吐出面保護装置及び液体吐出装置
【課題】 吐出面に付着した余分な液体を適切に除去することを維持する。
【解決手段】 吐出面41に当接され、吐出面41に付着した余分な液体を除去するクリーニングローラ64の吸収体72は、使用する前の状態の厚みに対して、吐出面41から離間した際の状態の厚みが75%以上復元され、吐出面41に当接することが維持され、適切に吐出面41に付着した余分な液体を除去することを維持することができる。
【解決手段】 吐出面41に当接され、吐出面41に付着した余分な液体を除去するクリーニングローラ64の吸収体72は、使用する前の状態の厚みに対して、吐出面41から離間した際の状態の厚みが75%以上復元され、吐出面41に当接することが維持され、適切に吐出面41に付着した余分な液体を除去することを維持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を適切に吐出できるように吐出面に付着した余分な液体を除去すると共に、吐出面を保護する吐出面保護装置及びこの吐出面保護装置を備える液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置として、対象物となる記録紙Pに対してインク吐出ヘッドよりインクを吐出させて、画像や文字を記録するインクジェット方式のプリンタ装置がある。このインクジェット方式を用いたプリンタ装置は、低ランニングコスト、装置の小型化、印刷画像のカラー化が容易という利点がある。インクジェット方式を用いたプリンタ装置では、例えばイエロー、マゼンダ、シアン、ブラック等の各色インクが、インクタンクからインク吐出ヘッドのインク液室等に供給される。
【0003】
このプリンタ装置は、インク液室等に供給されたインクをインク液室内に配置された発熱抵抗体や圧電素子等の圧力発生素子で押圧して、インク吐出ヘッドに設けられた微小なインク吐出口、いわゆるノズルより液滴の状態で吐出させ、吐出させたインク液滴を対象物となる記録紙等に着弾させて画像や文字を印刷する(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
このようなインクジェット方式のプリンタ装置では、いわゆるインクサテライト等の不要なインクが、インク吐出ヘッドのノズルが設けられた吐出面に付着すると、ノズルよりインク液滴を吐出することが困難になったり、ノズルから吐出されたインク液滴の吐出方向が乱れたりする虞がある。また、このプリンタ装置においては、例えば印刷を長時間行わない場合(すなわち長時間ノズルよりインク液滴を吐出させない場合)、ノズルからインク中の水分が蒸発してインクが増粘してしまう、そのため、ノズルよりインク液滴を適切に吐出することが困難になる。場合によっては、増粘したインクでノズルが詰まる虞もある。このようなプリンタ装置では、印刷時に、インクが着弾されない部分、いわゆる白ヌケや、白ヌケが連続して現れる白スジ等が生じて印刷品質が低下する虞がある。
【0005】
このような問題を解決するために、例えばゴムブレードや金属ブレード等のクリーニングブレードを用いたり、吸収体等を用いて吐出面を払拭及び吐出面に付着している余分なインクを吸収することにより、吐出面をクリーニングすることが提案されている。例えば、多孔質物質を用いた吸収体でインクを吸収することについて特許文献2に提案され、和紙や布を用いてインクを吸収することについて特許文献3及び特許文献4に提案されている。
【0006】
しかしながら、上述したクリーニングブレードを用いた場合には、吐出面を擦るように払拭するので、ノズル内の増粘したインクを完全に除去することが困難であったり、吐出面に付着した余分なインクの付着している位置を移動させるだけになってしまう。このため、クリーニングブレードを用いた場合では、インクの不吐出や吐出方向の乱れを完全に解消することができない。また、吸収体を用いた場合にも、ノズル内の増粘したインクを完全に除去することができず、インクの不吐出や吐出方向の乱れが生じてしまう。
【0007】
また、吐出面に付着した余分なインク等を除去するためにローラ状の吸収体を用いる場合がある。このローラ状の吸収体を用いた場合には、軸中心に吐出面を転がり吐出面に付着した余分なインクを払拭するが、ノズル内の増粘したインクまでを除去することは困難であり、インク液滴の不吐出や吐出方向がずれてしまうことが起こる。
【0008】
このため、例えば特許文献5に示されるようにローラに複数の溝を設けて、吐出面に付着した余分なインクを溝部分で削るように除去するものがある。しかしながら、溝が設けられた吸収ローラでは、吐出面を払拭するときの摩擦が大きいため、吐出面に設けられた電極を保護する保護層等が摩耗してインク吐出ヘッドが劣化する虞がある。また、吸収ローラに設けられた溝の角部が簡単に摩耗してしまい、クリーニング能力が低下し易いといった問題点もある。
【0009】
【特許文献1】特公昭61−61985号公報
【特許文献2】特開昭57−61574号公報
【特許文献3】特開昭57−80064号公報
【特許文献4】特開昭57−116655号公報
【特許文献5】特開平6−255117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、液体を所定の方向に吐出することができるように吐出面を適切な状態に維持及び保護する吐出面保護装置及び液体吐出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成する本発明に係る吐出面保護装置は、液体を液滴の状態で吐出し、対象物に着弾させることで記録を行う液体吐出ヘッド部の上記液滴を吐出する吐出口が形成された吐出面に保持され、液体吐出ヘッド部の吐出口より液滴が吐出されるときに、吐出面に対して略平行に移動し、対象物に対して吐出口を臨ませるように吐出面より退避するカバーキャップ部と、カバーキャップ部を液体吐出ヘッド部の吐出面に対して略平行に移動可能に保持するキャップ保持部と、カバーキャップ部の吐出面と対向する面に設けられた吸収体が、吐出面に当接された状態でカバーキャップ部を吐出面に対して略平行に移動させることでカバーキャップ部と共に移動して吐出面に付着している液体を吸収する液体吸収部とを備え、吸収体は、使用する前の状態の厚みに対して、吐出面から離間した際の状態の厚みが75%以上復元されることを特徴とする。
【0012】
また、上述した目的を達成する本発明に係る液体吐出装置は、液体を液滴の状態で吐出し、対象物に着弾させることで記録を行い、液滴を対象物に向かって吐出させる吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッド部と、液体吐出ヘッド部の吐出口より液滴が吐出されるときに、吐出面に対して略平行に移動し、対象物に対して吐出口を臨ませるように吐出面より退避するカバーキャップ部と、カバーキャップ部を液体吐出ヘッド部の吐出面に対して略平行に移動可能に保持するキャップ保持部と、カバーキャップ部の吐出面と対向する面に設けられた吸収体が、吐出面に当接された状態でカバーキャップ部を吐出面に対して略平行に移動させることでカバーキャップ部と共に移動して吐出面に付着している液体を吸収する液体吸収部とを有する吐出面保護カバーと、液体吐出ヘッド部を備える装置本体とを有し、吸収体は、使用する前の状態の厚みに対して、吐出面から離間した際の状態の厚みが75%以上復元されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吐出面に付着した液体を吸収する液体吸収部の吸収体が使用する前の状態の厚みに対して、吐出面から離間した際の状態の厚みが75%以上復元される。即ち、吸収体は、吐出面に当接されて圧縮されると形状が変化するが、吐出面から離間して加圧状態から開放されると厚みが吸収体を使用する前、即ち未使用状態の厚みの75%以上戻るようになり、吐出面に当接される前後で未使用状態の厚みがほぼ維持されている。これにより、本発明では、吐出面に当接され、吐出面に付着した液体を除去する行為を複数回行っても、吸収体が圧縮されたままとならず、厚みが未使用状態における厚みと同じ、又はほぼ同じに維持されるので、吐出面と吸収体との当接状態が良好な状態で維持される。したがって、本発明では、吸収体の液体を吸収する能力が維持され、吐出面に付着した余分な液体や吐出口内で増粘した液体を除去することができ、不吐出や吐出方向のずれを防止することができる。
【0014】
また、本発明では、高温環境下においても同様に、吸収体の厚みが未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで復元されるので、吸収体の液体を吸収する能力が維持され、吐出面に付着した余分な液体や吐出口内で増粘した液体を適切に除去することができる。これにより、本発明では、高温環境下でも液体の不吐出や吐出方向のずれが防止され、適切に吐出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を適用したプリンタ装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、プリンタ装置1は、所定の方向に走行する記録紙Pに対してインクi等を吐出して画像や文字を印刷するものである。また、このプリンタ装置1は、記録紙Pの印刷幅に合わせて、記録紙Pの幅方向、すなわち図1中矢印W方向にインク吐出口(ノズル)を略ライン状に並設した、いわゆるライン型のプリンタ装置である。図1に示す本発明を適用したインクジェット型のプリンタ装置1は、対象物である記録紙Pに対して、液体であるインクiを吐出し、着弾させることによって、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置より入力された文字データや画像データ等に応じたインクドットからなる画像や文字等を記録するものである。
【0017】
このプリンタ装置1は、液体吐出ヘッドであるプリンタヘッドカートリッジ(以下、ヘッドカートリッジという。)2と、このヘッドカートリッジ2が装着される装置本体であるプリンタ本体3とを備えている。
【0018】
また、このプリンタ装置1では、ヘッドカートリッジ2が消耗品として取り扱われており、プリンタ本体3に対してヘッドカートリッジ2が着脱可能とされることによって、容易に交換が可能となっている。
【0019】
先ず、このようなプリンタ本体3に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2について説明する。このヘッドカートリッジ2は、インクiを吐出する吐出口であるノズルを記録紙Pの幅に対応する長さで略直線状に複数並べて配置した、いわゆるライン型のプリンタヘッドである。
【0020】
このヘッドカートリッジ2は、図1及び図2に示すように、インクを収容するインクタンク11が装着されるカートリッジ本体12を備え、このカートリッジ本体12には、カラー印刷に対応して、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラックの4色からなるインクタンク11y,11m,11c,11kが着脱可能となっている。これらインクタンク11y,11m,11c,11kは、同じ構成を有するので、以下まとめてインクタンク11として説明する。
【0021】
ここで、インクタンク11に収容されるインクiについて説明する。インクiは、印刷するときに記録液となり、例えば色素となる水溶性染料や、各種顔料等といった着色剤と、この着色剤を分散させる溶媒と、界面活性剤とを含有している。
【0022】
着色剤としては、以下に示す直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料等といった水溶性染料等をもちいることができる。具体的に、イエロー系直接染料としては、例えばC.I.ダイレクトイエロー1、同8、同11、同12、同24、同26、同27、同28、同33、同39、同44、同50、同58、同85、同86、同87、同88、同89、同98、同100、同110等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。マゼンタ系の直接染料としては、例えばC.I.ダイレクトレッド1、同2、同4、同9、同11、同13、同17、同20、同23、同24、同28、同31、同33、同37、同39、同44、同46、同62、同63、同75、同79、同80、同81、同83、同84、同89、同95、同99、同113、同197、同201、同218、同220、同224、同225、同226、同227、同228、同229、同230、同321等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。シアン系の直接染料としては、例えばC.I.ダイレクトブルー1、同2、同6、同8、同15、同22、同25、同41、同71、同76、同77、同78、同80、同86、同90、同98、同106、同108、同120、同158、同160、同163、同165、同168、同192、同193、同194、同195、同196、同199、同200、同201、同202、同203、同207、同225、同226、同236、同237、同246、同248、同249等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。ブラック系の直接染料としては、例えばC.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同56、同62、同71、同74、同75、同77、同94、同105、同106、同107、同108、同112、同113、同117、同118、同132、同133、同146等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を用いる。
【0023】
イエロー系の酸性染料としては、例えばC.I.アシッドイエロー1、同3、同7、同11、同17、同19、同23、同25、同29、同36、同38、同40、同42、同44、同49、同59、同61、同70、同72、同75、同76、同78、同79、同98、同99、同110、同111、同112、同114、同116、同118、同119、同127、同128、同131、同135、同141、同142、同161、同162、同163、同164、同165等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。マゼンタ系の酸性染料としては、例えばC.I.アシッドレッド1、同6、同8、同9、同13、同14、同18、同26、同27、同32、同35、同37、同42、同51、同52、同57、同75、同77、同80、同82、同83、同85、同87、同88、同89、同92、同94、同97、同106、同111、同114、同115、同117、同118、同119、同129、同130、同131、同133、同134、同138、同143、同145、同154、同155、同158、同168、同180、同183、同184、同186、同194、同198、同199、同209、同211、同215、同216、同217、同219、同249、同252、同254、同256、同257、同262、同265、同266、同274、同276、同282、同283、同303、同317、同318、同320、同321、同322等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。シアン系の酸性染科としては、例えばC.I.アシッドブルー1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同27、同29、同40、同41、同43、同45、同54、同59、同60、同62、同72、同74、同78、同80、同82、同83、同90、同92、同93、同100、同102、同103、同104、同112、同113、同117、同120、同126、同127、同129、同130、同131、同138、同140、同142、同143、同151、同154、同158、同161、同166、同167、同168、同170、同171、同175、同182、同183、同184、同187、同192、同199、同203、同204、同205、同229、同234、同236等が挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。ブラック系の酸性染科としては、例えばC.I.アシッドブラック1、同2、同7、同24、同26、同29、同31、同44、同48、同50、同51、同52、同58、同60、同62、同63、同64、同67、同72、同76、同77、同94、同107、同108、同109、同110、同112、同115、同118、同119、同121、同122、同131、同132、同139、同140、同155、同156、同157、同158、同159、同191等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
【0024】
以上に挙げた染料等を分散させる溶媒としては、例えば低粘度、取り扱いが容易、低コスト、無臭等といった特性を満たす水等を用いる。また、インクiの溶媒としては、インクi中に不要なイオンの混入を防止するために、例えばイオン交換水等を用いることもできる。
【0025】
また、インクiには、水やイオン交換水等といった溶媒の他に、例えば脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価アルコールの誘導体等といった水溶性有機溶剤も溶媒として含有させる。
【0026】
具体的に、脂肪族一価アルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコールが挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。以上に挙げた脂肪族一価アルコールを溶媒として用いた場合、インクiの表面張力を適切にでき、記録紙P等に対する浸透性、ドット形成性、印刷された画像の乾燥性に優れたインクiが得られる。そして、この場合、脂肪族一価アルコールのうち、エチルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等をインクiの溶媒として用いることで、上述した特性の優れたインクiが得られる。
【0027】
脂肪族多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール等のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、チオジグリコール等が挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
【0028】
脂肪族多価アルコールの誘導体としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル等の上述した脂肪族多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エチレングリコールジアセテート等の上述した脂肪族多価アルコールの低級カルボン酸エステル類等を挙げることができる。以上に挙げた脂肪族多価アルコール及びその誘導体をインクiの溶媒として用いた場合、インクiを乾きにくくさせ、インクiの氷点を低くできることから、インクiを長期保存したときの物性の変化を抑え、且つ乾いたインクiでノズル52aが目詰まりを起こすことを防止することができる。
【0029】
したがって、染料等を分散させる溶媒として、水等の他に、それぞれが特有の性質を有する脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価アルコール誘導体等のうちの一種又は複数種を混合して用いることで、目的や用途にあったインクiを得ることができる。
【0030】
また、インクiには、脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコール及びその誘導体等の他に、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、ケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、γ―ブチルラクトン、グリセリン、1.2.6−ヘキサントリオール等の3価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1.3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素複素環化合物等のうち一種又は複数種を混合して添加してもよい。これにより、インクiでは、上述した諸特性の向上を図ることができる。
【0031】
インクiに含有される界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド等の含窒素類等をポリオキシエチレンアセリレングリコール類等と混合した界面活性剤等が挙げられ、これらのうちの一種以上を用いる。
【0032】
なお、インクiには、上述した染料、溶媒、界面活性剤等の他に、例えば粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐剤、防錆剤、防かび剤等を添加させることもできる。具体的に、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤等としては、例えばゼラチン、カゼイン等のタンパク質、アラビアゴム等の天然ゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、リグニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらのうちの一種以上を添加させることもできる。また、防腐剤、防錆剤、防かび剤等としては、例えば安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等が挙げられ、これらのうちの一種以上を添加させることもできる。
【0033】
以上で説明したインクiは、イエローを呈するものがインクタンク11yに収容され、マゼンタを呈するものがインクタンク11mに収容され、シアンを呈するものがインクタンク11cに収容され、ブラックを呈するものがインクタンク11kに収容される。
【0034】
インクiを収容するインクタンク11は、図2及び図3に示すように、インクiを収容する液体収容部であるインク収容部21と、インク収容部21内のインクiをカートリッジ本体12へと送り出す液体送出部であるインク送出部22と、インク収容部21を外部と連通させる外部連通孔23と、外部連通孔23からインク収容部21内に外部の空気を導入するための空気導入管24とを有している。
【0035】
インク収容部21は、インクiを収容する収容空間を有し、底面部の略中央部にはカートリッジ本体12へインクiを供給するノズルであるインク送出部22が下面中央部から下方に向かって突出して設けられている。また、インク収容部21には、上面中央部に外部の空気を取り込む際の孔となる外部連通孔23が設けられている。インク収容部21は、外部連通孔23から内部に向かって延長して設けられた空気導入管24を介して、内部に空気が取り込むことができる。インクタンク11では、インク収容部21内のインクiがインク送出部22からカートリッジ本体12へと送り出された際に、このインク収容部21内のインクiが減少した分に相当する空気が、外部連通孔23から空気導入管24を通してインク収容部21内に取り込まれることになる。
