説明

含窒素アクリル酸エステル誘導体の製造方法

【課題】新規な含窒素アクリル酸エステル誘導体の製造方法、さらには、該含窒素アクリル酸エステル誘導体の原料となるアルコール誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】スルホンアミド誘導体とカルボン酸化合物を反応させることによりスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体を得、得られたスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体を、塩基性条件下または酸性条件下に水および/または炭素数1〜4のアルコールと反応させることによりアルコール誘導体を得、得られたアルコール誘導体をアクリル酸誘導体と反応させることによる、下記一般式


(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、明細書に記載の通りである。)で示される含窒素アクリル酸エステル誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含窒素アクリル酸エステル誘導体の製造方法、さらには該含窒素アクリル酸エステル誘導体の原料となるアルコール誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路素子製造に代表される電子デバイス製造分野においては、デバイスの高集積化に対する要求が高まっており、そのため、微細パターン形成(微細化)のためのフォトリソグラフィー技術が必要とされている。微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来はg線やi線に代表される紫外線が用いられていたが、現在ではKrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が開始されている。また、これらエキシマレーザーより短波長のF2エキシマレーザー、電子線、EUV(極紫外線)およびX線などについても検討が行われている。
フォトレジスト材料には、これらの露光光源に対する感度および微細な寸法のパターンを再現できる解像性などのリソグラフィー特性が求められる。このような要求を満たすフォトレジスト材料として、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化するベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤とを含有する、ポジ型またはネガ型の化学増幅型レジストが用いられている。
【0003】
現在、ArFエキシマレーザーリソグラフィーなどにおいて使用されるフォトレジスト組成物のベース樹脂としては、波長193nm付近における透明性に優れることから、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有するアクリル系樹脂が主に用いられている(特許文献1参照)。
例えば、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化するベース樹脂として、アダマンチル基を有するアクリル酸エステルを構成単位として重合することにより得られる高分子化合物を用いたフォトレジスト組成物(非特許文献1および特許文献2参照)や、ラクトン環を有する構成単位を含む高分子化合物を成分とするフォトレジスト組成物(特許文献3参照)が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−241385号公報
【特許文献2】特開平9−073173号公報
【特許文献3】特開2004−046206号公報
【非特許文献1】Journal of Photopolymer Science and Technology(ジャーナル オブ フォトポリマー サイエンス アンド テクノロジー)、1996年、第9巻、第3号、p.475−487
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ArF用フォトレジスト組成物として使用される従来のアクリル系樹脂は、カルボン酸が可溶性基として使用されることからpKa4程度の高い酸性を示し、pKa10程度のフェノールが可溶性基として使用されるKrF用フォトレジスト組成物に比べてアルカリ現像液に対する溶解速度が速くなるため、微細パターン形成の際、パターンの膨潤やパターン倒れが顕著な問題となるなど、従来のフォトレジスト組成物用の高分子化合物にはさらなる改良の余地がある。
本発明はこのような状況下になされたもので、従来の問題点を解決し得るフォトレジスト組成物用高分子化合物のモノマーとして有用である新規な含窒素アクリル酸エステル誘導体の製造方法、さらには、該含窒素アクリル酸エステル誘導体の原料となるアルコール誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、スルファモイル基を有する特定のアクリル酸エステル誘導体(含窒素アクリル酸エステル誘導体)を構成単位として含む高分子化合物を用いることにより、フォトリソグラフィーにおいて優れた解像度のパターンを形成し得ることを見出し、かかる含窒素アクリル酸エステル誘導体の製造方法および該含窒素アクリル酸エステル誘導体の原料となるアルコール誘導体の製造方法を開発した。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]下記一般式(I)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数3〜15のシクロアルキル基もしくは炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、またはR1およびR2は、両者が結合して、任意の位置に酸素原子もしくは硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜5のアルキレン基、−O−または−S−を表す。また、R4およびR5は、それぞれ独立して水素原子、任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルキル基、任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数3〜15のシクロアルキル基または任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基を表す。)
で示されるスルホンアミド誘導体[以下、スルホンアミド誘導体(I)と称する。]と、一般式 R3COOH
(式中、R3は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
で示されるカルボン酸化合物[以下、単にカルボン酸化合物と称する。]を反応させることにより、下記一般式(II)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記定義の通りである。)
で示されるスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体[以下、スルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)と称する。]を得、得られたスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)を、塩基性条件下または酸性条件下に水および/または炭素数1〜4のアルコールと反応させることにより、下記一般式(III)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R1、R2、R4およびR5は、前記定義の通りである。)
で示されるアルコール誘導体[以下、アルコール誘導体(III)と称する。]を得、得られたアルコール誘導体(III)を下記一般式(IV)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R6は、水素原子または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基を表す。また、Xは、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)
で示されるアクリル酸誘導体[以下、アクリル酸誘導体(IV)と称する。]と反応させることによる、下記一般式(V)
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、前記定義の通りである。)
で示される含窒素アクリル酸エステル誘導体[以下、含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)と称する。]の製造方法、および
[2]スルホンアミド誘導体(I)とカルボン酸化合物を反応させることによりスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)を得、得られたスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)を、塩基性条件下または酸性条件下に水および/または炭素数1〜4のアルコールと反応させることによるアルコール誘導体(III)の製造方法、
を提供するものである。
なお、上記式で示されるスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)は、
【0018】
【化6】

