説明

含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法

【課題】一方の分子末端が化学的に不活性なパーフルオロアルキル基であり、他方の分子末端は窒素原子を有する複素環式化合物基で修飾された含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法を提供する。
【解決手段】一般式 CnF2n+1O(C3F6O)mRfCOF(ここで、Rfは炭素数1〜2のフルオロカーボン基であり、nは1〜3の整数であり、mは10〜30の整数である)で表わされる含フッ素ポリエーテルカルボニルフロライドと含窒素複素環式アミン化合物 ArNH2(ここで、Arは含窒素複素環式化合物基である)とを反応させるに際し、反応温度を80〜100℃に上げた後、48時間後の昇温温度が3〜5℃となる昇温幅の範囲内で反応温度を昇温させて反応させ、一般式 CnF2n+1O(C3F6O)mRfCONHAr(ここで、Rf、Ar、nおよびmは上記定義と同じである)で表わされる含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法に関する。さらに詳しくは、末端が窒素原子を有する化合物基で修飾された含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子中にフッ素原子を有する含フッ素化合物は、熱的安定性および化学的安定性に優れており、その一部を他の官能基で修飾したものは、潤滑油の添加剤などとして利用されている。その中でも、末端が窒素原子を有する化合物で修飾されたものは、分子構造中に非共役電子対を持つ窒素原子を含むため適度な配位能力を持ち、金属表面上への吸着などに優れるので、潤滑油添加剤として優れた性能を示すと考えられる。
【0003】
このような添加剤の例としては、-(CF2)n0- の繰り返し単位と-CH2NRR′とから構成される安定化化合物を含む磁気ディスク用潤滑剤が、特許文献1で提案されている。しかるに、これら化合物の製造には、高価なメタンスルホニルクロライドが必要であり、また無水条件での反応など特殊な反応操作などが必要なことから、スケールアップは容易ではない。
【0004】
また、特許文献2には、ピリジン環を有する含フッ素化合物が提案されている。その製造方法は、相間移動触媒の存在下でピリジン誘導体と含フッ素アルコールを混合するだけであり、非常に簡便であるが、反応に使用する含フッ素アルコールを得るには、通常特許文献3に示されるように、対応する酸フロライドのエステル化および還元反応が必要であり、多工程であることが示唆される。
【0005】
さらに、特許文献4には、含フッ素ポリエーテルカルボン酸クロライドと芳香族アミンとを反応させて含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドを得る方法が記載されているが、ここで用いられているカルボン酸クロライドは、対応するカルボン酸フロライドを加水分解してカルボン酸に変換した後、塩化チオニルや五塩化リンを使用して再度カルボン酸クロライドへ変換する必要があり、反応工程が多岐にわたり、実際の製造においては不利であるばかりではなく、反応温度が5℃以下に保たれるために反応転化率が低くなり、収率が75〜85%程度と低いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】USP6,083,600
【特許文献2】特開2004−346318号公報
【特許文献3】USP3,810,874
【特許文献4】特開平2−49096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、一方の分子末端が化学的に不活性なパーフルオロアルキル基であり、他方の分子末端は窒素原子を有する複素環式化合物基で修飾された含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる本発明の目的は、
一般式
CnF2n+1O(C3F6O)mRfCOF 〔II〕
(ここで、Rfは炭素数1〜2のフルオロカーボン基であり、nは1〜3の整数であり、mは10〜30の整数である)で表わされる含フッ素ポリエーテルカルボニルフロライドと含窒素複素環式アミン化合物
ArNH2
(ここで、Arは含窒素複素環式化合物基である)とを反応させるに際し、反応温度を80〜100℃に上げた後、48時間後の昇温温度が3〜5℃となる昇温幅の範囲内で反応温度を昇温させて反応させ、一般式
CnF2n+1O(C3F6O)mRfCONHAr 〔I〕
(ここで、Rf、Ar、nおよびmは上記定義と同じである)で表わされる含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドを製造する方法によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法により、一方の分子末端が化学的に不活性なパーフルオロアルキル基であり、他方の分子末端は窒素原子を有する複素環式化合物基で修飾された含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドが、特定の含フッ素ポリエーテルカルボニルフロライドと含窒素複素環式アミン化合物とをアミド化反応させることによって、収率良く容易に製造される。得られた含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドは、着色などが抑えられ、潤滑剤の添加剤などとして有効に利用される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一方の分子末端が化学的に不活性なパーフルオロアルキル基であり、他方の分子末端は窒素原子を有する複素環式化合物基で修飾された含フッ素化合物の製造に用いられる含フッ素ポリエーテルカルボニルフロライドとしては、一般式
CnF2n+1O(C3F6O)mRfCOF 〔II〕
で表わされるパーフルオロポリエーテル酸フロライドが用いられる。これは公知の方法で容易に得ることができ、一般的にはヘキサフルオロプロピレンオキサイドをフッ化セシウム触媒およびテトラグライム溶媒の存在下でオリゴマー化反応させることにより、一般式〔III〕に示されるようなパーフルオロポリエーテルカルボニルフロライドが得られる。

