説明

含硫アミノ酸の製造方法

【課題】取り扱いに注意を要するシアン化水素やアジ化ナトリウム等を原料として用いることなく、含硫アミノ酸を製造できる新たな方法が求められていた。
【解決手段】銅と水との存在下に、2位に含硫黄炭化水素基を有する2−アミノエタノール化合物(但し、該含硫黄炭化水素基の炭素数は1〜24である。)を酸化する工程を有する含硫アミノ酸の製造方法。前記工程は、さらにアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の典型金属化合物の存在下に、前記2−アミノエタノール化合物を酸化する工程であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含硫アミノ酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メチオニンやS−アルキルシステイン等の含硫アミノ酸は、全ての生物に普遍的に存在し、多くの重要な生物反応に有用な成分である。特に、メチオニンは必須アミノ酸であり、飼料添加剤としても用いられる重要な化合物である。
【0003】
含硫アミノ酸の製造方法として、例えば非特許文献1には、アクロレインにメタンチオールを付加させて得られる3−メチルチオプロピオンアルデヒドとシアン化水素とを反応させて2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルを得、これを炭酸アンモニウムと反応させて置換ヒダントインに導いた後、置換ヒダントインをアルカリで加水分解する方法が記載されている。また、非特許文献2には、2−クロロアクリル酸メチルエステルにメタンチオールを付加させ、得られた付加体をアジ化ナトリウムと反応させた後、酸性条件下で水素添加する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】工業有機化学、東京化学同人、273〜275頁(1978年)
【非特許文献2】Chem.Ber.,第121巻,2209〜2223頁(1988年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載される方法は、取り扱いに注意を要するシアン化水素を原料として用いる必要がある。また、非特許文献2に記載される方法も、取り扱いに注意を有するアジ化ナトリウムを原料として用いる必要がある。
かかる状況下、取り扱いに注意を要するシアン化水素やアジ化ナトリウム等を原料として用いることなく、含硫アミノ酸を製造できる新たな方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討し、本発明に至った。
【0007】
即ち本発明は、以下の通りである。
〔1〕 銅と水との存在下に、2位に含硫黄炭化水素基を有する2−アミノエタノール化合物(但し、該含硫黄炭化水素基の炭素数は1〜24である。)を酸化する工程を有する含硫アミノ酸の製造方法。
〔2〕 前記工程が、さらにアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の典型金属化合物の存在下に、前記2−アミノエタノール化合物を酸化する工程である前記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 前記典型金属化合物が、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種ある前記〔2〕記載の製造方法。
〔4〕 前記含硫黄炭化水素基が、非芳香族性多重結合を有しない前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の製造方法。
〔5〕 前記2−アミノエタノール化合物が、2−アミノ−4−メチルチオ−1−ブタノールまたは2−アミノ−3−ベンジルチオ―1−プロパノールである前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の製造方法
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、取り扱いに注意を要するシアン化水素やアジ化ナトリウム等を原料として用いることなく、含硫アミノ酸を製造できる新たな方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
2位に含硫黄炭化水素基を有する2−アミノエタノール化合物(以下、アルコール化合物と記すことがある。)において、含硫黄炭化水素基は、硫黄原子と炭素原子と水素原子とからなる基を意味する。ここで、該含硫黄炭化水素基に含まれる水素原子は、後述する酸化反応に不活性な、任意の基で置換されていてもよい。
