説明

吸収性物品の裏面シート

【課題】吸収性物品をショーツ等の衣類から引き剥がす際の音を低減することができる、吸収性物品の裏面シート及びそれを用いた吸収性物品等を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品の裏面シート3は、液不透過性シート31と不織布32とが積層されて一体化された構造を有し、該不織布32からなる面34に衣類に固定するための粘着剤層6が設けられるものであって、液不透過性シート31は、温度25℃、周波数2000Hzにおける損失正接(tanδ)が0.2〜3.0であり、不織布32は、坪量5〜300g/m2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の裏面シート及びそれを用いた吸収性物品等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品においては、裏面シートに粘着剤層を設け、該粘着剤層を介して吸収性物品をショーツ等の衣類に固定することが広く行われている。粘着剤層を介したショーツ等への固定により、適切な位置に容易に固定することができ、また、着用中の位置ずれを防止することができる。しかし、その一方において、吸収性物品をショーツ等から剥離する際に音が発生し、他人に吸収性物品の使用や交換等を気付かれたくない使用者等を不安にさせることにもなる。
【0003】
特許文献1には、裏面シートを不織布のみから構成して、通気性の裏面シートとすると共に剥離音を低減することが記載されている。
また、特許文献2,3には、吸収性物品を衣類から剥離する際の剥離音ではないが、おむつのファスナーテープ等に設けられた感圧性接着剤層を、それを圧着したターゲットテープ等の被着体から剥離する際の音を、該被着体上にシリコーン系処理剤(剥離剤)を施して低減することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−132961号公報
【特許文献2】特開平5−17728号公報
【特許文献2】特開平5−146467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1には、裏面シートに液不透過性シートを使用することに関して記載されておらず、特許文献1の裏面シートでは、吸収性物品の使用中に液モレが発生しやすいという課題がある。また、不織布に液不透過性シートを貼り合わせ、それを裏面シートとして用いると、不織布のみからなる場合に比べて剥離音が大きくなることが判明しており、単に特許文献1で用いた不織布に液不透過性シートを貼り合わせても、衣類から剥離する際の剥離音の課題を解決できない。
また、特許文献2,3記載の発明は、感圧性接着剤層とそれを圧着する被着体とが一つの物品内に存在する場合に適用されるものであり、下着から吸収性物品を剥離する際の剥離音を低減するために、不特定の下着に対してシリコーン系処理剤(剥離剤)を施すことは実質的に不可能である。
【0006】
従って、本発明の目的は、吸収性物品をショーツ等の衣類から引き剥がす際の音を低減することができる裏面シート及びそれを用いた吸収性物品等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液不透過性シートと不織布とが積層されて一体化された構造を有し、該不織布からなる面に衣類に固定するための粘着剤層が設けられる、吸収性物品の裏面シートであって、前記液不透過性シートは、温度25℃、周波数2000Hzにおける損失正接(tanδ)が0.2〜3.0であり、前記不織布は、坪量5〜300g/m2である、吸収性物品の裏面シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、吸収層及び請求項1〜4の何れかに記載の裏面シートを備え、該裏面シートにおける前記不織布からなる面に粘着剤層が設けられている吸収性物品であって、前記粘着剤層が、軟化剤を20〜45質量%含むホットメルト型の粘着剤を用いて形成されている吸収性物品を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、吸収層及び請求項1〜4の何れかに記載の裏面シートを備え、該裏面シートにおける前記不織布からなる面に粘着剤層が設けられている吸収性物品を、クロッチ部が天竺編の布からなるショーツと組み合わせて使用することを推奨する表示を有する包装材に収納してなる、吸収性物品の包装体、及び、吸収層及び請求項1〜4の何れかに記載の裏面シートを備え、該裏面シートにおける前記不織布からなる面に粘着剤層が設けられている吸収性物品と、クロッチ部が天竺編の布からなるショーツとを組み合わせてなる、吸収性物品セットを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収性物品の裏面シートによれば、吸収性物品をショーツ等の衣類から引き剥がす際の音を低減することができる。
