説明

吐出検査装置及び吐出検査方法

【課題】異常ノズルの検査において、検査の誤判定についても検出すること。
【解決手段】液体を吐出する複数のノズルを有するノズル列と、前記ノズルと所定間隔を
あけて対向する検出用電極と、前記検出用電極を所定電位にし、前記ノズルからの液体の
吐出によって生じた前記検出用電極の電位変化を検出し、前記検出用電極の電位変化量が
所定値以下の異常ノズルを特定する特定部と、前記特定部が判定した異常ノズル数を計数
する計数部と、前記異常ノズル数が所定数よりも多いとき、前記異常ノズルの特定に誤判
定を含むと判定する判定部と、を備える吐出検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出検査装置及び吐出検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出して媒体上に画像を形成するインクジェット方式のプリンターが利用され
ている。このようなプリンターは、ノズルからインクを吐出することによって画像を形成
するが、インクが正常にノズルから吐出されない場合、所望の画像が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−53949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、インクが正常にノズルから吐出されないことを防止するために、予め、異
常ノズルがあるか否かを判定ことがある。しかしながら、ノイズなどの影響により、ノズ
ルから正常に液体が吐出されているにもかかわらず、ノズルから正常に液体が吐出されな
いと誤判定される場合がある。よって、異常ノズルの検査において、検査の誤判定につい
ても検出できるようにしておくことが望ましい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、異常ノズルの検査において、
検査の誤判定についても検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、
液体を吐出する複数のノズルを有するノズル列と、
前記ノズルと所定間隔をあけて対向する検出用電極と、
前記検出用電極を所定電位にし、前記ノズルからの液体の吐出によって生じた前記検出
用電極の電位変化を検出し、前記検出用電極の電位変化量が所定値以下の異常ノズルを特
定する特定部と、
前記特定部が判定した異常ノズル数を計数する計数部と、
前記異常ノズル数が所定数よりも多いとき、前記異常ノズルの特定に誤判定を含むと判
定する判定部と、
を備える吐出検査装置である。
【0006】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1Aは、プリンター1とコンピューターCPとを有する印刷システムを説明するブロック図であり、図1Bは、プリンター1の斜視図である。
【図2】図2Aは、ヘッド31の断面図であり、図2Bは、ノズルプレート33bに設けられたノズル(Nz)の配列を示す図である。
【図3】図3A〜図3Cは、回復動作時のヘッド31とキャップ機構60との位置関係を示す図である。
【図4】キャップ61を上方から見た図である。
【図5】図5Aは、ドット抜け検出部50を説明する図であり、図5Bは、検出制御部57を説明するブロック図である。
【図6】図6Aは、吐出検査時に用いる駆動信号COMの一例を示す図であり、図6Bは、駆動信号COMによってノズルからインクが吐出された場合に増幅器55から出力される電圧信号SGを説明する図であり、図6Cは、複数のノズル(#1〜#10)の吐出検査結果である電圧信号SGを示す図である。
【図7】吐出検査の誤判定検出を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0009】
液体を吐出する複数のノズルを有するノズル列と、
前記ノズルと所定間隔をあけて対向する検出用電極と、
前記検出用電極を所定電位にし、前記ノズルからの液体の吐出によって生じた前記検出
用電極の電位変化を検出し、前記検出用電極の電位変化量が所定値以下の異常ノズルを特
定する特定部と、
前記特定部が判定した異常ノズル数を計数する計数部と、
前記異常ノズル数が所定数よりも多いとき、前記異常ノズルの特定に誤判定を含むと判
定する判定部と、
を備える吐出検査装置。
このようにすることで、異常ノズルの検査において、検査の誤判定についても検出する
ことができる。
【0010】
かかる吐出検査装置であって、前記判定部は、前記異常ノズル数が所定数よりも多いこ
とを複数回検出したとき、前記前記特定部を異常と判断することが望ましい。また、前記