含硫黄炭化水素基は、その炭素数が1〜24であれば制限されず、多重結合を有しない飽和の含硫黄炭化水素基であってもよいし、二重結合および/または三重結合を有する不飽和の含硫黄炭化水素基であってもよい。もちろん、不飽和の含硫黄炭化水素基には、ベンゼン環等の芳香族同素環および/またはチオフェン環等の芳香族複素環が含まれていてもよい。
【0010】
飽和の含硫黄炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。以下、直鎖状または分岐鎖状である飽和の含硫黄炭化水素基を、飽和鎖式含硫黄炭化水素基と記すことがある。また、環状である飽和の含硫黄炭化水素基を、飽和環式含硫黄炭化水素基と記すことがある。
【0011】
飽和鎖式含硫黄炭化水素基としては、例えば、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、イソプロピルチオメチル基、tert−ブチルチオメチル基、1−(メチルチオ)エチル基、2−(メチルチオ)エチル基、1−(エチルチオ)エチル基、2−(エチルチオ)エチル基、1−(プロピルチオ)エチル基、2−(プロピルチオ)エチル基、2−(イソプロピルチオ)エチル基、2−(tert−ブチルチオ)エチル基、1−(メチルチオ)プロピル基、2−(メチルチオ)プロピル基、3−(メチルチオ)プロピル基、3−(エチルチオ)プロピル基、3−(プロピルチオ)プロピル基、3−(イソプロピルチオ)プロピル基および2,3−(ジメチルチオ)プロピル基が挙げられる。
【0012】
飽和環式含硫黄炭化水素基としては、例えば、シクロプロピルチオメチル基、シクロブチルチオメチル基、シクロペンチルチオメチル基、シクロヘキシルチオメチル基、2−(メチルチオ)シクロプロピル基、2−(メチルチオ)シクロブチル基、2−(メチルチオ)シクロペンチル基、2−(メチルチオ)シクロヘキシル基、4−(メチルチオ)シクロヘキシル基、2−メチル−4−(メチルチオ)シクロヘキシル基、2,4−(ジメチルチオ)シクロヘキシル基、2−チアシクロヘキシル基および4−チアシクロヘキシル基が挙げられる。
【0013】
不飽和の含硫黄炭化水素基としては、例えば、ビニルチオメチル基、1−(ビニルチオ)エチル基、2−(ビニルチオ)エチル基、4−メチルチオ−1−ブテニル基および4−メチルチオ−2−ブテニル基等の非芳香族性多重結合を有する不飽和の含硫黄炭化水素基、2−メチルチオフェニル基、3−メチルチオフェニル基、4−メチルチオフェニル基、2−メチル−4−メチルチオフェニル基、2,4−(ジメチルチオ)フェニル基、フェニルチオメチル基、1−(フェニルチオ)エチル基、2−(フェニルチオ)エチル基、ベンジルチオメチル基、1−(ベンジルチオ)エチル基、2−(ベンジルチオ)エチル基、2−チエニル基、3−チエニル基および2−メチル−3−チエニル基等の非芳香族性多重結合を有しない不飽和の含硫黄炭化水素基が挙げられる。
【0014】
酸化反応に不活性な基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基およびヘキシルオキシ基等の炭素数1〜12のアルキルオキシ基;ベンジル基等の炭素数7〜12のアラルキルオキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基およびシクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基および4−フェニルフェノキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基;トリフルオロメトキシ基およびペンタフルオロエトキシ基等の炭素数1〜6のペルフルオロアルキルオキシ基;
【0015】
アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基およびベンジルオキシカルボニルアミノ基等の置換もしくは無置換のアミノ基(置換アミノ基の炭素数は例えば1〜12である。);アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基およびベンゾイル基等の炭素数2〜12のアシル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基およびベンゾイルオキシ基等の炭素数2〜12のアシルオキシ基;並びにフッ素原子および塩素原子等のハロゲン原子が挙げられる。ここで、炭素数6〜12のアリールオキシ基および炭素数7〜12のアラルキルオキシ基は、例えば、さらに、炭素数1〜12のアルキルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を有していてもよい。
【0016】
含硫黄炭化水素基は、非芳香族性多重結合を有しないものであることが好ましく、かかる含硫黄炭化水素基としては、例えば、飽和の含硫黄炭化水素基および非芳香族性多重結合を有しない不飽和の含硫黄炭化水素基が挙げられる。含硫黄炭化水素基は、2−(メチルチオ)エチル基またはベンジルチオメチル基であることがさらに好ましい。
