説明

吸収性物品およびこれに用いる伸縮性シートの製造方法ならびにその装置

【課題】糸ゴムを用いた安価な伸縮性シートを效率よく製造し得る装置に対する要求がある。
【解決手段】伸長状態にある糸ゴムを整列状態で一対のシートの間に接合した本発明による伸縮性シートの製造装置は、相互に間隔をあけて配され、糸ゴム19cWを一端側から他端側へと移送するための一対の糸ゴム送り装置32A〜32Dと、これら糸ゴム送り装置32A〜32Dの一端側にてこれらの周囲を旋回し、糸ゴム19cWが糸ゴム送り装置32A〜32Dに伸長状態で巻き付けられるように、糸ゴム19cWを繰り出す旋回ヘッド31と、糸ゴム送り装置32A〜32Dの他端側に配され、一対の帯状をなすシート19aW,19bWが糸ゴム送り装置32A〜32Dの他端側に導かれた伸長状態の糸ゴム19cWを間に挾んで相互に重ね合わせた状態で送り込まれ、これらを一体的に接合するための一対の接合ロール33とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸ゴムを用いた伸縮性シートの製造装置およびその製造方法ならびにこの伸縮性シートを用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
展開型の使い捨ておむつにおいては、サイドフラップ部やファスニングテープに伸縮性を持たせ、着用時に使い捨ておむつのフィット感の向上を企図したものが特許文献1にて提案されている。特許文献1に開示された展開型の使い捨ておむつは、ファスニングテープとして弾性伸縮可能な複合材が用いられている。この複合材は、伸長状態で整列する糸ゴムを2枚のシートの間に挾んでこれらを一体的に接合したものである。一般的には、シートの長手方向に沿って糸ゴムを蛇行させたり、複数本の糸ゴムを相互に平行にシートの長手方向に沿って配したものをシートの幅方向に沿って切断することによって得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−072472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シート長手方向に伸縮性を有する伸縮複合材をサイドフラップ部やファスニングテープの本体部として用いた場合、使い捨ておむつの製造上、伸縮複合材をその長手方向に沿って使い捨ておむつに取り付けることができない。このため、使い捨ておむつへの取り付け時に伸縮複合材の向きを90度変えなければならず、使い捨ておむつへの取り付けが困難であるという問題があった。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、使い捨ておむつにそのサイドフラップ部やファスニングテープの本体部として向きを変えることなく簡単に取り付けることができる伸縮性シートの製造装置およびその製造方法ならびにこの伸縮性シートを用いた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態は、相互に間隔をあけて配され、糸ゴムを一端側から他端側へと移送するための一対の糸ゴム送り装置と、これら一対の糸ゴム送り装置の一端側にてこれらの周囲を旋回し、糸ゴムが当該一対の糸ゴム送り装置に伸長状態で巻き付けられるように、糸ゴムを繰り出す旋回ヘッドと、前記一対の糸ゴム送り装置の他端側に配され、一対の帯状をなすシートが前記糸ゴム送り装置の他端側に導かれた伸長状態の糸ゴムを間に挾んで相互に重ね合わせた状態で送り込まれ、これらを一体的に接合するための一対の接合ロールとを具えたことを特徴とする伸縮性シート製造装置にある。
【0007】
本発明においては、旋回ヘッドから繰り出される糸ゴムが伸長状態で一対の糸ゴム送り装置の一端側に巻き付けられ、これが糸ゴム送り装置によって他端側に移送される。このようにして、一対の糸ゴム送り装置の一端側から他端側にかけて螺旋状に巻き付けられた伸長状態の糸ゴムは、一対の帯状をなすシートと共に一対の接合ロールの間に送り込まれる。一対の帯状をなすシートは、一対の接合ロールによって伸長状態の糸ゴムを間に挾んだまま相互に重ね合わされ、これらが一体的に接合される。
【0008】
一対の帯状をなすシートを糸ゴムと共に重ね合わせて接合するため、一対のシートの少なくとも一方の重ね合わせ面に熱可塑性接着剤を塗布する塗工ヘッドを一対の接合ロールよりも上流側に配することができる。
【0009】
