説明

含フッ素ハロゲン化物の製造方法

【課題】含フッ素ハロゲン化物を、工業的に有利な方法で、安価に、しかも簡便に収率良く製造できる方法を提供する。
【解決手段】含フッ素スルホニルハライドを、金属硫化物又は炭化水素系硫化物塩と反応させて、含フッ素チオスルホン酸化合物とする第一反応工程と、該含フッ素チオスルホン酸化合物をI又はBrと反応させて含フッ素ハロゲン化物とする第二反応工程を含む含フッ素ハロゲン化物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ハロゲン化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学式:Rf1Br、 Rf1I(式中Rf1は、飽和又は不飽和の含フッ素基である)で表される含フッ素ハロゲン化物は、化学品、医農薬、樹脂等の中間体として有用な化合物である。例えば、含フッ素飽和アルキル臭化物は、代替血液、パーフルオロアルキル化剤等として用いられている。また、含フッ素不飽和臭化物、含フッ素不飽和ヨウ化物等は、置換可能な臭素、ヨウ素官能基を有しているため、機能性材料を製造するためのモノマー成分として有用な化合物である。
【0003】
これら含フッ素ハロゲン化物の製造方法としては、下記のスルフィン化反応と脱スルフィン化ハロゲン化反応の二工程によって、化学式:Rf1SO2Fで表されるスルホニルフロライドから化学式:Rf1Brで表される含フッ素臭化物を合成する方法が知られている(非特許文献1)。
スルフィン化反応
Rf1CF2SO2F + K2SO3 → Rf1CF2SO2K (溶媒:ジオキサン/H2O、75〜80℃)
収率:80%
脱スルフィン化ハロゲン化反応
Rf1CF2SO2K + I2(又はBr2 )→ Rf1CF2I(又はBr) + SO2+KI(又はBr)
(HOAc溶媒、100〜110℃)
収率:40〜50%
しかしながら、この方法では、原料からの目的物収率が32%〜40%と低く、しかも、目的物を得るためには溶媒を変更する必要があり、スルフィン化反応後にRf1CF2SO2Kを単離しなければならないので、操作が煩雑になる。また、100〜110℃と高温下で反応を行うことが必要である。
【0004】
また、同文献には、以下に示す反応工程によっても含フッ素ハロゲン化物を製造できることが示されている。
スルフィン化反応
Rf1CF2SO2F + K2SO3 → Rf1CF2SO2K (ジオキサン/H2O、75〜80℃)
収率:80%
脱スルフィン化ハロゲン化反応
Rf1CF2SO2K + HI(又はHBr)→ Rf1CF2I又は(Br) + Rf1CO2H+S (HOAc溶媒、reflux)
収率:40〜50%
しかしながら、この反応工程によっても、原料からの目的物収率が32%〜40%と低く、しかも目的物を得るためには溶媒を変更する必要があり、Rf1CF2SO2Kを単離しなければならないので、操作が煩雑になる。また、副生物としてRFCO2Hが生成するため、目的物の収率低下の原因となる。
【非特許文献1】Wei-Yuan Huang , Bing-NAN Huang , Chang-Ming Hu , Journal of Fluorine Chemistry,23(1983)193-204)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、含フッ素ハロゲン化物を、工業的に有利な方法で、安価に、しかも簡便に収率良く製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、含フッ素スルホニルハライドを原料として用い、これを金属硫化物又は炭化水素基含有硫化物塩と反応させて含フッ素チオスルホン酸化合物とした後、臭素分子又はヨウ素分子と反応させる方法によれば、安価で入手容易な原料を用いて、目的とする含フッ素臭化物又は含フッ素ヨウ化物を有利な方法で高収率で製造できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明、下記の含フッ素ハロゲン化物の製造方法を提供するものである。
1.
(i)一般式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、R1、R2及びR3の少なくとも一つはハロゲン原子である。Zは、Cl又はFである。但し、R1、R2及びR3が、いずれもフッ素原子でない場合には、R1、R2及びR3の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基である。)で表される含フッ素スルホニルハライドと、一般式:M1S(式中、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される金属硫化物及び一般式:R5SM1(式中、R5は、一価の炭化水素基であり、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される炭化水素基含有硫化物塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の硫化物とを反応させて、一般式(2):
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R1、R2、R3及びM1は上記に同じ)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物とする第一反応工程、及び、
(ii)上記一般式(2)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物をBr又はIと反応させて、一般式(3):
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R1、R2及びR3は上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素ハロゲン化物とする第二反応工程、
を含むことを特徴とする含フッ素ハロゲン化物の製造方法。
2. 一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライドが、一般式(1’):
CFSOZ (1’)
(式中、R4はハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素、窒素及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い) であり、ZはCl又はFである。)で表される化合物である、上記項1に記載の含フッ素ハロゲン化物の製造方法。
3. 一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライドが、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで表される化合物である上記項1に記載の含フッ素ハロゲン化物の製造方法:
(i)一般式:CF2XCFX(CF2)lA{CF2CF(CF3)O}m(CF2)nSO2Z (4)
(式中、XはF、Cl又はBrであり、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは0〜4の整数、mは0〜3の整数、nは1〜8の整数である)
(ii)一般式:Y(CF2)lA{CF2CF(CF3)O}m(CF2)nSO2Z (5)
(式中、Yは、H、ハロゲン原子、CCl3、-CO2M2(但し、M2はMa又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)又は芳香環(芳香環には、更に、置換基が1個又は2個以上存在しても良い)であり、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは1〜8の整数、mは0〜3の整数、nは1〜8の整数である。)
(iii)一般式:Y(CF2CF2O)l(CF2)mSO2Z (6)
(式中、Yは、H、ハロゲン原子、-CO2M2(但し、M2はMa又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。) 又は芳香環(芳香環には、更に、置換基が1個又は2個以上存在しても良い)であり、ZはF又はClである。lは0〜50の整数、mは1〜20の整数である。)。
4. 一般式(7):
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、T1、T2、T3及びT4は、同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、T1、T2、T3及びT4の少なくとも一つはハロゲン原子である。T5は、二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)である。Zは、Cl又はFである。pは0又は1である。但し、T1及びT2が、いずれもフッ素原子でない場合には、T1及びT2の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基であり、T3及びT4が、いずれもフッ素原子でない場合には、T3及びT4の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基である。)で表される含フッ素ジスルホニルハライドと、一般式:M1S(式中、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される金属硫化物及び一般式:R5S M1(式中、R5は、一価の炭化水素基であり、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される炭化水素基含有金属硫化物塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の硫化物とを反応させて、一般式(8)
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、T1、T2、T3、T4、T5、M1及びpは上記に同じ)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物とする第一反応工程、及び、
(ii)上記一般式(8)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物をBr又はIと反応させて、一般式(9):
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、T1、T2、T3、T4、T5及びpは上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素ジハロゲン化物とする第二反応工程、
を含むことを特徴とする含フッ素ジハロゲン化物の製造方法。
5. 一般式(7)で表される含フッ素スルホニルハライドが、一般式(7’):
ZSO−FC−(T−CF―SOZ (7’)
(式中、Tは二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、ZはCl又はFである。pは0又は1である。)で表される化合物である上記項4に記載の含フッ素ハロゲン化物の製造方法。
6. 一般式(7)で表される含フッ素ジスルホニルハライドが、下記一般式(10)〜(12)のいずれかで表される化合物である上記項4に記載の含フッ素ジハロゲン化物の製造方法:
(i)一般式:ZO2S(CF2)nSO2Z (10)
(式中、nは2〜20の整数であり、ZはF又はClである。)
(ii)一般式:ZO2S(CF2CF2A)l(CF2)mSO2Z (11)
(式中、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは1〜50の整数であり、mは1〜20の整数である。)。
(iii)一般式:ZO2S(CF2CF2A)l(CF2)m-φ-(CF2)m(ACF2CF2)lSO2Z (12)
(式中、式中、φは芳香環であり、ZO2S(CF2CF2A)l(CF2)m-基が結合していない部位には、置換基が一個又は二個以上存在してもよい。zはF又はClである。lは0〜10の整数、mは1〜8の整数である。)。
7. 一般式(13):
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、φは芳香環であり、E1及びE2は同一又は異なって、ハロゲン原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、E3は二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)である。芳香環には、更に、置換基が一個又は二個以上存在してもよい。但し、E1及びE2がいずれもフッ素原子でない場合には、E1、E2及びE3の少なくとも一つは、フッ素原子を含有する炭化水素基である)で表される含フッ素トリスルホニルハライドと、一般式:M1S(式中、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される金属硫化物、及び一般式:R5S M1(式中、R5は、一価の炭化水素基であり、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される炭化水素基含有金属硫化物塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の硫化物とを反応させて、一般式(14):
【0022】
【化8】

