンドリマービーズを懸濁し、5〜10mlの活性アルキル誘導体(例えば、C〜C30)または芳香族誘導体を徐々に滴下する。超音波浴中で周囲温度にて10〜120分間および/または最高38℃まで加熱することによりもしくはマイクロ波合成によって反応させる。
【0038】
(i)毎回10〜100mlのMeOHで5回および10〜100mlの超純水で5回変性デンドリマービーズを洗浄する。
(j)デンドリマービーズを超純水に加え、+4℃で保存する。
【0039】
あるいは、方法工程(h)に代えて、例えば抗体を加えることにより、デンドリマー鎖の末端点において違ったやり方でデンドリマービーズを変性することも可能である。この目的のため、前処理されたデンドリマーアミノビーズ(G1〜G10)を、緩衝液中でアミノ基に対する二官能性リンカーで反応させる。グルタル酸ジアルデヒド、スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)、スベリン酸スクシンイミジル、ピメルイミド酸ジメチルまたは二官能性PEGリンカーがリンカーとして好適である。ビーズは次いで洗浄される(好ましくはリン酸緩衝液中で)。抗体は最終的に緩衝液1mlに対して1mg〜50mgの濃度で緩衝液に加えられる。周囲温度または+4℃で約1〜14時間の培養時間後に、抗体が結合したビーズを洗浄し、後の使用のため緩衝液中で約+4℃で保存する。
【実施例3】
【0040】
(実施例1で得られた血清代替物および実施例2で変性された磁性粒子を使用した、細胞培地中の腫瘍細胞により分泌された物質の精製)
実験の規模に応じて、腫瘍細胞を異なる容器中のダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)およびウシ胎仔血清(FCS)から得られた1〜10%血清代替物に加え、37℃および5%CO濃縮で複数日間培養する。細胞培養上清(CCSと略される)、つまりDMEM+1〜10%FCS血清代替物を、前処理したバイアルにデカンテーションし輸送目的で−20℃で凍結させる。
【0041】
変性デンドリマービーズ(G1〜G10)を用いて精製を行なう前に、解凍したCCSを膜ろ過ユニットを通してろ過する。ろ液を次に変性デンドリマービーズ(G1〜G10)を使用して精製し、濃縮させる。これに続いて溶出およびさらなる処理を行う。
【0042】
具体的には:
(a)DMEMおよびFCS上清に細胞を加え、バッチ(容量)に応じて、37℃および5%COで3日間適切な細胞培養容器中で培養する。
【0043】
(b)細胞培養上清を廃棄し、毎回10mlのPBS(pH7.2)またはDMEMで慎重に細胞を洗浄し、この洗浄手順を2〜5回繰り返す。
(c)必要量のDMEM+1〜10%FCS血清上清を加え、必要な期間(1〜14日)細胞を培養する。培養完了後、CCSを前処理したバイアル(1ml)に移し−20℃または−80℃で凍結させる。
【0044】
(d)凍結したCCSを解凍し、各500μlの量をろ過ユニットに移す。
(e)12000rpmで1時間CCSを遠心分離し、ろ液を採取する。
(f)その間に培養のためビーズを調製する。pH7.2の緩衝液(450μl)に変性デンドリマービーズ(G1〜G10)(80μl)を加え、短時間懸濁する。次いで磁石を使用してビーズを分離させる。
(g)pH7.2の緩衝液(450μl)を加えビーズを懸濁させる。次いでCCSを遠心分離して得られるろ液(450μl)を加え、10回ピペッティングする(ビーズを完全に懸濁)。
【0045】
(h)周囲温度で10〜120分間培養させる。
(i)磁気分離後に溶液を廃棄し、毎回500μlの緩衝液で磁性デンドリマービーズ(G1〜G10)を3回洗浄する。
【0046】
(j)20μlのアセトニトリル:TFA(1:1、v:v)を加え、10回ピペッティングしてビーズ溶液を混合する(溶出)。
(k)周囲温度で1〜120分間培養させる。
【0047】
(l)磁性粒子を分離し、その後さらなる処理のため溶出液を分離する。
【実施例4】
【0048】
(本解決手法による精製方法で得られる、標的物質が結合した磁気ビーズに対するさらなる試験のための5つの代替的な実施例)
第1の選択肢
標的物質が結合した磁気ビーズを、TRIS、尿素、チオ尿素、LDS、SDSまたはCHAPSなどから成る非還元性または還元性のゲル電気泳動試料緩衝液に加える。このように形成された混合物を好ましくは60℃まで5〜30分間加熱し、ビーズから標的物質を放出させる。次いで磁気ビーズを磁石により混合物から分離し、標的物質を有する残存するゲル電気泳動試料緩衝液をピペットで取り除き、電気泳動ゲル(SDSゲル、天然ゲル、2−Dゲル)中のスロットに加え、次いで電気泳動分離処理を行なう。
第2の選択肢(デンドリマービーズ(G1〜G10)に結合した抗体に対してのみ適用)
抗体粒子に結合した標的物質をカルボン酸またはカオトロピック高塩濃度緩衝液(high salt buffer)の添加により溶出する。
【0049】