【0036】
この空気導入管24の中途部には、インク収容部21から逆流したインクiがいきなり外部連通孔23から外部に流出することがないように、インクiを一時的に貯留させる液体貯留部であるインク貯留部25が設けられている。これにより、インクタンク11では、インク収容部21から空気導入管24を通して逆流したインクiをインク貯留部25が一時的に貯留することによって、外部連通孔23から外部にインクiが漏れ出すことなく、再度インクiをインク収容部21側に戻すことができる。
【0037】
このインクタンク11は、後述するカートリッジ本体12のタンク装着部31に固定するための固定手段である係合段部26及び係止突部27を有している。係合段部26は、インクタンク11の長辺方向の一端側に形成された段差部であり、後述するタンク装着部31の側面に形成された被係合部32に係合される。係止突部27は、インクタンク11の長辺方向の他端側の側面部から突出形成された突起部であり、後述するタンク装着部31のラッチレバー33に係合される。この係合段部26及び係止突部27により、インクタンク11はカートリッジ本体12に固定されて装着される。
【0038】
一方、カートリッジ本体12は、図2に示すように、上述した各色に対応したインクタンク11y,11m,11c,11kが装着されるタンク装着部31を有している。
【0039】
このタンク装着部31は、記録紙Pの幅に対応して全体略直方体状に形成されたカートリッジ本体12の上面部から各インクタンク11y,11m,11c,11kを収納するのに十分な深さで形成された凹部であり、その底面部は、各インクタンク11y,11m,11c,11kがカートリッジ本体12の短辺方向に並んで配置されるように、隔壁31aによって仕切られた構造を有している。
【0040】
そして、このタンク装着部31には、図3に示すように、上述したインクタンク11を固定するための固定手段である被係合部32、ラッチレバー33及び板バネ34が設けられている。
【0041】
被係合部32は、上述したインクタンク11に形成された係合段部26と係合される部分であり、タンク装着部31の長辺方向の一端側に位置する開口端から長辺方向に所定の幅だけ突出形成されている。
【0042】
ラッチレバー33は、タンク装着部31の長辺方向の他端側に位置する底面コーナー部から上方に向かって突出された弾性変位片であり、その先端部がタンク装着部31の側面部に対して近接離間する方向に弾性変位可能となっている。また、このラッチレバー33の先端側には、上述したインクタンク11の係止突部27が係止される係止孔33aが穿設されている。
【0043】
板バネ34は、タンク装着部31の底面部に設けられ、このタンク装着部31に装着されたインクタンク11を上方に向かって押圧する押圧部材である。この板バネ34は、略矩形状に形成され、中間部が上方に向かって折り曲げられた形状からなる。
【0044】
このタンク装着部31にインクタンク11を装着する際には、タンク装着部31の上方からインクタンク11を挿入し、インクタンク11の係合段部26をタンク装着部31の被係合部32に係合させ、インクタンク11の係止突部27をタンク装着部31のラッチレバー33に係止させて、インクタンク11を固定して装着する。
【0045】
以上のようなインクタンク11が装着されるカートリッジ本体12は、図3及び図4に示すように、上述したインクタンク11のインク送出部22と連結される連結部35と、この連結部35に連結されたインクタンク11からのインクiの供給を行う液体供給部であるインク供給部36と、このインク供給部36により供給されたインクiを吐出するヘッド部37とを有している。
【0046】
連結部35は、タンク装着部31の底面中央部に設けられたノズルであり、その先端が上述したインク送出部22に嵌合されることによって、インクタンク11のインク送出部22と連結される。連結部35は、インク送出部22と連結されることによって、インクタンク11からインクiがヘッド部37側に供給する。
【0047】
インク供給部36は、後述するヘッド部37のノズル52aからインクiが吐出された際に、ヘッド部37側に発生する負圧によって図示しない弁が開放されてインクタンク11のインク収容部21からヘッド部37へとインクiを供給し、インクタンク11のインク収容部21からヘッド部37へインクiが供給されて、ヘッド部37側の圧力が定常状態に戻ると、弁を閉塞してインクタンク11のインク収容部21からヘッド部37へのインクiの供給を停止する弁機構である。
【0048】
インク供給部36は、後述するヘッド部37のノズル52aからインクiを吐出する度に、インクiの供給動作を繰り返す。一方、インクタンク11では、上述したインク供給部36によるインクiの供給動作に連動して、インク収容部21内のインクiがインク供給部36側に供給されると、インク収容部21内のインクiが減少すると共に、この減少したインクiに相当する空気が外部連通孔23から空気導入管24を通してインク収容部21内に導入される。これにより、インク収容部21内の圧力を平衡状態に保ちながら、インク供給部36側にインクiを適切に供給することができる。
【0049】
ヘッド部37は、インクiを液滴の状態で吐出させ、記録紙Pの幅に相当する長さに亘って略ライン状に複数設けられたノズル52aが形成された吐出面41と、吐出面41より上方に位置し、インク供給部36からインクiが供給されるインク供給口42と、このインク供給口42から供給されたインクiを各ノズルへと導くインク流路43とを有する。
【0050】
ヘッド部37は、所定数のノズル52aを一組とし、この一組のノズル52aを有するインク吐出ヘッド44が図7に示すように千鳥状に配置されている。すなわち、このインク吐出ヘッド44は、インク流路43を挟んで記録紙Pの幅方向に互い違いに並ぶように配置されている。
【0051】
インク吐出ヘッド44は、図5に示すように、ベースとなる回路基板51と、複数のノズル52aが形成されたノズルシート52と、回路基板51とノズルシート52との間をノズル52a毎に区画するフィルム53と、インク流路43を通して供給されたインクiを加圧するインク液室54と、インク液室54に供給されたインクiを加熱する発熱抵抗体55とを有している。
【0052】
回路基板51は、シリコン等からなる半導体ウェハ上に、ロジックIC(Integrated Circuit)やドライバートランジスタ等からなる制御回路を構成すると共に、インク液室54の上面部を形成している。
【0053】
ノズルシート52は、吐出面41に向かって縮径され、且つ吐出面41側の口径が20μm程度のノズル52aが穿設されると共に、回路基板51とフィルム53を挟んで対向配置されることで、インク液室54の下面部を形成している。
【0054】
フィルム53は、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストからなり、上述したインク流路43と連通される部分を除いて各ノズル52aの周囲を囲むように形成されている。また、このフィルム53は、回路基板51とノズルシート52との間に介在されることによって、インク液室54の側面部を形成している。
【0055】
インク液室54は、上述した回路基板51、ノズルシート52及びフィルム53により囲まれることで、ノズル52a毎にインク流路43から供給されたインクiを加圧する加圧空間を形成している。
【0056】
発熱抵抗体55は、インク液室54に臨む回路基板51に配置されると共に、この回路基板51に設けられた制御回路等と電気的に接続されている。そして、この発熱抵抗体55は、制御回路等により制御されることで発熱し、インク液室54内のインクiを加熱する。
【0057】
このインク吐出ヘッド44では、回路基板51の制御回路が発熱抵抗体55を駆動制御し、選択された発熱抵抗体55に対して、例えば1〜3マイクロ秒程度の間だけパルス電流を供給する。これにより、インク吐出ヘッド44では、発熱抵抗体55が急速に加熱される。すると、インク吐出ヘッド44では、図6(A)に示すように、発熱抵抗体55と接するインク液室54内のインクiに気泡bが発生する。そして、インク吐出ヘッド44では、図6(B)に示すように、このインク液室54内において、気泡bが膨張しながらインクiを加圧し、押し退けられたインクiが液滴の状態になってノズル52aより吐出される。また、インク吐出ヘッド44においては、インクiの液滴が吐出された後は、インク流路43を通してインクiがインク液室54に供給されることによって、再び吐出前の状態へと戻る。
【0058】
なお、上述したインク吐出ヘッド44は、回路基板51の一主面上にフィルム53を全面に亘って形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてフィルム53をインク液室54に対応した形状に成形した後に、この上にノズルシート52を積層することで形成される。
【0059】
また、上述したインク吐出ヘッド44は、発熱抵抗体55によってインクiを加熱しながら吐出させる電気熱変換方式を採用しているが、このような方式に限定されず、例えば圧電素子等の電気機械変換素子によってインクiの液滴を電気機械的に吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
【0060】
また、上述した各色に対応したインク供給部36の下方には、それぞれヘッド部37が設けられている。そして、カートリッジ本体12の底面部には、各インクタンク11y,11m,11c,11kに対応した各ヘッド部37の吐出面41が、それぞれカートリッジ本体12の短辺方向に並んで設けられており、これらは連続した吐出面41を形成している。
【0061】
以上のような構成のヘッドカートリッジ2は、上述した構成の他に、後述するガイド溝39や、インク収容部12内のインクiの残量を検出する図示しない残量検出部や、インクタンク11y,11m,11c,11kを識別する図示しないインクタンク識別部等を備えている。
【0062】
また、カートリッジ本体12の底面部には、図1及び図2に示すように、上述した吐出面41を保護すると共に、吐出面41のノズル52aより露出するインクiの乾燥を防ぎ、且つ吐出面41のノズル52a以外の領域に付着したインクiを除去して、吐出面41をクリーニングする吐出面保護カバー61が設けられている。
【0063】
この吐出面保護カバー61は、カートリッジ本体12の底面部に対応した略矩形状のカバーキャップ部62と、カートリッジ本体12に対してカバーキャップ部62を着脱可能に保持させるキャップ保持片63と、カバーキャップ部62のカートリッジ本体12と対向する面に設けられ、吐出面41に付着したインクiをクリーニングするクリーニングローラ64とを備えている。
【0064】
この吐出面保護カバー61おいて、カバーキャップ部62は、カートリッジ本体12の吐出面41よりインクiが吐出されるときに、吐出面41に対して略平行に図2中矢印D方向に移動し、少なくとも記録紙Pに対してノズル52aを臨ませるように吐出面41のノズル52aが形成されている領域より退避する。また、カバーキャップ部62は、カートリッジ本体12に保持されて吐出面41を閉塞した状態において、ヘッド部37より滴り落ちたインクiを受ける受け皿となり、且つカートリッジ本体12と連続した底面部となってカートリッジ本体12をプリンタ本体3より取り外したときに吐出面41のインクiが他に付着することを防止する。
【0065】
キャップ保持片63は、カバーキャップ部62の長辺方向の両側に、上方に向かって突出し、且つ先端が外側に向かって略直角に折り曲げられてなる一対の突部であり、カートリッジ本体12に対する着脱方向、すなわちカバーキャップ部62の短辺方向に亘って突出形成されている。そして、キャップ保持片63は、カートリッジ本体12の吐出面41に設けられた一対のガイド溝39に係合されることで、吐出面41に対してカバーキャップ部62を略平行移動可能に保持する。
【0066】
また、クリーニングローラ64は、図2に示すように、略円柱棒状の回転軸71と、この回転軸71の外周側面全周に亘って所定の厚みをもって設けられる吸収体72とを有する。クリーニングローラ64は、カバーキャップ部62が吐出面41に対して略平行に図2中矢印D方向に示す方向に移動することによって、上述したインク吐出ヘッド44がノズル52aよりインクiを液滴の状態で吐出したときに、吐出面41に余分なインクiとして付着する微少なインク滴、いわゆるインクサテライト等を吐出面41より拭き取ったり、吸い取ったりする液体吸収部である。このクリーニングローラ64は、吐出面41から余分なインクiを除去し、吐出面41をクリーニングする。
【0067】
回転軸71は、軸方向の長さが、少なくとも吐出面41の図2中矢印Wで示す記録紙Pの幅方向で例えばノズル52aが設けられた領域より長くされている。そして、回転軸71は、軸がカバーキャップ部62におけるカートリッジ本体12に装着される側の端部に沿うように、その両端が図示しない保持部によってカバーキャップ62の吐出面41と対向する面に保持され、軸を中心にして周方向に回転自在にされている。
【0068】
吸収体72は、図2及び図7に示すように、吐出面41に設けられたノズル52aの吐出面41側の口径より小さな孔径の気孔を有する有機樹脂多孔質体等からなり、回転軸71の外周面に所定の厚みをもって記録紙Pの幅方向に並んだノズル52aと対向するように取り付けられている。そして、吸収体72は、図7に示すように、例えば吐出面41のノズル52aが形成された領域、いわゆる吐出口領域41aの記録紙Pの幅方向Wと同方向の幅より大きくされている。吸収体72は、吐出面41をクリーニングする際には、記録紙Pの幅方向Wと同方向に亘って吐出面41に隙間なく当接且つ押圧される。吸収体72は、カバーキャップ部42が図2中矢印D方向に移動することによって、吐出面41をクリーニングする。吸収体72が吐出面41をクリーニングする際は、吸収体72が吐出面41を転がるようにして摺動すると、吸収体72の気孔がノズル52aの吐出面41側の口径より小さい約10μm程度の孔径にされているので、この気孔の毛細管現象により吐出面41に付いた余分なインクi等を吸い込み吸収し、吐出面41をクリーニングする。また、吸収体72では、例えば、長時間インクiをノズル52aより吐出する機会がなくノズル52aより臨むインクiの水分が蒸発してインクiが増粘された状態でも、増粘したインクiをノズル52aより吸い出して吸収体72が吸収することができることから、増粘したインクiによるノズル52aの目詰まり等を防止できる。
【0069】
この吸収体72は、隣接する気孔同士が繋がっている、いわゆる連続気泡型の有機樹脂多孔質体である。具体的には、例えばポリウレタン、ポリオレフィン、メラミン、ポリビニルアルコール等からなる様々な発泡体樹脂を用いることができる。そして、これらの発泡体樹脂は、ノズル52aの吐出面41側の口径より小さな孔径の気孔を形成するために、具体的にはその平均気孔径をノズル52aの吐出面41側の口径より小さくするために例えば加熱圧縮させている。
【0070】
この吸収体72は、次に示す方法によっても製造することができる。吸収体72を製造する際は、上述した発泡体樹脂の原料となる熱可塑性樹脂と、所定の粒径の気孔形成材と、気孔形成材を均一に分散させるトリフェニルフォルフェード(以下、TPPと記す。)等からなる滑材とを所定の割合で混合、混練し、所定の形状に成型した多孔質前駆体を得て、この多孔質前駆体から気孔形成材及び滑材を除去することによって微細な気孔が三次元的に連通した構造を有すると共に熱可塑性樹脂の密度が低い有機樹脂多孔質体からなる吸収体72が製造される。熱可塑性樹脂には、例えば熱可塑性エラストマー(ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリエーテルポリエステル系、スチレン系、ポリアミド系等)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(LD−ポリエチレン、HD−ポリエチレン、LL−ポリエチレン、αオレフィン化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール等や、その他加熱することで溶融する有機樹脂であれば如何なる有機樹脂でも使用できる。また、気孔形成材には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等といった水溶性材料等を用いる。
【0071】
この気孔形成材は、水溶性材料であることから、上述した多孔質前駆体を水に浸漬することで溶解し、抽出され、容易に多孔質前駆体より除去される。また、TPPからなる滑材は、例えばアルコール等に多孔質前駆体を浸漬することで溶解し、抽出され、容易に多孔質前駆体より除去される。上述した方法によって製造される有機樹脂多孔質体は、その気孔の孔径が気孔形成材の粒径により決定される。
【0072】
熱可塑性樹脂と気孔形成材との混合比率は、体積換算で熱可塑性樹脂が全体積に対して10%以上、40%以下になるようにすることが好ましい。すなわち、吸収体72は、空隙率が60%以上、90%以下になることが好ましい。空隙率が90%を越える吸収体72を製造することもできるが、この場合、有機樹脂多孔質体としての機械的強度が著しく低下してしまう。また、空隙率が60%より小さい場合、払拭若しくは吸収した吐出面41のインクiを保持しておく空間が少なくなり過ぎてクリーニング能力が低下してしまう。したがって、吸収体72においては、その空隙率が60%以上、90%以下の範囲にすることで、機械的強度に優れ、クリーニング能力が低下することを防止できる。
【0073】
このような吸収体72は、当接されながら吐出面41上を転がることによって、吐出面41から加圧され圧縮されるが、吐出面41から離間して、加圧状態から開放されると元の状態に戻ろうする。この際に、この吸収体72は、吐出面41から離間した際の厚みが吐出面41をクリーニングする前、具体的には吐出面41を一度もクリーニングしていない未使用状態の厚みの75%以上、更に好ましくは80%以上となる。即ち、吸収体72は、クリーニングする際に吐出面41から圧力がかかり圧縮されるが、クリーニングが終わり吐出面41から離間して、吐出面41から受ける圧力から開放されると未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで復元される。
【0074】
この吸収体72は、例えばガラス転移温度(Tg)等による樹脂の種類の選定や所定内での空隙率の調整等を行うことによって、未使用状態の厚みに対して、吐出面41から離間した際の厚みの比率(復元率)が75%以上、更に好ましくは80%以上となる。この復元率は、下記の式1及び式2より求まる。
【0075】
圧縮ひずみ=(初期の厚み−加圧した後の厚み)/初期の厚み×100・・・(式1)
復元率=100−圧縮ひずみ・・・(式2)式1において、圧縮ひずみとは、未使用状態の吸収体72の厚みに対して、吸収体72が吐出面41に隙間なく当接され、例えば200〜300g/cm3程度の圧力が吸収体72にかかった後、吸収体72が吐出面41から離間し、加圧状態から開放された直後の吸収体72の厚みの変化量を比率で表したものである。初期の厚みとは、吸収体72が未使用状態における厚みである。加圧した後の厚みとは、吐出面41から離間し、加圧状態から開放された直後の厚みである。そして、式1より求められた圧縮ひずみを用いて、式2より復元率を求めることができる
【0076】
吸収体72は、復元率が75%より低いの場合、吐出面41に当接され、吐出面41からかかる圧力によって気孔が潰れて圧縮されると、吐出面41をクリーニングし、吐出面41から離間した後に元の状態に戻りにくくなり、吐出面41から離間した際の厚みが未使用状態の厚みの75%よりも薄くなってしまう。このような吸収体72では、クリーニングする回数が増すにつれて圧縮され、厚みが除々に薄くなってしまう。これにより、吸収体72では、クリーニングの回数が増すにつれて吐出面41との接触が悪くなり、インクiを吸い込みにくくなる。また、吸収体72は、復元率が75%よりも低いことによって、吐出面41から加わった圧力によって外周部及び内部に形成された気孔が潰れたままとなり、吸収できるインクiの量が減少し、インクiを吸収する能力、即ちクリーニング能力が低下してしまう。吸収体72のクリーニング能力が低下すると、吐出面41に付着した余分なインクiや吐出口52a内に増粘したインクiが残り、不吐出のノズル52aや吐出方向のずれが生じてしまう。
【0077】
また、吸収体72では、特に発熱抵抗体を用いて使用する場合、吐出面41の温度が40℃前後となり温度が上がるため、このような高温となった吐出面に当接されながら、例えば200〜300g/cm2の圧力が加わって気孔が潰れると、常温で用いた場合よりも更に元の状態に戻りにくくなる。これにより、吸収体72は、高温環境下においてインクiを払拭若しくは吸収する能力が著しく低下してしまう。このため、プリンタ装置1では、吐出面の温度が上がった場合など、高温環境下において、吐出面41に付着した余分なインクiや吐出口52a内に増粘したインクiが残りやすく、不吐出のノズル52aや吐出方向のずれが更に生じやすくなる。
【0078】
これに対して、吸収体72の復元率が75%以上の場合、吐出面41をクリーニングし、吐出面41から離間した際の状態の厚みが未使用状態の厚みの75%以上となる。このような吸収体72では、吐出面41をクリーニングした後、未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで復元されるようになる。これにより、この吸収体72では、クリーニングの回数が増しても適切に吐出面41に隙間なく当接且つ押圧されることが維持され、クリーニング能力が低下することなく、クリーニング能力が長期間維持される。
【0079】
また、吸収体72は、クリーニング後であっても厚みが75%以上戻ることによって圧縮されたままとならないため、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れてしまうことが防止される。吸収体72では、気孔が潰れるのが防止されることによって、吐出面41に付着したインクiやノズル52a内に固着したインクiを毛細管現象により適切に吸い込むことができ、且つ内部にインクiを収容できる量の低下を防止できる。
【0080】
また、吸収体72の復元率が80%以上の場合、復元率が75%以上の場合よりもクリーニング後の吸収体72の厚みが未使用状態の厚みにより近い状態まで復元されるため、複数回クリーニングした場合でも吐出面41により隙間なく当接且つ押圧されるようになる。これにより、吸収体72では、より吐出面41に付着したインクiやノズル52a内に固着したインクiを吸収することができ、且つクリーニング能力がより維持される。
【0081】
このように、復元率が75%、更に好ましくは80%以上の吸収体72を用いることによって、複数回クリーニングを行っても吸収体72が吐出面41に隙間なく当接且つ押圧されることが維持され、インクiを払拭若しくは吸収する能力が低下することを防止できる。これにより、吐出面41に付着した余分なインクiや、吐出口52a内で増粘したインクiによる不吐出や吐出方向のずれが防止され、白ヌキや白スジのない優れた画質が印刷されるようになる。これは、発熱抵抗体を用い、吐出面の温度が上がった場合など、高温環境下においても同様に、クリーニング後の吸収体72の厚みが未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで復元され、吐出面41と吸収体72とが隙間なく適切に当接且つ押圧されるようになり、高温環境下においてもインクiを適切に吸い込むことができ、クリーニング能力を維持することができる。
