説明

同軸CVケーブル用終端接続箱及びその支持構造

【課題】支持碍子を使用することなく、外部導体を引き出す同軸CVケーブル用終端接続箱の碍管を架台上に安定して支持できるようにする。
【解決手段】上端に同軸CVケーブル11の主導体13が接続された導体引出棒33を有する碍管27と、同軸CVケーブルの外被23に固定されて接地電位にある筒状のケーブル保護金具39と、碍管27とケーブル保護金具39の間を連結する筒状組立体43とを備える。筒状組立体43は、碍管の下部金具31に連結された上部絶縁筒45と、ケーブル保護金具39の上端に連結された下部絶縁筒47と、上部絶縁筒45と下部絶縁筒47の間を連結する中間金属筒49とからなり、中間金属筒49の一部に、同軸CVケーブルの外部導体17が接続された外部導体引出端子53を設ける。碍管の下部金具31と外部導体引出端子53が上部絶縁筒45によって絶縁されるため、碍管の下部金具31を架台に直接固定でき、安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル)用の終端接続箱と、その支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同軸CVケーブルは、中心に銅撚線からなる主導体を有し、その外側に架橋ポリエチレンからなる主絶縁体を介して外部導体を設け、その外側にポリエチレン等からなる外部絶縁体を介して鉛被を設け、その外側にポリエチレン等からなる防食層を設けた構造となっている(特許文献1参照)。外部導体は、多数の銅素線を同心撚りすることにより構成されている。外部導体は帰路電流を流す帰路導体となる。
【0003】
同軸CVケーブル用の終端接続箱は、上端に同軸CVケーブルの主導体が接続された導体引出棒を有する碍管を備えており、この碍管の下に同軸CVケーブルの外部導体を接続箱外に引き出す外部導体引出端子を設けた構造となっている。従来のこの種の終端接続箱では、特許文献2に示されるように、外部導体引出端子が碍管の下部金具に取り付けられているため、碍管の下部金具が同軸CVケーブルの外部導体と同電位になり、碍管の下部金具を架台(接地電位)に直接固定することができない。
【0004】
そこで従来は、特許文献2のように絶縁筒の下部を架台上に固定する構造、あるいは特許文献3のように架台上に複数本の支持碍子を立て、架台と電気的に絶縁するため支持碍子上に碍管の下部金具を固定する構造が採用されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−120836号公報
【特許文献2】特開平8−126181号公報
【特許文献3】特開2000−261948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2のように絶縁筒の下部を架台上に固定する構造では、碍管は上部に主導体の電圧がかかり、かつ直下(絶縁筒の上部)の金具に外部導体の電圧が生じるため、特に、送電電圧が高くなった場合に、碍管が負う電気的な負担が大きくなってしまう。また、碍管、外部導体引出し部、絶縁筒が架台上に構成されるので、背が高くなる。さらに、絶縁筒は、碍管と外部導体引出し部の重さに耐えるものが必要である。このように絶縁筒を配することは、高電圧になり碍管が大きくなる場合にコストアップになる。
【0007】
一方、架台上に複数本の支持碍子を立て、この支持碍子上に碍管の下部金具を固定する構造では、送電電圧がさらに高くなり、碍管のサイズが大きくなると、碍管を安定して支持することは困難である。例えば、屋外(大気中)に設置される終端接続箱(以下、気中終端接続箱という)では、交流30kV級同軸CVケーブルに用いるものの碍管の高さは1.3m位であり、この程度であれば、碍管を4本の支持碍子で安定して支持することは可能である。しかし、直流海底ケーブルシステムとして現在実用化が検討されている直流250kV級同軸CVケーブルの気中終端接続箱では、碍管の高さが5.4mにもなり、このような大型の碍管を、架台上に立てた支持碍子で支持するとなると、きわめて強固で大型の支持碍子が必要となり、汎用の支持碍子では対応できないため、大幅なコストアップを招く。また、大型の碍管を支持する支持碍子には、付属品や取付品等を含む碍管自身の重さと、強風や地震などによる強大な曲げ応力、圧縮・引張応力(以下、これらを負荷という)がかかるため、支持碍子が破損するおそれもある。また、直流250kV級のような高い電圧階級では、電気的な絶縁を保ち、かつ前述の負荷に耐え得る適当な汎用の支持碍子が現状では入手できない。