溶出処理から得られるカルボン酸溶出液の容量を減少させ(speed−vac)、適切な緩衝液に再溶解してもよい。
最終的に、緩衝液に含まれる標的物質は酵素分解される。分解された標的物質は次いでペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)またはMS/MSスペクトルによる質量分光同定処理に供される。
第3の選択肢
1種またはそれ以上の標的物質が結合した磁気ビーズを洗浄し、次いで標的物質を分解するためのプロテアーゼを含む緩衝液に加える。分解された標的物質は次いでペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)またはMS/MSスペクトルによる質量分光同定処理に供される。さらに、磁気ビーズを再び洗浄しその後有機溶媒および/またはカルボン酸の混合物に加えて溶出液を得る。溶出液に対して最終的に質量分光測定を行なう。
第4の選択肢
抗体に結合した標的物質をカルボン酸または高塩濃度緩衝液を加えて溶出する。デンドリマー逆相ビーズを溶出液に加える。1〜60分の期間培養後、ビーズを磁石により分離し次いで緩衝液で繰り返し洗浄する。その後ゲル電気泳動分離に関して第1の選択肢において記載された方法あるいはタンパク質分解ペプチド(これは次いでMSまたはMS/MSスペクトルで検出および表示される)の製造に関して第3の選択肢において記載された方法を行うことが可能である。
第5の選択肢
腫瘍細胞などの細胞を実験に応じて異なる容器に加え、37℃および5%CO濃度で複数日間培養する。次いで細胞を細胞培地または緩衝液で洗浄する。次いで血清を含んでいない細胞培地を加え、再び培養を0〜72時間行なう。それぞれの細胞培養上清をバイアルへ移し、任意に−20℃で凍結させる。変性デンドリマービーズを、解凍した細胞培養上清に加えることにより物質を該ビーズに結合させる。このビーズを次いで洗浄し第1の選択肢において検討されたようにゲル電気泳動に供するか、または第3の選択肢において検討されたようにプロテアーゼにより分解し、分解された物質をMSもしくはMS/MS分析に供する。
【0050】
上記の官能化された磁気ビーズは、それ自体、多くの異なる用途での検出に効果があり得る物質として原理上使用することができる生成物である。1つの考えられる用途としては、上記の標的物質の精製である。一般的な形態でこの種の生成物を製造するためには次の手段が取られるべきである。
【0051】
a)ナノおよび/またはミクロ規模(すなわち、1nmまたはμm以上)の粒径を有し、粒子表面に付加されたアミノ基などの官能基を含む磁性粒子(ビーズと略される)を用意すること;
b)アクリル酸メチルなどの分岐試薬を含む有機溶媒中でビーズを反応させること;
c)有機溶媒からビーズを分離し、別の有機溶媒でビーズを洗浄すること;
d)エチレンジアミンなどの結合剤を含む有機液体とビーズを反応させること;
e)有機液体からビーズを分離し、ビーズを洗浄すること;
f)工程b)〜e)をn回繰り返すこと;
g)少なくとも1種の誘導体を含む溶液中にビーズを懸濁すること;ならびに
h)ビーズを分離および洗浄し、誘導体化されたビーズを水または緩衝液含有溶液に供給すること。
【0052】
nは好ましくは0〜9から選択される。アルコールが反応液として特に適している。ビーズに逆相特性を持たせることができるため、該ビーズは、アルキル(C〜C30)もしくは芳香族基などの化学基またはタンパク新生基により誘導体化される。10nm〜10μmの間の粒径を有する安定した磁性粒子がビーズの基本要素として適している。
【0053】
該ビーズを官能化する目的で磁性粒子に結合される基は好ましくは以下の基の少なくとも1種の物質からなる:第一級および第二級アミノ、第一級、第二級および非対称ヒドラジン、アジド、ホスフィン、アルデヒド、ポリアルデヒド、カルボン酸、カルボン酸エステル、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、ヒドロキシル、チオール、イミノ、ヒドラジド、ピペリジン、アゾメチン、セミカルバゾン、ヒドラゾン、シアン化臭素、トシル、エポキシド、塩化シアヌル酸およびシアヌル酸エステル基ならびにジアミノ、トリアミノおよびテトラアミノ複素環。
【0054】
上記の官能化された磁性粒子を溶媒中に提供される分岐試薬とさらに反応させる。この分岐試薬は以下の基の少なくとも1種から選択される:
メラミン、ジアミノ、トリアミノおよびテトラアミノ複素環、トリエポキシド、テトラエポキシド、ジアリルアミン、メチルアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、トリス(ヒドロキシメチルアミン)、オキサジン、オキセタンおよびジエタノールアミン。
【0055】
分岐試薬が結合した磁性粒子を次に二官能性または三官能性のリンカーと反応させる。このリンカーは以下に列挙する物質のうちの1種から選択される:
リジン、ジアミノアルカン、ジアミノ−、トリアミノ−、テトラアミノ複素環、ジアミノエチレングリコール、ピペラジン、アリルアミン、トリエポキシド、テトラエポキシド、トリス(ヒドロキシメチルアミン)。
【0056】
最後に、前記の方法工程b)〜e)をn回繰り返した後、磁性粒子は、末端基として以下の化学基で、もしくは任意の種類のペプチド、タンパク質、グリカンまたは糖タンパク質で誘導体化される:
n−アルキル、sec−アルキルまたはtert−アルキル基、非置換および置換アリール、非置換および置換アシル、第一級、第二級および第三級アミノ、第一級、第二級および非対称ヒドラジン、アジド、アルデヒド、ホスフィン、ポリアルデヒド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、ヒドロキシル、チオール、硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩、イミノ、ヒドラジド、ピペリジン、アゾメチン、セミカルバゾン、ヒドラゾン、ヒドロキサム酸、アミドラゾン、アミジン、シアン化臭素、トシル、エポキシド、シアヌル酸塩化物、シアヌル酸エステル基、非置換および置換カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、エチレングリコール、非置換および置換アリールアルカン、アリールアルケン、複素環式化合物、単環式および多環式化合物。この場合、炭素数は2〜100個の間である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同定目的の少なくとも1種の標的物質の精製方法であって、前記標的物質は細胞が培養される場合に細胞培地に存在するかまたは形成され、前記細胞培地には表面が官能化されておりその表面に前記標的物質が選択的に結合する磁性粒子(この磁性粒子はビーズともいわれる)が添加され、前記標的物質が結合する粒子が磁場を印加することにより前記細胞培地から選び出される方法において、下記の方法工程:
天然の血清から得られ、60kDa以下、特に10kDa以下の質量を持つ低分子物質を有さないまたは実質的に有さない血清代替物を用意する工程、
既に前記細胞を含んでいるか、または前記細胞が加えられる細胞培地に前記血清代替物を添加する工程、
血清代替物の含量を高めた前記細胞培地中で前記細胞を培養する工程、
前記培養処理で形成される細胞培養上清の少なくともいくらかを分離する工程、
限外ろ過処理により前記細胞培養上清をろ過して未透過物を得る工程、
前記ビーズの官能化された表面がそれぞれ最大10本の側鎖(すなわち10世代)を含む複数のデンドリマー(各デンドリマーの最終世代の末端部分は変性されている)を含むように前記ビーズを供給する工程、
前記未透過物に前記ビーズおよび緩衝液を加えて混合物を形成する工程、
前記未透過物に含まれる標的物質を培養して前記ビーズに結合させ、かつ前記混合物から前記磁気ビーズを磁気的に選び出す工程、により特徴付けられる方法。
【請求項2】
前記血清代替物が、動物またはヒトからの天然の血清を限外ろ過した後に未透過物として得られること、ならびにこの未透過物が増殖培地または緩衝液で洗浄されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、IMDM、IMEM、ERDFまたはRPMI1640が前記増殖培地洗浄液として使用されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記血清代替物が以下のように得られかつ用意されることを特徴とする方法:
a)限外ろ過ユニットを使用して天然の血清を遠心分離して上清(これは未透過物ともいわれる)および透過物を得ること、
b)前記未透過物に増殖培地を加え、次いで工程a)のとおりに遠心分離処理を行なうこと、
c)工程b)をn回繰り返すこと、
d)得られた未透過物に増殖培地を加えて血清上清ともいわれるものを得ること、ならびに
e)前記血清上清をろ過して血清代替物に相当する透過物を得ること。
【請求項5】
前記血清上清がろ過される場合に無菌ろ過が行なわれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の前に少なくとも1種の可逆的または不可逆的プロテアーゼ阻害剤が前記天然の血清に加えられることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)および/またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)および/またはタンパク新生阻害剤が、プロテアーゼ阻害剤として前記血清に個別に加えられるか、またはプロテアーゼ阻害剤カクテルとして加えられることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程a)およびb)における遠心分離処理が少なくとも1時間、周囲温度から+4℃の温度までで行なわれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
