説明

含フッ素共重合体

【課題】低温特性に優れ、耐熱性及び耐薬品性に優れるペルフルオロエラストマーの提供。
【解決手段】テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)に基づく繰り返し単位(b)及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)に基づく繰り返し単位(c)を含有し、(a)/(b)/(c)=40〜70/3〜57/3〜57(モル比)である含フッ素共重合体(例えば、(a)/(b)/(c)=51.2/43.7/5.1である含フッ素共重合体。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素ゴムとして、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体やテトラフルオロエチエレン/プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチエレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体等が知られている。
【0003】
なかでも、テトラフルオロエチエレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体は、ペルフルオロエラストマーと呼ばれ、耐熱性や耐薬品性に著しく優れる。ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEという。)がペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、PMVEという。)であるペルフルオロエラストマーが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。また、テトラフルオロエチエレン/PMVE/ペルフルオロ(ポリエーテルビニルエーテル)共重合体が知られている(特許文献2を参照。)が、該共重合体は、テトラフルオロエチエレン(以下、TFEという。)に基づく繰り返し単位の含有量が高いフッ素樹脂であり、ゴム弾性が充分でない。
【0004】
一般に、TFE/PAVE共重合体において、TFEに基づく繰り返し単位の含有量が高く、フッ素含有量が高いと、耐熱性、耐薬品性等に優れる(例えば、特許文献2を参照。)。一方、PAVEに基づく繰り返し単位の含有量が高いと、ガラス転移温度が低く、低温特性に優れる(例えば、特許文献3を参照。)。そこで、低温特性に優れ、かつ、耐熱性及び耐薬品性等に優れるペルフルオロエラストマーの開発が要請されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭53−4115号公報
【特許文献2】特許第3531974号公報
【特許文献3】特許第3508136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低温特性に優れ、耐熱性及び耐薬品性に優れるペルフルオロエラストマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、TFEに基づく繰り返し単位(a)、PMVEに基づく繰り返し単位(b)及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)に基づく繰り返し単位(c)を含有し、(a)/(b)/(c)=40〜70/3〜57/3〜57(モル比)であることを特徴とする含フッ素共重合体を提供する。
【0008】
また、本発明は、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)を、ラジカル重合開始剤の存在下にラジカル共重合を実施することを特徴とする前記含フッ素共重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の含フッ素共重合体は、ペルフルオロエラストマーであり、耐熱性及び耐薬品性に優れ、低温特性にも優れる。また、架橋性にも優れ、架橋ゴムは、架橋ゴム物性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の含フッ素共重合体は、TFEに基づく繰り返し単位(a)、PMVEに基づく繰り返し単位(b)及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVEという。)に基づく繰り返し単位(c)を含有し、(a)/(b)/(c)=40〜70/3〜57/3〜57(モル比)である。
【0011】
本発明の含フッ素共重合体において、(a)/(b)/(c)=45〜55/5〜57/5〜57(モル比)が好ましい。この範囲にあると耐熱性及び耐薬品性に優れ、低温特性にも優れる。