一対の糸ゴム送り装置を相互に間隔をあけて2つ配し、これら糸ゴム送り装置をそれぞれ独立に駆動できるようにすることが有効である。この場合、旋回ヘッドによる糸ゴムの巻き付け開始位置と一対の接合ロールによる接合位置との糸ゴム送り装置による糸ゴムの移送方向に沿った距離をL、一対の糸ゴム送り装置に巻き付けられる糸ゴムの巻き付け幅をW、この巻き付け幅方向に対する糸ゴムの傾斜角をθとすると、一方の対角位置にある2つの糸ゴム送り装置による糸ゴムの移送速度V1と、他方の対角位置にある2つの糸ゴム送り装置による糸ゴムの移送速度V2とがV2=V1(L+Wtanθ)/Lの関係を満たしていることが特に有効である。
【0010】
本発明の第2の形態は、伸長状態にある糸ゴムを帯状をなすシートの幅寸法よりも大きな振幅で前記帯状をなすシートの長手方向に沿って蛇行状態に保持するステップと、蛇行状態に保持された伸長状態にある糸ゴムを間に挾んで一対の帯状をなすシートを相互に重ね合わせ、相互に一体的に接合するステップとを具えたことを特徴とする伸縮性シートの製造方法にある。
【0011】
本発明において得られる伸縮性シートは、糸ゴムが帯状をなすシートの長手方向に沿って連続的に蛇行したものとなり、糸ゴムの弾性力は主として帯状をなすシートの幅方向に作用し、これを引き縮める結果をもたらす。
【0012】
本発明の第1の形態による伸縮性シート製造装置において、一対の接合ロールから送り出される一対の帯状をなすシートと一対の糸ゴム送り装置との間に介在する伸長状態の糸ゴムを切断するためのカッターをさらに具えることができる。
【0013】
本発明の第2の形態による伸縮性シートの製造方法において、蛇行状態に保持するステップが相互に間隔をあけて配された一対の糸ゴム送り装置に糸ゴムを巻き付けるステップを含むものであってよい。
【0014】
同様に、蛇行状態に保持するステップが帯状をなすシートに重ね合わされる糸ゴムの部分を相互に平行に整列させるステップを含むことができる。
【0015】
伸長状態にある糸ゴムを間に挾んで一対の帯状をなすシートを相互に重ね合わせ、これらを一体的に接合するステップは、帯状をなすシートの幅方向両側端部に糸ゴムに対する非接合領域を形成するステップを含むものであってよい。この場合、一体的に接合された帯状をなすシートの幅方向側端から伸長状態で突出する糸ゴムを切断するステップをさらに具えることができる。
【0016】
伸長状態の糸ゴムを挾んだ状態で一体的に接合された一対の帯状をなすシートをその長手方向に沿って幅方向に切断するステップをさらに具えることができる。
【0017】
本発明の第3の形態は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらトップシートとバックシートとの間に配される吸収体と、前記バックシートの後身頃領域の左右両側縁部から突出して前記バックシートの前身頃領域に接合されるファスニングテープとを具えた吸収性物品であって、前記ファスニングテープが本発明の第2の形態による方法にて製造された伸縮性シートを含み、この伸縮性シートの幅方向一端側が前記バックシートの後身頃領域に接合されていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明においては、この吸収性物品の着用時にバックシートの後身頃領域の左右側縁部から突出するファスニングテープをバックシートの前身頃領域に重ね合わせて接合する。この場合、ファスニングテープの伸縮性シートの一部を構成する糸ゴムが着用者のウエスト周り方向に延在しており、着用者のウエスト周りに吸収性物品を密着させる作用を発揮する。
【0019】
本発明の第3の形態による吸収性物品において、バックシートの前身頃領域に配された面ファスナーをさらに具え、この面ファスナーに対して剥離可能に接合される面ファスナーが伸縮性シートの幅方向他端側に配されているものであってよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の伸縮性シート製造装置によると、一対の帯状をなすシートの間にこれらの長手方向に沿って蛇行する伸長状態の糸ゴムが一体的に接合される結果、その幅方向に沿って伸縮性を持った伸縮性シートを製造することができる。
【0021】
一対の接合ロールから送り出される一対の帯状をなすシートと一対の糸ゴム送り装置との間に介在する伸長状態の糸ゴムを切断するためのカッターをさらに具えている場合、帯状をなすシートの長手方向に沿った糸ゴムの張力をなくすことができる。
【0022】
一対のシートの少なくとも一方の重ね合わせ面に熱可塑性接着剤を塗布する塗工ヘッドを一対の接合ロールよりも上流側に配した場合、伸長状態の糸ゴムを一対の帯状をなすシートに対して迅速かつ確実に接合することができる。
【0023】