【0082】
なお、クリーニングローラ64においては、回転軸71をカバーキャップ62の吐出面41と対向する面より着脱することができ、吸収体72に払拭若しくは吸収されたインクiの量が多くなって吸収体72のクリーニング能力が低下したときに、吸収体72を回転軸71ごと交換できる。
【0083】
また、プリンタ装置1では、吐出面41のノズル52aに目詰まりや気泡混入等が生じたときに、インク吐出ヘッド44より強制的にインクiを吐出させて目詰まりや気泡混入等を解消させる。この際、吐出面保護カバー61は、カバーキャップ部62がノズル52aより強制的に吐出されたインクiを受け止める受け皿として機能する。そして、カバーキャップ部62においては、その底面にインクiを吸収するためのスポンジ等のインク吸収体65を設けることで底面に溜まったインクiが外部に漏れることを防ぎ、且つ受け皿を所定の深さにすることでインクiを溜めておく容量の拡大を図ることができる。
【0084】
一方、吐出面保護カバー61が取り付けられるカートリッジ本体12の底面部、すなわち吐出面41側には、図2に示すように、カバーキャップ部62に設けられた一対のキャップ保持片63が短辺方向の一端側から係合される一対のガイド溝39が形成されている。一対のガイド溝39は、一対のキャップ保持片63に対応して、カートリッジ本体12の底面部から所定の深さで切り込まれ且つ外側に向かって略直角に切り込まれてなる凹部を形成している。そして、一対のガイド溝39は、カートリッジ本体12の長辺方向の両側に位置して、カートリッジ本体12の短辺方向に亘って平行に形成されている。
【0085】
したがって、吐出面保護カバー61は、これら一対のガイド溝39に一対のキャップ保持片63が係合されることによって、カートリッジ本体12の短辺方向にスライドしながら、カートリッジ本体12の吐出面41をカバーキャップ部62が閉塞する閉塞位置まで案内される。また、この吐出面保護カバー61は、カートリッジ本体12の吐出面41を閉塞しているカバーキャップ部62を、一対のガイド溝39に沿ってカートリッジ本体12の短辺方向に外部に向かってスライドさせることで、カートリッジ本体12の短辺方向の一端側から取り外すことができる。すなわち、吐出面保護カバー61は、カートリッジ本体12に対する着脱を容易に行える交換部品になっている。
【0086】
また、吐出面41には、吐出面保護カバー61によって閉塞されているときに、クリーニングローラ64と対向する位置に、少なくともクリーニングローラ64と対向する領域がインクタンク11側に凹んだ部分、具体的にはクリーニングローラ64が吐出面41のクリーニング動作を行わないときに吸収体72が吐出面41に当接しないようにするための逃げ部45(図12参照。)が設けられている。これにより、クリーニングローラ64おいては、吸収体72がクリーニング動作を行うときだけ吐出面41に当接されることになり、吸収体72の吐出面41を押圧する弾性力が劣化することを防止できる。
【0087】
以上のような構成のヘッドカートリッジ2では、吐出面保護カバー61をカートリッジ本体12に対して容易に着脱できることから、クリーニング能力が低下したクリーニングローラ64を容易に新しいクリーニングローラ64に交換することができる。すなわち、クリーニングローラ64の交換作業を容易に行える。
【0088】
次に、以上のように構成されるヘッドカートリッジ2が装着されるプリンタ本体3について説明する。
【0089】
このプリンタ本体3は、図1に示すように、内部への塵埃等の侵入を防ぐために、上部筐体81aと下部筐体81bとから構成される外筐81の内部に組み付けられた構造を有している。
【0090】
このプリンタ本体3において、外筐81の前面側は、図8及び図9に示すように、下部筐体81b内の図示しないフレームに上部筐体81aの両側面部に設けられた一対の支軸82が軸支されることによって、上部筐体81aが下部筐体81bに対して開閉可能となっている。
【0091】
外筐81の前面には、図1に示すように、記録紙Pの給排紙が行われる給排紙口83が設けられている。そして、この給排紙口83に記録紙Pを収納する収納トレイ84が装着されることによって給紙が可能となり、記録紙Pは、この給排紙口83を通して収納トレイ84の開口端のうち前面側を閉塞する蓋トレイ85上に排紙されることになる。
【0092】
上部筐体81aには、上述したヘッドカートリッジ2が装着されるヘッド装着部86が設けられている。このヘッド装着部86にヘッドカートリッジ2が装着された際には、ヘッドカートリッジ2の吐出面41が、後述する下部筐体81b内の印刷位置に臨むことになる。
【0093】
また、上部筐体81aには、このヘッド装着部86を閉塞する蓋体81cが開閉可能に取り付けられている。この蓋体81cは、ヘッド装着部86を閉塞した際には、上部筐体81aと連続した上面部を形成する。
【0094】
また、上部筐体81aの上面部には、後述する記録紙Pの給排紙が行われる前面側に位置して、各種操作を行うための操作ボタン87や、印刷状態等を表示するための表示パネル88等が設けられている。
【0095】
さらに、上部筐体81aの上面部には、図1及び図2に示すように、ヘッドカートリッジ2がヘッド装着部86に装着されたときに、ヘッド装着部86に対してヘッドカートリッジ2を着脱可能に保持するヘッドカートリッジ保持機構89を備えている。具体的に、ヘッドカートリッジ保持機構89は、ヘッドカートリッジ2に設けられたつまみ89aを上部筐体81aの外周部に設けられた係止孔89b内に設けられた図示しないバネ等の付勢部材に係止することにより、上部筐体81aに対してヘッドカートリッジ2を位置決めして保持、固定できるようにする。これにより、カートリッジ本体12の吐出面41と、後述する搬送ベルト134によって印刷位置に搬送された記録紙Pの主面とを互いに平行且つ所定の間隔をもって対向配置することができる。
【0096】
また、上部筐体81aには、図10に示すように、ヘッドカートリッジ2がヘッド装着部86に装着されたときに、このヘッドカートリッジ2の吐出面41に取り付けられた吐出面保護カバー61を開閉操作するカバー開閉機構90が設けられている。
【0097】
このカバー開閉機構90は、図10〜図12に示すように、吐出面41を閉塞する閉塞位置と、吐出面41を開放し且つ吐出面41より上方に位置する開放位置とに吐出面保護カバー61をガイドするガイド機構91と、このガイド機構91によってガイドされた吐出面保護カバー61を閉塞位置と開放位置との間で移動する駆動機構92とを有している。
【0098】
ガイド機構91は、吐出面保護カバー61を保持するスライダ101と、このスライダ101を吐出面保護カバー61の開放位置と閉塞位置との間でスライド可能にガイドする一対のガイド部102とを有している。
【0099】
スライダ101は、図11に示すように、吐出面保護カバー61の外周部を保持するように、この吐出面保護カバー61に対応した略矩形状の枠体からなる。また、このスライダ101には、前後一対のガイドピン103a,103bがそれぞれ長辺方向の両枠部から外側に向かって突出して設けられている。なお、これらガイドピン103a,103bのうち、前面側のガイドピン103aの長さが背面側のガイドピン103bの長さより長くなっている。
【0100】
また、このスライダ101には、前後一対の係合突部104a,104bがそれぞれ長辺方向の両枠部から内側に向かって突出形成されている。一方、吐出面保護カバー61の底面部には、図10に示すように、これら前後一対の係合突部104a,104bが係合される前後一対の係合凹部105a,105bが形成されている。また、これら前後一対の係合突部104a,104bの間には、吐出面保護カバー61の底面部を支持する一対の支持片106がそれぞれ長辺方向の両枠部から内側に向かって突出形成されている。
【0101】
そして、このスライダ101は、ヘッドカートリッジ2がヘッド装着部86に装着された際に、前後一対の係合突部104a,104bが吐出面保護カバー61の前後一対の係合凹部105a,105bに係合されると共に、一対の支持片106が吐出面保護カバー61の底面部を支持することによって、この吐出面保護カバー61の外周部を保持することになる。
【0102】
一対のガイド部102は、上述したヘッド装着部86の外周部と一体に形成されたフレームからなり、上述したスライダ101の外側に位置して、互いに平行な側板部を形成している。そして、これら一対のガイド部102には、図10に示すように、上述したスライダ101の前後一対のガイドピン103a,103bが係合される前後一対のガイド孔107a,107bがそれぞれ穿設されている。
【0103】
具体的に、これら前後一対のガイド孔107a,107bは、吐出面保護カバー61がカートリッジ本体12の吐出面41を閉塞する閉塞位置から、上部筐体81aの前面側に向かって吐出面保護カバー61がカートリッジ本体12に対して着脱される着脱位置まで、前後一対のガイドピン103a,103bを水平方向にスライドさせる水平部108aと、この着脱位置から更に上部筐体81aの前面側に向かって、カートリッジ本体12の吐出面41aを開放し且つ吐出面41より上方に位置する開放位置まで、前後一対のガイドピン103a,103bを斜め上方向にスライドさせる傾斜部108bとを有している。
【0104】
したがって、これら一対のガイド部102は、前後一対のガイド孔107a,107bに前後一対のガイドピン103a,103bを係合させることによって、スライダ101を吐出面保護カバー61の開放位置と閉塞位置との間で前後方向にスライド可能に支持している。
【0105】
以上のように、このガイド機構91では、カートリッジ本体12に対して着脱可能に取り付けられた吐出面保護カバー61をスライダ101に保持した状態で、カートリッジ本体12の吐出面41を閉塞する閉塞位置と、カートリッジ本体12の吐出面41を開放し且つ吐出面41より上方に位置する開放位置との間でガイドすることが可能となっている。
【0106】
駆動機構92は、図12に示すように、下部筐体81b側に、駆動モータ111と、この駆動モータ111の回転軸に取り付けられたウォームギア112と、このウォームギア112と噛み合わされたピニオンギア113と、上部筐体81a側に、ピニオンギア113と噛み合わされて、前後方向にスライドされるラック板114とを有している。
【0107】
このうち、ラック板114は、上述したガイド部102の外側に配置された略矩形状の平板部材からなり、その下端部には、ピニオンギア113と噛み合わされるラックギア115が前後方向に亘って形成されている。
【0108】
このラック板114の上部側には、前後一対のガイドピン116a,116bがガイド部に向かって突出形成されている。一方、一対のガイド部102には、これら前後一対のガイドピン116a,116bが係合される水平スリット117が前後方向に亘って直線状に形成されている。したがって、このラック板114は、水平スリット117内を前後一対のガイドピン116a,116bがスライドすることによって、前後方向にスライド可能となっている。
【0109】
このラック板114前面側には、上述した前面側のガイド孔107aを貫通した前面側のガイドピン103aが係合される鉛直スリット118が上下方向に亘って直線状に穿設されている。
【0110】
この駆動機構92では、駆動モータ111が回転駆動されると、互いに噛合されたウォームギア112及びピニオンギア113が回転しながら、ピニオンギア113とラックギア115との噛合によってラック板114が前後方向に移動させる。これに伴って、スライダ101の前面側のガイドピン103aがラック板114の鉛直スリット118内を上下方向にスライドしながら、スライダ101の前後一対のガイドピン103a,103bがラック板114の前後一対のガイド孔107a,107b内を前後方向にスライドすることになる。これにより、スライダ101を開放位置と閉塞位置との間で移動することができる。
【0111】
一方、下部筐体81bの内部には、図8及び図13に示すように、記録紙Pをヘッドカートリッジ2まで供給し、ヘッドカートリッジ2によって印刷が行われた記録紙Pを外部に排出する給排紙機構121が設けられている。具体的に、給排紙機構121は、収納トレイ84から記録紙Pを給紙する給紙部122と、この給紙部122により給紙された記録紙Pを印刷位置へと搬送する搬送部123と、この搬送部123により搬送された記録紙Pを排紙する排紙部124とによって構成され、これらの部位が下部筐体81b内の図示しないフレーム等に組み付けられている。
【0112】
給紙部122は、収納トレイ84から搬送部123へと記録紙Pを給紙するための給紙手段として、収納トレイ84内の記録紙Pを搬送部123へと送り出す給紙ローラ131と、この給紙ローラ131により送り出された記録紙Pを1枚毎に搬送部123へと送り出すための一対の分離ローラ132a,132bとを有し、これらは、下部筐体81b内に設けられた駆動機構(図示せず。)によって互いに連動しながら、図13中矢印A1,A2,A3方向に回転駆動される。
【0113】
搬送部123は、給紙部122から排紙部124へと記録紙Pを搬送するための搬送手段として、図13中矢印B方向に回転駆動し、記録紙Pの送り方向を背面側から前面側へと反転させる反転ローラ133と、この反転ローラ133により反転された記録紙Pを印刷位置へと搬送させ、駆動プーリ140aと被動プーリ140bとの間に巻き掛けられた無端ベルトからなる搬送ベルト134とを有している。搬送ベルト134は、図示しないベルト昇降機構により、印刷時には図13に示すように搬送動作を行う搬送位置に配置され、非駆動時にはこの搬送位置より下方に位置し、図8及び図9に示すように待避位置に配置される。
【0114】
排紙部124は、図8及び図13に示すように、搬送部123により搬送された記録紙Pを排紙するための排紙手段として、搬送ベルト134を介して被動プーリ140bと対向配置された拍車142を有し、この拍車142と搬送ベルト134との間から記録紙Pを給排紙口83側へと送り出す。
【0115】
以上のような構成からなるプリンタ装置1には、上述したプリンタ本体3のカバー開閉機構90、給排紙機構121、搬送ベルト134を昇降させるベルト昇降機構の駆動を制御したり、インク吐出ヘッド44に供給される電流等を制御して、印刷動作全体を制御する図示しない制御部が設けられている。プリンタ装置1は、この制御部によって、カバー開閉機構90、給排紙機構121、ベルト昇降機構が制御され、以下のように動作し印刷を行う。
【0116】
先ず、ユーザが、印刷動作をプリンタ装置1が実行するように、プリンタ本体3に設けられている操作ボタン90を操作して制御部に印刷開始を命令し、カバー開閉機構90、給排紙機構121、ベルト昇降機構等を駆動制御し、印刷が可能な状態にする。具体的には、図13に示すように、カバー開閉機構90は、吐出面保護カバー61をスライダ101と共にプリンタ装置1の前面側の開放位置へと移動させる。これにより、ヘッドカートリッジ2の吐出面41が開放される。これにより、吐出面保護カバー61は、前面側の開放位置へと移動することによってヘッドカートリッジ2の吐出面41より上方に位置することになる。
【0117】
吐出面保護カバー61は、図14に示すように、プリンタ装置1の前面側、即ち図14中X1方向に摺動してプリンタ装置1の前面側の開放位置へ摺動する際に、カバーキャップ部62に備わるクリーニングローラ64がインクiを吐出する前のノズル52a内の増粘したインクiを吸い出したり、吐出面41に付着した余分なインクiを吸収して、ヘッドカートリッジ2の吐出面41をクリーニングする。このとき、クリーニングローラ64では、吸収体72の厚みの復元率が75%以上であることから、クリーニングした後であっても、吸収体72の厚みが未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じとなる。このため、吸収体72が吐出面41を複数回クリーニングした後であっても、吐出面41に隙間なく当接且つ押圧された状態で吐出面41をクリーニングすることができる。
【0118】
次に、、図13に示すように、ベルト昇降機構は、搬送ベルト134を待避位置から搬送位置へと上昇させる。これにより、プリンタ装置1では、ヘッドカートリッジ2の吐出面41と、印刷位置に搬送された記録紙Pをヘッドカートリッジ2の吐出面41に対向させるプラテン板141とが互いに平行且つ所定の間隔を以て対向配置され、印刷位置が決定されることになる。
【0119】
次に、給排紙機構121は、図13中矢印A1方向に回転する給紙ローラ131の外周面を収納トレイ84より記録紙Pに押し当てて給紙させる。そして、給紙された記録紙Pは、図13中矢印A2,A3方向に回転する一対の分離ローラ132a,132bの間を通過しながら、図13中矢印Y1に示す背面側へと送り出される。
【0120】
次に、搬送部123は、背面側に送り出された記録紙Pを、第1の案内板137上を移動し反転ローラ133と、記録紙Pを押さえる複数の押さえローラ135a,135b,135c及び反転ローラ133の外周面と対向して記録紙Pの移動を規制する湾曲状の第1の規制板136との間に記録紙Pを搬送し、記録紙Pを外周面に沿って反転させ、図13中矢印Y2に示す前面側へと送り出す。そして、排紙部124は、前面側に送り出された記録紙Pが、第2の案内板138と第2の規制板139との間を通過しながら、図13中矢印C方向に回転する搬送ベルト134によって印刷位置へと搬送する。そして、記録紙Pは、印刷位置において、プラテン板141によって押し上げられ、ヘッドカートリッジ2の吐出面41と相対向することになる。
【0121】
次に、ヘッドカートリッジ2は、この印刷位置に搬送された記録紙Pに対してノズル52aよりインクiを吐出、着弾させてインクドットからなる画像や文字等を記録する。この際には、インクiを吐出する前に、吐出面41に付着した余分なインクiやノズル52a内で増粘したインクiが吐出面保護カバー61のクリーニングローラ64によって除去されているので、インクiの吐出方向がずれたり、記録紙Pが汚れたりすることなく、良好な状態で印刷される。
【0122】
次に、給排紙機構121は、印刷が終了した記録紙Pを、搬送ベルト134の駆動によって、この搬送ベルト134と拍車142との間から、図13矢印Y2に示す前面側へと送り出し、給排紙口83から蓋トレイ85上に排紙する。また、ベルト昇降機構は、記録紙Pへの印刷が終わると、搬送ベルト134を搬送位置から待避位置へと下降する。
【0123】
次に、カバー開閉機構90は、吐出面保護カバー61をスライダ101と共にプリンタ装置1の背面側の閉塞位置へと移動させる。このとき、吐出面保護カバー61は、図15に示すように、カバーキャップ部62に備わるクリーニングローラ64が、軸部71の軸を中心に吸収体72が回転しながらノズル52aが形成されている領域をプリンタ装置1の背面側、すなわち図17中X2方向に摺動していきながら、ヘッドカートリッジ2の吐出面41を吸収体72でクリーニングする。ここで、吸収体72は、印刷前に吐出面41をクリーニングした際に吐出面41に当接され且つ押圧されることによって圧縮されたが、復元率を75%以上有するため、未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みにまで復元されている。これにより、吸収体72は、印刷前に吐出面41をクリーニングした後であっても、厚みが復元されているので、吐出面41に適切に当接且つ押圧されるようになり、吐出面をクリーニングすることができる。そして、吐出面保護カバー61は、ヘッドカートリッジ2の吐出面41をクリーニングローラ64でクリーニングしながら閉塞する。
【0124】
これにより、ヘッドカートリッジ2は、再び図11に示す印刷前の状態へと戻る。このプリンタ装置1では、吐出面保護カバー61がヘッドカートリッジ2の吐出面41を閉塞するので、このヘッドカートリッジ2をプリンタ本体3のヘッド装着部86から離脱してもインクiの乾燥を防ぐことができる。以上のようにして、印刷動作が終了する。
【0125】
なお、以上の印刷動作では、吐出面保護カバー61が図14中X1方向に摺動してプリンタ装置1の前面側の開放位置へ移動する際、及び吐出面保護カバー61が図15中X2方向に摺動して背面側の閉塞位置へと移動する際に吐出面41をクリーニングローラ64でクリーニングを行ったがこのことに限定されず、吐出面保護カバー61を開放位置に移動する際、若しくは閉塞位置に移動する際のどちらか一方の方向に移動する際にクリーニングするようにしてもよい。
【0126】
以上のように、このプリンタ装置1では、吐出面保護カバー61が開閉動作されると、クリーニングローラ64の吸収体72が吐出面41上を転がることで吐出面41に付着した余分なインクiを払拭若しくは吸収し吐出面41をクリーニングする。その際に、プリンタ装置1においては、吐出面41をクリーニングするクリーニングローラ64の吸収体72がクリーニング前、即ちクリーニングをしていない未使用の状態の厚みに対して、吐出面41をクリーニングし、吐出面41から離間した際の厚みが75%以上となる。即ちプリンタ装置1では、吸収体72が吐出面41のクリーニング後であっても未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで復元される。これにより、プリンタ装置1では、吸収体72が吐出面41に圧縮されて変形しても、元の状態又は元の状態に近い状態まで復元されるので、吐出面41を複数回繰り返してクリーンニングした場合であっても、未使用状態のように吸収体72が吐出面41に隙間なく当接且つ押圧された状態で吐出面41をクリーニングすることができる。
【0127】
また、プリンタ装置1では、吸収体72の変形が抑えられることによって、吸収体72の外周部及び内部に形成されている気孔が潰れたりすることが防止されるため、インクiを吸収する量等が減少することが防止されている。
【0128】
したがって、プリンタ装置1では、この吸収体72によって吐出面41を適切にクリーニングすることができることから、吐出面41に付着した余分なインクiや、吐出口52a内で増粘したインクiによる不吐出や吐出方向のずれを防止することができ、白ヌキや白スジのない優れた画質の印刷を行うことができる。また、このプリンタ装置1では、発熱抵抗体等を用いることで吐出面41の温度が上がった場合など、高温環境下においても同様に、吸収体72の厚みを未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みに維持することができるため、吐出面41を適切にクリーニングすることができ、優れた画質の印刷を行うことができる。
【0129】
以上では、吐出面41をクリーニングするときに、軸中心に回転自在にされた回転軸71を備えるクリーニングローラ64が吐出面保護カバー61の開閉動作に従って吸収体72を吐出面41上で転がすようにして吐出面41を移動しながら回転する回転動作について説明したが、このことに限定されることはなく、例えばクリーニングローラ64の回転動作を制御する図示しない回転制御機構等を備え、クリーニングローラ64の回転動作を、吐出面保護カバー61の開閉動作に従ってクリーニングローラ64が回転するときより遅くなるように制御させることもできる。この場合、クリーニングローラ64では、吸収体72が吐出面41を擦るようにして吐出面41をクリーニングしていくことから、例えば吐出面41上で増粘して固着したインクiも払拭し、除去できる。