判定部は、前記異常ノズルの特定に誤判定を含まなかったと判定した場合において、前記
特定部が特定した異常ノズルから前記液体を吐出させる回復動作を行わせることが望まし
い。また、前記所定数は、前記ノズル列に含まれるノズル数より少ないことが望ましい。
また、前記判定部は、前記異常ノズルの特定に誤判定を含むと判定した場合においてこと
が望ましい。
【0011】
また、前記検出用電極の電位変化量の検出は、静電容量変化に基づいて行われることが
望ましい。また、前記静電容量変化は、前記ノズルと前記検出用電極との間に生ずる静電
容量の変化であることが望ましい。
このようにすることで、異常ノズルの検査において、検査の誤判定についても検出する
ことができる。
【0012】
液体を吐出する複数のノズルを有するノズル列と、検出用電極と、を所定間隔あけて対
向させることと、
前記検出用電極を所定電位にすることと、
前記ノズルからの液体の吐出によって生じた前記検出用電極の電位変化を検出し、前記
検出用電極の電位変化量が所定値以下の異常ノズルを特定することと、
前記異常ノズル数を計数することと、
前記異常ノズル数が所定数よりも多いとき、前記異常ノズルの特定に誤判定を含むと判
定することと、
を含む吐出検査方法。
このようにすることで、異常ノズルの検査において、検査の誤判定についても検出する
ことができる。
【0013】
===インクジェットプリンターについて===
液体吐出装置として、インクジェットプリンター(以下、プリンター1)を例に挙げて
実施形態を説明する。
【0014】
図1Aは、プリンター1とコンピューターCPとを有する印刷システムを説明するブロ
ック図であり、図1Bは、プリンター1の斜視図である。プリンター1は、用紙、布、フ
ィルム等の媒体に向けて、液体の一種であるインクを吐出する。コンピューターCPは、
プリンター1と通信可能に接続されている。プリンター1に画像を印刷させるため、コン
ピューターCPは、その画像に応じた印刷データをプリンター1に送信する。プリンター
1は、用紙搬送機構10、キャリッジ移動機構20、ヘッドユニット30、駆動信号生成
回路40、ドット抜け検出部50、キャップ機構60、検出器群70、及び、コントロー
ラー80を有する。
【0015】
用紙搬送機構10は、用紙を搬送方向に搬送させる。キャリッジ移動機構20は、ヘッ
ドユニット30が取り付けられたキャリッジ21を移動方向(搬送方向と交差する方向)
に移動させる。
ヘッドユニット30はヘッド31とヘッド制御部HCとを有する。ヘッド31はインク
を用紙に向けて吐出させる。ヘッド制御部HCは、プリンター1のコントローラー80か
らのヘッド制御信号に基づき、ヘッド31を制御する。
【0016】
図2Aは、ヘッド31の断面図である。ヘッド31は、ケース32と、流路ユニット3
3と、ピエゾ素子ユニット34とを有する。ケース32は、ピエゾ素子PZTなどを収容
して固定するための部材であり、例えばエポキシ樹脂等の非導電性の樹脂材によって作製
される。
【0017】
流路ユニット33は、流路形成基板33aと、ノズルプレート33bと、振動板33c
とを有する。流路形成基板33aにおける一方の表面にはノズルプレート33bが接合さ
れ、他方の表面には振動板33cが接合されている。流路形成基板33aには、圧力室3
31、インク供給路332、及び、共通インク室333となる空部や溝が形成されている
。この流路形成基板33aは、例えばシリコン基板によって作製されている。ノズルプレ
ート33bには、複数のノズルNzからなるノズル群が設けられている。このノズルプレ
ート33bは、導電性を有する板状の部材、例えば薄手の金属板によって作製されている
。また、ノズルプレート33bは、グランド線に接続されてグランド電位になっている。
振動板33cにおける各圧力室331に対応する部分にはダイヤフラム部334が設けら
れている。このダイヤフラム部334はピエゾ素子PZTによって変形し、圧力室331
の容積を変化させる。なお、振動板33cや接着層等が介在していることで、ピエゾ素子
PZTとノズルプレート33bとは電気的に絶縁された状態になっている。
【0018】
ピエゾ素子ユニット34は、ピエゾ素子群341と、固定板342とを有する。ピエゾ
素子群341は櫛歯状をしている。そして、櫛歯の1つ1つがピエゾ素子PZTである。
各ピエゾ素子PZTの先端面は、対応するダイヤフラム部334が有する島部335に接
着される。固定板342は、ピエゾ素子群341を支持するとともに、ケース32に対す
る取り付け部となる。ピエゾ素子PZTは、電気機械変換素子の一種であり、駆動信号C
OMが印加されると長手方向に伸縮し、圧力室331内の液体に圧力変化を与える。圧力