工程b)がn回繰り返され、nが2〜5であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
工程e)におけるろ過処理が、0.2μm無菌フィルターを使用して行なわれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞培養上清がろ過前に−20℃〜−80℃で凍結されること、凍結された細胞培養上清が解凍されること、およびろ過が限外ろ過ユニットを使用して遠心分離することにより行なわれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ビーズおよび前記未透過物を加える場合にアンチカオトロピック緩衝液を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
培養後および前記未透過物に含まれる前記標的物質が前記ビーズに結合しこのビーズが磁気的に選び出された後に、前記標的物質が結合したビーズを低塩濃度緩衝液で洗浄すること、ならびに、次いで前記少なくとも1種の標的物質を少なくとも1種の有機成分および/または酸を含む混合物中でビーズから溶出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
アルコールまたはアセトニトリルが前記有機物質ならびにカルボン酸またはモノ−、ジ−、トリハロゲノカルボン酸が前記酸として使用されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、IMDM、IMEM、ERDFまたはRPMI1640が前記洗浄液として使用されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記血清代替物が前記細胞培地に加えられる場合、1〜10容量%の血清代替物が前記細胞培地に加えられることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ビーズを供給するために下記工程:
a)ナノおよび/またはミクロ規模(すなわち、1nmまたはμm以上)の粒径を有し、粒子表面に付加されたアミノ基などの官能基を含む磁性粒子(ビーズと略される)を用意する工程、
b)アクリル酸メチル含有有機溶媒中で前記ビーズを反応させる工程、
c)前記有機溶媒から前記ビーズを分離し、別の有機溶媒で前記ビーズを洗浄する工程、
d)エチレンジアミン含有有機液体中で前記ビーズを反応させる工程、
e)前記有機液体から前記ビーズを分離し、前記ビーズを洗浄する工程、
f)工程b)〜e)をn回繰り返す工程、
g)少なくとも1種の官能化物質を含む溶液中に前記ビーズを懸濁する工程、ならびに
h)前記ビーズを分離および洗浄し、官能化された前記ビーズを水に供給する工程、を行うことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
nが0〜9から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アルコール(R−OHと略される)が前記反応液として使用され、RがC〜Cであることを特徴とする請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記懸濁処理が、超音波浴中でおよび/または最高36℃まで加熱することによりおよび/またはマイクロ波合成により行われることを特徴とする請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
活性アルキル誘導体(C〜C30)が加えられるハロゲン(特に、Cl、Br、I)含有溶媒が前記少なくとも1種の官能化物質を含む溶液として使用され、シアネート、イソシアネートまたはイソチオシアネートが活性基として使用される請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
反応工程f)の後、前記ビーズをアミノ基に対する二官能性リンカーと反応させること、このビーズを緩衝液中で洗浄すること、およびタンパク質(例えば、緩衝液中でc=1μg/ml〜50mg/mlの濃度の抗体)が前記少なくとも1種の官能化物質として使用されることを特徴とする請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
グルタル酸ジアルデヒド、スベリン酸ビスルホスクシンイミジル(BS3)、スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)、ピメルイミド酸ジメチル(DMP)または二官能性PEGリンカーが二官能性リンカーとして使用されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