【0130】
また、クリーニングローラ64においては、例えば回転軸71の軸中心に回転しないように制御することもできる。この場合、クリーニングローラ64では、吸収体72が吐出面41上を単に摺動するようにして吐出面41をクリーニングしていく、すなわち吸収体72が吐出面41を擦るようにして吐出面41をクリーニングしていくことから吐出面41にこびり付いたインクiを適切に除去できる。
【0131】
さらに、クリーニングローラ64においては、例えば吐出面保護カバー61の開閉動作に従って回転するときより早くなるように回転動作を制御することもできる。この場合も、クリーニングローラ64では、吐出面保護カバー61の開閉動作に従う回転を順回転とすると、順回転側より早く回転していることから、吸収体72が吐出面41を擦るようにして吐出面41をクリーニングしていき、吐出面41にこびり付いたインクiを適切に除去できる。
【0132】
さらにまた、クリーニングローラ64においては、例えば吐出面保護カバー61の開閉動作に従う順回転とは逆回転になるように回転動作を制御することもできる。この場合も、クリーニングローラ64では、吐出面保護カバー61の開閉動作に従う順回転に対して逆回転していることから、吸収体72と吐出面41との摩擦が大きくなって吸収体72が吐出面41を擦るようにして吐出面41をクリーニングしていくことから、吐出面41にこびり付いたインクiを適切に除去できる。
【0133】
上述したヘッドカートリッジ2では、カートリッジ本体12に対してインクタンク11が着脱可能となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものではない。すなわち、このヘッドカートリッジ2自体が消耗品として取り扱われており、プリンタ本体3に対して着脱可能なことから、このカートリッジ本体12にインクタンク11が一体に設けられた構成とすることもできる。
【0134】
また以上では、本発明をプリンタ装置に適用した例について説明したが、本発明は、以上の例に限定されるものではなく、液体を吐出する他の液体吐出装置に広く適用することが可能である。例えばファクシミリやコピー機、液体中のDNAチップ用吐出装置(特開2002−253200号公報)、プリンタ配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出したりする液体吐出装置等にも適用可能である。
【0135】
また以上では、1つの発熱抵抗体55がインクiを加熱して吐出するインク吐出ヘッド44を例に挙げて説明したが、このような構造に限定されることはなく、複数の圧力発生素子を備え、各圧力発生素子に異なるエネルギー又は異なるタイミングでエネルギーを供給することで吐出方向を制御することが可能な吐出手段を備える液体吐出装置にも適用可能である。
【0136】
また以上では、1つの発熱抵抗体55によってインクiを加熱しながらノズル52aから吐出させる電気熱変換方式を採用しているが、このような方式に限定されず、例えばピエゾ素子といった圧電素子等の電気機械変換素子等によってインクを電気機械的にノズルより吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
【0137】
また以上では、ライン型のプリンタ装置1を例に挙げて説明したが、このことに限定されることはなく、例えばインクヘッドが記録紙Pの走行方向と略直交する方向に移動するシリアル型の液体吐出装置にも適用可能である。
【実施例】
【0138】
以下、本発明を適用した吐出面保護装置に備わる液体吸収部の吸収体の復元率が異なるものを作製した実施例1〜4、比較例1及び比較例2について説明する。
【0139】
〈実施例1〉
実施例1では、先ず、回転軸の外周側面に一定の厚みの吸収体を作製した。吸収体を成型する際は、ポリオレフィン樹脂からなる熱可塑性樹脂を15容量部と、直径が15μmの粒状のトリメチロールエタンからなる気孔形成材を85容量部と、滑材としてトリフェニルフォルフェード(以下、TPPと記す。)を所定量とを混合、混練して多孔質前駆体を作製し、大きさが10cm3となるように多孔質前駆体の試験片を作製した。この試験片に対して、1時間あたり300g/cm2の圧力をかけて、次に示す式1及び式2より復元率を求めた。式1における圧縮ひずみとは、試験片に所定の時間、圧力を加える前と、試験片に所定の時間、圧力を加え、試験片から圧力を除去し、加圧状態から開放された直後の試験片の厚みの変化量を比率で表したものである。初期の厚みとは、試験片に圧力を加える前の厚みである。加圧した後の厚みとは、試験片から圧力を除去し、加圧状態から開放された直後の厚みである。この式1より得られた圧縮ひずみを用いて式2より復元率を求めると、75%となった。復元率75%を有する多孔質前駆体を回転軸の外周側面に略円柱状に成型して吸収体を作製した。このようにして、実施例1のクリーニングローラを作製した。
【0140】
〈実施例2〉
実施例2では、1時間あたり300g/cm2の圧力をかけた際の復元率が80%を有する多孔質前駆体を用いて吸収体を作製したこと以外は実施例1と同様にクリーニングローラを作製した。
【0141】
〈実施例3〉
実施例3では、1時間あたり200g/cm2の圧力をかけた際の復元率が80%を有する多孔質前駆体を用い吸収体を作製したこと以外は実施例1と同様にクリーニングローラを作製した。
【0142】
〈実施例4〉
実施例4では、1時間あたり200g/cm2の圧力をかけた際の復元率が85%を有する多孔質前駆体を用い吸収体を作製したこと以外は実施例1と同様にクリーニングローラを作製した。
【0143】
〈比較例1〉
比較例1では、1時間あたり300g/cm2の圧力をかけた際の復元率が70%を有する多孔質前駆体を用いて吸収体を作製したこと以外は実施例1と同様にクリーニングローラを作製した。
【0144】
〈比較例2〉
比較例2では、1時間あたり200g/cm2の圧力をかけて際の復元率が75%を有する多孔質前駆体を用い吸収体を作製したこと以外は実施例1と同様にクリーニングローラを作製した。
【0145】
そして、以上のようにして作製した各サンプルのクリーニングローラをカバーキャップ部の吐出面と対向する面に取り付け、吐出面保護カバーとしてカートリッジ本体に装着し、ノズル径が20μm、発熱抵抗体の抵抗値が135Ω、ノズル数が24個のインク吐出ヘッドを備えるインクジェットプリント装置を用い、インク吐出ヘッドを駆動電圧11Vで駆動させてゼロックス社製のPPC用紙に、各サンプルで吐出面をクリーニングしながらアルファベッド文字を印刷した印字について印字品質評価を行った。その際に、実施例1、実施例2及び比較例1のクリーニングローラで吐出面をクリーニングする場合には、クリーニングローラの吸収体に300g/cm2の圧力がかかるようにする。また、実施例3、実施例4及び比較例2のクリーニングローラで吐出面をクリーニングする場合には、クリーニングローラの吸収体に200g/cm2の圧力がかかるようにする。
【0146】
なお、ここでの印刷には、染料としてC.I.ダイレクトブラック154を3重量部と、溶媒として水81.95重量部、ジエチレングリコール5重量部、グリセリン10重量部と、界面活性剤としてアセチレングリコールを0.05重量部とを混合、分散させたインクA、染料としてC.I.ダイレクトブラック154を3重量部と、溶媒として水81.8重量部、ジエチレングリコール5重量部、グリセリン10重量部と、界面活性剤としてアセチレングリコールを0.2重量部とを混合、分散させたインクB、染料としてC.I.ダイレクトブラック154を3重量部と、溶媒として水81.5重量部、ジエチレングリコール5重量部、グリセリン10重量部と、界面活性剤としてアセチレングリコールを0.5重量部とを混合、分散させたインクCの3種類を用い、それぞれのインクについて印字評価を行った。インクA,B,Cは、それぞれ界面活性剤の含有量を変えており、界面活性剤が多いほどPPC用紙への浸透性が高くなっている。すなわち、インクA,B,Cの順にPPC用紙への浸透性が高くなっている。
【0147】
以下、表1に実施例1〜実施例4、比較例1及び比較例2の各クリーニングローラで1万回クリーニングした後の印字の品質評価の評価結果を示す。
【0148】
【表1】
【0149】
なお、印字品質評価は、PPC用紙に印刷された文字を目視で観察することで評価した。そして、表1において、印字品質は、ノズルの周囲に付着したインクによってノズルより吐出されたインクの吐出方向がずれて起こる着弾位置ずれや、ノズルにインクが詰まってことで起こるインク不吐出によるインクの未着弾、いわゆる白ヌキが確認されないときは◎印で示し、多少の着弾位置ずれが見られるが品質に問題がないときは○印で示し、着弾位置ずれ及び白ヌキがみられるときは×印で示している。
【0150】
表1に示す評価結果より、復元率が75%以上の吸収体を有する実施例1〜実施例4のクリーニングローラでクリーニングされたインク吐出ヘッドで印刷した場合、復元率が75%よりも低い吸収体を有する比較例1及び比較例2のクリーニングローラでクリーニングされたインク吐出ヘッドで印刷した場合よりも、着弾位置ずれや白ヌキがなく印字品質が優れていることがわかる。
【0151】
比較例1及び比較例2では、吸収体の復元率が75%よりも低いため、クリーニング回数が増えるにつれて吸収体が未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みにまで戻らず、吸収体が圧縮されて厚みが薄くなってしまう。これにより、比較例1及び比較例2では、吸収体が吐出面に隙間なく当接且つ押圧されず、吐出面に残留している余分なインクを除去することができなくなり、インクの吐出方向のずれや不吐出が起こり、着弾位置ずれや白ヌキ等が生じた。また、比較例1及び比較例2では、吸収体が圧縮された状態から元の状態に戻りにくくなることによって、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れ、吸収できるインクの量が減少してしまい、吐出面に余分なインクが残ってしまった。
【0152】
これに対して、実施例1〜実施例4では、吸収体の復元率が75%以上であるため、クリーニングの1万回行っても吸収体が未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで戻るようになる。これにより、実施例1〜実施例4では、複数回クリーニングをした後であっても吸収体が吐出面と隙間なく当接且つ押圧しながら接するようになり、気孔の毛細管現象により吐出面に付着した余分なインクを除去することができる。また、実施例1〜実施例4では、吐出面をクリーニングした後に圧縮されたままとならず、復元されることによって、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れたままとならず、インクの吸収量が低下することが防止されている。したがって、実施例1〜実施例4では、インクの吐出方向のずれや不吐出が起こらず、印字品質が良好なものとなった。
【0153】
また、実施例2〜実施例4では、復元率が80%以上あるため、クリーニングを1万回繰り返しても、復元率が75%のときよりも吸収体が吐出面と適切に隙間なく当接且つ押圧されるようになるため、インクの吐出方向のずれや不吐出が全く起こらず、復元率が75%の吸収体を有する実施例1よりも印画品質が良好なものとなった。
【0154】
また、実施例1〜実施例4では、含有されている界面活性剤の量が異なり、吐出口に対する濡れ性が異なるインクA、インクB及びインクCを用いた場合であっても、吐出面に付着した余分なインク及び吐出口内に固着したインクを除去することができ、インクの濡れ性によらず適切にクリーニングすることができる。
【0155】
次に、実施例1〜実施例4、比較例1及び比較例2のクリーニングローラでインクを吐出した後にクリーニングしたカートリッジ本体の吐出面を観察し、吐出面が適切にクリーニングされているかどうかを確認する吐出面クリーニング評価を行った。ここでも、上述したインクA,B,Cについて、これらのインクをそれぞれノズルより吐出した後に、各サンプルのクリーニングローラでクリーニングが行われた吐出面の状態を確認した。
【0156】
以下、表2に各サンプルでクリーニングした吐出面のクリーニング状態の評価結果を示す。
【0157】
【表2】
【0158】
なお、表2において、吐出面クリーニングは、吐出面に余分なインクが殆どなく吐出面が適切にクリーニングされているときを◎印で示し、吐出面に微量のインクが残留しているときを○印で示し、吐出面全体に亘って多量のインクが残留しているときを×印で示している。
【0159】
表2に示す評価結果より、実施例1〜実施例4のクリーニングローラでクリーニングした吐出面は、比較例1及び比較例2のクリーニングローラでクリーニングした吐出面に比べ、余分なインクが除去され、適切にクリーニングされていることがわかる。
【0160】
比較例1及び比較例2では、吸収体の復元率が75%よりも低いため、クリーニング回数が増えるにつれて圧縮されたままとなり、吸収体が吐出面に隙間なく当接且つ押圧できず、吐出面に残留している余分なインクを除去することができなくなった。また、比較例1及び比較例2では、吸収体が圧縮されたままによって、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れ、インクの吸収量が減少し、吐出面を適切にクリーニングすることができなくなった。
【0161】
これに対して、実施例1〜実施例4では、吸収体の復元率が75%以上であるため、クリーニングをした後であっても吸収体が圧縮されたままとならず、吸収体がクリーニング前の厚み、若しくはクリーニング前の状態に近い状態の厚みまで戻るようになる。これにより、実施例1〜実施例4では、吐出面と吸収体とが隙間なく当接及び押圧されるように維持されるため、吐出面に残留している余分なインクを除去することができる。また、実施例1〜実施例4では、吸収体が圧縮されたままとならないため、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れたままとならず、気孔の毛細管現象によってインクを適切に吸収することができ、吐出面をクリーニングすることができる。したがって、実施例1〜実施例4は、比較例1及び比較例2のクリーニングローラと比べ、吐出面に付着したインクの払拭能力、吸収能力に優れ、クリーニング能力が高いことがわかる。
【0162】
また、表2に示す結果から、復元率が80%以上の吸収体を有する実施例2〜実施例4のクリーニングローラで吐出面とクリーニングすると、復元率が75%の吸収体を有する実施例1よりもより吐出面が良好な状態となった。さらにまた、表2に示す結果から、吐出口に対する濡れ性が異なるインクA、インクB及びインクCを用いた場合でも吐出面が適切にクリーニングされていることから、吐出口に対する濡れ性によらず、吐出面に付着したインクの払拭能力、吸収能力に優れ、クリーニング能力が高いことがわかる。
【0163】
以上のことから、クリーニングローラを製造するに際して、吸収体の復元率が75%以上にすることは、インク吐出ヘッドの吐出面をクリーニングするクリーニング能力を維持することができるクリーニングローラを製造する上で大変重要であることがわかる。
【0164】
次に、インク吐出ヘッドの吐出面及び実施例1〜実施例4、比較例1、比較例2のクリーニングローラを室温にて一週間外気に曝し、ノズルより露呈するインクの水分を蒸発させてノズル内のインクを増粘させた後に、上述した印字品質評価を行った。なお、ここでも、印字品質評価は、インクA,B,Cについてそれぞれ行った。
【0165】
以下、表3に、インク吐出ヘッドの吐出面を室温にて一週間外気に曝した後に、一週間外気に曝された実施例1〜実施例4、比較例1及び比較例2のクリーニングローラで吐出面をクリーニングしながら印刷された印字の品質評価の評価結果を示す。
【0166】
【表3】
【0167】
なお、表3において、印字品質は、着弾位置ずれや白ヌキが確認されないときは◎印で示し、多少の着弾位置ずれが見られるときは○印で示し、着弾位置ずれ及び白ヌキがみられるときは×印で示している。
【0168】
表3に示す評価結果から、復元率が75%以上の吸収体を有する実施例1〜実施例4のクリーニングローラで吐出面をクリーニングしたインク吐出ヘッドで印刷した印字品質は、復元率が75%よりも低い吸収体を有する比較例1及び比較例2のクリーニングローラで吐出面をクリーニングしたインク吐出ヘッドで印刷した印字品質に比べ、着弾位置ずれや白ヌキがなく優れていることがわかる。
【0169】
比較例1及び比較例2では、復元率が75%よりも低いため、クリーニングする回数が増すにつれて吸収体が圧縮され厚みが薄くなり、吐出面に吸収体が適切に接しなくなってしまう。また、比較例1及び比較例2では、吸収体が元の状態に戻りにくくなることによって、吸収体の外周部及び内部に形成されている気孔が潰れたままとなる。これにより、比較例1及び比較例2では、一週間放置されたインク吐出ヘッドのノズル内で増粘したインクを気孔の毛細管現象で吸い込むことができず、着弾位置ずれ及び白ヌキがみられ、印字品質が低下した。
【0170】
これに対して、実施例1〜実施例4では、復元率が75%以上であるため、吸収体が圧縮されたままとならず、吸収体が未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで戻るようになる。実施例1〜実施例4では、吸収体の厚みが戻ることによって、吐出面に適切に隙間なく当接且つ押圧されるようになる。また、実施例1〜実施例4では、圧縮されたままとならないため、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れたままとならず、一週間放置されたインク吐出ヘッドのノズル内で増粘したインクを気孔の毛細管現象で吸い込むことができる。これにより、実施例1〜実施例4で、ノズル内から増粘したインクが除去され、インクが所定の方向に適切に吐出することができるようになり、着弾位置ずれ及び白ヌキが生じるのが防止され、印字品質が良好であった。
【0171】
また、実施例2〜実施例4では、吸収体の復元率が80%以上であるため、吸収体の変形が復元率75%の実施例1よりも小さく、より吐出面に適切に接することから、クリーニング能力が高く、印字品質が良好となった。さらにまた、実施例1〜実施例4では、吐出口に対する濡れ性が異なるインクA、インクB及びインクCを用いた場合でも吐出面が適切にクリーニングされていることから、吐出口に対する濡れ性によらず、ノズル内の増粘したインクを吸い込むことができる。
【0172】
以上のことから、クリーニングローラを製造するに際して、吸収体の復元率が75%以上とすることは、一週間外気に曝されてもクリーニング能力が劣化することのない優れたクリーニングローラを製造する上で大変重要であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本発明が適用された液体吐出装置を示す分解斜視図である。
【図2】同液体吐出装置に備わるプリンタヘッドカートリッジを示す分解斜視図である。
【図3】同プリンタヘッドカートリッジの構成を示す断面図である。
【図4】同プリンタヘッドカートリッジの構成を模式的に示す図である。
【図5】同プリンタヘッドカートリッジに備わるインク吐出ヘッドを模式的に示す断面図である。
【図6】同インク吐出ヘッドを示しており、同図(A)は発熱抵抗体状に気泡が発生した状態を模式的に示す断面図であり、同図(B)はノズルよりインクを吐出した状態を模式的に示す断面図である。
【図7】同プリンタヘッドカートリッジの吐出面における吐出口領域を示す平面図である。
【図8】同液体吐出装置の構成を示す透視側面図である。
【図9】同液体吐出装置の上部筐体が下部筐体に対して開放された状態を示す透視側面図である。
【図10】同液体吐出装置のカバー開閉機構の構成を模式的に示す側面図である。
【図11】同カバー開閉機構に備わるスライダの構成を示す平面図である。
【図12】同液体吐出装置の駆動機構の構成を一部透視して示す側面図である。
【図13】同液体吐出装置の印刷動作を説明するための透視側面図である。
【図14】同プリンタヘッドカートリッジの吐出面保護カバーが前面側に移動しながら吐出面をクリーニングする状態を示す模式図である。
【図15】同吐出面保護カバーが背面側に移動しながら吐出面をクリーニングする状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0174】
1 液体吐出装置(液体吐出装置)、2 プリンタヘッドカートリッジ2 プリンタ本体、11 インクタンク、12 カートリッジ本体、37 ヘッド部、39 ガイド溝、41 吐出面、41a 吐出口領域、44 インク吐出ヘッド、52a ノズル、61 吐出面保護カバー、62 カバーキャップ部、63 キャップ保持片、64 クリーニングローラ、71 回転軸、72 吸収体
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を適切に吐出できるように吐出面に付着した余分な液体を除去すると共に、吐出面を保護する吐出面保護装置及びこの吐出面保護装置を備える液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置として、対象物となる記録紙Pに対してインク吐出ヘッドよりインクを吐出させて、画像や文字を記録するインクジェット方式のプリンタ装置がある。このインクジェット方式を用いたプリンタ装置は、低ランニングコスト、装置の小型化、印刷画像のカラー化が容易という利点がある。インクジェット方式を用いたプリンタ装置では、例えばイエロー、マゼンダ、シアン、ブラック等の各色インクが、インクタンクからインク吐出ヘッドのインク液室等に供給される。
【0003】
このプリンタ装置は、インク液室等に供給されたインクをインク液室内に配置された発熱抵抗体や圧電素子等の圧力発生素子で押圧して、インク吐出ヘッドに設けられた微小なインク吐出口、いわゆるノズルより液滴の状態で吐出させ、吐出させたインク液滴を対象物となる記録紙等に着弾させて画像や文字を印刷する(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
このようなインクジェット方式のプリンタ装置では、いわゆるインクサテライト等の不要なインクが、インク吐出ヘッドのノズルが設けられた吐出面に付着すると、ノズルよりインク液滴を吐出することが困難になったり、ノズルから吐出されたインク液滴の吐出方向が乱れたりする虞がある。また、このプリンタ装置においては、例えば印刷を長時間行わない場合(すなわち長時間ノズルよりインク液滴を吐出させない場合)、ノズルからインク中の水分が蒸発してインクが増粘してしまう、そのため、ノズルよりインク液滴を適切に吐出することが困難になる。場合によっては、増粘したインクでノズルが詰まる虞もある。このようなプリンタ装置では、印刷時に、インクが着弾されない部分、いわゆる白ヌケや、白ヌケが連続して現れる白スジ等が生じて印刷品質が低下する虞がある。
【0005】
