説明

含フッ素重合体のオルガノゾル組成物

【課題】高分子量のポリテトラフルオロエチレン粒子を高含有量で含む安定したオルガノゾル組成物を提供する。
【解決手段】標準比重が2.130〜2.200で非フィブリル形成性の変性テトラフルオロエチレン粒子(A)と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)が、質量比(A)/(B)が95/5〜31/69の割合で有機溶剤(C)中に均一に分散している含フッ素重合体のオルガノゾル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子と溶融加工可能なパーフルオロ重合体を含み、PTFE粒子の割合が増大しているオルガノゾル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フィブリル形成性の高分子量PTFE粒子を有機溶剤に分散させたオルガノゾルは、たとえばリチウム電池の電極を製造する際の電極合剤として有用である。
【0003】
そうしたPTFE粒子のオルガノゾルでは、PTFE粒子の濃度が高くなると極端に安定性が悪くなるため、多くても25質量%濃度のものしか安定して得られない。そこで、PTFEを変性して高濃度のオルガノゾルを提供する試みが行われている。
【0004】
その方向性として、フィブリル形成性の高分子量PTFEをコア部とし、シェル部を非フィブリル形成性重合体とするコア−シェル粒子を用いる方法(特許文献1〜4)、ポリフルオロアルキル基を有するアクリル系単量体の極少量を共重合して変性する方法(特許文献5)が提案されている。
【0005】
しかし、これらの特許文献でも得られるオルガノゾル中の変性PTFE粒子の割合は30質量%までである。
【0006】
また、PTFE粒子と他のフッ素樹脂とを併用することも提案されている。たとえば、未変性PTFEとテトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体(FEP)を併用する方法(特許文献6)、高分子量PTFEとFEPやPFAとの混合物の水性分散体やオルガノゾル(特許文献7)が、提案されている。
【0007】
しかし、特許文献6においてもPTFE/FEPの割合は30/70(質量比)までであり、それを超えると凝集が生じてしまう。また、特許文献7にはオルガノゾルに調製されているのは10質量%以下の未変性PTFEだけであり、また、未変性PTFEとPFAとの50/50質量比の混合物も記載されているが水性分散体でしか存在し得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−109846号公報
【特許文献2】特開平2−158651号公報
【特許文献3】特開平4−154842号公報
【特許文献4】国際公開第96/012764号パンフレット
【特許文献5】特開昭63−284201号公報
【特許文献6】特公昭48−27549号公報
【特許文献7】特開平10−53682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来の方法で高分子量(フィブリル形成性)PTFE粒子のオルガノゾルを調製したときは、PTFE粒子の含有量が30質量%を超えるとPTFE粒子が凝集し、オルガノゾルが不安定になってしまう。また、30質量%までの安定なPTFEオルガノゾルであっても、たとえば電極合剤用のスラリーとするために電極活物質材料などと剪断混合したり、さらに補助バインダー溶液と混合したりすると、PTFE粒子が凝集してしまったりフィブリル化してしまうという問題は避けられない。
【0010】
本発明は、高分子量のPTFE粒子を高含有量で含む安定したオルガノゾル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、標準比重が2.130〜2.200で非フィブリル形成性の変性PTFE粒子(A)と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)が、質量比(A)/(B)が95/5〜31/69の割合で有機溶剤(C)中に均一に分散している含フッ素重合体のオルガノゾル組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のPTFEオルガノゾル組成物は、高分子量PTFE粒子の含有量が30質量%を超えても安定であり、また、溶融加工可能なパーフルオロ重合体を混合することでPTFEオルガノゾルの安定性が向上したり、PTFEオルガノゾルを塗膜とした場合に基材との密着性の向上を図ることもできるという優れた特性を有しており、たとえば電極合剤スラリーの調製用のオルガノゾル成分として用いた場合、高密度でPTFEを電極バインダーとして利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の含フッ素重合体のオルガノゾル組成物の各成分および要件について、以下詳述する。
【0014】
(A)非フィブリル形成性の変性PTFE粒子
標準比重が2.130〜2.200のものである。高分子量のPTFEは溶融加工できずかつフィブリル化するので、その分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)などの通常の分子量測定法では測定できないため、従来より標準比重(SSG)が分子量の目安として用いられている。標準比重は、ASTM D 4895−89で規定されており、数値が小さくなるほど分子量が大きくなる。たとえば特許文献6に記載されている未変性PTFEの標準比重は2.20〜2.29である。