【0019】
を意味しており、アルコール誘導体(III)は、
【0020】
【化7】

【0021】
を意味しており、また、含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)は、
【0022】
【化8】

【0023】
を意味している。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、新規な含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)の製造方法を提供できる。さらに、該含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)の有用な原料となる新規なアルコール誘導体(III)の製造方法を提供できる。
また、本発明により得られる含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)は、フォトリソグラフィーにおいて優れた解像度のパターンを形成し得る高分子化合物の構成単位の1つとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
一般式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数3〜15のシクロアルキル基もしくは炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、またはR1およびR2は、両者が結合して、任意の位置に酸素原子もしくは硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜5のアルキレン基、−O−または−S−を表す。
炭素数1〜15のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基などが挙げられ、特に炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましい。
炭素数3〜15のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、メチルシクロオクチル基などが挙げられ、特に炭素数5〜11のシクロアルキル基が好ましい。
炭素数1〜15のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、各種ペンチルオキシ基、各種ヘプチルオキシ基、各種オクチルオキシ基、各種ノニルオキシ基、各種デシルオキシ基、各種ウンデシルオキシ基、各種ドデシルオキシ基、各種トリデシルオキシ基、各種テトラデシルオキシ基、各種ペンタデシルオキシ基などが挙げられ、特に炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。
また、R1とR2の両者が結合して、任意の位置に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜5のアルキレン基としては、例えば−CH2−、−C(CH32−、−(CH22−、−(CH23−、−CH2−O−CH2−、−CH2−S−CH2−などが挙げられ、−CH2−、−(CH22−、−O−、−S−が好ましく、−CH2−がより好ましい。
【0026】
3は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
炭素数1〜5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。R3としては、水素原子が好ましい。
【0027】
4およびR5は、それぞれ独立して水素原子、任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルキル基、任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数3〜15のシクロアルキル基または任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基を表す。
4およびR5がそれぞれ独立して表す、任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、シクロペンチルオキシメチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、アダマンチルオキシメチル基、1−メトキシエチル基などが挙げられ、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数3〜15のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、メチルシクロオクチル基、2−ノルボルネニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−メチル−2−ノルボルニル基、2−エチル−ノルボルニル基、1−メチル−1−シクロペンチル基、1−エチル−1−シクロペンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基、1−エチル−1−シクロヘキシル基、3−メチルテトラヒドロピラン−3−イル基、テトラヒドロピラン−3−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−2−イル基などが挙げられ、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。
また、任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられ、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基が好ましい。
【0028】
6は、水素原子または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基を表す。フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基;モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ−tert−ブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロネオペンチル基などの炭素数1〜5のフッ化アルキル基が挙げられる。これらの中でも工業的入手の容易さなどの観点から、メチル基またはトリフルオロメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
また、Xは、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。
【0029】
本発明の含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)の製造方法は、前述の通り、
(1)スルホンアミド誘導体(I)とカルボン酸化合物を反応させることによりスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)を得る工程(以下、工程1と称する。)、
(2)該スルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)を、塩基性条件下または酸性条件下に水および/または炭素数1〜4のアルコールと反応させることによりアルコール誘導体(III)を得る工程(以下、工程2と称する。)、および
(3)該アルコール誘導体(III)をアクリル酸誘導体(IV)と反応させる工程(以下、工程3と称する。)からなる。
以下、工程1から順番に説明する。
【0030】
≪工程1≫
工程1では、以下の様に、スルホンアミド誘導体(I)と前記カルボン酸化合物を反応させる。
【0031】
【化9】

【0032】
式中のR1、R2、R3、R4およびR5は、前記説明の通りである。
なお、原料であるスルホンアミド誘導体(I)の製造方法に特に制限はないが、例えば、エチレンスルホニルクロリドとシクロペンタジエンから得られるノルボルネンスルホニルクロリドをアンモニアと反応させることにより製造できる[例えば、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティー(Journal of the American Chemical Society)、1951年、第73巻、p.3258−3260参照]。
【0033】
カルボン酸化合物の使用量は、スルホンアミド誘導体(I)1モルに対して、0.8〜30モルの範囲が好ましく、1〜20モルの範囲がより好ましく、1.1〜10モルの範囲がさらに好ましい。
【0034】
工程1は、溶媒の存在下または不存在下に実施する。溶媒としては、反応を阻害しない限り特に制限はなく、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;クロロベンゼン、フルオロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどのエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶媒を使用する場合、その使用量は、反応速度や廃溶媒量を考慮すると、スルホンアミド誘導体(I)1質量部に対して100質量部以下であるのが好ましく、50質量部以下であるのがより好ましく、10質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0035】
反応温度は、通常、20℃〜150℃の範囲が好ましい。反応速度の観点および重合などの副反応の抑制の観点から、反応温度は50℃〜120℃の範囲がより好ましい。反応圧力に特に制限はないが、常圧下で実施するのが簡便であり好ましい。
反応時間は、スルホンアミド誘導体(I)およびカルボン酸化合物の種類や使用量、さらに溶媒の有無や反応温度などによっても異なるが、通常は0.5〜48時間の範囲が好ましく、1〜24時間の範囲がより好ましい。
【0036】
反応操作に特に制限はなく、スルホンアミド誘導体(I)、カルボン酸化合物および溶媒の投入方法や順序は任意でよい。具体的な反応操作としては、例えば、回分式反応器にスルホンアミド誘導体(I)、カルボン酸化合物および所望により溶媒を全て仕込んで攪拌する方法が挙げられる。
【0037】
このような方法などで得られた反応混合物からのスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)の分離・精製方法に特に制限は無く、有機化合物の分離・精製に一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、反応終了後、得られた反応混合物を単蒸留することにより、スルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)を分離取得でき、さらに必要に応じて、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの精製手段に付すことにより、純度の高いスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)を得ることができる。また、精製手段を繰り返し行なうことにより、純度の高い単一のジアステレオマーを得ることもできる。
【0038】
以上の様にして得られるスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)は新規化合物である。該スルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)の具体例を以下に挙げるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化10】

