説明

同軸ニードル及びピペット装置

特に細胞プローブの顕微鏡検査で使用されるピペット装置のための2部分同軸ニードル(10,14,16)であって、ピペット容器(12)内に液体を注入することと、ピペット容器(12)から吸引により液体を除去することの両方を可能とする。好ましい実施形態においては、ピペット容器(12)内に同軸ニードル(10,14,16)を降下させるための駆動と、吸引による液体の注入及び除去は、ただ1つの圧力源を介して空気圧式に行われる。同軸ニードル(10,14,16)及び駆動システム(84,86)の本発明による設計は、高い計量精度の下での迅速且つ確実なピペット操作を可能とし、相互干渉のない特にコンパクトなピペットユニットを広く用いられている多種類の顕微鏡と一緒に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡検査、特に、細胞プローブに関する顕微鏡検査で使用するためのピペット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生細胞を用いた試験シリーズは、生物学及び医学の研究開発において極めて重要であり、製薬産業において、例えば、新しい活性物質及び医薬の開発において幅広く使用されている。この点に関連して、制御された方法で個々のプローブに、例えば活性医療物質又はある種の分子生物学改質(例えば、siRNA又は免疫染色)を含む液体物質を供給するための観察中に又は次の観察工程との間に、各種の細胞プローブを、透過顕微鏡検査又は蛍光顕微鏡検査を用いて、迅速に且つ可能な限り自動化した方法で観察する必要がある。
【0003】
この目的のため、細胞プローブは、対象物キャリア又は多重井戸形プレートの別個のチャンバに分配され、前記プローブの観察のため、ステージ上で、顕微鏡の光路内に順次供給される。この工程において、倒立顕微鏡が頻繁に使用され、画像記録装置及びしばしば照明装置の少なくとも一部がステージの下に配置され、これにより、プローブを位置決めし且つ充填するために、ステージの上の空間の大部分をリザーブしておくことができる。プローブの迅速な自動的位置決めのために、一般に、各種のプローブ容器を収容できるプローブ・ポジショナーがステージ上に設けられている。前記プローブ・ポジショナーの個々のプローブチャンバは、顕微鏡の光路内に迅速且つ極めて正確に移動させることができ、焦点合わせのために光軸に沿って変位させることができる。例えば活性物質のような液体を所定の希釈比又は混合比にて個々のプローブチャンバに加え、又はプローブチャンバから吸引によって液体を除去する工程は、依然として部分的に手動で、例えばマイクロリットル・ピペットを用いて行われている。しかしながら、吸引による手動での充填又は除去は、時間と手間がかかるばかりでなく、非常にミスが起こりやすい。
【0004】
さらに、試験シリーズは、しばしば、制御された温度条件及び環境条件の下で実施する必要があり、これにより、プローブ容器は、ステージ並びに観測設備及び照明装置の一部と共に、いわゆる人工気候室内に収容され、その結果、外部からプローブに接近することは、もはや事実上不可能である。このため、可動ピペットを持つ自動化されたピペットシステムが発明され、このシステムは、制御された環境の下で、選択されたピペット容器内に液体を迅速且つ確実に供給することを可能にする。この構成において、マイクロモーターを備えたポンプの使用によってリザーバからの液体の注入が起こり、電気モーターの使用によってピペットの位置決め及び操作もまた起こる。人工気候室内の、そのような自動化されたピペット装置を持つ倒立顕微鏡は、例えば、米国特許第7092151号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術として知られているピペット装置は、ピペット及び駆動ユニットが比較的大きな設置スペースを必要とするという問題があり、その結果、顕微鏡の操作にマイナスの影響を与える可能性がある。この問題は、特に、透過中のプローブがステージの上から照らされるときに生じる。なぜなら、照明装置及びピペット装置が相互干渉を引き起こすからである。しかしながら、同じ問題がまた、使用される顕微鏡が通常はステージの上の第2照明装置を提供し、この第2照明装置は、実施されるべき試験シリーズには必要ではなく、それにもかかわらず設計上の理由から、光路から十分に遠ざけて自動ピペット装置の非制限的な操作を可能にするということができない、専らステージの下から照明がなされる試験シリーズにおいても生じ得る。広く使用されている多くのタイプの顕微鏡は、そのような空間上の制約を伴い、そのため、従来技術として知られている自動ピペット装置と共に使用される際には、機能上の制約を伴って、又は、おそらくは時間及び費用がかかるであろう改造を行った後においてのみ使用され得る。このため、既知の広く用いられている設計の顕微鏡と相互干渉を起こすことなく使用できるピペット装置が求められている。
【0006】
さらに、使用されるプローブチャンバは、しばしば、周囲環境からプローブを保護するために、金属箔又はプラスチックフィルム等のカバーによって封止されている。このため、そのような密封構成にもかかわらず、迅速、確実、且つ正確に、選択されたプローブチャンバ内に液体を供給することができる自動ピペット装置がさらに求められている。
【0007】
同様に、選択されたプローブチャンバ内への液体の自動供給を可能とすることから離れて、ピペット装置は、また、選択されたプローブチャンバからの迅速且つ効果的な液体の除去を可能としなければならない。
【0008】
これらの目的は、請求項1に係る本発明による同軸ニードルによって達成され、又は、請求項5及び請求項11に係る本発明によるピペット装置によって達成される。本発明は、また、請求項13に係る、対応するピペット操作方法に関する。従属請求項は、好ましい実施形態に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による同軸ニードルは、ピペット装置のためのものであり、ピペット容器から液体を抜き取るための中空吸引ランスと、吸引ランスを少なくとも部分的に包囲する中空挿入ランスであって、吸引ランスの外壁と挿入ランスの内壁との間に、ピペット容器内に液体を供給するための液体ダクトが形成される、中空挿入ランス(16)と、を備える。
【0010】
液体ダクトは、特に、吸引ランスの外壁と挿入ランスの内壁との間の全体の中空空間を備える。
【0011】
本発明による同軸ニードルは、液滴注入及び連続流での注入の両方において、注入されるべき液体の量を慎重且つ正確に測ることを可能とする。
【0012】
好ましい実施形態において、挿入ランスは同軸的に吸引ランスを包囲する。これにより、特に液体の注入でさえ達成可能となる。
【0013】
さらに好ましい実施形態においては、吸引ランス及び/又は挿入ランスは、中空シリンダー又は中空円錐台の形状に設計される。
【0014】
さらに、好ましい実施形態においては、吸入ランスは、ピペット容器からの液体の吸い上げのための第1開放端と、第1開放端と軸方向反対側に配置された、吸い上げられた液体の吸引除去ノズルへの移送のための第2開放端(20)と、を含む。
【0015】