室331内のインクには、圧力室331の容積の変化に起因して圧力変化が生じる。この
圧力変化を利用して、ノズルNzからインク滴を吐出させることができる。
【0019】
図2Bは、ノズルプレート33bに設けられたノズル(Nz)の配列を示す図である。
ノズルプレートには用紙の搬送方向に沿って180dpiの間隔で180個のノズル(#
1〜#180)が並んだノズル列が複数設けられている。各ノズル列はそれぞれ異なる色
のインクを吐出し、このノズルプレート33bには4つのノズル列が設けられている。具
体的には、ブラックインクノズル列K、シアンインクノズル列C、マゼンタインクノズル
列M、イエローインクノズル列Yである。
【0020】
駆動信号生成回路40は、駆動信号COMを生成する。駆動信号COMがピエゾ素子P
ZTに印加されると、ピエゾ素子は伸縮し、各ノズルNzに対応する圧力室331の容積
が変化する。そのため、駆動信号COMは、印刷時やドット抜け検査時(後述)、ドット
抜けするノズルNzの回復動作であるフラッシング時などに、ヘッド31に印加される。
【0021】
ドット抜け検出部50は、各ノズルNzからインクが吐出されているか否かを検出する
。キャップ機構60は、ノズルNzからのインク溶媒の蒸発を抑制したり、ノズルNzの
吐出能力を回復させるため、各ノズルNzからインクを吸引する吸引動作を行ったりする
。検出器群70はプリンター1の状況を監視する複数の検出器によって構成される。これ
らの検出器による検出結果は、コントローラー80に出力される。
【0022】
コントローラー80はプリンター1における全体的な制御を行い、インターフェース部
80aと、CPU80bと、メモリー80cとを有する。インターフェース部80aは、
コンピューターCPとの間でデータの受け渡しを行う。メモリー80cは、コンピュータ
ープログラムを格納する領域や作業領域等を確保する。CPU80bは、メモリー80c
に記憶されているコンピュータープログラムに従い、各制御対象部(用紙搬送機構10、
キャリッジ移動機構20、ヘッドユニット30、駆動信号生成回路40、ドット抜け検出
部50、キャップ機構60、検出器群70)を制御する。
【0023】
このようなプリンター1において、キャリッジの移動方向に沿って移動するヘッド31
からインクを断続的に吐出し、用紙上にドットを形成するドット形成処理と、用紙を搬送
方向に搬送する搬送処理と、が繰り返される。その結果、先のドット形成処理により形成
されたドットの位置とは異なる位置にドットが形成され、媒体上に2次元の画像が印刷さ
れる。
【0024】
===吐出検査と回復動作について===
長時間ノズルからインク(液体)が吐出されなかったり、ノズルに紙粉などの異物が付
着したりすると、ノズルが目詰まりすることがある。ノズルが目詰まりすると、ノズルか
らインクが吐出されるべき時にインクが吐出されず、ドットが形成されるべき所にドット
が形成されない現象(ドット抜け)が発生する。「ドット抜け」が発生すると画質が劣化
してしまう。そこで、本実施形態では、ドット抜け検出部50により「吐出検査」を実施
した結果、ドット抜けノズルが検出された場合には、「回復動作」を行うことによって、
ドット抜けノズルから正常にインクが吐出されるようにする。
【0025】
なお、ドット抜け検査は、プリンター1の電源がオンされた直後や、プリンター1がコ
ンピューターCPから印刷データを受信して印刷を開始する時に、実施すると良い。また
、長時間の印刷中に所定時間おきにドット抜け検査を行っても良い。以下、ドット抜けノ
ズルの回復動作について説明した後に、吐出検査について説明する。
【0026】
<回復動作について>
図3Aから図3Cは、回復動作時のヘッド31とキャップ機構60との位置関係を示す
図である。まず、キャップ機構60について説明する。キャップ機構60は、キャップ6
1と、キャップ61を支持するとともに斜め上下方向に移動可能なスライダ部材62とを
有する。キャップ61は、長方形の底部(不図示)と底部の周縁から起立する側壁部61
1とを有し、ノズルプレート33bと対向する上面が開放された薄手の箱状をしている。
底部と側壁部611に囲まれた空間には、フェルトやスポンジ等の多孔質部材で作製され
たシート状の保湿部材が配置されている。
【0027】
図3Aに示すように、キャリッジ21がホームポジション(ここでは移動方向の右側)
から外れた状態では、キャップ61はノズルプレート33bの表面(以下、ノズル面とも
いう)よりも十分に低い位置に位置付けられる。そして、図3Bに示すように、キャリッ
ジ21がホームポジション側へ移動すると、スライダ部材62に設けられた当接部63に
キャリッジ21が当接し、当接部63はキャリッジ21と共にホームポジション側へ移動