【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
【化13】

【0043】
【化14】

【0044】
【化15】

【0045】
これらの中でも、一般式(II)において、R1とR2が、両者が結合して−CH2−、−(CH22−、−O−、−S−のいずれかとなっている化合物が好ましい。
【0046】
≪工程2≫
工程2では、以下の様に、工程1で得られた新規なスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)を、塩基性条件下または酸性条件下に水および/または炭素数1〜4のアルコールと反応させることにより、新規なアルコール誘導体(III)を製造することができる。
【0047】
【化16】

【0048】
式中のR1、R2、R3、R4およびR5は、前記説明の通りである。
炭素数1〜4のアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノールが好ましい。
【0049】
塩基性条件下では塩基性物質を使用し、該塩基性物質としては、例えば水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン;ピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物などが挙げられる。塩基性条件下に実施する場合、塩基性物質の使用量は、スルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)に対して0.8〜2倍モルであることが好ましく、1〜1.5倍モルであることがより好ましい。
【0050】
酸性条件下では酸性物質を使用し、該酸性物質としては、例えば硫酸、塩酸などの無機酸;メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。酸性条件下に実施する場合、酸性物質の使用量は、スルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)に対して0.01〜2倍モルであることが好ましく、0.01〜1倍モルであることがより好ましい。
【0051】
工程2は、溶媒の存在下に実施することが好ましい。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限は無く、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;クロロベンゼン、フルオロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどのエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素などが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素が好ましく、トルエンがさらに好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶媒を使用する場合、その使用量は、反応速度や廃溶媒量を考慮すると、スルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)1質量部に対して100質量部以下であるのが好ましく、50質量部以下であるのがより好ましく、30質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0052】
工程2としては、塩基性条件下にスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)を水および/または炭素数1〜4のアルコールと反応させる方法が好ましく、塩基性条件下にスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)を水と反応させる方法がより好ましい。
【0053】
反応温度は、通常、20〜100℃の範囲が好ましく、30〜70℃がより好ましい。反応圧力に特に制限はないが、常圧下で実施するのが簡便であり好ましい。
反応時間は、スルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)および塩基性物質の種類や使用量、さらに溶媒の有無や反応温度などによっても異なるが、通常は0.5〜48時間の範囲が好ましく、1〜24時間の範囲がより好ましい。
【0054】
反応終了後、反応混合液からのアルコール誘導体(III)の分離・精製は、有機化合物の分離・精製に一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、塩基性条件下における反応の終了後、得られた反応混合物を前記酸性物質やその水溶液で処理してから、有機層を減圧下に濃縮することにより、アルコール誘導体(III)を分離できる。また、酸性条件下における反応の終了後であれば、得られた反応混合液を適宜水で洗浄し、有機層を減圧下に濃縮することにより、アルコール誘導体(III)を分離できる。いずれの方法でも、さらに必要に応じて、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの精製手段に付すことにより、純度の高いアルコール誘導体(III)を得ることができる。また、精製手段を繰り返し行なうことにより、純度の高い単一のジアステレオマーを得ることもできる。
【0055】
反応操作に特に制限は無いが、例えば、回分式反応器にスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II)、水および/または炭素数1〜4のアルコール、並びに塩基性物質または酸性物質を仕込み、攪拌することにより実施できる。
【0056】
このようにして得られるアルコール誘導体(III)は新規化合物である。該アルコール誘導体(III)の具体例を以下に挙げるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
これらの中でも、一般式(III)において、R1とR2が、両者が結合して−CH2−、−(CH22−、−O−、−S−のいずれかとなっている化合物が好ましい。
【0061】
≪工程3≫
工程2にて得られた新規なアルコール誘導体(III)から、フォトレジスト組成物用高分子化合物の有用な材料である含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)を製造することができる。かかる含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)は、アルコール誘導体(III)とアクリル酸誘導体(IV)を反応させる(以下の化学反応式参照。)ことにより製造できる。以下、この方法について説明する。
【0062】
【化20】

