説明

含フッ素弾性共重合体

【課題】低温特性、耐アミン性および耐エンジンオイル性に優れ、また、耐熱性、耐薬品性に優れる新規含フッ素弾性共重合体を提供する。
【解決手段】テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を30モル%以上70モル%未満、プロピレンに基づく繰り返し単位を5モル%以上50モル%未満、CH=CHOR(式中、Rはフッ素原子を1以上有するアルキル基である。)に基づく繰り返し単位を5モル%以上50モル%以下含むことを特徴とする含フッ素弾性共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素弾性共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、テトラフルオロエチレンとプロピレンの二元共重合体は、優れた耐熱性、耐薬品性を有するエラストマー(以下、弾性共重合体ともいう。)として知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、テトラフルオロエチレンとプロピレンの二元共重合体は、ガラス転移温度が0℃程度であり、低温で硬くなり、低温での柔軟性が不十分である。これを改良すべく、テトラフルオロエチレン/プロピレン/ビニルエーテル共重合体が検討されている(特許文献2参照。)。
【0003】
また、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン共重合体や、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが含フッ素弾性共重合体として市販されている。しかし、これらのフッ化ビニリデンに基づく繰り返し単位を含有する含フッ素弾性共重合体は、耐薬品性、特に耐アミン性が劣り、エンジンオイルシール等の耐アミン性が必要な用途には使用できない。
また、テトラフルオロエチレン/含フッ素ビニルエーテル/エチレン共重合体が検討されている。しかし、テトラフルオロエチレン/含フッ素ビニルエーテル/エチレン共重合体は、エチレンジアミンに浸漬したときの体積変化率が高く、耐アミン性が不十分である(特許文献3参照。)。
上記状況下、テトラフルオロエチレン/プロピレン二元共重合体と同様の耐熱性、耐薬品性を保持しつつ、低温時の柔軟性が十分にあるなどの低温特性に優れる含フッ素弾性共重合体の開発が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特公昭52−29784号公報
【特許文献2】特開昭53−97085号公報
【特許文献3】特開平7−286010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前述の課題を解決し、低温特性に優れ、しかもテトラフルオロエチレン/プロピレン二元共重合体と同様に優れた耐アミン性や耐エンジンオイル性を有する含フッ素弾性共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を30モル%以上70モル%未満、プロピレンに基づく繰り返し単位を5モル%以上50モル%未満、CH=CHOR(式中、Rはフッ素原子を1以上有するアルキル基である。)に基づく繰り返し単位を5モル%以上50モル%以下を含むことを特徴とする含フッ素弾性共重合体を提供する。
また、本発明は、上記含フッ素弾性共重合体において、前記テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位が45モル%以上65モル%未満であり、プロピレンに基づく繰り返し単位が10モル%以上45モル%未満であり、CH=CHORに基づく繰り返し単位が10モル%以上45モル%未満である含フッ素弾性共重合体を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の含フッ素弾性共重合体は、低温特性、耐アミン性および耐エンジンオイル性に優れる。また、耐熱性、耐薬品性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の含フッ素弾性共重合体は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位、プロピレンに基づく繰り返し単位、CH=CHOR(式中、Rはフッ素原子を1以上有するアルキル基である。)に基づく繰り返し単位を含む。
本発明において、CH=CHOR中のR基としては、フッ素原子を1以上有するアルキル基である。該アルキル基の炭素数としては2〜15が好ましく、3〜10がより好ましい。炭素数が2以下であると含フッ素エラストマーの低温特性が充分ではないことがある。アルキル基中のフッ素原子の数は1以上であるが、アルキル基の炭素数と同数以上であることが、含フッ素エラストマーが耐熱性や耐薬品性の点で好ましい。また、アルキル基は直鎖状でも、分岐状でもよく、アルキル基中にエーテル酸素原子を1以上有してもよい。
【0009】
CH=CHORの好適な具体例としては、CH=CHO(CH(CFX(式中、mは1又は2であり、nは1〜14であり、Xはハロゲン原子または水素原子である。)が挙げられる。ここで、nは、好ましくは2〜10であり、より好ましくは3〜8である。Xは、フッ素原子が好ましい。