【0023】
(式中、φ、E1、E2、E3及びM1は上記に同じ)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物とする第一反応工程、及び
(ii)上記一般式(14)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物をBr又はIと反応させて、一般式(15):
【0024】
【化9】

【0025】
(式中、φ、E1、E2及びE3は上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素トリハロゲン化物とする第二反応工程、
を含むことを特徴とする含フッ素トリハロゲン化物の製造方法。
8. 一般式(13)で表される含フッ素トリスルホニルハライドが、下記一般式(16):
【0026】
【化10】

【0027】
(式中、E〜Eは、同一又は異なって、基:−(CF2)lA{CF2CF(CF3)O}m(CF2)nSO2Z) (式中、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは1〜8の整数、mは0〜3の整数、nは1〜8の整数である。)又は基:−(CF2CF2O)l(CF2)mSO2Z(式中、ZはF又はClである。lは0〜50の整数、mは1〜20の整数である。)である。ベンゼン環には、更に、置換基が一個又は二個以上存在しても良い)で表される化合物である上記項7に記載の方法。
9. 第一反応工程と第二反応工程を同一溶媒中で行う上記項1〜8のいずれかに記載の方法。
10. 一般式(2):
【0028】
【化11】

【0029】
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い) であり、R1、R2及びR3の少なくとも一つはハロゲン原子である。但し、R1、R2及びR3が、いずれもフッ素原子でない場合には、R1、R2及びR3の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基である。M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物を、Br又はIと反応させることを特徴とする、一般式(3):
【0030】
【化12】

【0031】
(式中、R1、R2及びR3は上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素ハロゲン化物の製造方法。
11. 一般式(8)
【0032】
【化13】

【0033】
(式中、T1、T2、T3及びT4は、同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、T1、T2、T3及びT4の少なくとも一つはハロゲン原子である。T5は、二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)である。pは0又は1である。pは0又は1である。但し、T1及びT2が、いずれもフッ素原子でない場合には、T1及びT2の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基であり、T3及びT4が、いずれもフッ素原子でない場合には、T3及びT4の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基である。M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物を、Br又はIと反応させることを特徴とする、一般式(9):
【0034】
【化14】

【0035】
(式中、T1、T2、T3、T4、T5及びpは上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素ジハロゲン化物の製造方法。
12. 一般式(14):
【0036】
【化15】

【0037】
(式中、φは芳香環であり、E1及びE2は同一又は異なって、ハロゲン原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、E3は二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)である。芳香環には、更に、置換基が一個又は二個以上存在してもよい。但し、E1及びE2がいずれもフッ素原子でない場合には、E1、E2及びE3の少なくとも一つは、フッ素原子を含有する炭化水素基である。M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物をBr又はIと反応させることを特徴とする、一般式(15):
【0038】
【化16】

【0039】
(式中、φ、E1、E2及びE3は上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素トリハロゲン化物の製造方法。
13. 極性溶媒中で反応を行う上記項1〜12のいずれかに記載の方法。