【0015】
本発明で使用する変性PTFEの標準比重は大きくとも2.200であり、好ましくは2.130〜2.200である。標準比重が2.200を超えると、すなわち低分子量になるとフィブリル化しにくくなる。標準比重が2.130より小さい高分子量のPTFEは、高分子量PTFEに本質的なフィブリル形成性が失われるものではないが、製造上困難であり実際的でない。
【0016】
本発明で使用する変性PTFE粒子は非フィブリル形成性である。本発明において「非フィブリル形成性」とは、如何なる条件下でもフィブリル化しないという性質ではなく、少なくともオルガノゾル組成物を形成している状態でフィブリル化しないという性質をいう。
【0017】
フィブリル化するか否かは、定性的には、変性PTFE粒子(A)と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)が質量比(A)/(B)で95/5〜31/69の割合で存在するオルガノゾル組成物において、凝集が生じているか否か(均一に分散しているか否か)で判断できる。
【0018】
また、フィブリル形成性については、別の観点である380℃における比溶融粘度(ASTM 1238−52T)で評価する場合もある。本発明においては、380℃における比溶融粘度が1×107ポイズ以下、さらには1×106ポイズ以下が好ましい。下限は、通常、5×102ポイズである。
【0019】
また、フィブリル形成性については、さらに別の観点である溶融押出し圧力から、評価する場合もある。この値が大きいとフィブリル形成性が高いと評価でき、小さいとフィブリル形成性が低いと評価できる。本発明においては、リダクションレシオ1600における円柱押出圧力が70MPa以下、60MPa以下、さらには50MPa以下のものがオルガノゾル組成物製造時に凝集が生じにくいので好ましい。下限は、通常、5MPaであるが、用途や目的により適宜選定すればよく、特に限定されるものではない。
【0020】
変性PTFE粒子は、乳化重合法によって得られるファインパウダー(平均粒子径100〜1000μm)であっても、懸濁重合などの他の重合法で得られる比較的粒径の大きな粒子を粉砕して得られる粒子(平均粒子径500〜5000μm)でもよい。好ましくはファインパウダーであり、粒子径が小さく粒径分布が狭いため他材と均一に混合できる点で有利である。
【0021】
本発明で用いる変性PTFE粒子(A)としては、特許文献1〜4などに記載されているフィブリル形成性PTFEのコアと非フィブリル形成性の樹脂のシェルとから構成されるコア−シェル複合粒子(A1)であってもよいし、特許文献5などに記載されている変性用単量体が2質量%以下共重合された単量体変性PTFE粒子(A2)であってもよい。
【0022】
コア−シェル複合粒子(A1)としては、具体的にはつぎの複合粒子が例示できる。
【0023】
コア−シェル複合粒子(A1)のシェル部を構成する非フィブリル形成性のポリマーは、低分子量PTFE、もしくはTFEにエチレンやTFE以外の含フッ素不飽和化合物からなるモノマーを共重合させた含フッ素共重合体、または常温で液状の炭化水素系単量体を重合して得られるポリマーから選ばれた少なくとも1種が例示できる。低分子量PTFEとしては380℃での溶融粘度が108ポイズ未満のものが好ましく、102〜107ポイズのものがより好ましい。
【0024】
前記、含フッ素不飽和化合物としては、X(CF2nOCF=CF2(式中、Xは水素、フッ素または塩素を、nは1〜6の整数を表わす)またはC37(OCF2CF2CF2m〔OCF(CF3)CF2〕lOCF=CF2(式中、mおよびlは0〜4の整数を表わす。ただし、これらが同時に0となることはない)で示されるフルオロアルキルビニルエーテル、CF3CF=CF2、CF2=CFH、CF2=CFCl、CF2=CH2、RfCY=CH2(式中、Rfは直鎖状または分枝状の炭素数1〜21のポリフルオロアルキル基、Yは、水素原子またはフッ素原子である)などがあげられる。
【0025】
前記、TFEにエチレンやTFE以外の含フッ素不飽和化合物からなるモノマーを共重合させた含フッ素共重合体としては、たとえばFEP、TFEとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)との共重合体(PFA)、TFEとHFPとPFAVEとの三元共重合体、TFEとパーフルオロ(アルキル)エチレンの共重合体、エチレンとTFEから主としてなる共重合体(ETFE)、エチレンとCTFEから主としてなる共重合体(ECTFE)、TFEとCTFEの共重合体、VDFとTFEの二元共重合体、VDFとTFEとHFPの三元共重合体、VDFとTFEとCTFEの三元共重合体などがあげられる。共重合体は単量体組成によってはガラス転移温度が室温より高い樹脂の性状を示したり、室温より低いゴムの性状を示したりするが、特に限定されない。また、分子量も特に限定されない。ただし、TFEの共重合体の場合、他の単量体成分が2質量%を超えることが好ましい。
【0026】