【0011】
調製が容易であるといった観点からは、ヘキサフルオロプロピレンオキサイドの数平均重合度(m)は10≦m≦30程度が好ましく、さらに好ましくはm=20程度が好ましい。また、重合度はある程度の分布を持っていてもよい。このヘキサフルオロプロピレンオキサイドオリゴマーを用いる製造法が、最も効率よく含フッ素ポリエーテルカルボニルフロライドを得ることができる。
【0012】
また、分岐構造を持たないパーフルオロポリエーテルカルボニルフロライドの他の製法として、テトラフルオロオキセタンを金属フッ化物で開環重合した後、直接フッ素化により繰り返し単位部分の炭化水素メチレン基をフッ素化し、一般式〔IV〕で示されるようなパーフルオロポリエーテルカルボニルフロライドを得る方法もある。ただし、工程は長くなる。

【0013】
以上に例に示される如く、フルオロカーボン基Rfは炭素数1〜2のパーフルオロアルキレン基または分岐パーフルオロアルキレン基であり、例えば-CF2-、-CF2CF2-、-CF(CF3)-基などが示される。
【0014】
パーフルオロポリエーテルカルボニルフロライドの変性に使用される含窒素複素環式アミノ化合物ArNH2としては、次のような化合物が挙げられ、これらの含窒素複素環式化合物は、少なくとも1個のアルキル基、ハロゲン基等で置換されていてもよい。
(1) ピリジン誘導体
例:2-,3-または4-アミノピリジン
(2) ピリミジン誘導体
例:2-アミノピリミジン
2-アミノ-4,6-ジメチルピリミジン
(3) ベンゾイミダゾール誘導体
例:2-アミノベンゾイミダゾール
【0015】
これらの含フッ素ポリエーテルカルボニルフロライドと含窒素複素環式アミン化合物は、加熱撹拌しながら反応させることにより、目的物である含フッ素化合物を得ることができる。反応に際しては、反応により生じるHFを捕捉するため、主反応には関与しない三級アミンを共存させることが好ましい。反応後の除去し易さといった観点からは、好ましくはトリアルキルアミン(アルキル基は炭素数1〜12、好ましくは1〜3)、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどのピリジン類が用いられ、反応後の除去し易さに加えて反応性、取り扱いの容易性、価格などの観点からは、さらに好ましくはトリエチルアミン、ピリジンが用いられる。
【0016】
反応は、特に溶媒を用いなくとも目的物を得ることが可能であるが、パーフルオロポリエーテルの粘度などの理由により撹拌し難い場合などには、有機溶剤を使用して粘度を下げることもできる。有機溶剤としては、各反応成分の溶解性などを考慮して、好ましくはハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系有機溶剤が用いられ、実際には旭硝子製品AK-225、3M社製品ノベックHFEなどの市販品が用いられる。
【0017】
反応温度については、含フッ素ポリエーテルカルボニルフロライドに含窒素複素環式アミン化合物およびHF捕捉剤を滴下した後、まず約80〜100℃、好ましくは約90〜100℃に設定される。反応時にアミン化合物の酸化により反応混合物に著しい着色が生じる場合があり、そのような現象を避けるためには、滴下終了後の反応温度を段階的に昇温させる、具体的には反応温度を約80〜100℃上げた後、48時間後の昇温温度が3〜5℃となる昇温幅の範囲内で反応温度を昇温させて反応させる。反応温度を昇温させた後、この反応温度で-COFのシグナル(IRスペクトルで1880〜1885の吸収)が消失する迄反応は継続される。また、不必要に長時間の反応も着色を引き起こす原因となるため、昇温後の反応時間については24〜100時間、好ましくは48〜72時間程度に設定される。
【0018】