する。当接部63がホームポジション側へ移動する際に案内用の長孔64に沿ってスライ
ダ部材62が上昇し、それに伴ってキャップ61も上昇する。最終的には、図3Cに示す
ように、キャリッジ21がホームポジションに位置すると、キャップ61の側壁部611
(多孔質部材)とノズルプレート33bが密着する。そのため、電源オフ時や長期休止時
にはキャリッジ21をホームポジションに位置させることで、ノズルからのインク溶媒の
蒸発を抑制できる。
【0028】
次に回復動作について説明する。ドット抜けノズルの回復動作の1つとして「フラッシ
ング動作」がある。フラッシング動作は、図3Bに示すように、ノズル面とキャップ61
の開口縁の間に若干の隙間が開いた状態で、各ノズルから強制的に連続してインク滴を吐
出させて、ノズルの目詰まりを解消する動作である。
【0029】
また、キャップ61の底面と側壁部611との空間には廃液チューブ65が接続されて
おり、廃液チューブ65の途中には吸引ポンプ(不図示)が接続されている。他の回復動
作の1つとして、図3Cに示すようにキャップ61の開口縁がノズル面に当接した状態で
、「ポンプ吸引」が行われる。キャップ61の側壁部611とノズル面が密着した状態で
吸引ポンプを動作させると、キャップ61の空間を負圧にできる。これにより、ヘッド3
1内のインクを、増粘したインクや紙粉と共に吸引することができ、ドット抜けノズルを
回復することができる。
【0030】
その他、キャップ機構60を図3Bに示す位置に維持しつつ、キャリッジ21を移動方
向に移動させることによって、キャップ61の側壁部611よりも上方に突出したワイパ
ー66により、ノズル面に付着したインク滴や異物を除去する。その結果、異物により目
詰まりしていたノズルから正常にインクを吐出させることができる。
【0031】
<ドット抜け検出部50について>
図4は、キャップ61を上方から見た図であり、図5Aは、ドット抜け検出部50を説
明する図であり、図5Bは、検出制御部57を説明するブロック図である。ドット抜け検
出部50は、各ノズルから実際にインクを吐出させ、正常にインクが吐出されたか否かに
よって、ドット抜けするノズルを検出する。まず、ドット抜け検出部50の構成について
説明する。図5Aに示すように、ドット抜け検出部50は、高圧電源ユニット51、第1
制限抵抗52、第2制限抵抗53、検出用コンデンサー54、増幅器55、平滑コンデン
サー56、及び、検出制御部57を有する。
【0032】
ドット抜け検出時には図3B及び図5Aに示すようにノズル面とキャップ61が所定の
間隔dを空けて対向する。キャップ61の側壁部611に囲われた空間内には、図4に示
すように、保湿部材612と、ワイヤー状の検出用電極613が配設されている。この検
出用電極613は、ドット抜け検出動作時には600V〜1kV程度の高電位になる。図
4に例示した検出用電極613は、二重の矩形状に設けられた枠部と、枠部の対角同士を
結ぶ対角線部、枠部の各辺における中点同士を結ぶ十字部とを有している。この構造によ
って、広い範囲に亘って一様に帯電されるようにしている。また、本実施形態のインク溶
媒は導電性を有する液体(例えば水)とし、保湿部材612が湿った状態で検出用電極6
13を高電位にすると、保湿部材612の表面も同じ電位になる。この点でも、ノズルか
らインクが吐出される領域は広い範囲に亘って一様に帯電されるようになる。
【0033】
高圧電源ユニット51は、キャップ61内の検出用電極613を所定電位にする電源の
一種である。本実施形態の高圧電源ユニット51は、600V〜1kV程度の直流電源に
よって構成され、検出制御部57からの制御信号によって動作が制御される。
【0034】
第1制限抵抗52及び第2制限抵抗53は、高圧電源ユニット51の出力端子と検出用
電極613との間に配置され、高圧電源ユニット51と検出用電極613との間で流れる
電流を制限する。本実施形態では、第1制限抵抗52と第2制限抵抗53は同じ抵抗値(
例えば1.6MΩ)とし、第1制限抵抗52と第2制限抵抗53は直列に接続する。図示
するように、第1制限抵抗52の一端を高圧電源ユニット51の出力端子に接続し、他端
を第2制限抵抗53の一端と接続し、第2制限抵抗53の他端を検出用電極613に接続
する。
【0035】
検出用コンデンサー54は、検出用電極613の電位変化成分を抽出するための素子で
あり、一方の導体が検出用電極613に接続され、他方の導体が増幅器55に接続されて
いる。この間に検出用コンデンサー54を介在させることで、検出用電極613のバイア
ス成分(直流成分)を除くことができ、信号の扱いを容易にすることができる。本実施形
