説明

向き再設定ポート

【課題】植え込み可能なポートの向きを再設定するための様々な方法および装置を提供する。
【解決手段】一実施形態では、植え込み可能なポートが提供され、植え込み可能なポートは、組織に固着されるよう構成されたベース部分、および、ベース部分に旋回式に取り付けられ、中に形成された隔膜を有するハウジングであって、隔膜が、流体を受容し、かつ、ハウジングの内部に形成された流体貯蔵部へのアクセスを提供するよう構成された、ハウジング、を含む。一例示的実施形態では、ハウジングは、ボールソケット形軸継手を使用してベース部分に旋回式に取り付けられてよい。例えば、ハウジングの遠位表面およびベース部分の近位表面のうち少なくとも一方は、凸状であってよく、ハウジングの遠位表面およびベース部分の近位表面のうち他方は、凹状であってよい。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔分野〕
本出願は、皮下に植え込まれたポートの向きを再設定する(reorienting)ための方法および装置に関する。
【0002】
〔背景〕
肥満は、増大する世界的懸念事項であり、というのも、体重超過、太りすぎ、または、病的に太りすぎとして分類される個人の数が毎年増加し続けているからである。肥満は、高血圧、2型糖尿病、および、睡眠無呼吸を含め、いくつかの共存症に関連している。病的肥満は、人が理想的な体重を100ポンド(約45.36kg)以上上回るか、40またはそれ以上の体容積指数(BMI)を有する場合と規定されており、健康上の深刻な問題に重大なリスクを招く。したがって、こうした症状を有する患者の治療に多くの関心が注がれている。病的肥満の治療の一方法は、細長いバンドなどの制限装置を胃の上部の周囲に設置することである。胃バンドは、典型的には、固定される両端を備えた、流体を充填されるエラストマーバルーンで構成され、このエラストマーバルーンは、食道‐胃接合部のすぐ下で胃を包囲する。エラストマーバルーンは、バンドの上に小さな胃嚢と、胃‐食道接合部の下に小さい小孔開口部(stoma opening)とを形成する。流体がバルーンの中に注ぎ込まれると、バンドは、胃に対して拡張し、胃内に食物摂取制限部、または、より小さい小孔開口部をさらに作り出す。この制限レベルを減少させるためには、流体をバンドから除去する。バンドの効果は、利用可能な胃の容積を小さくし、よって、「満腹」になる前に食べられ得る食物の量を減らすことにある。
【0003】
食物制限装置はまた、胃の上部を同様に包囲する、機械的に調整されるバンドを具備している。これらのバンドは、バンドを調整するための、任意の数の弾性部材または伝導装置(gearing devices)、および、駆動部材を含む。加えて、液圧式駆動要素および機械式駆動要素の双方を含む胃バンドが開発されている。このような調整可能な胃バンドの一例は、参照により本明細書に組み込まれる、2000年5月30日発効の米国特許第6,067,991号、名称「Mechanical Food Intake Restriction Device」に開示されている。胃腔内の利用可能な食物容積を制約するための別の方法は、膨張可能なエラストマーバルーンを胃腔自体の内部に植え込むことである。バルーンは、流体を充填され、胃壁に対して拡張し、それによって、胃の内部の利用可能な食物容積を減少させる。
【0004】
上記の各食物制約装置では、食物摂取への作用の程度を変えるよう、装置が定期的に監視され調整されることが、安全で効果的な治療に必要とされる。バンド装置では、バンドの上の胃嚢は、当初の植え込みの後に、実質的にサイズを増加してよい。したがって、胃の小孔開口部は、当初は、患者が満足な栄養を摂取できるように十分大きくされなければならず、その間に、胃は、バンド装置に適合する。患者の身体がインプラントに適合するのにしたがい、バンドは、小孔サイズを変えるよう調整されてよい。加えて、患者の身体における変化もしくは治療方式に応じるために、小孔サイズを変え、あるいは、より緊急な事態においては、閉塞または厳しい食道の運動障害もしくは拡張を軽減することが望ましい。慣例的には、液圧式胃バンドの調整には、定期的な臨床医訪問(scheduled clinician visit)が必要とされ、その際に、フーバー(芯が抜かれていない(non-coring))皮下注射針および注射器を使用して、患者の皮膚を貫通させ、流体をバルーンに加えるか、バルーンから除去するかした。さらに最近では、バンドの非侵襲的な調整を可能にする装置が開発されている。外部のプログラマーが、バンドの小孔直径を制御するために遠隔測定法を使用してインプラントと連絡する。定期的な訪問の際、医師は、インプラント近くに、プログラマーのハンドヘルド部分を設置し、電力およびコマンド信号をインプラントに送信する。次いで、インプラントは、バンドの小孔直径を調整し、応答コマンドをプログラマーに送信する。
