説明

含水粉末メイクアップ化粧料

【課題】 使用前は外観の均一性に優れた粉末状で、露光条件下においても多量の水を安定に含有することができ、使用時、塗擦によって良好に液化し、きしみ感のない滑らかなのび広がりで、優れた発色性と保存安定性を有する含水粉末メイクアップ化粧料を提供すること。
【解決手段】 次の成分(a)〜(c);(a)表面積80m/g以上の疎水化シリカ 0.1〜7質量%、(b)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体 1〜49.9質量%、(c)水 50〜90質量%を配合し、塗擦により液化することを特徴とする含水粉末メイクアップ化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用前は粉末状のメイクアップ化粧料でありながら、使用時、これを塗擦すると液化してリキッド状の化粧料に変化する含水粉末メイクアップ化粧料に関し、更に詳細には、使用前の外観の均一性に優れ、使用時、塗擦により良好に液化し、きしみ感がなく滑らかなのび広がりで、優れた発色性を有し露光条件下での保存安定性にも優れる含水粉末メイクアップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用時に清涼感やみずみずしい使用感の感じられるメイクアップ化粧料としては、水を多量に含有できる乳液状やクリーム状のものが一般的であり、粉末状のものは殆どなかった。
そこで、本出願人は、水を特定の疎水化シリカと、撥水・撥油性の高いフッ素系化合物で処理した粉体と組合せて用いることにより、多量の水を粉体で内包し、使用前は粉末状でありながら、使用時、塗擦により、水が連続層となってリキッド状になり、みずみずしい使用感を奏することのできる含水粉末化粧料を開発している(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の含水粉末化粧料は、使用前後で性状が大きく変化する外観上の意外性に富み、且つ、多量の水を粉末化しているため、使用前の状態から予測される使用感とは異なる、みずみずしい使用感で肌にのび広がる化粧料であるが、疎水化シリカや、フッ素系化合物を用いた撥水・撥油処理粉体に起因するきしみ感が感じられる場合があり、この問題を解消し、より良好な使用感を得るため、架橋型シリコーン末や、キサンタンガム、球状セルロースを配合する技術も提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−65212号公報
【特許文献2】特開2000−309506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の架橋型シリコーン末やキサンタンガム、球状セルロースを含水粉末化粧料に用いる方法では、粉体に充分な撥水性、撥油性がなくなる場合があり、特に露光条件下において、多量の水を安定に粉末化する機能が低下することがあった。これを粉末化するには、疎水化シリカを更に多量に配合する必要があり、使用時塗擦してもスムーズに液化せず、使用性に問題が生じる場合があった。
【0005】
また、撥水・撥油性を出すために撥水・撥油性の高いパーフルオロアルキルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩で処理した粉体を用いた場合、露光条件下における保存安定性の向上がみられるものの、きしみ感を生じるため、これを解消する油剤の配合が必須となり、このため使用中のベタツキ感や、塗布後にテカリを生じる場合があった。更に、疎水化シリカとの混合性が悪くなることがあり、外観が不均一でまだらになったり、流動性が低下したりする場合があった。
更に、顔料やパール剤をパーフルオロアルキルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩で処理した場合、撥水・撥油性が強すぎて、水や油性成分に馴染みにくく、発色が悪くなることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、露光条件下においても多量の水を安定に粉末化するための粉体の疎水化処理において、疎水化処理剤として、特にトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで処理した粉体を用いることにより、使用前は均一な粉末状の外観を有しながら、多量の水を安定に含有することができ、使用時、塗擦すると良好に液化して、きしみ感のない滑らかなのび広がりで優れた発色性と保存安定性を有する含水粉末メイクアップ化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(c);
(a)表面積80m/g以上の疎水化シリカ 0.1〜7質量%
(b)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体 1〜49.9質量%
(c)水 50〜90質量%
を配合し、塗擦により液化することを特徴とする含水粉末メイクアップ
化粧料を提供するものである。