このような問題を解決するために、例えばゴムブレードや金属ブレード等のクリーニングブレードを用いたり、吸収体等を用いて吐出面を払拭及び吐出面に付着している余分なインクを吸収することにより、吐出面をクリーニングすることが提案されている。例えば、多孔質物質を用いた吸収体でインクを吸収することについて特許文献2に提案され、和紙や布を用いてインクを吸収することについて特許文献3及び特許文献4に提案されている。
【0006】
しかしながら、上述したクリーニングブレードを用いた場合には、吐出面を擦るように払拭するので、ノズル内の増粘したインクを完全に除去することが困難であったり、吐出面に付着した余分なインクの付着している位置を移動させるだけになってしまう。このため、クリーニングブレードを用いた場合では、インクの不吐出や吐出方向の乱れを完全に解消することができない。また、吸収体を用いた場合にも、ノズル内の増粘したインクを完全に除去することができず、インクの不吐出や吐出方向の乱れが生じてしまう。
【0007】
また、吐出面に付着した余分なインク等を除去するためにローラ状の吸収体を用いる場合がある。このローラ状の吸収体を用いた場合には、軸中心に吐出面を転がり吐出面に付着した余分なインクを払拭するが、ノズル内の増粘したインクまでを除去することは困難であり、インク液滴の不吐出や吐出方向がずれてしまうことが起こる。
【0008】
このため、例えば特許文献5に示されるようにローラに複数の溝を設けて、吐出面に付着した余分なインクを溝部分で削るように除去するものがある。しかしながら、溝が設けられた吸収ローラでは、吐出面を払拭するときの摩擦が大きいため、吐出面に設けられた電極を保護する保護層等が摩耗してインク吐出ヘッドが劣化する虞がある。また、吸収ローラに設けられた溝の角部が簡単に摩耗してしまい、クリーニング能力が低下し易いといった問題点もある。
【0009】
【特許文献1】特公昭61−61985号公報
【特許文献2】特開昭57−61574号公報
【特許文献3】特開昭57−80064号公報
【特許文献4】特開昭57−116655号公報
【特許文献5】特開平6−255117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、液体を所定の方向に吐出することができるように吐出面を適切な状態に維持及び保護する吐出面保護装置及び液体吐出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成する本発明に係る吐出面保護装置は、液体を液滴の状態で吐出し、対象物に着弾させることで記録を行う液体吐出ヘッド部の上記液滴を吐出する吐出口が形成された吐出面に保持され、液体吐出ヘッド部の吐出口より液滴が吐出されるときに、吐出面に対して略平行に移動し、対象物に対して吐出口を臨ませるように吐出面より退避するカバーキャップ部と、カバーキャップ部を液体吐出ヘッド部の吐出面に対して略平行に移動可能に保持するキャップ保持部と、カバーキャップ部の吐出面と対向する面に設けられた吸収体が、吐出面に当接された状態でカバーキャップ部を吐出面に対して略平行に移動させることでカバーキャップ部と共に移動して吐出面に付着している液体を吸収する液体吸収部とを備え、吸収体は、使用する前の状態の厚みに対して、吐出面から離間した際の状態の厚みが75%以上復元されることを特徴とする。
【0012】
また、上述した目的を達成する本発明に係る液体吐出装置は、液体を液滴の状態で吐出し、対象物に着弾させることで記録を行い、液滴を対象物に向かって吐出させる吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッド部と、液体吐出ヘッド部の吐出口より液滴が吐出されるときに、吐出面に対して略平行に移動し、対象物に対して吐出口を臨ませるように吐出面より退避するカバーキャップ部と、カバーキャップ部を液体吐出ヘッド部の吐出面に対して略平行に移動可能に保持するキャップ保持部と、カバーキャップ部の吐出面と対向する面に設けられた吸収体が、吐出面に当接された状態でカバーキャップ部を吐出面に対して略平行に移動させることでカバーキャップ部と共に移動して吐出面に付着している液体を吸収する液体吸収部とを有する吐出面保護カバーと、液体吐出ヘッド部を備える装置本体とを有し、吸収体は、使用する前の状態の厚みに対して、吐出面から離間した際の状態の厚みが75%以上復元されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吐出面に付着した液体を吸収する液体吸収部の吸収体が使用する前の状態の厚みに対して、吐出面から離間した際の状態の厚みが75%以上復元される。即ち、吸収体は、吐出面に当接されて圧縮されると形状が変化するが、吐出面から離間して加圧状態から開放されると厚みが吸収体を使用する前、即ち未使用状態の厚みの75%以上戻るようになり、吐出面に当接される前後で未使用状態の厚みがほぼ維持されている。これにより、本発明では、吐出面に当接され、吐出面に付着した液体を除去する行為を複数回行っても、吸収体が圧縮されたままとならず、厚みが未使用状態における厚みと同じ、又はほぼ同じに維持されるので、吐出面と吸収体との当接状態が良好な状態で維持される。したがって、本発明では、吸収体の液体を吸収する能力が維持され、吐出面に付着した余分な液体や吐出口内で増粘した液体を除去することができ、不吐出や吐出方向のずれを防止することができる。
【0014】
また、本発明では、高温環境下においても同様に、吸収体の厚みが未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで復元されるので、吸収体の液体を吸収する能力が維持され、吐出面に付着した余分な液体や吐出口内で増粘した液体を適切に除去することができる。これにより、本発明では、高温環境下でも液体の不吐出や吐出方向のずれが防止され、適切に吐出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を適用したプリンタ装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、プリンタ装置1は、所定の方向に走行する記録紙Pに対してインクi等を吐出して画像や文字を印刷するものである。また、このプリンタ装置1は、記録紙Pの印刷幅に合わせて、記録紙Pの幅方向、すなわち図1中矢印W方向にインク吐出口(ノズル)を略ライン状に並設した、いわゆるライン型のプリンタ装置である。図1に示す本発明を適用したインクジェット型のプリンタ装置1は、対象物である記録紙Pに対して、液体であるインクiを吐出し、着弾させることによって、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置より入力された文字データや画像データ等に応じたインクドットからなる画像や文字等を記録するものである。
【0017】
このプリンタ装置1は、液体吐出ヘッドであるプリンタヘッドカートリッジ(以下、ヘッドカートリッジという。)2と、このヘッドカートリッジ2が装着される装置本体であるプリンタ本体3とを備えている。
【0018】
また、このプリンタ装置1では、ヘッドカートリッジ2が消耗品として取り扱われており、プリンタ本体3に対してヘッドカートリッジ2が着脱可能とされることによって、容易に交換が可能となっている。
【0019】
先ず、このようなプリンタ本体3に対して着脱可能なヘッドカートリッジ2について説明する。このヘッドカートリッジ2は、インクiを吐出する吐出口であるノズルを記録紙Pの幅に対応する長さで略直線状に複数並べて配置した、いわゆるライン型のプリンタヘッドである。
【0020】
このヘッドカートリッジ2は、図1及び図2に示すように、インクを収容するインクタンク11が装着されるカートリッジ本体12を備え、このカートリッジ本体12には、カラー印刷に対応して、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラックの4色からなるインクタンク11y,11m,11c,11kが着脱可能となっている。これらインクタンク11y,11m,11c,11kは、同じ構成を有するので、以下まとめてインクタンク11として説明する。
【0021】
ここで、インクタンク11に収容されるインクiについて説明する。インクiは、印刷するときに記録液となり、例えば色素となる水溶性染料や、各種顔料等といった着色剤と、この着色剤を分散させる溶媒と、界面活性剤とを含有している。
【0022】
着色剤としては、以下に示す直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料等といった水溶性染料等をもちいることができる。具体的に、イエロー系直接染料としては、例えばC.I.ダイレクトイエロー1、同8、同11、同12、同24、同26、同27、同28、同33、同39、同44、同50、同58、同85、同86、同87、同88、同89、同98、同100、同110等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。マゼンタ系の直接染料としては、例えばC.I.ダイレクトレッド1、同2、同4、同9、同11、同13、同17、同20、同23、同24、同28、同31、同33、同37、同39、同44、同46、同62、同63、同75、同79、同80、同81、同83、同84、同89、同95、同99、同113、同197、同201、同218、同220、同224、同225、同226、同227、同228、同229、同230、同321等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。シアン系の直接染料としては、例えばC.I.ダイレクトブルー1、同2、同6、同8、同15、同22、同25、同41、同71、同76、同77、同78、同80、同86、同90、同98、同106、同108、同120、同158、同160、同163、同165、同168、同192、同193、同194、同195、同196、同199、同200、同201、同202、同203、同207、同225、同226、同236、同237、同246、同248、同249等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。ブラック系の直接染料としては、例えばC.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同56、同62、同71、同74、同75、同77、同94、同105、同106、同107、同108、同112、同113、同117、同118、同132、同133、同146等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を用いる。
【0023】
イエロー系の酸性染料としては、例えばC.I.アシッドイエロー1、同3、同7、同11、同17、同19、同23、同25、同29、同36、同38、同40、同42、同44、同49、同59、同61、同70、同72、同75、同76、同78、同79、同98、同99、同110、同111、同112、同114、同116、同118、同119、同127、同128、同131、同135、同141、同142、同161、同162、同163、同164、同165等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。マゼンタ系の酸性染料としては、例えばC.I.アシッドレッド1、同6、同8、同9、同13、同14、同18、同26、同27、同32、同35、同37、同42、同51、同52、同57、同75、同77、同80、同82、同83、同85、同87、同88、同89、同92、同94、同97、同106、同111、同114、同115、同117、同118、同119、同129、同130、同131、同133、同134、同138、同143、同145、同154、同155、同158、同168、同180、同183、同184、同186、同194、同198、同199、同209、同211、同215、同216、同217、同219、同249、同252、同254、同256、同257、同262、同265、同266、同274、同276、同282、同283、同303、同317、同318、同320、同321、同322等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。シアン系の酸性染科としては、例えばC.I.アシッドブルー1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同27、同29、同40、同41、同43、同45、同54、同59、同60、同62、同72、同74、同78、同80、同82、同83、同90、同92、同93、同100、同102、同103、同104、同112、同113、同117、同120、同126、同127、同129、同130、同131、同138、同140、同142、同143、同151、同154、同158、同161、同166、同167、同168、同170、同171、同175、同182、同183、同184、同187、同192、同199、同203、同204、同205、同229、同234、同236等が挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。ブラック系の酸性染科としては、例えばC.I.アシッドブラック1、同2、同7、同24、同26、同29、同31、同44、同48、同50、同51、同52、同58、同60、同62、同63、同64、同67、同72、同76、同77、同94、同107、同108、同109、同110、同112、同115、同118、同119、同121、同122、同131、同132、同139、同140、同155、同156、同157、同158、同159、同191等を挙げることができ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
【0024】
以上に挙げた染料等を分散させる溶媒としては、例えば低粘度、取り扱いが容易、低コスト、無臭等といった特性を満たす水等を用いる。また、インクiの溶媒としては、インクi中に不要なイオンの混入を防止するために、例えばイオン交換水等を用いることもできる。
【0025】
また、インクiには、水やイオン交換水等といった溶媒の他に、例えば脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価アルコールの誘導体等といった水溶性有機溶剤も溶媒として含有させる。
【0026】
具体的に、脂肪族一価アルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコールが挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。以上に挙げた脂肪族一価アルコールを溶媒として用いた場合、インクiの表面張力を適切にでき、記録紙P等に対する浸透性、ドット形成性、印刷された画像の乾燥性に優れたインクiが得られる。そして、この場合、脂肪族一価アルコールのうち、エチルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等をインクiの溶媒として用いることで、上述した特性の優れたインクiが得られる。
【0027】
脂肪族多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール等のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、チオジグリコール等が挙げられ、これらのうち一種又は複数種を混合して用いる。
【0028】
脂肪族多価アルコールの誘導体としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル等の上述した脂肪族多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エチレングリコールジアセテート等の上述した脂肪族多価アルコールの低級カルボン酸エステル類等を挙げることができる。以上に挙げた脂肪族多価アルコール及びその誘導体をインクiの溶媒として用いた場合、インクiを乾きにくくさせ、インクiの氷点を低くできることから、インクiを長期保存したときの物性の変化を抑え、且つ乾いたインクiでノズル52aが目詰まりを起こすことを防止することができる。
【0029】
したがって、染料等を分散させる溶媒として、水等の他に、それぞれが特有の性質を有する脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価アルコール誘導体等のうちの一種又は複数種を混合して用いることで、目的や用途にあったインクiを得ることができる。
【0030】
また、インクiには、脂肪族一価アルコール、脂肪族多価アルコール及びその誘導体等の他に、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、ケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、γ―ブチルラクトン、グリセリン、1.2.6−ヘキサントリオール等の3価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1.3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素複素環化合物等のうち一種又は複数種を混合して添加してもよい。これにより、インクiでは、上述した諸特性の向上を図ることができる。
【0031】
インクiに含有される界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド等の含窒素類等をポリオキシエチレンアセリレングリコール類等と混合した界面活性剤等が挙げられ、これらのうちの一種以上を用いる。
【0032】
なお、インクiには、上述した染料、溶媒、界面活性剤等の他に、例えば粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐剤、防錆剤、防かび剤等を添加させることもできる。具体的に、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤等としては、例えばゼラチン、カゼイン等のタンパク質、アラビアゴム等の天然ゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、リグニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらのうちの一種以上を添加させることもできる。また、防腐剤、防錆剤、防かび剤等としては、例えば安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等が挙げられ、これらのうちの一種以上を添加させることもできる。
【0033】
以上で説明したインクiは、イエローを呈するものがインクタンク11yに収容され、マゼンタを呈するものがインクタンク11mに収容され、シアンを呈するものがインクタンク11cに収容され、ブラックを呈するものがインクタンク11kに収容される。
【0034】
インクiを収容するインクタンク11は、図2及び図3に示すように、インクiを収容する液体収容部であるインク収容部21と、インク収容部21内のインクiをカートリッジ本体12へと送り出す液体送出部であるインク送出部22と、インク収容部21を外部と連通させる外部連通孔23と、外部連通孔23からインク収容部21内に外部の空気を導入するための空気導入管24とを有している。
【0035】
インク収容部21は、インクiを収容する収容空間を有し、底面部の略中央部にはカートリッジ本体12へインクiを供給するノズルであるインク送出部22が下面中央部から下方に向かって突出して設けられている。また、インク収容部21には、上面中央部に外部の空気を取り込む際の孔となる外部連通孔23が設けられている。インク収容部21は、外部連通孔23から内部に向かって延長して設けられた空気導入管24を介して、内部に空気が取り込むことができる。インクタンク11では、インク収容部21内のインクiがインク送出部22からカートリッジ本体12へと送り出された際に、このインク収容部21内のインクiが減少した分に相当する空気が、外部連通孔23から空気導入管24を通してインク収容部21内に取り込まれることになる。
【0036】
この空気導入管24の中途部には、インク収容部21から逆流したインクiがいきなり外部連通孔23から外部に流出することがないように、インクiを一時的に貯留させる液体貯留部であるインク貯留部25が設けられている。これにより、インクタンク11では、インク収容部21から空気導入管24を通して逆流したインクiをインク貯留部25が一時的に貯留することによって、外部連通孔23から外部にインクiが漏れ出すことなく、再度インクiをインク収容部21側に戻すことができる。
【0037】
このインクタンク11は、後述するカートリッジ本体12のタンク装着部31に固定するための固定手段である係合段部26及び係止突部27を有している。係合段部26は、インクタンク11の長辺方向の一端側に形成された段差部であり、後述するタンク装着部31の側面に形成された被係合部32に係合される。係止突部27は、インクタンク11の長辺方向の他端側の側面部から突出形成された突起部であり、後述するタンク装着部31のラッチレバー33に係合される。この係合段部26及び係止突部27により、インクタンク11はカートリッジ本体12に固定されて装着される。
【0038】
一方、カートリッジ本体12は、図2に示すように、上述した各色に対応したインクタンク11y,11m,11c,11kが装着されるタンク装着部31を有している。
【0039】
このタンク装着部31は、記録紙Pの幅に対応して全体略直方体状に形成されたカートリッジ本体12の上面部から各インクタンク11y,11m,11c,11kを収納するのに十分な深さで形成された凹部であり、その底面部は、各インクタンク11y,11m,11c,11kがカートリッジ本体12の短辺方向に並んで配置されるように、隔壁31aによって仕切られた構造を有している。
【0040】
そして、このタンク装着部31には、図3に示すように、上述したインクタンク11を固定するための固定手段である被係合部32、ラッチレバー33及び板バネ34が設けられている。
【0041】
被係合部32は、上述したインクタンク11に形成された係合段部26と係合される部分であり、タンク装着部31の長辺方向の一端側に位置する開口端から長辺方向に所定の幅だけ突出形成されている。
【0042】
ラッチレバー33は、タンク装着部31の長辺方向の他端側に位置する底面コーナー部から上方に向かって突出された弾性変位片であり、その先端部がタンク装着部31の側面部に対して近接離間する方向に弾性変位可能となっている。また、このラッチレバー33の先端側には、上述したインクタンク11の係止突部27が係止される係止孔33aが穿設されている。
【0043】
板バネ34は、タンク装着部31の底面部に設けられ、このタンク装着部31に装着されたインクタンク11を上方に向かって押圧する押圧部材である。この板バネ34は、略矩形状に形成され、中間部が上方に向かって折り曲げられた形状からなる。
【0044】
このタンク装着部31にインクタンク11を装着する際には、タンク装着部31の上方からインクタンク11を挿入し、インクタンク11の係合段部26をタンク装着部31の被係合部32に係合させ、インクタンク11の係止突部27をタンク装着部31のラッチレバー33に係止させて、インクタンク11を固定して装着する。