リン酸塩または炭酸塩緩衝液が前記洗浄用緩衝液として使用される請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種の標的物質が結合した前記磁気ビーズをゲル電気泳動試料緩衝液に加えること、このように形成された混合物を40〜95℃まで5〜30分間加熱すること、前記磁気ビーズを磁石により前記混合物から分離すること、ならびに残存するゲル電気泳動緩衝液をピペットで吸引して電気泳動ゲルのゲルスロットに加えて電気泳動分離することを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ビーズに結合した前記標的物質がカルボン酸を加えることにより溶出できることを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記溶出処理から得られたカルボン酸溶出液の容量を減少させ、適切な緩衝液中に再融解してもよいことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記標的物質が酵素分解に供されること、および分解された標的物質がペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)またはMS/MSスペクトルの使用による質量分光同定処理に供されることを特徴とする請求項26または請求項27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記標的物質が結合した磁気ビーズが洗浄され次いで標的物質の分解のためのプロテアーゼを含有する緩衝液に加えられることを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
質量分光測定がペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)またはMS/MSスペクトルによる酵素分解処理の後に行なわれることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ビーズが洗浄され次いで有機溶媒および/またはカルボン酸の混合物に加えられて溶出液を得ることを特徴とする請求項28または請求項29のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
質量分光測定が前記溶出液に対して行われることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ビーズに結合した前記少なくとも1種の標的物質がカルボン酸またはカオトロピック緩衝液を加えることにより溶出され、溶出液中に得られた物質が、磁性を有し、かつデンドリマーである逆相粒子、を使用して結合されることを特徴とする請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記溶出液中に含まれる前記物質が結合した、前記磁性を有し、かつデンドリマーである逆相粒子、をゲル電気泳動試料緩衝液に加えること、このように形成された混合物を40〜95℃まで5〜30分間加熱すること、この磁気ビーズを磁石によりこの混合物から分離すること、ならびに残存するゲル電気泳動緩衝液をピペットで吸引し電気泳動ゲルのゲルスロットに加えて電気泳動分離処理を行うことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記溶出液中に含まれる前記物質が結合した、磁性を有し、かつデンドリマーである逆相粒子、を洗浄し次いでこの粒子に結合した物質を分解するためのプロテアーゼを含む緩衝液に加えることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項36】
精製方法により低分子物質成分が除去された血清から形成される生成物であって、前記精製方法が以下の方法工程:
a)限外ろ過ユニットを使用して天然の血清を遠心分離して上清(未透過物ともいわれる)および透過物を得る工程、
b)前記未透過物に増殖培地を加え、次いで工程a)のとおりに遠心分離処理を行なう工程、
c)工程b)n回繰り返す工程、
d)得られた未透過物に増殖培地を加えて血清上清ともいわれるものを得る工程、および
e)前記血清上清をろ過して血清代替物に相当する透過物を得る工程、を有することを特徴とする生成物。
【請求項37】
官能化された表面を有し、以下のように製造することができる磁気ビーズを含む生成物:
a)ナノおよび/またはミクロ規模(すなわち、1nmまたはμm以上)の粒径を有し、粒子表面に結合されたアミノ基などの官能基を含む磁性粒子(ビーズと略される)を用意すること、
b)前記ビーズをアクリル酸メチルなどの分岐試薬を含む有機溶媒中で反応させること、
c)前記有機溶媒から前記ビーズを分離し、別の有機溶媒でこのビーズを洗浄すること、
d)前記ビーズとエチレンジアミンなどの結合剤を含む有機液体とを反応させること、