本発明方法では、出発原料としては、一般式(1):
【0040】
【化17】

【0041】
で表される含フッ素スルホニルハライド、一般式(7):
【0042】
【化18】

【0043】
で表される含フッ素ジスルホニルハライド、又は一般式(13):
【0044】
【化19】

【0045】
で表される含フッ素トリスルホニルハライドを用いる。
【0046】
上記一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライドにおいて、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基であって、R1、R2及びR3の少なくとも一つはハロゲン原子であり、Zは、Cl又はFである。
【0047】
これらの内で、ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、I等を例示できる。また、一価の炭化水素基は、直鎖状、分枝状、環状等の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水素基のいずれでもよい。該炭化水素基は、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子の一種又は二種以上を、一個又は二個以上含んでいても良い。更に、芳香環、シクロ環、複素環等を一個又は二個以上含んでいても良い。
【0048】
尚、R1、R2及びR3が、いずれもフッ素原子でない場合には、R1、R2及びR3の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基である。この場合、一価の含フッ素炭化水素基は、完全にフッ素化されたパーフルオロ基であってもよく、或いは、一部の炭素原子のみがフッ素化されていても良い。
【0049】
上記一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライドの内で、好ましい化合物の具体例として、一般式(1’):
CFSOZ (1’)
(式中、R4はハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い) であり、ZはCl又はFである。)で表される化合物を挙げることができる。この化合物を原料とする場合には、比較的低い反応温度で収率良く目的物を得ることができる。
【0050】
この様な一般式(1’)で表される含フッ素スルホニルハライドの内で、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物は、生成物の分離・精製の容易さの点から好ましい。
(i)一般式:CF2XCFX(CF2)lA{CF2CF(CF3)O}m(CF2)nSO2Z (4)
(式中、XはF、Cl又はBrであり、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは0〜4の整数、mは0〜3の整数、nは1〜8の整数である)、
(ii)一般式:Y(CF2)lA{CF2CF(CF3)O}m(CF2)nSO2Z (5)
(式中、Yは、H、ハロゲン原子、CCl3、-CO2M2(但し、M2はMa又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)又は芳香環(芳香環には、更に、置換基が一個又は二個以上存在してもよい。)であり、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは1〜8の整数、mは0〜3の整数、nは1〜8の整数である。)、
(iii)一般式:Y(CF2CF2O)l(CF2)mSO2Z (6)
(式中、Yは、H、ハロゲン原子、-CO2M2(但し、M2はMa又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。) 又は芳香環(芳香環には、更に、置換基が一個又は二個以上存在してもよい。)であり、ZはF又はClである。lは0〜50の整数、mは1〜20の整数である。)
上記一般式(5)で表される化合物及び一般式(6)で表される化合物において、芳香環としては、フェニル、ナフチル、アントラキル等を例示できる。芳香環の置換基としては、-NO2、-CN、-NH2、-CH3、-CH2OH、-Br、-I、-Cl、-CO2H、-SO3H、-CO2Na、-CONH2、-CO2N(Et)2等を例示できる。
【0051】
上記した一般式(4)〜(6)の化合物の具体例としては、下記の化合物を挙げることができる。
・一般式(4)の化合物:
CF2ClCFClOCF2CF2SO2F、CF2ClCFClOCF2CF2SO2Cl
CF2ClCFClOCF2CF2CF2SO2F、CF2ClCFClO CF2CF2CF2SO2Cl
CF2ClCFClOCF2CF2CF2CF2SO2F、CF2ClCFClO CF2CF2CF2CF2SO2Cl
CF2ClCFClOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、CF2ClCFClOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Cl
CF2ClCFClO{CF2CF(CF3)O}2CF2CF2SO2F、CF2ClCFCl{CF2CF(CF3)O}2OCF2CF2SO2Cl
CF2ClCFClOCF2CF(CF3)OCF2CF2 CF2 SO2F、
CF2ClCFClOCF2CF(CF3)OCF2CF2 CF2SO2Cl
CF2ClCFClOCF2CF(CF3)OCF2CF2 CF2 CF2 SO2F、
CF2ClCFClOCF2CF(CF3)OCF2CF2 CF2 CF2SO2Cl
・一般式(5)の化合物:
Y(CF2)2O(CF2)2SO2F、Y(CF2)2O(CF2)2SO2Cl、Y(CF2)2O(CF2)3SO2F
Y(CF2)2O(CF2)3SO2Cl、Y(CF2)2O(CF2)4SO2F、Y(CF2)2O(CF2)4SO2Cl
Y(CF2)4O(CF2)2SO2F、Y(CF2)4O(CF2)2SO2Cl、
Y(CF2)6O(CF2)2SO2F、Y(CF2)6O(CF2)2SO2Cl、Y(CF2)2O(CF2)4SO2F、
Y(CF2)2O(CF2)4SO2Cl、
(上記各式において、YはH、F、Cl、Br又はIである)、
NaO2C(CF2)mO(CF2)nSO2F、NaO2C(CF2)mO(CF2)nSO2Z
(式中、nは1〜8の整数、mは1〜8の整数、ZはF又はClである)
CCl3(CF2)mO(CF2)nSO2F、Cl3C(CF2)mO(CF2)nSO2Z
(式中、nは1〜8の整数、mは1〜8の整数、ZはF又はClである)
φ-(CF2)mO(CF2)nSO2Z
(式中、φは、Ph(フェニル)、Ph-NO2、Ph-CN、Ph-NH2、Ph-CH3、Ph-(CH3)2、Ph-CH2OH、Ph-Br、ph-Br2、Ph-I、Ph-I2、Ph-Cl、Ph-Cl2、Ph-CO2H、pH-(CO2H)2、Ph-SO3H、Ph-CO2Na、Ph-(CO2Na)2、Ph-CONH2、Ph-CO2N(Et)2、ナフチル、アントラキル等の芳香族基である。nは1〜8の整数、mは1〜8の整数、ZはF又はClである)
・一般式(6)の化合物:
ICF2CF2OCF2CF2OCF2CF2SO2Z、ICF2CF2OCF2CF2OCF2CF2CF2SO2Z、
ICF2CF2OCF2CF2OCF2CF2CF2CF2SO2Z、ICF2SO2Z、ICF2CF2CF2SO2Z、
ICF2CF2CF2CF2SO2Z、CF3SO2Z、CF3CF2SO2F、CF3(CF2)6SO2Z
(上記各式中、zはF又はClである)
ZO2SCF2-φ、ZO2SCF2CF2-φ、ZO2SCF2CF2OCF2CF2
(式中、φは、Ph(フェニル)、Ph-NO2、Ph-CN、Ph-NH2、Ph-CH3、Ph-(CH3)2、Ph-CH2OH、Ph-Br、ph-Br2、Ph-I、Ph-I2、Ph-Cl、Ph-Cl2、Ph-CO2H、pH-(CO2H)2、Ph-SO3H、Ph-CO2Na、Ph-(CO2Na)2、Ph-CONH2、Ph-CO2N(Et)2、ナフチル、アントラキル等の芳香族基である)。
【0052】
また、一般式(7):
【0053】
【化20】