そして、更に成分(d)として、水ゲル化剤を配合することを特徴とする含水粉末メイクアップ化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の含水粉末メイクアップ化粧料は、使用前は外観の均一性に優れた粉末状で、露光条件下においても多量の水を安定に含有することができ、使用時、塗擦すると良好に液化し、きしみ感のない滑らかなのび広がりで、発色性に優れ、保存安定性も良好なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられる、成分(a)の疎水化シリカとは、微粒子シリカの表面が、オルガノシラン系化合物やシリコーン化合物等で覆われているもので、例えば、トリメチルシロキシル化シリカ、ジメチルシロキシル化シリカ、オクチルシロキシル化シリカ、ジメチルポリシロキサン処理シリカ等が挙げられる。これら疎水化シリカは、表面積が80m/g以上であることが必要であり、表面積がこれより少ないと、疎水化シリカの粒径が大きくなり、水滴の表面に多量に配向することができず、水を安定に粉末化することができなくなる。
市販品としては、CAB−O−SIL TS−530、(キャボット社製 表面積325m/g)、エロジールR−972(デグッサ社製 表面積110±20m/g)、エロジールR−805、(デグッサ社製 表面積150±25m/g)、エロジールR−202、(デグッサ社製 表面積100±20m/g)等が挙げられる。
【0010】
成分(a)の疎水化シリカの配合量は、0.1〜7質量%(以下、単に「%」とする)であり、好ましくは、2〜4%である。0.1%より少ないと水を充分に粉末化できない場合があり、7%より多くなると、使用時塗擦しても液化せず、求めるみずみずしい感触が感じられない場合があり好ましくない。
【0011】
本発明に用いられる成分(b)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体は、使用前の粉末状態の時の外観の均一性、及び塗擦時の液化性を良好なものとし、きしみ感のない滑らかなのび広がりで、優れた発色性を発現し、保存安定性も良好にするためのものである。
成分(b)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体は、各種粉体を下記化学式(1)で示されるトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン(INCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names):パーフルオロオクチルトリエトキシシラン)で表面処理して得られるものである。
C−(CF−(CH−Si−(OCHCH ・・・(1)
【0012】
成分(b)の表面処理に用いられる粉体としては、通常メイクアップ化粧料に用いられるものであればいずれのものでもよく、板状、紡錘状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄処理雲母、酸化鉄処理雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、シリカ・酸化チタン被覆雲母、酸化チタン処理ガラス末、酸化鉄酸化チタン処理ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体はこれを更に複合化したものを用いても良い。
【0013】
トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランの粉体への表面処理方法は特に限定されないが、例えば、特開2007−238690号公報に記載の方法等に従って処理することができる。即ち、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランをミキサー内で添加し、粉体と混合した後、熱処理を行い、必要に応じて粉砕することにより目的とする表面処理粉体を得ることができる。あるいは、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランをアセトン、トルエン等の有機溶媒に加熱溶解もしくは分散し、その中に粉体を加えて混合した後に有機溶媒を除去し、乾燥後粉砕することにより目的とする表面処理粉体を得ることができる。
【0014】
成分(b)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランの粉体への処理量は処理粉体全量に対して0.05〜20%が好ましく、0.1〜15%の範囲がより好ましい。この範囲であれば処理剤同士の縮合や未反応の処理剤の残存による感触や流動性への悪影響などが起きることなく、粉体に対して疎水性を十分に付与することができる。
【0015】
本発明の含水粉末メイクアップ化粧料における成分(b)は必要に応じて1種又は2種以上を用いることができ、その配合量は、0.1〜49.9%であり、好ましくは5〜30%である。0.1%未満もしくは、49.9%を超えて配合した場合、外観の均一性や、塗擦による液化性、きしみ感のない滑らかなのび広がりとみずみずしい使用感が不充分となり、顔料やパール剤等の粉体の発色性が劣り、保存安定性も良好なものが得られないため好ましくない。
【0016】
本発明の成分(c)の水は、みずみずしい使用感を奏するための成分であり、また、他の成分と組み合わせて配合することにより、きしみ感のない滑らかなのび広がりを発現するために配合するものである。
成分(c)の配合量は、成分(a)及び成分(b)の組成比及び配合量によって変動するが、50〜90%であり、好ましくは70〜90%である。50%未満もしくは、90%を超えて配合した場合、使用時、良好に粉末化することができず、きしみ感のない滑らかなのび広がりや、含水粉末メイクアップ化粧料に求められるみずみずしさが充分に得られず、好ましくない。
