説明

含フッ素エーテル化合物の製造方法および新規な含フッ素エーテル化合物

【課題】フルオロオレフィン化合物と水酸基含有化合物とを反応させることによる含フッ素エーテル化合物の製造において、従来法と比べてより効率的で汎用性の高い製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも相間移動触媒、アルカリ水溶液、および該アルカリ水溶液と相分離する含フッ素有機溶媒が存在する反応系において、フルオロオレフィン化合物と水酸基含有化合物とを反応させる含フッ素エーテル化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エーテル化合物の改良された製造方法および6員のアセタール構造を有する新規な含フッ素エーテル化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は高分子材料、冷媒、洗浄剤、発泡剤、医薬、農薬等、工業的に広く用いられている。特に、含フッ素エーテル化合物はフロン代替物質として、洗浄剤、伝熱媒体、消火剤、潤滑剤、反応溶媒、乾燥剤(水切り剤)等の用途が期待されている。
【0003】
このような含フッ素エーテル化合物は、塩基存在下、アルコールやフェノールから対応するアルコキシドを発生させ、含フッ素オレフィンに求核反応させることにより得られることが報告されている。例えば、水溶媒中、水酸化カリウムを用いてトリフルオロエタノールとガス状の含フッ素オレフィンを反応させることにより高収率で含フッ素エーテル化合物が合成されている(非特許文献1)。しかしながら、水溶媒に実質的に不溶な原料を選択した場合には、非特許文献1に記載の条件では、収率よく含フッ素オレフィンを合成することは困難と考えられる。また、金属ナトリウムや水酸化カリウムを用いてペルフルオロメチルビニルエーテルと溶媒を兼ねた過剰量のアルコールを反応させることにより中ないし高収率で含フッ素エーテル化合物が合成されている(特許文献1)。しかしながら、過剰量のアルコールを使用することは経済的に好ましくなく、アルコール類が固体の場合には溶媒として用いることもできない。さらに、テトラヒドロフランやジメチルスルホキシド等の有機溶媒中、ブチルリチウムや水酸化カリウム等を用いて各種水酸基含有化合物とペルフルオロビニルエーテルを反応させることにより含フッ素エーテル化合物を合成する例も知られている(非特許文献2、3)。しかし、これらの例においても、収率は必ずしも満足できるものではなく、より経済的で汎用性の高い含フッ素エーテル化合物の製造法が望まれている。
【0004】
上記のごとく、種々の方法により様々な含フッ素エーテル化合物が合成されている。その一つに、フェノール類とペルフルオロ(2-メチレン-[1,3]ジオキソラン)類とを反応させることにより得られる5員のアセタール構造を有する含フッ素エーテル化合物が知られている(非特許文献4)。しかしながら、水酸基含有化合物とペルフルオロ(2-メチレン-[1,3]ジオキサン)類との反応およびその生成物については従来全く知られていない。さらに、(1,1,5,5,7,7,11,11-オクタフルオロ-9-ヒドロキシメチル-3,9-ビストリフルオロメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデシル-3-メタノールとペルフルオロオレフィン類との反応およびその生成物についても従来全く知られていない。
【特許文献1】特開平11-147847号公報
【非特許文献1】Green Chemistry,4,60-63(2002)
【非特許文献2】J.Fluorine Chem.,106,13-24(2000)
【非特許文献3】J.Fluorine Chem.,117,149-159(2000)
【非特許文献4】Izvestiya Akademii Nauk SSSR,Seriya Khimicheskaya,4,938-942(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フルオロオレフィン化合物と水酸基含有化合物とを反応させることによる含フッ素エーテル化合物の製造において、従来法と比べてより効率的で汎用性の高い製造方法を提供すること、および、6員環のアセタール構造を有する新規な含フッ素エーテル化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、少なくとも相間移動触媒、アルカリ水溶液、および該アルカリ水溶液と相分離する含フッ素有機溶媒が存在する反応系において、フルオロオレフィン化合物と水酸基含有化合物とを反応させることにより、目的の含フッ素エーテル化合物が効率的に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本出願によれば、以下の発明が提供される。
(1)少なくとも相間移動触媒、アルカリ水溶液、および該アルカリ水溶液と相分離する含フッ素有機溶媒が存在する反応系において、フルオロオレフィン化合物と水酸基含有化合物とを反応させることを特徴とする含フッ素エーテル化合物の製造方法。
(2)フルオロオレフィン化合物が下記一般式(I)で表される化合物であり、水酸基含有化合物が下記一般(II)で表される化合物であり、さらに含フッ素エーテル化合物が下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする(1)に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表し、R1とR2またはR2とR3はそれぞれ結合して環を形成してもよい。R4は置換もしくは無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
(3)一般式(I)および一般式(III)において、R1、R2がそれぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基であり、R3がフッ素原子であることを特徴とする(2)項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
(4)一般式(I)および一般式(III)においてR1がペルフルオロアルコキシ基であり、R2およびR3がフッ素原子であることを特徴とする(2)項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
(5)一般式(I)および一般式(III)で表される化合物がそれぞれ一般式(I−1)および一般式(III−1)で表される化合物であることを特徴とする(2)項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【0009】
【化2】