【0008】
本発明の目的は、支持碍子を使用することなく、大型の碍管を架台上に安定して支持し、架台に電圧が印加されない構造を有する同軸CVケーブル用終端接続箱と、その支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る同軸CVケーブル用終端接続箱は、上端に同軸CVケーブルの主導体が接続された導体引出棒を有する碍管と、同軸CVケーブルの外被に固定されて接地電位にある筒状のケーブル保護金具と、前記碍管とケーブル保護金具の間を連結する筒状組立体とを備え、
前記筒状組立体は、前記碍管の下部金具に連結された上部絶縁筒と、前記ケーブル保護金具の上端に連結された下部絶縁筒と、前記上部絶縁筒と下部絶縁筒の間を連結する中間金属筒とからなり、前記中間金属筒の一部に、同軸CVケーブルの外部導体が接続された外部導体引出端子が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る同軸CVケーブル用終端接続箱の支持構造は、上記の同軸CVケーブル用終端接続箱と、この終端接続箱を支持する接地電位にある架台とを備え、前記終端接続箱は、碍管の下部金具より下の部分を前記架台内に位置させて碍管の下部金具を前記架台に固定することにより、架台に支持されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る同軸CVケーブル用終端接続箱の支持構造において、前記終端接続箱の外部導体引出端子には、前記架台の外に引き出される絶縁電線が接続され、前記架台には、前記絶縁電線との間に絶縁に必要な離隔距離を確保する開口部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、同軸CVケーブル用終端接続箱の碍管の下部金具と外部導体引出端子とが上部絶縁筒により絶縁されるため、碍管の下部金具を接地電位にある架台に直接固定することが可能となり、碍管を架台上に強固に安定して支持できると共に、碍管を支持する支持碍子が不要となるため、コスト低減を図ることができる。さらに、上下の絶縁筒を同様の構造にすることによってもコスト低減可能である。
また、上下の絶縁筒は、対象とする同軸CVケーブル用終端接続箱に関し、電気的又は/及び機械的な設計により適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明に係る同軸CVケーブル用終端接続箱の一実施形態を示す。図において、11は端部を段剥ぎ等の所定の処理を施された同軸CVケーブル、13は同軸CVケーブル11の主導体、15は主絶縁体、17は主導体と同軸状に設けられた外部導体(帰路導体)、19は外部絶縁体(帰路絶縁体)、21は鉛被、23は防食層(外被)である。主絶縁体15の内外周面及び外部絶縁体19の内外周面にはそれぞれ内部半導電層及び外部半導電層が設けられているが、簡略化のため図示を省略してある。なお、同軸CVケーブルの構造はこれに限定されない。例えば、電気的な設計等により、主導体の大きさや外部導体の大きさ、本数、配置、あるいは半導電層の設け方等を、任意にできるものである。
【0014】
25は同軸CVケーブル11の段剥ぎ等の所定の処理を施した処理部を収容した終端接続箱、27は終端接続箱25の主絶縁体を構成する磁器製碍管、29は碍管27の上部金具、31は碍管27の下部金具である。碍管27の上端には、同軸CVケーブル11の主導体13に接続された導体引出棒33が、上部金具29を垂直に貫通するように設けられている。碍管27の下部金具31は、碍管27の下端に結合された大径筒部31aと、この大径筒部31aの底板部から周囲に張り出すように設けられたフランジ部31bと、前記底板部から下方に突出するように設けられた小径筒部31cとから構成されている。碍管27内のケーブル主絶縁体15の外周にはコンデンサコーン35が装着されている。37はコンデンサコーン35の支持部材である。
【0015】
一方、同軸CVケーブル11の防食層23には筒状のケーブル保護金具39が固定されている。41はテープ巻きによる防水処理部である。ケーブル保護金具39はケーブルの鉛被21と電気的に接続されており、接地電位にある。このケーブル保護金具39と前記碍管27の下部金具31の間は筒状組立体43によって連結されている。
【0016】