常温で液状の炭化水素系単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル;2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル;ジエチレングリコールメタクリレートのようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル;アクリルアミド、メチロールメタクリルアミドなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、ビニルピロリドン、アルキルビニルエーテル、ピロールなどがあげられる。これらの単独重合体もしくは共重合体をシェル部のポリマーとすることができる。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、ヒドロキシアルキル基含有α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステルおよびアミド類は、親水性が高すぎて単独重合体でシェル部を形成しにくいため、他の疎水性単量体とともに共重合することが好ましい。
【0027】
上記のシェル部を構成する非フィブリル形成性のポリマーのうち、好ましいポリマーは、コア部のフィブリル形成性のPTFEを合成したあと連続的にシェル部の反応を行いやすい点で、TFEを含むポリマーである。
【0028】
本発明におけるコア−シェル複合微粒子の製法は、シェル部が低分子量PTFEの場合、特開平4−154842号公報に、VDF系樹脂の場合はWO94/1475号パンフレットに、シェル部がTFEとCTFEの共重合体の場合は特公昭63−63584号公報に、シェル部がETFEやECTFEの場合は特開平2−158651号公報に、またシェル部がα,β不飽和カルボン酸エステルのポリマーの場合は特開昭63−312836号公報にそれぞれ記載された方法に準じて製造することができる。平均粒径は0.05〜1μmであるが、いわゆる種重合法などで1μmよりも大きな粒径を得ることも可能である。しかし、大きな粒径の微粒子を含む分散体の場合、保存上不安定であり問題がある。小さすぎる粒径は他の材料との混合時に十分なフィブリル化が起こりにくくなる。
【0029】
本発明のコア−シェル複合粒子(A1)でのコア部とシェル部の重量比は98:2〜50:50であるが、好ましい範囲は、用途によって異なるので一概には言えないが、たとえば、電極材料として用いた場合には、シェル部が少なすぎると電極材料との混合が不均一になったり、有機媒体での分散が悪くなる。シェル部が多すぎると本来の結着性能が低下したり、シェル部がVDF系ポリマーや常温液状の炭化水素系単量体からなるポリマーの場合、電池内での膨潤の問題が生じやすくなる。この場合好ましくは95:5〜60:40である。
【0030】
通常、TFEの乳化重合では、場合によっては他の含フッ素単量体(たとえば、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フルオロアルキルエチレン、フルオロアルキルフルオロビニルエーテルなど)を少量共重合することもある。変性量が0.001〜2重量%の範囲ならば、広義の意味でのフィブリル化能は有しており、単独重合体よりは多少落ちるが、他の材料との混合時に十分なフィブリル化が起こる。このようないわゆる単量体変性PTFEのうち、特に重合後半にTFE以外の単量体を少量共重合させることでコア−シェル構造を形成させた粒子(A2)も本発明に含まれる。コア部からシェル部へ変性モノマーの濃度が連続的に変化するなどコア−シェル構造が明確でない場合もあるが、実質的にフィブリル化能を制御したものであれば、本発明に含まれる。
【0031】
(A2−1)変性単量体が含フッ素単量体である変性PTFE粒子:
単量体変性PTFE粒子(A2)としては、PTFEの加工性を改良するために、TFEにTFE以外の含フッ素不飽和化合物からなるモノマーを熱溶融加工性能を与えない程度に少量共重合させたものをあげることができる。
【0032】
前記モノマーとしては、X(CF2nOCF=CF2(式中、Xは水素、フッ素または塩素を、nは1〜6の整数を表わす)またはC37(OCF2CF2CF2m〔OCF(CF3)CF2lOCF=CF2(式中、mおよびlは0〜4の整数を表わす。ただし、これらが同時に0となることはない)で示されるフルオロアルキルビニルエーテル、CF3CF=CF2、CF2=CFH、CF2=CFCl、CF2=CH2、RfCY=CH2(式中、Rfは直鎖状または分枝状の炭素数1〜21のポリフルオロアルキル基、Yは、水素原子またはフッ素原子である)など、TFE以外の含フッ素不飽和化合物があげられ、通常これらはTFEに対して2質量%以下、好ましくは0.001〜1質量%の範囲で加えられる。
【0033】
これらのうちCF2=CFClやCF3CF=CF2で変性したPTFEが、粒子の形状や安定性が制御しやすい点で好ましく選ばれ、その変性量は0.001〜1重量%が好ましい。これらはたとえば、特公昭51−36291号公報、特公昭61−200506号公報、WO00/02935号パンフレット、WO06/054612号パンフレットなどに記載された方法に準じて製造できる。
【0034】
また、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)変性PTFEも好ましく、これらはたとえば特公昭50−38159号公報、特公昭51−25398号公報、特公平3−39015号公報などに記載されたものを使用でき、具体的にはPTFEが−CF2CF(OZ)−(式中、Zは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基または炭素数4〜9のパーフルオロアルコキシアルキル基である)で表わされるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位を0.001〜1質量%含有するものをあげることができる。
【0035】