【0010】
式中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立にフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を表し、Rf1とRf2、Rf3とRf4、Rf1(またはRf2)とRf3(またはRf4)はそれぞれ結合して環を形成してもよい。R4は置換もしくは無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
(6)一般式(I)および一般式(III)で表される化合物がそれぞれ一般式(I−2)および一般式(III−2)で表される化合物であることを特徴とする(2)項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【0011】
【化3】

【0012】
式中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8、Rf9、Rf10はそれぞれ独立にフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を表し、Rf5とRf6、Rf7とRf8、Rf9とRf10、Rf5(またはRf6)とRf7(またはRf8)、Rf7(またはRf8)とRf9(またはRf10)はそれぞれ結合して環を形成してもよい。R4は置換もしくは無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
(7)一般式(I)および一般式(III)で表される化合物がそれぞれ式(I−3)および一般式(III−3)で表される化合物であることを特徴とする(2)項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【0013】
【化4】

【0014】
式中、R4は置換もしくは無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
(8)一般式(II)においてR4が下記一般式(II−1)で表される基または、置換または無置換の、アリール基であることを特徴とする(2)〜(7)のいずれか1項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【0015】
【化5】

【0016】
式中、Rf11はペルフルオロアルキル基を表し、Rf12は水素原子またはペルフルオロアルキル基を表す。
(9)一般式(II)で表される化合物が下記式(II−2)で表される化合物であることを特徴とする(2)〜(6)のいずれか1項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【0017】
【化6】

【0018】
(10)相間移動触媒として4級アンモニウム塩を用いることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
(11)一般式(I−2)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物との付加反応によって得られることを特徴とする一般式(III−2)で表される化合物。
【0019】
【化7】

【0020】
式中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8、Rf9、Rf10はそれぞれ独立にフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を表し、Rf5とRf6、Rf7とRf8、Rf9とRf10、Rf5(またはRf6)とRf7(またはRf8)、Rf7(またはRf8)とRf9(またはRf10)はそれぞれ結合して環を形成してもよい。R4は置換もしくは無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
(12)式(I−3)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物との付加反応によって得られることを特徴とする一般式(III−3)で表される化合物。
【0021】
【化8】

【0022】
式中、R4は置換もしくは無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
(13)一般式(I−5)で表される化合物と式(II−2)で表される化合物との付加反応によって得られることを特徴とする一般式(III−4)で表される化合物。
【0023】
【化9】

【0024】
【化10】

【0025】
【化11】

【0026】
式中、R21、R22はそれぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基を表す。R31、R32は、それぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基を表し、それぞれ結合して環を形成してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、例えば、CH(R1)(R2)CF(R3)OR4型の含フッ素エーテル化合物が簡便かつ高収率で得られる。また、6員環のアセタール構造を有する新規な含フッ素エーテル化合物が提供される。これらの含フッ素エーテル化合物は、洗浄剤、伝熱媒体、消火剤、潤滑剤、反応溶媒、乾燥剤(水切り剤)等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の含フッ素エーテル化合物の製造方法は、少なくとも相間移動触媒、アルカリ水溶液、および該アルカリ水溶液と相分離する含フッ素有機溶媒が存在する反応系において、フルオロオレフィン化合物と水酸基含有化合物とを反応させることにより、所望の含フッ素エーテル化合物を製造するものである。
本発明の反応は、典型的には下記反応式で表すことができる、フルオロオレフィン化合物が下記一般式(I)で表される化合物であり、水酸基含有化合物が下記一般(II)で表される化合物である、下記一般式(III)で表される含フッ素エーテル化合物の製造方法である。この反応は、下記反応式に示されるように、一般式(I)で表される不飽和化合物と一般式(II)で表される化合物との付加反応である。
【0029】
【化12】