筒状組立体43は、前記小径筒部31cの下端に連結された上部絶縁筒45と、前記ケーブル保護金具39の上端に連結された下部絶縁筒47と、これら上部絶縁筒45と下部絶縁筒47の間を連結する中間金属筒49とから構成され、さらに中間金属筒49は、上から順に第一の金属筒49a、第二の金属筒49b、第三の金属筒49cに分割されている。なお、上部絶縁筒45又は/及び下部絶縁筒47は、特許文献2にあるように、外周にひだ状の突起を設けた構造のものであってもよい。
【0017】
第一の金属筒49aの下端フランジ部と第二の金属筒49bの上端フランジ部との間には、油止め用シール金具51のフランジ部が挟持されている。また、第二の金属筒49bの下端フランジ部と第三の金属筒49cの上端フランジ部との間には、外部導体引出端子53と一体に形成された環状板部55が挟持されている。シール金具51の上の内部空間には絶縁油57が充填され、シール金具51より下の内部空間には絶縁コンパウンド59が充填されている。
【0018】
外部導体引出端子53は、図2に示すように、環状板部55の外周の一部から径方向に突出するように形成されている。環状板部55はその内周側が第二の金属筒49b及び第三の金属筒49cの内周面より内側に張り出す大きさに形成されており、その内周側張り出し部分には多数のネジ穴61が形成されている。また環状板部55の外周部には、当該環状板部55を第二の金属筒49bの下端フランジ部と第三の金属筒49cの上端フランジ部の間に固定するためのボルト穴63が形成され、さらに外部導体引出端子53には、後述する引出用絶縁電線の端子を接続するためのボルト穴65が形成されている。外部導体引出端子53とケーブルの外部導体17とは、前記ネジ穴61に外部導体17の素線の端部に取り付けられた端子(図示省略)をネジ留めすることにより、電気的に接続される。なお、外部導体引出端子53は、環状板部55に複数設けてもよく、例えば、角度90度ずつに配置すれば、4方向からの取り出しが可能となる。また、2箇所以上の外部導体引出端子と接続してもよい。また、外部導体引出端子53は、環状板部55と一体でなく、ボルト締めや溶接等により取り付けるようにしてもよい。
【0019】
この終端接続箱25は、上記の構成から明らかなように、碍管の下部金具31と外部導体引出端子53とが上部絶縁筒45によって絶縁されているため、碍管の下部金具31を直接、接地電位にある架台に固定することが可能である。
【0020】
図3に上記終端接続箱25の支持構造を示す。終端接続箱25を支持する架台67は、鉄鋼材等で組み立てられたやぐらの形態である。架台67はコンクリート基礎69上に設置され、接地電位にある。終端接続箱25は、碍管27の下部金具31より下の部分を架台67内に位置させて、碍管の下部金具31を架台67の天井部71に台座73を介して固定することにより、架台67上に垂直に支持されている。なお、碍管27は台座73を省略して架台67に直接固定してもよい。さらに、天井部71の任意の位置に、台座73のような碍管27を固定する構造を設けてもよい。
また、架台67は直接地面に設置してもよい。また、架台67の下方に位置する同軸CVケーブル11の所定の部分を、地面を掘り下げて挿通するようにしてもよく、さらに、管路や側溝に挿通する又は/及び埋設してもよい。
【0021】
終端接続箱25の外部導体引出端子53には、絶縁電線75の端部に取り付けられた端子77が接続されている。絶縁電線75は、架台67に設けられた開口部79を通して架台67の外に引き出される。開口部79の周囲の枠体81は、絶縁電線75との間に絶縁に必要な離隔距離を確保する大きさに形成されている。
【0022】
なお、開口部79は、三角形を含む任意の多角形や円形状であっても良い。また、強風等により絶縁電線75が揺れないように、絶縁に必要な離隔距離を確保する位置に、碍子等の絶縁体により把持、又は/及び固定してもよい。また、絶縁電線75は、棒状、板状、円筒(含む、パイプ)状であっても良い。さらに、枠体81を絶縁電線75の水平角と垂直に挿通するように配置することにより、絶縁電線75が枠体81の中心点を挿通すればよいので、枠体81との絶縁に必要な離隔距離を容易に確保できる。また、枠体81の任意の位置、あるいは全体に絶縁カバーを付ける、または、枠体81自身を絶縁材料から成るものとすることにより、離隔距離を容易に確保できるようにしてよい。
【0023】
図1や図3では、筒状組立体43は略垂直状に配置されるが、上部絶縁筒45と下部絶縁筒47との間で屈曲させても良い。また、上部絶縁筒45と導体引出端子53との間で屈曲させても良い。このことにより、設置スペースや同軸ケーブルの設置等を容易にすることが可能となる。さらに、図3では絶縁電線75が地面と略水平に示したが、筒状組立体43を屈曲させることにより、絶縁電線75が傾斜をもって引き出せるので、傾斜を持つ枠体81と略垂直に挿通可能とし、絶縁電線75が枠体81の中心点を挿通すればよいので、枠体81との絶縁に必要な離隔距離を容易に確保できる。