【0045】
以上のようなインクタンク11が装着されるカートリッジ本体12は、図3及び図4に示すように、上述したインクタンク11のインク送出部22と連結される連結部35と、この連結部35に連結されたインクタンク11からのインクiの供給を行う液体供給部であるインク供給部36と、このインク供給部36により供給されたインクiを吐出するヘッド部37とを有している。
【0046】
連結部35は、タンク装着部31の底面中央部に設けられたノズルであり、その先端が上述したインク送出部22に嵌合されることによって、インクタンク11のインク送出部22と連結される。連結部35は、インク送出部22と連結されることによって、インクタンク11からインクiがヘッド部37側に供給する。
【0047】
インク供給部36は、後述するヘッド部37のノズル52aからインクiが吐出された際に、ヘッド部37側に発生する負圧によって図示しない弁が開放されてインクタンク11のインク収容部21からヘッド部37へとインクiを供給し、インクタンク11のインク収容部21からヘッド部37へインクiが供給されて、ヘッド部37側の圧力が定常状態に戻ると、弁を閉塞してインクタンク11のインク収容部21からヘッド部37へのインクiの供給を停止する弁機構である。
【0048】
インク供給部36は、後述するヘッド部37のノズル52aからインクiを吐出する度に、インクiの供給動作を繰り返す。一方、インクタンク11では、上述したインク供給部36によるインクiの供給動作に連動して、インク収容部21内のインクiがインク供給部36側に供給されると、インク収容部21内のインクiが減少すると共に、この減少したインクiに相当する空気が外部連通孔23から空気導入管24を通してインク収容部21内に導入される。これにより、インク収容部21内の圧力を平衡状態に保ちながら、インク供給部36側にインクiを適切に供給することができる。
【0049】
ヘッド部37は、インクiを液滴の状態で吐出させ、記録紙Pの幅に相当する長さに亘って略ライン状に複数設けられたノズル52aが形成された吐出面41と、吐出面41より上方に位置し、インク供給部36からインクiが供給されるインク供給口42と、このインク供給口42から供給されたインクiを各ノズルへと導くインク流路43とを有する。
【0050】
ヘッド部37は、所定数のノズル52aを一組とし、この一組のノズル52aを有するインク吐出ヘッド44が図7に示すように千鳥状に配置されている。すなわち、このインク吐出ヘッド44は、インク流路43を挟んで記録紙Pの幅方向に互い違いに並ぶように配置されている。
【0051】
インク吐出ヘッド44は、図5に示すように、ベースとなる回路基板51と、複数のノズル52aが形成されたノズルシート52と、回路基板51とノズルシート52との間をノズル52a毎に区画するフィルム53と、インク流路43を通して供給されたインクiを加圧するインク液室54と、インク液室54に供給されたインクiを加熱する発熱抵抗体55とを有している。
【0052】
回路基板51は、シリコン等からなる半導体ウェハ上に、ロジックIC(Integrated Circuit)やドライバートランジスタ等からなる制御回路を構成すると共に、インク液室54の上面部を形成している。
【0053】
ノズルシート52は、吐出面41に向かって縮径され、且つ吐出面41側の口径が20μm程度のノズル52aが穿設されると共に、回路基板51とフィルム53を挟んで対向配置されることで、インク液室54の下面部を形成している。
【0054】
フィルム53は、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストからなり、上述したインク流路43と連通される部分を除いて各ノズル52aの周囲を囲むように形成されている。また、このフィルム53は、回路基板51とノズルシート52との間に介在されることによって、インク液室54の側面部を形成している。
【0055】
インク液室54は、上述した回路基板51、ノズルシート52及びフィルム53により囲まれることで、ノズル52a毎にインク流路43から供給されたインクiを加圧する加圧空間を形成している。
【0056】
発熱抵抗体55は、インク液室54に臨む回路基板51に配置されると共に、この回路基板51に設けられた制御回路等と電気的に接続されている。そして、この発熱抵抗体55は、制御回路等により制御されることで発熱し、インク液室54内のインクiを加熱する。
【0057】
このインク吐出ヘッド44では、回路基板51の制御回路が発熱抵抗体55を駆動制御し、選択された発熱抵抗体55に対して、例えば1〜3マイクロ秒程度の間だけパルス電流を供給する。これにより、インク吐出ヘッド44では、発熱抵抗体55が急速に加熱される。すると、インク吐出ヘッド44では、図6(A)に示すように、発熱抵抗体55と接するインク液室54内のインクiに気泡bが発生する。そして、インク吐出ヘッド44では、図6(B)に示すように、このインク液室54内において、気泡bが膨張しながらインクiを加圧し、押し退けられたインクiが液滴の状態になってノズル52aより吐出される。また、インク吐出ヘッド44においては、インクiの液滴が吐出された後は、インク流路43を通してインクiがインク液室54に供給されることによって、再び吐出前の状態へと戻る。
【0058】
なお、上述したインク吐出ヘッド44は、回路基板51の一主面上にフィルム53を全面に亘って形成し、フォトリソグラフィ技術を用いてフィルム53をインク液室54に対応した形状に成形した後に、この上にノズルシート52を積層することで形成される。
【0059】
また、上述したインク吐出ヘッド44は、発熱抵抗体55によってインクiを加熱しながら吐出させる電気熱変換方式を採用しているが、このような方式に限定されず、例えば圧電素子等の電気機械変換素子によってインクiの液滴を電気機械的に吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
【0060】
また、上述した各色に対応したインク供給部36の下方には、それぞれヘッド部37が設けられている。そして、カートリッジ本体12の底面部には、各インクタンク11y,11m,11c,11kに対応した各ヘッド部37の吐出面41が、それぞれカートリッジ本体12の短辺方向に並んで設けられており、これらは連続した吐出面41を形成している。
【0061】
以上のような構成のヘッドカートリッジ2は、上述した構成の他に、後述するガイド溝39や、インク収容部12内のインクiの残量を検出する図示しない残量検出部や、インクタンク11y,11m,11c,11kを識別する図示しないインクタンク識別部等を備えている。
【0062】
また、カートリッジ本体12の底面部には、図1及び図2に示すように、上述した吐出面41を保護すると共に、吐出面41のノズル52aより露出するインクiの乾燥を防ぎ、且つ吐出面41のノズル52a以外の領域に付着したインクiを除去して、吐出面41をクリーニングする吐出面保護カバー61が設けられている。
【0063】
この吐出面保護カバー61は、カートリッジ本体12の底面部に対応した略矩形状のカバーキャップ部62と、カートリッジ本体12に対してカバーキャップ部62を着脱可能に保持させるキャップ保持片63と、カバーキャップ部62のカートリッジ本体12と対向する面に設けられ、吐出面41に付着したインクiをクリーニングするクリーニングローラ64とを備えている。
【0064】
この吐出面保護カバー61おいて、カバーキャップ部62は、カートリッジ本体12の吐出面41よりインクiが吐出されるときに、吐出面41に対して略平行に図2中矢印D方向に移動し、少なくとも記録紙Pに対してノズル52aを臨ませるように吐出面41のノズル52aが形成されている領域より退避する。また、カバーキャップ部62は、カートリッジ本体12に保持されて吐出面41を閉塞した状態において、ヘッド部37より滴り落ちたインクiを受ける受け皿となり、且つカートリッジ本体12と連続した底面部となってカートリッジ本体12をプリンタ本体3より取り外したときに吐出面41のインクiが他に付着することを防止する。
【0065】
キャップ保持片63は、カバーキャップ部62の長辺方向の両側に、上方に向かって突出し、且つ先端が外側に向かって略直角に折り曲げられてなる一対の突部であり、カートリッジ本体12に対する着脱方向、すなわちカバーキャップ部62の短辺方向に亘って突出形成されている。そして、キャップ保持片63は、カートリッジ本体12の吐出面41に設けられた一対のガイド溝39に係合されることで、吐出面41に対してカバーキャップ部62を略平行移動可能に保持する。
【0066】
また、クリーニングローラ64は、図2に示すように、略円柱棒状の回転軸71と、この回転軸71の外周側面全周に亘って所定の厚みをもって設けられる吸収体72とを有する。クリーニングローラ64は、カバーキャップ部62が吐出面41に対して略平行に図2中矢印D方向に示す方向に移動することによって、上述したインク吐出ヘッド44がノズル52aよりインクiを液滴の状態で吐出したときに、吐出面41に余分なインクiとして付着する微少なインク滴、いわゆるインクサテライト等を吐出面41より拭き取ったり、吸い取ったりする液体吸収部である。このクリーニングローラ64は、吐出面41から余分なインクiを除去し、吐出面41をクリーニングする。
【0067】
回転軸71は、軸方向の長さが、少なくとも吐出面41の図2中矢印Wで示す記録紙Pの幅方向で例えばノズル52aが設けられた領域より長くされている。そして、回転軸71は、軸がカバーキャップ部62におけるカートリッジ本体12に装着される側の端部に沿うように、その両端が図示しない保持部によってカバーキャップ62の吐出面41と対向する面に保持され、軸を中心にして周方向に回転自在にされている。
【0068】
吸収体72は、図2及び図7に示すように、吐出面41に設けられたノズル52aの吐出面41側の口径より小さな孔径の気孔を有する有機樹脂多孔質体等からなり、回転軸71の外周面に所定の厚みをもって記録紙Pの幅方向に並んだノズル52aと対向するように取り付けられている。そして、吸収体72は、図7に示すように、例えば吐出面41のノズル52aが形成された領域、いわゆる吐出口領域41aの記録紙Pの幅方向Wと同方向の幅より大きくされている。吸収体72は、吐出面41をクリーニングする際には、記録紙Pの幅方向Wと同方向に亘って吐出面41に隙間なく当接且つ押圧される。吸収体72は、カバーキャップ部42が図2中矢印D方向に移動することによって、吐出面41をクリーニングする。吸収体72が吐出面41をクリーニングする際は、吸収体72が吐出面41を転がるようにして摺動すると、吸収体72の気孔がノズル52aの吐出面41側の口径より小さい約10μm程度の孔径にされているので、この気孔の毛細管現象により吐出面41に付いた余分なインクi等を吸い込み吸収し、吐出面41をクリーニングする。また、吸収体72では、例えば、長時間インクiをノズル52aより吐出する機会がなくノズル52aより臨むインクiの水分が蒸発してインクiが増粘された状態でも、増粘したインクiをノズル52aより吸い出して吸収体72が吸収することができることから、増粘したインクiによるノズル52aの目詰まり等を防止できる。
【0069】
この吸収体72は、隣接する気孔同士が繋がっている、いわゆる連続気泡型の有機樹脂多孔質体である。具体的には、例えばポリウレタン、ポリオレフィン、メラミン、ポリビニルアルコール等からなる様々な発泡体樹脂を用いることができる。そして、これらの発泡体樹脂は、ノズル52aの吐出面41側の口径より小さな孔径の気孔を形成するために、具体的にはその平均気孔径をノズル52aの吐出面41側の口径より小さくするために例えば加熱圧縮させている。
【0070】
この吸収体72は、次に示す方法によっても製造することができる。吸収体72を製造する際は、上述した発泡体樹脂の原料となる熱可塑性樹脂と、所定の粒径の気孔形成材と、気孔形成材を均一に分散させるトリフェニルフォルフェード(以下、TPPと記す。)等からなる滑材とを所定の割合で混合、混練し、所定の形状に成型した多孔質前駆体を得て、この多孔質前駆体から気孔形成材及び滑材を除去することによって微細な気孔が三次元的に連通した構造を有すると共に熱可塑性樹脂の密度が低い有機樹脂多孔質体からなる吸収体72が製造される。熱可塑性樹脂には、例えば熱可塑性エラストマー(ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリエーテルポリエステル系、スチレン系、ポリアミド系等)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(LD−ポリエチレン、HD−ポリエチレン、LL−ポリエチレン、αオレフィン化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール等や、その他加熱することで溶融する有機樹脂であれば如何なる有機樹脂でも使用できる。また、気孔形成材には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等といった水溶性材料等を用いる。
【0071】
この気孔形成材は、水溶性材料であることから、上述した多孔質前駆体を水に浸漬することで溶解し、抽出され、容易に多孔質前駆体より除去される。また、TPPからなる滑材は、例えばアルコール等に多孔質前駆体を浸漬することで溶解し、抽出され、容易に多孔質前駆体より除去される。上述した方法によって製造される有機樹脂多孔質体は、その気孔の孔径が気孔形成材の粒径により決定される。
【0072】
熱可塑性樹脂と気孔形成材との混合比率は、体積換算で熱可塑性樹脂が全体積に対して10%以上、40%以下になるようにすることが好ましい。すなわち、吸収体72は、空隙率が60%以上、90%以下になることが好ましい。空隙率が90%を越える吸収体72を製造することもできるが、この場合、有機樹脂多孔質体としての機械的強度が著しく低下してしまう。また、空隙率が60%より小さい場合、払拭若しくは吸収した吐出面41のインクiを保持しておく空間が少なくなり過ぎてクリーニング能力が低下してしまう。したがって、吸収体72においては、その空隙率が60%以上、90%以下の範囲にすることで、機械的強度に優れ、クリーニング能力が低下することを防止できる。
【0073】
このような吸収体72は、当接されながら吐出面41上を転がることによって、吐出面41から加圧され圧縮されるが、吐出面41から離間して、加圧状態から開放されると元の状態に戻ろうする。この際に、この吸収体72は、吐出面41から離間した際の厚みが吐出面41をクリーニングする前、具体的には吐出面41を一度もクリーニングしていない未使用状態の厚みの75%以上、更に好ましくは80%以上となる。即ち、吸収体72は、クリーニングする際に吐出面41から圧力がかかり圧縮されるが、クリーニングが終わり吐出面41から離間して、吐出面41から受ける圧力から開放されると未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで復元される。
【0074】
この吸収体72は、例えばガラス転移温度(Tg)等による樹脂の種類の選定や所定内での空隙率の調整等を行うことによって、未使用状態の厚みに対して、吐出面41から離間した際の厚みの比率(復元率)が75%以上、更に好ましくは80%以上となる。この復元率は、下記の式1及び式2より求まる。
【0075】
圧縮ひずみ=(初期の厚み−加圧した後の厚み)/初期の厚み×100・・・(式1)
復元率=100−圧縮ひずみ・・・(式2)式1において、圧縮ひずみとは、未使用状態の吸収体72の厚みに対して、吸収体72が吐出面41に隙間なく当接され、例えば200〜300g/cm3程度の圧力が吸収体72にかかった後、吸収体72が吐出面41から離間し、加圧状態から開放された直後の吸収体72の厚みの変化量を比率で表したものである。初期の厚みとは、吸収体72が未使用状態における厚みである。加圧した後の厚みとは、吐出面41から離間し、加圧状態から開放された直後の厚みである。そして、式1より求められた圧縮ひずみを用いて、式2より復元率を求めることができる
【0076】
吸収体72は、復元率が75%より低いの場合、吐出面41に当接され、吐出面41からかかる圧力によって気孔が潰れて圧縮されると、吐出面41をクリーニングし、吐出面41から離間した後に元の状態に戻りにくくなり、吐出面41から離間した際の厚みが未使用状態の厚みの75%よりも薄くなってしまう。このような吸収体72では、クリーニングする回数が増すにつれて圧縮され、厚みが除々に薄くなってしまう。これにより、吸収体72では、クリーニングの回数が増すにつれて吐出面41との接触が悪くなり、インクiを吸い込みにくくなる。また、吸収体72は、復元率が75%よりも低いことによって、吐出面41から加わった圧力によって外周部及び内部に形成された気孔が潰れたままとなり、吸収できるインクiの量が減少し、インクiを吸収する能力、即ちクリーニング能力が低下してしまう。吸収体72のクリーニング能力が低下すると、吐出面41に付着した余分なインクiや吐出口52a内に増粘したインクiが残り、不吐出のノズル52aや吐出方向のずれが生じてしまう。
【0077】
また、吸収体72では、特に発熱抵抗体を用いて使用する場合、吐出面41の温度が40℃前後となり温度が上がるため、このような高温となった吐出面に当接されながら、例えば200〜300g/cm2の圧力が加わって気孔が潰れると、常温で用いた場合よりも更に元の状態に戻りにくくなる。これにより、吸収体72は、高温環境下においてインクiを払拭若しくは吸収する能力が著しく低下してしまう。このため、プリンタ装置1では、吐出面の温度が上がった場合など、高温環境下において、吐出面41に付着した余分なインクiや吐出口52a内に増粘したインクiが残りやすく、不吐出のノズル52aや吐出方向のずれが更に生じやすくなる。
【0078】
これに対して、吸収体72の復元率が75%以上の場合、吐出面41をクリーニングし、吐出面41から離間した際の状態の厚みが未使用状態の厚みの75%以上となる。このような吸収体72では、吐出面41をクリーニングした後、未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで復元されるようになる。これにより、この吸収体72では、クリーニングの回数が増しても適切に吐出面41に隙間なく当接且つ押圧されることが維持され、クリーニング能力が低下することなく、クリーニング能力が長期間維持される。
【0079】
また、吸収体72は、クリーニング後であっても厚みが75%以上戻ることによって圧縮されたままとならないため、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れてしまうことが防止される。吸収体72では、気孔が潰れるのが防止されることによって、吐出面41に付着したインクiやノズル52a内に固着したインクiを毛細管現象により適切に吸い込むことができ、且つ内部にインクiを収容できる量の低下を防止できる。
【0080】
また、吸収体72の復元率が80%以上の場合、復元率が75%以上の場合よりもクリーニング後の吸収体72の厚みが未使用状態の厚みにより近い状態まで復元されるため、複数回クリーニングした場合でも吐出面41により隙間なく当接且つ押圧されるようになる。これにより、吸収体72では、より吐出面41に付着したインクiやノズル52a内に固着したインクiを吸収することができ、且つクリーニング能力がより維持される。
【0081】
このように、復元率が75%、更に好ましくは80%以上の吸収体72を用いることによって、複数回クリーニングを行っても吸収体72が吐出面41に隙間なく当接且つ押圧されることが維持され、インクiを払拭若しくは吸収する能力が低下することを防止できる。これにより、吐出面41に付着した余分なインクiや、吐出口52a内で増粘したインクiによる不吐出や吐出方向のずれが防止され、白ヌキや白スジのない優れた画質が印刷されるようになる。これは、発熱抵抗体を用い、吐出面の温度が上がった場合など、高温環境下においても同様に、クリーニング後の吸収体72の厚みが未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで復元され、吐出面41と吸収体72とが隙間なく適切に当接且つ押圧されるようになり、高温環境下においてもインクiを適切に吸い込むことができ、クリーニング能力を維持することができる。
【0082】
なお、クリーニングローラ64においては、回転軸71をカバーキャップ62の吐出面41と対向する面より着脱することができ、吸収体72に払拭若しくは吸収されたインクiの量が多くなって吸収体72のクリーニング能力が低下したときに、吸収体72を回転軸71ごと交換できる。
【0083】
また、プリンタ装置1では、吐出面41のノズル52aに目詰まりや気泡混入等が生じたときに、インク吐出ヘッド44より強制的にインクiを吐出させて目詰まりや気泡混入等を解消させる。この際、吐出面保護カバー61は、カバーキャップ部62がノズル52aより強制的に吐出されたインクiを受け止める受け皿として機能する。そして、カバーキャップ部62においては、その底面にインクiを吸収するためのスポンジ等のインク吸収体65を設けることで底面に溜まったインクiが外部に漏れることを防ぎ、且つ受け皿を所定の深さにすることでインクiを溜めておく容量の拡大を図ることができる。
【0084】
一方、吐出面保護カバー61が取り付けられるカートリッジ本体12の底面部、すなわち吐出面41側には、図2に示すように、カバーキャップ部62に設けられた一対のキャップ保持片63が短辺方向の一端側から係合される一対のガイド溝39が形成されている。一対のガイド溝39は、一対のキャップ保持片63に対応して、カートリッジ本体12の底面部から所定の深さで切り込まれ且つ外側に向かって略直角に切り込まれてなる凹部を形成している。そして、一対のガイド溝39は、カートリッジ本体12の長辺方向の両側に位置して、カートリッジ本体12の短辺方向に亘って平行に形成されている。
【0085】
したがって、吐出面保護カバー61は、これら一対のガイド溝39に一対のキャップ保持片63が係合されることによって、カートリッジ本体12の短辺方向にスライドしながら、カートリッジ本体12の吐出面41をカバーキャップ部62が閉塞する閉塞位置まで案内される。また、この吐出面保護カバー61は、カートリッジ本体12の吐出面41を閉塞しているカバーキャップ部62を、一対のガイド溝39に沿ってカートリッジ本体12の短辺方向に外部に向かってスライドさせることで、カートリッジ本体12の短辺方向の一端側から取り外すことができる。すなわち、吐出面保護カバー61は、カートリッジ本体12に対する着脱を容易に行える交換部品になっている。
【0086】
また、吐出面41には、吐出面保護カバー61によって閉塞されているときに、クリーニングローラ64と対向する位置に、少なくともクリーニングローラ64と対向する領域がインクタンク11側に凹んだ部分、具体的にはクリーニングローラ64が吐出面41のクリーニング動作を行わないときに吸収体72が吐出面41に当接しないようにするための逃げ部45(図12参照。)が設けられている。これにより、クリーニングローラ64おいては、吸収体72がクリーニング動作を行うときだけ吐出面41に当接されることになり、吸収体72の吐出面41を押圧する弾性力が劣化することを防止できる。