【0017】
アルコール化合物としては、具体的には例えば、2−アミノ−3−メチルチオ−1−プロパノール、2−アミノ−3−tert−ブチルチオ−1−プロパノール、2−アミノ−3−ベンジルチオ−1−プロパノール、2−アミノ−3−エチルチオ−1−プロパノール、2−アミノ−4−メチルチオ−1−ブタノール、2−アミノ−4−エチルチオ−1−ブタノール、2−アミノ−4−プロピルチオ−1−ブタノール、2−アミノ−4−ベンジルチオ−1−ブタノール、2−アミノ−5−メチルチオ−1−ペンタノール、2−アミノ−5−エチルチオ−1−ペンタノール、2−アミノ−5−プロピルチオ−1−ペンタノールおよび2−アミノ−5−ベンジルチオ−1−ペンタノールが挙げられる。
これらアルコール化合物は、市販品であってもよいし、例えば、含硫黄炭化水素基を有するエチレンオキシドとアンモニアとを反応させる方法(例えば、Izvestiya Akademii Nauk SSSR,Seriya Khimicheskaya,1985年,第9巻,2090−2094頁参照。)等の任意の公知の方法に準じて製造したものであってもよい。
【0018】
アルコール化合物を、銅(以下、銅触媒と記すことがある。)と水との存在下に、酸化する。以下、アルコール化合物を銅触媒と水との存在下に酸化する反応を、酸化反応または本反応と記すことがある。本反応により、アルコール化合物は含硫アミノ酸に変換される。
【0019】
銅触媒は、銅金属が担体に担持されたもの(以下、担持触媒と記すことがある。)であってもよいし、担持されていないものであってもよい。また、銅を含む合金を、酸またはアルカリで処理したもの(以下、展開触媒と記すことがある。)であってもよい。さらに、銅の硝酸塩、銅の硫酸塩、銅のギ酸塩、銅の酢酸塩、銅の炭酸塩、銅のハロゲン化物、銅の水酸化物および銅の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の銅塩を、ヒドラジンや水素等の還元剤で還元して得られるものであってもよい。
担体としては、例えば、活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト、珪藻土および酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。かかる担体の表面積は、反応活性を向上させる点で広い方が好ましい。担持触媒は、市販品であってもよいし、例えば、銅金属または銅とアルミニウムとの合金を、上記した担体に担持させたものであってもよいし、銅の硝酸塩、銅の硫酸塩、銅のギ酸塩、銅の酢酸塩、銅の炭酸塩、銅のハロゲン化物、銅の水酸化物および銅の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の銅塩を、上記した担体に共沈法もしくは含浸法により担持させた後、焼成もしくは水素により還元されたものであってもよい。
銅触媒は、好ましくは展開触媒または担持触媒であり、より好ましくは展開触媒である。
【0020】
銅触媒の使用量は、その使用形態により異なるが、アルコール化合物に対して、例えば0.1〜100重量%の範囲内であり、アルコール化合物1モルに対して、好ましくは0.001モル以上である。銅触媒の使用量は、アルコール化合物1モルに対して、0.5モル以下であることが経済性の点で好ましい。
【0021】
水の使用量は、アルコール化合物1モルに対して、好ましくは1モル以上である。水の使用量の上限は制限されず、例えばアルコール化合物1モルに対して200モルである。。
【0022】
本反応は、さらにアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の典型金属化合物の存在下に行われることが好ましい。
【0023】
アルカリ金属化合物としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウムおよび炭酸水素リチウム等のアルカリ金属炭酸塩並びに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。
アルカリ土類金属化合物としては、例えば、炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩並びに水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。
典型金属化合物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、より好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、さらに好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0024】