さらに、挿入ランスは、好ましくは、ピペット容器への液体の移送のための第1開放端と、第1開放端と軸方向反対側の、挿入ノズルからの液体の吸い上げのための第2開放端と、を含む。
【0016】
注入されるべき液体は、挿入ランスの第2開放端を介して挿入ノズルから液体ダクトに供給可能であり、挿入ランスの第2開放端の軸方向反対側の第1開放端を介してピペット容器内に供給可能である。同様に、ピペット容器からの液体を、吸引によって、吸引ランスの第1開放端を通って吸引ランスの内部に除去可能であり、ここから液体を、第1開放端の軸方向反対側に位置する第2開放端を介して吸引除去ノズルに搬送可能である。本発明による同軸ニードルによって、液体を迅速に且つ計量してピペット容器内に注入可能であり、また、液体をピペット容器から除去可能である。
【0017】
好ましい実施形態においては、挿入ランスの第1開放端は挿入先端部を含む。特に、挿入ランスの第1開放端は、傾斜するようにして尖らせることができる。このようにして、カバーによって密封されたピペット容器にもまた液体を供給することが可能であり、また、そのようなピペット容器から液体を除去することが可能である。
【0018】
さらに好ましい実施形態においては、吸引ランスの第1開放端が挿入ランスの内部に配置されている。一方では、このような構成により、密封されたピペット容器を穿孔する際に吸引ランスが損傷を受けることを効果的に防止できるという利点がある。他方では、挿入ランスの内部に吸引ランスを配置する構成は、液体の計量に対して有利な効果をもたらす。液体ダクトに進入する液体は、吸引ランスの周りを流れてこれを濡らし、ピペット容器内に供給される前に、吸引ランスの開放端に集まり、所定サイズの液滴を形成する。
【0019】
好ましい実施形態においては、挿入ランスの第2開放端は、挿入漏斗を含む。これにより、挿入ノズルから液体ダクトへの液体の注入を簡略化することできる。
【0020】
さらに好ましい実施形態においては、吸引ランス及び挿入ランスは、共通の軸方向に沿って移動させることができる。これにより、各ランスは、吸引によって液体をピペット容器内に供給し又は除去するために、降下させることができる。
【0021】
吸引ランス及び挿入ランスは、特に、軸方向に沿って互いに独立して移動することができる。これにより、例えば、吸引ランスを挿入ランスから移動させることができ、液体を抜き取るためにピペット容器の底部まで降下させることができる。
【0022】
本発明によるピペット装置においては、挿入ランスの第2開放端は、好ましくは、第1接続配管を介して第1リザーバに接続されており、さらに、吸引ランスの第2開放端は、第2接続配管を介して第2リザーバに接続されている。
【0023】
このようにして、ピペット容器内に供給されるべき液体は、第1接続配管を介して第1リザーバから除去可能であり、ピペット容器から吸引によって除去された液体は、第2接続配管を介して第2リザーバに供給される。
【0024】
第1接続配管は、挿入ランスと第1リザーバとの間に配置された供給弁を含むことができ、供給バルブは挿入ランスの第2開放端に近接して配置され、第2開放端は、好ましくは、第1接続配管の内径の10倍よりも小さく、又は2cm以下である。挿入ランスの第2開放端に近接して配置され、これにより液体ダクトに近接する供給バルブによって、注入時点及び注入量を極めて正確に決定することができる。
【0025】
好ましい実施形態においては、第2接続配管は、吸引ランスの第2開放端と第2リザーバとの間に吸引除去バルブを備えている。
【0026】
供給バルブ及び/又は吸引除去バルブは、好ましくは電子制御可能な3/2バルブである。
【0027】
さらに好ましい実施形態においては、第1リザーバは、第1圧力配管を介して第1圧力源に接続されている。これにより、第1接続配管を介して液体を液体ダクトに供給することが可能であり、第1圧力配管を介して第1圧力源によって第1リザーバが加圧され、供給バルブを用いて計量が制御される。このようにして、正確に計量された液体を、圧力の急増(サージ)によってピペット容器内に注入することができる。
【0028】
好ましい実施形態においては、圧力源は、窒素圧力源である。
【0029】
有利な実施形態においては、第1圧力配管は、第1リザーバと第1圧力源との間に、減圧器及び/又はフィルターを備えている。減圧器は、作動圧範囲を設定することを可能とし、フィルターは、リザーバ及びその中に貯蔵された液体を汚染から防護する。
【0030】
好ましい実施形態においては、第2リザーバは、第2圧力配管によって負圧源に接続されている。このようにして、第2リザーバと、前記第2リザーバに接続された第2接続配管は、負圧を受けることが可能であり、吸引除去バルブを制御することにより、液体は、吸引ランスを介してピペット容器から第2接続配管内に抜き取られ、そこから第2リザーバ内に抜き取られることができる。
【0031】
さらに好ましい実施形態においては、負圧源は真空ポンプを含む。代替の実施形態においては、負圧源は、第1圧力源に接続されたベンチュリノズルを含み、ベンチュリノズルは、第1圧力源の過圧を負圧に変換する。この実施形態においては、液体は、ピペット容器内に注入することもできるし、単一の圧力源を用いてピペット容器から吸引により除去することもできる。
【0032】
有利な実施形態においては、挿入ランスは、第1駆動ユニットに接続され、吸引ランスは第2駆動ユニットに接続される。第1及び/又は第2駆動ユニットは、好ましくは、空気圧駆動ユニットである。
【0033】
挿入ランス及び吸引ランスの駆動を空気圧で行うことにより、駆動ユニットによって占有される設計空間を大幅に縮小することができる。そのため、2つの駆動ユニットを持つ同軸ニードルは、有利には、同軸ニードルの軸方向に沿った設計高さが4cmを超えない可動ピペットユニットを一緒に形成することができる。軸方向における低い設計高さは、特に、そのようなピペットユニットを、ステージ又はピペット容器と顕微鏡の照明装置との間の空間内に、顕微鏡の操作を妨げることなく、又は顕微鏡の設計変更を必要とすることなく、移動させることを可能とする。
【0034】
好ましい実施形態においては、第1駆動ユニットは、第1圧力ピストンと共に、第1接続要素及び第1締結要素又は締結手段を含み、第1締結手段は、挿入ランスに接続可能であり、第1接続要素を介して第1圧力ピストンに接続可能である。第2駆動ユニットは、第2圧力ピストンと共に、第2接続要素及び第2締結要素を含み、第2締結要素又は締結手段は、吸引ランスに接続され、第2接続要素を介して第2圧力ピストンに接続可能である。
【0035】
好ましい実施形態においては、第1締結要素は、さらに、第1リザーバから液体を吸い上げるための挿入ノズルを含み、第2締結要素は、吸い上げた液体を第2接続配管を介して第2リザーバに搬送するための吸引除去ノズルを含む。このようにして、ピペットユニットによって占有される設計空間をさらに減少させることができる。
【0036】
さらに好ましい実施形態においては、第1締結要素は、スプリングを介して第2締結要素に接続され、駆動ピンを介して接続可能である。このようにして、挿入ランス及び吸引ランスは、例示の実施形態を参照して以下に説明されているように、単一の駆動ユニットのみを使用してピペット容器内に一緒に降下される。