また、本発明の含フッ素共重合体は、前記繰り返し単位(a)、(b)及び(c)に加えて、さらに、一般式CF=CFORX(ここで、Rは炭素原子数1〜10のペルフルオロアルキレン基又はエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜10のペルフルオロアルキレン基であり、XはCl、Br、I又はCNである。)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位(d)を含有し、(d)/((a)+(b)+(c))=0.01〜10(モル%)であることが好ましい。(d)の含有量は、(d)/((a)+(b)+(c))=0.01〜5(モル%)がより好ましく、(d)/((a)+(b)+(c))=0.05〜3(モル%)が最も好ましい。この範囲にあると、含フッ素共重合体は架橋性に優れ、得られた架橋ペルフルオロエラストマーは、強度、耐薬品性、耐熱性、圧縮永久歪み等の物理特性に優れる。
【0012】
CF=CFORXで表されるモノマーの具体例としては、CF=CFOCFCFBr(以下、BrVEという。)、CF=CFOCFCFCl(以下、ClVEという。)、CF=CFOCFCFI(以下、IVEという。)、CF=CFOCFCFCN(以下、CNVEという。)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。BrVE、IVE、CNVEがより好ましく、BrVEが最も好ましい。
【0013】
本発明の含フッ素共重合体のムーニー粘度は、20〜150が好ましく、30〜150がより好ましい。ムーニー粘度は、各種の平均分子量の目安であり、高いと分子量が高いことを示し、低いと分子量が低いことを示す。この範囲になると架橋後にゴム物性と加工性が良好である。ムーニー粘度は、JIS K6300に準じて、直径38.1mm、厚さ5.54mmの大ローターを用い、100℃で、予熱時間を1分、ローター回転時間を4分に設定して測定される値である。
【0014】
本発明の含フッ素共重合体の製造方法としては、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。また、開始反応には、ラジカル重合開始剤、レドックス重合開始剤、熱、放射線等を用いることができる。特に、分子量及び共重合組成の調整、生産性に優れる、乳化重合が好ましい。
【0015】
本発明の含フッ素共重合体の製造方法において、TFE、PMVE及びPPVEを、ラジカル重合開始剤の存在下にラジカル共重合を実施する。又は、TFE、PMVE、PPVE及びCF=CFORXで表されるモノマーを、ラジカル重合開始剤の存在下にラジカル共重合を実施する。さらに、連鎖移動剤の存在下にラジカル共重合を実施することが好ましい。特に、TFE、PMVE及びPPVEをラジカル共重合する場合には、連鎖移動剤の存在下にラジカル共重合を実施することがより好ましい。
【0016】
また、水性媒体、乳化剤、ラジカル重合開始剤の存在下に、TFE、PMVE及びPPVEを、又は、TFE、PMVE、PPVE及びCF=CFORXで表されるモノマーを、乳化重合を実施することがより好ましい。
【0017】
連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン、RI(ここで、Rは炭素数1〜16の飽和ポリフルオロアルキレン基)、RIBr(ここで、Rは炭素数1〜16の飽和ポリフルオロアルキレン基)、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等のメルカプタン類等が挙げられる。
【0018】
連鎖移動剤としては、RIがより好ましい。RIの具体例としては、1,4−ジヨードペルフルオロブタン、1,6−ジヨードペルフルオロヘキサン、1,8−ジヨードペルフルオロオクタン等が挙げられる。特に、1,4−ジヨードペルフルオロブタンが好ましい。連鎖移動剤の含有量は、使用する連鎖移動剤の連鎖移動定数に従い適宜選定されるが、RIの場合には、モノマーの全モル数に対して0.01〜5モル%が好ましく、0.05〜1モル%がより好ましい。
【0019】
水性媒体としては、水が用いられるが、水性有機溶媒を含有することも好ましい。水性有機溶媒としては、tert−ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール等が挙げられえる。特に、tert−ブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。水性有機溶媒を含有する場合には、水の100質量部に対して1〜40質量部が好ましく、3〜30質量部がより好ましい。
【0020】
乳化剤としては、ラテックスの機械的及び化学的安定性に優れる、イオン性乳化剤が好ましく、アニオン性乳化剤がより好ましい。アニオン性乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の炭化水素系乳化剤、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム、ペルフルオロオクタン酸ナトリウム、ペルフルオロヘキサン酸アンモニウム等の含フッ素脂肪酸塩が好ましい。また、一般式F(CFO(CF(X)CFO)CF(Y)COOA(ここで、Yはフッ素原子又は炭素原子数1〜3のペルフルオロアルキル基、Aは水素原子、アルカリ金属、NH、nは3〜10の整数、mは0又は1〜3の整数である。)で表される含フッ素乳化剤も好ましい。