【0005】
こうした胃バンドの調整の際、調整がどのように進行しているか、調整が意図された効果を有するかどうかを確認することは困難となっている。調整の有効性を確認する試みでは、ある医師は、調整が実施されている際にバリウム嚥下を伴うX線透視法を利用している。しかしながら、X線透視法は、費用がかかるうえに、医師および患者の双方が放射線量を受けることから、望ましくない。他の医師は、調整中または調整後に患者に水をコップ一杯飲むよう指示し、調整された小孔を水が通過できるかどうかを確認している。しかしながら、この方法は、患者がその時点で閉塞されていないことを確信するだけで、後日、患者がより固形の食物を食べ始めるような場合に、調整の有効性または調整の影響についていかなる情報も提供しない。多くの場合、医師は、自身の以前の経験に基づく経験的方法を単純に採用し、調整の結果は、患者が胃腔に完全な閉塞をおぼえる、数時間または数日後まで、分からないかもしれない。
【0006】
起こりうる別の問題は、バンドが提供する制限を増加または減少させるために、胃バンドと流体的に連絡するために使用される流体ポートなどのポートを操作する能力である。例えば、胃バンドの制限を増加させるために追加的な流体を導入するために、フーバー針が、皮膚を通してポートの隔膜の中に挿入されなければならない。このことは、胃の解剖学的構造が平坦な表面ではなく、ポートが角度をなしたり、ポートが皮下で場所を転移させたり、または、ポートが全体的にひっくり返ったりするかもしれないことから、困難となり得る。
【0007】
したがって、皮下に植え込まれたポートの向きを再設定するための改善された方法および装置に対する必要性が依然として存在している。
【0008】
〔概要〕
ポートの向きを再設定するための様々な方法および装置が提供される。一実施形態では、植え込み可能なポートが提供され、植え込み可能なポートは、組織に固着されるよう構成されたベース部分、および、ベース部分に旋回式(pivotally)に取り付けられ、中に形成された隔膜を有するハウジングであって、隔膜が、流体を受容し、かつ、ハウジングの内部に形成された流体貯蔵部へのアクセスを提供するよう構成された、ハウジング、を含む。一例示的実施形態では、ハウジングは、ボールソケット形軸継手を使用してベース部分に旋回式に取り付けられてよい。例えば、ハウジングの遠位表面およびベース部分の近位表面のうち少なくとも一方は、凸状であってよく、ハウジングの遠位表面およびベース部分の近位表面のうち他方は、凹状であってよい。植え込み可能なインプラントはまた、随意に、組織に固着されるよう構成されてよい。例えば、ベース部分は、ベース部分を組織に固着させるための縫合糸を受容するよう構成された1つまたは複数の縫合糸受容部材を含んでよく、または、ベース部分は、組織の中に配備されるよう構成された1つまたは複数のアンカーを含んでよい。植え込み可能なポートはまた、ハウジングを外部磁石と整列させるよう構成された磁石部分を有するハウジングなどの追加的特徴部を含んでよい。
【0009】
別の実施形態では、植え込み可能なポートは、組織に固着されるよう構成されたベース部分、および、ベース部分に旋回式に取り付けられたハウジングを含んでよい。ハウジングは、中に形成された隔膜であって、流体を受容し、かつ、ハウジングの内部に形成された流体貯蔵部へのアクセスを提供するよう構成された、隔膜を有してよい。磁石部材は、ハウジングに連結されてよく、磁石部材は、ハウジングを外部磁石と整列させるよう構成されてよい。磁石部分は、隔膜を有するハウジングの開口部の周囲に配されてよい。
【0010】
胃制限システムもまた提供され、一実施形態では、胃制限システムは、患者に制限を形成するよう構成された植え込み可能な胃制限装置、および、植え込み可能な胃制限装置と流体連通した植え込み可能なポートを含む。植え込み可能なポートは、患者の外部の流体源から流体を受容するよう構成されてよい。例えば、隔膜がポートのハウジングに形成されてよく、隔膜は、流体を受容し、かつ、ハウジングの内部に形成された流体貯蔵部へのアクセスを提供するよう構成されてよい。植え込み可能なポートはまた、組織に固着するよう構成されたベース部分を含む。ハウジングは、ベース部分に旋回式に連結されてよい。一例示的実施形態では、ハウジングは、ボールソケット形軸継手を使用してベース部分に旋回式に連結される。例えば、ハウジングの遠位表面およびベース部分の近位表面のうち少なくとも一方は、凸状であってよく、ハウジングの遠位表面およびベース部分の近位表面のうち他方は、凹状であってよい。ポートはまた、ハウジングの内部に位置させられた磁石部分などの他の特徴部を含んでよい。カテーテルもまた含まれてよく、カテーテルは、胃制限装置と植え込み可能なポートとの間に延びてよく、このカテーテルは、ハウジングの流体貯蔵部から胃制限装置に流体を送達して、胃制限装置により適用される制限の量を調整するためのものである。