e)前記有機液体から前記ビーズを分離し、このビーズを洗浄すること、
f)工程b)〜e)をn回繰り返すこと、
g)少なくとも1種の誘導体を含む溶液中に前記ビーズを懸濁すること、ならびに
h)前記ビーズを分離および洗浄し、誘導体化されたビーズを水または緩衝液含有溶液に供給すること。
【請求項38】
nが0〜9から選択されることを特徴とする請求項37に記載の生成物。
【請求項39】
アルコールが反応液として使用されることを特徴とする請求項37または請求項38のいずれかに記載の生成物。
【請求項40】
前記ビーズがアルキル(C〜C30)もしくは芳香族基などの化学基またはタンパク新生基により誘導体化され、これにより逆相特性を持つことを特徴とする請求項37〜39のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項41】
10nm〜10μmの間の粒径を有する安定した磁性粒子が基本要素として使用されることを特徴とする請求項37〜40のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項42】
前記磁性粒子に結合される基が下記の物質群:
第一級および第二級アミノ、第一級、第二級および非対称ヒドラジン、アジド、ホスフィン、アルデヒド、ポリアルデヒド、カルボン酸、カルボン酸エステル、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、ヒドロキシル、チオール、イミノ、ヒドラジド、ピペリジン、アゾメチン、セミカルバゾン、ヒドラゾン、シアン化臭素、トシル、エポキシド、シアヌル酸塩化物およびシアヌル酸エステル基ならびにジアミノ、トリアミノおよびテトラアミノ複素環の少なくとも1種の物質から形成されることを特徴とする請求項37〜41のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項43】
前記官能化されたビーズを溶媒中に提供された分岐試薬と反応させること、ならびにこの分岐試薬が下記の基:
メラミン、ジアミノ、トリアミノおよびテトラアミノ複素環、トリエポキシド、テトラエポキシド、ジアリルアミン、メチルアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、トリス(ヒドロキシメチルアミン)、オキサジン、オキセタンおよびジエタノールアミンの少なくとも1種から選択されることを特徴とする請求項42に記載の生成物。
【請求項44】
前記分岐試薬が結合した前記磁性粒子を二官能性または三官能性のリンカーと反応させること、ならびにこのリンカーが下記に列挙する物質:
リジン、ジアミノアルカン、ジアミノ−、トリアミノ−、テトラアミノ複素環、ジアミノエチレングリコール、ピペラジン、アリルアミン、トリエポキシド、テトラエポキシド、トリス(ヒドロキシメチルアミン)から選択されることを特徴とする請求項37〜43のいずれか1項に記載の生成物。
【請求項45】
工程b)〜e)をn回繰り返した後、前記磁性粒子を、下記の化学基:
n−アルキル、sec−アルキルまたはtert−アルキル基、非置換および置換アリール、非置換および置換アシル、第一級、第二級および第三級アミノ、第一級、第二級および非対称ヒドラジン、アジド、アルデヒド、ホスフィン、ポリアルデヒド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、ヒドロキシル、チオール、硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩、イミノ、ヒドラジド、ピペリジン、アゾメチン、セミカルバゾン、ヒドラゾン、ヒドロキサム酸、アミドラゾン、アミジン、シアン化臭素、トシル、エポキシド、シアヌル酸塩化物、シアヌル酸エステル基、非置換および置換カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、エチレングリコール、非置換および置換アリールアルカン、アリールアルケン、複素環式化合物、単環式および多環式化合物を末端基として、もしくは任意の種類のペプチド、タンパク質、グリカンまたは糖タンパク質で誘導体化することを特徴とする請求項37〜44のいずれか1項に記載の生成物。

【公表番号】特表2010−508831(P2010−508831A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535625(P2009−535625)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009648
【国際公開番号】WO2008/055671
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509128085)
【氏名又は名称原語表記】PETER,Jochen
【Fターム(参考)】