典型金属化合物の使用量は、アルコール化合物1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、その上限は制限されない。典型金属化合物の使用量は、アルコール化合物1モルに対して、2モル以下であることが実用的である。
【0025】
本反応は、さらに有機溶媒の存在下に行うこともできる。
有機溶媒としては、本反応を阻害しないものであれば制限されず、例えば、酢酸エチル等のエステル溶媒並びにアセトニトリルおよびプロピオニトリル等のニトリル溶媒が挙げられる。
有機溶媒の使用量は制限されず、アルコール化合物1重量部に対して、100重量部以下とすることが実用的である。
【0026】
本反応において、反応試剤の混合順序は制限されない。好ましい実施態様としては、例えば、アルコール化合物と典型金属化合物と水とを混合し、得られる混合物に銅触媒を添加する方法が挙げられる。混合は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0027】
本反応は、減圧下、常圧下および加圧下のいずれの条件下でも行われ、好ましくは、常圧下または加圧下で行われる。
【0028】
本反応の反応温度は、銅触媒の種類および使用量等により異なるが、好ましくは0〜200℃の範囲、より好ましくは50〜180℃の範囲から選択される。反応温度が0℃よりも低い場合は、酸化反応の速度が低くなる傾向にあり、反応温度が200℃よりも高い場合は、酸化反応の選択率が低下する傾向にある。
【0029】
本反応の進行度合いは、例えばガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の分析手段により確認することができる。
【0030】
反応終了後、例えば、得られる反応混合物を濾過することにより、反応混合物から銅触媒を取り除いた後、必要に応じて水に非混和性の溶媒により洗浄し、硫酸、塩酸、炭酸などの鉱酸で中和処理を行い、濃縮処理、冷却処理等を行うことにより、含硫アミノ酸を取り出すことができる。含硫アミノ酸が親油性を示す化合物である場合は、得られる反応混合物を濾過することにより、反応混合物から銅触媒を取り除いた後、水に非混和性の溶媒と混合し、抽出処理、中和処理、濃縮処理、冷却処理等を行うことにより含硫アミノ酸を取り出すことができる。水に非混和性の溶媒としては、例えば、酢酸エチル等のエステル溶媒およびメチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒が挙げられ、その使用量は制限されない。
取り出した含硫アミノ酸は、蒸留、カラムクロマトグラフィー、結晶化などの精製手段により、精製してもよい。
【0031】
かくして得られる含硫アミノ酸は、2位に含硫黄炭化水素基を有するα−アミノ酸である。かかる含硫アミノ酸としては、例えば、2−アミノ−3−(メチルチオ)プロピオン酸、2−アミノ−3−(tert−ブチルチオ)プロピオン酸、2−アミノ−3−(ベンジルチオ)プロピオン酸、2−アミノ−3−(エチルチオ)プロピオン酸、2−アミノ−4−(メチルチオ)酪酸(即ちメチオニン)、2−アミノ−4−(エチルチオ)酪酸、2−アミノ−4−(プロピルチオ)酪酸、2−アミノ−4−(ベンジルチオ)酪酸、2−アミノ−5−(メチルチオ)ペンタン酸、2−アミノ−3−(エチルチオ)ペンタン酸、2−アミノ−3−(プロピルチオ)ペンタン酸および2−アミノ−3−(ベンジルチオ)ペンタン酸が挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0033】
<実施例1>
磁気回転子を付した50mL耐圧反応管に、2−アミノ−4−メチルチオ―1−ブタノール200mg、水酸化ナトリウム90mgおよび水2gを仕込み、攪拌した。この混合物に展開触媒としてスポンジ銅(ラネー(登録商標)タイプ、Strem Chemicals社品)40mgを加えた。反応管内を窒素で置換した後、得られた混合物を140℃で8時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却した反応混合物を濾過することにより、反応混合物からスポンジ銅を除去した。得られた濾液に0.1規定硫酸を加えて中和した後、水を留去することにより、2−アミノ−4−(メチルチオ)酪酸を得た。
【0034】
収率の決定:
得られた2−アミノ−4−(メチルチオ)酪酸にメタノール5gを加え、さらにトリメチルシリルジアゾメタンの10%へキサン溶液を加えて、2−アミノ−4−(メチルチオ)酪酸メチルを得た。得られた2−アミノ−4−(メチルチオ)酪酸メチルを含むメタノール溶液を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、2−アミノ−4−メチルチオ―1−ブタノールから2−アミノ−4−(メチルチオ)酪酸メチルまでの収率を決定したところ、収率は37%であった。即ち、2−アミノ−4−(メチルチオ)酪酸は、2−アミノ−4−メチルチオ−1−ブタノールから37%以上の収率で得られていた。原料として用いた2−アミノ−4−メチルチオ−1−ブタノールは、用いた量の49%が回収された。
【0035】
<実施例2>
磁気回転子を付した50mL耐圧反応管に、2−アミノ−4−メチルチオ―1−ブタノール200mg、水酸化ナトリウム120mgおよび水2gを仕込み、攪拌した。この混合物に展開触媒としてスポンジ銅(ラネー(登録商標)タイプ、Strem Chemicals社品)50mgを加えた。反応管内を窒素で置換した後、得られた混合物を140℃で8時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却した反応混合物を濾過することにより、反応混合物からスポンジ銅を除去した。得られた濾液に、酢酸エチル5gを加えて、油水分離し、親油性物を除去した。水層に、ドライアイス(CO)を5g加えて炭酸を生じさせ、攪拌すると、固体が析出した。析出固体を、濾過・乾燥し、白色粉末130mgを得た。この粉末の、2−アミノ−4−(メチルチオ)酪酸含量を、液体クロマトグラフィー(修正面積百分率法)にて分析したところ、64%であった。収率38%
【0036】
<実施例3>
磁気回転子を付した50mL耐圧反応管に、2−アミノ−3−ベンジルチオ―1−プロパノール200mg、水酸化ナトリウム80mgおよび水2gを仕込み、攪拌した。この混合物に展開触媒としてスポンジ銅(ラネー(登録商標)タイプ、Strem Chemicals社品)40mgを加えた。反応管内を窒素で置換した後、得られた混合物を140℃で8時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却した反応混合物を濾過することにより、反応混合物からスポンジ銅を除去した。得られた濾液に0.1規定硫酸を加えて中和した後、水を留去することにより、2−アミノ−3−(ベンジルチオ)プロピオン酸を得た。
【0037】
収率の決定:
得られた2−アミノ−3−(ベンジルチオ)プロピオン酸にメタノール5gを加え、さらにトリメチルシリルジアゾメタンの10%へキサン溶液を加えて、2−アミノ−3−(ベンジルチオ)プロピオン酸メチルを得た。得られた2−アミノ−3−(ベンジルチオ)プロピオン酸メチルを含むメタノール溶液を、ガスクロマトグラフィー内部標準法により分析し、2−アミノ−3−ベンジルチオ―1−プロパノールから2−アミノ−3−(ベンジルメチルチオ)プロプオン酸メチルまでの収率を決定したところ、収率は45%であった。即ち、2−アミノ−3−(ベンジルチオ)プロピオン酸は、2−アミノ−3−ベンジルチオ−1−プロパノールから45%以上の収率で得られていた。原料として用いた2−アミノ−3−ベンジルチオ−1−プロパノールは、用いた量の45%が回収された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、メチオニン等の含硫アミノ酸の製造方法として産業上利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅と水との存在下に、2位に含硫黄炭化水素基を有する2−アミノエタノール化合物(但し、該含硫黄炭化水素基の炭素数は1〜24である。)を酸化する工程を有する含硫アミノ酸の製造方法。
【請求項2】
前記工程が、さらにアルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の典型金属化合物の存在下に、前記2−アミノエタノール化合物を酸化する工程である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記典型金属化合物が、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記含硫黄炭化水素基が、非芳香族性多重結合を有しない請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
前記2−アミノエタノール化合物が、2−アミノ−4−メチルチオ−1−ブタノールまたは2−アミノ−3−ベンジルチオ―1−プロパノールである請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−231103(P2011−231103A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71889(P2011−71889)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】