反応後は、抽出処理により反応中に生じたアミンのHF塩などを除去するが、反応に溶媒を用いなかった場合には、抽出溶媒としてフッ素系有機溶剤が用いられる。このフッ素系有機溶剤としては、前記市販品がそのまま用いられる。なお、水溶性物質を溶解させる抽出溶媒としては、水、食塩水、低級アルコールなどが使用されるが、これらの内不純物の抽出能力、層分離能の観点からは、好ましくはメタノールが用いられる。
【実施例】
【0019】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0020】
実施例1
窒素シール用T字形コネクター、撹拌翼、コンデンサー、滴下ロート、温度計および加熱用マントルヒーターを取り付けたフラスコに、パーフルオロポリエーテルカルボニルフロライド
CF3CF2CF2O〔CF(CF3)CF2O〕mCF(CF3)COF
m:12(F-NMRから求めたヘキサフルオロプロピレンオキサ
イドの数平均重合度であり、ある程度の分布を有する)
1020gを導入して撹拌した。そこに、2-アミノベンゾイミダゾール51g(372ミリモル)とトリエチルアミン9g(89ミリモル)との混合物を室温でゆっくりと滴下し、滴下終了後に内温が92±1℃となるようにマントルヒーターの温度を調整し、さらに48時間後に内温が96±1℃となるように再調整をして、さらに24時間加熱撹拌を行った。IRスペクトルで1885cm-1のCOFのシグナルが消失したことを確認し、反応混合物にフッ素系有機溶剤(旭硝子製品AK-225)250mLを加えて撹拌して十分に溶解させた後、メンブランフィルターを用いてアミンのフッ酸塩等の不溶性成分を除去した。
【0021】
ろ液に上記フッ素系有機溶剤(AK-225)100mLおよびメタノール1200gを加えて十分に混合し、下層を抽出する作業を合計3回実施し、最後にエバボレーターを用いてフッ素系有機溶剤(AK−225)を滅圧下で除去し、着色のない下記の含フッ素化合物1050g(収率98.1%)を得た。

F-NMR(acetone-d6,CFCl3)
-145.9 〜 -145.2ppm ; -OCF(CF3)CF2O-
-132.6ppm ; -CF(CF3)CONH-
-131.0ppm ; CF3CF2CF2O-
-86.1 〜 -74.9ppm ; -OCF(CF3)CF2O-,CF3CF2CF2O-
-84.1ppm ; CF3CF2CF2O-
-81.3ppm ; -OCF(CF3)CF2O-
-81.2ppm ; -CF(CF3)CONH-
H-NMR(acetone-d6,TMS)
δ7.20 ; =N-C=CH-CH=
δ7.61 ; =N-C=CH-CH=
【0022】
実施例2
実施例1において、パーフルオロポリエーテルカルボニルフロライドとして
CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)mCF2CF2COF
m:20(F-NMRから求めたヘキサフルオロプロピレンオキサ
イドの数平均重合度であり、ある程度の分布を有する)
500gを用い、また2-アミノベンゾイミダゾール量を18.8g(137ミリモル)、トリエチルアミン量を3.3g(33ミリモル)にそれぞれ変更して、加熱撹拌反応を行った。IRスペクトルで1880cm-1(COF)のシグナルが消失したことを確認し、反応混合物にフッ素系有機溶剤(AK-225)100mLを加えて撹拌して十分に溶解させた後、メンブランフィルターを用いてアミンのフッ酸塩等の不溶性成分を除去した。
【0023】
ろ液に上記フッ素系有機溶剤(AK-225)100mLおよびメタノール600gを加えて十分に混合し、下層を抽出する作業を合計3回実施し、最後にエバボレーターを用いてフッ素系有機溶剤(AK−225)を滅圧下で除去し、着色のない下記の含フッ素化合物482g(収率93.5%)を得た。

