説明

吸収性樹脂粒子及び吸収性物品

【課題】粒子の強度が強く、シアがかかっても壊れにくく吸収速度の低下が無い吸収性樹脂粒子を提供すること、そして、吸収性物品の表面のドライ感が高い吸収性物品を提供すること。
【解決手段】水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と、水溶性ケイ素化合物(c)から誘導される固体ケイ素含有化合物(C)とを含んでなり、
(a1)及び/又は(a2)並びに(b)を水溶性ケイ素化合物(c)の存在下で重合して架橋重合体(A)を製造する工程、及び/又は架橋重合体(A)と水溶性ケイ素化合物(c)とを混合する工程を含む製造方法により得られる吸収性樹脂粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性樹脂粒子及び吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性樹脂粒子の液体の吸収速度を向上させる目的で、吸収性樹脂粒子の表面積を増大させ、液体との接触面を増やすことが提案されている{例えば、微小二酸化ケイ素粒子を合着させ造粒した吸収性樹脂粒子(特許文献1)、内部に気泡を導入した吸収性樹脂粒子(特許文献2)}。また、疎水性材料により界面を形成し、みかけの表面積を増大させた吸収性樹脂粒子も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−253597号公報
【特許文献2】特開2002−212331号公報
【特許文献3】特開2005−97569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の表面積を増大させた吸収性樹脂粒子では、表面積を増大させていない同じ粒子径の吸収性樹脂粒子に比べて、粒子の強度が弱くなり、シア(shear)がかかると粒子が壊れやすくなり吸収速度が低下する場合がある。そして、この吸収性樹脂粒子を吸収性物品に使用した場合、吸収性物品の表面のドライ感が悪くなる場合があるという問題がある。
すなわち、本発明の目的は、粒子の強度が強く、シアがかかっても壊れにくく吸収速度の低下が無い吸収性樹脂粒子を提供すること、そして、吸収性物品の表面のドライ感が高い吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の吸収性樹脂粒子は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と、水溶性ケイ素化合物(c)から誘導される固体ケイ素含有化合物(C)とを含んでなり、
(a1)及び/又は(a2)並びに(b)を水溶性ケイ素化合物(c)の存在下で重合して架橋重合体(A)を製造する工程、及び/又は架橋重合体(A)と水溶性ケイ素化合物(c)とを混合する工程を含む製造方法により得られる吸収性樹脂粒子である点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の吸収性樹脂粒子は、粒子の強度が強く、シアがかかっても壊れにくく吸収速度の低下が少ないという効果を発揮する。したがって、この吸収性樹脂粒子を吸収性物品に適用した場合、吸収性物品の表面のドライ感に優れるという効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】吸収速度測定方法で使用するDW装置の概略図である。
【図2】吸収速度測定方法における一般的な吸収カーブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
架橋重合体(A)としては、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体であれば特に制限がなく、公知のもの{たとえば、以下の(1)〜(16)の重合体等}をそのまま用いることができる。なお、ビニルモノマーの水溶性とは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を意味する。また、ビニルモノマーの加水分解性とは、50℃の水及び必要により触媒(酸又は塩基等)の作用により加水分解され水溶性になる性質を意味する(加水分解はビニルモノマーのままでも、架橋重合体としてからでもよい。)。
【0009】
(1)特公昭53−46199号公報又は特公昭53−46200号公報等に記載のデンプン−アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体。
(2)特開昭55−133413号公報等に記載の水溶液重合(断熱重合、薄膜重合又は噴霧重合等)により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)。
(3)特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報又は特開平11−5808号公報等に記載の逆相懸濁重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)。
(4)特開昭52−14689号公報又は特開昭52−27455号公報等に記載のビニルエステルと不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体のケン化物。
(5)特開昭58−2312号公報又は特開昭61−36309号公報等に記載のアクリル酸(塩)とスルホ(スルホネート)基含有モノマーとの共重合体。
【0010】
(6)米国特許第4389513号等に記載のイソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体のケン化物。
(7)特開昭46−43995号公報等に記載のデンプン−アクリロニトリル共重合体の加水分解物。