【0063】
式中のR1、R2、R4、R5、R6およびXは前記説明の通りである。
工程3としては、例えば次の<a>および<b>の2通りの方法を利用できる。
<a>アクリル酸誘導体(IV)においてXが塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子の場合[このアクリル酸誘導体をアクリル酸ハライド誘導体(IV')と称する。]、工程2で得たアルコール誘導体(III)とアクリル酸ハライド誘導体(IV')を塩基の存在下に反応させる方法(以下、工程3−aと称する。)。
<b>アクリル酸誘導体(IV)においてXがヒドロキシ基の場合[このアクリル酸誘導体をアクリル酸誘導体(IV'')と称する。]、工程2で得たアルコール誘導体(III)とアクリル酸誘導体(IV'')を酸の存在下反応させる方法(以下、工程3−bと称する。)。
【0064】
以下、まず、工程3−aについて説明する。
工程3−aで使用するアクリル酸ハライド誘導体(IV')としては、例えばアクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、2−トリフルオロメチルアクリル酸クロリドなどが好ましく挙げられる。アクリル酸ハライド誘導体(IV')の使用量は、アルコール誘導体(III)1モルに対して0.8〜5モルの範囲であることが好ましく、経済性および後処理の容易さの観点から0.8〜3モルの範囲であることがより好ましい。
【0065】
塩基としては、例えば水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン;ピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物などが挙げられる。塩基の使用量は、アルコール誘導体(III)1モルに対して0.8〜5モルの範囲であることが好ましく、経済性および後処理の容易さの観点から0.8〜3モルの範囲であることがより好ましい。
【0066】
工程3−aは、重合禁止剤の存在下または非存在下に実施できる。重合禁止剤は特に限定されず、例えばヒドロキノン、メトキシフェノール、ベンゾキノン、トルキノン、p−tert−ブチルカテコールなどのキノン系化合物;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノールなどのアルキルフェノール系化合物;フェノチアジンなどのアミン系化合物などが挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。重合禁止剤を使用する場合、その使用量は、反応混合物全体に対して5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0067】
工程3−aは、溶媒の存在下または非存在下で実施できる。溶媒としては、反応を阻害しなければ特に制限はないが、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、シメンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテルが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量は、アルコール誘導体(III)1質量部に対して0.1〜10質量部の範囲であることが好ましく、経済性および後処理の容易さの観点から0.1〜5質量部の範囲であることがより好ましい。
【0068】
反応温度は、−50〜100℃の範囲であることが好ましく、−30〜90℃であることがより好ましい。反応圧力に特に制限はないが、常圧下に実施するのが簡便で好ましい。反応時間は、反応温度にもよるが、通常は0.5時間〜48時間の範囲が好ましく、1時間〜24時間の範囲がより好ましい。
【0069】
工程3−aは、水またはアルコールの添加により、反応を停止させることができる。該アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられる。水およびアルコールの混合物を使用することも可能である。水および/または該アルコールの使用量は、アルコール誘導体(III)に対して過剰のアクリル酸ハライド誘導体(IV')1モルに対して1モル以上の量を用いればよい。使用量が十分であれば、過剰のアクリル酸ハライド誘導体(IV')を完全に分解することができ、副生成物を生じる恐れが低下する。
【0070】
工程3−aにおける反応操作方法に特に制限はない。また、反応試剤の投入方法・順序にも特に制限はなく、任意の方法および任意の順序で添加することができる。具体的には、例えば、回分式反応器にアルコール誘導体(III)、塩基並びに必要に応じて重合禁止剤および溶媒を仕込み、この混合液に所定温度でアクリル酸ハライド誘導体(IV')を添加する方法が好ましく挙げられる。
【0071】
工程3−aにより得られた反応混合物からの含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)の分離・精製は、有機化合物の分離・精製に一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、反応終了後、反応混合物を中和した後、酢酸エチルなどの有機溶剤で抽出し、得られた抽出液を濃縮することにより、含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)を分離することができる。必要に応じ、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製することにより、純度の高い含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)を得ることができる。さらに、精製を繰り返すことにより、純度の高い単一ジアステレオマーを得ることもできる。
【0072】
次に、工程3−bについて説明する。
工程3−bで使用するアクリル酸誘導体(IV'')としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、2−トリフルオロメチルアクリル酸などが好ましく挙げられる。アクリル酸誘導体(IV'')の使用量は、アルコール誘導体(III)1モルに対して0.8〜10モルの範囲であることが好ましく、経済性および後処理の容易さの観点から0.8〜5モルの範囲であることがより好ましい。
【0073】
工程3−bで使用する酸としては、硫酸、塩酸などの無機酸;メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。酸の使用量は、アルコール誘導体(III)1モルに対して0.01〜5モルの範囲であることが好ましく、原料や生成物の安定性、経済性および後処理の容易さの観点から0.05〜2モルの範囲であることがより好ましい。
【0074】
工程3−bは、重合禁止剤の存在下または非存在下に実施できる。重合禁止剤は特に限定されず、例えばヒドロキノン、メトキシフェノール、ベンゾキノン、トルキノン、p−tert−ブチルカテコールなどのキノン系化合物;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノールなどのアルキルフェノール系化合物;フェノチアジンなどのアミン系化合物などが挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。重合禁止剤を使用する場合、その使用量は、反応混合物全体に対して5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0075】
工程3−bは、溶媒の存在下または非存在下に実施できる。溶媒としては、反応を阻害しなければ特に制限はないが、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、シメンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテルが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量は、アルコール誘導体(III)1質量部に対して0.1〜50質量部の範囲であることが好ましく、経済性および後処理の容易さの観点から0.1〜10質量部の範囲であることがより好ましい。
【0076】
反応温度は、30〜200℃の範囲であることが好ましく、50〜150℃の範囲であることがより好ましく、60〜100℃の範囲であることが特に好ましい。この範囲であれば、反応の進行が極端に遅くなることがなく、同時に生成物の安定性が高いためである。反応圧力に特に制限はないが、常圧または減圧下で行うのが好ましい。反応時間は、反応温度にもよるが、通常は0.5時間〜48時間の範囲が好ましく、1時間〜24時間の範囲がより好ましい。
【0077】
工程3−bにおける反応操作方法に特に制限はない。また、反応試剤の投入方法・順序にも特に制限はなく、任意の方法・順序で添加することができる。具体的には、例えば、回分式反応器にアルコール誘導体(III)、酸、アクリル酸誘導体(IV'')、必要に応じて重合禁止剤及び溶媒を仕込み、所定温度で共沸脱水させながら反応を行なう方法が好ましく挙げられる。
【0078】
工程3−bにより得られた反応混合物からの含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)の分離・精製は、有機化合物の分離・精製に一般的に用いられる方法により行うことができる。例えば、反応終了後、反応混合物を中和した後、酢酸エチルなどの有機溶剤で抽出し、得られた抽出液を濃縮することにより、含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)を分離することができる。また、必要に応じて、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製することにより、純度の高い含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)を得ることができる。さらに、精製を繰り返すことにより、純度の高い単一ジアステレオマーを得ることもできる。
なお、得られる含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)は新規化合物であり、単一のジアステレオマーであっても、ジアステレオマー混合物であっても、フォトレジスト組成物用高分子化合物のモノマーとして好適に使用することができる。
以下に、本発明により得られる含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)の具体例を挙げるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0079】
【化21】