F-NMR(acetone-d6,CFCl3)
-125.6ppm ; CF3CF2CF2O-
-122.8ppm ; -CF2CF2CF2O-
-113.4ppm ; -OCF2CF2CONH-
-88.4 〜 -88.7ppm ; -OCF2-
-88.2ppm ; CF3CF2CF2O-
H-NMR(acetone-d6,TMS)
δ7.20 ; =N-C=CH-CH=
δ7.61 ; =N-C=CH-CH=
【0024】
実施例3
実施例1において、2-アミノベンゾイミダゾールの代わりに4-アミノピリジン35g(372ミリモル)が用いられ、滴下終了後の内温が90±1℃、48時間後の内温が95±1℃に変更され、着色のない下記の含フッ素化合物998g(収率94.8%)を得た。

m:12(F-NMRから求めたヘキサフルオロプロピレンオキサ
イドの数平均重合度であり、ある程度の分布を有する)
F-NMR(acetone-d6,CFCl3)
-146.0 〜 -145.1ppm ; -OCF(CF3)CF2O-
-132.8ppm ; -CF(CF3)CONH-
-131.2ppm ; CF3CF2CF2O-
-86.0 〜 -74.6ppm ; -OCF(CF3)CF2O-,CF3CF2CF2O-
-84.1ppm ; CF3CF2CF2O-
-81.3ppm ; -OCF(CF3)CF2O-
-81.2ppm ; -CF(CF3)CONH-
H-NMR(acetone-d6,TMS)
δ6.50 ; -C=CH-CH=N-
δ8.01 ; -C=CH-CH=N-
【0025】
実施例4
実施例1において、2-アミノベンゾイミダゾールの代わりに2-アミノピリミジン35.3g(372ミリモル)が用いられ、滴下終了後の内温が90±1℃、48時間後の内温が95±1℃に変更され、着色のない下記の含フッ素化合物1032g(収率98.0%)を得た。

m:12(F-NMRから求めたヘキサフルオロプロピレンオキサ
イドの数平均重合度であり、ある程度の分布を有する)
F-NMR(acetone-d6,CFCl3)
-146.2 〜 -145.1ppm ; -OCF(CF3)CF2O-
-132.8ppm ; -CF(CF3)CONH-
-131.2ppm ; CF3CF2CF2O-
-85.9 〜 -74.5ppm ; -OCF(CF3)CF2O-,CF3CF2CF2O-
-84.0ppm ; CF3CF2CF2O-
-81.2ppm ; -OCF(CF3)CF2O-
-81.1ppm ; -CF(CF3)CONH-
H-NMR(acetone-d6,TMS)
δ7.35 ; -CH=CH-CH=
δ8.76 ; -CH=CH-CH=
【0026】
実施例5
実施例2において、2-アミノベンゾイミダゾールの代わりに4-アミノピリジン12.9g(137ミリモル)が用いられ、滴下終了後の内温が90±1℃、48時間後の内温が95±1℃に変更され、反応混合物の溶解に用いたフッ素系溶剤(AK-225)量を120mlに変更し、着色のない、下記の含フッ素化合物502g(収率98.4%)を得た。

m:20(F-NMRから求めたヘキサフルオロプロピレンオキサ
イドの数平均重合度であり、ある程度の分布を有する)
F-NMR(acetone-d6,CFCl3)
-125.6ppm ; CF3CF2CF2O-
-122.8ppm ; -CF2CF2CF2O-
-113.4ppm ; -OCF2CF2CONH-
-88.4 〜 -88.7ppm ; -OCF2-
-88.2ppm ; CF3CF2CF2O-
H-NMR(acetone-d6,TMS)
δ6.51 ; -C=CH-CH=N-
δ8.03 ; -C=CH-CH=N-
【0027】
実施例6
実施例2において、2-アミノベンゾイミダゾールの代わりに2-アミノピリミジン13.0g(137ミリモル)が用いられ、滴下終了後の内温が90±1℃、48時間後の内温が95±1℃に変更され、反応混合物の溶解に用いたフッ素系溶剤(AK-225)量を120mlに変更し、着色のない下記の含フッ素化合物498g(収率97.5%)を得た。