本発明の含フッ素弾性共重合体におけるテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位は30モル%以上70モル%未満である。30モル%未満の場合は、含フッ素弾性共重合体の耐熱性や耐薬品性が充分でなく好ましくない。また、70モル%以上の場合は、含フッ素弾性共重合体の低温特性や成形性が充分でなく好ましくない。テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位は、45モル%以上65モル%未満がより好ましく、50モル%以上60モル%未満が最も好ましい。
【0010】
本発明の含フッ素弾性共重合体におけるプロピレンに基づく繰り返し単位は5モル%以上50モル%未満である。5モル%未満であると、含フッ素弾性共重合体の成形性が充分でなく、50モル%以上であると、含フッ素弾性共重合体の耐熱性や耐薬品性が充分でない。10モル%以上45モル%未満がより好ましく、10モル%以上40モル%未満が最も好ましい。
また、本発明の含フッ素弾性共重合体におけるCH=CHORに基づく繰り返し単位は5モル%以上50モル%未満が好ましい。5モル%未満であると含フッ素弾性共重合体の低温特性が充分低くなく、50モル%以上であると含フッ素弾性共重合体の耐熱性や耐薬品性が充分でない。10モル%以上45モル%未満がより好ましくは10モル%以上40モル%未満が最も好ましい。
なお、上記各繰り返し単位の含有割合は、テトラフルオロエチレン、プロピレン及びCH=CHORに基づく繰り返し単位の合計量が100モル%になるように選定される。
【0011】
また、本発明の含フッ素弾性共重合体は、テトラフルオロエチレン、プロピレン及びCH=CHORに基づく繰り返し単位の他に、これらと共重合可能なコモノマーに基づく繰り返し単位を少量含有してもよい。該コモノマーに基づく繰り返し単位の含有量は、テトラフルオロエチレン、プロピレン及びCH=CHORに基づく繰り返し単位の合計量に対して、5モル%以下が好ましい。該コモノマーの具体例としては、エチレン、イソブチレン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、アルキルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、アクリル酸およびそのアルキルエステル、メタクリル酸およびそのアルキルエステル等が挙げられる。
【0012】
また、本発明の含フッ素弾性共重合体は、上記モノマーに基づく繰り返し単位以外に、架橋基含有モノマーに基づく繰り返し単位を含有してもよい。架橋基としては、炭素−炭素二重結合、ハロゲン原子、酸無水物残基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、水酸基などが挙げられる。該架橋基含有モノマーの好適な具体例としては、例えば、1−ブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、1−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、クロトン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘプタフルオロ−4−ペンテンニトリルなどが挙げられる。架橋基含有モノマーは、1種または2種以上を使用できる。架橋基含有モノマーに基づく繰り返し単位の含有割合の好ましい範囲は、全共重合モノマーに基づく繰り返し単位の合計量に対して、0.001〜5モル%であり、0.01〜3モル%がさらに好ましい。
【0013】
また、一般式RI(式中、Rは炭素数1〜16の飽和のフルオロ炭化水素基、クロロフルオロ炭化水素基または炭素数1〜3の炭化水素基である。)で表されるジヨード化合物の存在下、上記モノマーを共重合させることで、高分子末端にヨウ素原子を導入し、架橋基とすることも可能である。
前記ジヨード化合物の使用量は、全共重合モノマーの合計量に対して0.01〜5モル%が好ましく、0.05〜1モル%がより好ましい。
本発明の含フッ素弾性共重合体のガラス転移温度は、−4℃以下が好ましく、−7℃以下がより好ましく、−10℃以下がさらに好ましい。このガラス転移温度の下限値は、−30℃以上が好ましい。
【0014】
本発明の含フッ素弾性共重合体の製造方法としては、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合などの各種重合方法、あるいは重合開始剤を使用する触媒重合法、電離性放射線重合法、レドックス系重合法などが適用できる。
テトラフルオロエチレン、プロピレン、CH=CHOR、及び必要に応じて使用する他のモノマーの共重合は、上記重合方法を用いて、種々の重合条件下に実施できる。たとえば、パーフルオロアルカンやハイドロフルオロカーボンのようなフッ素系溶媒、第3級ブタノールのようなアルコール溶媒などの有機溶媒中で実施可能であり、この場合には、−40℃〜+150℃の温度で、0.1〜5.0MPaの比較的低い反応圧力が採用可能である。
【0015】