【0017】
更に、本発明の含水粉末メイクアップ化粧料には、成分(d)として、水ゲル化剤を用いることができる。成分(d)の水ゲル化剤は、成分(c)の水に溶解することにより、水をゲル化し、水に粘性を持たせることで、成分(c)の水をより安定に内包しやすくできるため、含水粉末メイクアップ化粧料を製造する過程の高速剪断や凍結粉砕時において液化するのを防止する効果があり、含水粉末メイクアップ化粧料を製造し易くするとともに、保存安定性も上げるものである。成分(d)の水ゲル化剤としては、例えば、寒天、グァーガム、ローカストビーンガム、クインスシードガム、ファーセレラン、カラギーナン、アルギン酸ソーダ、ジェランガム、デンプン、ペクチン、コンニャク粉等の植物系天然高分子、スクレロチウムガム等の微生物系天然高分子、ゼラチン等の動物系天然高分子、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル(共)重合体等のカルボン酸ビニル(共)重合体、(メタ)アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリル酸ナトリウム(共)重合体等の親水性アクリル系ポリマー、ケイ酸ナトリウムマグネシウム、含水ケイ酸アルミニウム、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、フッ素四ケイ素雲母等の水膨潤性粘土鉱物等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。これら成分(d)の水ゲル化剤は、高速剪断や凍結粉砕時の粉砕のし易さや、保存安定性向上の観点より、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ジェランガム、ケイ酸ナトリウムマグネシウム、スクレロチウムガムのように水に溶解させた場合、硬いゲルを形成するものが好ましい。
【0018】
なお、成分(d)の水ゲル化剤は、必要に応じ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカリ物質で中和しゲル化させて用いることができる。この場合、成分(d)の水ゲル化剤と前記アルカリ物質の質量比は、水ゲル化剤の種類によっても異なるが、質量比で、概ね1:0.001〜1:1とすることが好ましい。
【0019】
本発明の含水粉末メイクアップ化粧料中の成分(d)の水溶性ゲル化剤の配合量は、水相成分をゲル化させるために十分な量であれば特に制限はなく、水ゲル化剤の種類により異なるが、概ね0.005〜2%とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明においては、上記成分(a)〜(c)、ないしは成分(a)〜(d)の他に、塗布時の感触や、使用中の肌のしっとり感等を調整する為に、更に油剤を配合するができる。
油剤としては、通常化粧料に用いられる油分であれば特に制約なく使用することができ、動物油、植物油、合成油等の起源や固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油ゲル化剤等を使用することができる。具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシュトロプスワックス等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、ラノリン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、ホホバ油、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル等のトリグリセライド、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレスレテロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル油類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン油類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、オクタン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリンなどの油ゲル化剤が挙げられる。
【0021】
更に、本発明の含水粉末メイクアップ化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記成分以外の各種成分、例えば、成分(a)、(b)以外の粉体、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、水性成分、美容成分、酸化防止剤、防腐剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、褪色防止剤、消泡剤、香料などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0022】