【0080】
【化22】

【0081】
【化23】

【0082】
【化24】

【0083】
【化25】

【0084】
【化26】

【0085】
≪フォトレジスト組成物≫
前述の通り、現在、フォトレジスト材料(フォトレジスト組成物)としては、ポジ型またはネガ型の化学増幅型レジストが用いられている。
ポジ型の化学増幅型レジストは、ベース樹脂として、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂と酸発生剤とを含有しており、レジストパターン形成時に、露光により酸発生剤から酸が発生すると、露光部がアルカリ現像液に対して可溶性へと変化する。一方、未露光部はアルカリ不溶性のまま変化しないので、アルカリ現像を行うことによりレジストパターンが形成される。
ネガ型の化学増幅型レジストは、ベース樹脂として、アルカリ現像液に対して可溶性の樹脂と酸発生剤および架橋剤を含有しており、レジストパターン形成時に、露光により酸発生剤から発生した酸の作用により、アルカリ現像液に対して可溶性の樹脂と架橋剤との間で架橋が生じて、アルカリ現像液に対して不溶性へ変化する。一方、未露光部はアルカリ現像液に対して可溶性のまま変化しないので、アルカリ現像を行うことによりレジストパターンが形成される。
通常、ポジ型フォトレジスト組成物は、高分子化合物[成分(A)]と、放射線の照射により酸を発生する酸発生剤[成分(B)]とを含有する。ネガ型フォトレジスト組成物の場合には、さらに架橋剤[成分(C)]を含有する。さらに、所望により任意成分[成分(D)]を添加することもできる。また、かかる成分を有機溶剤[成分(S)]に溶解させて製造することができる。
以下、各成分(A)〜(D)および(S)について簡単に説明する。
【0086】
成分(A)としては、前記含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)を構成単位に含む樹脂成分が有用である。
成分(B)としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として公知のものを使用することができる。フォトレジスト組成物における成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対し、0.5〜30質量部の範囲が好ましく、1〜10質量部の範囲がより好ましい。
成分(C)は、特に限定されず、これまでに知られている化学増幅型のネガ型レジスト組成物に用いられている架橋剤の中から任意に選択して用いることができる。成分(C)の含有量は、成分(A)100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、3〜30質量部がより好ましく、3〜15質量部がさらに好ましく、5〜10質量部が特に好ましい。
成分(D)としては、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるための含窒素有機化合物;感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などの向上のための有機カルボン酸、有機カルボン酸誘導体、リンのオキソ酸、リンのオキソ酸誘導体;レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂;塗布性を向上させるための界面活性剤;溶解抑制剤;可塑剤;安定剤;着色剤;ハレーション防止剤;染料などが挙げられる。
成分(S)としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを選択し、1種を単独で、または2種以上を併用することができる。成分(S)の使用量に特に制限はなく、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはフォトレジスト組成物の固形分濃度が2〜20質量%の範囲が好ましく、3〜15質量%の範囲がより好ましい。
【0087】
なお、レジストパターン形成方法に特に制限は無く、公知の方法を利用できる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0089】
<合成例1>5−ノルボルネン−2−スルホンアミド[スルホンアミド誘導体(I)]の合成
2つの滴下ロート、攪拌機および温度計を取り付けた内容積500mlの四つ口フラスコに、フェノチアジン0.05g、テトラヒドロフラン185gおよびシクロペンタジエン8.7g(131.6mmol)を仕込み、5℃に冷却した。次いで、2−クロロエタンスルホニルクロリド20.0g(120.1mmol)およびトリエチルアミン14.6g(144.3mmol)を2つの滴下ロートに別々に仕込み、3時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、5℃にて3時間攪拌した後、反応混合物をろ過した。
滴下ロート、攪拌機および温度計を取り付けた別の内容積500mlの四つ口フラスコに、25質量%−アンモニア水41.2g(アンモニア571.7mmol相当)を仕込み、5℃に冷却した。次いで、前記ろ過により得られたろ液246.4gを滴下ロートに仕込み、3時間かけて滴下した。滴下終了後、5℃にて5時間攪拌した。上層を減圧下に濃縮した後、酢酸エチル200mlおよび水50mlを添加し、25℃にて30分間攪拌した。下層を抜き取り、残った上層にジイソプロピルエーテル250mlを添加し、生じた結晶をろ過し、以下の構造をした5−ノルボルネン−2−スルホンアミド13.0g(75.1mmol;収率62.5%)を得た。
【化27】