(8)米国特許第4650716号等に記載の架橋カルボキシメチルセルロース。
(9)高分子ゲルの最新動向(シーエムシー出版、2004年発行)等に記載のポリアルキレン(エチレン、プロピレン等)グリコール架橋体。
(10)高分子ゲルの最新動向(シーエムシー出版、2004年発行)等に記載のポリビニルアルコール架橋体。
【0011】
(11)特開2003−48997号公報に記載のデンプン放射線架橋体。
(12)特開平9−85080号公報に記載のカルボキシル基含有架橋セルロース。
(13)特開平10−251402号公報に記載のポリアミノ酸放射線架橋体。
(14)特開2002−179770号公報に記載の架橋ポリアスパラギン酸。
(15)特開2001−120992号公報に記載の多糖類の多価金属イオン架橋体。
【0012】
(16)特開2003−052742号公報、特開2003−082250号公報、特開2003−165883号公報、特開2003−176421号公報、特開2003−183528号公報、特開2003−192732号公報、特開2003−225565号公報、特開2003−238696号公報、特開2003−335970号公報、特開2004−091673号公報、特開2004−121400号公報、特開2004−123835号公報、特開2005−075982号公報、特開2005−095759号公報、特開2005−186015号公報、特開2005−186016号公報、特開2006−110545号公報、特開2006−122737号公報、特開2006−131767号公報、特開2006−160774号公報、特開2006−206777号公報、特開2006−219661号公報、特開2007−069161号公報等に記載された高性能吸水性樹脂{架橋ポリアクリル酸(塩)}。
なお、酸(塩)との記載は、酸及び/又は酸塩を意味し、以下同様である。
【0013】
これらのうち、架橋重合体あたりの吸収量の観点から、(1)、(2)、(3)及び(16)が好ましく、さらに好ましくは(1)、(2)及び(16)、特に好ましくは(2)及び(16)である。
【0014】
水溶性ケイ素化合物(c)とは、25℃において、水に少なくとも一部が溶けることができる固体又は液体の物質であり、分子中にケイ素原子を含んだ物質である。
水溶性ケイ素化合物(c)としては、ヒドロキシル基及びエーテル結合等の極性基を有するケイ素化合物が含まれ、具体的には水ガラス及びシラノールが挙げられる。
固体ケイ素含有化合物(C)は水溶性ケイ素化合物(c)から誘導される。すなわち、水溶性ケイ素化合物(c)が水ガラスの場合、水ガラスは、珪酸より強いすべての酸と反応して珪酸を遊離したり、アルコールと脱水作用により珪酸ゲルを作成したりして固体ケイ素含有化合物(C)を形成することができる。また、(c)がシラノールの場合、シラノールは、加熱することにより脱水して固体ケイ素含有化合物(C)を形成することができる。
【0015】
水溶性ケイ素化合物(c)の25℃の水に対する溶解度(g/l)は、少なくとも0.001以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜100、特に好ましくは0.1〜10である。この範囲であると、吸収性物品の表面のドライ感がさらに良好となる。
【0016】
水溶性ケイ素化合物(c)が水ガラスの場合、日本工業規格(JIS K1408)で規定されているオルトケイ酸ソーダ、メタ珪酸ソーダ、珪酸ソーダ1号、珪酸ソーダ2号、珪酸ソーダ3号の他、NaO及びSiOの混合比率が種々のものを使用できる。
【0017】
水溶性ケイ素化合物(c)がシラノールの場合、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、ジエチル(イソプロピル)シラノール、1,1,2,2−テトラメチルジシラン−1,2ジオール等が使用できる。
【0018】
これらの水溶性ケイ素化合物(c)のうち、液体の吸収速度、生産性等の観点から、水ガラスが好ましく、さらに好ましくは珪酸ソーダ、特に好ましくは珪酸ソーダ3号である。
【0019】
本発明の吸収性樹脂粒子において、ケイ素の含有量(重量%)は、吸収性樹脂粒子の重量に基づいて、0.001〜5.0が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1.0、特に好ましくは0.05〜0.5である。この範囲であると、吸収性物品に適用した場合の表面のドライ感がさらに良好となる。
【0020】
ケイ素の含有量(重量%)は蛍光X線分析装置(日本電子株式会社製品 型番;JSX−3100RII等)を用いて公知の方法で吸収性樹脂粒子から分析することができる。
【0021】
本発明の吸収性樹脂粒子の製造方法としては、水溶液重合又は逆相懸濁重合による製造方法を用いることができる。
【0022】
水溶液重合では、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)並びに水を用いて水溶液を作成し(以降、これをモノマー溶液と述べる)、モノマー溶液を重合させて、塊状の含水架橋重合体(以降、含水ゲルと述べる)を得ることができる。
【0023】
含水ゲルは、必要に応じて公知の方法等により破砕(ミンチ)することができ、含水ゲル粒子となる。破砕(ミンチ)後の含水ゲル粒子の大きさ(最長径)は、50μm〜10cmが好ましく、さらに好ましくは100μm〜2cm、特に好ましくは1mm〜1cmである。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性が良好となる。また、破砕(ミンチ)は重合中に行ってもよく、その場合は重合熱の放熱がしやすくなる。
【0024】
逆相懸濁重合では、モノマー溶液を有機溶媒中に公知の分散剤等を使用して分散させて重合させ、粒子状の含水架橋重合体(以降、含水ゲル粒子と述べる)を得ることができる。