【0011】
組織に植え込まれたポートにアクセスするための方法もまた提供され、一実施形態では、方法は、皮膚表面の下に配され、かつ、例えば筋膜などの組織に固着されたベース部分に運動可能に連結されたハウジングを旋回させ、ハウジングに形成された隔膜を所望の位置に位置付けることを含んでよい。一例示的実施形態では、方法はまた、ハウジングに形成された隔膜の中に針を挿入すること、および、ハウジングの中に流体を注入することを含んでよい。流体は、ハウジングから、ハウジングに連結された胃制限装置に送達される。別の実施形態では、ハウジングを旋回させることは、ハウジングの磁石部分を、皮膚表面に隣接して位置付けられた磁石で引き付けることによって行われ、よって、ハウジングを、隔膜の中に挿入される針と整列させてよい。
【0012】
本発明は、添付の図面と合わせて考慮される以下の詳細な説明から、より十分に理解されるだろう。
【0013】
〔詳細な説明〕
ここで、ある例示的実施形態を記載し、本明細書に開示される装置の構造、機能、製造および使用ならびに方法の原理の全体的な理解を提供する。これら実施形態の1つまたは複数の例が、添付の図面に図示される。当業者であれば理解するだろうが、具体的に本明細書に記載され、添付図面に図示される装置および方法は、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定される。一例示的実施形態に関連して図示または記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされてよい。このような改変および変形は、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0014】
本発明は、当業分野で既知の様々な制限システムと共に使用され得るが、図1は、食物摂取制限システム10の一例示的実施形態を図示している。示されるように、システム10は、概して、患者の胃40の上部の周囲に位置付けられるよう構成される調整可能な胃バンド20、および、例えばカテーテル50を介するなどして調整可能な胃バンド20に流体連結される注入ポート30を含む。注入ポート30は、流体の胃バンド20への導入および胃バンド20からの除去を可能にし、それによって、バンドのサイズ、および、したがって胃に適用される圧力を調整するよう構成される。したがって、注入ポート30は、組織を通してアクセス可能な身体の内部の場所に植え込まれてよい。典型的には、注入ポートは、皮膚および脂肪組織の層の下における、患者の腹部の外側肋骨下領域(lateral subcostal region)に位置付けられる。外科医はまた、典型的には、患者の胸骨上に注入ポートを植え込む。
【0015】
図2Aは、胃バンド20をより詳細に示している。胃バンド20は、様々な構成を有してよく、当業分野で現在既知の様々な胃バンドが、本発明と共に使用されてよいが、図示された実施形態では、胃バンド20は、相互に固定され得る第1の端部20aおよび第2の対向する端部20bを有する支持構造部22を備えた概して細長い形状を有する。端部20a、20bを互いに固定するために、様々な噛み合わせ技術が使用されてよい。図示された実施形態では、端部20a、20bは、一方が他方の上に置かれて共に噛み合うストラップの形態をしている。胃バンド20はまた、膨張可能なバルーン24などの容積可変部材を含んでよく、この膨張可能なバルーン24は、支持構造部22の一方の側に配されるか、または、形成され、組織に隣接して位置付けられるように構成される。バルーン24は、胃の外壁に対して拡張するか、または、収縮して、胃への食物摂取を制御可能に制限するための調整可能な小孔を形成してよい。当業者であれば理解するだろうが、胃バンドは、様々な他の構成を有してよく、さらには、本明細書に開示される様々な方法および装置は、他のタイプの植え込み可能なバンドに同等の適用性を有する。例えば、バンドは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,461,292号に記載されるように、大便失禁の治療に使用される。バンドはまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2003/0105385号に記載されるように、尿失禁の治療にも使用されてよい。バンドはまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,470,892号に開示されるように、胸焼けおよび/または酸逆流の治療にも使用されてよい。バンドはまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2003/0114729号に記載されるように、インポテンスの治療にも使用されてよい。
