説明

同時示差熱分析システム

重量測定法を、電気信号を試料ホルダから電気信号を記録するための装置へ伝搬することを必要とする測定法と組み合わせる、同時示差熱分析計のための天秤。本発明の一実施形態では、天秤機構のコンポーネントを電気信号を記録する装置へ機械的かつ電気的に結合するために、平行誘導天秤において導電性の交差たわみピボットが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年4月29日に提出された米国仮特許出願第61/173,764号、及び2010年4月26日に提出された米国特許出願第12/766,971号に対する優先権を主張するものである。これらの出願は共に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、物質試料の熱的性質を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
同時熱分析計または同時示差熱分析計(SDT)は、熱重量分析計と、TGA(熱天秤としても知られる)と、示差熱分析計(DTA)または示差走査熱量計(DSC)の何れかとによる組合せを備える。従って、この計器は、ユーザが質量変化を同時に測定しかつ試料内の顕熱または潜熱変化を基礎として信号を監視することを可能にする。
【0004】
従って、SDTは、ユーザが物質内の遷移に関連づけられる熱流(DSCまたはDTA)及び重量変化(TGA)の双方を制御雰囲気内の温度及び時間の関数として測定することを可能にする。これらの主要な物質特性の同時的測定は、生産性を向上させるだけでなく、結果の解釈も単純にする。入手される相補的情報は、重量損失に関係しない吸熱及び発熱イベント(例えば、融解及び結晶化)と、重量損失を伴うイベント(例えば、分解)との間の区別化を可能にする。また、組み合わされる評価は、双方の測定の等しい実験及びサンプリング条件を保証し、これにより、これらの不確定性ソースが排除される。同時DSC−TGAは、周囲温度未満から1500゜Cを超える温度までの広い温度範囲をカバーし、特にポリマーである有機物質及びセラミック、金属及び他の無機物質を含む広範な物質を調査するための強力なツールとなっている。
【0005】
典型的には、このようなSDT計器等の設計は、既存の微量天秤コンポーネントとDTAまたはDSC測定コンポーネントとの組合せを含む。実際に、初期のSDT計器は、既存の実験用天秤を基礎としていた。
【0006】
概して、SDT及びTGA計器には共用される2タイプの微量天秤があり、これらは共に、天秤を平衡状態に維持するために天秤構造体へ復元力が加えられる、というヌルバランスの原理を採用している。重量変化に比例する復元力は、各タイプの微量天秤において測定された量である。双方の事例において、復元力は、典型的には光学的手段によって検出される天秤構造体の変位に対する応答として電磁的に加えられる。このような天秤の使用により、極めて高度な質量感度及び極めて高い質量変化分解能が容易に達成される。
【0007】
第1のタイプの天秤は、ダルソンバール計器可動部(本明細書では、「計器可動部天秤」とも称される)が釣合い梁を支持しかつ復元力をトルクとして加える、デュアルアームの計器可動部天秤である。
【0008】
ダルソンバール計器(「計器可動部」とも称される)を採用するSDT計器では、天秤へ接続される試料ホルダ内の試料重量が実験中に変わると、TGA天秤に近い変位センサが平衡位置から離れる天秤の移動を検知し、かつ電気回路が天秤を平衡へと復元するために必要な電流を生成する。
【0009】
SDT及びTGA計器に用いられる第2のタイプの天秤は、重み付けされた質量が重み付けされた質量の移動を拘束する機構によって支持される誘導式天秤である。典型的には、誘導式天秤機構は、弾性たわみピボットを有する平行四節リンク機構を備える。この機構は、平行誘導天秤と称される。リンク機構への復元力の印加には電磁アクチュエータが用いられ、一方で変位センサは並行位置から離れる移動を検出し、電気回路は天秤を平衡へと復元するために必要な任意の電流を生成する。
【0010】
SDT及びTGA計器は、加熱炉の方向性及び天秤の相対位置を基礎として水平または垂直計器に分類される場合がある。原則的には、重量の測定は、炉内へ広がる構造体の熱膨張によって、かつガス密度の変化から結果的に生じる浮力に加えて、炉をパージする作用により、または浮力に誘導される流れにより引き起こされる炉内のガス移動で与えられる力によって摂動される場合がある。これらの計量誤差の大きさは、SDT計器の配置に依存する。水平炉では、炉内へ広がる梁の熱膨張は多大な計量誤差を引き起こす場合があるが、垂直炉配置は、熱膨張が地球の重力場に対して平行に発生することから、これらによる影響がほとんどない。一方で、垂直計器は、炉内の温度勾配が浮力駆動の流れに有利に働く重力場の方向に対して平行であることから、かつ天秤機構の移動がパージガスの流れの方向に対して平行であることから、流体の力によってはるかに影響されやすい。水平計器は、炉内の温度勾配が浮力駆動の流れに不利に働く重力場に直交し、かつ天秤機構の移動がパージガスの流れの方向に直交することから、これらの力にほとんど影響されない。最終的に、ガス密度の変化に起因する浮力は、水平及び垂直炉配置の双方に同程度の影響を与える場合がある。
【0011】
上述したように、SDT計器は、TGA測定と、熱流量検出デバイスの少なくとも試料側が天秤機構によって支持されることを要求するDTAまたはDSCタイプの測定とを組み合わせる。試料測定の間、試料は、温度変化によって誘発される試料の変化を観察するために加熱または冷却されることが可能である。試料を加熱する場合、加熱は、試料を支持する部材の少なくとも一部が試料の加熱に用いられる炉内へと延びる間に行われる。試料が加熱されるにつれて、試料の質量変化は天秤機構を平衡から偏向させ、よって平衡を維持するために必要な復元力が測定されることが可能である。同時に、試料領域から計器の静止または固定部分まで延びるワイヤを用いて熱信号(DTAまたはDSCの何れか)が伝送され、よって、発生する物質変化の分析が試料から受信される熱信号を基礎として実行されることが可能である。従って、試料領域からのDSCまたはDTA信号を伝送するワイヤは、天秤の可動部を固定部へと接続しなければならない。これらの信号ワイヤは、典型的には、天秤へ計量誤差となる寄生力を加える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