また、水性媒体を使用して、懸濁重合や乳化重合を適用してもよい。乳化重合は、多フッ素化アルキルカルボン酸及びその塩、多フッ素化アルキルエーテルカルボン酸及びその塩、多フッ素化アルカンスルホン酸及びその塩、ドデシルベンゼンスルホン酸及びその塩等の分散剤の存在下に水性媒体中で実施することが好ましい。塩としては、アンモニウム塩またはアルカリ金属塩が好ましい。
【0016】
懸濁重合や乳化重合においては、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、第3級ブタノールのような媒体を分散安定剤として加えてもよい。
重合開始剤としては、過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等が好ましい。重合条件としては、温度は0〜100℃が好ましく、10〜85℃がより好ましい。圧力は、0.5〜20MPaが好ましく、1MPa〜10MPaがより好ましい。特に、重合開始剤がレドックス系開始剤の場合には、−20〜+50℃の温度の採用も可能である。さらに、本発明の含フッ素弾性共重合体の製造方法は、回分式、判連続式など適宜操作によって実施され得るものであり、目的あるいは採用する重合方式などに応じて、種々の重合条件、重合操作、重合装置などを選定するのが好ましい。
【0017】
本発明の含フッ素弾性共重合体の製造方法において、前記各種重合反応後に、生成した含フッ素弾性共重合体を、適宜手段にて重合媒体から分離する。例えば、乳化重合法においては、重合反応終了後に含フッ素弾性共重合体が分散したラテックスを激しく撹拌したり、電解質を添加することにより凝集する方法、冷凍後遠心分離またはろ過する方法などにより分離することができる。
【0018】
以上の製造方法によって、透明または白色で、ゴム状弾性を有する含フッ素弾性共重合体が得られる。得られた含フッ素弾性共重合体は、種々の架橋手段、例えば有機過酸化物、アミン化合物、ヒドロキシ化合物等の求核試薬などによって架橋せしめてゴム状架橋体にすることができる。また、γ線、電子線、紫外線のような電離性放射線の照射によって放射線架橋させることも可能である。
【0019】
本発明の含フッ素弾性共重合体を、架橋剤の有機過酸化物としては、キュメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、ジ(第3級ブチル)パーオキシド、第3級ブチルキュミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、第3級ブチルパーオキシアセテート、第3級ブチルパーオキシアセテート、第3級ブチルパーオキシベンゾエートのような有機モノパーオキシ化合物や2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3級ブチルパーオキシ)−シン−3、2,5−ジメチルー2,5−ジ(第3級ブチルパーオキシ)−ヘキサン、α,α’−ビス(第3級ブチルパーオキシ)−パラージイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)−ヘキサンのような有機ジパーオキシ化合物が好適である。該有機過酸化物は、5分間の半減期を与える温度が100〜200℃が好ましく、130〜190℃がより好ましい。
【0020】
架橋剤のアミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミン等各種アルキルアミン類、アニリン、ピリジン、ジアミノベンゼン等各種芳香族アミン類およびこれら芳香族のカルバミン酸、シンナミリデン酸等の脂肪族の塩等を用いることができる。
架橋剤のヒドロキシ化合物としては、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、カテコール等の求核的性質を有する試薬類およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等を用いることができ、また、これらに、適宜ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の直鎖状ポリエーテルや、環状ポリエーテル類を助剤として組み合わせて用いることも可能である。
架橋剤の使用量は、特に限定されることなく適宜選定され得るが、通常は含フッ素弾性共重合体の100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部程度である。
【0021】
かかる含フッ素弾性共重合体の架橋の際、従来より公知の架橋助剤を併用できる。架橋助剤としては、例えば、アリル化合物、イオウ、有機アミン類、マレイミド類、メタクリレート類、ジビニル化合物などが挙げられる。好ましくは、フタル酸ジアリル、トリアリルリン酸、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジアリルメラミンのような有機アリル化合物、パラーベンゾキノンジオキシム、p,p’―ジベンゾイルベンゾキノンジオキシムなどのオキシム化合物等が用いられ、特に有機アリル化合物がより好ましい。かかる架橋助剤の添加量は、含フッ素弾性共重合体の100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部程度が採用される。
【0022】