【0090】
5−ノルボルネン−2−スルホンアミドの1H−NMR測定結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:6.32(1H,br)、6.13(1H,br)、4.67(2H,br)、3.76(1H,m)、3.35(1H,s)、3.05(1H,s)、2.21(1H,m)、1.59(1H,m),1.47−1.35(2H,m)
【0091】
<実施例1>スルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II−61)の製造
攪拌機および温度計を取り付けた内容積300mlの三つ口フラスコに、99質量%−ギ酸100g(2.2mol)および合成例1で得られた5−ノルボルネン−2−スルホンアミド74.5g(430mmol)を仕込んだ後、攪拌しながら90℃に昇温し、6時間加熱した。得られた反応混合物を60℃まで冷却した後、ギ酸を減圧下に留去し、以下の構造をしたスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II−61)77.8g(355mmol;収率82.5%)を得た。
【化28】

【0092】
スルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II−61)の1H−NMR測定結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:8.12(1H,s)、5.52(0.5×1H,s)、5.41(0.3×1H,m)、5.35(0.5×1H,s)、5.28(1H,s)、4.78(0.3×1H,m)、4.70(0.4×1H,m)、3.54(0.3×1H,m)、3.44(0.3×1H,m)、3.02(0.4×1H,m)、2.77(1H,m)、2.48(1H,m)、1.99−1.84(2H,m)、1.80−1.49(3H,m)、1.37(1H,m)
【0093】
<実施例2>アルコール誘導体(III−21)の製造
温度計および攪拌装置を取り付けた200mlの三つ口フラスコに、実施例1で得られたスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体(II−61)2.5g(11.4mmol)、トルエン50mlおよび5質量%−水酸化ナトリウム水溶液10.9g(13.7mmol)を添加した後、50℃にて5時間攪拌した。反応終了後、25℃まで冷却し、2mol/Lの塩酸7.6ml(15.1mmol)を添加して攪拌し、得られた有機層を減圧下に濃縮することにより、以下の構造をしたアルコール誘導体(III−21)1.0g(5.2mmol;収率45.3%)を得た。
【0094】
【化29】

【0095】
アルコール誘導体(III−21)の1H−NMR測定結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:5.52(0.5×1H,s)、5.41(0.3×1H,m)、5.35(0.5×1H,s)、5.28(1H,s)、4.78(0.3×1H,m)、4.70(0.4×1H,m)、3.54(0.3×1H,m)、3.44(0.3×1H,m)、3.02(0.4×1H,m)、2.77(1H,m)、2.48(1H,m)、1.99−1.84(2H,m)、1.80−1.49(3H,m)、1.37(1H,m)
【0096】
<実施例3>含窒素アクリル酸エステル誘導体(V−61)の製造
攪拌機、温度計および還流冷却管を取り付けた内容積100mlの四つ口フラスコに、実施例2で得られたアルコール誘導体(III−21)12.3g(net8.61g:45mmol)、トルエン60g、アクリル酸9.7g(135mmol)、4−メトキシフェノール0.1gおよびパラトルエンスルホン酸1水和物4.3g(23mmol)を加え、減圧下(220mmHg)に80℃で12時間、ディーンスターク水分分離器を用いて共沸脱水させながら攪拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで冷却し、蒸留水20gを加え、25%アンモニア水8.43g(124mmol)でpH8.0にした。酢酸エチル40gで抽出し、蒸留水50gで2回洗浄した。有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製を行ない、下記の構造をした含窒素アクリル酸エステル誘導体(V−61)7.7g(32mmol;収率70%)を異性体混合物として得た。
【化30】

【0097】
含窒素アクリル酸エステル誘導体(V−61)の1H−NMR測定結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:6.38(1H,m)、6.06(1H,m)、5.79(1H,m)、5.52(0.5×1H,s)、5.41(0.3×1H,m)、5.35(0.5×1H,s)、5.28(1H,s)、4.78(0.3×1H,m)、4.70(0.4×1H,m)、3.54(0.3×1H,m)、3.44(0.3×1H,m)、3.02(0.4×1H,m)、2.77(1H,m)、2.48(1H,m)、1.99−1.84(2H,m)、1.80−1.49(3H,m)、1.37(1H,m)
【0098】
<実施例4>含窒素アクリル酸エステル誘導体(V−62)の製造
実施例3において、アクリル酸9.7g(135mmol)の替わりに、メタクリル酸11.6g(135mmol)を用いたこと以外は、実施例3と同様に実験を行い、以下の構造をした含窒素アクリル酸エステル誘導体(V−62)7.7g(29.6mmol;収率65.7%)を異性体混合物として得た。
【化31】