【0030】
式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表し、R1とR2またはR2とR3はそれぞれ結合して環を形成してもよい。R4は置換または無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
R1、R2、R3で表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
R1、R2、R3で表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状いずれであってもよく、また、環構造を有していてもよく、鎖中にエーテル酸素を有していてもよい。好ましい炭素数としては、1〜30であり、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10であり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、デシル等が挙げられる。また、これらのアルキル基は下記置換基を有していてもよい。
【0031】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数20以下のアルキル基(例えば、メチル、エチル)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、炭素数20以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル)、炭素数30以下のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、炭素数20以下のアルキルカルボニル基(例えば、アセチル)、炭素数30以下のアリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル)、ニトロ基、アミノ基(例えば、アミノ、ジメチルアミノ、アニリノ)、炭素数20以下のアシルアミノ基(例えば、アセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド)、イミド基(例えば、スクシンイミド、フタルイミド)、イミノ基(例えば、ベンジリデンアミノ)、
【0032】
ヒドロキシ基、炭素数20以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、炭素数20以下のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、炭素数20以下のアルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、炭素数30以下のアリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、スルファモイル基(例えばスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、炭素数20以下のアルキルチオ基(例えばメチルチオ)、炭素数30以下のアリールチオ基(例えばフェニルチオ)、炭素数20以下のアルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、炭素数30以下のアリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、ヘテロ環基などを挙げる事ができる。置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。
【0033】
R1、R2、R3で表されるアリール基の好ましい炭素数としては、6〜30であり、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜10であり、例えばフェニル、ナフチル等が挙げられる。これらのアリール基は上記アルキル基の説明で述べたような置換基を有していてもよい。
R1、R2、R3で表されるアルコキシ基は、直鎖状、分岐状いずれであってもよく、また、環構造を有していてもよく、鎖中にエーテル酸素を有していてもよい。好ましい炭素数としては、1〜30であり、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、シクロペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ等が挙げられる。また、これらのアルコキシ基は上記アルキル基の説明で述べたような置換基を有していてもよい。
R1、R2、R3で表されるアリールオキシ基の好ましい炭素数としては、6〜30であり、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜10であり、例えばフェノキシ、ナフチルオキシ等が挙げられる。これらのアリールオキシ基は上記アルキル基の説明で述べたような置換基を有していてもよい。
【0034】
R4で表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状いずれであってもよく、また、環構造を有していてもよく、鎖中にエーテル酸素を有していてもよい。好ましい炭素数としては、1〜30であり、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10であり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、デシル等が挙げられる。また、これらのアルキル基は上記R1、R2、R3で表されるアルキル基の説明で述べたような置換基を有していてもよい。
R4で表されるアリールオキシ基の好ましい炭素数としては、6〜30であり、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜10であり、例えばフェノキシ、ナフチルオキシ等が挙げられる。これらのアリールオキシ基は上記R1、R2、R3で表されるアルキル基の説明で述べたような置換基を有していてもよい。
【0035】
以下にR1、R2、R3、R4および一般式(I)、(II)、(III)の好ましい態様について述べる。一般式(I)および一般式(III)において、R1、R2は好ましくは、それぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基である。ここで、ペルフルオロアルキル基およびペルフルオロアルコキシ基は、上記アルキル基およびアルコキシ基中の炭素−水素結合におけるすべての水素原子がフッ素原子に置き換わったものを表し、該フッ素原子および鎖中のエーテル酸素以外に置換基を持たないことが好ましい。R3は好ましくはフッ素原子である。
【0036】
一般式(I)および一般式(III)のより好ましい態様としては、R1がペルフルオロアルコキシ基であり、R2およびR3がフッ素原子であるもの、および下記(I−1)/(III−1)、(I−2)/(III−2)、(I−3)/(III−3)の組み合わせが挙げられる。
【0037】
【化13】

【0038】
式中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8、Rf9、Rf10はそれぞれ独立にフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を表し、Rf1とRf2、Rf3とRf4、Rf1(またはRf2)とRf3(またはRf4)、Rf5とRf6、Rf7とRf8、Rf9とRf10、Rf5(またはRf6)とRf7(またはRf8)、Rf7(またはRf8)とRf9(またはRf10)はそれぞれ結合して環を形成してもよい。Rf1、Rf2、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8、Rf9、Rf10で表されるペルフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐状いずれであってもよく、また、環構造を有していてもよく、鎖中にエーテル酸素を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、上述のような置換基を有していてもよいが無置換であることが好ましい。これらのペルフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、かつ、炭素数の合計が上述のR1、R2、R3の説明で述べた炭素数の好ましい範囲に含まれることが好ましい。R4は上記と同義であるが、より好ましくは以下に述べる一般式(II)におけるR4の好ましい基と同じものである。
【0039】
一般式(II)において、R4は下記一般式(II−1)で表される基または、置換または無置換のアリール基であることが好ましい。
【0040】
【化14】