【0025】
含水ゲル粒子は、そのまま吸収性樹脂粒子とすることもできるが、必要により乾燥させて吸収性樹脂粒子としてもよい。
含水ゲル粒子を乾燥する場合は公知の方法等により乾燥させることができる。乾燥方法としては、熱風による乾燥(パドル式乾燥機、ベルト式乾燥機及び浮遊式乾燥機等)、共沸脱水による乾燥、凍結乾燥及び遠赤外線による乾燥等を用いることができる。
【0026】
吸収性樹脂粒子は、公知の方法等により、粉砕及び/又は粒度調整をすることができる。吸収性樹脂粒子が溶媒を含む場合、溶媒を留去(乾燥)してから粉砕及び/又は粒度調整することが好ましい。
【0027】
吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)は、100〜800が好ましく、さらに好ましくは200〜600、特に好ましくは300〜500である。この範囲であると、ハンドリング性(吸収性樹脂粒子の粉体流動性等)がさらに良好となる。
【0028】
重量平均粒子径は、測定試料の粒度分布を測定し、対数確率紙{横軸:粒径、縦軸:累積含有量(重量%)}に、累積含有量と粒子径との関係をプロットし、累積含有量が50重量%に対応する粒子径を求めることにより得られる。粒度分布は、JIS Z8815−1994に準拠して測定され、たとえば、内径150mm、深さ45mmのふるい{目開き:710μm、500μm、300μm、150μm及び106μm}を、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。
【0029】
吸収性樹脂粒子には、吸収性能の観点等から、微粒子の含有量は少ない方が好ましい。吸収性樹脂粒子の全粒子に占める150μm(好ましくは106μm)以下の微粒子の含有量は、3重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1重量%以下である。微粒子の含有量は、上記の重量平均粒径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。
【0030】
吸収性樹脂粒子の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、真球状、不定形造粒状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ等に適用した場合の繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状及び不定形造粒状が好ましく、さらに好ましくは不定形破砕状である。
【0031】
吸収性樹脂粒子は、必要に応じて公知の方法等により、表面架橋を行うことができる。
【0032】
本発明の吸収性樹脂粒子の含水率(重量%)は、吸収性物品に適用する場合、作業性・風合い・耐湿性等の観点から、1〜20が好ましく、さらに好ましくは2〜15、特に好ましくは4〜12である。この範囲であると、吸収性樹脂粒子が衝撃により破壊されるのを防ぎ、作業性等がさらに良好となる。
なお、含水率は、乾燥工程のみで決まるのではなく、必要に応じて行われる表面架橋工程及び加水工程等で調整される。なお、含水率は、120±5℃、30分で乾燥前後の重量減少率により求められる。
【0033】
本発明の吸収性樹脂粒子は、上記製造方法において、(1)(a1)及び/又は(a2)並びに(b)を水溶性ケイ素化合物(c)の存在下で重合して架橋重合体(A)を製造する工程、及び/又は(2)架橋重合体(A)と水溶性ケイ素化合物(c)とを混合する工程を含んでなる製造方法により得られる。
【0034】
(1)水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を水溶性ケイ素化合物(c)の存在下で重合して架橋重合体(A)を製造する工程においては、水溶性ケイ素化合物(c)の存在下で(a1)及び/又は(a2)並びに(b)が重合すればよく、具体的な工程としては、重合開始前に水溶性ケイ素化合物(c)とモノマー溶液とを混合してから重合する工程及び/又は重合中に、反応槽内に水溶性ケイ素化合物(c)を添加する工程が挙げられる。重合開始前に水溶性ケイ素化合物(c)とモノマー溶液とを混合しておく方法には、水溶性ケイ素化合物(c)とモノマー溶液とを別々に反応槽内に添加する方法も含まれる。
【0035】
(2)架橋重合体(A)と水溶性ケイ素化合物(c)とを混合する工程において、混合方法としては、公知の混合方法を利用できるが、練り込むように均一混合することが好ましい。
【0036】
水溶性ケイ素化合物(c)と架橋重合体(A)とを混合・混練するタイミングとしては特に制限はないが、架橋重合体(A)の重合工程中、重合工程直後、含水ゲルの破砕(ミンチ)中及び含水ゲル粒子の乾燥中等が挙げられる。これらのうち、吸収性物品に適用した場合の表面のドライ感の観点等から、架橋重合体(A)の重合工程中及び含水ゲルの破砕(ミンチ)工程中が好ましく、さらに好ましくは含水ゲルの破砕(ミンチ)工程中である。
【0037】
混合・混練装置としては、含水ゲルの破砕(ミンチ)中に混合・混練する場合、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機等の通常の装置が使用できる。重合工程中に混合・混練する場合、ホモミキサー、バイオミキサー等の比較的攪拌力の高い装置を使用できる。また、含水ゲル粒子の乾燥中に混合・混練する場合、SVミキサー等の混練装置も使用できる。
【0038】
架橋重合体(A)と水溶性ケイ素化合物(c)との混合物は、公知の方法等で架橋重合体(A)と水溶性ケイ素化合物(c)から誘導された固体ケイ素含有化合物(C)との混合物へ変化させる。(c)から(C)への誘導は、酸の添加による遊離や加熱による脱水縮合等の方法を用いることができるが、これらに限定されない。