一対の糸ゴム送り装置を相互に間隔をあけて2つ配し、これら糸ゴム送り装置をそれぞれ独立に駆動できるようにした場合、必要に応じて糸ゴムの間隔や向きなどを変更することができ、伸縮性シートの設計の自由度が向上する。この場合、一方の対角位置にある2つの糸ゴム送り装置による糸ゴムの移送速度V1と、他方の対角位置にある2つの糸ゴム送り装置による糸ゴムの移送速度V2とがV2=V1(L+Wtanθ)/Lの関係を満たすようにすれば、糸ゴムを相互に平行な一定間隔で一対の帯状をなすシートの間に接合することができる。
【0024】
本発明の第2の形態の伸縮性シートの製造方法によると、一対の帯状をなすシートの間にこれらの長手方向に沿って蛇行する伸長状態の糸ゴムが一体的に接合され、その幅方向に沿って伸縮性を持った伸縮性シートを得ることができる。
【0025】
蛇行状態に保持するステップが相互に間隔をあけて配された一対の糸ゴム送り装置に糸ゴムを巻き付けるステップを含む場合、伸長状態にある糸ゴムをシートの長手方向に沿って容易に蛇行させることができる。
【0026】
蛇行状態に保持するステップが帯状をなすシートに重ね合わされる糸ゴムの部分を相互に平行に整列させるステップを含む場合、個々の糸ゴムによって発生する張力をシートの幅方向に正確に揃えることができる。
【0027】
帯状をなすシートの幅方向両側端部に糸ゴムに対する非接合領域を形成するステップを含み、特に一体的に接合された帯状をなすシートの幅方向側端から伸長状態で突出する糸ゴムを切断するステップをさらに具えた場合、糸ゴムの折り返し部分をシートに対して非接合状態にすることができる。この結果、シートの長手方向に沿った張力がシートに作用するのを回避することが可能である。
【0028】
伸長状態の糸ゴムを挾んだ状態で一体的に接合された一対の帯状をなすシートをその長手方向に沿って幅方向に切断するステップを具えた場合、伸縮方向に対して直交する方向に沿って任意の長さの伸縮シートを得ることができる。
【0029】
本発明の吸収性物品によると、吸収性物品を製造する際のトップシートやバックシートの連続体の搬送方向と本発明の第2の形態による方法にて製造される伸縮性シートの連続体の搬送方向とを合致させることができる。この結果、バックシートおよび/またはトップシートに伸縮性シートを接合するための設備の複雑化を回避することが可能となる。
【0030】
バックシートの前身頃領域に面ファスナーを配し、この面ファスナーに対して剥離可能に接合される面ファスナーを伸縮性シートの幅方向他端側に配した場合、伸縮性シートを介してバックシートの後身頃領域をその前身頃領域に対して繰り返し剥離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による吸収性物品の一実施形態の使用状態を表す立体投影図である。
【図2】図1に示した実施形態の内側を展開状態で一部破断した平面図である。
【図3】図2中のIII−III矢視の拡大断面図である。
【図4】図1に示した実施形態におけるファスニングテープの連続体を模式的に表す破断平面図である。
【図5】図4に示したファスニングテープの連続体を製造するための本発明による伸縮性シート製造装置の一実施形態を模式的に表す平面図である。
【図6】図5に示した伸縮性シート製造装置の側面図である。
【図7】図6中のVII−VII矢視断面図である。
【図8】図5に示した実施形態において、糸ゴムの巻き掛け状態の外観を模式的に表す幾何図面である。
【図9】図8に対応した平面図である。
【図10】本発明による吸収性物品の他の一実施形態を展開状態で一部破断した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明による吸収性物品を展開型おむつに応用した実施形態について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明するが、本発明における「吸収性物品」とは、乳幼児または介護用のおむつや成人用失禁用品などを包含するものである。従って、本発明はこのような実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であることに注意されたい。
【0033】
本実施形態における展開型おむつの使用状態における外観を図1に示し、その展開形状を図2に示し、図2中のIII−III矢視断面構造を図3に示す。すなわち、本実施形態における展開型おむつ10は、液不透過性のバックシート11と、液透過性のセンタートップシート12cおよび一対のサイドトップシート12s(以下、これらを一括してトップシート12と略記する場合がある)と、吸収体13とを有する。吸収体13は、相互に重ね合わされるバックシート11とトップシート12との間に配され、これらは一体的に接合される。