(A2−2)変性単量体が非フッ素単量体である変性PTFE粒子:
単量体変性PTFE粒子(A2)としては、さらに、含フッ素系単量体以外でもTFEと実質的に共重合可能な単量体で、変性量が2重量%以下ならばどのようなのもでも本発明の目的を達成できる。例えば、エチレン、プロピレン、イソブタンの様な炭化水素オレフィン類、塩化ビニルの様な塩素系オレフィン類、ノルボルネンなどの環状オレフィン類などが示され、これらは重合後半に添加され殻部のPTFEの分子量をその添加量で調整し、変性PTFE粒子のフィブリル化能を調整できる点で有用であり、特に単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブタンがその制御の容易性から好ましく選ばれる。これらは例えば、WO2005/97847号パンフレットなどに記載された方法に準じて製造できる。
【0036】
(B)溶融加工可能なパーフルオロ重合体:
「溶融加工可能」とは、各樹脂の融点以上の温度における溶融粘度が、溶融押出し、射出成形等の通常のプラスチックに適用される加工法を使用し得る程度に低く、たとえば5kg荷重、200〜400℃の任意の温度で測定したメルトフローレートが0.5〜40g/10分程度のものであるものをいう。高分子量PTFEも融点は持つが、溶融粘度が高すぎて溶融加工ができない。そうした高分子量PTFEと他のパーフルオロ重合体とを区分けする基準として、「溶融加工」が可能か否かを用いることはパーフルオロ重合体の分野で周知の事項であり、当業者であれば明確に区分けできる。また、溶融加工可能であることは、フィブリル化しないという性質であるともいえる。
【0037】
また、溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)は、380℃における比溶融粘度が1×103〜1×108ポイズであるものが好ましい。
【0038】
溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)としては、たとえば、FEP、PFA、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、TFE/VDF共重合体(VT)、ポリフッ化ビニリデン(PVF)、TFE/VDF/CTFE共重合体(VTC)、TFE/エチレン/HFP共重合体などが例示できる。
【0039】
FEPとしては、TFE/HFPの共重合比が質量比で95/5〜5/95である共重合体が、PTFEオルガノゾルの安定性が向上したり、PTFEオルガノゾルを塗膜とした場合に基材との密着性が良好な点から好ましい。好ましい共重合比TFE/HFP(質量比)は、95/5〜20/80、さらには90/10〜50/50である。
【0040】
上記PFAのコモノマーであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)としては特に限定されないが、たとえば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)等があげられる。
【0041】
PFAとしては、TFE/PFAVEの共重合比が質量比で95/5〜5/95である共重合体が、PTFEオルガノゾルの安定性が向上したり、PTFEオルガノゾルを塗膜とした場合に基材との密着性が良好な点から好ましい。好ましい共重合比TFE/PFAVE(質量比)は、95/5〜20/80、さらには90/10〜50/50である。
【0042】
これらの溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)のうち、FEPおよびPFA、特にFEPが、乳化重合が可能で粒子径を非常に小さくできる点と、重合体(粒子)とPTFE粒子との相溶性や基材密着性が良好な点から好ましい。
【0043】
溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)は、オルガノゾル組成物中に粒子の形態で存在していてもよいし、有機溶剤(C)に一部または全部溶解した状態で存在していてもよい。オルガノゾルの製造時には、フィブリル化しやすいPTFE粒子表面を混合したパーフルオロ重合体(B)が覆ってフィブリル化を防ぐという点から、粒子の形態で存在していることが好ましい。粒子の場合、平均粒子径は0.01〜10μm、さらには0.5〜3μmであることが、安定性の向上の点から好ましい。
【0044】
(C)有機溶剤
本発明で用いる有機溶剤は、PTFEおよびパーフルオロ重合体(B)を濡らし得る有機溶剤であれば、特に制限されない。なかでも、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤が好ましく、さらにはケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、および脂肪族炭化水素系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種が、他の材料との相溶性の点から好ましい。
【0045】