使用される酸としては、種々の有機酸や無機酸を用いることができるが、経済的観点やハンドリング性から、硫酸、塩酸及びリン酸等の鉱酸や、クエン酸及びアクリル酸等の有機酸が好ましく、安全性の観点からアクリル酸がさらに好ましい。
また、加熱による脱水縮合の場合、吸収性樹脂粒子の分解の観点から、100〜600℃での加熱処理が好ましく、さらに好ましくは100〜250℃での加熱処理である。
【0039】
本発明の吸収性樹脂粒子には、必要により任意の段階において、公知の添加物を添加することができる。添加物としては、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤及び有機質繊維状物等が使用できる。
【0040】
添加物を添加する場合、添加物の合計添加量(重量%)は、用途によって異なるが、吸収性樹脂粒子の重量に基づいて、10−6〜20が好ましく、さらに好ましくは10−5〜10、特に好ましくは10−4〜5である。この範囲であると、吸収性樹脂粒子の吸収性能を低下させることなく、添加剤の機能を付与することができる。
【0041】
本発明の吸収性樹脂粒子は、最大吸収速度が10以上であることが好ましく、さらに好ましくは15以上である。最大吸収速度比が10以上であると、吸収性物品の表面のドライ感がさらに良好となる。
【0042】
ここで、最大吸収速度は次に説明する吸収性樹脂粒子の吸収速度測定方法による実験結果から求められる。
【0043】
<吸収性樹脂粒子の吸収速度測定方法>
JIS K7224−1996にて規定のDW法(Demand Wettability法)を用いて、以下の通り測定される。
25℃、湿度50%の室内で、DW装置{ビューレット(1)の容量50ml、長さ55cm、小穴(9)の直径3mm;図1参照}を用い、空気流入細管(2)の最下端部と支持板(3)の最上端部とを同一水平面になるように調整し、バルブ(4)及び(5)を閉じた状態で、約50mlの生理食塩水をビューレット(1)に入れ、ゴム栓(6)を装着し、バルブ(4)及び(5)を開けることにより、配管を生理食塩水で充填すると共に、支持板(3)の中央に設けられた小穴(9)から生理食塩水を溢れ出させ、バルブ(4)を閉じてから、溢れ出た生理食塩水を拭き取る。引き続き、支持板(3)上に、平織りナイロンメッシュ(7)(目開き63μm、5cm×5cm)をのせ、さらにこの平織りナイロンメッシュ(7)の上に、小穴(9)が中央に位置するようにして内径5.0cm、高さ3.0cmの円柱筒(10)を載せて、この円柱筒(10)の中に測定試料(8)を1.000g散布した後、円柱筒(10)を除去する。ここで、支持板(3)のみの荷重がかかるようにセットした天秤のゼロ点調整を行い、バルブ(4)を開けて測定を開始する。バルブ(4)を開けてから1秒ごとに天秤の重量データを読み取り10分間継続する。天秤の重量データは、表示値を読み取り記録してもよいが、天秤とパソコンを接続し、パソコン上で1秒ごとに重量データを記録した方が好ましい。
天秤の重量データは、ビューレット内の生理食塩水の減少量であり、吸収性樹脂粒子の生理食塩水の吸収量は、天秤の重量データの絶対値にて与えられる。
【0044】
得られた時間ごとの重量データをプロットしていくと、吸収性樹脂粒子が生理食塩水を吸収した挙動がグラフ化でき、この吸収挙動を以降、吸収カーブと記載する。一般的に、測定開始後、時間と共に生理食塩水を吸収していくが、測定開始初期と測定開始後期とを比べると、吸収速度は経時的に変化していく。一般的な吸収カーブを図2に示す。
【0045】
最大吸収量(QAmaxと記載)とは、測定開始後10分後の吸収性樹脂粒子の吸収量を指す。
【0046】
また、最大吸収速度(ASmaxと記載)とは、測定期間中の最も高い吸収速度のことを指し、次のように求める。
測定開始後x秒後(txと記載)の吸収量をQAxと表記する。xより5秒前後(tx−5、tx+5)の吸収量はそれぞれQAx−5、QAx+5と記載する。これらの吸収量を用いて測定開始x秒後の吸収速度(ASxと記載)は下記数式(1)で求められる。
【0047】
ASx =(QAx+5 − QAx−5)× 6 (1)
測定期間中の全ての時間において吸収速度(ASx)を求め、その最大値を最大吸収速度(ASmaxと記載)とする。但し、ASmaxは、tx−5又はtx+5がが存在しない時間(x<5及びx>595)は除いて求める。
【0048】
ここで用いたASx(吸収速度)は、これまでの吸収性樹脂粒子の一般的な吸収能力の指標である吸収量や保水量に、時間の概念を導入したものである。
吸収量(QAx)は経時的に変化する(図2参照)が、吸収性樹脂粒子の飽和吸収量まで到達した後は、吸収量変化が無くなる為、ASxとしてはゼロとなる。吸収初期は、吸収性樹脂粒子の特性・特徴に応じて吸収の仕方が異なり、吸収性樹脂粒子によって、経時的なASxの変化は異なり、したがってASmaxも異なる。例えば、ある吸収性樹脂粒子において、全ての粒度範囲を用いて測定した場合と一部の粒度範囲のみを用いて測定した場合では、ASmaxは異なり得る。ASmaxが大きければ、素早く被吸収液を吸収できることを意味し、逆にASmaxが小さければ、飽和吸収量に達するまでの時間が長くなることを意味する。これらの吸収速度の変化をコントロールするには、特許文献1〜3に示すように吸収性樹脂粒子の表面積を変化させる方法や、本発明の方法を用いることができる。
一方、QAmax(最大吸収量)は、これまでの吸収性樹脂粒子の吸収量や保水量の概念とほぼ同じである。
QAmaxが小さいと、吸収性物品等に使用する場合は、被吸収液を吸収しきれずにモレの原因となりうる。
【0049】
本発明の吸収性樹脂粒子は、公知の方法で各種の吸収体に適用することにより、吸収性能に優れた吸収性物品を製造し得る。
【0050】