【0041】
式中、Rf11はペルフルオロアルキル基を表し、Rf12は水素原子またはペルフルオロアルキル基を表す。これらのペルフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、かつ、炭素数の合計が上述のR4の説明で述べた炭素数の好ましい範囲に含まれることが好ましい。
以下に、一般式(I)および(II)で表される化合物の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。一般式(I)で表される化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられる。
【0042】
【化15】

【0043】
【化16】

【0044】
【化17】

【0045】
【化18】

【0046】
【化19】

【0047】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられる。
【0048】
【化20】

【0049】
【化21】

【0050】
【化22】

【0051】
【化23】

【0052】
一般式(III)で表される化合物の好ましい例としては、上記一般式(I)で表される化合物の具体例と一般式(II)で表される化合物の具体例との任意の組み合わせ[ただし、一般式(I)で表されるフルオロオレフィン化合物、一般式(II)で表される水酸基含有化合物のいずれもが2官能以上のものである組み合わせは除く]反応させることによって得られる一般式(III)で表される構造を有する化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
本発明で用いる相間移動触媒は、アルカリ水溶液および該アルカリ水溶液と相分離する含フッ素有機溶媒の間を繰り返し行き来することのできるものであれば何でも良いが、好ましくは、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の4級オニウム塩であり、特に4級アンモニウム塩が好ましい。これらの具体例としては、テトラブチルホスホニウムブロミド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェイト、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンホスフェイト、テトラブチルアンモニウムパークロレイト、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェイト、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラペンチルアンモニウムクロリド、テトラペンチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、ブチルトリプロピルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムハイドロジェンサルフェイト、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムハイドロジェンサルフェイト、テトラヘキサデシルアンモニウムブロミド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルジメチルエチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0054】
本発明で用いるアルカリ水溶液は、例えば水酸化アルカリ金属(例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム)、水酸化アルカリ土類金属(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム)、炭酸アルカリ金属(例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム)、炭酸アルカリ土類金属(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム)、炭酸水素アルカリ金属(例えば炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム)、炭酸水素アルカリ土類金属(例えば、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム)の水溶液であり、好ましくは水酸化アルカリ金属、アルカリ土類金属、炭酸アルカリ金属および炭酸アルカリ土類金属の水溶液であり、より好ましくは水酸化アルカリ金属水溶液であり、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが特に好ましい。
【0055】