SDT測定においてワイヤが計量誤差に寄与するという結果は、幾つかの要素によって導かれる可能性がある。原則的には、ワイヤによって天秤に加えられる力は、変位に対するワイヤ内の反応が線形弾性的である限り、必ずしも計量誤差には繋がらない。言い替えれば、ワイヤが加える力がワイヤの変位に対して厳密に線形比例し、かつその比例定数が変わらなければ、ワイヤに起因して生じる計量誤差は回避される可能性もある。ワイヤの反応が線形弾性的でなければ、計量誤差が生じる。ワイヤは通常、SDT装置の据付け中に変形されることから、ワイヤは、天秤位置または何らかの動作が生じているかどうかに関わらず、天秤にほぼ常時幾分かの力を加えている。ワイヤによる力が天秤に加わらないのは、ワイヤが変形されていない位置に存在する場合に限られる。発生する可能性がある別の問題点は、ワイヤは時間と共に緩む場合があり、その結果、ワイヤによって加えられる力が変化することにある。典型的には、ワイヤは、SDT装置内に据え付けられる際に必要な形状に曲げられ、よって、ワイヤの変形は本来少なくとも部分的に塑性的である。経時的に、塑性歪の中には弛緩し、よって静止位置にあるワイヤによって加えられる力、並びに天秤の変位から生じる力を変えるものがある。原則的には、ワイヤは焼鈍される、または応力除去されることが可能であるが、これらが概して細くかつ曲りやすいことを考えれば、ワイヤを変形させることなく取り扱って据え付けることは困難である。
【0013】
ワイヤの他に、天秤の固定部を天秤の可動部へ接続するために必要な、または天秤の2つの可動部を接続するピボット構造体も、試料重量の測定に影響を与え得る力をもたらす可能性がある。
【0014】
これらの2タイプの天秤のうち、計器可動部タイプの方が、そのより低い質量及びより低い剛性を所与として、より感度が高くかつより速い動特性を有する。誘導式天秤はよりロバスト性が高く、かつ水平配置での使用に際して上述した熱膨張効果に影響されない。誘導天秤型のSDT計器は、垂直または水平炉配置の何れかと合同して使用される場合がある。概して、計器可動部天秤は、水平炉配置と共に使用される。
【0015】
水平配置において、計器可動部天秤は、典型的には、2つの天秤、即ち試料天秤及び基準天秤が平行して動作される示差秤量配置で使用される。一方の天秤は試料及びその容器を秤量し、もう一方の天秤は空容器または容器内の不活性基準試料を秤量する。試料重量測定値から基準重量測定値の減算は、計量構造体の熱膨張に起因する計量誤差、及び装置に作用する浮力に起因する計量誤差をなくする。試料浮力もやはり、二重天秤配置における誤差の潜在的ソースである。二重天秤配置は水平炉配置を採用することから、これらの天秤は、原因がパージガスの流れであるか炉内の温度変化から生じる浮力の差であるかに関わらず流体動作から生じる力からは隔絶される。その理由は、これらの力が重力場に対して直交的に作用することにある。
【0016】
二重天秤計器可動部タイプのSDT(以下「二重天秤SDT」とも称される)では、試料天秤及び基準天秤の各々が計器可動部コンポーネントと、光変位センサと、個々の天秤を平衡位置に維持するための電子機器とを含む。コンポーネントの二重化に起因して望ましくないコストがかかることの他に、二重天秤SDTシステムには、計器可動部の場合のように2つの天秤アセンブリのコンポーネント間の潜在的不整合という不利益がある。この設計の別の欠点は、計器可動部コンポーネント(または「計器可動部」)が釣合い梁及びDTAまたはDSC試料ホルダ構造体の全重量を支えなければならないことにある。
【0017】
ダルソンバール計器可動部は、計器の回転部を支持する宝石ベアリングまたは薄いトートバンドの何れかによって作製される場合がある。概して、摩擦なしに動作するという理由でトートバンドサスペンションが好適である。計器可動部の変位は、トートバンドを僅かに捻れさせる。トートバンドの弾性たわみ部は極めて線形的かつ再現性が高いのに対して、宝石ベアリングにおける摩擦ははるかに非線形的であって再現性がはるかに低い。一方で、宝石ベアリング計器可動部は、トートバンドサスペンションによって支えられるものよりはるかに大きい荷重を支えることができる。トートバンドサスペンションは、梁、試料(または基準)ホルダ、DTAまたはDSCセンサ及び試料の重量全体を支えなければならないことから、秤量はトートバンドの容量の極く一部に制限され、その大部分が梁、ホルダ及びセンサを支えるために使用される。このように、トートバンド計器は、低い秤量を有する傾向がある。
【0018】
上記に鑑みて、SDT計器内の天秤装置のさらなる改良が必要とされていることは認識される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の好適な一実施形態において、ある改良されたSDT配置は、プリント基板材料(PCB)等の絶縁材料から構築される1つまたは複数の部材を含む平行誘導天秤構造体を含む。PCB部材は、天秤の構成成分として作用すること、及びDTAまたはDSC測定に使用される試料または基準温度センサからのセンサ信号を導くことの双方を目的とするように構成される。
【0020】
本発明の一態様において、SDT天秤は、構成成分として作用しかつ試料及び基準ホルダ内に位置決めされるセンサエレメントからの電気信号を導くように構成成分の表面に沿って、かつ/または構成成分内を延びる導体を含む複数のPCB部材を備える。本発明の一態様では、第1のPCB部材から隣接する第2のPCB部材へ繋がる連続する導電路が形成され、第1及び第2のPCB部材は導電性のたわみピボットによって相互に接続される。