【0016】
図2Bは、患者の胃‐食道接合部の周りに適用された調整可能な胃バンド20を示している。示されるように、バンド20は、食道42との接合部近くの胃40の上部を少なくとも実質的に取り囲む。好ましくはバンド20が流体をほとんどまたは全く収容していない収縮した構成でバンド20が植え込まれた後、バンド20は、例えば、生理食塩水を使用して膨張させられ、小孔開口部のサイズを減少させてよい。当業者であれば理解するだろうが、機械的技術および電気的技術を含め、様々な技術が、バンドを調整するために使用されてよい。
【0017】
上記のように、システムはまた、流体を受容し、かつ、胃バンド20に送達するための注入ポート30を含んでよい。本発明は、特に、注入ポート30などの植え込み可能なポートの向きを再設定するための方法および装置に向けられている。一例示的実施形態では、植え込み可能なポートは、組織に固着されるよう構成されたベース部分、および、ベース部分に旋回式に取り付けられ、中に形成された隔膜を有するハウジングであって、隔膜が、流体を受容し、かつ、ハウジングの内部に形成された流体貯蔵部へのアクセスを提供するよう構成された、ハウジング、を含む。ポートのベース部分およびハウジングは、互いに旋回式に連結されて、ポートが皮膚表面の下で組織の中に植え込まれた後の、ポートの向きの再設定を可能にしてよい。ポートは、一旦植え込まれると転移する傾向があるため、流体アクセスを提供するためにポートの向きを再設定する能力は、特に有利である。
【0018】
図3および図4は、注入ポート30をより詳細に図示している。示されるように、ポート30は、遠位表面つまり底面102、および、周囲壁104を備えた概して円錐形のハウジング100を有し、周囲壁104は、底面102から近位方向に延びて近位開口部105を定める。当業者であれば理解するだろうが、ハウジング100は、いかなる形状およびサイズを有してもよいが、ハウジングは、好ましくは、組織に植え込まれるよう構成される。近位開口部105は、針貫通可能な隔膜106を含んでよく、隔膜106は、近位開口部105を渡って延び、ハウジング100の内部に形成された流体貯蔵部108へのアクセスを提供する。隔膜106は、好ましくは、貯蔵部108の深さが、フーバー針などの針の開放した先端を露呈させる(expose)のに十分となるよう、十分に近位の位置に設置され、よって、流体移動が発生できるようになる。隔膜106は、針によって穿刺されて針が引き抜かれた後、隔膜106自体が密封するよう配列されてよい。図3および図4にさらに示されるように、ポート30は、カテーテル管接続部材110をさらに含んでよく、このカテーテル管接続部材110は、貯蔵部108と流体連通しており、図1に示されるカテーテル50などのカテーテルに連結するよう構成される。当業者であれば理解するだろうが、ハウジング100は、ステンレス鋼、チタン、または、ポリマー材料を含め、いかなる数の材料から作成されてもよく、隔膜は、同様に、シリコーンを含め、いかなる数の材料から作成されてもよい。
【0019】
ポート30は、ベース部分112をさらに含んでよく、ベース部分112は、ハウジング100に連結するよう構成される近位表面114、および、組織に留まり、かつ/または、固着するよう構成される遠位表面116を有する。ベース部分112の遠位表面116は、様々な手段で組織に固着されてよい。例えば、ベース部分112は、図8に示されるように、ベース部分112を組織に固着させるための縫合糸を受容するよう構成された1つまたは複数の縫合糸受容部材130を含んでよく、または、ベース部分112は、図9に示されるように、組織の中に配備されるよう構成された1つまたは複数のアンカー132を含んでよい。当業者であれば理解するだろうが、ポート30のベース部分112を組織に固着させるために、いかなる技術が使用されてもよい。さらには、当業者であれば理解するだろうが、図8および図9に示された固着技術は、本明細書に記載される発明のいかなる実施形態と共に使用されてもよい。
【0020】