【0037】
有利な実施形態においては、第1駆動ユニットは、第3圧力配管を介して第2圧力源に接続され、第2駆動ユニットは、第4圧力配管を介して前記第2圧力源に接続される。好ましい実施形態においては、第2圧力源は、第1圧力源と同じものである。そのような構成においては、同軸ニードルの両方のランス、及び液体は、単一の圧力源を用いて駆動可能である。このようにして、非常にコンパクトで且つ効率的なピペット装置が提供される。
【0038】
好ましい実施形態においては、第3圧力配管は、第1急速排出スロットルバルブと共に第1駆動バルブを含み、第1急速排出スロットルバルブは、第1圧力ピストンと第1駆動バルブとの間に配置されている。
【0039】
急速排出スロットルバルブは、第1駆動ユニットにおいて、よりゆっくりとした圧力上昇をもたらし、これにより、挿入ランスをその軸方向に沿って降下させる際の移動速度を低下させることができる。
【0040】
同様に、第4圧力配管は、第2急速排出スロットルバルブと共に第2駆動バルブを含み、第2急速排出スロットルバルブは、第2圧力ピストンと第2駆動バルブとの間に配置されている。
【0041】
好ましい実施形態においては、第1駆動バルブ及び第2駆動バルブは、電子制御可能な3/2バルブである。
【0042】
好ましい実施形態においては、本発明によるピペット装置は、同軸ニードルの軸方向に垂直な方向に移動可能なピペットユニットを含み、ピペットユニットは、第1駆動ユニット及び第2駆動ユニットと共に同軸ニードルを含み、軸方向に沿ったピペットユニットの設計高さは4cmを超えない。
【0043】
本発明は、また、ピペット容器に液体を供給するためのピペット及びピペットを移動させるための駆動ユニットを備えたピペット装置に関し、駆動ユニットは、空気圧駆動ユニットであり、第3圧力配管を介して第1圧力源に接続されている。
【0044】
上述したように、空気圧駆動は、非常にコンパクトなピペット装置を提供することが可能であり、特にピペットの軸方向に沿った設計高さが低いピペットユニットを提供することができ、ピペット装置はピペット及び駆動ユニットを含む。
【0045】
有利な実施形態においては、ピペット装置は、追加的に、ピペットを第1リザーバに接続する第1接続配管を含み、第1リザーバは第1圧力配管を介して第1圧力源に接続されている。このようにして、ピペットを移動させるための駆動ユニット及び液体を注入するための注入装置の両方を、共有の圧力源を介して操作可能であり、これにより、再び、非常にコンパクトで効率的なピペット装置が得られる。
【0046】
本発明によるピペット装置のピペットは、液体をピペット容器から抜き取るための設計とすることもでき、第2接続配管を介して第2リザーバに接続することも可能であり、第2リザーバは、第2圧力配管を介して負圧源に接続されている。
【0047】
次に負圧源は、第1圧力源に接続されたベンチュリノズルを含むことができ、これにより上述の利点が得られる。
【0048】
本発明は、また、上述の特徴を備えたピペット装置を持つ顕微鏡に関する。特に、顕微鏡は、倒立顕微鏡とすることができる。
【0049】
最後に、本発明は、中空吸引ランス及び吸引ランスを少なくとも部分的に包囲する中空挿入ランスを持つ同軸ニードルをピペット容器の上に配置する工程と、吸引ランス及び挿入ランスをピペット容器内に一緒に移動させる工程と、液体のための第1リザーバから、吸引ランスの外壁と挿入ランスの内壁との間に配置された液体ダクトに液体を供給する工程と、液体ダクトからピペット容器内に液体を供給する工程と、を備えた、ピペット操作のための方法に関する。
【0050】
好ましい実施形態においては、吸引ランスの第1端は挿入ランスの内部に配置されており、これにより、ピペット容器と反対の端部である吸引ランスの第1開放端と、ピペット容器と反対の開放端である挿入ランスの第1開放端との間の距離が、ピペット容器内への液体の注入中、少なくとも1mmである。上述したように、この方法にて、液体ダクト内の液滴形成を促進し、飛散無しの注入が可能となる。
【0051】
さらに好ましい実施形態においては、液体は、液滴毎にピペット容器内に供給され、液滴の量は、ピペット容器の反対の端部である吸引ランスの第1開放端と、ピペット容器の反対側の端部である挿入ランスの第1開放端との間の距離を選択することによって設定される。この距離は、ピペット容器内への液体の注入中、好ましくは少なくとも1mmである。
【0052】
好ましい実施形態においては、吸引ランス及び挿入ランスを移動させる工程は、ピペット容器のカバーの貫通を含む。
【0053】
さらに好ましい実施形態においては、液体は、圧力の急増(サージ)によってピペット容器内に注入される。上述したように、このようにして、液体の注入量を効果的に測定することが可能であり、注入の時点を正確に決定することができる。
【0054】
さらに、好ましい実施形態においては、本発明による方法は、吸引ランスの第2開放端を第1負圧源に接続する工程と共に、液体ダクトから吸引ランスの内部を介して液体のための第2リザーバ内に過剰の液体を吸引により除去する工程を追加的に含む。
【0055】
液体ダクトから吸引により過剰な液体を除去することにより、過剰量の液体がピペット容器内に意図せずに注入される危険を低減することができる。さらに、本発明による方法を使用することにより、吸引による除去によって液体ダクトを簡単に清掃することができる。これは特に、試験シリーズ中又は次の試験シリーズとの間において供給すべき液体を変更する場合であって、それまで使用していた液体の残りによって次に使用する液体が汚染されることを避けなければならない場合において有利である。
【0056】
さらに好適な実施形態においては、本発明による方法は、吸引ランスの第1開放端がピペット容器内の液体の容積内に浸漬されるまで、吸引ランス及び挿入ランスの共通の軸方向に沿って吸引ランスを移動させる工程と、吸引ランスの第2開放端を第2負圧源に接続する工程と、吸引によって液体をピペット容器から吸引ランスの内部を通って液体のための第3リザーバ内に除去する工程と、を更に備える。
【0057】
吸引ランスは、挿入ランスとは独立に共通の軸方向に沿って降下させることができるので、ピペット容器の内部から、液面が低い場合でも、吸引により効果的且つ完全に液体を除去することができる。
【0058】
好ましい実施形態においては、第2負圧源及び第1負圧源は同じものであり、及び/又は、液体のための第3リザーバ及び液体のための第2リザーバは同じものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1a】本発明によるピペット装置の好ましい実施形態の概略図。
【図1b】図1aのピペット装置で使用されている急速排出スロットルバルブの拡大図。
【図2a】各種の操作位置にある、本発明による同軸ニードルの好ましい実施形態を示した図。
【図2b】各種の操作位置にある、本発明による同軸ニードルの好ましい実施形態を示した図。
【図2c】各種の操作位置にある、本発明による同軸ニードルの好ましい実施形態を示した図。
【図2d】各種の操作位置にある、本発明による同軸ニードルの好ましい実施形態を示した図。