【0054】
で表される含フッ素ジスルホニルハライドにおいて、T1、T2、T3及びT4は、同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基であり、T1、T2、T3及びT4の少なくとも一つはハロゲン原子であり、T5は、二価の炭化水素であり、Zは、Cl又はFである。pは0又は1である。
【0055】
これらの内で、ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、I等を例示できる。また、一価の炭化水素基と二価の炭化水素基は、いずれも、直鎖状、分枝状、環状等の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水素基のいずれでもよい。該炭化水素基は、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子の一種又は二種以上を、一個又は二個以上含んでいても良い。更に、芳香環、シクロ環、複素環等を一個又は二個以上含んでいても良い。
【0056】
尚、T1及びT2が、いずれもフッ素原子でない場合には、T1及びT2の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基であり、T3及びT4が、いずれもフッ素原子でない場合には、T3及びT4の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基である。
【0057】
一価の炭化水素基と二価の炭化水素基が含フッ素炭化水素基である場合には、完全にフッ素化されたパーフルオロ基であってもよく、或いは、一部の炭素原子のみがフッ素化されていても良い。
【0058】
この様な一般式(7)で表される含フッ素ジスルホニルハライドの内で、好ましい化合物の具体例として、一般式(7’):
ZSO−FC−(T−CF―SOZ (7’)
(式中、Tは二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、ZはCl又はFである。pは0又は1である。)で表される化合物を挙げることができる。この化合物を原料とする場合には、比較的低い反応温度で収率良く目的物を得ることができる。
【0059】
この様な一般式(7’)で表される含フッ素スルホニルハライドにおいて、下記一般式(10)〜(12)で表される化合物が、生成物の分離・精製の容易さ等の点から好ましい。
(i)一般式:ZO2S(CF2)nSO2Z (10)
(式中、nは2〜20の整数であり、ZはF又はClである。)
(ii)一般式:ZO2S(CF2CF2A)l(CF2)mSO2Z (11)
(式中、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは1〜50の整数であり、mは1〜20の整数である。)。
(iii)一般式:ZO2S(CF2CF2A)l(CF2)m-φ-(CF2)m(ACF2CF2)lSO2Z (12)
(式中、式中、φは芳香環であり、ZO2S(CF2CF2A)l(CF2)m-基が結合していない部位には、置換基が一個又は二個以上存在してもよい。zはF又はClである。lは0〜10の整数、mは1〜8の整数である。)
上記一般式(12)で表される化合物及において、芳香環としては、フェニル、ナフチル、アントラキル等を例示でき、芳香環の置換基としては、-NO2、-CN、-NH2、-CH3、-CH2OH、-Br、-I、-Cl、-CO2H、-SO3H、-CO2Na、-CONH2、-CO2N(Et)2等を例示できる。
【0060】
上記した一般式(10)〜(12)の化合物の具体例としては、下記の化合物を挙げることができる。
・一般式(10)の化合物:
ZO2SCF2SO2Z、ZO2SCF2CF2SO2Z、ZO2SCF2CF2CF2SO2Z、ZO2SCF2CF2CF2CF2CF2SO2Z
・一般式(11)の化合物:
ZO2SCF2CF2OCF2CF2SO2Z、ZO2SCF2CF2SCF2CF2SO2Z、ZO2SCF2CF2OCF2CF2CF2SO2Z
・一般式(12)の化合物:
ZO2SCF2-φ-CF2SO2Z、ZO2SCF2CF2-φ-CF2CF2SO2Z、
ZO2SCF2CF2CF2−φ−CF2CF2CF2SO2Z、ZO2SCF2CF2CF2CF2−φ- CF2CF2CF2CF2SO2Z
ZO2SCF2CF2OCF2CF2-φ- CF2CF2OCF2CF2SO2Z、
ZO2SCF2CF2SCF2CF2-φ- CF2CF2SCF2CF2SO2Z、
ZO2SCF2CF2OCF2CF2CF2-φ- CF2CF2OCF2CF2CF2SO2Z
(式中、φは、Ph(フェニル)、Ph-NO2、Ph-CN、Ph-NH2、Ph-CH3、Ph-CH2OH、Ph-Br、Ph-I、Ph-Cl、Ph-CO2H、Ph-SO3H、Ph-CO2Na、Ph-CONH2、Ph-CO2N(Et)2、ナフチル、アントラキル等の芳香族基である)。
【0061】
また、一般式(13):
【0062】
【化21】

【0063】
で表される含フッ素トリスルホニルハライドにおいて、φは芳香環であり、E1及びE2は同一又は異なって、ハロゲン原子又は一価の炭化水素基であり、E3は二価の炭化水素基である。但し、E1及びE2がいずれもフッ素原子でない場合には、E1、E2及びE3の少なくとも一つは、フッ素原子を含有する炭化水素基である。
【0064】
これらの内で、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等を例示できる。芳香環は、更に、置換基を一個又は二個以上含んでいても良い。芳香環の置換基としては、-NO2、-CN、-NH2、-CH3、-CH2OH、-Br、-I、-Cl、-CO2H、-SO3H、-CO2Na、-CONH2、-CO2N(Et)2等を例示できる。ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、I等を例示できる。また、一価の炭化水素基と二価の炭化水素基は、いずれも、直鎖状、分枝状、環状等の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水素基のいずれでもよい。該炭化水素基は、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子の一種又は二種以上を、一個又は二個以上含んでいても良い。更に、芳香環、シクロ環、複素環等を一個又は二個以上含んでいても良い。
【0065】
一価の炭化水素基と二価の炭化水素基が含フッ素炭化水素基である場合には、完全にフッ素化されたパーフルオロ基であってもよく、或いは、一部の炭素原子のみがフッ素化されていても良い。
【0066】
一般式(13)で表される含フッ素トリスルホニルハライドの具体例として、下記一般式(16):
【0067】
【化22】