吸収体に対する本発明の吸収性樹脂粒子の添加量(重量%)は、吸収体の種類やサイズ、目標とする吸収性能に応じて種々変化させることができるが、吸収性樹脂粒子と繊維状物の合計重量に基づいて、30〜95が好ましく、さらに好ましくは40〜94、特に好ましくは50〜93である。この範囲であると、得られる吸収体の吸収能がさらに良好となる。
【0051】
本発明の吸収性樹脂粒子を用いた吸収体は、液体{被吸収液(汗、尿及び血液等の体液並びに海水、地下水及び泥水等の水等)}を吸収した場合であってもさらっとした感触を示すため、紙おむつ及び生理用ナプキン等の衛生用品に適用した場合、優れた吸収性能のみならず、表面のドライ感に優れた特徴を発揮する。
【0052】
吸収性物品としては、吸収体、液体透過性シート、通気性バックシートを備える吸収性物品が好ましく、さらに好ましくは衛生用品としての吸収性物品である。衛生用品としては、紙おむつ(子供用紙おむつ及び大人用紙おむつ等)、ナプキン(生理用ナプキン等)、紙タオル、パッド(失禁者用パッド及び手術用アンダーパッド等)及びペットシート(ペット尿吸収シート)等が挙げられる。これらの衛生物品のうち、紙おむつにより適している。
【0053】
本発明の吸収性樹脂粒子は前記載の衛生用品用途のみならず、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤、青果物等の鮮度保持剤、肉類及び魚介類のドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、植物や土壌等の保水剤、結露防止剤、止水材やパッキング材並びに人工雪等、種々の用途にも有用である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、部は重量部を示し、%は重量%を示す。
【0055】
<製造例1>
ガラス製反応容器に、アクリル酸ナトリウム77部、アクリル酸22.85部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.15部、脱イオン水299.54部及びジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.001部を仕込み、攪拌、混合しながら内容物の温度を3℃に保った。内容物に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とし、過酸化水素の1%水溶液0.3部、アスコルビン酸の0.2%水溶液0.8部及び2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライドの2%水溶液0.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応液が80℃に達した後、重合温度80±2℃で約5時間重合することにより、架橋重合体からなる含水ゲル(1)を得た。含水率(120±5℃×30分)は75%であった。
【0056】
含水ゲル(1)400部をミンチ機(目皿の穴径:6mm、飯塚工業株式会社製 12VR−400K)にて25℃で破砕した後、135℃、風速2.0m/秒の条件の通気型バンド乾燥機で乾燥し、乾燥体を得た。この乾燥体を市販のジューサーミキサー(松下電器産業株式会社、ファイバーミキサーMX−X57)にて粉砕し、目開き850及び150μmのふるいを用いて850〜150μmの粒度に調整して、架橋重合体粒子を得た。
【0057】
<製造例2>
製造例1で得られた架橋重合体粒子100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの10%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の2部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、140℃で30分間静置して表面架橋することにより、吸収性樹脂粒子を得た。この吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径は400μmであった。
【0058】
<製造例3>
アクリル酸145.4部を9.4部の水で希釈し、30〜20℃に冷却しつつ25%の水酸化ナトリウム水溶液242.3部を加えて中和した。この溶液に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.09部、次亜リン酸ソーダ1水和物0.0146部及び過硫酸カリウム0.0727部を添加・溶解し、25℃でバイオミキサー(日本精機株式会社製 ABM−2型)にて2分間撹拌・分散してモノマー水溶液(1)を得た。
【0059】
次いで、撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサン624部を入れ、これに、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社、商品名:プライサーフA210G)1.56部を添加・溶解した後、撹拌しつつ窒素置換し、70℃まで昇温した。そして、70℃に保ったまま、モノマー水溶液(1)を6.6部/分で6分間滴下して75℃で15分間保持した後、残りのモノマー水溶液(1)を6.6部/分で54分間に亘って滴下した。その後、75℃で30分間熟成した後、水をシクロヘキサンとの共沸によって樹脂の含水率が約20%(赤外水分計:FD−100型、Kett社製、180℃、20分で測定)となるまで除去した。30℃に冷却し撹拌を停止すると、樹脂粒子が沈降したので、デカンテーションにより、樹脂粒子とシクロヘキサン層とを分離した後、濾別して、80℃で減圧乾燥し、目開き850及び150μmのふるいを用いて850〜150μmの粒度に調整することにより、架橋重合体粒子を得た。架橋重合体粒子の重量平均粒径は350μmであった。
【0060】
<実施例1>