本発明の吸収性物品によれば、吸収性物品をショーツ等の衣類から引き剥がす際の音を一層低減することができる。
本発明の吸収性物品の包装体及び吸収性物品セットによれば、吸収性物品をショーツから引き剥がす際の音の低減効果に優れた、吸収性物品及びショーツの組み合わせを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る吸収性物品の裏面シート3は、図1に示すように、液不透過性シート31と不織布32とが積層されて一体化された構造を有している。裏面シート3は、生理用ナプキン等の吸収性物品に組み込まれた状態においては、図1に示すように、裏面シート3の不織布からなる面34にショーツ等の衣類に固定するための粘着剤層6が設けられる。
【0013】
裏面シートに用いる液不透過性シート31は、温度25℃、周波数2000Hzにおける損失正接(tanδ,以下、単に「tanδ」ともいう)が0.2〜3.0である。tanδが0.2未満であると、吸収性物品を衣類から引き剥がす際の音の低減効果が充分に得られず、tanδが3.0超であると、裏面シートとして使用するに充分な強度を確保することが困難になる。
【0014】
周波数2000Hzにおけるtanδを規定する理由は以下の通りである。即ち、ショーツ等の衣類から吸収性物品を引き剥がす際における、裏面シートに設けられた粘着剤層とショーツとの界面の状態を観察したところ、裏面シートとショーツとの間の距離が拡大するに連れて、裏面シートとショーツとの間で粘着剤の一部が引き伸ばされ、その引き伸ばされた粘着剤の一部がショーツから離れる際に、裏面シートに振動を与えて音を発生させることを知見した。その音(以下、剥離音ともいう)の周波数成分を、騒音計(リオン株式会社製「普通騒音計NL−20」および「小型FFT分析器SA−78」)を用いて分析したところ、2000Hz付近の音の成分が特に多く含まれていた。このことから、2000Hzにおけるtanδが高いことにより、本願発明においては、衣類から吸収性物品を引き剥がす際に生じた振動エネルギーを効率良く熱エネルギーに変換でき、効率よく剥離音を低減させることができたと推定されるからである。
【0015】
液不透過性シートは、吸収性物品を衣類から引き剥がす際の音の一層の低減及び強度の確保の観点から、温度25℃、周波数2000Hzにおけるtanδが、0.2〜2.0であることが好ましく、0.5〜1.0であることがより好ましい。
【0016】
液不透過性シートは、動的粘弾性測定において、温度25℃、周波数2000Hzにおけるtanδが0.2〜3.0である限り特に制限されるものではないが、成形加工性の点から熱可塑性エラストマーを含む(熱可塑性エラストマーが100質量%のものも含む)ことが好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。
【0017】
前記スチレン系エラストマーとしては、スチレン成分(A)とゴム成分(B)とを有するAB型又はABA型のブロック共重合体であり且つ前記スチレン成分(A)の含有量(共重合比)が5〜80質量%であるものが好ましく、例えばスチレン−ブタジエンジブロック共重合体及びその水添物、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体及びその水添物、スチレン−イソプレンジブロック共重合体及びその水添物、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体及びその水添物、スチレン−ビニルイソプレンジブロック共重合体及びその水添物、スチレン−ビニルイソプレン−スチレントリブロック共重合体及びその水添物などが挙げられる。
前記オレフィン系エラストマーとしては、プロピレンと炭素数が2から20のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−プロピレンゴムとポリエチレン、ポリプロピレンとの単純ブレンド品、ソフトセグメントであるエチレン−プロピレンゴムの一部分のみ架橋し、それにポリエチレン、ポリプロピレンを複合化した架橋タイプ品、エチレン−プロピレンゴムを完全に架橋させ、それをポリエチレン、ポリプロピレンに分散させた完全架橋タイプ品が挙げられる。
【0018】
前記ウレタン系エラストマーとしては、種々の構造のものが挙げられるが、例えばクラレ(株)製のクラミロンU、旭硝子(株)製のユーファイン、協和発酵(株)製のエステン、大日精化工業(株)製のレザミンP、ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のパンデックス、デスモパン、日本ミラクトラン(株)製のミラクトラン、日清紡績(株)製の日清紡モビロンなどが挙げられる。
【0019】