【0021】
本発明の好適な一実施形態においては、PCBベースのSDT装置の1つまたは複数のピボットは交差たわみ設計を用いて構成され、交差たわみ部が天秤構造体のコンポーネント間でDTAまたはDSC信号を伝送できるように構築される。言い替えれば、交差たわみ部は2つの別々の機能を果たし、即ち、1)隣接するPCB部材間、またはPCB部材とSDT装置の別の構造部材との間の導電リンク、及び2)隣接するPCB部材、またはPCB部材及び他の構造部材が互いの周りを旋回できるようにするピボット手段を提供する。
【0022】
本発明によれば、交差たわみピボットは導電性の可撓性部材と突合せ構造体との交差した対を備える。突合せ構造体は2対の突合せ部を備え、第1の対の突合せ部は第1の可撓性部材の個々の端へ取り付けるように構成され、かつ第2の対の突合せ部は、第1の可撓性部材と交差する第2の可撓性部材の個々の端へ取り付けるように構成される。
【0023】
例えば、交差たわみピボットは、プリント基板材料上の導電トレースへ直にはんだ付けされることが可能である。この方法では、第1のPCB上の導体と隣接するPCB上の導体との間に連続する電気路が形成される。連続する電気路は、第1のPCB上の導体から、第1のPCBへ取り付けられる第1の突合せ部、第1の領域内で第1の突合せ部へ取り付けられる第1の交差たわみ部材及び第2の領域における交差たわみ部材へ取り付けられる第2の突合せ部を介して隣接するPCB上の第2の突合せ部へ接続される第2の導体内へと延びる。
【0024】
本発明の一実施形態では、交差たわみピボットは、プリント基板材料上の導電トレースへ機械的に締め付けられる。この実施形態では、第1のPCB上の導体と隣接するPCB上の導体との間に連続する電気路が形成される。連続する電気路は、第1のPCB上の導体から、第1のPCBへ取り付けられる第1の突合せ部、第1の領域内で第1の突合せ部へ取り付けられる第1の交差たわみ部材及び第2の領域における交差たわみ部材へ取り付けられる第2の突合せ部を介して、隣接するPCB上の第2の突合せ部へ接続される第2の導体内へと延びる。
【0025】
本発明のある変形例では、SDT装置内の交差たわみピボットの突合せ構造体は、銅(例えば、無酸素銅)または他の金属を含むシートメタル等の導電シート材料を備える。1つの配置において、突合せ部は概してL字形の構造体を備え、「L」の第1の脚部はPCB等の構造部材の表面へ取り付けられ、かつ「L」の第2の脚部は構造部材の表面から外側へ延びる。本発明の一実施形態において、突合せ部の「L」の第2の脚部はそれ自体に、平らな可撓性部材の端部分を収容するスロット領域を形成するように折り畳まれる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、平らな可撓性部材の対は、SDT装置が秤量のための平衡位置にあるときに略直交クロスを形成する。平らな可撓性部材は各々、ストリップの平面がPCB部材の平面に略直交する薄い平面導電ストリップを備える場合がある。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、突合せ部は、PCB上に位置決めされる導電トレースへ容易にはんだ付けされるように構成される銅(例えば、無酸素銅)等のシートメタル材料を備える。
【0028】
本発明の実施形態によれば、SDT計器は、隣接する構造部材が交差たわみピボットを用いて電気的かつ機械的に結合される2つの異なるPCB部材またはPCB部材及び非PCB部材を備える、PCB/交差たわみピボット設計を備える。SDT計器は、平行誘導天秤を備える。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、異なる材料が接触している場合に、例えばフレックスピボットがPCB材料へはんだ付けされる場合に発生される可能性もある外来熱電電圧を回避するために、天秤構造体は均一な定温に維持されるエンクロージャ内に収容される。試料ホルダを支えるために用いられる梁は、定温エンクロージャ内で天秤構造体へ取り付けられる。
【0030】
本発明の実施形態によれば、DTAまたはDSC測定用の熱電対を含む試料ホルダは、高純度セラミックプラチナ合金等の高温耐熱材料で製造される。本発明の一実施形態によれば、平行誘導天秤のSDT装置は、試料及び基準ホルダ及び付属のDTAまたはDSCセンサを支える単一構造部材を支えかつ案内する四節平行リンク機構を備える。リンク機構は、第1の交差たわみピボットセットによって長さが等しい2つの水平部材へ接合される固定垂直部材を備え、交差たわみピボットは、固定垂直部材と水平部材との間でDTAまたはDSCセンサの信号を伝送することができる。固定垂直部材と長さが等しい第2の垂直部材は、第2の交差たわみピボットセットによって水平部材の反対端へ接合される。従って、第2の垂直部材は、変位が小さくかつ水平部材が水平位置に近いままである限り、固定部材に対して水平に方向づけられたままでありかつ略直線内に留まるように動作を制約される。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、DTAまたはDSCセンサ及び試料及び基準ホルダを支えるためのコンポーネントが装備され、コンポーネントは可動部材へ取り付けられる。本発明の一実施形態では、リンク機構の少なくとも2つの水平部材は第1及び第2の交差たわみピボットセットが取り付けられるPCB材料で構築され、DSCまたはDTA信号が柔軟な温度センサリード線を必要とすることなく天秤の可動部分から天秤の固定部へ伝送されることが有効化され、よって、このようなリード線に関連づけられる寄生力が回避される。本発明の代替実施形態によれば、水平部材を各々固定垂直部材及び可動垂直部材へ接合する第1及び第2の交差たわみピボットセットを有する平行誘導天秤は、垂直炉または水平炉配置で使用するように適合化される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1a】計器可動部天秤を用いるSDTの測定装置部分の先行技術配置を示す斜視図である。