【図3a】各種の操作位置にある本発明による同軸ニードルを操作するための駆動装置の概略側面図。
【図3b】各種の操作位置にある本発明による同軸ニードルを操作するための駆動装置の概略側面図。
【図3c】各種の操作位置にある本発明による同軸ニードルを操作するための駆動装置の概略側面図。
【図4a】図3a乃至図3cの各種の操作位置にある駆動装置の概略正面図。
【図4b】図3a乃至図3cの各種の操作位置にある駆動装置の概略正面図。
【図4c】図3a乃至図3cの各種の操作位置にある駆動装置の概略正面図。
【図5】液体のための幾つかのリザーバを備えた本発明によるピペット装置の改良を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0060】
コンパクトな設計及び低い設計高さの故に、本発明による同軸ニードル又は本発明によるピペット装置は、広く用いられている各種の顕微鏡と、相互の干渉を起こすことなく、一緒に使用することが可能であり、加えて、ピペット容器内への迅速且つ制御され自動化された液体注入を可能とすると共に、ピペット容器からの吸引による液体の除去を可能とする。
【0061】
本発明による同軸ニードル及び本発明によるピペット装置並びに本発明によるピペット操作方法の数多くの利点が、添付図面の詳細な説明を参照して最も良好に理解される。
【0062】
図1aは、本発明によるピペット装置を、その操作にとって重要な構成要素と共に示した概略図である。図1aにおいては、供給圧力を持つ圧力配管は二重線で示されており、減圧された過圧又は負圧を持つ圧力配管は単一の線で示されており、制御信号ラインは波線で示されている。ピペット装置の中心は、本発明による同軸ニードル10であり、同軸ニードル10はピペット容器12内に部分的に浸漬されている。ピペット容器12は、例えば、井戸型プレート又はペトリ皿の円筒プローブチャンバとすることができ、プローブチャンバは、細胞プローブを含み、適用可能であれば、プローブに供給され、(図1aには示されていない)倒立光学顕微鏡の光路内に挿入された液体を含む。
【0063】
以下、同軸ニードル10の設計及び機能について、図2a乃至図2dを参照して詳細に説明する。
【0064】
図2aは、カバーフォイル30で密封されたピペット容器12の上の待機位置にある同軸ニードル10を示している。図示されているように、同軸ニードル10は、吸引ランス14と共に挿入ランス16を備えている。両ランスは、金属中空円筒の形体で設計されており、挿入ランス16は、吸引ランス14よりも短く、吸引ランスの外径を超える内径を備えている。
【0065】
説明されている実施形態においては、吸引ランス14及び挿入ランス16の両方が、中空正円筒の形体である。しかし、ニードルの使用分野に応じて、異なる形体の中空体を使用することができる。本願発明の文脈においては、「吸引ランス」の用語は、液体を抜き取るために好適なあらゆる中空体を指している。同様に、「挿入ランス」の用語は、吸引ランスと協働してピペット容器12内に液体を供給するために好適なあらゆる中空体を指している。挿入ランスは、特に、カバーフォイル30を穿孔するように設計されている。
【0066】
図2aに示されているように、吸引ランス14は、ピペット容器12の反対の第1開放端18、及び、軸方向26に沿って第1開放端18の反対の第2開放端20を含む。同様に、挿入ランス16は、ピペット容器12の反対の第1開放端22、及び、第1開放端22の反対の第2開放端24を含む。吸引ランス14の第1開放端18は、挿入ランス16内に挿入され、その中でスライド可能であり、挿入ランス16は、吸引ランス14を同軸的に部分的に包囲しているが、吸引ランス14はその長さの故に少なくとも一方の側が常に挿入ランス16から突出している。挿入ランス16の内径が吸引ランス14の外径よりも大きいので、挿入ランス16が同軸的に吸引ランス14を包囲している位置において、吸引ランス14の外壁と挿入ランス16の内壁との間に液体ダクト28が形成されている。
【0067】
図2aに示された構成においては、挿入ランス16の第1開放端22が、軸方向25に対して傾斜した先端部の形体にて設計されている。この先端部は、同軸ニードル10がピペット容器12内に降下された際にカバーフォイル30を貫通するために使用される。
【0068】
挿入ランス16は、その第2開放端24に挿入漏斗32を備えており、挿入ランス16に接続された挿入ノズル34から、液体ダクト28内に液体を挿入することができる。これとは対照的に、吸引ランス14は、その第2開放端20にて吸引除去ノズル36に接続されており、吸引ランス14の内部から吸引により液体を除去することができる。
【0069】
図1に示されているように、第1接続配管38及び供給バルブ40を介して挿入ノズル34が第1リザーバ42に接続されており、第1リザーバ42内には、ピペット容器12内に注入されるべき液体が貯蔵されている。第1接続配管38は、フレキシブル・プラスチックホースとすることができる。第1リザーバ42は、第1圧力配管44及び圧力スイッチ46を介して圧力源48に接続されている。圧力源48は、作動ガスとして窒素を使用して操作される圧力源とすることができ、圧力源は約5バールの作動圧を提供する。圧力源48と第1リザーバ42との間に配置された減圧器50を介して、作動圧が、約0.2乃至0.3バールの低減された圧力に変換される。減圧器50の下流に配置されたフィルタ52は、第1リザーバ42及びその中に貯蔵された液体を汚染から防護する。
【0070】
供給バルブ40は、磁気作用で操作され、2つのスイッチング状態を持つ3つの接続を提供する、いわゆる3/2バルブである。図1の例は、供給バルブ40の可能なスイッチング状態の両方を並べて示しており、即ち、供給バルブ40の左側は、第1リザーバ42から同軸ニードル10に液体を注入するために開放され、供給バルブ40においては、接続1及び2が通路の方向に接続されており、右側は閉鎖されたバルブであり、接続2及び3が接続され、第1リザーバ42からピペット10への液体の注入が閉鎖されている。
【0071】
供給バルブ40を制御ユニット56に接続する第1制御ライン54を介して、予め選択されたタイミングパターンにて、供給バルブ40の2つのスイッチング状態を電子的に変更可能であり、これによりピペットへの液体の注入を制御することができる。そのようなバルブの典型的なスイッチング時間は、10msから50msの範囲である。制御ユニット56に接続された入出力ユニット58は、好適なタイミングシーケンスを選択し、入力するために使用され、ピペット装置を制御し、監視するために使用される。
【0072】
第1供給バルブ40は、同軸ニードル10に近接するように配置され、挿入ランス16の第2開放端24と供給バルブ40との距離は、好ましくは、第1接続配管38の直径の10倍よりも小さく、2cm以下である。このようにして、液体の注入量及び注入のタイミングを非常に正確に決定することができる。
【0073】
吸引ランス14の第2開放端20は、吸引除去ノズル36及び第2接続配管60a、60bを介して第2リザーバ62に接続され、次にリザーバ62は、第2圧力配管64を介して負圧源66に接続されている。第2接続配管60a、60bもまた、フレキシブル・プラスチックホースとすることができる。