前記塩化ビニル系エラストマーとしては、高重合型(重量平均分子量=4000以上)、架橋型、共重合型タイプが挙げられる。前記ポリエステル系エラストマーとしては、ソフトセグメントに炭素数が2〜20、重合度が1〜50の脂肪族ポリエーテルを使用したポリエステル・ポリエーテルタイプ品と、ソフトセグメントに重量平均分子量が50〜5000の脂肪族ポリエステルを使用したポリエステル・ポリエステルタイプ品が挙げられる。前記ポリアミド系エラストマーとしては、ソフトセグメントに炭素数が2〜20、重合度が1〜50のポリエーテルを使用したポリエーテルアミドタイプ品と、ソフトセグメントに炭素数が2〜20、重合度が1〜50のポリエーテルと重量平均分子量が50〜5000のポリエステルを使用したポリエーテルポリエステルアミドタイプ品が挙げられる。
【0020】
上述した各種の熱可塑性エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて液不透過性シートの材料として用いることができる。また、熱可塑性エラストマーのみを用いても良いし、熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂とブレンドして用いてもよく、無機フィラーや可塑剤などを混合して用いても良い。熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびその加水分解物、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)などの変性ポリエチレンなどが挙げられる。可塑剤としては、パラフィンオイル、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂及び可塑剤も、それぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
液不透過性シート中の熱可塑性エラストマーの含有率は、剥離音低減効果の観点から10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは30〜100質量%であり、更に好ましくは50〜100質量%である。無機フィラー等の、ポリマー成分以外の成分を配合する場合の熱可塑性エラストマーの含有率は、無機フィラー等を除くポリマー成分中の含有量が上記の範囲内であることが好ましい。
【0022】
液不透過性シートは、成形性等の観点から、材料としてスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びウレタン系エラストマーからなる群から選択される1種以上の熱可塑性エラストマーを含有することが好ましく、これらの熱可塑性エラストマーの含有率(2種以上を含有する場合は合計含有率)は、該液不透過性シート中(無機フィラー等の、ポリマー成分以外の成分を含む場合は、液不透過性シートのポリマー成分中)50質量%以上であることが好ましい。
液不透過性シートは、剥離音低減及び成形性、入手性の観点から、スチレン系熱可塑性エラストマーを含有し、該スチレン系熱可塑性エラストマーの含有率が、該液不透過性シート中の全ポリマーに対して50質量%以上であることが更に好ましい。
【0023】
液不透過性シートの製造方法は、特に制限されず、例えばTダイ法、インフレーション法などが挙げられる。液不透過性シートの厚さは、成形性、強度の点から例えば5〜100μmであり、好ましくは10〜50μmであり、より好ましくは15〜30μmである。
【0024】
裏面シートに用いる不織布32は、坪量が5〜300g/m2である。不織布32としては、坪量が5〜300g/m2である限り、素材、製造法などは特に限定されないが、感触の観点から有機系繊維を用いた不織布が好ましい。前記有機系繊維としては、木綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン、キュプラの再生繊維、アセテート、プロミックスの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル系、ビニロン、ポリ塩化ビニル、ビニリデン、ポリオレフィン系、ポリウレタン、ポリクラール、フルオロカーボン系、ノボイド系などの合成繊維等が挙げられる。これらの中でも、感触、成形性、価格の観点からエチレン、プロピレン、ブテンをベースとしたポリオレフィン系繊維、またはポリエステル系繊維が好ましい。
また不織布の感触と強度とのバランスから、2種類以上の繊維の混紡、また芯/鞘、サイドバイサイド、海島、分割といった複合繊維も好ましく用いられる。
【0025】
また、不織布は、感触の観点から、その製造方法が、サーマルボンド法、フエルト法、スティッチ法、ニードルパンチ法、スパンレース法、スパンボンド法、網状法、メルトブロー法であることが好ましい。
不織布の構成繊維は、その繊維径が、感触の観点から30μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは8μm以下である。不織布の構成繊維繊維径の下限値は、特に制限されないが、生産性、入手性の観点から、例えば0.5μmである。
【0026】