粉体としては、成分(a)、(b)以外で、通常化粧料に用いられるものであればよく、板状、紡錘状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄処理雲母、酸化鉄処理雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、シリカ・酸化チタン被覆雲母、酸化チタン処理ガラス末、酸化鉄酸化チタン処理ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン以外のフッ素系油剤やシリコーン系油剤、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、金属石ケン、界面活性剤などの他のコーティング剤で前処理または同時に処理したものを組み合わせて使用することもできる。
【0023】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であれば特に制約はなく、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が使用される。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、安息香酸系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等の紫外線吸収剤や、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン等が挙げられ、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
また、水性成分はモイスチャー効果を付与する目的で用いることができ、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等が挙げられる。
美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が、酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロール、アスコルビン酸等が、防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等がそれぞれ挙げられる。
【0024】
本発明の含水粉末メイクアップ化粧料の製法は、特に限定されるわけではないが、例えば、成分(a)の疎水化シリカと成分(c)の水を混合処理して含水粉末化したものに、更に成分(b)を加え混合処理して、粉末化することにより製造することができる。また、成分(d)の水ゲル化剤を用いる場合、成分(d)を成分(c)の水に溶解後、成分(a)の疎水化シリカと混合処理して含水粉末化したのち、成分(b)を加え混合処理して、粉末化することにより製造することができる。このようにして製造された本発明の含水粉末メイクアップ化粧料は、アイシャドウ、チーク、白粉、口紅、ファンデーション、下地料等のメイクアップ化粧料とすることができ、特に、アイシャドウ、チーク、白粉として好好適である。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0026】

(実施例1〜6及び比較例1〜8)粉白粉
表1に示す処方及び下記に示す製造方法により、粉白粉を製造した。得られた各試料について、(イ)使用前の外観の均一性、(ロ)液化性、(ハ)きしみ感のなさ(のび広がりの滑らかさ)、(ニ)塗膜の発色性、(ホ)保存安定性をそれぞれ下記方法で評価し、結果も併せて表1に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
*1(トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理):
イソプロピルアルコールに各粉体を添加分散し、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを添加し(処理粉体全量中3%)、80℃で加熱混合することで表面処理する。乾燥し、イソプロピルアルコールを揮発後、粉砕処理して得た。
*2(ジメチルポリシロキサン処理):
イソプロピルアルコールに各粉体及びジメチルポリシロキサン(シリコン KF−96(100CS)(信越化学工業社製)を加え(処理粉体全量中3%)、120℃で2時間焼付け処理を行った後、粉砕して得た。
*3(パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩処理):
水中に各粉体を加えスラリー状態とし、そこにパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩(アサヒガードAG530(旭硝子社製))の水分散物を徐々に加え(処理粉体全量中5%)混合した後、室温で静置し、パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩処理を行った後、粉砕して得た。
*4:CAB−O−SIL TS−530(キャボット社製)
*5:ウルトラ寒天 AX−100CS(伊那食品工業社製)
【0029】
(製造方法)
A:成分(1)〜(12)混合粉砕する。
B:成分(15)〜(18)を70℃で加熱し均一に溶解する。
C:Bと成分(14)を混合する。
D:AとC及び成分(13)を混合し、メッシュ中蓋付き容器に充填し、粉白粉とする。
【0030】
<評価方法>
(イ)使用前の外観の均一性:
試料調製者が肉眼にて使用前(粉末状態)の成分(b)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理顔料の分散状態を下記4段階判定基準により判定評価した。
<4段階判定基準>
(判定) : (評価)
◎(非常に良い) :均一に混ざり合っている
○(良い) :ほぼ均一に混ざっているが僅かにまだらな部分がある
△(悪い) :まだらな部分がある
×(非常に悪い) :凝集物があり、全体が全く混ざり合っていない
【0031】
(ロ)液化性
(ハ)きしみ感のなさ(のび広がりの滑らかさ)
専門パネル20名にスポンジで顔に塗布してもらい、その際の、(ロ)液化性(粉末状から液状にスムーズに変化するか否か)、(ハ)きしみ感のなさ(のび広がりの滑らかさ)について、パネル各人に下記評価基準にて5段階に評価してもらい、その評点から試料毎にパネル全員の評点の平均値を算出し、それをさらに下記4段階判定基準により判定した。
<評価基準>
(評点):(評価)
5:非常に良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:非常に悪い
<判定基準>
(判定): (評点平均値)
◎ : 4.5点を超える
○ : 3点を超えて4.5点以下
△ : 2点を超えて3点以下
× : 2点以下
【0032】
(ニ)塗膜の発色性
塗膜の発色性を塗膜の濃さ(明度)で評価した。
即ち、A4白色用紙(G70 FUJI XEROX社製)上の直径5cmの円内に各試料を0.05g均一に塗布し、室温にて5分間乾燥後の色の濃さ(明度)を色差計(日本電色社製 SPECTRO COLOR METER SE-2000)にて測定し、成分(b)同様フッ素系化合物であるパーフルオロアルキルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩で処理した粉体を用いて比較例6を作製し、発色性の比較的高い比較例6との明度(L値)の差を塗膜の発色性として、下記4段階判定基準により判定した。つまり、比較例6に比べ色の濃い(明度の低い)もの程発色性が高いと判断した。
(判定) : (比較例6との違い、明度(L値)の差)
◎(非常に良い):比較例6より色が非常に濃く、L値≦−1.5
○(良い) :比較例6より色が濃く、−1.5<L値≦−1.0以下
△(悪い) :比較例6より色がやや濃く、−1.0<L値≦−0.5以下
×(非常に悪い):比較例6とほぼ同じ色の濃さ、若しくは淡く、−0.5<L値
※但し、比較例6は対照品につき判定:「−」とする。
【0033】
(ホ)保存安定性
保存安定性として、各試料(10g)をPET樹脂ボトル(OPT−60 No.1(N)TAKEMOTO社製)に充填し、露光条件下(30℃ 8000lx 7日間保存後の状態を観察し、下記4段階判定基準により判定した。
<4段階判定基準>
(評価) (判定)
◎(非常に良い):水滴の発生が認められない
○(良い) :容器内壁に若干水滴が発生し粉が付着した
△(悪い) :容器内壁に大きな水滴が発生した
×(非常に悪い):粉末状態が保てず、離水(容器の底に水が溜まる)した
【0034】
表1から明らかなごとく、本発明の実施例1〜6は、粉末化が良好に行なわれ、使用前は均一な外観の粉末状態で、使用時、スムーズに液化し、きしみ感がなく滑らかにのび広がり、塗布膜の発色性、露光条件下での保存安定性に優れるものであった。
一方、成分(a)の疎水化シリカが配合されていない比較例1は、水を内包できないため、水と粉が混在したような凝集状態であり、全く均一性に欠けるもので、塗擦により粉末状から液状に変化することが特徴である含水粉末化粧料になっていなかった。逆に、成分(a)の疎水化シリカの量が多い比較例2では、使用時、塗擦してもスムーズに液化せず、疎水化シリカ特有のきしみ感があって、のび広がりが悪く、みずみずしさの感じられないものであった。
また、成分(b)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体の効果について検討した比較例3〜6のうち、成分(b)の量が多い比較例3は、使用時塗擦してもスムーズに液化せず、処理剤であるパーフルオロアルキルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩特有の感触が出すぎて、肌へのなじみが悪く滑らかにのび広がらず、また、みずみずしさの感じられないものであった。
成分(b)の代わりに、未処理の粉体を用いた比較例4は、撥水性に欠けるため粉末化が充分に行なわれず、凝集物やまだらな部分などのある外観の均一性に欠けるもので、スムーズな液化もしにくく、のび広がりの滑らかさにも欠け、露光条件下での保存安定性の悪いものであった。同様に、成分(b)の代わりに、ジメチルポリシロキサンで疎水化処理した粉体を用いた比較例5は、処理粉体の撥水性がまだ不充分で粉末化が充分にできない反面、凝集し易く、まだらで外観の均一性に欠けるものであった。また、塗擦時の粉から水への変化が小さいため、液化性を実感するには不充分であった。さらに、成分(b)の代わりに、撥水効果の高いパーフルオロアルキルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩で処理した粉体を用い、発色性の評価の指標とした比較例6は、外観の均一性は良く、発色性もあるものの、撥水効果が高すぎて、塗布時に却って液化しにくく、パーフルオロアルキルリン酸エステル・ジエタノールアミン塩特有の肌なじみの悪さ、きしみ感を強く感じるものであった。