【0074】
第1実施形態においては、負圧源66は、例えば回転翼型ポンプのような従来の真空ポンプ68のみならず、バッファーボリューム70及びニードルバルブ・バイパス72を含んでいる。
【0075】
図1はまた、負圧源66’を備えた代替の実施形態を示している。この代替の実施形態においては、第2リザーバ62が、第2圧力配管64’を介してベンチュリノズル74の低圧接続に連結されている。次にベンチュリノズル74は第1圧力配管44に接続され、これにより圧力源48に接続され、このようにして、圧力源48によって提供される、第1圧力配管44内の過圧を、第2圧力配管64’内の負圧に変換する。
【0076】
第2接続配管60a、60b内の吸引除去バルブ76を介して、吸引除去ノズル36及びこれに接続された吸引ランス14の第2開放端20は、負圧(本実施形態では−50ミリバールから−100ミリバール)で制御され、これにより、ピペット容器12からの液体は、吸引により、吸引ランス14、第2接続配管60a、60b及び吸引除去バルブ76を介して、第2リザーバ62内に除去可能である。第2圧力配管64又は64’内のフィルタ78は、液体又はそれらの脱ガス生成物が吸引により第2リザーバ62から負圧源66又は66’内に除去されることを防止する。
【0077】
上述した供給バルブ40の場合のように、吸引除去バルブ76は、第2制御ライン80を介して制御ユニット56に接続された電子制御可能な3/2バルブとすることができる。図1の左側に示された、接続2及び3が接続されている第1スイッチング状態は、第2接続配管60a、60bを介して同軸ニードル10が負圧源66又は66’に接続されている、吸引除去バルブのアクティブ・スイッチング状態である。吸引バルブ76の接続1及び2が相互に接続されている、非アクティブ又は閉じたスイッチング状態が、隣接する右側に示されている。
【0078】
図1に示された実施形態においては、供給バルブ40及び吸引除去バルブ76は、供給バルブの接続3を吸引バルブの接続2に接続する中間接続82を介して連結可能である。この中間接続82は、例えば清掃作業又はメインテナンス作業のためにピペット装置から全ての液体を排出する必要がある場合、第1接続配管38及び挿入ノズル34を空にし、かくして負圧源66又は66’によって液体ダクト28を空にする。
【0079】
図1の概略図はまた、同軸ニードル10を操作するための空気圧駆動ユニットを示している。図示のピペット装置は、挿入ランス16及び吸引ランス14のために2つの別個の駆動ユニット84及び86を提供し、これにより、挿入ランス16及び吸引ランス14は、それらの共通の軸方向26に沿って互いに独立に移動させることができる。
【0080】
以下、図3aを参照して駆動ユニット84及び86について詳細に説明する。
【0081】
第1駆動ユニット84は、第1圧力ピストン88と共に、第1接続要素90及び第1締結要素92を備えている。第1締結要素92は、挿入ランス16に直接接続されており、また、挿入ノズル34(図3aには図示せず)を含んでいる。第1締結要素92は、第1接続要素90を介して第1圧力ピストン88に接続されている。このようにして、第1接続要素90を介して、第1圧力ピストン88の動きが、軸方向26(図2参照)に沿った挿入ランス16の動きに変換される。
【0082】
吸引ランス14を移動させるための第2駆動ユニット86は、同様に設計されており、第2圧力ピストン94、第2圧力ピストン94に接続された第2接続要素96及び第1接続要素90、並びに第2締結要素98を備えている。第2締結要素98は、吸引ランス14に直接接続されており、また、吸引除去ノズル36(図3aには図示せず)を含んでいる。第2圧力ピストン94が作動すると、第2接続要素96が第2締結要素98に作用し、これにより、軸方向26に沿って吸引ランス14が移動可能となる。
【0083】
本発明による駆動ユニット及び本発明による同軸ニードル10の設計は、同軸ニードル10及び第1駆動装置84及び第2駆動ユニット86を備えた可動ピペットユニット126を提供可能であり、ピペットユニット126の軸方向26に沿った設計高さは、顕微鏡操作及びピペット操作が互いに干渉することなく、ピペット容器12と、ピペット容器12の上に配置される従来設計の倒立光学顕微鏡の照明ユニットとの間に、ピペットユニット126を挿入するのに十分な低さである。特に、軸方向26に沿った設計高さが4cm未満であるピペットユニット126を達成することができる。
【0084】
図1の概略図に示したように、第1駆動ユニット84の第1圧力ピストン88は、第1圧力配管44に接続され、かくして第3圧力配管100を介して圧力源48に接続されている。2つの駆動バルブ102及び104によって第3圧力配管100は第1圧力配管44に連結され、これにより、スイッチング状態に応じて、第1圧力ピストン88は両端に圧力を受けることができ、一方の端部からの加圧は、第1接続要素90を介して挿入ランス16の下向きの動きに変換され、反対の端部からの加圧は、軸方向に沿った挿入ランス16の上向きの動きに変換される。
【0085】
駆動バルブ102及び104は、再び、各スイッチング状態が図1に示されている電子制御可能な3/2バルブであり、前記バルブは、再び、波線で示された制御ラインを介して制御ユニット56に接続されている。
【0086】
第3圧力配管100の両方の分岐において、急速排出スロットルバルブ106及び108が第1圧力ピストン88の上流に配置されており、急速排出スロットルバルブ106及び108は、第1圧力ピストン88における圧力上昇を遅らせ、このようにして、挿入ランス16の移動速度を設定することが可能となる。
【0087】
第2圧力ピストン94は、同様に、第1圧力配管44に接続されており、第1圧力配管44は、次に、制御ユニット56に接続された2つの電子制御可能な3/2バルブ112及び114を備えている。この構成において、第2圧力ピストン94の駆動は、上述した第1圧力ピストン88の駆動に類似して生じ、再び、急速排出スロットルバルブ116及び118が、第4圧力配管110の両方の分岐に設けられている。
【0088】
使用されている急速排出スロットルバルブ106、108、116及び118の作動及び機能は、図1bの拡大図に概略図示されている。そのようなバルブは、端部が圧力源48に対向し、図1bにおいてAで示されているスロットルバルブの端部から、ピペットユニットのリフティング・シリンダーに対向し、図1bにおいてBで示されているバルブの端部への流れの場合、この流れを、この流れとは反対方向の流れを可能としつつ、ブロックする。さらに、スロットルバルブは、逆止弁132をバイパスするバイパス134を含み、調整可能な減圧バルブ136を含む。
【0089】
減圧バルブ136によって容量が制限されたバイパス134を介してのみ、圧力媒体がA→Bの流れ方向に流れることができるので、リフティング・シリンダーでの圧力上昇は、よりゆっくりと生じる。これとは対照的に、B→Aの流れ方向においては、逆止弁132及び減圧弁136の両方が圧力媒体に対して開放されているので、リフティング・シリンダーでの圧量減少は急激に生じうる。減圧弁136における流通容量を適切に選択することで、圧力上昇及びこれによる挿入ランス16又は吸引ランス14の移動速度を適宜設定することができる。