ポート30の向きの再設定を容易にするために、ハウジング100の遠位表面102およびベース部分112の近位表面114は、互いに対して動くよう構成されてよい。一例示的実施形態では、ハウジングの遠位表面102およびベース部分112の近位表面114は、例えば、ボールソケット形軸継手を使用して、互いに対して旋回するよう構成されてよい。図4に示された一実施形態では、ハウジング100の遠位表面102は、凸状であり、ベース部分112の近位表面114に形成された対応する凹面つまり空洞117の内部に受容されるよう構成される。これにより、ベース部分112が組織に位置付けられ、かつ/または、固着されたとき、ハウジング100は、ベース部分112に対して旋回し、ハウジング100の向きを再設定することが可能となる。図5に示された別の実施形態では、ハウジング100の遠位表面102は、凹状空洞を含んでよく、凹状空洞は、ベース部分112の近位表面114に形成された対応する凸状表面を受容するよう構成されてよい。当業者であれば理解するだろうが、ハウジング100およびベース部分112が互いに対して動いてポートの向きの再設定を可能にすることができる限り、いかなる構成のハウジング100およびベース部分112が使用されてもよい。
【0021】
使用の際、ポート30は、皮下に植え込まれてよく、ポート30のベース部分112は、組織に位置付けられ、かつ/または、固着されてよい。例えば、ポート30は、組織表面の直ぐ下に植え込まれて、針または他の装置が組織を通ってポート30の中に貫通し、流体を制限システム10に加えるか、または、制限システム10から除去するのを可能にしてよい。ある例示的実施形態では、ポート30は、筋膜に植え込まれてよい。植え込みの後、ポート30の向きの再設定が必要となることがあり、というのも、皮下でポートが転移するか、または、ひっくり返る可能性があり、ハウジング100の隔膜106へのアクセスが制約され得るからである。ポート30は、様々な手段で向きを再設定されてよい。例えば、ポート30は、皮膚を通して手動で操作されて、ベース112に対してハウジング100を旋回させることができ、よって、ハウジング100の内部に位置させられた流体貯蔵部108に流体を送達するために、針が皮膚を通して隔膜106の中に通されるのを可能にする。
【0022】
別の実施形態では、注入ポート30は、ポート30の向きの再設定を容易にするためにポート30に連結された磁石部材116を含んでよい。磁石部材116は、様々な構成を有してよい。例えば、磁石部材116は、中に開口部を備えた円筒形磁石の形態をしていてよい。開口部は、ポート30の一部の周囲に延びるようサイズ決めおよび成形されてよい。図6に示された一実施形態では、磁石部材116は、ハウジング100の近位部分の周囲に配されるよう構成される。しかしながら、当業者であれば理解するだろうが、磁石部材116は、いかなる構成を有してもよく、磁石部材116がポート30の向きを再設定するために使用されるのを可能にするいかなる場所に配されてもよい。磁石部材116はまた、さまざまな手段でポート30に連結されてもよい。例えば、磁石部材116は、ポート30と一体となっていてよく、または、磁石部材116およびポート30は、別個の構成要素であって、磁石部材116が、ポート30に固定的に、または、除去可能に連結されていてもよい。加えて、磁石部材116は、図6に示されるように単一の磁石から形成されてよく、または、ポート30に任意の構成で連結された複数の磁石から形成されてもよい。例えば、磁石部材116が複数の磁石から形成される場合、磁石は、ポート30のハウジング100に連結され、ハウジング100の近位部分の周囲に径方向に離間して配されてよい。
【0023】
ポート30の向きの再設定を容易にするために、磁石部材116は、皮膚表面に接するよう設置される外部磁石118と共に使用されてよい。外部磁石118は、ポート30のハウジング100に連結された磁石部材116に力を適用するために使用されて、外部磁石118と磁石部材116を整列させてよい。これにより、ハウジング100は、ポート30のベース部分112に対して旋回し、ハウジング100の向きを再設定し、よって、隔膜106が皮膚表面に向けて方向付けられる。例えば、図7に示されるように、外部磁石118は、植え込まれた注入ポート30に近い場所で皮膚の上に設置されてよい。外部磁石118は、ポート30の向きの再設定によって、針が皮膚を通ってハウジング100の隔膜106の中に挿入されるのを可能にするような形で、位置付けられる。隔膜106の中への針の挿入を容易にするために、外部磁石118は、中に開口部120を含んで、針が開口部120を通り、皮膚を通って、ポート30の隔膜106の中に通るのを可能にし、同時に、磁力が、外部磁石118と磁石部材116との間の整列を維持する。
【0024】
上記の向き再設定技術は、いかなる制限システムと共に使用されてもよく、様々なタイプのポートに適用されてよい。