【0087】
以上のような構成のヘッドカートリッジ2では、吐出面保護カバー61をカートリッジ本体12に対して容易に着脱できることから、クリーニング能力が低下したクリーニングローラ64を容易に新しいクリーニングローラ64に交換することができる。すなわち、クリーニングローラ64の交換作業を容易に行える。
【0088】
次に、以上のように構成されるヘッドカートリッジ2が装着されるプリンタ本体3について説明する。
【0089】
このプリンタ本体3は、図1に示すように、内部への塵埃等の侵入を防ぐために、上部筐体81aと下部筐体81bとから構成される外筐81の内部に組み付けられた構造を有している。
【0090】
このプリンタ本体3において、外筐81の前面側は、図8及び図9に示すように、下部筐体81b内の図示しないフレームに上部筐体81aの両側面部に設けられた一対の支軸82が軸支されることによって、上部筐体81aが下部筐体81bに対して開閉可能となっている。
【0091】
外筐81の前面には、図1に示すように、記録紙Pの給排紙が行われる給排紙口83が設けられている。そして、この給排紙口83に記録紙Pを収納する収納トレイ84が装着されることによって給紙が可能となり、記録紙Pは、この給排紙口83を通して収納トレイ84の開口端のうち前面側を閉塞する蓋トレイ85上に排紙されることになる。
【0092】
上部筐体81aには、上述したヘッドカートリッジ2が装着されるヘッド装着部86が設けられている。このヘッド装着部86にヘッドカートリッジ2が装着された際には、ヘッドカートリッジ2の吐出面41が、後述する下部筐体81b内の印刷位置に臨むことになる。
【0093】
また、上部筐体81aには、このヘッド装着部86を閉塞する蓋体81cが開閉可能に取り付けられている。この蓋体81cは、ヘッド装着部86を閉塞した際には、上部筐体81aと連続した上面部を形成する。
【0094】
また、上部筐体81aの上面部には、後述する記録紙Pの給排紙が行われる前面側に位置して、各種操作を行うための操作ボタン87や、印刷状態等を表示するための表示パネル88等が設けられている。
【0095】
さらに、上部筐体81aの上面部には、図1及び図2に示すように、ヘッドカートリッジ2がヘッド装着部86に装着されたときに、ヘッド装着部86に対してヘッドカートリッジ2を着脱可能に保持するヘッドカートリッジ保持機構89を備えている。具体的に、ヘッドカートリッジ保持機構89は、ヘッドカートリッジ2に設けられたつまみ89aを上部筐体81aの外周部に設けられた係止孔89b内に設けられた図示しないバネ等の付勢部材に係止することにより、上部筐体81aに対してヘッドカートリッジ2を位置決めして保持、固定できるようにする。これにより、カートリッジ本体12の吐出面41と、後述する搬送ベルト134によって印刷位置に搬送された記録紙Pの主面とを互いに平行且つ所定の間隔をもって対向配置することができる。
【0096】
また、上部筐体81aには、図10に示すように、ヘッドカートリッジ2がヘッド装着部86に装着されたときに、このヘッドカートリッジ2の吐出面41に取り付けられた吐出面保護カバー61を開閉操作するカバー開閉機構90が設けられている。
【0097】
このカバー開閉機構90は、図10〜図12に示すように、吐出面41を閉塞する閉塞位置と、吐出面41を開放し且つ吐出面41より上方に位置する開放位置とに吐出面保護カバー61をガイドするガイド機構91と、このガイド機構91によってガイドされた吐出面保護カバー61を閉塞位置と開放位置との間で移動する駆動機構92とを有している。
【0098】
ガイド機構91は、吐出面保護カバー61を保持するスライダ101と、このスライダ101を吐出面保護カバー61の開放位置と閉塞位置との間でスライド可能にガイドする一対のガイド部102とを有している。
【0099】
スライダ101は、図11に示すように、吐出面保護カバー61の外周部を保持するように、この吐出面保護カバー61に対応した略矩形状の枠体からなる。また、このスライダ101には、前後一対のガイドピン103a,103bがそれぞれ長辺方向の両枠部から外側に向かって突出して設けられている。なお、これらガイドピン103a,103bのうち、前面側のガイドピン103aの長さが背面側のガイドピン103bの長さより長くなっている。
【0100】
また、このスライダ101には、前後一対の係合突部104a,104bがそれぞれ長辺方向の両枠部から内側に向かって突出形成されている。一方、吐出面保護カバー61の底面部には、図10に示すように、これら前後一対の係合突部104a,104bが係合される前後一対の係合凹部105a,105bが形成されている。また、これら前後一対の係合突部104a,104bの間には、吐出面保護カバー61の底面部を支持する一対の支持片106がそれぞれ長辺方向の両枠部から内側に向かって突出形成されている。
【0101】
そして、このスライダ101は、ヘッドカートリッジ2がヘッド装着部86に装着された際に、前後一対の係合突部104a,104bが吐出面保護カバー61の前後一対の係合凹部105a,105bに係合されると共に、一対の支持片106が吐出面保護カバー61の底面部を支持することによって、この吐出面保護カバー61の外周部を保持することになる。
【0102】
一対のガイド部102は、上述したヘッド装着部86の外周部と一体に形成されたフレームからなり、上述したスライダ101の外側に位置して、互いに平行な側板部を形成している。そして、これら一対のガイド部102には、図10に示すように、上述したスライダ101の前後一対のガイドピン103a,103bが係合される前後一対のガイド孔107a,107bがそれぞれ穿設されている。
【0103】
具体的に、これら前後一対のガイド孔107a,107bは、吐出面保護カバー61がカートリッジ本体12の吐出面41を閉塞する閉塞位置から、上部筐体81aの前面側に向かって吐出面保護カバー61がカートリッジ本体12に対して着脱される着脱位置まで、前後一対のガイドピン103a,103bを水平方向にスライドさせる水平部108aと、この着脱位置から更に上部筐体81aの前面側に向かって、カートリッジ本体12の吐出面41aを開放し且つ吐出面41より上方に位置する開放位置まで、前後一対のガイドピン103a,103bを斜め上方向にスライドさせる傾斜部108bとを有している。
【0104】
したがって、これら一対のガイド部102は、前後一対のガイド孔107a,107bに前後一対のガイドピン103a,103bを係合させることによって、スライダ101を吐出面保護カバー61の開放位置と閉塞位置との間で前後方向にスライド可能に支持している。
【0105】
以上のように、このガイド機構91では、カートリッジ本体12に対して着脱可能に取り付けられた吐出面保護カバー61をスライダ101に保持した状態で、カートリッジ本体12の吐出面41を閉塞する閉塞位置と、カートリッジ本体12の吐出面41を開放し且つ吐出面41より上方に位置する開放位置との間でガイドすることが可能となっている。
【0106】
駆動機構92は、図12に示すように、下部筐体81b側に、駆動モータ111と、この駆動モータ111の回転軸に取り付けられたウォームギア112と、このウォームギア112と噛み合わされたピニオンギア113と、上部筐体81a側に、ピニオンギア113と噛み合わされて、前後方向にスライドされるラック板114とを有している。
【0107】
このうち、ラック板114は、上述したガイド部102の外側に配置された略矩形状の平板部材からなり、その下端部には、ピニオンギア113と噛み合わされるラックギア115が前後方向に亘って形成されている。
【0108】
このラック板114の上部側には、前後一対のガイドピン116a,116bがガイド部に向かって突出形成されている。一方、一対のガイド部102には、これら前後一対のガイドピン116a,116bが係合される水平スリット117が前後方向に亘って直線状に形成されている。したがって、このラック板114は、水平スリット117内を前後一対のガイドピン116a,116bがスライドすることによって、前後方向にスライド可能となっている。
【0109】
このラック板114前面側には、上述した前面側のガイド孔107aを貫通した前面側のガイドピン103aが係合される鉛直スリット118が上下方向に亘って直線状に穿設されている。
【0110】
この駆動機構92では、駆動モータ111が回転駆動されると、互いに噛合されたウォームギア112及びピニオンギア113が回転しながら、ピニオンギア113とラックギア115との噛合によってラック板114が前後方向に移動させる。これに伴って、スライダ101の前面側のガイドピン103aがラック板114の鉛直スリット118内を上下方向にスライドしながら、スライダ101の前後一対のガイドピン103a,103bがラック板114の前後一対のガイド孔107a,107b内を前後方向にスライドすることになる。これにより、スライダ101を開放位置と閉塞位置との間で移動することができる。
【0111】
一方、下部筐体81bの内部には、図8及び図13に示すように、記録紙Pをヘッドカートリッジ2まで供給し、ヘッドカートリッジ2によって印刷が行われた記録紙Pを外部に排出する給排紙機構121が設けられている。具体的に、給排紙機構121は、収納トレイ84から記録紙Pを給紙する給紙部122と、この給紙部122により給紙された記録紙Pを印刷位置へと搬送する搬送部123と、この搬送部123により搬送された記録紙Pを排紙する排紙部124とによって構成され、これらの部位が下部筐体81b内の図示しないフレーム等に組み付けられている。
【0112】
給紙部122は、収納トレイ84から搬送部123へと記録紙Pを給紙するための給紙手段として、収納トレイ84内の記録紙Pを搬送部123へと送り出す給紙ローラ131と、この給紙ローラ131により送り出された記録紙Pを1枚毎に搬送部123へと送り出すための一対の分離ローラ132a,132bとを有し、これらは、下部筐体81b内に設けられた駆動機構(図示せず。)によって互いに連動しながら、図13中矢印A1,A2,A3方向に回転駆動される。
【0113】
搬送部123は、給紙部122から排紙部124へと記録紙Pを搬送するための搬送手段として、図13中矢印B方向に回転駆動し、記録紙Pの送り方向を背面側から前面側へと反転させる反転ローラ133と、この反転ローラ133により反転された記録紙Pを印刷位置へと搬送させ、駆動プーリ140aと被動プーリ140bとの間に巻き掛けられた無端ベルトからなる搬送ベルト134とを有している。搬送ベルト134は、図示しないベルト昇降機構により、印刷時には図13に示すように搬送動作を行う搬送位置に配置され、非駆動時にはこの搬送位置より下方に位置し、図8及び図9に示すように待避位置に配置される。
【0114】
排紙部124は、図8及び図13に示すように、搬送部123により搬送された記録紙Pを排紙するための排紙手段として、搬送ベルト134を介して被動プーリ140bと対向配置された拍車142を有し、この拍車142と搬送ベルト134との間から記録紙Pを給排紙口83側へと送り出す。
【0115】
以上のような構成からなるプリンタ装置1には、上述したプリンタ本体3のカバー開閉機構90、給排紙機構121、搬送ベルト134を昇降させるベルト昇降機構の駆動を制御したり、インク吐出ヘッド44に供給される電流等を制御して、印刷動作全体を制御する図示しない制御部が設けられている。プリンタ装置1は、この制御部によって、カバー開閉機構90、給排紙機構121、ベルト昇降機構が制御され、以下のように動作し印刷を行う。
【0116】
先ず、ユーザが、印刷動作をプリンタ装置1が実行するように、プリンタ本体3に設けられている操作ボタン90を操作して制御部に印刷開始を命令し、カバー開閉機構90、給排紙機構121、ベルト昇降機構等を駆動制御し、印刷が可能な状態にする。具体的には、図13に示すように、カバー開閉機構90は、吐出面保護カバー61をスライダ101と共にプリンタ装置1の前面側の開放位置へと移動させる。これにより、ヘッドカートリッジ2の吐出面41が開放される。これにより、吐出面保護カバー61は、前面側の開放位置へと移動することによってヘッドカートリッジ2の吐出面41より上方に位置することになる。
【0117】
吐出面保護カバー61は、図14に示すように、プリンタ装置1の前面側、即ち図14中X1方向に摺動してプリンタ装置1の前面側の開放位置へ摺動する際に、カバーキャップ部62に備わるクリーニングローラ64がインクiを吐出する前のノズル52a内の増粘したインクiを吸い出したり、吐出面41に付着した余分なインクiを吸収して、ヘッドカートリッジ2の吐出面41をクリーニングする。このとき、クリーニングローラ64では、吸収体72の厚みの復元率が75%以上であることから、クリーニングした後であっても、吸収体72の厚みが未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じとなる。このため、吸収体72が吐出面41を複数回クリーニングした後であっても、吐出面41に隙間なく当接且つ押圧された状態で吐出面41をクリーニングすることができる。
【0118】
次に、、図13に示すように、ベルト昇降機構は、搬送ベルト134を待避位置から搬送位置へと上昇させる。これにより、プリンタ装置1では、ヘッドカートリッジ2の吐出面41と、印刷位置に搬送された記録紙Pをヘッドカートリッジ2の吐出面41に対向させるプラテン板141とが互いに平行且つ所定の間隔を以て対向配置され、印刷位置が決定されることになる。
【0119】
次に、給排紙機構121は、図13中矢印A1方向に回転する給紙ローラ131の外周面を収納トレイ84より記録紙Pに押し当てて給紙させる。そして、給紙された記録紙Pは、図13中矢印A2,A3方向に回転する一対の分離ローラ132a,132bの間を通過しながら、図13中矢印Y1に示す背面側へと送り出される。
【0120】
次に、搬送部123は、背面側に送り出された記録紙Pを、第1の案内板137上を移動し反転ローラ133と、記録紙Pを押さえる複数の押さえローラ135a,135b,135c及び反転ローラ133の外周面と対向して記録紙Pの移動を規制する湾曲状の第1の規制板136との間に記録紙Pを搬送し、記録紙Pを外周面に沿って反転させ、図13中矢印Y2に示す前面側へと送り出す。そして、排紙部124は、前面側に送り出された記録紙Pが、第2の案内板138と第2の規制板139との間を通過しながら、図13中矢印C方向に回転する搬送ベルト134によって印刷位置へと搬送する。そして、記録紙Pは、印刷位置において、プラテン板141によって押し上げられ、ヘッドカートリッジ2の吐出面41と相対向することになる。
【0121】
次に、ヘッドカートリッジ2は、この印刷位置に搬送された記録紙Pに対してノズル52aよりインクiを吐出、着弾させてインクドットからなる画像や文字等を記録する。この際には、インクiを吐出する前に、吐出面41に付着した余分なインクiやノズル52a内で増粘したインクiが吐出面保護カバー61のクリーニングローラ64によって除去されているので、インクiの吐出方向がずれたり、記録紙Pが汚れたりすることなく、良好な状態で印刷される。
【0122】
次に、給排紙機構121は、印刷が終了した記録紙Pを、搬送ベルト134の駆動によって、この搬送ベルト134と拍車142との間から、図13矢印Y2に示す前面側へと送り出し、給排紙口83から蓋トレイ85上に排紙する。また、ベルト昇降機構は、記録紙Pへの印刷が終わると、搬送ベルト134を搬送位置から待避位置へと下降する。
【0123】
次に、カバー開閉機構90は、吐出面保護カバー61をスライダ101と共にプリンタ装置1の背面側の閉塞位置へと移動させる。このとき、吐出面保護カバー61は、図15に示すように、カバーキャップ部62に備わるクリーニングローラ64が、軸部71の軸を中心に吸収体72が回転しながらノズル52aが形成されている領域をプリンタ装置1の背面側、すなわち図17中X2方向に摺動していきながら、ヘッドカートリッジ2の吐出面41を吸収体72でクリーニングする。ここで、吸収体72は、印刷前に吐出面41をクリーニングした際に吐出面41に当接され且つ押圧されることによって圧縮されたが、復元率を75%以上有するため、未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みにまで復元されている。これにより、吸収体72は、印刷前に吐出面41をクリーニングした後であっても、厚みが復元されているので、吐出面41に適切に当接且つ押圧されるようになり、吐出面をクリーニングすることができる。そして、吐出面保護カバー61は、ヘッドカートリッジ2の吐出面41をクリーニングローラ64でクリーニングしながら閉塞する。
【0124】
これにより、ヘッドカートリッジ2は、再び図11に示す印刷前の状態へと戻る。このプリンタ装置1では、吐出面保護カバー61がヘッドカートリッジ2の吐出面41を閉塞するので、このヘッドカートリッジ2をプリンタ本体3のヘッド装着部86から離脱してもインクiの乾燥を防ぐことができる。以上のようにして、印刷動作が終了する。
【0125】
なお、以上の印刷動作では、吐出面保護カバー61が図14中X1方向に摺動してプリンタ装置1の前面側の開放位置へ移動する際、及び吐出面保護カバー61が図15中X2方向に摺動して背面側の閉塞位置へと移動する際に吐出面41をクリーニングローラ64でクリーニングを行ったがこのことに限定されず、吐出面保護カバー61を開放位置に移動する際、若しくは閉塞位置に移動する際のどちらか一方の方向に移動する際にクリーニングするようにしてもよい。
【0126】
以上のように、このプリンタ装置1では、吐出面保護カバー61が開閉動作されると、クリーニングローラ64の吸収体72が吐出面41上を転がることで吐出面41に付着した余分なインクiを払拭若しくは吸収し吐出面41をクリーニングする。その際に、プリンタ装置1においては、吐出面41をクリーニングするクリーニングローラ64の吸収体72がクリーニング前、即ちクリーニングをしていない未使用の状態の厚みに対して、吐出面41をクリーニングし、吐出面41から離間した際の厚みが75%以上となる。即ちプリンタ装置1では、吸収体72が吐出面41のクリーニング後であっても未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで復元される。これにより、プリンタ装置1では、吸収体72が吐出面41に圧縮されて変形しても、元の状態又は元の状態に近い状態まで復元されるので、吐出面41を複数回繰り返してクリーンニングした場合であっても、未使用状態のように吸収体72が吐出面41に隙間なく当接且つ押圧された状態で吐出面41をクリーニングすることができる。
【0127】
また、プリンタ装置1では、吸収体72の変形が抑えられることによって、吸収体72の外周部及び内部に形成されている気孔が潰れたりすることが防止されるため、インクiを吸収する量等が減少することが防止されている。
【0128】
したがって、プリンタ装置1では、この吸収体72によって吐出面41を適切にクリーニングすることができることから、吐出面41に付着した余分なインクiや、吐出口52a内で増粘したインクiによる不吐出や吐出方向のずれを防止することができ、白ヌキや白スジのない優れた画質の印刷を行うことができる。また、このプリンタ装置1では、発熱抵抗体等を用いることで吐出面41の温度が上がった場合など、高温環境下においても同様に、吸収体72の厚みを未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みに維持することができるため、吐出面41を適切にクリーニングすることができ、優れた画質の印刷を行うことができる。
【0129】
以上では、吐出面41をクリーニングするときに、軸中心に回転自在にされた回転軸71を備えるクリーニングローラ64が吐出面保護カバー61の開閉動作に従って吸収体72を吐出面41上で転がすようにして吐出面41を移動しながら回転する回転動作について説明したが、このことに限定されることはなく、例えばクリーニングローラ64の回転動作を制御する図示しない回転制御機構等を備え、クリーニングローラ64の回転動作を、吐出面保護カバー61の開閉動作に従ってクリーニングローラ64が回転するときより遅くなるように制御させることもできる。この場合、クリーニングローラ64では、吸収体72が吐出面41を擦るようにして吐出面41をクリーニングしていくことから、例えば吐出面41上で増粘して固着したインクiも払拭し、除去できる。
【0130】
また、クリーニングローラ64においては、例えば回転軸71の軸中心に回転しないように制御することもできる。この場合、クリーニングローラ64では、吸収体72が吐出面41上を単に摺動するようにして吐出面41をクリーニングしていく、すなわち吸収体72が吐出面41を擦るようにして吐出面41をクリーニングしていくことから吐出面41にこびり付いたインクiを適切に除去できる。
【0131】
さらに、クリーニングローラ64においては、例えば吐出面保護カバー61の開閉動作に従って回転するときより早くなるように回転動作を制御することもできる。この場合も、クリーニングローラ64では、吐出面保護カバー61の開閉動作に従う回転を順回転とすると、順回転側より早く回転していることから、吸収体72が吐出面41を擦るようにして吐出面41をクリーニングしていき、吐出面41にこびり付いたインクiを適切に除去できる。
【0132】
さらにまた、クリーニングローラ64においては、例えば吐出面保護カバー61の開閉動作に従う順回転とは逆回転になるように回転動作を制御することもできる。この場合も、クリーニングローラ64では、吐出面保護カバー61の開閉動作に従う順回転に対して逆回転していることから、吸収体72と吐出面41との摩擦が大きくなって吸収体72が吐出面41を擦るようにして吐出面41をクリーニングしていくことから、吐出面41にこびり付いたインクiを適切に除去できる。
【0133】
上述したヘッドカートリッジ2では、カートリッジ本体12に対してインクタンク11が着脱可能となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものではない。すなわち、このヘッドカートリッジ2自体が消耗品として取り扱われており、プリンタ本体3に対して着脱可能なことから、このカートリッジ本体12にインクタンク11が一体に設けられた構成とすることもできる。
【0134】
また以上では、本発明をプリンタ装置に適用した例について説明したが、本発明は、以上の例に限定されるものではなく、液体を吐出する他の液体吐出装置に広く適用することが可能である。例えばファクシミリやコピー機、液体中のDNAチップ用吐出装置(特開2002−253200号公報)、プリンタ配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出したりする液体吐出装置等にも適用可能である。
【0135】
また以上では、1つの発熱抵抗体55がインクiを加熱して吐出するインク吐出ヘッド44を例に挙げて説明したが、このような構造に限定されることはなく、複数の圧力発生素子を備え、各圧力発生素子に異なるエネルギー又は異なるタイミングでエネルギーを供給することで吐出方向を制御することが可能な吐出手段を備える液体吐出装置にも適用可能である。
【0136】