【0068】
(式中、E〜Eは、同一又は異なって、基:−(CF2)lA{CF2CF(CF3)O}m(CF2)nSO2Z) (式中、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは1〜8の整数、mは0〜3の整数、nは1〜8の整数である。)、又は基:−(CF2CF2O)l(CF2)mSO2Z(式中、ZはF又はClである。lは0〜50の整数、mは1〜20の整数である。)である。ベンゼン環には、更に、置換基が一個又は二個以上存在しても良い)で表される化合物を挙げることができる。
【0069】
上記した一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライド、一般式(7)で表される含フッ素ジスルホニルハライド、及び一般式(13)で表される含フッ素トリスルホニルハライドは、いずれも、公知化合物又は公知方法で容易に入手し得る化合物である。
【0070】
第一反応工程
本発明方法では、まず、第一反応工程として、上記した一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライド、一般式(7)で表される含フッ素ジスルホニルハライド又は一般式(13)で表される含フッ素トリスルホニルハライドを原料(以下、原料を、単に「含フッ素スルホニルハライド」ということがある)とし、これを金属硫化物及び炭化水素基含有硫化物塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の硫化物と反応させる。
【0071】
金属硫化物としては、一般式:M12Sで表される金属硫化物を用いることができる。ここで、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maは、Li,Na,K,Cs等のアルカリ金属、MbはMg、Ca、Ba等のアルカリ土類金属である。これらの内で、Mがアルカリ金属である硫化物が好ましい。特に、Na2S、K2S等が廉価で取り扱いが容易である点で好ましい。
【0072】
炭化水素基含有硫化物塩としては、一般式:RSM1で表される炭化水素基含有硫化物塩を用いることができる。式中、Rは、一価の炭化水素基であり、例えば、炭素数1〜8程度のアルキル基、炭素数2〜8程度のアルケニル基、炭素数2〜8程度のアルキニル基、フェニル基等である。これらの基は直鎖、分岐状、環状のいずれでもよく、フェニル基は、一個又は二個以上の置換基を有していても良い。特に、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等が好ましい。M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maは、Li,Na,K,Cs等のアルカリ金属、MbはMg、Ca、Ba等のアルカリ土類金属である。これらの内で、Mがアルカリ金属であるものが好ましく、特にNa、K等である化合物が廉価である点で好ましい。炭化水素基含有硫化物塩の具体例としては、CH3CH2SNa、CH3CH2CH2CH2SNa、φ-SNa(φはフェニル、ナフチルなどの芳香族炭化水素基)等を挙げることができる。
【0073】
上記した金属硫化物及び炭化水素基含有硫化物塩は、いずれか一種のみを用いても良く、或いは二種以上混合して用いても良い。
【0074】
原料の仕込み方法については、特に限定はなく、含フッ素スルホニルハライドと、金属硫化物及び炭化水素基含有硫化物塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の硫化物(以下、単に「硫化物」ということがある)とを同時に反応容器に仕込んでもよく、或いは、いずれか一方を反応容器に仕込み、他方をこれに滴下しても良い。反応熱を考慮すると、いずれか一方を反応容器に仕込み、他方をこれに滴下する方法が好ましい。
【0075】
一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライド、一般式(7)で表される含フッ素ジスルホニルハライド、又は一般式(13)で表される含フッ素トリスルホニルハライドと、金属硫化物及び炭化水素基含有硫化物塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の硫化物との仕込み比については、特に限定的ではないが、該硫化物の使用量を、化学量論量の0.1〜10倍量程度とすることが好ましく、1〜5倍量程度とすることがより好ましい。
【0076】
具体的には、一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライドを原料とする場合であって、M1がアルカリ金属である硫化物を用いるときは、含フッ素スルホニルハライド1モルに対して該硫化物を0.1〜10モル程度、好ましくは1〜5モル程度用いればよく、M1がアルカリ土類金属である硫化物を用いるときは、含フッ素スルホニルハライド1モルに対して、該硫化物を0.05〜5モル程度、好ましくは0.5〜2.5モル程度用いればよい。
【0077】
一般式(7)で表される含フッ素ジスルホニルハライドを原料とする場合であって、M1がアルカリ金属である硫化物を用いる場合には、含フッ素ジスルホニルハライド1モルに対して、該硫化物を0.2〜20モル程度、好ましくは2〜10モル程度用いればよく、M1がアルカリ土類金属である硫化物を用いるときは、含フッ素ジスルホニルハライド1モルに対して、該硫化物を0.1〜10モル程度、好ましくは1〜5モル程度用いればよい。
【0078】
一般式(13)で表される含フッ素トリスルホニルハライドを原料とする場合であって、M1がアルカリ金属である硫化物を用いる場合には、含フッ素トリスルホニルハライド1モルに対して、該硫化物を0.3〜30モル程度、好ましくは3〜15モル程度用いればよく、M1がアルカリ土類金属である硫化物を用いるときは、含フッ素ジスルホニルハライド1モルに対して、該硫化物を0.15〜15モル程度、好ましくは1.5〜7.5モル程度用いればよい。
【0079】
反応は、溶媒中又は無溶媒で行うことができる。反応熱の除熱、反応速度の点からは、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、スルホラン、CH3CN、CHCl3等の極性溶媒、CH2Cl2、C6F14等の無極性溶媒等を用いることができる。特に、極性溶媒を用いることが好ましい。
【0080】
溶媒の使用量は、原料とする含フッ素スルホニルハライドに対して、0.01〜100容量倍程度とすることが好ましく、0.1〜10容量倍程度とすることがより好ましい。
【0081】
反応温度は、−20℃〜200℃程度という広い範囲とすることができる。特に、10℃〜70℃程度の範囲とすることが好ましい。本発明方法は、この様な比較的低い反応温度とすることができる点で有利である。
【0082】
反応は、減圧下、大気圧下及び加圧下のいずれで行ってもよく、通常は、大気圧下で行うことが好ましい。
【0083】
反応時間は、通常0.01〜48時間程度とすればく、好ましくは0.5〜24時間程度程度とすればよい。
【0084】
以上の方法によって、含フッ素チオスルホン酸化合物を得ることができる。この際、一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライドを原料とする場合には、一般式(2) :
【0085】
【化23】

【0086】
(式中、R1、R2、R3及びM1は上記に同じ)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物を得ることができ、一般式(7)で表される含フッ素ジスルホニルハライドを原料とする場合には、一般式(8):
【0087】
【化24】

【0088】
(式中、T1、T2、T3、T4、T5、M1及びpは上記に同じ)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物を得ることができ、一般式(13)で表される含フッ素トリスルホニルハライドを原料とする場合には、一般式(14):
【0089】
【化25】