その他に、従来の架橋方法などで通常使用される種々の添加剤も、含フッ素弾性共重合体の架橋の際に配合できる。これらの添加剤としては、酸化マグネシウム、酸化鉛等の金属酸化物、カーボンブラック、ファインシリカ等の補強剤、その他の充填剤、顔料、酸化防止剤、安定剤などが挙げられる。
含フッ素弾性共重合体に前記の種々の添加剤を配合する場合、架橋剤、架橋助剤、その他の添加剤を原料含フッ素弾性共重合体と充分均一に混合することが好ましい。この混合は、従来より通常使用されているゴム混練用ロールまたはバンバリーミキサー等によって行われる。混合時の作業条件は特に限定されないが、通常は30〜80℃程度の温度で約10〜60分間混練することによって、添加配合物を含フッ素エラストマー中に充分分散混合させることができる。混合時の作業条件や操作は、使用原料及び配合剤の種類や目的に応じて最適条件を選定して行うのが望ましい。
【0023】
架橋剤による加熱架橋の操作は、従来より通常使用されている操作を採用することができる。例えば、成形型中で加圧しながら加熱する操作が採用され、また押出あるいは射出成形法などで成形したのちに、加熱炉中で加熱する操作を採用することができる。加熱架橋時の条件等は、使用原料や配合に応じて最適条件を選定して行うのが望ましい。加熱架橋時の温度は、通常80〜250℃、好ましくは150〜200℃が採用される。また、加熱時間は特に限定されないが、架橋剤や成形の目的に応じて1分〜3時間の範囲であり、好ましくは5分〜1時間の範囲内で選定される。加熱温度を高くすれば加熱時間を短縮することができる。なお、得られる架橋共重合体の再加熱処理も採用可能であり、物理的性質の向上に役立つものである。例えば、150〜250℃、好ましくは180〜230℃の温度で、15〜25時間の再加熱処理が採用される。再加熱処理は、2次架橋とも呼ばれる。
放射線架橋において、放射線の照射量は適宜選定すればよいが、例えば、電子線照射における照射量は、0.1〜30Mradが好ましく、1〜20Mradがより好ましい。
【実施例】
【0024】
以下に本発明を、実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、これらの例は、本発明を限定するものではない。
含フッ素弾性共重合体の共重合組成は、フッ素元素分析およびNMRにより求めた。ガラス転移温度はDSCにより10℃/分で昇温して求めた。分解温度はTG−DTAにより、空気雰囲気中10℃/分で昇温して止めた。
【0025】
[実施例1]
撹拌装置のついた1000ml反応容器に脱塩水の517g、第3級ブタノールの61g、水酸化ナトリウムの0.2g、過硫酸アンモニウムの3.0g、リン酸水素二ナトリウム12水和物の12g、CFCFOCFCFOCFCOONHの30質量%水溶液の9.15g、エチレンジアミン四酢酸の0.11g、CH=CHOCHCHCFCFCFCFCFCFの15.6gを仕込み、密閉して液体窒素にて仕込み液を凍結させて真空に減圧した。つぎにテトラフルオロエチレンの72gおよびプロピレンの3.0gを仕込み、反応容器内を25℃に昇温させ、撹拌回転数300rpmで撹拌させた。反応容器の圧力は2.3MPaであった。ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム(ロンガリット)の0.6g、水酸化ナトリウムの0.32gを脱塩水の50gに溶かした溶液の1cmを窒素を用いて圧入して重合を開始させ、反応容器内の温度を25℃に保持した。重合開始後30分後に未反応モノマーをパージして反応容器内を常圧に戻し、内容物を取り出した。取り出した内容物を−40℃で凍結させた後、解凍させ、凝集した含フッ素弾性共重合体1をろ過分離後、脱塩水で3回洗浄した。その後、60℃で一晩真空乾燥させ、含フッ素弾性共重合体1の20.6gが得られた。この含フッ素弾性共重合体1の共重合組成は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位/プロピレンに基づく繰り返し単位/CH=CHOCHCHCFCFCFCFCFCFに基づく繰り返し単位=53/30/17(モル比)であった。含フッ素弾性共重合体1のガラス転移温度は−10.8℃であり、耐熱性の尺度である10%質量減少温度は417℃であった。エチレンジアミンに室温で52時間浸漬した後の質量増加率は1.1%であり、エンジンオイル(XF08)に150℃で52時間浸漬した後の質量増加率は0.5%であった。このように、含フッ素弾性共重合体1は、優れた低温特性、耐熱性、耐アミン性、耐エンジンオイル性を示した。
【0026】
[実施例2]
CH=CHOCHCHCFCFCFCFCFCFの7.8g、プロピレンの4.2gを仕込んだ以外は実施例1と同様の操作を行い、含フッ素弾性共重合体2の8.7gが得られた。この含フッ素弾性共重合体2の共重合組成は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位/プロピレンに基づく繰り返し単位/CH=CHOCHCHCFCFCFCFCFCFに基づく繰り返し単位=50/39/11(モル比)であった。含フッ素弾性共重合体2のガラス転移温度は−4.5℃、10%質量減少温度が396℃であった。エチレンジアミンに室温で52時間浸漬した後の質量増加率は1.0%であり、エンジンオイル(XF08)に150℃で52時間浸漬した後の質量増加率は−0.3%であった。