また以上では、1つの発熱抵抗体55によってインクiを加熱しながらノズル52aから吐出させる電気熱変換方式を採用しているが、このような方式に限定されず、例えばピエゾ素子といった圧電素子等の電気機械変換素子等によってインクを電気機械的にノズルより吐出させる電気機械変換方式を採用したものであってもよい。
【0137】
また以上では、ライン型のプリンタ装置1を例に挙げて説明したが、このことに限定されることはなく、例えばインクヘッドが記録紙Pの走行方向と略直交する方向に移動するシリアル型の液体吐出装置にも適用可能である。
【実施例】
【0138】
以下、本発明を適用した吐出面保護装置に備わる液体吸収部の吸収体の復元率が異なるものを作製した実施例1〜4、比較例1及び比較例2について説明する。
【0139】
〈実施例1〉
実施例1では、先ず、回転軸の外周側面に一定の厚みの吸収体を作製した。吸収体を成型する際は、ポリオレフィン樹脂からなる熱可塑性樹脂を15容量部と、直径が15μmの粒状のトリメチロールエタンからなる気孔形成材を85容量部と、滑材としてトリフェニルフォルフェード(以下、TPPと記す。)を所定量とを混合、混練して多孔質前駆体を作製し、大きさが10cm3となるように多孔質前駆体の試験片を作製した。この試験片に対して、1時間あたり300g/cm2の圧力をかけて、次に示す式1及び式2より復元率を求めた。式1における圧縮ひずみとは、試験片に所定の時間、圧力を加える前と、試験片に所定の時間、圧力を加え、試験片から圧力を除去し、加圧状態から開放された直後の試験片の厚みの変化量を比率で表したものである。初期の厚みとは、試験片に圧力を加える前の厚みである。加圧した後の厚みとは、試験片から圧力を除去し、加圧状態から開放された直後の厚みである。この式1より得られた圧縮ひずみを用いて式2より復元率を求めると、75%となった。復元率75%を有する多孔質前駆体を回転軸の外周側面に略円柱状に成型して吸収体を作製した。このようにして、実施例1のクリーニングローラを作製した。
【0140】
〈実施例2〉
実施例2では、1時間あたり300g/cm2の圧力をかけた際の復元率が80%を有する多孔質前駆体を用いて吸収体を作製したこと以外は実施例1と同様にクリーニングローラを作製した。
【0141】
〈実施例3〉
実施例3では、1時間あたり200g/cm2の圧力をかけた際の復元率が80%を有する多孔質前駆体を用い吸収体を作製したこと以外は実施例1と同様にクリーニングローラを作製した。
【0142】
〈実施例4〉
実施例4では、1時間あたり200g/cm2の圧力をかけた際の復元率が85%を有する多孔質前駆体を用い吸収体を作製したこと以外は実施例1と同様にクリーニングローラを作製した。
【0143】
〈比較例1〉
比較例1では、1時間あたり300g/cm2の圧力をかけた際の復元率が70%を有する多孔質前駆体を用いて吸収体を作製したこと以外は実施例1と同様にクリーニングローラを作製した。
【0144】
〈比較例2〉
比較例2では、1時間あたり200g/cm2の圧力をかけて際の復元率が75%を有する多孔質前駆体を用い吸収体を作製したこと以外は実施例1と同様にクリーニングローラを作製した。
【0145】
そして、以上のようにして作製した各サンプルのクリーニングローラをカバーキャップ部の吐出面と対向する面に取り付け、吐出面保護カバーとしてカートリッジ本体に装着し、ノズル径が20μm、発熱抵抗体の抵抗値が135Ω、ノズル数が24個のインク吐出ヘッドを備えるインクジェットプリント装置を用い、インク吐出ヘッドを駆動電圧11Vで駆動させてゼロックス社製のPPC用紙に、各サンプルで吐出面をクリーニングしながらアルファベッド文字を印刷した印字について印字品質評価を行った。その際に、実施例1、実施例2及び比較例1のクリーニングローラで吐出面をクリーニングする場合には、クリーニングローラの吸収体に300g/cm2の圧力がかかるようにする。また、実施例3、実施例4及び比較例2のクリーニングローラで吐出面をクリーニングする場合には、クリーニングローラの吸収体に200g/cm2の圧力がかかるようにする。
【0146】
なお、ここでの印刷には、染料としてC.I.ダイレクトブラック154を3重量部と、溶媒として水81.95重量部、ジエチレングリコール5重量部、グリセリン10重量部と、界面活性剤としてアセチレングリコールを0.05重量部とを混合、分散させたインクA、染料としてC.I.ダイレクトブラック154を3重量部と、溶媒として水81.8重量部、ジエチレングリコール5重量部、グリセリン10重量部と、界面活性剤としてアセチレングリコールを0.2重量部とを混合、分散させたインクB、染料としてC.I.ダイレクトブラック154を3重量部と、溶媒として水81.5重量部、ジエチレングリコール5重量部、グリセリン10重量部と、界面活性剤としてアセチレングリコールを0.5重量部とを混合、分散させたインクCの3種類を用い、それぞれのインクについて印字評価を行った。インクA,B,Cは、それぞれ界面活性剤の含有量を変えており、界面活性剤が多いほどPPC用紙への浸透性が高くなっている。すなわち、インクA,B,Cの順にPPC用紙への浸透性が高くなっている。
【0147】
以下、表1に実施例1〜実施例4、比較例1及び比較例2の各クリーニングローラで1万回クリーニングした後の印字の品質評価の評価結果を示す。
【0148】
【表1】
【0149】
なお、印字品質評価は、PPC用紙に印刷された文字を目視で観察することで評価した。そして、表1において、印字品質は、ノズルの周囲に付着したインクによってノズルより吐出されたインクの吐出方向がずれて起こる着弾位置ずれや、ノズルにインクが詰まってことで起こるインク不吐出によるインクの未着弾、いわゆる白ヌキが確認されないときは◎印で示し、多少の着弾位置ずれが見られるが品質に問題がないときは○印で示し、着弾位置ずれ及び白ヌキがみられるときは×印で示している。
【0150】
表1に示す評価結果より、復元率が75%以上の吸収体を有する実施例1〜実施例4のクリーニングローラでクリーニングされたインク吐出ヘッドで印刷した場合、復元率が75%よりも低い吸収体を有する比較例1及び比較例2のクリーニングローラでクリーニングされたインク吐出ヘッドで印刷した場合よりも、着弾位置ずれや白ヌキがなく印字品質が優れていることがわかる。
【0151】
比較例1及び比較例2では、吸収体の復元率が75%よりも低いため、クリーニング回数が増えるにつれて吸収体が未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みにまで戻らず、吸収体が圧縮されて厚みが薄くなってしまう。これにより、比較例1及び比較例2では、吸収体が吐出面に隙間なく当接且つ押圧されず、吐出面に残留している余分なインクを除去することができなくなり、インクの吐出方向のずれや不吐出が起こり、着弾位置ずれや白ヌキ等が生じた。また、比較例1及び比較例2では、吸収体が圧縮された状態から元の状態に戻りにくくなることによって、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れ、吸収できるインクの量が減少してしまい、吐出面に余分なインクが残ってしまった。
【0152】
これに対して、実施例1〜実施例4では、吸収体の復元率が75%以上であるため、クリーニングの1万回行っても吸収体が未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで戻るようになる。これにより、実施例1〜実施例4では、複数回クリーニングをした後であっても吸収体が吐出面と隙間なく当接且つ押圧しながら接するようになり、気孔の毛細管現象により吐出面に付着した余分なインクを除去することができる。また、実施例1〜実施例4では、吐出面をクリーニングした後に圧縮されたままとならず、復元されることによって、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れたままとならず、インクの吸収量が低下することが防止されている。したがって、実施例1〜実施例4では、インクの吐出方向のずれや不吐出が起こらず、印字品質が良好なものとなった。
【0153】
また、実施例2〜実施例4では、復元率が80%以上あるため、クリーニングを1万回繰り返しても、復元率が75%のときよりも吸収体が吐出面と適切に隙間なく当接且つ押圧されるようになるため、インクの吐出方向のずれや不吐出が全く起こらず、復元率が75%の吸収体を有する実施例1よりも印画品質が良好なものとなった。
【0154】
また、実施例1〜実施例4では、含有されている界面活性剤の量が異なり、吐出口に対する濡れ性が異なるインクA、インクB及びインクCを用いた場合であっても、吐出面に付着した余分なインク及び吐出口内に固着したインクを除去することができ、インクの濡れ性によらず適切にクリーニングすることができる。
【0155】
次に、実施例1〜実施例4、比較例1及び比較例2のクリーニングローラでインクを吐出した後にクリーニングしたカートリッジ本体の吐出面を観察し、吐出面が適切にクリーニングされているかどうかを確認する吐出面クリーニング評価を行った。ここでも、上述したインクA,B,Cについて、これらのインクをそれぞれノズルより吐出した後に、各サンプルのクリーニングローラでクリーニングが行われた吐出面の状態を確認した。
【0156】
以下、表2に各サンプルでクリーニングした吐出面のクリーニング状態の評価結果を示す。
【0157】
【表2】
【0158】
なお、表2において、吐出面クリーニングは、吐出面に余分なインクが殆どなく吐出面が適切にクリーニングされているときを◎印で示し、吐出面に微量のインクが残留しているときを○印で示し、吐出面全体に亘って多量のインクが残留しているときを×印で示している。
【0159】
表2に示す評価結果より、実施例1〜実施例4のクリーニングローラでクリーニングした吐出面は、比較例1及び比較例2のクリーニングローラでクリーニングした吐出面に比べ、余分なインクが除去され、適切にクリーニングされていることがわかる。
【0160】
比較例1及び比較例2では、吸収体の復元率が75%よりも低いため、クリーニング回数が増えるにつれて圧縮されたままとなり、吸収体が吐出面に隙間なく当接且つ押圧できず、吐出面に残留している余分なインクを除去することができなくなった。また、比較例1及び比較例2では、吸収体が圧縮されたままによって、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れ、インクの吸収量が減少し、吐出面を適切にクリーニングすることができなくなった。
【0161】
これに対して、実施例1〜実施例4では、吸収体の復元率が75%以上であるため、クリーニングをした後であっても吸収体が圧縮されたままとならず、吸収体がクリーニング前の厚み、若しくはクリーニング前の状態に近い状態の厚みまで戻るようになる。これにより、実施例1〜実施例4では、吐出面と吸収体とが隙間なく当接及び押圧されるように維持されるため、吐出面に残留している余分なインクを除去することができる。また、実施例1〜実施例4では、吸収体が圧縮されたままとならないため、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れたままとならず、気孔の毛細管現象によってインクを適切に吸収することができ、吐出面をクリーニングすることができる。したがって、実施例1〜実施例4は、比較例1及び比較例2のクリーニングローラと比べ、吐出面に付着したインクの払拭能力、吸収能力に優れ、クリーニング能力が高いことがわかる。
【0162】
また、表2に示す結果から、復元率が80%以上の吸収体を有する実施例2〜実施例4のクリーニングローラで吐出面とクリーニングすると、復元率が75%の吸収体を有する実施例1よりもより吐出面が良好な状態となった。さらにまた、表2に示す結果から、吐出口に対する濡れ性が異なるインクA、インクB及びインクCを用いた場合でも吐出面が適切にクリーニングされていることから、吐出口に対する濡れ性によらず、吐出面に付着したインクの払拭能力、吸収能力に優れ、クリーニング能力が高いことがわかる。
【0163】
以上のことから、クリーニングローラを製造するに際して、吸収体の復元率が75%以上にすることは、インク吐出ヘッドの吐出面をクリーニングするクリーニング能力を維持することができるクリーニングローラを製造する上で大変重要であることがわかる。
【0164】
次に、インク吐出ヘッドの吐出面及び実施例1〜実施例4、比較例1、比較例2のクリーニングローラを室温にて一週間外気に曝し、ノズルより露呈するインクの水分を蒸発させてノズル内のインクを増粘させた後に、上述した印字品質評価を行った。なお、ここでも、印字品質評価は、インクA,B,Cについてそれぞれ行った。
【0165】
以下、表3に、インク吐出ヘッドの吐出面を室温にて一週間外気に曝した後に、一週間外気に曝された実施例1〜実施例4、比較例1及び比較例2のクリーニングローラで吐出面をクリーニングしながら印刷された印字の品質評価の評価結果を示す。
【0166】
【表3】
【0167】
なお、表3において、印字品質は、着弾位置ずれや白ヌキが確認されないときは◎印で示し、多少の着弾位置ずれが見られるときは○印で示し、着弾位置ずれ及び白ヌキがみられるときは×印で示している。
【0168】
表3に示す評価結果から、復元率が75%以上の吸収体を有する実施例1〜実施例4のクリーニングローラで吐出面をクリーニングしたインク吐出ヘッドで印刷した印字品質は、復元率が75%よりも低い吸収体を有する比較例1及び比較例2のクリーニングローラで吐出面をクリーニングしたインク吐出ヘッドで印刷した印字品質に比べ、着弾位置ずれや白ヌキがなく優れていることがわかる。
【0169】
比較例1及び比較例2では、復元率が75%よりも低いため、クリーニングする回数が増すにつれて吸収体が圧縮され厚みが薄くなり、吐出面に吸収体が適切に接しなくなってしまう。また、比較例1及び比較例2では、吸収体が元の状態に戻りにくくなることによって、吸収体の外周部及び内部に形成されている気孔が潰れたままとなる。これにより、比較例1及び比較例2では、一週間放置されたインク吐出ヘッドのノズル内で増粘したインクを気孔の毛細管現象で吸い込むことができず、着弾位置ずれ及び白ヌキがみられ、印字品質が低下した。
【0170】
これに対して、実施例1〜実施例4では、復元率が75%以上であるため、吸収体が圧縮されたままとならず、吸収体が未使用状態の厚みと同じ、又はほぼ同じ厚みまで戻るようになる。実施例1〜実施例4では、吸収体の厚みが戻ることによって、吐出面に適切に隙間なく当接且つ押圧されるようになる。また、実施例1〜実施例4では、圧縮されたままとならないため、外周部及び内部に形成されている気孔が潰れたままとならず、一週間放置されたインク吐出ヘッドのノズル内で増粘したインクを気孔の毛細管現象で吸い込むことができる。これにより、実施例1〜実施例4で、ノズル内から増粘したインクが除去され、インクが所定の方向に適切に吐出することができるようになり、着弾位置ずれ及び白ヌキが生じるのが防止され、印字品質が良好であった。
【0171】
また、実施例2〜実施例4では、吸収体の復元率が80%以上であるため、吸収体の変形が復元率75%の実施例1よりも小さく、より吐出面に適切に接することから、クリーニング能力が高く、印字品質が良好となった。さらにまた、実施例1〜実施例4では、吐出口に対する濡れ性が異なるインクA、インクB及びインクCを用いた場合でも吐出面が適切にクリーニングされていることから、吐出口に対する濡れ性によらず、ノズル内の増粘したインクを吸い込むことができる。
【0172】
以上のことから、クリーニングローラを製造するに際して、吸収体の復元率が75%以上とすることは、一週間外気に曝されてもクリーニング能力が劣化することのない優れたクリーニングローラを製造する上で大変重要であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本発明が適用された液体吐出装置を示す分解斜視図である。
【図2】同液体吐出装置に備わるプリンタヘッドカートリッジを示す分解斜視図である。
【図3】同プリンタヘッドカートリッジの構成を示す断面図である。
【図4】同プリンタヘッドカートリッジの構成を模式的に示す図である。
【図5】同プリンタヘッドカートリッジに備わるインク吐出ヘッドを模式的に示す断面図である。
【図6】同インク吐出ヘッドを示しており、同図(A)は発熱抵抗体状に気泡が発生した状態を模式的に示す断面図であり、同図(B)はノズルよりインクを吐出した状態を模式的に示す断面図である。
【図7】同プリンタヘッドカートリッジの吐出面における吐出口領域を示す平面図である。
【図8】同液体吐出装置の構成を示す透視側面図である。
【図9】同液体吐出装置の上部筐体が下部筐体に対して開放された状態を示す透視側面図である。
【図10】同液体吐出装置のカバー開閉機構の構成を模式的に示す側面図である。
【図11】同カバー開閉機構に備わるスライダの構成を示す平面図である。
【図12】同液体吐出装置の駆動機構の構成を一部透視して示す側面図である。
【図13】同液体吐出装置の印刷動作を説明するための透視側面図である。
【図14】同プリンタヘッドカートリッジの吐出面保護カバーが前面側に移動しながら吐出面をクリーニングする状態を示す模式図である。
【図15】同吐出面保護カバーが背面側に移動しながら吐出面をクリーニングする状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0174】
1 液体吐出装置(液体吐出装置)、2 プリンタヘッドカートリッジ2 プリンタ本体、11 インクタンク、12 カートリッジ本体、37 ヘッド部、39 ガイド溝、41 吐出面、41a 吐出口領域、44 インク吐出ヘッド、52a ノズル、61 吐出面保護カバー、62 カバーキャップ部、63 キャップ保持片、64 クリーニングローラ、71 回転軸、72 吸収体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を液滴の状態で吐出し、対象物に着弾させることで記録を行う液体吐出ヘッド部の上記液滴を吐出する吐出口が形成された吐出面側に保持され、上記吐出面を保護する吐出面保護装置において、
上記液体吐出ヘッド部の吐出口より上記液滴が吐出されるときに、上記吐出面に対して略平行に移動し、上記対象物に対して上記吐出口を臨ませるように上記吐出面より退避するカバーキャップ部と、
上記カバーキャップ部を上記液体吐出ヘッド部の吐出面に対して略平行に移動可能に保持するキャップ保持部と、
上記カバーキャップ部の上記吐出面と対向する面に設けられた吸収体が、上記吐出面に当接された状態で上記カバーキャップ部を上記吐出面に対して略平行に移動させることで上記カバーキャップ部と共に移動して上記吐出面に付着している液体を吸収する液体吸収部とを備え、
上記吸収体は、使用する前の状態の厚みに対して、上記吐出面から離間した際の状態の厚みが75%以上復元されることを特徴とする吐出面保護装置。
【請求項2】
上記吸収体は、上記吐出面から離間した際の状態では厚みが80%以上復元されることを特徴とする請求項1記載の吐出面保護装置。
【請求項3】
液体を液滴の状態で吐出し、対象物に着弾させることで記録を行う液体吐出装置において、
上記液滴を上記対象物に向かって吐出させる吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッド部と、
上記液体吐出ヘッド部の吐出口より上記液滴が吐出されるときに、上記吐出面に対して略平行に移動し、上記対象物に対して上記吐出口を臨ませるように上記吐出面より退避するカバーキャップ部と、上記カバーキャップ部を上記液体吐出ヘッド部の吐出面に対して略平行に移動可能に保持するキャップ保持部と、上記カバーキャップ部の上記吐出面と対向する面に設けられた吸収体が、上記吐出面に当接された状態で上記カバーキャップ部を上記吐出面に対して略平行に移動させることで上記カバーキャップ部と共に移動して上記吐出面に付着している液体を吸収する液体吸収部とを有し、上記吐出面を保護する吐出面保護カバーと、
上記液体吐出ヘッド部を備える装置本体とを有し、
上記吸収体は、使用する前の状態の厚みに対して、上記吐出面から離間した際の状態の厚みが75%以上復元されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
上記吸収体は、上記吐出面から離間した際の状態では厚みが80%以上復元されることを特徴とする請求項3記載の液体吐出装置。
【請求項1】
液体を液滴の状態で吐出し、対象物に着弾させることで記録を行う液体吐出ヘッド部の上記液滴を吐出する吐出口が形成された吐出面側に保持され、上記吐出面を保護する吐出面保護装置において、
上記液体吐出ヘッド部の吐出口より上記液滴が吐出されるときに、上記吐出面に対して略平行に移動し、上記対象物に対して上記吐出口を臨ませるように上記吐出面より退避するカバーキャップ部と、
上記カバーキャップ部を上記液体吐出ヘッド部の吐出面に対して略平行に移動可能に保持するキャップ保持部と、
上記カバーキャップ部の上記吐出面と対向する面に設けられた吸収体が、上記吐出面に当接された状態で上記カバーキャップ部を上記吐出面に対して略平行に移動させることで上記カバーキャップ部と共に移動して上記吐出面に付着している液体を吸収する液体吸収部とを備え、
上記吸収体は、使用する前の状態の厚みに対して、上記吐出面から離間した際の状態の厚みが75%以上復元されることを特徴とする吐出面保護装置。
【請求項2】
上記吸収体は、上記吐出面から離間した際の状態では厚みが80%以上復元されることを特徴とする請求項1記載の吐出面保護装置。
【請求項3】
液体を液滴の状態で吐出し、対象物に着弾させることで記録を行う液体吐出装置において、
上記液滴を上記対象物に向かって吐出させる吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッド部と、
上記液体吐出ヘッド部の吐出口より上記液滴が吐出されるときに、上記吐出面に対して略平行に移動し、上記対象物に対して上記吐出口を臨ませるように上記吐出面より退避するカバーキャップ部と、上記カバーキャップ部を上記液体吐出ヘッド部の吐出面に対して略平行に移動可能に保持するキャップ保持部と、上記カバーキャップ部の上記吐出面と対向する面に設けられた吸収体が、上記吐出面に当接された状態で上記カバーキャップ部を上記吐出面に対して略平行に移動させることで上記カバーキャップ部と共に移動して上記吐出面に付着している液体を吸収する液体吸収部とを有し、上記吐出面を保護する吐出面保護カバーと、
上記液体吐出ヘッド部を備える装置本体とを有し、
上記吸収体は、使用する前の状態の厚みに対して、上記吐出面から離間した際の状態の厚みが75%以上復元されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
上記吸収体は、上記吐出面から離間した際の状態では厚みが80%以上復元されることを特徴とする請求項3記載の液体吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−21410(P2006−21410A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201017(P2004−201017)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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