【0025】
本明細書に開示された装置は、一度使用された後、廃棄されるよう設計されてよく、または、複数回使用されるよう設計されてもよい。しかしながら、いずれの場合も、装置は、少なくとも一度使用された後、再利用のために再調節され得る。再調節には、装置の解体ステップ、それに続く、個々の部品の洗浄または取り替えステップ、および、次の再組立ステップの任意の組み合わせが含まれてよい。特に、装置は解体され、装置の任意の数の個々の部品が、任意の組み合わせで、選択的に取り替えられるか、または、除去されてよい。個々の部品の洗浄および/または取り替えの後、装置は、再調整施設で、または、外科処置の直前に外科チームによって、次に使用するために、再組立されてよい。当業者であれば理解するだろうが、装置の再調節には、解体、洗浄/取り替え、および再組立のための様々な技術が利用されてよい。このような技術の使用、および、結果的に再調節された装置は、全て、本出願の範囲の中にある。
【0026】
好ましくは、本明細書に記載された発明は、手術前に、処理される。第1に、新しい、または、使用済みの器具が入手され、必要な場合は洗浄される。次に、器具は、滅菌されてよい。一滅菌技術では、器具は、プラスチックバッグまたはTYVEKバッグなどの、閉鎖密封された容器内に設置される。次に、容器および器具は、容器を透過できる、ガンマ放射線、X線、または、高エネルギー電子などの放射線野に設置される。放射線は、器具上または容器内の細菌を死滅させる。次に、滅菌された器具は、滅菌容器内に保管されうる。密封された容器は、医療施設で開封されるまで、器具を滅菌状態に保つ。
【0027】
装置が滅菌されることが、好ましい。これは、β線、γ線、または、酸化エチレン、スチームを含め、当業者に既知の任意の数の手段によって行われてもよい。
【0028】
当業者であれば、上記の実施形態に基づく、本発明のさらなる特徴および利点を理解するだろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される内容を除き、詳細に示され記載された内容によって限定されるものではない。本明細書で言及されたあらゆる刊行物および参照は、その全てが参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】制限システムの一実施形態の概略図である。
【図2A】図1の制限システムの制限装置の斜視図である。
【図2B】胃の胃‐食道接合部の周りに適用された図2Aの制限装置の斜視図である。
【図3】図1の制限システムの注入ポートの一実施形態の斜視図である。
【図4】図3の注入ポートの断面斜視図である。
【図5】図1の注入ポートの別の実施形態の断面斜視図である。
【図6】図1の注入ポートのさらに別の実施形態の斜視図であり、注入ポートは、ポートの向きの再設定を容易にするためにポートに連結された磁石部材を有している。
【図7】図6の注入ポートの斜視図であり、ポートの向きを再設定するために磁石部材に力を適用するのに使用されうる外部磁石を示している。
【図8】図1の制限システムの注入ポートの一実施形態の斜視図であり、注入ポートは、ポートのベース部分を組織に固着させるための縫合糸を受容するよう構成された1つまたは複数の縫合糸受容部材を有している。
【図9】図1の制限システムの注入ポートの別の実施形態の斜視図であり、注入ポートは、ポートのベース部分を組織に固着させるために組織の中に配備されるよう構成された1つまたは複数のアンカーを有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能なポートにおいて、
組織に固着されるよう構成されたベース部分と、
前記ベース部分に旋回式に取り付けられ、中に形成された隔膜を有するハウジングであって、前記隔膜が、流体を受容し、かつ、前記ハウジングの内部に形成された流体貯蔵部へのアクセスを提供するよう構成された、ハウジングと、
を具備する、植え込み可能なポート。
【請求項2】
請求項1に記載の植え込み可能なポートにおいて、
前記ハウジングは、ボールソケット形軸継手を使用して前記ベース部分に旋回式に取り付けられる、植え込み可能なポート。
【請求項3】
請求項1に記載の植え込み可能なポートにおいて、
前記ハウジングの遠位表面および前記ベース部分の近位表面のうち少なくとも一方は、凸状であり、前記ハウジングの前記遠位表面および前記ベース部分の前記近位部分のうち他方は、凹状である、植え込み可能なポート。
【請求項4】
請求項1に記載の植え込み可能なポートにおいて、
前記ベース部分は、前記ベース部分を組織に固着させるための縫合糸を受容するよう構成された1つまたは複数の縫合糸受容部材を含む、植え込み可能なポート。