m:20(F-NMRから求めたヘキサフルオロプロピレンオキサ
イドの数平均重合度であり、ある程度の分布を有する)
F-NMR(acetone-d6,CFCl3)
-125.6ppm ; CF3CF2CF2O-
-122.8ppm ; -CF2CF2CF2O-
-113.5ppm ; -OCF2CF2CONH-
-88.4 〜 -88.8ppm ; -OCF2-
-88.3ppm ; CF3CF2CF2O-
H-NMR(acetone-d6,TMS)
δ7.35 ; -CH=CH-CH=
δ8.76 ; -CH=CH-CH=
【0028】
比較例
窒素シール用T字形コネクター、撹拌翼、コンデンサー、滴下ロート、温度計および加熱用マントルヒーターを取り付けたフラスコに、パーフルオロポリエーテルカルボニルフロライド
CF3CF2CF2O〔CF(CF3)CF2O〕mCF(CF3)COF
m:12(F-NMRから求めたヘキサフルオロプロピレンオキサ
イドの数平均重合度であり、ある程度の分布を有する)
1000gを導入して撹拌した。そこに、2-アミノベンゾイミダゾール51g(372ミリモル)とトリエチルアミン9g(89ミリモル)との混合物を室温でゆっくりと滴下し、滴下終了後室温のまま48時間撹拌を行ったが、IRスペクトルで1885cm-1のCOFのシグナルが確認されたため、内温を90℃まで昇温させ、24時間加熱攪拌を行った。IRにおいて当該シグナルが消失したのを確認して、加熱攪拌を停止させた。反応混合物にフッ素系有機溶剤(旭硝子製品AK-225)250mLを加えて撹拌して十分に溶解させた後、メンブランフィルターを用いてアミンのフッ酸塩等の不溶性成分を除去した。
【0029】
ろ液に上記フッ素系有機溶剤(AK-225)100mLおよびメタノール1200gを加えて十分に混合し、下層を抽出する作業を合計3回実施し、最後にエバボレーターを用いてフッ素系有機溶剤(AK−225)を滅圧下で除去し、下記の含フッ素化合物(回収量:1020g)を得た。得られた含フッ素化合物のNBRは、実施例1のそれと同じであったが、茶褐色に著しく着色していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
CnF2n+1O(C3F6O)mRfCOF 〔II〕
(ここで、Rfは炭素数1〜2のフルオロカーボン基であり、nは1〜3の整数であり、mは10〜30の整数である)で表わされる含フッ素ポリエーテルカルボニルフロライドと含窒素複素環式アミン化合物
ArNH2
(ここで、Arは含窒素複素環式化合物基である)とを反応させるに際し、反応温度を80〜100℃に上げた後、48時間後の昇温温度が3〜5℃となる昇温幅の範囲内で反応温度を昇温させて反応させることを特徴とする、一般式
CnF2n+1O(C3F6O)mRfCONHAr 〔I〕
(ここで、Rf、Ar、nおよびmは上記定義と同じである)で表わされる含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法。
【請求項2】
反応温度を昇温させた後、この反応温度で-COFのシグナルが消失する迄反応を継続する請求項1記載の含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法。
【請求項3】
含窒素複素環式アミン化合物が、


または

である請求項1記載の含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法。
【請求項4】
含フッ素ポリエーテルカルボニルフロライドと含窒素複素環式アミン化合物を反応させるに際して、三級アミンを共存させる請求項1記載の含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法。
【請求項5】
三級アミンがトリアルキルアミンまたはピリジンである請求項4記載の含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法。
【請求項6】
含フッ素ポリエーテルカルボニルフロライドと含窒素複素環式アミン化合物を反応させるに際して、フッ素系溶剤を使用する請求項1記載の含フッ素ポリエーテルカルボン酸アミドの製造法。

【公開番号】特開2010−254736(P2010−254736A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103036(P2009−103036)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】