【0090】
ピペット操作のために、同軸ニードル10、並びに、第1駆動ユニット84及び第2駆動ユニット86を含むピペットユニット126が、選択されたピペット容器12の上に位置決めされる。そのような位置決めは、一方では、顕微鏡のステージの可動位置決め装置によって生じ、ピペット容器12を同軸ニードル10の下で移動させる。既に説明したように、代替策として、本発明によるピペット装置は、また、ピペット装置126が移動可能となるように設計することもできる。これにより、ピペットユニット126は駆動装置(図1には図示せず)に接続することが可能であり、駆動装置は、ステージの面に沿ってピペットユニット126が移動することを可能とし、必要に応じて前記面に対して垂直方向にも移動することを可能とする。例えば、ピペット容器の選択されたチャンバに充填し及びチャンバを空にするために、可動ピペットユニット126を揺動させて顕微鏡の光路内に入れることも可能であり、次の顕微鏡検査工程の際に揺動させて光路から出すこともできる。これにより、透過での観察においてさえ、支障なく顕微鏡検査操作を行うことができる。
【0091】
軸方向26に沿ったピペットユニット126の低い設計高さのために、本発明によるピペット装置126は、ピペット操作及び顕微鏡検査操作が相互干渉を引き起こすことなく、通常使用されている多くの顕微鏡モデル及び設計と一緒に使用することができる。特に、同軸ニードル10は、ピペット容器12を持つステージとステージの上に配置された顕微鏡の照明装置との間の光路内に挿入可能である。従って、観察に使用される顕微鏡が、対象物をその上から照明するものであって、対象物をその下から照明するものであっても、又は、米国特許第7.092,151号に記載のステージ上方からの照明又は下方からの照明を選択する顕微鏡の場合であっても、本発明によるピペット装置を使用することができる。これは、本発明による同軸ニードル及び本発明によるピペット装置の特別な利点である。
【0092】
さらに、そのコンパクトな設計の故に、本発明によるピペット装置は、特に、人工気候室内での使用に適している。
【0093】
以下、ピペット操作のための方法について、図2、図3及び図4に示した実施形態を参照して説明する。この構成においては、図2a、図3a及び図4aは、待機位置にある同軸ニードル10を示し、図2b、図2c、図3b及び図4bは、注入位置にある同軸ニードル10を示し、図2d、図3c及び図4cは、吸引除去位置にある同軸ニードル10を示している。
【0094】
図2a、図3a及び図4aに示した待機位置においては、同軸ニードル10は、カバーフォイル30によって密封されたピペット容器12の上に位置しており、ピペット容器12は、調査されるべき細胞プローブを収容している。
【0095】
同軸ニードル10をピペット容器12内に挿入するために、第3圧力配管100を介して第1圧力ピストン88に圧力を付与し、これにより、第1締結要素92及び第1接続要素90を介して第1圧力ピストン88に接続された挿入ランスが、軸方向26に沿って下方に移動する。同時に、第1接続要素90に連結された第2接続要素96は、図3bに示されているように、第2締結要素98との接触を確保するように形成されている。図3aに示されているように、挿入ランス16の第1締結要素92は、待機位置において解放されているスプリング120及び駆動ピン130を介して、吸引ランス14の第2締結要素98に連結されている。図4aに示されているように、第1締結要素92及び第2締結要素98は、軸方向26に延びるガイドレール128内で追加的に一緒に案内されている。第1締結要素92及びそれと共に挿入ランス16がガイドレール128に沿ってピペット容器12内に移動すると、第1締結要素92に接続され、その広くされたカバー表面が第2締結要素98に係合するピン130が、第2締結要素98に堅固に接続された吸引ランス14を引っ張る。それらの相対的な位置を維持しながら、挿入ランス16及び吸引ランス14の両方がピペット容器12内に移動し、挿入ランス16の挿入先端部がカバーフォイル30を貫通する。そして同軸ニードルは、図2b及び図2c、並びに図3b及び図4bに示した注入位置にある。
【0096】
供給バルブ40の作動の結果、注入すべき液体は、加圧下で、第1リザーバ42から、第1接続配管38、挿入ノズル34及び挿入漏斗32を介して、吸引ランス14と挿入ランス16との間の液体ダクト28内に注がれる。図2bに示したように、液体は、吸引ランス14の周りを流れ、その第1開放端18で集まって液滴を形成する。この実施形態においては、ピペット容器12と反対の吸引ランス14の第1開放端18と、ピペット容器12と反対の挿入ランスの第1開放端22との間の距離が、ピペット容器12への液体の注入中、約1mmである。本実施形態においてはピン130の変位によって調整可能であるこの距離を、適切に選択することによって、液滴のサイズ、従って注入される液体の量を、同様に設定することができる。供給バルブ40の圧力の急増(サージ)によって、液滴は同軸ニードル10から離れてピペット容器12内に落下する。液滴注入から離れて、一定の流れで液体を注入することもまた可能であり、供給バルブ40は、制御ユニット56を介して、延長された時間にわたって開放が維持される。
【0097】
吸引ランス14の第2開放端20を、第2接続配管60a、60b及び吸引除去バルブ76を介して負圧源に接続することによって、次の工程において、図2cに示したように、もし必要であれば液滴が離れた後で、液体ダクト28内にまだ残留している液体を、吸引ランス14の内部を介して、吸引によって第2リザーバ62内に除去できる。
【0098】
続いて、同軸ニードル10は、ピペット容器12から除去可能であり、第1駆動ユニット84の作動の結果、挿入ランス16がガイドレール128に沿って動かされてホームポジションに戻る。吸引ランス14の第2締結要素98はスプリング120を介して挿入ランス16の第1締結要素92に接続されているので、このプロセスにおいて、同時に、前記吸引ランス14は、挿入ランス16に対する相対的な位置を維持しながら、ピペット容器12から後退移動される。そして、同軸ニードル10は、注入プロセスを繰り返すために更なるピペット容器の上に位置決めすることができる。
【0099】