【0034】
本実施形態においては、センタートップシート12cの左右両側に覆い重なる左右のサイドトップシート12sの内側部分(図2中、中央側)がセンタートップシート12cに対して非接合状態となっている。この内側部分に立体ギャザー14を形成するため、サイドトップシート12sの内側端縁部に糸ゴム15が伸張状態で接合されている。バックシート11およびトップシート12は、前記吸収体13の幅方向両側縁から外側へ延出する前後一対のサイドフラップ部16f,16rを有する。これらサイドフラップ部16f,16rの間の股下領域Cには、着用者に脚周り開口部17となる一対の繰り抜き部18が形成されている。
【0035】
後身頃領域R側のサイドフラップ部16rの幅方向両側縁部には、着用時に前身頃領域F側のサイドフラップ部16fに重ね合わせてこれらをつなぐ左右一対のファスニングテープ19の基端部が取り付けられている。ファスニングテープ19を介して後身頃領域R側のサイドフラップ部16rを前身頃領域F側のサイドフラップ部16fに重ね合わせることにより、繰り抜き部18の存在によって脚周り開口部17が形成される。このファスニングテープ19は、その幅方向に沿って伸縮性を持たせた伸縮シートで構成され、図4に示すようなウェブ状をなすファスニングテープの連続体19Wをその長手方向に沿って図中、二点鎖線で示すように一定間隔で切断することにより得られる。本実施形態におけるファスニングテープ19は、アッパーシート19aと、ロアーシート19bと、糸ゴム19cと、面ファスナー19dとを具えている。糸ゴム19cは、アッパーシート19aとロアーシート19bとの間に接着剤19eを介して伸長状態で接合されているため、これら糸ゴム19cを接合した領域がファスニングテープ19の幅方向(図4中、左右方向)に沿って伸縮可能となる。面ファスナー19dは、前身頃領域F側のバックシート11に接合された面ファスナーシート20に対して繰り返し剥離可能に接合可能である。従って、糸ゴム19cが伸長状態となるようにファスニングテープ19を引き延ばして前身頃領域Fの面ファスナーシート20に接合することにより、着用者のウエスト周りに対して常に適切な締め付け力を与えることができる。
【0036】
また、この展開型おむつ10の後身頃領域R側のバックシート11とトップシート12との間には、ウエスト周り弾性シート21が伸長状態で接合されている。ウエスト周り弾性シート21はウエスト周り開口部22に沿って配設され、ウエストギャザー23を形成して着用者のウエスト周りのフィット性を良好にする機能を有する。同様に、吸収体13の両側縁の外側の長手方向に沿った股下領域Cから前身頃領域F側および後身頃領域R側にかけて脚周り弾性部材24が配されている。この脚周り弾性部材24はバックシート11とトップシート12との間に伸長状態で固定され、レッグギャザー25を形成して着用者の脚周りのフィット性を良好にする機能を有する。
【0037】
従って、このような展開型おむつ10を着用した状態では、尿や便は、トップシート12上に導かれ、水分がトップシート12を通過して吸収体13に吸収されるこことなる。
【0038】
上述したファスニングテープの連続体19Wの製造装置の平面形状を模式的に図5に示し、その側面形状を図6に示し、図6中のVII−VII矢視断面形状を図7に示す。すなわち、この装置は、糸ゴムの連続体19cWを繰り出す旋回ヘッド31と、糸ゴム送り装置32A,32B,32C,32D(以下、これらをまとめて糸ゴム送り装置32と記述する場合がある)と、一対の接合ロール33と、糸ゴムの連続体19cWを切断するためのカッター34とを具えている。
【0039】
旋回ヘッド31は内部が中空となった旋回アーム35の先端に取り付けられ、この旋回アーム35の基端に設けられた中空のアーム駆動軸36が架台37に対して回転自在に支持されている。糸ゴムの連続体19cWは、アーム駆動軸36および旋回アーム35の内部に形成された図示しない糸ゴム通路を介し、旋回ヘッド31の先端から糸ゴム送り装置32の一端側の糸ゴム巻き付け開始位置PSに伸長状態で繰り出されるようになっている。架台37にはアーム駆動軸36を中心として旋回ヘッド31を旋回アーム35と共に旋回させるためのアーム駆動モーター38が取り付けられている。このアーム駆動モーター38とアーム駆動軸36との間には、アーム駆動モーター38からの回転力をアーム駆動軸36に伝達するための動力伝達機構39が組み込まれている。従って、旋回ヘッド31は、糸ゴム送り装置32の一端側の糸ゴム巻き付け開始位置PSにてこれらの周囲を旋回しつつ糸ゴムの連続体19cWを繰り出す。これにより、糸ゴムの連続体19cWが糸ゴム送り装置32の一端側の糸ゴム巻き付け開始位置PSに伸長状態で巻き付けられるようになっている。