含フッ素有機溶媒は、上記アルカリ水溶液と相分離するものであって、ペルフルオロ溶媒であっても部分フッ素化溶媒であってよく、これらの混合液であってもよい。ペルフルオロ溶媒の例としては、例えばペルフルオロアルカン化合物[FC−72(商品名、住友スリーエム社製)等]、ペルフルオロエーテル化合物[FC−75、FC−77(共に商品名、住友スリーエム社製)等]、ペルフルオロポリエーテル化合物[商品名:クライトックス(Krytox(登録商標)、DuPont社製)、フォブリン(Fomblin(登録商標)、AUSIMONT社製)、ガルデン(Galden(登録商標)、AUSIMONT社製)、デムナム{ダイキン工業社製}等]、クロロフルオロカーボン化合物(CFC−11,CFC−113等)、クロロフルオロポリエーテル化合物、ペルフルオロトリアルキルアミン化合物、不活性流体(商品名:フロリナート、Fluorinert(登録商標)、住友スリーエム社製)等、およびこれらの混合液を挙げることができる。
【0056】
また、部分フッ素化溶媒としては、AK-225((登録商標)、旭ガラス社製)、2,2,2-トリフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、2,4-ジフルオロトルエン、2,6-ジフルオロトルエン、3,4-ジフルオロトルエン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、1,3,5-トリフルオロベンゼン、2,3,4-トリフルオロトルエン、1,2,3,4-テトラフルオロベンゼン、1,2,3,5-テトラフルオロベンゼン、1,2,4,5-テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、α,α,α-トリフルオロメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等およびこれらの混合液を挙げることができる。
【0057】
本発明の溶媒としては、上記アルカリ水および含フッ素溶媒以外に通常の有機合成で用いる有機溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチルピロリドン、1,3--ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、およびこれらの混合液等)を用いることもできる。
【0058】
相関移動触媒は、水酸基含有化合物(付加反応させたい水酸基数)に対して0.01当量〜10当量であることが好ましく、より好ましくは0.05当量〜5当量であり、さらに好ましくは0.1当量〜1当量である。
アルカリ水溶液中のアルカリ当量数としては、水酸基含有化合物(付加反応させたい水酸基数)に対して0.01当量〜100当量であることが好ましく、より好ましくは0.05当量〜10当量であり、さらに好ましくは0.1当量〜2当量である。また、用いるアルカリ水溶液の体積としては、含フッ素有機溶媒に対して体積で0.01〜10倍用いるのが好ましく、より好ましくは、0.1倍〜5倍、さらに好ましくは0.2倍〜2倍である。
【0059】
含フッ素有機溶媒はフルオロオレフィン化合物に対して、重量で0.1倍〜100倍用いるのが好ましく、より好ましくは0.5倍〜20倍であり、さらに好ましくは1倍〜10倍である。含フッ素有機溶媒以外の有機溶媒を用いる場合、該有機溶媒の使用量は、アルカリ水溶液と含フッ素有機溶媒との混合液が均一にならない範囲であれば特に制約はないが、好ましくは含フッ素有機溶媒に対して体積で0.1倍〜10倍、より好ましくは0.2倍〜5倍である。アルカリ水溶液、含フッ素有機溶媒および含フッ素有機溶媒以外の有機溶媒は3相以上を形成してもよい。
【0060】
フルオロオレフィン化合物(付加反応させたいオレフィン数)は、水酸基含有化合物(付加反応させたい水酸基数)に対して、0.1当量〜10当量用いるのが好ましく、より好ましくは0.5当量〜2当量であり、さらに好ましくは0.8当量〜1.2当量である。
【0061】
反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、より好ましくは0℃〜100℃であり、さらに好ましくは20℃〜80℃である。
反応時間は用いる塩基、基質溶媒の種類や量、反応温度、攪拌効率等に依存するが、これらを制御して、10分〜48時間で行うのが好ましく、より好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは1時間〜12時間である。
【0062】
本発明の別の実施態様は、上記一般式(I−2)で表される化合物と上記一般式(II)で表される化合物との付加反応によって得られる上記一般式(III−2)で表される化合物である。
また、本発明のさらに別の実施態様は、上記式(I−3)で表される化合物と上記一般式(II)で表される化合物との付加反応によって得られた上記一般式(III−3)で表される化合物である。
また、本発明の別の実施態様は、下記一般式(I−5)で表される化合物と下記式(II−2)で表される化合物との付加反応によって得られる下記一般式(III−4)で表される化合物である。
【0063】
【化24】