しかしながら、本発明によるピペット装置は、ピペット容器12から吸引により液体を除去するために使用することもできる。この結果、上述した方法に寄れば、挿入ランス16及び吸引ランス14は、選択されたピペット容器12内に最初に一緒に挿入される。そのような液体の注入に続いて、又はそのような先行の注入工程のない代替案として、同軸ニードル10は、図2d、3c及び4cに示された吸引除去位置に移動される。図2b、2c、3b及び4bに示された注入位置からスタートして、第2圧力ピストン94は第4圧力配管110を介して作動され、これにより、第2圧力ピストン94に接続されている第2接続要素96は第2締結要素98と係合し、スプリング120の張力下にある吸引ランス14は、ピペット容器12内に収集された液体124の容積内に吸引ランス14の第1開放端18が浸漬されるまで、ガイドレール128に沿って軸方向26に降下される。このプロセスにおいて、挿入ランス16の位置は不変に維持される。吸引ランス14の第2開放端20を、吸引除去ノズル36及び第2接続配管60a、60bを介して、負圧源66又は66’に接続することによって、ピペット容器12内に収集された液体124の容積は、続いて、その一部又は全部が、吸引ランス14の内部を通って第2リザーバ62内に吸引により除去可能である。吸引プロセスの完了後、駆動ユニット86又は接続要素96の戻り移動の結果としてスプリング120が解放され、これにより、スプリング力によって締結要素98が上方に押され、締結要素98に接続されている吸引ランス14は、軸方向26に沿って、図2c、3b及び4bに示されたホームポジション内にはね戻る。この方法は、上記の如く続けることができる。
【0100】
上述した本方法によれば、本発明によるピペット装置を用いて、液体を急速に、確実に、そして正確に計量して、密封されたピペット容器内に供給し、又は密封されたピペット容器から除去することができる。しかしながら、多くの試験シリーズにおいて、異なる液体又は異なる濃度の液体を連続的に注入し又は除去することが望まれる。複数の液体間の相互接触を防止して、いかなる汚染も、また望ましくない反応も防止する必要がしばしばある。
【0101】
この目的のため、本発明による方法及び本発明による装置は、幾つかの別個の液体循環システムを備えるように設計することも可能であり、各システムが、同軸ニードルを備え、残余は上述の実施形態に対応している。選択されたピペット容器内に複数の液体の1つを注入するために、又は選択されたピペット容器から複数の液体の1つを吸引により除去するために、対応する同軸ニードルがリボルバーシステムにて選択可能である。
【0102】
代替案として、幾つかの同軸ニードルを使用することに代えて、単一の同軸ニードルを使用することも可能であり、単一の同軸ニードルは、異なる液体循環システムに接続されるように設計され、さらに、別個のクリーニング循環システムに接続されるようにしても良い。このように異なる液体循環システムへの接続間で、同軸ニードルのクリーニングが、あらゆる汚染を効果的に防止するために実施可能である。クリーニングは、別個のリンス液を用いて配管システムをリンスすることにより、又は、液体循環システムからの残りのピペット液の吸引による除去により実施可能である。
【0103】
図5は、本発明によるピペット装置の類似の改良の概略図である。図5に示したピペット装置は、主要部分については図1aに示したピペット装置と同一であり、対応する構成要素には同じ参照符号を付している。しかしながら、第1リザーバ42を設ける代わりに、図5に示したピペット装置は、2つのリザーバを備えており、一方のリザーバ138は第1ピペット液のためのものであり、他方のリザーバ140は第2ピペット液のためのものである。さらに、本発明による改良は、1つの供給バルブ40を設ける代わりに、3つの供給バルブ、即ち、第1供給バルブ146、第2供給バルブ148及び第3供給バルブ150を備えている。図示の実施形態における第1、第2及び第3供給バルブは、図1aを参照して上で説明したように、制御ユニット56を介して電子制御可能な3/2バルブである。
【0104】
接続配管142又は接続配管144を介して、選択的に加圧下で、リザーバ138から所定量の第1ピペット液を、又はリザーバ140から所定量の第2ピペット液を、挿入ランス16に供給可能である。第1ピペット液のための接続配管142は、第2供給バルブ148の入力ポート1に接続されている。次に、第2供給バルブ148の出力ポート2は、第3供給バルブ150の入力ポート1に接触しており、第3供給バルブ150の出力ポートは、第1接続配管38を介して挿入ランス16に通じている。第2供給バブル148及び第3供給バルブ150の作動によって、第1ピペット液のためのリザーバ138からピペットに液体が供給される。接続配管144を介して第2ピペット液のためのリザーバ140に接続されている第1供給弁146は、この時点では切り離されている。
【0105】
第1ピペット液を供給することに代えて、第2ピペット液をピペットに供給する場合には、第2供給バルブ148及び第3供給バルブ150に代えて、第1供給バルブ146及び第3供給バルブ150が作動される。このようにして、第2ピペット液は、加圧下で、接続配管144及び第1供給バルブ146、非作動の第2供給バルブ148及び第3供給バルブ150を介して、挿入ランス16に供給され、このとき第1ピペット液は、接続配管142を介して第2供給バルブ148の非作動の入力ポート1に接続され、切り離されている。第1供給バルブ146の入力ポート3は、接続配管60cを介して第2リザーバ62に接続されており、リザーバ62は、ピペット装置の配管システムから吸引により除去された如何なる残留物も吸い上げる。
【0106】
上述した改良によって、第1又は第2ピペット液のいずれかを選択的に注入することができる。ピペット液の相互汚染を防止するために、配管システムは、第1ピペット液の注入と第2ピペット液の注入との間に吸引除去によりクリーニングされ、クリーニングを行う際、例えば、第1接続配管38は、第3供給バルブ150の接続3を介して吸引除去バルブ76に、図1aにおいて中間接続82によって図示されているように、又は、例えば、非作動のバルブ148及び146及び容器62内への接続配管60cを介したバルブ150及び接続2−3の作動によって、第3供給バルブ150の接続3を介して吸引除去バルブ76に接続される。
【0107】
同様にして、本発明によるピペット装置は、更なるリザーバ及び供給バルブを追加することによって、2つよりも多くのピペット液で稼働するように拡張することができる。
【0108】
上述した実施形態及び図面は、本発明による装置及び本発明による方法を単に説明するために役立つに過ぎず、本発明を限定するものと誤解されてはならない。本発明の保護範囲は、専ら特許請求の範囲に基づくものである。
【符号の説明】
【0109】
10 同軸ニードル
12 ピペット容器
14 吸引ランス
16 挿入ランス
18 吸引ランス14の第1開放端
20 吸引ランス14の第2開放端
22 挿入ランス16の第1開放端
24 挿入ランス16の第2開放端
26 軸方向
28 液体ダクト
30 カバーフォイル
32 挿入漏斗
34 挿入ノズル
36 サージノズル
38 第1接続配管
40 供給バルブ
42 第1リザーバ
44 第1圧力配管
46 圧力スイッチ
48 圧力源
50 減圧器
52 フィルタ
54 第1制御ライン
56 制御ユニット
58 入出力ユニット
60a、60b、60c 第2接続配管
62 第2リザーバ
64、64’ 第2圧力配管
66、66’ 負圧源
68 真空ポンプ
70 バッファーボリューム
72 ニードルバルブ・バイパス
74 ベンチュリノズル
76 吸引除去バルブ
78 フィルタ
80 第2制御ライン
82 中間接続
84 第1駆動ユニット
86 第2駆動ユニット
88 第1圧力ピストン
90 第1接続要素
92 第1締結要素
94 第2圧力ピストン
96 第2接続要素
98 第2締結要素