【0090】
(式中、φ、E1、E2、E3及びM1は上記に同じ)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物を得ることができる。
【0091】
第二反応工程:
次いで、第二反応工程として、一般式(2) で表される含フッ素チオスルホン酸化合物、一般式(8)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物、又は一般式(14)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物と、Br又はIとを反応させる。
【0092】
原料の仕込み方法については特に限定はなく、一般式(2)の含フッ素チオスルホン酸化合物、一般式(8)の含フッ素ジチオスルホン酸化合物又は一般式(14)の含フッ素トリチオスルホン酸化合物と、Br又はIを同時に反応容器に仕込んでもよく、或いは、いずれか一方を反応容器に仕込み、他方をこれに加えても良い。反応熱を考慮すると、いずれか一方を反応容器に仕込み、他方をこれに加える方法が好ましい。
【0093】
第二反応工程では、第一反応工程で得られた一般式(2) で表される含フッ素チオスルホン酸化合物、一般式(8)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物又は一般式(14)の含フッ素トリチオスルホン酸化合物を、溶媒除去、再結晶、ろ過等の方法で単離した後、Br又はIと反応させても良いが、含フッ素チオスルホン酸化合物、含フッ素ジチオスルホン酸化合物又は含フッ素トリチオスルホン酸化合物を単離することなくそのまま反応を進行させることも可能である。特に、第一反応工程の生成物を単離することなく、第一反応工程で用いた溶媒と同一の溶媒中でBr又はIと反応させる方法は、簡便な操作により効率良く目的物を得ることができる点で非常に有利な方法である。
【0094】
一般式(2)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物、一般式(8)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物又は一般式(14)の含フッ素トリチオスルホン酸化合物をと、ハロゲン分子(Br又はI)の仕込み比については、該ハロゲン分子の使用量を、化学量論量の0.1〜10倍量程度とすることが好ましく、1〜6倍量程度とすることがより好ましい。
【0095】
具体的には、一般式(2)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物を原料とする場合であって、M1がアルカリ金属である場合には、該含フッ素スルホン酸化合物1モルに対してハロゲン分子を0.1〜10モル程度、好ましくは1〜6モル程度用いればよく、M1がアルカリ土類金属である場合には、含フッ素チオスルホン酸化合物1モルに対してハロゲン分子を0.2〜20モル程度、好ましくは2〜12モル程度用いればよい。
【0096】
また、一般式(8)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物を原料とする場合であって、M1がアルカリ金属である場合には、該含フッ素ジチオスルホン酸化合物1モルに対してハロゲン分子を0.2〜20モル程度、好ましくは2〜12モル程度用いればよく、M1がアルカリ土類金属であるときは、該含フッ素ジチオスルホン酸化合物1モルに対して、ハロゲン分子を0.4〜40モル程度、好ましくは4〜24モル程度用いればよい。
【0097】
また、一般式(14)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物を原料とする場合であって、M1がアルカリ金属である場合には、該含フッ素トリチオスルホン酸化合物1モルに対してハロゲン分子を0.3〜30モル程度、好ましくは3〜18モル程度用いればよく、M1がアルカリ土類金属であるときは、該含フッ素トリチオスルホン酸化合物1モルに対して、ハロゲン分子を0.6〜60モル程度、好ましくは6〜36モル程度用いればよい。
【0098】
反応は、溶媒中又は無溶媒で行うことができる。反応熱の除熱、反応速度の点からは、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、スルホラン、CH3CN、CHCl3等の極性溶媒、CH2Cl2、C6F14等の無極性溶媒等を用いることができる。特に、極性溶媒を用いることが好ましい。
【0099】
溶媒の使用量は、含フッ素チオスルホン酸化合物、含フッ素ジチオスルホン酸化合物又は含フッ素トリチオスルホン酸化合物に対して、0.01〜100容量倍程度とすることが好ましく、0.1〜10容量倍程度とすることがより好ましい。
【0100】
反応温度は、−20℃〜200℃程度という広い範囲とすることができる。特に、10℃〜70℃程度の範囲とすることが好ましい。本発明方法は、この様な比較的低い反応温度とすることができる点で有利である。
【0101】
反応は、減圧下、大気圧下及び加圧下のいずれで行ってもよく、通常は、大気圧下で行うことが好ましい。
【0102】
反応時間は、通常0.01〜48時間程度とすればく、好ましくは0.5〜24時間程度程度とすればよい。
【0103】
以上の方法によって、目的とする含フッ素ハロゲン化物を得ることができる。この際、一般式(2) で表される含フッ素チオスルホン酸化合物とハロゲン分子を反応させる場合には、一般式(3):
【0104】
【化26】

【0105】
(式中、R1、R2及びR3は上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素ハロゲン化物を得ることができ、一般式(8)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物とハロゲン分子を反応させる場合には、一般式(9):
【0106】
【化27】

【0107】
(式中、T1、T2、T3、T4、T5及びpは上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素ジハロゲン化物を得ることができ、一般式(14)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物とハロゲン分子を反応させる場合には、一般式(15):
【0108】
【化28】