【0021】
F(CFO(CF(X)CFO)CF(Y)COOAで表される含フッ素乳化剤としては、F(CFO(CF(CF)CFO)CF(CF)COONH
F(CFOCFCFOCFCOONH、F(CFO(CFCFO)CFCOONH、F(CFOCFCFOCFCOONH、F(CFO(CFCFO)CFCOONH、F(CFOCFCFOCFCOONa、F(CFO(CFCFO)CFCOONa、F(CFOCFCFOCFCOOa、F(CFO(CFCFO)CFCOONa、F(CFOCFCFOCFCOONH、F(CFO(CFCFO)CFCOONH、F(CFOCFCFOCFCOONa、F(CFO(CFCFO)CFCOONa等が挙げられる。
【0022】
乳化剤としては、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム、F(CFOCFCFOCFCOONH、F(CFOCFCFOCFCOONH、F(CFOCFCFOCFCOONHがより好ましい。
【0023】
乳化剤の含有量は、水性媒体の100質量部に対して、0.01〜15質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0024】
乳化重合で使用されるラジカル重合開始剤としては、水溶性開始剤が好ましく、その具体例としては、過硫酸アンモニウム塩などの過硫酸類、過酸化水素、ジコハク酸過酸化物、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩などの有機系開始剤が挙げられる。また、過硫酸類又は過酸化水素と亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤との組合せからなるレドックス系開始剤、さらにこれらに少量の鉄、第一鉄塩、硫酸銀などを共存させた系の無機系開始剤も使用できる。重合開始剤の含有量は、共重合に用いるモノマーに対して0.0001〜3質量%が好ましく、0.001〜1質量%がより好ましい。
【0025】
重合圧力及び温度等の重合条件は、モノマー組成、ラジカル重合開始剤の分解温度等により適宜選択される。通常、重合圧力は0.1〜20MPaGが好ましく、0.3〜10MPaGがより好ましく、0.3〜5MPaGが最も好ましい。重合温度は0〜100℃が好ましく、10〜90℃がより好ましく、20〜80℃が最も好ましい。
【0026】
前記乳化重合で得られた含フッ素共重合体のラテックスは、公知の方法で凝集させて含フッ素共重合体を単離する。凝集には、金属塩の添加、塩酸などの無機酸の添加、機械的剪断、凍結解凍等の方法が用いられる。
【0027】
本発明の含フッ素共重合体は、通常、架橋剤を配合し配合物とし、成形した後、加熱架橋して、架橋ゴムとして種々の用途に用いられる。架橋剤としては、ペルオキシド、ポリオール、アミン、トリアジン等が使用され、特に、架橋ゴムの生産性、耐熱性、耐薬品性に優れるペルオキシドが好ましい。
【0028】
ペルオキシドとしては、有機過酸化物が用いられる。具体例としては、ジtert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン−3等のジアルキルペルオキシド類、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロキシペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゼン、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルオキシマレイン酸、tert−ブチルペルオキシソプロピルカーボネート等が挙げられる。ジアルキルペルオキシド類が好ましい。
【0029】
有機過酸化物の含有量は、含フッ素共重合体の100質量部に対して、0.3〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が最も好ましい。この範囲にあると強度と伸びのバランスに優れた架橋物性が得られる。
【0030】
本発明の含フッ素共重合体を架橋する時に、架橋助剤を含有することが好ましい。架橋助剤を含有すると、架橋効率が高い。架橋助剤の具体例としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、トリアリルトリメリテート、m−フェニレンジアミンビスマレイミド、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、N,N′,N′′,N′′′−テトラアリルテレフタールアミド、ビニル基含有シロキサンオリゴマー(ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルビニルシロキサン等)等が挙げられる。特に、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートが好ましく、トリアリルイソシアヌレートがより好ましい。架橋助剤の含有量は、含フッ素共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。この範囲にあると強度と伸びのバランスのとれた架橋物性が得られる。