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが;アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなどが;アミド系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などが;エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどが;脂肪族炭化水素系溶剤としては ヘキサン、石油エーテルなどが;芳香族炭化水素系溶剤としてはベンゼン、トルエン、キシレンなどが;ハロゲン化炭化水素系溶剤としては四塩化炭素、トリクロルエチレン、パーフルオロヘキサンなどが例示できる。また単独では濡れにくい有機溶剤、たとえば四塩化炭素、トリクロルエチレン、ジイソブチルケトンでは油溶性の界面活性剤を少量添加することによってオルガノゾルにすることも可能である。これらは本発明のオルガノゾル組成物の使用分野や目的に応じて適宜選択すればよい。
【0046】
本発明のオルガノゾル組成物において、変性PTFE粒子(A)と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)は、質量比(A)/(B)で95/5〜31/69の割合で存在する。このPTFEの割合が大きな質量比で変性PTFE粒子(A)と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)が有機溶剤(C)中に均一に分散しているオルガノゾルが、安定な状態を形成することは、従来の知見からは極めて意外なことである。
【0047】
なお、本発明において「均一に分散している」とは、オルガノゾル組成物を少なくとも1日間静置していても、オルガノゾル組成物中に凝集物が生じないことをいう。
【0048】
また、質量比(A)/(B)が31/69よりも小さい(変性PTFE粒子が少ない)場合でも、得られるオルガノゾル組成物は安定であるが、本発明ではより多くの高分子量PTFEをオルガノゾル中に含有させることを目的としているので、質量比(A)/(B)の下限を31/69に設定している。
【0049】
この観点から、質量比(A)/(B)は95/5〜50/50が好ましく、さらには90/10〜60/40が好ましい。
【0050】
本発明のオルガノゾル組成物は、特に電極の製造に使用する場合など、水分の存在を嫌う分野および目的に使用する場合は、実質的に無水であることが好ましい。具体的には、水分含有量(カール−フィッシャー法)が、500ppm以下、さらには100ppm以下であることが好ましい。
【0051】
変性PTFE粒子(A)と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)のオルガノゾル組成物の調製は、たとえば特公昭48−17548号公報に記載されている方法により行うことができる。すなわち、変性PTFE粒子(A)の水性分散液と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)粒子の水性分散液を混合し、水と共沸状態を形成し得る有機溶媒を加えたのち、水と有機溶媒の共沸混合物を共沸除去することによって得られる。
【0052】
水と共沸状態を形成し得る有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素系溶媒;メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶媒などが例示できる。
【0053】
共沸除去した後、共沸除去に用いた溶媒と同じかまたは異なる有機溶媒で濃度調整をしてもよい。
【0054】
変性PTFE粒子(A)と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)のオルガノゾル組成物の固形分濃度としては、5〜50質量%程度とするのが、分散安定性が良好な点から好ましい。
【0055】
そのほか、デイスパージョンを転層させてのち分液で水を除去する方法、デイスパージョンに溶媒を入れて凍結乾燥し水を除去する方法などによっても、変性PTFE粒子(A)と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)のオルガノゾル組成物を調製することができる。
【0056】
本発明において、オルガノゾル組成物に、オルガノゾル組成物の安定性を損なわない限りにおいて、さらに他の重合体(D)を用途に応じて添加してもよい。
【0057】
他の重合体(D)としては、フッ素樹脂、フッ素ゴム、非フッ素系の樹脂または非フッ素系のゴムなどがあげられる。
【0058】
フッ素樹脂としては、VdF単位を含む樹脂、具体的にはPVdF、VdF/TFE共重合体樹脂、VdF/HFP共重合体樹脂、VdF/TFE/HFP共重合体樹脂、CH2=CFCF3(1234yf)を単独重合または他の単量体と共重合させた樹脂などが、有機溶剤に溶解可能でオルガノゾルの分散性を向上させる点から好ましくあげられる。
【0059】
フッ素ゴムとしては、VdF単位を含むゴム、具体的にはVdF/TFE共重合体ゴム、VdF/HFP共重合体ゴム、TFE/VdF/HFP共重合体ゴムなどが、オルガノゾルの分散性、基材との密着性を向上させる点から好ましくあげられる。
【0060】
非フッ素系樹脂としては、ポリアミドイミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、カルボキシエチルセルロースまたはその塩、カルボキシブチルセルロースまたはその塩、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンオキシドまたはその誘導体、ポリメタクリル酸またはその誘導体、ポリアクリル酸またはその誘導体などが、オルガノゾルの分散性、基材との密着性を向上させる点からあげられる。
【0061】
非フッ素系ゴムとしては、EPDMゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ネオプレンゴム、アクリルゴムがあげられる。