態では、検出用コンデンサー54を容量が4700pFとする。
【0036】
増幅器55は、検出用コンデンサー54の他端に現れる信号(電位変化)を増幅して出
力する。本実施形態の増幅器55は増幅率が4000倍のものによって構成されている。
これにより、電位の変化成分を2〜3V程度の変化幅を持った電圧信号として取得できる
。これらの検出用コンデンサー54及び増幅器55の組は検出部の一種に相当し、インク
滴の吐出によって生じた検出用電極613に生じた電気的な変化を検出する。
【0037】
平滑コンデンサー56は、電位の急激な変化を抑制する。本実施形態の平滑コンデンサ
ー56は一端が第1制限抵抗52と第2制限抵抗53とを接続する信号線に接続され、他
端がグランドに接続されている。そして、その容量は0.1μFである。
【0038】
検出制御部57は、ドット抜け検出部50の制御を行う部分である。図5Bに示すよう
に、この検出制御部57は、レジスタ群57a、AD変換部57b、電圧比較部57c、
及び、制御信号出力部57dを有する。レジスタ群57aは、複数のレジスタによって構
成されている。各レジスタには、ノズルNz毎の判定結果や判定用の電圧閾値などが記憶
される。AD変換部57bは、増幅器55から出力された増幅後の電圧信号(アナログ値
)をデジタル値に変換する。電圧比較部57cは、増幅後の電圧信号に基づく振幅値の大
きさを電圧閾値と比較する。制御信号出力部57dは、高圧電源ユニット51の動作を制
御するための制御信号を出力する
<吐出検査について>
このプリンター1では、ノズルプレート33bをグランドに接続してグランド電位にし
、キャップ61に配置された検出用電極613を600V〜1kV程度の高い電位にして
いる。グランド電位のノズルプレートによって、ノズルから吐出されるインク滴はグラン
ド電位になる。ノズルプレート33bと検出用電極613とを、所定間隔d(図5Aを参
照)を空けた状態で対向させて、検出対象のノズルからインク滴を吐出させる。そして、
インク滴の吐出に起因して検出用電極613側に生じた電気的な変化を検出用コンデンサ
ー54及び増幅器55を介して検出制御部57が電圧信号SGとして取得する。検出制御
部57は、電圧信号SGにおける振幅値(電位変化)に基づいて、検出対象のノズルから
インク滴が正常に吐出されたか否かを判断する。
【0039】
検出の原理は、ノズルプレート33bと検出用電極613とを所定間隔dを空けて配置
したことにより、これらの部材が恰もコンデンサーの様に振る舞うことに基づく。図5A
に示すように、グランドに接続されたノズルプレート33bに接することで、ノズルNz
から柱状に延びたインク(インク柱)もグランド電位になる。このインクの伸長が、コン
デンサーにおける静電容量を変化させる。すなわち、ノズルからインクが吐出されること
によって、グランド電位のインクと検出用電極613とがコンデンサーを構成し、静電容
量が変化する。
【0040】
そして、静電容量が小さくなると、ノズルプレート33bと検出用電極613との間で
蓄えることのできる電荷の量が減少する。このため、余剰の電荷が検出用電極613から
各制限抵抗52,53を通って高圧電源ユニット51側へ移動する。すなわち、高圧電源
ユニット51へ向けて電流が流れる。一方、静電容量が増えたり、減少した静電容量が戻
ったりすると、電荷が高圧電源ユニット51から各制限抵抗52,53を通って検出用電
極613側へ移動する。すなわち、検出用電極613へ向けて電流が流れる。このような
電流(便宜上、吐出検査用電流Ifともいう)が流れると、検出用電極613の電位が変
化する。検出用電極613の電位の変化は、検出用コンデンサー54における他方の導体
(増幅器55側の導体)の電位変化としても現れる。従って、他方の導体の電位変化を監
視することで、インク滴が吐出されたか否かを判定できる。
【0041】
図6Aは、吐出検査時に用いる駆動信号COMの一例を示す図であり、図6Bは、図6
Aの駆動信号COMによってノズルからインクが吐出された場合に増幅器55から出力さ
れる電圧信号SGを説明する図であり、図6Cは、複数のノズル(#1〜#10)の吐出
検査結果である電圧信号SGを示す図である。駆動信号COMは、繰り返し期間Tの前半
期間TAにノズルからインクを吐出するための複数の駆動波形W(例えば24個)を有し
、後半期間TBでは中間電位で一定の電位が保たれる。駆動信号生成回路40は複数の駆
動波形W(24個の駆動波形)を繰り返し期間T毎に繰り返し生成する。この繰り返し期
間Tが1つのノズルの検査に要する時間に相当する。
【0042】
まず、検査対象の中の或るノズルに対応するピエゾ素子に、繰り返し期間Tに亘って駆