【図1b】図1aの装置の試料ホルダを示す拡大図である。
【図2】本発明の一実施形態による、隣接する構造部材同士を結合するための交差たわみピボットを有する天秤の一部を描いたものである。
【図3】本発明の一実施形態に従って配置された平行誘導天秤機構を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に従って配置された、平行誘導天秤機構及びSDT装置の熱測定腕を示す斜視図である。
【図5】図4に示されている平行誘導天秤の一部の拡大図であり、上側の水平部材上の導電トレースを示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、試料の同時重量測定を試料エリアから電気信号を記録するための装置への電気信号伝搬を必要とする試料測定と組み合わせる、装置内で使用されることが可能なコンポーネントの新規かつ発明的配置を提供する。例えば、本発明の実施形態は、SDT装置における熱測定と共同して使用され得る試料測定天秤の改良された配置を提供する。
【0034】
上述したように、DSCまたはDTA等のSDT装置は、同時重量測定法と熱測定を実行する。SDT装置は、加熱の間に発生する、重量変化、相変化等の複数の試料特性の変化を同時に測定することができる。
【0035】
図1a及び図1bは、SDT装置の測定装置部分100、この事例では計器可動部天秤SDTの知られている配置を描いている。装置100は、試料ホルダ112内に置かれる試料の同時熱測定(例えば、DSCまたはDTA)及び重量測定を実行するためのハードウェアを含む。本明細書において「熱測定」という用語は、試料または基準ホルダに、またはその近くに位置決めされる熱電対または他の温度測定デバイスを用いる測定を指す。熱測定は、例えば、知られているDSC/DTAセンサの場合のように熱流量を感知するための測定であることが可能である。熱測定の特質は、電気信号が試料エリアから延びる導体に沿って伝搬し、かつ測定装置100の外部にあるコンポーネント(不図示)によって検出されて分析されることにある。
【0036】
装置100は、2つの計器可動部106と、個々の試料及び基準天秤腕108の試料及び基準ホルダ内に置かれる試料及び基準物を別々に秤量するために用いられる付属センサとを含む水平差動天秤を含む。電気信号は、試料または基準物から電気信号を検出するための外部ポイントまで延びるワイヤを用いて各熱電対から導かれる。この装置の場合、電線は天秤腕に、試料内に発生する重量変化の正確な測定を妨げ得る力を与える可能性がある。例えば、試料ホルダへ結合されるワイヤセットは試料天秤腕上へ、基準ホルダへ結合されるワイヤによって基準天秤腕へかけられるものとは異なる力をかける場合がある。この方法では、試料が加熱されるにつれて発生し得る試料及び基準材料間の重量の差動変化が、予測不可能であって大きさも未知であり得るワイヤによってかけられる力の寄生効果によって分かりにくくされる可能性がある。同様に、平行誘導天秤の場合、例えば天秤腕の回転の中心において試料及び基準ホルダへ結合されるワイヤは、重量測定の精度を低下させる可能性がある。
【0037】
本発明によれば、電気信号が天秤へ結合される試料ホルダから導かれるSDT装置における使用に適合する改良された天秤アセンブリが提供される。本発明の一実施形態では、天秤アセンブリは、絶縁部分と、例えば試料または基準センサからの電気信号を導くように構成される導電路である導電部分とを含む1つまたは複数の複合構造部材(本明細書では「複合部材」とも称され、部材が絶縁部と導電部とを有してもよいという事実を指す)を含む。従って構造部材は機械的機能を実行し、かつ電気的機能も実行してもよい。例えば、構造部材は、プリント基板材料(PCB)または類似材料、またはガラス、ガラスセラミックもしくは他の材料等の別のタイプの絶縁材料から製造されることが可能である。導電材料は、絶縁体上及び/または絶縁体内に配置される。導電材料は、メッキ金属、溶着金属または例えばプリント基板に使用される知られている類似導体であることが可能である。
【0038】
本発明の一実施形態では、複合部材は、平行誘導天秤の水平部材等のSDT天秤の水平部材として用いられる。本発明の実施形態によれば、複合部材の表面内及び/または表面上に配置される導電路は、試料センサ及び基準センサからの電気信号を導くワイヤの代わりに用いられる。
【0039】
本発明の実施形態によれば、複合部材は、コンポーネント間で相対動作が生じる場合に隣接するコンポーネント間で信号を伝送するためにワイヤが用いられる知られているSDT天秤に比較して天秤に作用する任意の寄生力を減じるために、天秤アセンブリの他の部分と機械的に結合するように構成される。本発明の一変形例では、複合部材の隣接部材への機械的結合は、交差たわみピボット等のピボットを用いて促進される。ピボットは、シートメタル等の導電材料から形成され、かつ隣接コンポーネント間に隣接コンポーネントが互いに対して回転される際にも中断されない連続する電気路を形成するために、複合部材上へ配置される導電路を隣接コンポーネント内に配置される導体と電気結合するように構成される。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態による、交差たわみピボットが隣接する複合部材同士を機械的かつ電気的に結合するように構成されている、天秤の結合アセンブリアセンブリ200を描いている。隣接する複合部材202は、例えば、その表面上及び/または基板内に導電路(本明細書では「トレース」とも称される)を装備している絶縁基板であることが可能である。具体的には、複合部材202は、導電路204を装備したPCB材料であってもよい。複合部材はまた、他の材料の中でもとりわけセラミック、ガラスセラミック及びガラス等の別の絶縁体の上及び/または内部に形成される導電トレースを用いて形成されてもよい。