【0040】
ファスニングテープの連続体19Wの幅寸法よりも左右方向(図5中、左右方向)に間隔をあけて配される一対の糸ゴム送り装置32は、本実施形態では上下方向(図6中、上下方向)にも相互に間隔をあけて2つ設けられている。つまり本実施形態では全部で4台の糸ゴム送り装置32A,32B,32C,32Dがアーム駆動軸36の回転軸線から等距離にあって、これを囲むように配されている。糸ゴム送り装置32は、糸ゴムの連続体19cWをその一端側の糸ゴム巻き付け開始位置PSから他端側の接合位置PEへと移送する。個々の糸ゴム送り装置32は、無端のベルト40と、この無端のベルト40が巻き掛けられる一対のプーリー41と、これら一対のプーリー41を回転自在に支持するブラケット42と、ベルト駆動モーター43と、その動力伝達機構44とを具えている。つまり、個々の糸ゴム送り装置32A〜32Dは、これらの無端ベルト40をそれぞれ独立に任意の速度で駆動できるようになっている。ベルト駆動モーター43は、何れか一方のプーリー41を駆動するためのものであり、動力伝達機構44は、このベルト駆動モーター43と一方のプーリー41との間に組み込まれてベルト駆動モーター43からの回転力をプーリー41に伝達する。一対のプーリー41は、アーム駆動軸36の軸線方向に沿って相隔ててブラケット42に配され、アーム駆動軸36の軸線から最も離れた位置のベルト40の部分が糸ゴム搬送部40tを画成する。この糸ゴム搬送部40tに位置するベルト40が移動することにより、糸ゴムの連続体19cWは4台の糸ゴム送り装置32に対して螺旋状に巻き付けられた状態となる。糸ゴム搬送部40tは、ベルト40が糸ゴムの連続体19cWに接する領域であり、これ以外の部分が糸ゴムの連続体19cWに接触しないように、各糸ゴム送り装置32のプーリー41の回転軸線は、適宜傾けられた状態となっている(図7参照)。特に、図7中、上側に位置する左右一対の糸ゴム送り装置32C,32Dが後述する一対の接合ロール33への糸ゴムの連続体19cWの移送経路に干渉しないように、大きく傾けられていることに注意されたい。
【0041】
本実施形態では、図7中、一方の対角位置にある2台の糸ゴム送り装置32B,32Dのベルト40の移送速度V2が他方の対角位置にある2台の糸ゴム送り装置32A,32Cの移送速度V1よりも高く設定されている。その理由は、アッパーシートの連続体19aWとロアーシートの連続体19bWとの間に接合される糸ゴムの連続体19cWが相互に平行に整列するようにさせるためである。つまり、接合位置PEにて左右一対の糸ゴム送り装置32A,32Bおよび32C,32Dに掛け渡される糸ゴムの連続体19cWをアーム駆動軸36の軸線に対して直交させる必要がある。ここで、4台の糸ゴム送り装置32A〜32Dの糸ゴム搬送部40tと、これらに巻き付けられる糸ゴムの連続体19cWとの関係を模式的に図8に示し、その平面形状を図9に示す。糸ゴム巻き付け開始位置PSにて糸ゴム送り装置32B,32Dの糸ゴム搬送部40tに巻き掛けられる糸ゴムの接触点bn,dn(nは正の整数)がその接合位置PEに達した時点で、これらと左右方向(図9中、上下方向)に隣接する糸ゴム送り装置32A,32Cの糸ゴム搬送部40tに巻き付けられた糸ゴムの接触点An,Cnに掛け渡される糸ゴムの連続体19cWの方向Ann,Cnnを糸ゴム搬送部40tの搬送方向に対して直交させる。換言すれば、接合位置PEにおける糸ゴム送り装置32の糸ゴム搬送部40tにそれぞれ巻き付けられる糸ゴムの連続体19cWの方向Ann,Cnnを一対の接合ロール33の回転軸線と平行に設定する。このため、糸ゴム送り装置32B,32Dのベルト40の移送速度V2を糸ゴム送り装置32A,32Cによるベルト40の移送速度V1よりも以下のように高める必要がある。ここで、ベルト40に対する糸ゴムの連続体19cWの接触位置がその搬送中に摩擦力によってずれないと仮定し、糸ゴム巻き付け開始位置PSと接合位置PEとの間の糸ゴム送り装置32による糸ゴムの連続体19cWの移送方向に沿った距離をL、糸ゴム送り装置32に巻き付けられる糸ゴムの連続体19cWの巻き付け幅をW、この巻き付け幅方向に対する糸ゴムの連続体19cWの傾斜角をθとする。V1=V2の場合、糸ゴム送り装置32B,32Dに対する糸ゴムの連続体19cWの接触位置bn,dnは、糸ゴム送り装置32A,32Cに対する糸ゴムの連続体19cWの接触位置An,Cnに対し、糸ゴムの連続体19cWの移送方向に沿ってWtanθだけずれる。そこで、糸ゴム送り装置32A,32Cのベルト40が距離Lだけ移動する時間で、糸ゴム送り装置32B,32Dのベルト40が距離(L+Wtanθ)だけ移動するような移送速度V2を設定する。つまり、L/V1=(L+Wtanθ)/V2の関係から、V2=V1(L+Wtanθ)/Lの条件を満たせばよいことが理解できよう。