なお、筒状組立体43全体を傾斜させてもよく、さらには、例えば、上部絶縁筒45の上方から屈曲させ筒状組立体43を略水平に配するようにしてもよい。
【0024】
また、図3では、絶縁電線75が同軸CVケーブル用終端接続箱から接続される周りに配置される機器等が省略されるが、例えば、絶縁電線75が直接機器に接続される。中継する碍子に固定して機器に接続される。機器に接続されたケーブル終端接続箱へ接続される等、その機器や構成は自由に設計される。
【0025】
また、図3の碍管27を傾斜させるような架台67としてよい。あるいは、図3の天地を逆さまにした、例えば、門型の鉄鋼構造体から碍管27を吊り下げる格好で固定し、同軸CVケーブルが上方から配される構成としてよい。また、枠体81も門型の鉄鋼構造体の任意の位置に設けるようにしてよい。
【0026】
さらに、図3の同軸CVケーブル用終端接続箱とその支持構造とが不活性ガスや絶縁性を有するガス(例えば、SF)等で充満した構造物内に配置される(「ガス気中」ともいう)ものでは、碍管27の下部もしくは架台67が接地電位になるように構造物や機器等に接続又は/及び固定される場合、本発明に係る同軸CVケーブル用終端接続箱と、その支持構造とを適用できる。例えば、図3のような構成で架台67を構造物に固定すれば、同軸CVケーブルは構造物の下部から挿通される(当然に、必要箇所に気密処理が施される)。また、このような任意のガスで充満した構造物内に配置される様態においても、前述した種々の実施様態を適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る同軸CVケーブル用終端接続箱の一実施形態を示す半分切開正面図。
【図2】図1の終端接続箱に使用される外部導体引出端子の平面図。
【図3】図1の終端接続箱の支持構造を示す、(A)は正面図、(B)は要部の側面図。
【符号の説明】
【0028】
11:同軸CVケーブル
13:主導体
15:主絶縁体
17:外部導体
19:外部絶縁体
21:鉛被
23:防食層
25:終端接続箱
27:碍管
29:上部金具
31:下部金具
33:導体引出棒
35:コンデンサコーン
39:ケーブル保護金具
43:筒状組立体
45:上部絶縁筒
47:下部絶縁筒
49:中間金属筒
51:シール金具
53:外部導体引出端子
67:架台
75:絶縁電線
77:端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に同軸CVケーブルの主導体が接続された導体引出棒を有する碍管と、同軸CVケーブルの外被に固定されて接地電位にある筒状のケーブル保護金具と、前記碍管とケーブル保護金具の間を連結する筒状組立体とを備え、
前記筒状組立体は、前記碍管の下部金具に連結された上部絶縁筒と、前記ケーブル保護金具の上端に連結された下部絶縁筒と、前記上部絶縁筒と下部絶縁筒の間を連結する中間金属筒とからなり、前記中間金属筒の一部に、同軸CVケーブルの外部導体が接続された外部導体引出端子が設けられていることを特徴とする同軸CVケーブル用終端接続箱。
【請求項2】
請求項1に記載の同軸CVケーブル用終端接続箱と、この終端接続箱を支持する接地電位にある架台とを備え、前記終端接続箱は、碍管の下部金具より下の部分を前記架台内に位置させて碍管の下部金具を前記架台に固定することにより、架台に支持されていることを特徴とする同軸CVケーブル用終端接続箱の支持構造。
【請求項3】
前記終端接続箱の外部導体引出端子には、前記架台の外に引き出される絶縁電線が接続され、前記架台には、前記絶縁電線との間に絶縁に必要な離隔距離を確保する開口部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の同軸CVケーブル用終端接続箱の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−312303(P2008−312303A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155962(P2007−155962)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】