【0064】
【化25】

【0065】
【化26】

【0066】
式中、R21、R22はそれぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基(炭素数が、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である)またはペルフルオロアルコキシ基(炭素数が、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10)を表す。R31、R32は、それぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基(炭素数が、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である)またはペルフルオロアルコキシ基(炭素数が、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10)を表し、それぞれ結合して環を形成してもよい。
【0067】
上記の一般式(III−2)(III−3)または(III−4)で表される化合物が得られる付加反応は、好ましいくは上述の少なくとも相間移動触媒、アルカリ水溶液、および該アルカリ水溶液と相分離する含フッ素有機溶媒が存在する反応系で行われるものであり、好ましい反応条件も上記の条件と同様である。
本発明の一般式(III−2)(III−3)および(III−4)で表される化合物は、洗浄剤、伝熱媒体、消火剤、潤滑剤、反応溶媒、乾燥剤(水切り剤)等として有用な新規化合物を提供することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
参考例1
[原料合成]
以下のスキームにしたがってフルオロオレフィン化合物(I−3)および水酸基含有化合物(II-2)を合成した。尚、原料(I-0-2)、(II-1-1)、(II-1−5)、(II-4-1)については市販品を用いた。
【0070】
【化27】

【0071】
化合物Bの合成
ヒドロキシアセトン(A,7.4g)およびピリジン(8.1ml)の酢酸エチル(100ml)溶液に室温(25℃)にてウンデカフルオロ(2-メチル-3-オキサヘキサン酸)フルオリド(10g)を滴下した。室温にて2時間攪拌後、反応液を希塩酸水に注加した。分液後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)にて精製することにより化合物B(10.2g,88%)を得た。
1H NMR(CDCl3) δ 2.22(s,3H),4.85(d,J=16.2Hz,1H),4.96(d,J=16.2Hz,1H)
19F NMR(CDCl3) δ -80.3(1F),-81.8(3F),-82.5(3F),-86.7(1F),-130.2(2F),-132.8(1F)
【0072】
化合物Cの合成
化合物B(9.9g)、ペンタエリスリトール(1.74g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(0.25g)およびトルエン(50ml)を脱水しながら4時間還流した。反応液を炭酸水素ナトリウム水溶液、水および飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。濃縮残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)にて精製することにより化合物C(5.9g,53%)を得た。
1H NMR(CDCl3) δ 1.41(s,3H),3.64〜3.85(m,4H),4.31(d,J=11.1Hz,1H),4.48(d,J=11.1Hz,1H)
19F NMR(CDCl3) δ -80.2(1F),-81.7(3F),-82.5(3F),-86.8(1F),-130.1(2F),-132.3(1F)
【0073】
化合物Dの合成
原料供給口、フッ素供給口、へリウムガス供給口およびドライアイスで冷却した還流装置を経由してフッ素トラップに接続されている排気口を備えた300mlテフロン(登録商標)製容器に、FC-72 180mlを入れて、内温20℃にてヘリウムガスを流速50ml/minで30分間吹き込んだ。引き続き20%F2/N2ガスを100ml/minで30分間吹き込んだ後、フッ素流量はそのままで、化合物C(4.25g)のFC-72(13.5ml)溶液およびヘキサフルオロベンゼン(1g)のFC-72(5ml)溶液をそれぞれ6.2ml/hの速度で添加した。さらに、20%F2/N2ガスを100ml/minで30分およびヘリウムガスを200ml/minで30分間吹き込んだ。FC-72を常圧にて濃縮後、さらに減圧にて濃縮することにより、化合物D(5.1g,粗収率88%)をほぼ単一生成物として得た。
19F NMR(CDCl3) δ -60.6〜-64.4(m,8F),-76.7(s,6F),-79.8〜-80.0(m,1F),-80.3〜-80.6(m,1F),82.0(m,6F),82.1(s,6F),-83.4〜-83.8(m,4F),-86.7(bs,1F),-86.9(bs,1F),-130.2(s,4F),-132.0(s,1F),-132.1(s,1F)
【0074】
化合物Eの合成
フッ化ナトリウム(10g)のメタノール(200ml)分散液に上記で得られた粗化合物D(5.1g)を滴下し、室温にて3時間攪拌した。不溶物をろ過により除去した後、濾液を約30mlになるまで濃縮し、酢酸エチル/炭酸水素ナトリウム溶液で抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)にて精製することにより化合物E(1.8g,78%)を得た。
1H NMR(CDCl3) δ 3.99(s,3H)
19F NMR(CDCl3) δ -62.5〜-63.8(m,4F),-69.9〜-71.3(m,4F),-81.2(s,3F),-81.4(s,3F)
【0075】
化合物(II-2)の合成
化合物E(0.28g)のジエチルエーテル(10ml)溶液にリチウムアルミニウムヒドリド(0.038g)を5℃にて添加した。室温にて4時間攪拌後、反応液に希塩酸水をゆっくり加えた。酢酸エチルで抽出後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)にて精製することにより化合物II-1(0.2g,80%)を得た。
1H NMR(CDCl3) δ 2.20(bs,1H),4.21(bs,2H),
19F NMR(CDCl3) δ -56.2〜-58.6(m,4F),-66.0〜-67.3(m,4F),80.9〜81.0(m,6F)
【0076】
化合物(I-3)の合成
化合物E(16.2g)のメタノール(200ml)/水(40ml)溶液に室温にて8N水酸化カリウム水溶液を10ml滴下した。反応液を室温にて2時間攪拌した後、減圧にて溶媒を留去した。濃縮残渣に水30mlを加え、さらに濃塩酸水をpH試験紙で酸性を示すまで滴下した。析出した白色結晶をろ過後、水(30ml)に分散し、1N水酸化カリウム水溶液を滴下し、pH=8に調整した。反応液を減圧にて濃縮し、残渣を100℃にて真空ポンプで十分に乾燥することにより化合物F(16.5g,93%)を得た。化合物F(2g)を減圧下(4mmHg)280℃にて熱分解し、揮発成分を-78℃のトラップで捕集した。得られた液体を減圧蒸留することにより化合物I-3(0.98g,74%)を得た。
19F NMR(CDCl3) δ -70.7(s,8F),-111.2(s,4F)、b.p.55℃(20mmHg)
【0077】
実施例1 化合物(III-3-1)の合成
下記スキームにより含フッ素エーテル化合物(III-3-1)を合成した。
【0078】
【化28】