【0041】
本発明の一実施形態では、結合アセンブリ200は水平天秤腕のためのピボットである。図2に描かれている本発明の実施形態において、隣接する複合部材202は、PCBには典型的な略平坦な構造体である。
【0042】
隣接する複合部材202は各々2つの突合せ部210を含み、これらは、垂直たわみ部206及び水平たわみ部208と共に隣接する複合部材を接続する交差たわみピボット205を形成する。本発明の一実施形態によれば、突合せ部210は、例えば銅(例えば、無酸素銅)または導電路204へ容易に電気結合されることが可能な他の材料であるシートメタル等の薄い導電材料から形成される。ある例では、突合せ部210は導電路204へはんだ付けされる。本発明の代替実施形態によれば、突合せ部210へ結合される導電路204は、DTAもしくはDSCセンサからの信号を導くようにさらに構成されることが可能であり、または、専ら突合せ部を複合部材202の本体へ取り付ける目的で使用されることが可能である。
【0043】
図2に示されている例では、突合せ部210は「L」字形を有する。しかしながら、突合せ部210は他の形状を想定することもできる。交差するたわみ部206、208は各々、高い導電性を有するシートメタル等の薄い導電材料である。
【0044】
本発明の実施形態によれば、結合アセンブリ200は、SDT装置等の測定装置の性能を向上させるように構成される。複合部材202は、上述したように、天秤の構造部材として作用するのに十分な機械的剛性及び強度を提供するように構成される。さらに、複合部材202の本体は電気絶縁性であることから、他の経路から電気絶縁される複数の導電路204が複合部材上に形成されることが可能である。さらに、交差たわみピボット205は、互いに隣接する部材202同士が、隣接する複合部材上の導電路間に導電接続を同時に提供しながら、互いに対して回転する手段を提供する。これは、隣接部材間を結合するための導電ワイヤを不要にする。従って、天秤部材に作用する可能性もあるワイヤからの寄生機械力が排除される。
【0045】
図2に示されている例では、隣接する複合部材202は互いに対して略平行に配置される。本発明の他の実施形態では、交差たわみピボットを有する結合アセンブリは、互いに対してある角度で、例えば直角に配置される隣接する複合部材を備える可能性もある。さらに、隣接する一方の複合部材は電気トレースを有するPCB基板であってもよく、隣接するもう一方の複合部材は導電路をサポートする別の絶縁体であってもよい。
【0046】
図3及び図4は各々、本発明の別の実施形態による平行誘導天秤の態様を示す側面図及び斜視図である。平行4節リンク機構300は、固定された概して垂直である部材302と、上側の水平部材306と、下側の水平部材308と、可動垂直部材304とを含む。各部材は、ピボット310a〜310bを介してその隣接部材へ接合される。上側及び下側の水平部材306及び308は略剛性であり、かつ各々固定垂直部材302へ回転式に取り付けられる。図3に描かれている平行四辺形配置から明らかであるように、可動部材304は、その方向性が固定垂直部材302に対して平行のままであるように動作を制約される。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、上側及び下側の水平部材306及び308の一方またはそれ以上は、上述したように複合構造部材である。好適には、部材306及び308は同じタイプの複合構造部材を備え、かつ上下部材の熱膨張の一致を保証するために一致する熱膨張係数を有する。これにより、部材306が部材308とは異なる長さを有することが回避され、結果的に、加熱または冷却の間の台形形状を想定するリンク機構(部材302〜308)がもたらされる。
【0048】
例えば、上側及び下側の水平部材は共に、ホルダアセンブリ402からの電気信号を導くための導電路を含むPCB材料で製造されることが可能である。図4においてさらに描かれているように、上側及び下側の水平部材は開放三角形形状を有する。本発明の実施形態によれば、垂直管404内のワイヤ(不図示)は、ホルダアセンブリ402内の試料及び基準センサへ接続される。ワイヤは、可動部材304上に配置される導電路(不図示)へも接続され、可動部材304は、導電路を電気的に短絡させることなく支えることができる絶縁部分を少なくとも部分的に備える。可動垂直部材304の導電路は、1つまたは複数のピボット310aを介して上側及び下側の水平部材306、308の一方またはそれ以上の内部に配置される導電路(不図示)へ電気的に結合される。例えば、ピボット310aのうちの1つまたはそれ以上は、ピボット310aが直角に配置される隣接部材を互いに接合することを除いて、動作が図2に関連して先に述べたものに類似する交差たわみピボットであってもよい。
【0049】
さらに、水平部材306及び308の少なくとも一方は、外部デバイス(不図示)によって表示かつ/または分析されるために伝送されることが可能な電気信号を供給すべく固定垂直部材302へ電気結合するように構成される。
【0050】
図4に描かれている装置400では、三角形の上下水平部材306、308の各々の頂点が可動垂直部材へ接続し、これにより1対のピボット310aが形成され、一方で各三角形水平部材のベースは各々2つのピボット310bを介して固定垂直部材302(幻像で示されている)へ接続される。従って、ピボット310bの悉くが水平部材306及び308と固定垂直部材302との間に電気的結合をもたらすために必要とされるわけではない。固定垂直部材302は、本質的に図4の右側へ向かった静止装置であり、上側及び下側の水平部材306及び308はこれへ取り付けられる。