製造例1で得た含水ゲル(1)400部をミンチ機(目皿の穴径:6mm、飯塚工業株式会社製 12VR−400K)にて25℃で破砕した後、水溶性ケイ素化合物(c1){富士化学株式会社製珪酸ソーダ1号}3部を添加し、手でよく混合した後、万能混合機(プライミクス株式会社製 T.K.ハイビスディスパーミックス 3D−5型)にて15分間混練した。その後、135℃、風速2.0m/秒の条件の通気型バンド乾燥機で乾燥し、乾燥体を得た。この乾燥体を市販のジューサーミキサー{松下電器産業株式会社、ファイバーミキサーMX−X57}にて粉砕し、目開き850及び150μmのふるいを用いて850〜150μmの粒度に調整し、架橋重合体粒子(1)を得た。製造例2の「架橋重合体粒子」を「架橋重合体粒子(1)」に変更したこと以外同様に操作を行い本発明の吸収性樹脂粒子(1)を得た。吸収性樹脂粒子(1)の重量平均粒子径は400μmであった。
【0061】
<実施例2>
「水溶性ケイ素化合物(c1)3部」を「水溶性ケイ素化合物(c2){富士化学株式会社製珪酸ソーダ4号}2部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、架橋重合体粒子(2)及び本発明の吸収性樹脂粒子(2)を得た。吸収性樹脂粒子(2)の重量平均粒子径は400μmであった。
【0062】
<実施例3>
「水溶性ケイ素化合物(c1)」を「水溶性ケイ素化合物(c3){シグマアルドリッチ社製トリメチルシラノール}」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、架橋重合体粒子(3)及び本発明の吸収性樹脂粒子(3)を得た。吸収性樹脂粒子(3)の重量平均粒子径は400μmであった。
【0063】
<実施例4>
ガラス製反応容器に、アクリル酸81.8部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.15部、脱イオン水299.54部及びジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.001部を仕込み、攪拌、混合しながら内容物の温度を3℃に保った。内容物に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とし、過酸化水素の1%水溶液0.3部、アスコルビン酸の0.2%水溶液0.8部及び2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライドの2%水溶液0.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応液が80℃に達した後、重合温度80±2℃で約5時間重合することにより、架橋重合体からなる含水ゲル(2)を得た。含水率(120±5℃×30分)は78.7%であった。
【0064】
含水ゲル(2)400部をミンチ機(目皿の穴径:6mm、飯塚工業株式会社製 12VR−400K)にて25℃で破砕した後、万能混合機(プライミクス株式会社製 T.K.ハイビスディスパーミックス 3D−5型)に投入し、撹拌しながら水溶性ケイ素化合物(c1)3部を添加し15分間混練した。さらに水酸化ナトリウム32.77部を添加し撹拌を続け、30分間混練した。その後、135℃、風速2.0m/秒の条件の通気型バンド乾燥機で乾燥し、乾燥体を得た。この乾燥体を市販のジューサーミキサー(松下電器産業株式会社、ファイバーミキサーMX−X57)にて粉砕し、目開き850及び150μmのふるいを用いて850〜150μmの粒度に調整して、架橋重合体粒子(4)を得た。製造例2の「架橋重合体粒子」を「架橋重合体粒子(4)」に変更したこと以外同様に操作を行い、本発明の吸収性樹脂粒子(4)を得た。吸収性樹脂粒子(4)の重量平均粒子径は400μmであった。
【0065】
<実施例5>
万能混合機(プライミクス株式会社製 T.K.ハイビスディスパーミックス 3D−5型)に、アクリル酸81.8部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.15部、脱イオン水299.54部及びジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.001部を仕込み、攪拌、混合しながら内容物の温度を3℃に保った。内容物に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とし、過酸化水素の1%水溶液0.3部、アスコルビン酸の0.2%水溶液0.8部及び2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライドの2%水溶液0.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応液が80℃に達した。次に水溶性ケイ素化合物(c2)を3部添加し、混合を続け、80±2℃で約5時間重合・混合することにより、架橋重合体からなる含水ゲル(3)を得た。含水率(120±5℃×30分)は78.3%であった。
【0066】
さらに水酸化ナトリウム32.77部を添加し、攪拌を続け、30分間混練した。その後、135℃、風速2.0m/秒の条件の通気型バンド乾燥機で乾燥し、乾燥体を得た。この乾燥体を市販のジューサーミキサー(松下電器産業株式会社、ファイバーミキサーMX−X57)にて粉砕し、目開き850及び150μmのふるいを用いて850〜150μmの粒度に調整して、架橋重合体粒子(5)を得た。製造例2の「架橋重合体粒子」を「架橋重合体粒子(5)」に変更したこと以外同様に操作を行い本発明の吸収性樹脂粒子(5)を得た。吸収性樹脂粒子(5)の重量平均粒子径は350μmであった。
【0067】
<実施例6>