【0099】
含窒素アクリル酸エステル誘導体(V−62)の1H−NMR測定結果を以下に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:6.03(1H,m)、5.51(1H,m)、5.47(0.6×1H,s)、5.35(0.33×1H,m)、5.29(0.6×1H,s)、5.24(0.8×1H,s)、4.75(0.33×1H,m)、4.64(0.33×1H,m)、3.53(0.33×1H,m)、3.43(0.33×1H,m)、3.01(0.33×1H,m)、2.75(1H,m)、2.47(1H,m)、2.02−1.88(2H,m)、1.87(3H,s)、1.78−1.50(3H,m)、1.39(1H,m)
【0100】
<合成例2>高分子化合物(A1)の合成
含窒素アクリル酸エステル誘導体(V−61)4.28g、2−メチル−2−アダマンチルメタアクリレート4.07gおよびアゾビスイソ酪酸ジメチル(商品名:V−601、重合開始剤、和光純薬工業株式会社製)0.21gを、テトラヒドロフラン(THF)150mlに溶解させた。
次いで、窒素バブリングを約10分間行い、70℃に加温しながら4時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。得られた反応混合液は透明であった。次に、該反応混合液をエバポレーターで濃縮・乾固させた後、へプタン1000mlに投入して攪拌し、重合体をろ取した。更に、得られた重合体をTHF40mLに溶解し、水450ml/メタノール50mlの混合液に注ぎ込むことにより樹脂を析出(再沈)させ、濾過した。得られた重合体を乾燥させ、以下の構造をした白色固体の高分子化合物3.40gを得た。以下、得られた高分子化合物を、高分子化合物(A1)と称する。
なお、下記式において、組成比(l:m)は50:50である。高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は4800、分散度(Mw/Mn)は2.16であった。
【0101】
【化32】

【0102】
<参考例1>
(ポジ型フォトレジスト組成物の調製)
表1に示す各成分を各組成比にて混合し、溶解してポジ型フォトレジスト組成物を調製した。なお、表1中の数値は、配合量(質量部)を表す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1中の各記号は、以下の成分である。
(B1):(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート
(D1):トリ−n−ペンチルアミン
(S1):プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
【0105】
<実施例5>
(リソグラフィー特性の評価)
参考例1にて調製したポジ型フォトレジスト組成物を用いて、以下に示すリソグラフィー特性の評価を行った。
有機系反射防止膜組成物「ARC29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に均一に塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。
該反射防止膜上に、表1の通りに調製したフォトレジスト組成物を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、100℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚150nmのレジスト膜を形成した。
ついで、ArF露光装置NSR−S302(製品名、株式会社ニコン製;NA(開口数)=0.60、2/3輪帯照明)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、「ライン幅120nm、スペース幅120nm、ライン幅:スペース幅=1:1」をターゲットとするマスクパターンを介して、選択的に照射した。そして、100℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行い、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、その後30秒間水洗し、乾燥して、29mJ/cm2の露光量において、ライン幅120nm、ピッチ120nmのラインアンドスペース(1:1)のレジストパターンの解像が確認された。
【0106】
<合成例3>高分子化合物(A2)の合成
含窒素アクリル酸エステル誘導体(V−61)3.43g、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート3.10g、3−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−アダマンチルアクリレート1.86gおよびアゾビスイソ酪酸ジメチル(商品名:V−601、重合開始剤、和光純薬工業株式会社製)0.12gを、テトラヒドロフラン(THF)60mlに溶解させた。
次いで、窒素バブリングを約10分間行い、70℃に加温しながら4時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。次に、得られた反応混合液をエバポレーターで濃縮・乾固させた後、THF40mLに溶解し、次いでへプタン1000mlに注ぐことにより重合体を析出させ、濾過した後、乾燥させ、以下の構造をした白色固体の高分子化合物6.97gを得た。以下、得られた高分子化合物を、高分子化合物(A2)と称する。
なお、下記式において、組成比(l:m:n)は39:40:21である。高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は5000、分散度(Mw/Mn)は1.89であった。
【0107】
【化33】

【0108】
<合成例4>高分子化合物(A3)の合成
含窒素アクリル酸エステル誘導体(V−61)4.0gおよびアゾビスイソ酪酸ジメチル(商品名:V−601、重合開始剤、和光純薬工業株式会社製)0.11gを、テトラヒドロフラン(THF)32mlに溶解させた。
次いで、窒素バブリングを約10分間行い、70℃に加温しながら4時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。THF中に析出した高分子化合物をろ取した後、THF中で再沈させ、ろ過した後、乾燥させ、以下の構造をした白色固体の高分子化合物2.18gを得た。以下、得られた高分子化合物を、高分子化合物(A3)と称する。
高分子化合物(A3)の重量平均分子量(Mw)は5920、分散度(Mw/Mn)は3.68であった。
【0109】
【化34】

【0110】
<合成例5>高分子化合物(A4)の合成
含窒素アクリル酸エステル誘導体(V−62)5.0gおよびアゾビスイソ酪酸ジメチル(商品名:V−601、重合開始剤、和光純薬工業株式会社製)0.21gを、テトラヒドロフラン(THF)150mlに溶解させた。
次いで、窒素バブリングを約10分間行い、80℃のオイルバスを用いて加温しながら4時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。THF中に析出した高分子化合物をろ取し、ジメチルスルホキシド(DMSO)50mlに溶解した後、イソブタノール500ml中に滴下し、これにヘプタン500mlを加えて結晶を析出させ、ろ過して乾燥させることにより、以下の構造をした白色固体の高分子化合物4.04gを得た。以下、得られた高分子化合物を、高分子化合物(A4)と称する。
高分子化合物(A4)の重量平均分子量(Mw)は13000、分散度(Mw/Mn)は4.2であった。
【0111】
【化35】