【0042】
しかしながら、アッパーシートの連続体19aWとロアーシートの連続体19bWとの間に接合される糸ゴムの連続体19cWを相互に平行に整列させる必要がない場合には、すべての糸ゴム送り装置32A〜32Dの移送速度を等しく設定することができる。この場合、糸ゴム送り装置32を左右に一対(2台)だけ設けて設備をより簡略化させることが可能となる。また、アッパーシートの連続体19aWとロアーシートの連続体19bWとの間に接合される糸ゴムの連続体19cWがファスニングテープ19の幅方向(図2中、左右方向)に対して交互に逆向きに傾斜した蛇行状態になることに注意されたい。
【0043】
何れにしろ、伸長状態にある糸ゴムの連続体19cWは、帯状をなすアッパーシートの連続体19aWおよびロアーシートの連続体19bWの幅寸法よりも大きな振幅でこれらの長手方向に沿って蛇行状態に保持されることとなる。そして、これがアッパーシートの連続体19aWとロアーシートの連続体19bWとの間に挟まれた状態で一体的に接合される。
【0044】
糸ゴム送り装置32の他端側の下方に設定された接合位置PEに配される一対の接合ロール33の間には、アッパーシートの連続体19awとロアーシートの連続体19bwとが導かれる。さらに、これらの間に糸ゴム送り装置32から矩形波形状に整形された糸ゴムの連続体19cWが伸長状態で導かれる。一対の帯状をなすアッパーシートの連続体19awおよびロアーシートの連続体19bwの少なくとも一方の重ね合わせ面には接着剤19eが塗布されている。一対の帯状をなすアッパーシートの連続体19awおよびロアーシートの連続体19bwの搬送方向に沿って一対の接合ロール33よりも上流側には、この接着剤19eをこれらの重ね合わせ面の所定領域に塗布するための図示しない塗工ヘッドが配されている。
【0045】
この塗工ヘッドから供給される接着剤19eは、周知の熱可塑性接着剤、一般的にはホットメルト接着剤であってよい。接着剤19eはアッパーシートの連続体19aWまたはロアーシートの連続体19bWの全域に塗布されておらず、これらの幅方向両側端部には接着剤19eが塗布されていない非接合領域Zが形成されている。従って、この接着剤19eの塗布領域に重ね合わされる伸長状態の糸ゴムの部分がアッパーシートの連続体19aWおよびロアーシートの連続体19bWと一体化され、ファスニングテープの連続体19Wとなってその幅方向に沿った伸縮性を与える。これに対し、接着剤19eの塗布領域から外れた非接合領域Zに介在する糸ゴムの部分は、アッパーシートの連続体19aWおよびロアーシートの連続体19bWに対して非接合状態となる。このため、この部分はアッパーシート19aおよびロアーシート19bに伸縮性をもたらさないことに注意されたい。つまり、一対の接合ロール33は、アッパーシートの連続体19aWおよびロアーシートの連続体19bWと糸ゴム送り装置32の他端側に導かれた伸長状態の糸ゴムの連続体19cWとを接着剤19eによって一体的に接合する。一対の接合ロール33の左右両端部はフレーム45に図示しない軸受を介して回転自在に支持されている。フレーム45に設置されたロール駆動モーター46と一方の接合ロール33の長手方向一端部との間には、動力伝達機構47が組み込まれている。この動力伝達機構47は、一対の接合ロール33を駆動回転してアッパーシートの連続体19aWおよびロアーシートの連続体19bWと糸ゴムの連続体19cWとを一体的に接合させるためのものである。
【0046】
カッター34は、下側に位置する糸ゴム送り装置32A,32Bのブラケット42にそれぞれ取り付けられており、接合位置PEと糸ゴム搬送部40tの終端との間に配されている。これによって、接合位置PEにてアッパーシートの連続体19aWとロアーシートの連続体19bWとに接合された後に、これらの幅方向側端から突出して糸ゴム送り装置32との間に伸長状態で介在する糸ゴムの連続体19cWが切断されるようになっている。
【0047】