【0062】
他の重合体(D)は、有機溶剤に溶解した状態でも均一に分散した状態でもよいが、安定性の点から有機溶剤に溶解していることが望ましい。
【0063】
他の重合体の添加量は、用途や目的により異なるが、変性PTFE粒子(A)と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)の合計100質量部に対して、10質量部以下、さらには5質量部以下が好ましい。下限は、用途や目的により適宜選定すればよい。
【0064】
他の重合体(D)の混合の仕方は特に制限されず、成分(A)と(B)のオルガノゾルを他の重合体(D)の有機溶剤溶液に少量ずつ添加混合してもよいし、他の重合体(D)の有機溶剤溶液に成分(A)と(B)のオルガノゾルを少量ずつ添加混合してもよい。混合は撹拌下に行ってもよいが、変性PTFE粒子(A)が凝集しないように注意する。
【0065】
本発明のオルガノゾル組成物は、高分子量の変性PTFE粒子を多量にしかも安定した形で含んでおり、広い分野で多くの用途に有用である。
【0066】
たとえば、電池の分野では、正極や負極の作製用の電極合剤スラリーの成分として、また、電極に撥水性を与える混合剤として有用である。
【0067】
塗料の分野では、滑り性、耐汚染性、耐腐食性などに優れた塗膜を与える被覆材として有用である。
【0068】
樹脂成形の分野では、熱可塑性・熱硬化性重合体、エラストマーにブレンドしてその難燃性、摺動性、撥水・撥油性、耐汚染性、耐腐食性、耐候性、電気特性などを改質する改質材として、また、白色顔料として有用である。
【実施例】
【0069】
つぎに実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
本実施例および比較例においては、以下の方法にて測定を行った。
【0071】
(1)重合体濃度
シャーレに10gの変性PTFE水性分散液を採取し、150℃にて約3時間加熱した後に秤量した固形分の質量から、上記変性PTFE水性分散液の質量と固形分の質量との割合として算出する。
【0072】
(2)平均粒子径
変性PTFE水性分散液を固形分0.15質量%に調整してセルに入れ、550nmの光を入射したときの透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して算出した数平均一次粒子径との相関を検量線にまとめ、得られた検量線と各試料について測定した上記透過率とから決定する。
【0073】
(3)コア部割合
重合開始後、変性剤の追加前に消費したモノマー量と、重合反応全体において消費したモノマー量との質量比として算出する。
【0074】
(4)コア部・シェル部変性量
重合開始後、変性剤を追加する直前に試料を取り出し、NMRスペクトル測定を行うことにより求める。次いで、最終的に得られた変性PTFEについて全体の変性量を測定して、コア部変性量との関係からシェル部変性量を測定する。
【0075】
(5)標準比重[SSG]
ASTM D 4895−89に準拠して、水中置換法に基づき測定する。
【0076】
(6)熱不安定指数[TII]
ASTM D 4895−89に準拠して測定する。
【0077】
(7)焼成前の引張強度(生強度)
オートグラフ((株)島津製作所製)を用い、室温において引張速度200mm/分にて測定用成形体bを引張り、その最大点強度を測定する。なお、測定用成形体bは、変性PTFEパウダー50.00gと押出助剤(商品名:アイソパーG、エクソン化学社製)10.25gとをガラスビン中で混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成して得られた混合物を、圧力2MPa、室温において押出機のシリンダーに充填し1分間保持したのち、直ぐにシリンダーに挿入したピストンに5.7MPaの負荷を加えてラム速度20mm/分でオリフィスから押出して成形することにより得られる直径0.63mm×長さ80mmの円柱状成形体である。
【0078】
(8)押出圧力
ASTM D 4895に準拠した押出機を用い、リダクションレシオ1600における押出し圧力を測定した。まず、変性PTFEパウダー50.00gと押出助剤である炭化水素油(商品名:アイソパーG、エクソン化学社製)10.25gとをガラスビン中で混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成する。
【0079】
次に、押出機のシリンダーに上記混合物を充填し、室温において1分間保持したのち、直ぐにシリンダーに挿入したピストンに5.7MPaの負荷を加えて、直ちに室温においてラム速度20mm/分でオリフィスから押出す。押出操作で圧力が平衡状態になる時点の荷重(N)をシリンダー断面積で除した値を押出し圧力(MPa)とする。
【0080】
調製例1
シェル部がCTFEで構成されたコア−シェル複合微粒子の水分散体を特開昭51−36291号公報記載の実施例1と同様に合成した。
【0081】