動信号COMを印加する。そうすると、前半期間TAにて吐出検査対象のノズルからイン
ク滴が連続的に吐出される(例えば24ショット打たれる)。これにより、検出用電極6
13の電位が変化し、増幅器55は、その電位変化を図6Bに示す電圧信号SG(サイン
カーブ)として検出制御部57に出力する。なお、1ショット分のインク滴による電圧信
号SGの振幅が小さいため、ノズルからインク滴を連続的に吐出させることで、検査に十
分な振幅である電圧信号SGが得られるようにした。
【0043】
検出制御部57は、検査対象のノズルの検査期間(T)の電圧信号SGから最大振幅V
max(最高電圧VHと最低電圧VLの差)を算出し、最大振幅Vmaxと所定の閾値T
Hとを比較する。駆動信号COMに応じて検査対象のノズルからインクが吐出されれば、
検出用電極613の電位が変化し、電圧信号SGの最大振幅Vmaxが閾値THよりも大
きくなる。一方、目詰まり等により、検査対象のノズルからインクが吐出されなかったり
、吐出されるインク量が少なかったりすると、検出用電極613の電位が変化しなかった
り、電位変化が小さかったりするため、電圧信号SGの最大振幅Vmaxが閾値TH以下
となる。
【0044】
或るノズルに対応するピエゾ素子に駆動信号COMを印加した後は、次の検査対象ノズ
ルに対応するピエゾ素子に繰り返し期間Tに亘って駆動信号COMを印加するというよう
に、検査対象の1ノズルごとに、繰り返し期間Tに亘って、そのノズルに対応するピエゾ
素子に駆動信号COMを印加する。その結果、検出制御部57は、図6Cに示すように、
繰り返し期間Tごとに、サインカーブの電位変化が発生する電圧信号SGを取得できる。
【0045】
例えば、図6Cの結果では、ノズル#5の検査期間に対応する電圧信号SGの最大振幅
Vmaxが閾値THよりも小さいため、検出制御部57はノズル#5がドット抜けノズル
(異常ノズル)であると判断する。他のノズル(#1〜#4・#6〜#10)の各検査期
間に対応する電圧信号SGの最大振幅Vmaxは閾値TH以上であるため、検出制御部5
7は他のノズルは正常なノズルであると判断する。
【0046】
このようにして、インクを吐出することができる正常ノズルと、正常にインクを吐出す
ることができないとされた異常ノズルとを特定することができる。さらに、検出制御部5
7は、正常ノズルと異常ノズルの数をそれぞれカウントする。このように、正常のズルと
異常ノズルの数をカウントしておくことによって、後述する方法において、異常ノズルの
特定に誤判定を含むか否かについて判断がされることになる。
【0047】
図7は、吐出検査の誤判定検出を説明するフローチャートである。
まず、ノズル列におけるノズルの吐出検査が行われる(S102)。吐出検査の方法に
ついては、既に説明した通りであるので説明を省略する。このように吐出検査が行われる
ことによって、ノズル列における異常ノズルを特定することができる。そして、異常ノズ
ルの数も特定される。
【0048】
次に、異常ノズルの数が所定数よりも多いか否かについて判定される(S104)。本
実施形態において、所定数は、155である。この所定数は、このプリンター1が持つ潜
在的なノイズ数を許容するために設定される数である。
【0049】
ステップS104における判定において、異常ノズルの数が155よりも多い場合には
、エラーフラグをオンにする(S110)。ここで、エラーフラグは、ドット抜け検出部
50に異常の可能性があることを示すフラグである。
【0050】
次に、回復動作カウンタが1以上であるか否かについて判定する(S112)。回復動
作カウンタは、プリンター1の電源が投入されてから、前述の回復動作が実行される毎に
カウントアップされるカウンタである。よって、ここでは、回復動作が一度でも実行され
ているか否かについて判定されることになる。このような判定が行われるのは、一度も回
復動作が行われないままであると、ノズルの目詰まりを起こしている可能性が高いためで
ある。
【0051】
ステップS112において、回復動作カウンタが1以上ではない場合には、ステップS
108に向かう。ステップS108の動作については後述する。一方、回復動作カウンタ
が1以上である場合には、モノクロ優先モードフラグがオンであるか否かについて判定さ
れる(S114)。本実施形態におけるプリンター1は、モノクロ印刷モードを有してお
り、モノクロ印刷モードがセットされている場合において、モノクロ優先モードフラグが
オンにされている。
【0052】
ステップS114においてモノクロ優先モードフラグがオフの場合(カラー印刷モード
である場合)には、一列全抜け検出回数カウンタがインクリメントされる(S116)。
ここで、一列全抜け検出回数カウンタは、各列のノズル列の検査において、異常ノズル数