【0031】
さらに、本発明の含フッ素共重合体を架橋させるときに、必要に応じて金属酸化物を含有させることも好ましい。金属酸化物を含有させることで、架橋反応を速やかにかつ確実に進行させることができる。金属酸化物の具体例としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉛等の2価金属の酸化物が好ましい。金属酸化物の含有量は、含フッ素共重合体の100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。この範囲にあると強度と伸びのバランスに優れる架橋物性が得られる。
【0032】
さらに、本発明の含フッ素共重合体を架橋させる際には、着色させるための顔料、充填剤、補強剤などを用いてもよい。通常よく用いられる充填剤又は補強剤としては、カーボンブラック、酸化チタン、二酸化珪素、クレー、タルク、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、四フッ化エチレン/エチレン共重合体、四フッ化エチレン/プロピレン共重合体、四フッ化エチレン/フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。ガラス転移温度及び物性の測定は下記の方法を用いた。
【0034】
[ガラス転移温度(℃)]セイコーインスツルメント社製DSC220型を用いて、10±0.1mgの試料を−50℃から10℃/分で150℃まで昇温させ、10℃/分で−50℃まで冷却させた際の吸熱ピーク変化の中心温度をガラス転移温度とした。
【0035】
[物性の測定]含フッ素共重合体の100質量部、カーボンブラック25質量部、トリアリルイソシアヌレートの3質量部、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂製パーカドックス14)の1質量部、酸化マグネシウムの3質量部の割合で2本ロールで混練し、含フッ素共重合体組成物を得た。該含フッ素共重合体組成物を170℃で20分間の熱プレスを行った後、200℃のオーブン内で4時間の2次架橋を行い、含フッ素共重合体組成物の厚さ2mmの架橋ゴムシートを得た。得られた架橋ゴムシートを3号ダンベルで打ち抜き試料を作成し、JIS K6251に準じて引張強さ及び破断伸びを測定した。また、JIS K6253に準じて硬度を測定した。
【0036】
[耐熱性]上記で得た架橋ゴムシートを、200℃のオーブン内で672時間保存後、上記物性の測定と同様にJIS K6251に準じて引張強さ及び破断伸びを測定した。また、JIS K6253に準じて硬度を測定した。結果は耐熱試験前との変化が、A:±5%未満、B:±5以上25%未満、C:25%以上、で評価した。変化が少ない程、耐熱性に優れることを示す。
【0037】
[ムーニー粘度の測定]JIS K6300に準じて、100℃において、直径38.1mm、厚さ5.54mmの大ローターを用い、予熱時間1分、ローター回転時間4分として測定された粘度を示す。
【0038】
[実施例1]
アンカー翼を備えた内容積2100ccのステンレス製耐圧反応器を脱気した後、イオン交換水の1500g、ペルフルオロオクタン酸アンモニウムの17g、PPVEの304gを仕込み、気相を窒素置換した。アンカー翼を用いて300rpmの速度で撹拌しながら、内温を60℃に昇温させた。内温が60℃になってから予め調整しておいたTFE/PMVE=20/80(モル比)の混合ガスを反応器内圧が1.0MPaGになるまで圧入した。過硫酸アンモニウムの2.5質量%水溶液の5mLを添加し、重合を開始した。
【0039】
重合の進行に伴い、反応器内圧が低下するので、0.99MPaに降下した時点でTFE/PMVE=70/30(モル比)の後添加混合ガスを圧入し、反応器内圧を1.01MPaGに昇圧させた。これを繰り返し、反応器内圧を0.99〜1.01MPaGの間に保持し重合反応を続けた。この間、該後添加混合ガスの13g添加毎にBrVEの0.5g及びPPVEの25.2gを反応器に圧入した。BrVE及びPPVEを、該後添加混合ガスの377gを添加するまで続けた。後添加混合ガスの総添加量が400gとなった時点で、該後添加混合ガスの添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させ、含フッ素共重合体1のラテックスを得た。重合時間は約5.5時間であった。
【0040】
該ラテックスを硫酸アルミニウムカリウムの5質量%水溶液に添加して、ラテックスを凝集させ、含フッ素共重合体1を得た。含フッ素共重合体1を濾過し、超純水により洗浄し、120℃のオーブンで乾燥させて、白色透明の含フッ素共重合体1の385gを得た。含フッ素共重合体1の組成はTFEに基づく繰り返し単位/PMVEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位/BrVEに基づく繰り返し単位=54.1/22.3/22.1/1.5(モル比)であった。含フッ素共重合体1のガラス転移温度は−5.8℃であり、フッ素含量は73.0質量%であり、ムーニー粘度は70であった。含フッ素共重合体1から得た架橋ゴムシートの物性を表1に示す。耐熱性を評価し、結果を表1に示した。