【0051】
作動中、装置400は、ホルダ402が炉(不図示)内に位置決めされるように位置合わせされる。試料及び基準ホルダの温度変化に伴って、結果的に生じる試料の変化は試料の質量(重量)を変化させる可能性がある。例えば、試料は分解によって質量を失う可能性もあり、または例えば周囲ガスと反応し、よって周囲ガスの組成に依存して酸化物または窒化物が形成されることにより質量を増やす可能性もある。ホルダ402を支える試料管404は可動部材304へ剛結合されることから、試料ホルダ/試料コンビネーションの質量変化は可動部材304の位置を偏向させ、これが位置センサ408において検出される。この位置変化は、次に、リニアモータ406を用いて補償されることが可能であり、かつ続いて試料質量の変化が可動部材304の位置を復元するために用いられる力を基礎として計算されることが可能である。
【0052】
可動部材304が上方向及び/または下方向に移動するのと同時に、ホルダアセンブリ402内の各試料及び基準ホルダ403及び405内のセンサからの電気信号が、例えば試料への熱流変化を計算するためにホルダアセンブリ402から電子機器(不図示)へ導かれる。電気信号は、1つまたは複数のピボット310a及び310bを含む導電路、並びに複合水平部材306及び308のうちの1つまたはそれ以上の内部に形成される導電路に沿って導かれる。従って、電気信号はピボット310a及び310bの領域内でワイヤを用いることなく導かれ、これにより、試料質量変化の測定を変える可能性があるワイヤに起因する寄生力は全て除去される。
【0053】
図4は、試料ホルダ404が垂直炉で使用されるように構成される例示的な計器設計を描いている。本発明の他の実施形態では、試料ホルダ404は水平炉で使用されるように可動部材304から水平方向へ延びることが可能である。
【0054】
図5は、図4の平行誘導天秤機構の拡大部分を示す。たわみ部310は、三角形の上側水平部材306を三角形部材の頂点で可動垂直部材304へ接合し、かつ三角形の底辺に沿って固定垂直部材302へ接合する。可動部材304上の導電トレース501は、一端で試料及び基準ホルダ内の温度センサの信号ワイヤ(不図示)へ接続され、かつ他端でたわみ部310の突合せ部へ接続される。たわみ部310の反対端における突合せ部は、次に上側の三角形部材306の長い辺の表面に沿って延びるトレース502へ取り付けられる。トレース502は次に、三角形部材の底部においてたわみ部310の突合せ部へ取り付けられる。たわみ部310の反対端における突合せ部は、固定部材302の表面上でトレース503へ取り付けられる。従って、温度センサからの電気信号は、センサのリード線から可動部材304上の導電トレース501、たわみ部310及び三角形の上側水平部材306上の導電トレース502を介して固定部材302上の導電トレース503へ伝送される。導電トレース503は次に、温度信号を測定電子機器(不図示)へ伝送する信号ワイヤ(不図示)へ取り付けられる。同様にして、可動部材304、上側の三角形部材306、下側の三角形部材308及び固定部材302へ追加の導電トレースが加えられてもよい。導電トレースは、たわみ部によって接合されることが可能である。この方法においては、試料温度または熱流量の測定に用いられる1つ、2つまたはこれ以上の温度信号が、ワイヤを接続する必要なしに、SDTまたはTGAに用いられる平行誘導天秤の可動部から静止部へ伝送されてもよい。図5は、上側の水平部材上に導電トレースを示しているが、上述したように、これらは下側の水平部材上、または上側及び下側双方の水平部材上に配置されることも可能である。
【0055】
温度センサからの電気信号経路が異なった組成の材料を介して、センサワイヤの接続ポイントから静止部材へと通るものとすれば、外来熱電電圧が発生する可能性がある。試料及び基本温度信号の双方に対する温度測定誤差として現出すると思われるこれらの熱電電圧は、相互接続システムが等温であると保証することによって略排除される場合がある。相互接続システムは、信号ワイヤの端と、可動部材上の導電トレースへのその接続部と、水平部材上及び静止部材上の双方の導電トレースと、突合せ部及び可撓性部材を含むたわみ部と、静止部材上の導電トレースへ接続する銅線の端とを含む。銅線は、試料及び基準温度信号を測定電子機器へ伝送する。相互接続システムが等温であることを保証するために、高熱伝導性材料(典型的には銅または無酸素銅であるが、銀、アルミニウムまたは他の高熱伝導性材料が使用されることも可能である)の厚板(不図示)が、可動部材及びその導電トレースと、水平部材及びその導電トレースと、静止部材とその導電トレースと、たわみアセンブリ及びそのアタッチメントと、可動部材上の導電トレースへ接続する温度センサ信号ワイヤの端と、静止部材上の導電トレースへ接続する銅信号ワイヤの端とを囲みかつ封じる。さらに、等温の板及びそれらが封じる相互接続システムを含む天秤アセンブリ全体、及びリニアモータは、エンクロージャ内の全てのものが定温に保たれることを保証するために、温度が正確に周囲温度より高く調整されるエンクロージャ内に収容される。これは、等温板及びそれらが封じる温度信号相互接続システムの温度均一性及び安定性を向上させ、さらに、外来熱電電圧によって試料及び基準温度センサ信号に温度誤差が生成されないことを保証する。試料及び基準ホルダ内の温度センサが熱電対である事例では、基準接合部温度センサが等温板の1つに設置され、基準温度センサがこれらの板と同じ温度にあることが保証される。さらに、これは、リニアモータ内部の磁石が、それが生成する磁場が一定に保たれるように定温のままであることを保証する。磁石の温度変化は磁石によって発生される磁場を変化させ、測定される質量に対する計器コイル電流の比例性が変わり、計量誤差がもたらされる。
【0056】