このようにして、アッパーシートの連続体19aWおよびロアーシートの連続体19bWの幅方向に沿って糸ゴム19cが相互に平行に整列したシートの連続体が得られる。このシートの連続体に対し、面ファスナーの連続体19dWをロアーシートの連続体19bWの幅方向一端側(ファスニングテープ19の先端側)に重ねて接合し、図4に示すようなファスニングテープの連続体19Wを得る。しかる後、これをその長手方向に一定間隔で切断して得られるファスニングテープ19の基端側(幅方向他端側)を先のバックシート11とサイドトップシート12cとの間に接合する。この場合、ファスニングテープの連続体19Wの搬送方向とバックシート11の連続体およびサイドトップシート12sの連続体の搬送方向とを同じ方向に設定することができる。このため、ファスニングテープの連続体19Wから切り離されたファスニングテープ19の向きを90度回転させるような手間が不要となり、その製造設備の複雑化を回避することができる。
【0048】
なお、接着剤19eは、その塗布領域においてアッパーシートの連続体19aWおよびロアーシートの連続体19bWの長手方向(図4中、上下方向)に連続的であって、かつその幅方向(図4中、左右方向)に間隔をあけて塗布することが好ましい。この場合、糸ゴム19cがアッパーシートの連続体19aWおよびロアーシートの連続体19bWに対してその伸縮方向に沿って間欠的に接合されることとなる。この結果、糸ゴム19cによって形成されるファスニングテープ19のギャザーを接着剤19eが存在しない領域の分だけ柔らかくすることができる。
【0049】
上述したような伸縮シートを用いたおむつであれば、上述した実施形態に限らず、例えば図10に展開状態で示す展開型のおむつであっても適用可能である。図10に示した実施形態において、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同一符号を記してある。この実施形態におけるファスニングテープ19は、面ファスナー19dが予め取り付けられたファスナーシート19fをアッパーシート19aとロアーシート19bとの間に挟み込んで一体的に固定したものである。また、バックシート11の前身頃領域Fの左右両側に独立したフラップシート26を接合し、後身頃領域R側に配されたファスニングテープ19と共に先の実施形態におけるサイドフラップ部16fと同じ機能を持たせるようにしている。本実施形態においても、ファスニングテープ19には糸ゴム19cが伸長状態で接合されおり、着用者のウエスト周りに沿って伸縮性を持たせた伸縮性シートとして機能するものである。
【0050】
このように、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0051】
10 展開型おむつ
11 バックシート
12c センタートップシート
12s サイドトップシート
13 吸収体
14 立体ギャザー
15 糸ゴム
16f,16r サイドフラップ部
17 脚周り開口部
18 繰り抜き部
19 ファスニングテープ
19a アッパーシート
19aW アッパーシートの連続体
19b ロアーシート
19bW ロアーシートの連続体
19c 糸ゴム
19cW 糸ゴムの連続体
19d 面ファスナー
19dW 面ファスナーの連続体
19e 接着剤
19f ファスナーシート
19W ファスニングテープの連続体
20 面ファスナーシート
21 ウエスト周り弾性シート
22 ウエスト周り開口部
23 ウエストギャザー
24 脚周り弾性部材
25 レッグギャザー
26 フラップシート
C 股下領域
F 前身頃領域
R 後身頃領域
Z 非接合領域
31 旋回ヘッド
32A,32B,32C,32D 糸ゴム送り装置
33 接合ロール
34 カッター
35 旋回アーム
36 アーム駆動軸
37 架台
38 アーム駆動モーター
39 動力伝達機構
40 ベルト
40t 糸ゴム搬送部
41 プーリー
42 ブラケット
43 ベルト駆動モーター
44 動力伝達機構
45 フレーム
46 ロール駆動モーター
47 動力伝達機構
1,V2 ベルトの移送速度
S 糸ゴム巻き付け開始位置
E 接合位置
L 糸ゴム巻き付け開始位置と接合位置との間の距離
W 糸ゴムの連続体の巻き付け幅
θ 巻き付け幅方向に対する糸ゴムの連続体の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に間隔をあけて配され、糸ゴムを一端側から他端側へと移送するための一対の糸ゴム送り装置と、
これら一対の糸ゴム送り装置の一端側にてこれらの周囲を旋回し、糸ゴムが当該一対の糸ゴム送り装置に伸長状態で巻き付けられるように、糸ゴムを繰り出す旋回ヘッドと、
前記一対の糸ゴム送り装置の他端側に配され、一対の帯状をなすシートが前記糸ゴム送り装置の他端側に導かれた伸長状態の糸ゴムを間に挾んで相互に重ね合わせた状態で送り込まれ、これらを一体的に接合するための一対の接合ロールと
を具えたことを特徴とする伸縮性シート製造装置。
【請求項2】