【0027】
[実施例3]
CH=CHOCHCHCFCFCFCFCFCFの41.3g、プロピレンの0.9gを仕込んだ以外は実施例1と同様の操作を行い、含フッ素弾性共重合体3の6.4gが得られた。この含フッ素弾性共重合体3の共重合組成は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位/プロピレンに基づく繰り返し単位/CH=CHOCHCHCFCFCFCFCFCFに基づく繰り返し単位=51/14/35(モル比)であった。含フッ素弾性共重合体3のガラス転移温度は−23.0℃、10%質量減少温度が389℃であった。エチレンジアミンに室温で52時間浸漬した後の質量増加率は1.2%であり、エンジンオイル(XF08)に150℃で52時間浸漬した後の質量増加率は0.4%であった。
【0028】
[比較例1]
実施例1において、CH=CHOCHCHCFCFCFCFCFCFのかわりにノルマルブチルビニルエーテルの3.9gを仕込んだ以外は実施例1と同様の操作を行い、含フッ素弾性共重合体4の17.2gが得られた。この含フッ素弾性共重合体4の共重合組成は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位/プロピレンに基づく繰り返し単位/ノルマルブチルビニルエーテルに基づく繰り返し単位=65/17/18(モル比)であった。含フッ素弾性共重合体4のガラス転移温度は−16℃、10%質量減少温度が330℃であった。エチレンジアミンに室温で52時間浸漬した後の質量増加率は1.9%であり、エンジンオイル(XF08)に150℃で52時間浸漬した後の質量増加率は13.6%であった。含フッ素弾性共重合体4は、低温特性及び耐アミン性は優れているが、耐熱性、耐エンジンオイル性は充分でなかった。
【0029】
[比較例2]
実施例1において、CH=CHOCHCHCFCFCFCFCFCFの2.0g、プロピレンの4.6gを仕込んだ以外は実施例1と同様の操作を行い、含フッ素弾性共重合体5の8.7gが得られた。この含フッ素弾性共重合体5の共重合組成は、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位/プロピレンに基づく繰り返し単位/CH=CHOCHCHCFCFCFCFCFCFに基づく繰り返し単位=53/44/3(モル比)であった。含フッ素弾性共重合体5のガラス転移温度は−0.2℃、10%質量減少温度が411℃であった。ガラス転移温度が高く、低温特性が不十分であった。
【0030】
[比較例3]
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体であるダイエルG−902をエチレンジアミンに室温で24時間浸漬したところ、試料が劣化して、形が崩れて質量増加率の測定が不可能であった。エンジンオイル(XF08)に150℃で24時間浸漬した後の質量増加率は0.2%であった。

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の含フッ素弾性共重合体は、耐熱性、耐薬品性、特に耐アミン性、耐エンジンオイル性に優れるとともに低温特性に優れているので、その架橋体は広範囲の使用条件下でゴム弾性が要求される各種用途に利用できる。例えば、自動車、船舶、航空機等輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱パッキング、オーリングその他のシール材、ダイヤフラム、バルブ、また化学プラントにおける同様のパッキング、オーリング、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ホース、ロール、チューブ、耐酸コーティング、ライニングなどとして有用である。また、パイプ状、棒状成形物などにも成形加工できる。また、フィルム状またはテープ状の成形物に一次加工して、これを積層、貼付、巻付などの二次加工によってさらに成形加工することなども可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を30モル%以上70モル%未満、プロピレンに基づく繰り返し単位を5モル%以上50モル%未満、CH=CHOR(式中、Rはフッ素原子を1以上有するアルキル基である。)に基づく繰り返し単位を5モル%以上50モル%以下含むことを特徴とする含フッ素弾性共重合体。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位が45モル%以上65モル%未満であり、プロピレンに基づく繰り返し単位が10モル%以上45モル%未満であり、CH=CHORに基づく繰り返し単位が10モル%以上45モル%未満である請求項1に記載の含フッ素弾性共重合体。



【公開番号】特開2009−280687(P2009−280687A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133575(P2008−133575)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】