要約すると、本発明の実施形態は、(試料ホルダ内のセンサからの電気信号の伝導を必要とする)同時熱重量測定及びDSCまたはDTAタイプの測定を実行するための新規かつ改良された配置を提供する。本発明の実施形態によれば、機械的部材として及び試料/基準ホルダからの電気信号を伝導するための手段の双方として機能する天秤の複合部材は、機械的機能のみを果たす従来の天秤部材の代わりに使用される。交差たわみピボットの配置は、1つまたは複数の複合部材と共に提供され、この配置は、互いに対して移動可能である部材間の接合部におけるワイヤの必要性をなくする働きをする。複合部材/交差たわみピボット配置の1つまたは複数の態様は、平行誘導天秤へ組み込まれることが可能である。
【0057】
上述の本発明の好適な実施形態の開示は、例示及び説明を目的として提示されたものである。その開示は、網羅的であること、または本発明を開示された精密な形態に限定することは意図されていない。以上の開示に照らせば、一般的な当業者には、本明細書に記述されている実施形態の多くの変形及び修正が明らかとなる。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲及びその同等物によってのみ規定されるべきである。
【0058】
さらに、本発明の代表的な実施形態を記述するに当たって、本明細書は本発明の方法及び/またはプロセスを特定のステップシーケンスとして提示している場合がある。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載されている特定のステップ順序に依存するものでない限り、その方法またはプロセスは記述されている特定のステップシーケンスに限定されるべきではない。一般的な当業者には認識されるが、他のステップシーケンスも可能である場合がある。従って、本明細書に記載された特定のステップ順序は、特許請求の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。さらに、本発明の方法及び/またはプロセスに関する特許請求の範囲は、記載されている順序でのそのステップパフォーマンスに限定されるべきではなく、当業者であれば、シーケンスは変更される場合があり、しかも本発明の精神及び範囲に含まれることを容易に認識することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天秤であって、
可動垂直部材へ回転式に隣接される上側の水平部材へ回転式に隣接される固定垂直部材であって、可動垂直部材が下側の水平部材へ回転式に隣接され、下側の水平部材が固定垂直部材へ回転式に隣接され、可動垂直部材が固定垂直部材に対して平行なままであるように動作を制約され、かつ上側の水平部材及び下側の水平部材が一致する熱膨張係数及び一致する長さを有する固定垂直部材と、
上側及び下側の水平部材の一方の上に形成される導電路と、
可動垂直部材上に形成される導電路と、
1つの水平部材上の導電路を可動垂直部材上の導電路へ電気接続する第1の導電たわみ部であって、1つの水平部材を回転式に可動垂直部材へ接続する第1の導電たわみ部と、
1つの水平部材を固定垂直部材へ回転式に接続し、かつ1つの水平部材上の導電路を固定垂直部材へ取り付けられる導電トレースまたはワイヤへ電気接続する第2の導電たわみ部とを備える天秤。
【請求項2】
上側及び下側の水平部材が略剛性である、請求項1に記載の天秤。
【請求項3】
可動垂直部材へ剛結合される試料ホルダと、可動垂直部材の偏向を検出するための位置センサと、リニアモータとを備え、試料質量が、リニアモータによってかけられる、可動垂直部材の位置を復元するために必要とされる力を基礎として計算されてもよい、請求項1に記載の天秤。
【請求項4】
水平及び垂直部材のうちの一方またはそれ以上はプリント基板材料から形成される、請求項1に記載の天秤。
【請求項5】
水平部材及び可動垂直部材が平行誘導天秤のコンポーネントである、請求項1に記載の天秤。
【請求項6】
連続する電気路が、1つの水平部材上の導電路から水平部材へ取り付けられる第1の突合せ部、第1の導電たわみ部及び第2の突合せ部を介して可動垂直部材上の第1の導電路へ延びる、請求項5に記載の天秤。
【請求項7】
連続する電気路が、1つの水平部材上の導電路から1つの水平部材へ取り付けられる第3の突合せ部、第2の導電たわみ部及び第4の突合せ部を介して固定垂直部材へ取り付けられる導電路またはワイヤへ延びる、請求項5に記載の天秤。
【請求項8】
高熱伝導性材料の板が、可動垂直部材と、上側の水平部材と、下側の水平部材とを包囲し、かつ天秤全体が温度が調整されるエンクロージャ内に収容される、請求項5に記載の天秤。
【請求項9】
同時示差熱分析計であって、
DSC及びDTA測定の一方のために構成される試料及び基準センサを含むホルダアセンブリと、
ホルダアセンブリへ機械的に結合される第1の天秤部材と、
第1の天秤部材へ交差たわみピボットを用いて回転式に接続される第2の天秤部材とを備え、
第1及び第2の天秤部材が各々、天秤部材の絶縁部分へ取り付けられる導電路を含む複合部材であり、
分析計が、電気信号を、試料及び/または基準ホルダアセンブリから第1の天秤部材の少なくとも一部に沿って、ピボットアセンブリを介しかつ第2の天秤部材の少なくとも一部に沿って延びる導電路に沿って伝導するように構成される同時示差熱分析計。
【請求項10】
第1及び第2の天秤部材の少なくとも一方がプリント基板材料を備える、請求項9に記載の計器。
【請求項11】
天秤部材上に導電路を形成する金属製導電トレースを備える、請求項10に記載の計器。
【請求項12】
交差たわみピボットが第1及び第2のたわみ部を備え、
各たわみ部が、反対の両端で第1の天秤部材上に配置される1つの突合せ部へ、かつ第2の天秤部材上に配置される別の突合せ部へ接続され、
突合せ部が各々、第1及び第2の天秤部材へ取り付けられる導電路のうちの1つへ電気接続される、請求項9に記載の計器。
【請求項13】
第1及び第2の天秤部材が各々略平坦な平面表面を備え、