前記一対の接合ロールから送り出される一対の帯状をなすシートと前記一対の糸ゴム送り装置との間に介在する伸長状態の糸ゴムを切断するためのカッターをさらに具えたことを特徴とする請求項1に記載の伸縮性シート製造装置。
【請求項3】
一対の帯状をなすシートの搬送方向に沿って前記一対の接合ロールよりも上流側に配され、一対の帯状をなすシートの少なくとも一方の重ね合わせ面に熱可塑性接着剤を塗布する塗工ヘッドをさらに具えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の伸縮性シート製造装置。
【請求項4】
前記一対の糸ゴム送り装置が相互に間隔をあけて2つ配され、これら糸ゴム送り装置がそれぞれ独立に駆動できるようになっていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の伸縮性シート製造装置。
【請求項5】
前記旋回ヘッドによる糸ゴムの巻き付け開始位置と前記一対の接合ロールによる接合位置との前記糸ゴム送り装置による糸ゴムの移送方向に沿った距離をL、前記一対の糸ゴム送り装置に巻き付けられる糸ゴムの巻き付け幅をW、この巻き付け幅方向に対する糸ゴムの傾斜角をθとした場合、一方の対角位置にある2つの糸ゴム送り装置による糸ゴムの移送速度V1と、他方の対角位置にある2つの糸ゴム送り装置による糸ゴムの移送速度V2とがV2=V1(L+Wtanθ)/Lの関係を満たしていることを特徴とする請求項4に記載の伸縮性シート製造装置。
【請求項6】
伸長状態にある糸ゴムを帯状をなすシートの幅寸法よりも大きな振幅で前記帯状をなすシートの長手方向に沿って蛇行状態に保持するステップと、
蛇行状態に保持された伸長状態にある糸ゴムを間に挾んで一対の帯状をなすシートを相互に重ね合わせ、相互に一体的に接合するステップと
を具えたことを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
【請求項7】
前記蛇行状態に保持するステップは、相互に間隔をあけて配された一対の糸ゴム送り装置に糸ゴムを巻き付けるステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の伸縮性シートの製造方法。
【請求項8】
前記蛇行状態に保持するステップは、前記帯状をなすシートに重ね合わされる前記糸ゴムの部分を相互に平行に整列させるステップを含むことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の伸縮性シートの製造方法。
【請求項9】
伸長状態にある糸ゴムを間に挾んで一対の帯状をなすシートを相互に重ね合わせ、これらを一体的に接合するステップは、前記帯状をなすシートの幅方向両側端部に前記糸ゴムに対する非接合領域を形成するステップを含むことを特徴とする請求項6から請求項8の何れかに記載の伸縮性シートの製造方法。
【請求項10】
一体的に接合された前記帯状をなすシートの幅方向側端から伸長状態で突出する糸ゴムを切断するステップをさらに具えたことを特徴とする請求項6から請求項9の何れかに記載の伸縮性シートの製造方法。
【請求項11】
伸長状態の前記糸ゴムを挾んだ状態で一体的に接合された前記一対の帯状をなすシートをその長手方向に沿って一定間隔で幅方向に切断するステップをさらに具えたことを特徴とする請求項6から請求項10の何れかに記載の伸縮性シートの製造方法。
【請求項12】
液透過性のトップシートと、
液不透過性のバックシートと、
これらトップシートとバックシートとの間に配される吸収体と、
前記バックシートの後身頃領域の左右両側縁部から突出して前記バックシートの前身頃領域に接合されるファスニングテープと
を具えた吸収性物品であって、前記ファスニングテープが請求項11に記載の方法にて製造された伸縮性シートを含み、この伸縮性シートの幅方向一端側が前記バックシートの後身頃領域に接合されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
前記バックシートの前身頃領域に配された面ファスナーをさらに具え、この面ファスナーに対して剥離可能に接合される面ファスナーが前記伸縮性シートの幅方向他端側に配されていることを特徴とする請求項12に記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−127240(P2011−127240A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285360(P2009−285360)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】