【請求項5】
請求項1に記載の植え込み可能なポートにおいて、
前記ベース部分は、組織の中に配備されるよう構成された1つまたは複数のアンカーを含む、植え込み可能なポート。
【請求項6】
請求項1に記載の植え込み可能なポートにおいて、
前記ハウジングは、前記ハウジングを外部磁石と整列させるよう構成された磁石部分を含む、植え込み可能なポート。
【請求項7】
請求項6に記載の植え込み可能なポートにおいて、
前記磁石部分は、前記隔膜を有する前記ハウジングの開口部の周囲に配される、植え込み可能なポート。
【請求項8】
胃制限システムにおいて、
患者に制限部を形成するよう構成された植え込み可能な胃制限装置と、
前記植え込み可能な胃制限装置と流体連通し、前記患者の外部の流体源から流体を受容するよう構成された、植え込み可能なポートであって、前記ポートは、組織に固着するよう構成されたベース部分、および、前記ベース部分に旋回式に連結されるハウジング、を含む、植え込み可能なポートと、
を具備する、胃制限システム。
【請求項9】
請求項8に記載の胃制限システムにおいて、
前記ハウジングは、ボールソケット形軸継手を使用して前記ベース部分に旋回式に連結される、胃制限システム。
【請求項10】
請求項8に記載の胃制限システムにおいて、
前記ハウジングの遠位表面および前記ベース部分の近位表面のうち少なくとも一方は、凸状であり、前記ハウジングの前記遠位表面および前記ベース部分の前記近位表面のうち他方は、凹状である、胃制限システム。
【請求項11】
請求項8に記載の胃制限システムにおいて、
前記ハウジングは、中に形成された隔膜であって、流体を受容し、かつ、前記ハウジングの内部に形成された流体貯蔵部へのアクセスを提供するよう構成された、隔膜を含む、胃制限システム。
【請求項12】
請求項8に記載の胃制限システムにおいて、
前記ハウジングは、磁石部分を含む、胃制限システム。
【請求項13】
請求項11に記載の胃制限システムにおいて、
前記胃制限装置と前記植え込み可能なポートとの間に延びるカテーテルであって、前記ハウジングの前記流体貯蔵部から前記胃制限装置に流体を送達して前記胃制限装置により適用される制限の量を調整するための、カテーテル、
をさらに具備する、胃制限システム。
【請求項14】
組織に植え込まれたポートにアクセスする方法において、
皮膚表面の下に配され、組織に固着されたベース部分に運動可能に連結されたハウジングを旋回させて、前記ハウジングに形成された隔膜を所望の位置に位置付けること、
を具備する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記ハウジングに形成された隔膜の中に針を挿入することと、
前記ハウジングの中に流体を注入することと、
をさらに具備する、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、
前記ポートの前記ベース部分は、筋膜に固着される、方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、
前記流体は、前記ハウジングから、前記ハウジングに連結された胃制限装置に送達される、方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法において、
前記ハウジングの磁石部分を引き付けることによって、前記ハウジングを、皮膚表面に隣接して位置付けられた磁石と整列させ、よって、前記ハウジングを、前記隔膜の中に挿入される針と整列させること、
をさらに具備する、方法。
【請求項19】
組織に植え込まれたポートにアクセスする方法において、
磁石を皮膚表面に隣接して位置付けることであって、前記磁石は、前記皮膚表面の下に配され、かつ、組織に固着されたベース部分に運動可能に連結されたハウジングの磁石部分を引き付けて、前記ハウジングに形成された隔膜を所望の位置に位置付ける、磁石を皮膚表面に隣接して位置付けること、
を具備する、方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−213885(P2009−213885A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−51572(P2009−51572)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(595057890)エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド (743)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
【Fターム(参考)】