第1及び第2の天秤部材を画定する平面表面間の角度が、約ゼロ度及び約90度のうちの一方である、請求項9に記載の計器。
【請求項14】
同時示差熱分析計において使用するための平行誘導天秤であって、
垂直の固定部材と、
垂直の固定部材へ第1のピボットセットを介して回転式に接続される第1の水平部材と、
垂直の固定部材へ第2のピボットセットを介して回転式に接続される第2の水平部材と、
第1及び第2の水平部材の各々へ第3及び第4のピボットセットを介して回転式に接続される垂直の可動部材とを備え、
可動垂直部材及び第1及び第2の水平部材のうちの少なくとも一方が各々、絶縁体上へ配置される導電トレースを備える複合部材を備え、
連続する導電路が、柔軟なワイヤリードを用いることなく、垂直の可動部材の導電トレースから垂直の固定部材へ延びる平行誘導天秤。
【請求項15】
DSC及びDTA測定の一方のために構成される試料及び基準センサを含むホルダアセンブリをさらに備え、
ホルダアセンブリが垂直の可動部材へ剛的に取り付けられ、
試料及び基準熱電対が各々、垂直の固定部材における個々の導電トレースへ垂直の可動部材における導電トレースを介して、及び第1及び第2の水平部材の少なくとも一方における導電トレースを介して導電的に接続される、請求項14に記載の平行誘導天秤。
【請求項16】
第1及び第2の水平部材の少なくとも一方が、導電トレースのセットを含むプリント基板材料を備える、請求項15に記載の平行誘導天秤。
【請求項17】
第1、第2、第3及び第4のピボットセットが全て交差たわみピボットである、請求項14に記載の平行誘導天秤。
【請求項18】
第1のピボットセット及び第2のピボットセットの少なくとも一方が導電ピボットであり、
第3のピボットセット及び第4のピボットセットの少なくとも一方が導電ピボットである、請求項17に記載の平行誘導天秤。
【請求項19】
ホルダアセンブリが垂直ホルダ及び水平ホルダの一方を備える、請求項18に記載の平行誘導天秤。
【請求項20】
高熱伝導性材料の板が可動垂直部材及び第1及び第2の水平部材を包囲し、かつ天秤全体が温度が調整されるエンクロージャ内に収容される、請求項14に記載の平行誘導天秤。
【請求項21】
計器であって、
ホルダアセンブリからの電気信号を伝導するための手段を含むホルダアセンブリと、
ホルダアセンブリへ機械的に結合される第1の複合天秤部材と、
第2の複合天秤部材と、
結合手段とを備え、
結合手段が、
第1の複合天秤部材を第2の複合天秤部材へ回転式に接続するピボット手段と、
第1の複合天秤部材上の導電手段と第2の複合天秤部材上の導電手段との間の連続する導電路とを備える計器。
【請求項22】
第1及び第2の複合天秤部材のうちの少なくとも一方がプリント基板材料を備える、請求項21に記載の計器。
【請求項23】
ピボット手段が交差たわみピボットである、請求項21に記載の計器。
【請求項24】
計器がリニアモータと位置センサとを備える、請求項21に記載の計器。
【請求項25】
高熱伝導性材料の板が第1及び第2の複合部材を包囲し、かつ複合天秤部材、ピボット手段、導電路、リニアモータ及び位置センサが温度調整式エンクロージャ内に収容される、請求項24に記載の計器。
【請求項26】
同時熱分析計であって、
(a)平行誘導天秤であって、
固定垂直部材と、リニアモータ及び位置センサを備える計器可動部とを支える静止構造体と、
上側の水平部材を固定構造体へ回転式に取り付ける第1のたわみ部セットと、
下側の水平部材を固定構造体へ回転式に取り付ける第2のたわみ部セットと、
上側の水平部材を可動垂直部材へ回転式に取り付ける第3のたわみ部セットと、
下側の水平部材を可動垂直部材へ回転式に取り付ける第4のたわみ部セットと、
可動垂直部材へ剛的に取り付けられるホルダアセンブリとを備え、
上側及び下側の水平部材が一致する長さと一致する熱膨張係数とを有し、かつ可動垂直部材が、その方向性が固定垂直部材に対して平行のままであるように動作を制約される平行誘導天秤と、
(b)DTAまたはDSC計器であって、
ホルダアセンブリ内の基準ホルダへの熱流に対する、ホルダアセンブリ内の試料ホルダへの差分熱流を測定するためのセンサと、
センサから固定垂直部材へ電気信号を伝導するための、上側または下側の水平部材の一方の上の導電トレースとを備え、
上側または下側の水平部材の一方を可動垂直部材へかつ固定垂直部材へ取り付けるたわみ部が導電たわみ部であるDTAまたはDSC計器とを備える同時熱分析計。
【請求項27】
計器が温度調整式エンクロージャ内に収容される、請求項26に記載の同時熱分析計。
【請求項28】
水平部材がプリント基板材料から製造される、請求項26に記載の同時熱分析計。
【請求項29】
高熱伝導性材料の板が、可動垂直部材と上側及び下側の水平部材とを包囲する、請求項26に記載の同時熱分析計。
【請求項30】
高熱伝導性材料が銅、無酸素銅、銀及びアルミニウムのうちの1つである、請求項29に記載の同時熱分析計。
【請求項31】
上側及び下側の水平部材が二等辺三角形であって、その底辺が固定垂直部材へ回転式に取り付けられかつその頂点が可動垂直部材へ回転式に取り付けられている、請求項26に記載の同時熱分析計。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−525594(P2012−525594A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508621(P2012−508621)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/032673
【国際公開番号】WO2010/126944
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(509131764)ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (46)
【Fターム(参考)】