さらにまた、成分(c)の水に関しては、配合量が少なく粉体の総量が多い比較例7は、使用時、液化しにくく、きしんで、のび広がりの悪いものであった。逆に成分(c)の水の量が多い比較例8は、水の量が多過ぎて水を内包して粉末状になり得ず、水が外相にも存在する全体的に湿った感じの粉状のものであった。
【0035】
(実施例7) 頬紅
(成分) (%)
1.トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン3%処理タルク *1 10
2.トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン3%処理セリサイト *1 5
3.メチルハイドロジェンポリシロキサン1.5%処理ベンガラ *6 1
4.メチルハイドロジェンポリシロキサン1.5%処理黄酸化鉄 *6 0.5
5.ジメチルシロキシル化シリカ *7 1.5
6.トリメチルシロキシル化シリカ *4 2.5
7.パラフィンワックス 0.5
8.スクワラン 3
9.1,3−ブチレングリコール 1.5
10.精製水 74.5
*6(メチルハイドロジェンポリシロキサン処理)
イソプロピルアルコールに各粉体及びジメチルポリシロキサン(シリコン KF−99P(信越化学工業社製))を加え(処理粉体全量中1.5%)、120℃で2時間焼付け処理を行った後、粉砕して得た。
*7:AEROSIL R−972(日本アエロジル社製)
(製造方法)
A:成分1〜4を混合粉砕する。
B:成分7と8を90℃で加熱溶解後、Aと混合攪拌する。
C:Bに成分5と6を混合する。
D:Cに成分9と10を混合攪拌し、容器に充填し頬紅とする。
【0036】
実施例7の頬紅について、上記実施例1〜6と同様の方法で評価を行った結果、実施例7は使用前の外観の均一性に優れ、使用時、きしみ感のない滑らかで自然なのび広がりで、発色性、保存安定性に優れた頬紅であった。
【0037】
(実施例8) ファンデーション
(成分) (%)
1.トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン3%処理チタン *1 5
2.メチルハイドロジェンポリシロキサン1.5%ベンガラ *6 3
3.ポリメタクリル酸メチル末 5
4.トリメチルシロキシル化シリカ *4 5
5.寒天末 *5 1.5
6.ローカストビーンガム・白糖混合物 *8 0.1
7.1,3−ブチレングリコール 10
8.精製水 70.4
*8:GENU GUM TYPE RL−200J(CPケルコ社)
(製造方法)
A:成分1〜3を混合粉砕する。
B:成分4をAに加え混合攪拌する。
C:成分5〜8を70℃で加熱して混合溶解する。
D:BにCを混合攪拌し、容器に充填し、ファンデーションとする。
【0038】
実施例8のファンデーションについて、上記実施例1〜6と同様の方法で評価を行った結果、実施例8は使用前の外観の均一性に優れ、使用時、液化し易く、きしみ感のない滑らかなのび広がりで、塗膜の発色性、保存安定性に優れたファンデーションであった。
【0039】
(実施例9) アイカラー
(成分) (%)
1.トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン3%処理セリサイト *1 1
2.メチルハイドロジェンポリシロキサン1.5%処理ベンガラ *6 1
3.メチルハイドロジェンポリシロキサン1.5%処理黄酸化鉄 *6 2
4.トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン3%処理雲母チタン *1 8
5.架橋型ジメチルポリシロキサン重合物 *9 1
6.ジメチルシロキシル化シリカ *7 2
7.寒天末 *5 1
8.カラギーナン *10 0.2
9.グリセリン 3
10.ジプロピレングリコール 10
11.精製水 70.8
*9:KSP−101(信越化学工業社製)
*10:カラギーナンJ(旭東化学産業社製)
(製造方法)
A:成分1〜4を混合粉砕する。
B:成分5〜6をAに加え、均一に混合攪拌する。
C:成分7〜11を70℃で加熱溶解する。
D:BにCを混合攪拌し、容器に充填し、アイカラーとする。
【0040】
実施例9のアイカラーについて、上記実施例1〜6と同様の方法で評価を行った結果、実施例9は使用前の外観の均一性に優れ、使用時、良好に液化し、きしみ感がなく滑らかにのび広がり、塗膜の発色性に優れ、保存安定性も良好なアイカラーであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)表面積80m/g以上の疎水化シリカ 0.1〜7質量%
(b)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体 1〜49.9質量%
(c)水 50〜90質量%
を配合し、塗擦により液化することを特徴とする含水粉末メイクアップ化粧料。
【請求項2】
更に成分(d)として、水ゲル化剤を配合することを特徴とする請求項1記載の含水粉末メイクアップ化粧料。

【公開番号】特開2010−95501(P2010−95501A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270102(P2008−270102)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】