が155より多い場合にカウントアップされるカウンタである。
【0053】
一方、ステップS114においてモノクロ優先モードフラグがオンの場合(モノクロ印
刷モードの場合)には、一列全抜け検出回数カウンタに4が加算される(S118)。一
列全抜け検出回数カウンタに4が加算されるのは、モノクロ印刷モードにおいて吐出検査
はブラックインクノズル列のみしか行われないためである。このため、後述する一列全抜
け検出許容回数との比較で、カラー印刷モードのときとの整合性をとるために、カウント
の数がステップS116のときよりも多い数が加算されるように設定されているのである

【0054】
ステップS116、又は、ステップS118が実行されると、一列全抜け検出回数カウ
ンタが一列全抜け検出許容回数以上であるか否かについて判定される。ここで、一列全抜
け検出許容回数は、所定のしきい値であって、本実施形態では12に設定されている。す
なわち、3回続けて4列の各ノズル列に155より多い異常ノズルが含まれるか否かにつ
いて判定されることになる(モノクロ印刷モードの場合は、3回続けてブラックインクノ
ズル列に155より多い異常ノズルが含まれているか否かについて判定されることになる
)。
【0055】
そして、ステップS120において、一列全抜け検出回数カウンタが一列全抜け検出許
容回数以上であった場合、吐出検査において誤判定を含むか、又は、ドット抜け検出部5
0に異常が生じているとして異常終了する。これは、前述の通り、ドット抜けノズルが検
出された場合には回復動作が行われるのであるが、それにもかかわらず、3回続けて4列
の各ノズル列に155より多い異常ノズルが含まれるということは、むしろ、ノイズ等の
影響がドット抜け検出部50に生じているか、又は、ドット抜け検出部50に異常が生じ
ている可能性が高いことに基づく。
【0056】
ステップS120において、一列全抜け検出回数カウンタが一列全抜け検出許容回数以
上ではなかった場合、エラーフラグをオフにする(S108)。
【0057】
ところで、ステップS104において異常ノズル数が155よりも多くないと判定され
た場合には、ステップ106において一列全抜け検出回数カウンタを0にリセットする。
このようにすることで、ステップS110〜ステップS120のプロセスにおいて、連続
して、一列全抜けが何回生じたかをカウントアップすることができるようになる。ステッ
プS106の後、ステップS108において、エラーフラグをオフにする。このようにす
ることによって、ドット抜け検出部50の異常の可能性を解除することができる。
【0058】
上記のようなフローが、カラー印刷モードの場合、4ノズル列の各列について3回ずつ
行われる。また、モノクロ印刷モードの場合、ブラックインクノズル列について3回行わ
れる。
【0059】
本実施形態では、1列のノズル列における180個のノズルのうち、180個全てのノ
ズルに異常が認められたときにおいてドット抜け検出部50の異常を判定するのではなく
、異常ノズルの数が180個のうちノイズ許容値である25を差し引いた155より多い
場合において、ドット抜け検出部50の異常を判定することとしている。このようにする
ことによって、ドット抜けノズル(異常ノズル)を検査しているときにおいて、ノイズな
どの影響により異常ノズルが正常ノズルであると判定されてしまった場合であっても、ノ
イズ分を許容して、ドット抜け検出部50による誤判定を検出することができる。
【0060】
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、吐出検査装置としてプリンター1が説明されていたが、これに限
られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液
状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする液体吐出装置に具現化するこ
ともできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装
置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製
造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェッ
ト技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、
これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0061】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解
釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得
ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0062】
前述の吐出検査の誤判定検出のフローにおいて、吐出検査において誤判定を含むか、又
は、ドット抜け検出部50に異常が生じていると判定した場合、その旨をプリンター1に
おける表示部に表示することとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 プリンター、10 用紙搬送機構、
20 キャリッジ移動機構、21 キャリッジ、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、HC ヘッド制御部、
32 ケース、33 流路ユニット、
33a 流路形成基板、33b ノズルプレート、33c 振動板、
331 圧力室、332 インク供給路、333 共通インク室、
334 ダイヤフラム部、335 島部、34 ピエゾ素子ユニット、
341 ピエゾ素子群、342 固定板、
40 駆動信号生成回路、50 ドット抜け検出部、
51 高圧電源ユニット、52 第1制限抵抗、
53 第2制限抵抗、54 検出用コンデンサー、55 増幅器、
56 平滑コンデンサー、57 検出制御部、
57a レジスタ群、57b AD変換部、
57c 電圧比較部、57d 制御信号出力部、
60 キャップ機構、61 キャップ、611 側壁部、612 保湿部材、
613 検出用電極、62 スライダ部材、63 当接部、64 長孔、
65 廃液チューブ、66 ワイパー、
70 検出器群、80 コントローラー、
80a インターフェース部、80b CPU、80c メモリー、
CP コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルを有するノズル列と、
前記ノズルと所定間隔をあけて対向する検出用電極と、
前記検出用電極を所定電位にし、前記ノズルからの液体の吐出によって生じた前記検出
用電極の電位変化を検出し、前記検出用電極の電位変化量が所定値以下の異常ノズルを特
定する特定部と、
前記特定部が判定した異常ノズル数を計数する計数部と、
前記異常ノズル数が所定数よりも多いとき、前記異常ノズルの特定に誤判定を含むと判
定する判定部と、
を備える吐出検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記異常ノズル数が所定数よりも多いことを複数回検出したとき、前記
前記特定部を異常と判断する、請求項1に記載の吐出検査装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記異常ノズルの特定に誤判定を含まなかったと判定した場合において
、前記特定部が特定した異常ノズルから前記液体を吐出させる回復動作を行わせる、請求
項1又は2に記載の吐出検査装置。
【請求項4】
前記所定数は、前記ノズル列に含まれるノズル数より少ない、請求項1〜3のいずれか
に記載の吐出検査装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記異常ノズルの特定に誤判定を含むと判定した場合において、前記特
定部の異常を示す表示を行う、請求項1〜4のいずれかに記載の吐出検査装置。
【請求項6】
前記検出用電極の電位変化量の検出は、静電容量変化に基づいて行われる、請求項1〜
5のいずれかに記載の吐出検査装置。
【請求項7】
前記静電容量変化は、前記ノズルと前記検出用電極との間に生ずる静電容量の変化であ
る、請求項6に記載の吐出検査装置。
【請求項8】
液体を吐出する複数のノズルを有するノズル列と、検出用電極と、を所定間隔あけて対
向させることと、
前記検出用電極を所定電位にすることと、
前記ノズルからの液体の吐出によって生じた前記検出用電極の電位変化を検出し、前記
検出用電極の電位変化量が所定値以下の異常ノズルを特定することと、
前記異常ノズル数を計数することと、
前記異常ノズル数が所定数よりも多いとき、前記異常ノズルの特定に誤判定を含むと判
定することと、
を含む吐出検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−79267(P2011−79267A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234907(P2009−234907)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】