【0041】
[実施例2]
含フッ素乳化剤としてペルフルオロオクタン酸アンモニウムの代わりにCOCFCFOCFCOONHを用いた以外は実施例1と同様にして含フッ素共重合体2を得た。含フッ素共重合体2の組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PMVEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位/BrVEに基づく繰り返し単位=53.4/23.8/21.4/1.4(モル比)であった。含フッ素共重合体2のガラス転移温度は−6.0℃であり、フッ素含量は72.3質量%であり、ムーニー粘度は71であった。含フッ素共重合体2から得た架橋ゴムシートの物性を表1に示す。耐熱性を評価し、結果を表1に示した。
【0042】
[実施例3]
実施例1で用いたと同じ反応器にを脱気した後、イオン交換水の1300g、ペルフルオロオクタン酸アンモニウムの17g、PPVEの30g、1,4−ジヨードオクタフルオロブタンの4.1gを仕込んだ。アンカー翼を用いて300rpmの速度で撹拌しながら、内温を60℃に昇温させた。内温が60℃になってから予め調整しておいたTFE/PMVE=10/90(モル比)の混合ガスを反応器内圧が1.0MPaGになるまで圧入した。過硫酸アンモニウムの0.5質量%水溶液の5mLを添加し、重合反応を開始させた。
【0043】
重合の進行に伴い、反応器内圧が低下するので、0.99MPaに降下した時点でTFE/PMVE=50/50(モル比)の後添加混合ガスを圧入し、反応器内圧を1.01MPaGに昇圧させた。これを繰り返し、反応器内圧を0.99〜1.01MPaGに保持し、重合反応を続けた。4時間毎に過硫酸アンモニウムの0.5質量%水溶液の5mLを添加した。該後添加混合ガスの総添加量が400gとなった時点で、該後添加混合ガスの添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させ、含フッ素共重合体3のラテックスを得た。重合時間は約21時間であった。
【0044】
該ラテックスを硫酸アルミニウムカリウムの5質量%水溶液に添加して、ラテックスを凝集させ、含フッ素共重合体3を単離した。含フッ素共重合体3を濾過し、超純水により洗浄し、50℃で真空乾燥させ、白色透明の含フッ素共重合体3の380gを得た。含フッ素共重合体3の組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PMVEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位=51.2/43.7/5.1(モル比)であり、フッ素含量は72.0質量%、ヨウ素含有量は0.8質量%であった。該含フッ素共重合体3のガラス転移温度は−9.8℃であり、ムーニー粘度は45であった。含フッ素共重合体3から得た架橋ゴムシートの物性を表1に示す。耐熱性を評価し、結果を表1に示した。
【0045】
[比較例1]
実施例1で用いたと同じ反応器を脱気した後、イオン交換水の1500g、ペルフルオロオクタン酸アンモニウムの17g、PPVEの304gを仕込んだ。アンカー翼を用いて300rpmの速度で撹拌しながら、内温を60℃に昇温させた。内温が60℃になってからTFEを反応器内圧が1.0MPaGになるまで圧入した。過硫酸アンモニウムの2.5質量%水溶液の5mLを添加し、重合反応を開始させた。
【0046】
重合の進行に伴い、反応器内圧が低下するので、0.99MPaに降下した時点でTFEを圧入し、反応器内圧を1.01MPaGに昇圧させた。これを繰り返し、反応器内圧を0.99〜1.01MPaGに保持し、重合反応を続けた。TFEの添加量の15g毎にBrVEの0.5g及びPPVEの25.2gを反応器に圧入した。BrVE及びPPVEはTFEの135gを添加するまで続けた。TFEの総添加量が150gとなった時点で、TFE添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させ、含フッ素共重合体4のラテックスを得た。重合時間は約5時間であった。
【0047】
該ラテックスを硫酸アルミニウムカリウムの5質量%水溶液に添加して、ラテックスを凝集させ、含フッ素共重合体4を得た。含フッ素共重合体4を濾過し、超純水により洗浄し、オーブンで乾燥させ、白色透明の含フッ素共重合体4の387gを得た。含フッ素共重合体4の組成は、TFEに基づく繰り返し単位/PPVEに基づく繰り返し単位/BrVEに基づく繰り返し単位=54.6/43.9/1.5(モル比)であった。含フッ素共重合体4のガラス転移温度は、2.8℃、フッ素含量は73.6質量%であり、ムーニー粘度は83であった。含フッ素共重合体4から得た架橋ゴムシートの物性を表1に示す。耐熱性を評価し、結果を表1に示した。
【0048】
[比較例2]