アクリル酸145.4部を水9.4部で希釈し、20〜30℃に冷却しながら、25%の水酸化ナトリウム水溶液242.3部を加えて中和した。この溶液に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.09部、次亜リン酸ソーダ1水和物0.0146部、過硫酸カリウム0.0727部及び水溶性ケイ素化合物(c2)3部を添加して溶解させた後、25℃でバイオミキサー(日本精機社製 ABM−2型)にて2分間撹拌し分散させ、モノマー水溶液(2)を得た。
【0068】
「モノマー水溶液(1)」を「モノマー水溶液(2)」に変更したこと以外、製造例3と同様にして、架橋重合体粒子(6)を得た。製造例2の「架橋重合体粒子」を「架橋重合体粒子(6)」に変更したこと以外同様に操作を行い本発明の吸収性樹脂粒子(6)を得た。吸収性樹脂粒子(6)の重量平均粒子径は350μmであった。
【0069】
<比較例1>
製造例2で得られた吸収性樹脂粒子を比較用の吸収性樹脂粒子(H1)とした。吸収性樹脂粒子(H1)の重量平均粒子径は400μmであった。
【0070】
<比較例2>
水溶性ケイ素化合物(c1)を用いないこと以外、実施例4と同様にして、比較用の吸収性樹脂粒子(H2)を得た。吸収性樹脂粒子(H2)の重量平均粒子径は400μmであった。
【0071】
<比較例3>
水溶性ケイ素化合物(c2)を用いないこと以外、実施例5と同様にして、比較用の吸収性樹脂粒子(H3)を得た。吸収性樹脂粒子(H3)の重量平均粒子径は350μmであった。
【0072】
<比較例4>
「目開き850及び150μmのふるいを用いて850〜150μmの粒度に調整」を「目開き250及び150μmのふるいを用いて250〜150μmの粒度に調整」に変更した以外、製造例1と同様にして、架橋重合体粒子(H4)を得た。架橋重合体粒子(H4)の重量平均粒子径は200μmであった。
万能混合機(プライミクス株式会社製 T.K.ハイビスディスパーミックス 3D−5型)に、架橋重合体粒子(H4)100部を仕込み、混合しながら水20部をスプレー噴霧し、20分間混合を継続した。さらに、二酸化ケイ素{DSL.ジャパン株式会社製CARPLEX#101}0.1部を仕込み、5分間混合した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの10%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)2部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、80℃で30分間加熱した。その後、140℃で30分静置乾燥させることで表面架橋を行い、比較用の吸収性樹脂粒子(H4)を得た。吸収性樹脂粒子(H4)の重量平均粒子径は400μmであった。
【0073】
<実施例7>
吸収性樹脂粒子(1)30部を250mlのPSスクリュー管瓶に入れ、混合機{株式会社セイワ技研製ロッキングミルRM−05}で700rpmにて5分間振とうさせて吸収性樹脂粒子(1S)を作成した。
【0074】
<実施例8〜12>
「吸収性樹脂粒子(1)」を「吸収性樹脂粒子(2)〜(6)」のいずれかに変更したこと以外、実施例7と同様にして、さらに吸収性樹脂粒子(2S)〜(6S)を作成した。
【0075】
<比較例5〜8>
「吸収性樹脂粒子(1)」を「吸収性樹脂粒子(H1)〜(H4)」のいずれかに変更したこと以外、実施例7と同様にして、さらに吸収性樹脂粒子(H1S)〜(H4S)を作成した。
【0076】
実施例及び比較例で得た吸収性樹脂粒子について、保水量、荷重下吸収量、最大吸収速度、重量平均粒子径を測定し、表1に示した。
【0077】
<保水量の測定法>
目開き63μmのナイロン網で作成したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9%)1000cc中に無撹拌下、1時間浸漬した後、15分間吊るして水切りした後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(h1)を測定した。一方、測定試料を入れないこと以外同様の操作により、ティーバッグの重量(h2)を求めた。そして、重量(h1)から重量(h2)を差し引くことにより保水量(g/g)を求めた。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
【0078】
<荷重下吸収量の測定法>
目開き63μm(JIS Z8801−1:2006に準拠)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径30mm、高さ60mm)内に測定試料0.1gを秤量し、プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に測定試料がほぼ均一厚さになるように整え、この測定試料の上に40g/cmの荷重となるように外径29.5mm×22mmの分銅を乗せた。生理食塩水(食塩濃度0.9%)60mlの入ったシャーレ(直径:12cm)の中に測定試料及び分銅の入ったプラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、放置し、60分後に試料及び分銅の入ったプラスチックチューブを計量し、測定試料が生理食塩水を吸収して増加した重量を算出し、この増加重量の10倍値を生理食塩水に対する荷重下吸収量(g/g)とした。なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
【0079】
【表1】

【0080】
<実施例13>
フラッフパルプ80部と、実施例1で得た本発明の吸収性樹脂粒子(1)210部とを気流型混合装置で混合した混合物を、坪量約270g/mとなるように均一に積層し、3Kg/cmの圧力で30秒間プレスして、吸収体(1)を得た。吸収体(1)を14cm×36cmの長方形に裁断し、各々の上下に吸収体と同じ大きさの吸水紙(坪量15.5g/m、王子製紙株式会社、ネピアティッシュふんわりスリム)を配置し、さらにポリエチレンシート(有限会社カンノ商会、ポリシート、厚み0.03mm)を裏面に、ポリエチレン製不織布(坪量20.0g/m、デュポン株式会社、タイベック)を表面に配置することにより紙おむつ(1)を作成した。