100 第3圧力配管
102、104 第1駆動ユニット84のための駆動バルブ
106、108 第1駆動ユニット84のための逆止減圧弁
110 第4圧力配管
112、114 第2駆動ユニット86のための駆動バルブ
116、118 第2駆動ユニット86のための逆止減圧弁
120 スプリング
122 過剰の液体
124 ピペット容器12内の液体の容積
126 ピペットユニット
128 ガイドレール
130 駆動ピン
132 逆止弁
134 バイパス
136 減圧弁
138 第1ピペット液のためのリザーバ
140 第2ピペット液のためのリザーバ
142 第1ピペット液のための接続配管
144 第2ピペット液のための接続配管
146 第1供給バルブ
148 第2供給バルブ
150 第3供給バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペット装置のための同軸ニードル(10)であって、
ピペット容器(12)から液体を抜き取るための中空吸引ランス(14)と、
前記吸引ランス(14)を少なくとも部分的に包囲する中空挿入ランス(16)であって、前記吸引ランス(14)の外壁と前記挿入ランス(16)の内壁との間に、ピペット容器(12)内に液体を供給するための液体ダクト(28)が形成される、中空挿入ランス(16)と、を備えた同軸ニードル(10)。
【請求項2】
前記吸入ランス(14)は、ピペット容器(12)からの液体の吸い上げのための第1開放端(18)と、前記第1開放端(18)と軸方向反対側に配置され、吸い上げられた液体の吸引除去ノズル(36)への移送のための第2開放端(20)と、を含み、前記挿入ランス(16)は、ピペット容器(12)への液体の移送のための第1開放端(22)と、前記第1開放端(22)と軸方向反対側の、挿入ノズル(34)からの液体の吸い上げのための第2開放端(24)と、を含む、請求項1記載の同軸ニードル(10)。
【請求項3】
前記吸引ランス(14)及び前記挿入ランス(16)は、共有の軸方向(26)に沿って移動させることができる、請求項1又は2に記載の同軸ニードル(10)。
【請求項4】
前記吸引ランス(14)及び前記挿入ランス(16)は、互いに独立して前記軸方向(26)に沿って移動させることができる、請求項3記載の同軸ニードル(10)。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の同軸ニードル(10)を備えたピペット装置であって、前記挿入ランス(16)の前記第2開放端(24)は、第1接続配管(38)を介して第1リザーバ(42)に接続されており、前記吸引ランス(14)の前記第2開放端(20)は、第2接続配管(60)を介して第2リザーバ(62)に接続されている、ピペット装置。
【請求項6】
前記挿入ランス(16)は、第1駆動ユニット(84)に接続されており、前記吸引ランス(14)は、第2駆動ユニット(86)に接続されている、請求項5記載のピペット装置。
【請求項7】
前記第1駆動ユニット(84)及び/又は第2駆動ユニット(86)は、空気圧駆動ユニットである、請求項6記載のピペット装置。
【請求項8】
前記第1駆動ユニット(84)は、第1圧力ピストン(88)と共に、第1接続要素(90)及び第1締結要素(92)を含み、前記第1締結要素(92)は、前記挿入ランス(16)に接続でき、且つ、前記第1接続要素(90)を介して前記第1圧力ピストン(88)に接続でき、さらに、前記第2駆動ユニット(86)は、第2圧力ピストン(94)と共に、第2接続要素(96)及び第2締結要素(98)を含み、前記第2締結要素(98)は、前記吸引ランス(14)に接続され、且つ、前記第2接続要素(96)を介して前記第2圧力ピストン(94)に接続することができる、請求項7記載のピペット装置。
【請求項9】
前記第1締結要素(92)は、スプリング(120)を介して前記第2締結要素(98)に接続されており、且つ、駆動ピン(130)を介して接続可能である、請求項8記載のピペット装置。
【請求項10】
前記同軸ニードル(10)の軸方向(26)に垂直な方向に移動させることができるピペットユニット(126)を備え、前記ピペットユニット(126)は、前記第1駆動ユニット(84)及び前記第2駆動ユニット(86)と共に前記同軸ニードル(10)を含み、前記軸方向(26)に沿った前記ピペットユニット(126)の設計高さは4cmを超えない、請求項6乃至9のいずれか一項に記載のピペット装置。
【請求項11】
ピペット容器(12)内に液体を供給するためのピペットと、
前記ピペットを移動させるための駆動ユニット(84)と、
前記駆動ユニット(84)は、空気圧駆動ユニットであり、且つ、第3圧力配管(100)を介して第1圧力源(48)に接続されている、ピペット装置。
【請求項12】
請求項5乃至11のいずれか一項に記載のピペット装置を備えた顕微鏡。
【請求項13】
ピペット操作のための方法において、
中空吸引ランス(14)及び前記吸引ランス(14)を少なくとも部分的に包囲する中空挿入ランス(16)を持つ同軸ニードル(10)をピペット容器(12)の上に配置する工程と、
前記吸引ランス(14)及び前記挿入ランス(16)をピペット容器(12)内に一緒に移動させる工程と、
液体のための第1リザーバ(42)から、前記吸引ランス(14)の外壁と前記挿入ランス(16)の内壁との間に配置された液体ダクト(28)に液体を供給する工程と、
前記液体ダクト(28)から前記ピペット容器(12)内に液体を供給する工程と、を備えた方法。
【請求項14】
前記吸引ランス(14)の第2開放端(20)を第1負圧源(66,66’)に接続する工程と、
吸引によって余分な液体(122)を前記液体ダクト(28)から前記吸引ランス(14)の内部を通って液体のための第2リザーバ(62)内に除去する工程と、を更に備えた請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記吸引ランス(14)の第1開放端(18)が前記ピペット容器(12)内の液体の容積(124)内に浸漬されるまで、前記吸引ランス(14)及び前記挿入ランス(16)の共通の軸方向(26)に沿って前記吸引ランス(14)を移動させる工程と、
前記吸引ランス(14)の第2開放端(20)を第2負圧源に接続する工程と、
吸引によって液体の前記容積(124)の少なくとも一部を前記ピペット容器(12)から前記吸引ランス(14)の内部を通って液体のための第3リザーバ内に除去する工程と、を更に備えた請求項13又は14に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−511164(P2012−511164A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538899(P2011−538899)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008637
【国際公開番号】WO2010/063474
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(301076083)
【Fターム(参考)】