【0079】
FC−72(商品名、住友スリーエム社製)5mlおよび水(5ml)の混合液に水酸化カリウム(0.12g,2.14mmol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(32.2mg,0.1mmol)を加え、さらにフルオロオレフィン化合物(I-3)(0.4g,1.0mmol)および水酸基含有化合物(II-1-1)(0.15ml,2.1mmol)を加えた。反応液を50℃にて12時間攪拌後、水酸基含有化合物(II-1-1)(0.05ml,0.7mmol)を追加し、さらに同温度で2時間攪拌した。反応液をFC−72(20ml)/水(20ml)に注加し、有機層を食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)にて精製することにより化合物(III-3-1)(0.50g,0.83mmol,83%,m.p.=32-35℃)を得た。
1H NMR(CDCl3) δ 4.31(q,J=7.80Hz,4H),5.59(bs,2H),
19F NMR(CDCl3) δ -68.3〜-69.5(m,4F),-71.7〜-73.1(m,4F),-74.5(t,J=7.80Hz,6F),-88.2(bs,4F)
【0080】
実施例2 化合物(III-3-2)の合成
下記スキームにより含フッ素エーテル化合物(III-3-2)を合成した。
【0081】
【化29】

【0082】
FC−72(商品名、住友スリーエム社製)10mlおよび水(10ml)の混合液に水酸化カリウム(0.25g,4.45mmol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(65mg,0.196mmol)を加え、さらにフルオロオレフィン化合物(I-3)(0.8g,2.0mmol)および水酸基含有化合物(II-1-5)(0.84ml,4.2mmol)を加えた。反応液を50℃にて6時間攪拌した。反応液をFC−72(30ml)/水(30ml)に注加し、有機層を食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)にて精製することにより化合物(III-3-2)(1.41g,17.6mmol,88%)を油状物として得た。
1H NMR(CDCl3) δ 4.43(t,J=12.5Hz,4H),5.59(s,2H),
19F NMR(CDCl3) δ -68.2〜-69.4(m,4F),-71.7〜-73.0(m,4F),-80.85(t,J=9.3Hz,6F),-88.2(s,4F),-120.9(m,4F),-127.5(s,4F)
【0083】
実施例3 化合物(III-3-3)の合成
下記スキームにより含フッ素エーテル化合物(III-3-3)を合成した。
【0084】
【化30】

【0085】
AK-225((登録商標)、旭ガラス社製)5mlおよび水(5ml)の混合液に水酸化カリウム(0.3g,5.35mmol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(96mg,0.289mmol)を加え、さらにフルオロオレフィン化合物(I-3)(0.5g,1.25mmol)および水酸基含有化合物(II-4-1)(0.26g,2.76mmol)を加えた。反応液を50℃にて20時間攪拌した。反応液をAK-225(20ml)/水(20ml)に注加し、有機層を食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)にて精製することにより化合物(III-3-3)(0.59g,1.0mmol,80%,m.p.=58-59℃)を得た。
1H NMR(CDCl3) δ 5.72(bs,2H),7.21〜7.42(m,5H)
19F NMR(CDCl3) δ -68.0〜-69.1(m,4F),-71.3〜-72.7(m,4F),-84.2(bs,4F)
【0086】
実施例4 化合物(III-4-1)の合成
下記スキームにより含フッ素エーテル化合物(III-4-1)を合成した。
【0087】
【化31】