【0112】
<参考例2〜4>
(ネガ型レジスト組成物の調製)
表2に示す各成分を各組成比にて混合し、溶解してネガ型フォトレジスト組成物1〜3を調製した。なお、表2中の数値は、配合量(質量部)を表す。
【0113】
【表2】

【0114】
表2中の各記号は、以下の成分である。
(B2):トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート
(C1):テトラメトキシメチル化グリコールウリル(製品名:ニカラックMX−270、三和ケミカル社製)
(D2):トリイソプロパノールアミン
(S1):プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
(S2):ジメチルスルホキシド(DMSO)
【0115】
<実施例6>
(リソグラフィー特性の評価)
参考例2にて調製したネガ型フォトレジスト組成物1を用いて、以下に示すリソグラフィー特性の評価を行った。
有機系反射防止膜組成物「ARC29」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に均一に塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。
該有機系反射防止膜上に、参考例2にて調製したネガ型フォトレジスト組成物1を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、80℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚160nmのレジスト膜を形成した。
次いで、該レジスト膜に対して、ArF露光装置NSR−S302(製品名、株式会社ニコン製;NA(開口数)=0.60、2/3輪帯照明)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、ラインアンドスペース(1:1)のマスクパターンを介して、選択的に照射した。
そして、100℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行い、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像し、その後30秒間水洗し、乾燥して、27mJ/cm2の露光量において、ライン幅140nmのラインアンドスペースのレジストパターンの解像が確認された。
【0116】
<実施例7〜9>
(残膜特性の評価)
参考例2〜4にて調製したネガ型フォトレジスト組成物1〜3を用いて、以下に示す残膜特性の評価を行った。
有機系反射防止膜組成物「ARC29」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に均一に塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。
該有機系反射防止膜上に、ネガ型フォトレジスト組成物1〜3をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、80℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚160nmのレジスト膜を形成した。
次いで、該レジスト膜に対して、ArF露光装置NSR−S302(製品名、株式会社ニコン製;NA(開口数)=0.60、2/3輪帯照明)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、1〜30mJ/cm2の露光量で露光した。
そして、100℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行い、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像し、その後30秒間水洗し、レジスト膜の厚さを測定した。露光量30mJ/cm2のときの残膜率(現像後のレジスト膜厚/成膜時(露光前)のレジスト膜厚)を測定した結果を表3に示す。
【0117】
【表3】

【0118】
表3より、本発明により得られる含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)を用いたフォトレジスト組成物は、残膜特性に優れており、ネガ型レジスト組成物として機能することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明により得られる含窒素アクリル酸エステル誘導体(V)は、フォトリソグラフィーにおいて優れた解像度のパターンを形成し得る高分子化合物のモノマーとして利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数3〜15のシクロアルキル基もしくは炭素数1〜15のアルコキシ基を表すか、またはR1およびR2は、両者が結合して、任意の位置に酸素原子もしくは硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜5のアルキレン基、−O−または−S−を表す。また、R4およびR5は、それぞれ独立して水素原子、任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜15のアルキル基、任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数3〜15のシクロアルキル基または任意の位置に酸素原子を含んでいてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基を表す。)
で示されるスルホンアミド誘導体と、一般式 R3COOH
(式中、R3は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
で示されるカルボン酸化合物を反応させることにより、下記一般式(II)
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記定義の通りである。)
で示されるスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体を得、得られたスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体を、塩基性条件下または酸性条件下に水および/または炭素数1〜4のアルコールと反応させることにより、下記一般式(III)
【化3】

(式中、R1、R2、R4およびR5は、前記定義の通りである。)
で示されるアルコール誘導体を得、得られたアルコール誘導体を下記一般式(IV)
【化4】

(式中、R6は、水素原子または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基を表す。また、Xは、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。)
で示されるアクリル酸誘導体と反応させることによる、下記一般式(V)
【化5】

(式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、前記定義の通りである。)
で示される含窒素アクリル酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項2】
一般式(I)〜(V)において、R1およびR2が、両者が結合した−CH2−、−(CH22−、−O−または−S−であり、R6が、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である、請求項1に記載の含窒素アクリル酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(I)
【化6】

(式中、R1、R2、R4およびR5は、前記定義の通りである。)
で示されるスルホンアミド誘導体と、一般式 R3COOH
(式中、R3は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
で示されるカルボン酸化合物を反応させることにより、下記一般式(II)
【化7】

(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、前記定義の通りである。)
で示されるスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体を得、得られたスルファモイル基含有カルボン酸エステル誘導体を、塩基性条件下または酸性条件下に水および/または炭素数1〜4のアルコールと反応させることによる、下記一般式(III)
【化8】

(式中、R1、R2、R4およびR5は、前記定義の通りである。)
で示されるアルコール誘導体の製造方法。
【請求項4】
一般式(I)〜(III)において、R1およびR2が、両者が結合した−CH2−、−(CH22−、−O−または−S−である、請求項3に記載のアルコール誘導体の製造方法の製造方法。

【公開番号】特開2009−242364(P2009−242364A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94312(P2008−94312)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】