【0081】
<実施例14〜24>
吸収性樹脂粒子(1)を、吸収性樹脂粒子(2)〜(6)、(1S)〜(6S)のいずれかに変更したこと以外、実施例13と同様にして、さらに紙おむつ(2)〜(6)、(1S)〜(6S)を作成した。
【0082】
<比較例9〜16>
吸収性樹脂粒子(1)を、吸収性樹脂粒子(H1)〜(H4)、(H1S)〜(H4S)のいずれかに変更したこと以外、実施例13と同様にして、比較用の紙おむつ(H1)〜(H4)、(H1S)〜(H4S)を作成した。
【0083】
作成した紙おむつのSDMEによる表面ドライネス値を測定し、表2に示した。
【0084】
<SDMEによる表面ドライネス値>
SDMEによる表面ドライネス値は、SDME(Surface Dryness Measurement Equipment)試験器(WK system社製)を用いて次の手順で測定される。
SDME試験器の検出器を十分に湿らした紙おむつ(紙おむつを覆う程度の人工尿(塩化カルシウム0.03重量%、硫酸マグネシウム0.08重量%、塩化ナトリウム0.8重量%及びイオン交換水99.09重量%)中に浸し、60分放置した)の上に置き、0%ドライネス値を設定し、次に、SDME試験器の検出器を乾いた紙おむつ(紙おむつを80℃、2時間加熱乾燥した)の上に置き100%ドライネスを設定し、SDME試験器の校正を行う。
【0085】
次に、測定する紙おむつの中央に金属リング(内径70mm、外径80mm長さ50mm、重量300g)をセットし、人工尿80mlを注入する。注入後直ちに金属リングを取り去り、紙おむつの中央にSDME検出器を紙おむつに接触してセットし測定を開始する。測定開始後、2分後の値をSDMEによる表面ドライネス値とする。
【0086】
【表2】

【0087】
実施例1と比較例1との比較から、水溶性ケイ素化合物(c1)を使用した実施例は最大吸収速度が向上し、紙おむつの表面ドライネス値も向上していることが分かる。また、実施例1及び7と比較例4及び8との比較等から、実施例は、最大吸収速度が大きく、吸収性樹脂粒子にシアがかかっても粒子が壊れにくく、最大吸収速度の変化がないことが分かる。また、これらの吸収性樹脂粒子を使用した紙おむつの表面ドライネス値の結果から、実施例はシアをかけた吸収性樹脂粒子を使用しても紙おむつの表面ドライネス値が変化していないことが分かる。これらの結果は吸収性樹脂粒子内に配された固体ケイ素含有化合物と吸収性樹脂との界面が有効に機能しているためと考えられる。すなわち、本発明の吸収性樹脂粒子では、粒子内の空間が少ないにも関わらず、みかけの表面積が大きくなっていると推察される。したがって本発明の吸収性樹脂粒子を用いた吸収性物品は表面のドライ感が良好になり、おむつ生産中など吸収性樹脂粒子にシアがかかっても性能を保持することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の吸収性樹脂粒子は、各種の吸収体に適用することにより、表面ドライ感に優れた吸収性物品にすることができる。特に、紙おむつ(子供用紙おむつ及び大人用紙おむつ等)、ナプキン(生理用ナプキン等)、紙タオル、パッド(失禁者用パッド及び手術用アンダーパッド等)及びペットシート(ペット尿吸収シート)等の衛生用品に適しており、さらには紙おむつに最適である。なお、本発明の吸収性樹脂粒子は衛生用品のみならず、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤、青果物等の鮮度保持剤、肉類及び魚介類のドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、植物や土壌等の保水剤、結露防止剤、止水材やパッキング材並びに人工雪等、種々の用途にも有用である。
【符号の説明】
【0089】
1 ビューレット
2 空気流入細管
3 支持板
4 バルブ
5 バルブ
6 ゴム栓
7 平織りナイロンメッシュ
8 測定試料
9 小穴
10 円柱筒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と、水溶性ケイ素化合物(c)から誘導される固体ケイ素含有化合物(C)とを含んでなり、
(a1)及び/又は(a2)並びに(b)を水溶性ケイ素化合物(c)の存在下で重合して架橋重合体(A)を製造する工程、及び/又は架橋重合体(A)と水溶性ケイ素化合物(c)とを混合する工程を含む製造方法により得られる吸収性樹脂粒子。
【請求項2】
最大吸収速度が10以上である請求項1に記載の吸収性樹脂粒子。
【請求項3】
水溶性ケイ素化合物(c)が、水ガラス又はシラノールである請求項1又は2に記載の吸収性樹脂粒子。
【請求項4】
ケイ素の含有率が、吸収性樹脂粒子の重量に基づき0.001〜5.0重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子を用いて製造される吸収性物品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−12451(P2012−12451A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148846(P2010−148846)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(301023009)サンダイヤポリマー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】