【0109】
(式中、φ、E1、E2及びE3は上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素トリハロゲン化物を得ることができる。
【0110】
上記した方法で得られる粗化合物は均一な溶液状態又は分液した状態となる。この様な粗化合物を分液、濾過、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法で精製することによって、目的とする含フッ素ハロゲン化物を得ることができる。
【0111】
また、上記した第二反応工程は、第一反応工程と連続した操作として行う必要はなく、第一反応工程又はその他の方法によって得られた一般式(2)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物、一般式(8)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物又は一般式(14)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物を原料として、含フッ素ハロゲン化物の製造方法として実施することができる。この場合にも、簡単な方法で収率良く含フッ素ハロゲン化物を得ることができる。
【0112】
このようにして得られる含フッ素ハロゲン化物は、例えば、化学品、医農薬、樹脂等の中間体として有用な化合物である。
【発明の効果】
【0113】
本発明方法によれば、煩雑な操作を要することなく、工業的に有利な方法により、目的とする含フッ素ハロゲン化物を安価に高収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0114】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0115】
実施例1
50mLの3つ口フラスコにDMSO:20mLとNa2S:2.0g(25.6mmol)を仕込んだ。その後、滴下ロートでICF2CF2OCF2CF2SO2F(>99mass%):5.0g(11.7mmol)を50℃を超えないように仕込んだ。仕込み終了後、約1時間常温で反応させた。
【0116】
1時間反応後、I2:20g(78.7mmol)を発熱の確認しながら5g分割で仕込んだ。仕込み終了後、60℃まで昇温して1時間反応させた。
【0117】
反応終了後、CCl:50mLを加え、Na2SO3水溶液で過剰のI2を除去した。その後、ろ過し分液して、有機層について19F-NMR、GC、及びGC/MSの各分析を行った。GC及びGC/MS測定の結果ICF2CF2OCF2CF2Iの生成が確認できた。C6F16を内標にして19F-NMR定量した結果、ICF2CF2OCF2CF2SO2Fの転化率は86.8%であり、選択率99%以上、収率65.0%でICF2CF2OCF2CF2Iが得られていた。
【0118】
実施例2
実施例1と同様の方法で得た73.3mass%C8F17SO2SNa:1.0g(1.36mmol)と、DMSO:20mLを100mLの3つ口フラスコに仕込んだ。
【0119】
この溶液に室温でI2:1.53g(6.02mmol)を仕込んだ。その後80℃まで昇温し、一定温度になってから1時間反応させた。反応終了後、NaHSO3でI2を還元し、析出した下層をCCl4抽出した。下層のCCl4層についてGC、GC/MS、及びNMRの各測定を行なった。GC及びGC/MS測定の結果、C8F17Iの生成が確認できた。C6F16を内標にして19F-NMR定量した結果、C8F17SO2SNaの転化率は100%であり、選択率99%以上、収率66.5%でC8F17Iが得られていた。
【0120】
実施例3
CF3CF(CO2Na)OCF2CF2SO2FとNa2Sとの反応により、収率92.4%で得られた80.4mass%のCF3CF(CO2Na)OCF2CF2SO2SNa:5.0g(10.0mmol)とDMSO:20mLをジムロートを取り付けた100mLの3つ口フラスコに仕込んだ。その後、室温で発熱を確認しながら、I2を2g〜4gの間で合計:12.6g(49.6mmol)になるまで仕込んだ。仕込み終了後、50℃〜55℃の間で加熱し、5時間反応させた。
【0121】
反応終了後、室温まで冷却し、過剰のI2を除去するために、着色がなくなるまでNa2SO3/H2Oを滴下ロートで仕込んだ。副生成物である硫黄をろ過により除去し、ろ液について19F-NMR測定を行った。内標としてトリフルオロエタノールを用いて定量した結果、CF3CF(CO2Na)OCF2CF2SO2Snaの転化率は100%であり、選択率99%以上、収率79.1%でCF3CF(CO2Na)OCF2CF2Iが得られていた。
【0122】
実施例4
実施例1と同様の方法で得られた73.3mass%C8F17SO2SNa:0.6g(0.82mmol)と、DMF:5mLを50mLの3つ口フラスコに仕込んだ。
【0123】
この溶液に、室温で着色するまでBr2を仕込んだ。その後10分間攪拌反応させた。反応終了後、NaHSO3水で過剰のBr2を除去し、析出した下層についてGC、GC/MS及び19F-NMRの各測定を行なった。GC及びGC/MS測定の結果C8F17Brの生成が確認できた。C6F16を内標にして19F-NMRを用いて定量した結果、C8F17SO2SNaの転化率は100%であり、収率:81.7%でC8F17Brが得られていた。
【0124】
実施例5
実施例1と同様の方法で得られた81.3mass%のCF2ClCFClOCF2CF2SO2SNa:1.14g(2.3mmol)と、H2O:10mLを50mLの3つ口フラスコに仕込んだ。
【0125】
この溶液に、室温で褐色となるまでBr2を仕込んだ。その後1時間攪拌反応させた。反応終了後、NaHSO3で過剰のBr2を除去し、析出した下層について、GC、GC/MS及び19F-NMRの各測定を行なった。GC及びGC/MS測定の結果、CF2ClCFClOCF2CF2Brの生成が確認できた。C6F16を内標にして19F-NMRを用いて定量した結果、CF2ClCFClOCF2CF2SO2SNaの転化率は82.6%であり、選択率:99%以上、収率:74.8%で、CF2ClCFClOCF2CF2Brが得られていた。
【0126】
実施例6
ジムロート付きの100mLの3つ口フラスコに、DMSO:20mLとNa2S:1.76g(22.6mmol)を仕込んだ。その後、71mass%のClSO2(CF2CF2)2SO2Cl(固体):2.24g(3.98mmol)を発熱を確認しながら加えた。ClSO2(CF2CF2)2SO2Clを全て加えた後、約1時間攪拌して反応させた。
【0127】
1時間攪拌後、I2:15.3g(60.2mmol)を5gづつ小分けで加えて全量仕込んだ。I2仕込み終了後、60〜65℃まで昇温させて1時間反応させた。反応終了後、クロロホルム抽出、Na2SO3水クエンチ、ろ過、分液、下層分析を順次行った。GC及びGC/MS分析を行った結果、I(CF2CF2)2Iの生成を確認できた。19F-NMR測定による定量を行った結果、ClSO2(CF2CF2)2SO2Clの転化率は100%であり、選択率:100%、収率61.8%でI(CF2CF2)2Iが得られていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)一般式(1):
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、R1、R2及びR3の少なくとも一つはハロゲン原子である。Zは、Cl又はFである。但し、R1、R2及びR3が、いずれもフッ素原子でない場合には、R1、R2及びR3の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基である。)で表される含フッ素スルホニルハライドと、一般式:M1S(式中、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される金属硫化物及び一般式:R5SM1(式中、R5は、一価の炭化水素基であり、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される炭化水素基含有硫化物塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の硫化物とを反応させて、一般式(2):
【化2】

(式中、R1、R2、R3及びM1は上記に同じ)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物とする第一反応工程、及び、
(ii)上記一般式(2)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物をBr又はIと反応させて、一般式(3):
【化3】

(式中、R1、R2及びR3は上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素ハロゲン化物とする第二反応工程、
を含むことを特徴とする含フッ素ハロゲン化物の製造方法。
【請求項2】
一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライドが、一般式(1’):
CFSOZ (1’)
(式中、R4はハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、ZはCl又はFである。)で表される化合物である、請求項1に記載の含フッ素ハロゲン化物の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)で表される含フッ素スルホニルハライドが、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで表される化合物である請求項1に記載の含フッ素ハロゲン化物の製造方法:
(i)一般式:CF2XCFX(CF2)lA{CF2CF(CF3)O}m(CF2)nSO2Z (4)
(式中、XはF、Cl又はBrであり、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは0〜4の整数、mは0〜3の整数、nは1〜8の整数である)、
(ii)一般式:Y(CF2)lA{CF2CF(CF3)O}m(CF2)nSO2Z (5)
(式中、Yは、H、ハロゲン原子、CCl3、-CO2M2(但し、M2はMa又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)又は芳香環(芳香環には、更に、置換基が1個又は2個以上存在しても良い)であり、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは1〜8の整数、mは0〜3の整数、nは1〜8の整数である。)、
(iii)一般式:Y(CF2CF2O)l(CF2)mSO2Z (6)
(式中、Yは、H、ハロゲン原子、-CO2M2(但し、M2はMa又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。) 又は芳香環(芳香環には、更に、置換基が1個又は2個以上存在しても良い)であり、ZはF又はClである。lは0〜50の整数、mは1〜20の整数である。)。
【請求項4】
一般式(7):
【化4】