実施例1で用いたと同じ反応器を脱気した後、イオン交換水の1500g、ペルフルオロオクタン酸アンモニウムの17gを仕込んだ。アンカー翼を用いて300rpmの速度で撹拌しながら、内温を60℃に昇温させた。内温が60℃になってから予め調整しておいたTFE/PMVE=55/45(モル比)の混合ガスを反応器内圧が1.0MPaGになるまで圧入した。過硫酸アンモニウムの2.5質量%水溶液の5mLを添加し、重合反応を開始させた。
【0049】
重合の進行に伴い、反応器内圧が低下するので、TFE/PMVE=20/80(モル比)の後添加混合ガスを圧入し、反応器内圧を0.99〜1.01MPaGになるように保持し、重合反応を続けた。該後添加混合ガスの添加量の13g毎にBrVEを反応器に圧入した。BrVEは後添加混合ガスの377g添加まで続けた。後添加混合ガスの総添加量が400gとなった時点で、該後添加混合ガスの添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させ、含フッ素共重合体5のラテックスを得た。重合時間は約6.5時間であった。
【0050】
該ラテックスを硫酸アルミニウムカリウムの5質量%水溶液に添加して、ラテックスを凝集させ、含フッ素共重合体5を得た。該含フッ素共重合体5を濾過し、超純水により洗浄し、120℃のオーブンで乾燥させ、白色透明の含フッ素共重合体5の390gを得た。含フッ素共重合体5の組成はTFEに基づく繰り返し単位/PMVEに基づく繰り返し単位/BrVEに基づく繰り返し単位=56.1/42.4/1.5(モル比)であった。ガラス転移温度は−12.8℃、フッ素含量は72.5質量%であり、ムーニー粘度は35であった。含フッ素共重合体5から得た架橋ゴムシートの物性を表1に示す。耐熱性を評価し、結果を表1に示した。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の含フッ素共重合体は、Oリング、シート、ガスケット、オイルシール、ダイヤフラム、V−リングに用いられる。また、半導体装置用シール材、耐薬品性シール材、塗料、電線被覆材等の用途に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)に基づく繰り返し単位(b)及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)に基づく繰り返し単位(c)を含有し、(a)/(b)/(c)=40〜70/3〜57/3〜57(モル比)であることを特徴とする含フッ素共重合体。
【請求項2】
前記繰り返し単位(a)、(b)及び(c)に加えて、さらに、一般式CF=CFORX(ここで、Rは炭素原子数1〜10のペルフルオロアルキレン基又はエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜10のペルフルオロアルキレン基であり、XはCl、Br、I又はCNである。)で表されるモノマーに基づく繰り返し単位(d)を含有し、(d)/((a)+(b)+(c))=0.01〜10(モル%)である請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項3】
前記CF=CFORXで表されるモノマーが、CF=CFOCFCFBrである請求項2に記載の含フッ素共重合体。
【請求項4】
テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)を、ラジカル重合開始剤の存在下にラジカル共重合を実施することを特徴とする請求項1に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項5】
さらに、CF=CFORX(ここで、Rは炭素原子数1〜10のペルフルオロアルキレン基又はエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜10のペルフルオロアルキレン基であり、XはCl、Br、I又はCNである。)で表されるモノマーの存在下にラジカル共重合を実施することを特徴とする請求項4に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項6】
さらに、連鎖移動剤として、一般式RI(ここで、Rは炭素数1〜16のポリフルオロアルキレン基である。)で表される化合物の存在下にラジカル重合を実施する請求項4又は5に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記連鎖移動剤が、1,4−ジヨードペルフルオロブタンである請求項6に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記ラジカル共重合が乳化重合である請求項4〜7のいずれかに記載の含フッ素共重合体の製造方法。


【公開番号】特開2006−89720(P2006−89720A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222789(P2005−222789)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】