【0088】
α,α,α-トリフルオロメチルベンゼン4.5ml、アセトニトリル(0.5ml)および水(5ml)の混合液に水酸化カリウム(0.17g,3.03mmol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(70mg,0.21mmol)を加え、さらにフルオロオレフィン化合物(I-0-2)(0.5ml,2.93mmol)および水酸基含有化合物(II-2)(0.5g,1.0mmol)を加えた。反応液を50℃にて5時間攪拌した。反応液をα,α,α-トリフルオロメチルベンゼン(20ml)/水(20ml)に注加し、有機層を食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)にて精製することにより化合物(III-4-1)(0.75g,0.74mmol,74%)を油状物として得た。
1H NMR(CDCl3) δ 4.50(s,4H),5.94(dd,J=53.1Hz,3.90Hz,2H)
19F NMR(CDCl3) δ -57.0〜-58.6(m,4F),-66.4〜-67.6(m,4F),-81.2(s,3F),-81.3(s,3F),-81.5(t,J=6.92Hz,6F),-85.0(d,J=145.2Hz,2F),-87.1(d,J=145.2Hz,2F),-89.8(d,J=140.9Hz,2F),-92.3(dd,J=140.9Hz,40.1Hz,2F),-129.9(s,4F),-144.9(dm,J=53.1Hz,2F)
【0089】
比較例1
実施例2において、テトラブチルアンモニウムブロミドを用いない以外は全く同じ条件で1時間反応を行い、ガスクロマトグラフィーにより反応をチェックしたところ、ほぼ原料しか回収できず、化合物(III-3-2)の生成は確認できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも相間移動触媒、アルカリ水溶液、および該アルカリ水溶液と相分離する含フッ素有機溶媒が存在する反応系において、フルオロオレフィン化合物と水酸基含有化合物とを反応させることを特徴とする含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【請求項2】
フルオロオレフィン化合物が下記一般式(I)で表される化合物であり、水酸基含有化合物が下記一般(II)で表される化合物であり、さらに含フッ素エーテル化合物が下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【化1】

式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表し、R1とR2またはR2とR3はそれぞれ結合して環を形成してもよい。R4は置換もしくは無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
【請求項3】
一般式(I)および一般式(III)において、R1、R2がそれぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基であり、R3がフッ素原子であることを特徴とする請求項2に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【請求項4】
一般式(I)および一般式(III)においてR1がペルフルオロアルコキシ基であり、R2およびR3がフッ素原子であることを特徴とする請求項2に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式(I)および一般式(III)で表される化合物がそれぞれ一般式(I−1)および一般式(III−1)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【化2】

式中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立にフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を表し、Rf1とRf2、Rf3とRf4、Rf1(またはRf2)とRf3(またはRf4)はそれぞれ結合して環を形成してもよい。R4は置換もしくは無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
【請求項6】
一般式(I)および一般式(III)で表される化合物がそれぞれ一般式(I−2)および一般式(III−2)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【化3】

式中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8、Rf9、Rf10はそれぞれ独立にフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を表し、Rf5とRf6、Rf7とRf8、Rf9とRf10、Rf5(またはRf6)とRf7(またはRf8)、Rf7(またはRf8)とRf9(またはRf10)はそれぞれ結合して環を形成してもよい。R4は置換もしくは無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
【請求項7】
一般式(I)および一般式(III)で表される化合物がそれぞれ一般式(I−3)および一般式(III−3)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【化4】

式中、R4は置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す。
【請求項8】
一般式(II)においてR4が下記一般式(II−1)で表される基または、置換または無置換の、アリール基であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【化5】

式中、Rf11はペルフルオロアルキル基を表し、Rf12は水素原子またはペルフルオロアルキル基を表す。
【請求項9】
一般式(II)で表される化合物が下記式(II−2)で表される化合物であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【化6】

【請求項10】
相間移動触媒として4級アンモニウム塩を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の含フッ素エーテル化合物の製造方法。
【請求項11】
一般式(I−2)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物との付加反応によって得られることを特徴とする一般式(III−2)で表される化合物。
【化7】

式中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8、Rf9、Rf10はそれぞれ独立にフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を表し、Rf5とRf6、Rf7とRf8、Rf9とRf10、Rf5(またはRf6)とRf7(またはRf8)、Rf7(またはRf8)とRf9(またはRf10)はそれぞれ結合して環を形成してもよい。R4は置換もしくは無置換の、アルキル基またはアリール基を表す。
【請求項12】
式(I−3)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物との付加反応によって得られることを特徴とする一般式(III−3)で表される化合物。
【化8】

式中、R4は置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す。
【請求項13】
一般式(I−5)で表される化合物と式(II−2)で表される化合物との付加反応によって得られることを特徴とする一般式(III−4)で表される化合物。
【化9】

【化10】

【化11】

式中、R21、R22はそれぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基を表す。R31、R32は、それぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基を表し、それぞれ結合して環を形成してもよい。

【公開番号】特開2008−174464(P2008−174464A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7513(P2007−7513)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】