(式中、T1、T2、T3及びT4は、同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、T1、T2、T3及びT4の少なくとも一つはハロゲン原子である。T5は、二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)である。Zは、Cl又はFである。pは0又は1である。但し、T1及びT2が、いずれもフッ素原子でない場合には、T1及びT2の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基であり、T3及びT4が、いずれもフッ素原子でない場合には、T3及びT4の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基である。)で表される含フッ素ジスルホニルハライドと、一般式:M1S(式中、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される金属硫化物及び一般式:R5S M1(式中、R5は、一価の炭化水素基であり、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される炭化水素基含有金属硫化物塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の硫化物とを反応させて、一般式(8)
【化5】

(式中、T1、T2、T3、T4、T5、M1及びpは上記に同じ)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物とする第一反応工程、及び、
(ii)上記一般式(8)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物をBr又はIと反応させて、一般式(9):
【化6】

(式中、T1、T2、T3、T4、T5及びpは上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素ジハロゲン化物とする第二反応工程、
を含むことを特徴とする含フッ素ジハロゲン化物の製造方法。
【請求項5】
一般式(7)で表される含フッ素ジスルホニルハライドが、一般式(7’):
ZSO−FC−(T−CF―SOZ (7’)
(式中、Tは二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、ZはCl又はFである。pは0又は1である。)で表される化合物である請求項4に記載の含フッ素ハロゲン化物の製造方法。
【請求項6】
一般式(7)で表される含フッ素ジスルホニルハライドが、下記一般式(10)〜(12)のいずれかで表される化合物である請求項4に記載の含フッ素ジハロゲン化物の製造方法:
(i)一般式:ZO2S(CF2)nSO2Z (10)
(式中、nは2〜20の整数であり、ZはF又はClである。)
(ii)一般式:ZO2S(CF2CF2A)l(CF2)mSO2Z (11)
(式中、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは1〜50の整数であり、mは1〜20の整数である。)。
(iii)一般式:ZO2S(CF2CF2A)l(CF2)m-φ-(CF2)m(ACF2CF2)lSO2Z (12)
(式中、式中、φは芳香環であり、ZO2S(CF2CF2A)l(CF2)m-基が結合していない部位には、置換基が一個又は二個以上存在してもよい。zはF又はClである。lは0〜10の整数、mは1〜8の整数である。)。
【請求項7】
一般式(13):
【化7】

(式中、φは芳香環であり、E1及びE2は同一又は異なって、ハロゲン原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、E3は二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)である。芳香環には、更に、置換基が一個又は二個以上存在してもよい。但し、E1及びE2がいずれもフッ素原子でない場合には、E1、E2及びE3の少なくとも一つは、フッ素原子を含有する炭化水素基である)で表される含フッ素トリスルホニルハライドと、一般式:M1S(式中、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される金属硫化物、及び一般式:R5S M1(式中、R5は、一価の炭化水素基であり、M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される炭化水素基含有金属硫化物塩からなる群から選ばれた少なくとも一種の硫化物とを反応させて、一般式(14):
【化8】

(式中、φ、E1、E2、E3及びM1は上記に同じ)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物とする第一反応工程、及び
(ii)上記一般式(14)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物をBr又はIと反応させて、一般式(15):
【化9】

(式中、φ、E1、E2及びE3は上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素トリハロゲン化物とする第二反応工程、
を含むことを特徴とする含フッ素トリハロゲン化物の製造方法。
【請求項8】
一般式(13)で表される含フッ素トリスルホニルハライドが、下記一般式(16):
【化10】

(式中、E〜Eは、同一又は異なって、基:−(CF2)lA{CF2CF(CF3)O}m(CF2)nSO2Z) (式中、AはO、S又はNHであり、ZはF又はClである。lは1〜8の整数、mは0〜3の整数、nは1〜8の整数である。)又は基:−(CF2CF2O)l(CF2)mSO2Z(式中、ZはF又はClである。lは0〜50の整数、mは1〜20の整数である。)である。ベンゼン環には、更に、置換基が一個又は二個以上存在しても良い)で表される化合物である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第一反応工程と第二反応工程を同一溶媒中で行う請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
一般式(2):
【化11】

(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い) であり、R1、R2及びR3の少なくとも一つはハロゲン原子である。但し、R1、R2及びR3が、いずれもフッ素原子でない場合には、R1、R2及びR3の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基である。M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される含フッ素チオスルホン酸化合物を、Br又はIと反応させることを特徴とする、一般式(3):
【化12】

(式中、R1、R2及びR3は上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素ハロゲン化物の製造方法。
【請求項11】
一般式(8):
【化13】

(式中、T1、T2、T3及びT4は、同一又は異なって、ハロゲン原子、水素原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、T1、T2、T3及びT4の少なくとも一つはハロゲン原子である。T5は、二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)である。pは0又は1である。但し、T1及びT2が、いずれもフッ素原子でない場合には、T1及びT2の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基であり、T3及びT4が、いずれもフッ素原子でない場合には、T3及びT4の少なくとも一つは一価の含フッ素炭化水素基である。M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される含フッ素ジチオスルホン酸化合物を、Br又はIと反応させることを特徴とする、一般式(9):
【化14】

(式中、T1、T2、T3、T4、T5及びpは上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素ジハロゲン化物の製造方法。
【請求項12】
一般式(14):
【化15】

(式中、φは芳香環であり、E1及びE2は同一又は異なって、ハロゲン原子又は一価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)であり、E3は二価の炭化水素基(フッ素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子のいずれか一種又は二種以上が、一個又は二個以上含まれていても良い)である。芳香環には、更に、置換基が一個又は二個以上存在してもよい。但し、E1及びE2がいずれもフッ素原子でない場合には、E1、E2及びE3の少なくとも一つは、フッ素原子を含有する炭化水素基である。M1は、Ma又は(Mb)1/2であって、Maはアルカリ金属、Mbはアルカリ土類金属である。)で表される含フッ素トリチオスルホン酸化合物をBr又はIと反応させることを特徴とする、一般式(15):
【化16】

(式中、φ、E1、E2及びE3は上記に同じであり、XはBr又はIである)で表される含フッ素トリハロゲン化物の製造方法。
【請求項13】
極性溶媒中で反応を行う請求項1〜12のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2006−248907(P2006−248907A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63654(P2005−63654)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】