まず、ステンレススチール製アンカー型撹拌翼と温度調節用ジャケットを備え、内容量が6Lのステンレススチール(SUS316)製オートクレーブに、脱イオン水3400ml、流動パラフィン90g、およびパーフルオロオクタン酸アンモニウム1.5gを仕込み、窒素ガスで3回、TFEで2回系内を置換して酸素を除いた後、重合開始剤であるジコハク酸過酸化物(DSP)の350mgを溶かした50mlの水溶液を充填し、TFEで内圧を0.8MPaにして撹拌を280rpm、内温を85℃に保った。なおこのとき同時にCTFEを0.0023モル導入した。これを攪拌しつつDSP導入から1時間後に、重合開始剤である35mgの過硫酸アンモニウム(APS)を溶かした50mlの水溶液を系内に仕込み反応を開始した。APSを導入すると反応が開始され圧力が低下し始める。内圧が0.7MPaまで低下したらTFEを0.8MPaまで圧入し、このように連続的にTFEを供給することで重合反応を継続した。反応中は、系内の温度を85℃、撹拌を280rpmに保った。50回目に再加圧した時点で、攪拌を停止し、CTFEを0.023モル供給し、撹拌を再開してその圧力を保ちながら反応を続けた。合計71回目の再加圧の後に撹拌を止め、ガスを放出して反応を終了した。
【0082】
得られた変性PTFEの水性分散体の一部を蒸発乾固して求めた固形分の濃度は、31.7質量%であり、平均一次粒径は0.26μmであった。
【0083】
得られた変性PTFE水性分散液を脱イオン水で固形分濃度が約15質量%となるように希釈し、凝固するまで激しく撹拌して凝析し、得られた凝集物を145℃で18時間乾燥し、変性PTFE粉末を得た。
【0084】
得られた変性PTFE粉末を用いて、赤外吸収(IR)スペクトル分析により測定した結果、重合体中のCTFE含有量は、0.17質量%であった。また、上記変性PTFEの標準比重〔SSG〕は2.170であった。
【0085】
さらに、上記変性PTFE粉末について、押出圧力を測定したところ、59MPaであった。
【0086】
調製例2
ステンレススチール(SUS316)製アンカー型撹拌機および温度調節用ジャケットを有するステンレススチール(SUS316)製のオートクレーブ(内容量6L)に、脱イオン水3580g、パラフィンワックス94.1gおよび分散剤としてパーフルオロオクタン酸アンモニウム0.72gを仕込んだ。次いでオートクレーブを70℃まで加熱しながら、窒素ガスで3回、TFEガスで2回系内を置換して酸素を除いた。その後、TFEガスで内圧を0.73MPaにし、280rpmで撹拌を行い、内温を70℃に保った。
【0087】
次に初期導入変性剤としてPPVEを2.2g、続いて脱イオン水20gに溶解したDSP322mgと脱イオン水20gに溶解したAPS13.4mgとを注入し、オートクレーブの内圧を0.78MPaにした。
【0088】
重合開始剤を添加してから反応で消費されたTFEが230g(転化率20%)に達した時点でパーフルオロオクタン酸アンモニウム4.54gを仕込んだ後、内圧が0.78MPaになるまでTFEを供給し、280rpmで再び撹拌を開始し、引き続き反応を行った。
【0089】
反応で消費されたTFEが1490g(転化率90%)に達した時点で、追加変性剤としてHFPを7.1g、連鎖移動剤としてイソブタンを7.4mlそれぞれ仕込み、引き続き反応を行った。
【0090】
反応の全過程において、反応が進行するに従って内圧が低下したので、常に0.78MPaに保つようにTFEを連続的に供給した。撹拌速度は280rpm、反応温度は70℃に一定に保つようにした。
【0091】
反応で消費されたTFEが1735gに達した時点でTFEの供給を止め、撹拌を停止した。オートクレーブ内のガスを常圧まで放出した後で内容物を取り出し反応を終了した。
【0092】
得られた変性PTFE水性分散液の固形分は、31.5質量%であり、平均一次粒子径は0.24μmであった。
【0093】
得られた変性PTFE水性分散液を脱イオン水で固形分濃度が約15質量%となるように希釈し、凝固するまで激しく撹拌して凝析し、得られた凝集物を145℃で18時間乾燥し、変性PTFE粉末を得た。
【0094】
得られた変性PTFE中のPPVEおよびHFP含有量を測定したところ、それぞれ0.103質量%、0.03質量%であった。また、上記変性PTFEの標準比重〔SSG〕は2.173であった。
【0095】
また、上記変性PTFE粉末について、熱不安定指数および押出圧力を測定したところ、それぞれ0および39.5MPaであった。
【0096】
実施例1
調製例1で得た変性PTFE水性分散液38質量部とFEP水性分散液(重合体含有量30質量%、組成比PTFE/HFP=84/16、融点222℃)40質量部とヘキサン20質量部を200mlビーカーに取り、メカニカルスターラーで攪拌した。攪拌しながらアセトン60質量部を添加し、その後5分間攪拌した。攪拌終了後、混合物を静置し、水を主成分とする上澄み液を除去した。残った沈殿物にメチルイソブチルケトン76質量部を加え3分間攪拌した。これを、500mlナスフラスコに移し変え、エバポレーターで溶剤を一部除去し、均一なPTFE/FEP=1/1のオルガノゾルの80質量部を得た。このオルガノゾルは1日静置した後も均一であった。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、402ppmであった。
【0097】
実施例2
変性PTFE水性分散液に調製例2で得た変性PTFE水性分散液38質量部を用いた以外は、実施例1と同様にオルガノゾルを調整した結果、均一なPTFE/FEP=1/1のオルガノゾルの80質量部を得た。このオルガノゾルは1日静置した後も均一であった。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、392ppmであった。
【0098】
実施例3
実施例1で得たオルガノゾルにさらにメチルイソブチルケトン80質量部を加え、エバポレーターで溶剤を一部除去し、均一なPTFE/FEP=1/1のオルガノゾルの80質量部を得た。このオルガノゾルは1日静置した後も均一であった。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、72ppmであった。
【0099】
実施例4
変性PTFE水性分散液として調製例2で得た変性PTFE水性分散液38質量部を用い、メチルイソブチルケトンのかわりにイソホロン(3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)を用いた以外は、実施例1と同様にオルガノゾルを調製した結果、均一なPTFE/FEP=1/1のオルガノゾルの80質量部を得た。このオルガノゾルは1日静置した後も均一であった。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、50ppm以下であった。
【0100】
実施例5
調製例2で得た変性PTFE水性分散液38質量部を用い、メチルイソブチルケトンのかわりにシクロヘキセノンを用いた以外は、実施例1と同様にオルガノゾルを調製した結果、均一なPTFE/FEP=1/1のオルガノゾルの80質量部を得た。このオルガノゾルは1日静置した後も均一であった。カールフィッシャー法で測定した水分濃度は、50ppm以下であった。
【0101】
比較例1
変性PTFE水性分散液の代りにPTFE水性分散体(PTFE単独重合体、重合体含有量60質量%、SSG:2.187)の20質量部を用いた以外は実施例1と同様の操作をした結果、メチルイソブチルケトン中で攪拌している最中に、凝集してしまい、均一なオルガノゾルは得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準比重が2.130〜2.200で非フィブリル形成性の変性テトラフルオロエチレン粒子(A)と溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)が、質量比(A)/(B)が95/5〜31/69の割合で有機溶剤(C)中に均一に分散している含フッ素重合体のオルガノゾル組成物。
【請求項2】
非フィブリル形成性の変性テトラフルオロエチレン粒子(A)のリダクションレシオ1600における円柱押出圧力が70MPa以下である請求項1記載のオルガノゾル組成物。
【請求項3】
非フィブリル形成性の変性ポリテトラフルオロエチレン粒子(A)が、フィブリル形成性テトラフルオロエチレンのコアと非フィブリル形成性の樹脂のシェルとから構成されるコア−シェル複合粒子である請求項1または2記載のオルガノゾル組成物。
【請求項4】
非フィブリル形成性の変性ポリテトラフルオロエチレン粒子(A)が、変性用単量体が2質量%以下共重合された変性ポリテトラフルオロエチレン粒子である請求項1または2記載のオルガノゾル組成物。
【請求項5】
溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)が粒子の形態で分散している請求項1〜4のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項6】
溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)の380℃における比溶融粘度が1×103〜1×108ポイズである請求項1〜5のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項7】
溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)が、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンの共重合比が質量比で95/5〜5/95であるテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体である請求項1〜6のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項8】
溶融加工可能なパーフルオロ重合体(B)が、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の共重合比が質量比で95/5〜5/95であるテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である請求項1〜6のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項9】
有機溶剤(C)が、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤およびエステル系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項10】
実質的に無水である請求項1〜9のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項11】
さらにフッ化ビニリデン系重合体が含まれている請求項1〜10のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。
【請求項12】
さらに非フッ素系フィルム形成用重合体が含まれている請求項1〜11のいずれかに記載のオルガノゾル組成物。

【公開番号】特開2011−213857(P2011−213857A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83269(P2010−83269)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】