不織布32の坪量は、剥離音の低減と感触の観点から5〜300g/m2であるが、感触及び価格の観点から、好ましくは10〜70g/m2、更に好ましくは15〜50g/m2である。
また不織布32の厚みは、剥離音の一層の低減の観点から30〜1000μmであることが好ましく、剥離音低減効率と装着時のフィット性とのバランスから、より好ましくは70〜900μm、更に好ましくは100〜800μm、特に好ましくは150〜700μmである。
なお、不織布32の厚みは、不織布に0.5g/cm2の荷重をかけて、その時の厚みをレーザー変位計(キーエンス(株)製 LK−2110)等によって求めた値である。
【0027】
液不透過性シート31と不織布32とを一体化させる方法としては、両者間を接着剤で接合する方法、ヒートシールにより接合する方法、超音波シールにより接合する方法、高周波シールにより接合する方法等の各種公知の方法を用いることができる。材料使用量の低減の観点から、ヒートシール、超音波シール、高周波シールが好ましく、操作性の観点からヒートシールがより好ましい。
液不透過性シート31と不織布32との間の接合は、全面的に接合されていても部分的に接合されていても良いが、感触の観点から部分的に接合されていることが好ましい。
液不透過性シート31と不織布32との間をヒートシール等にて接合する場合のシールパターンとしては、ドット状、棒状、格子状等とすることができ、これらを組み合わせても良い。
【0028】
液不透過性シート31と不織布32とを一体化させた裏面シート3の厚みは、剥離音低減の観点から、35〜1100μmであることが好ましく、剥離音低減効果とフィット性、強度とのバランスの観点からより好ましくは75〜950μm、更に好ましくは110〜830μm、特に好ましくは165〜730μmあるいは150〜700μmである。
なお、裏面シートの厚みも、裏面シートに0.5g/cm2の荷重をかけて、その時の厚みをレーザー変位計(キーエンス(株)製 LK−2110)等によって求めた値である。
【0029】
本実施形態の吸収性物品の裏面シート3は、例えば図2に示す生理用ナプキンにおけるように、不織布32からなる面(以下、衣類当接面ともいう)34に粘着剤層6が設けられて、吸収性物品の裏面シート3として好ましく用いられる。
【0030】
図2に示す生理用ナプキン1は、液透過性の表面シート2及び液保持性の吸収体4からなる吸収層5と、液不透過性の裏面シート3とが積層状態で一体化された構造を有しており、その裏面シート3の衣類当接面に粘着剤が塗工されて、ナプキン1をショーツ等の衣類(装着具)に固定するための粘着剤層6が形成されている。図2に示す生理用ナプキン1は、着用時における着用者の前後方向と同じ方向に長い形状を有しており、その粘着剤層6は、ナプキン1の長手方向を長辺とする長方形状に形成されており且つナプキン長手方向の全長に対して50〜95%程度の長さに亘って連続的に形成されている。
【0031】
粘着剤層6を形成する粘着剤としては、従来公知の各種の粘着剤を用いることができるが、塗工作業性の観点からホットメルト型の粘着剤を用いることが好ましい。
ホットメルト型の粘着剤としては、例えば、スチレン系ブロックポリマー、粘着付与剤及び軟化剤を主成分とするものが好ましく用いられる。
前記スチレン系ブロックポリマーとしては、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体及びその水添物、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体及びその水添物、スチレン−イソプレンジブロック共重合体及びその水添物、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体及びその水添物などが挙げられる。これらのスチレン系ブロックポリマーは、接着力の観点から、好ましくは、スチレン部分の分子量が5000〜20000であり、ゴム部分の分子量が25000〜70000である。前記粘着付与剤としては、軟化点が10℃以下で数平均分子量が400〜2000であるC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、α−ピネン、β−ピネン又はジペンテンの共重合体であるポリテルペン樹脂、ロジン系樹脂、若しくはこれらの水添物などが挙げられる。前記軟化剤としては、軟化点が10℃以下で数平均分子量が150〜700のプロセスオイル、各種可塑剤、ポリブテン、液状樹脂などが挙げられる。
これらのスチレン系ブロックポリマー、粘着付与剤及び軟化剤は、それぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
スチレン系ブロックポリマー、粘着付与剤及び軟化剤を主成分とするホットメルト型の接着剤は、スチレン系ブロックポリマー100質量部に対して、粘着付与剤としての樹脂150〜200質量部を含み、前記軟化剤の含有率が、粘着剤全量に対して20〜45質量%であるものが好ましい。軟化剤の含有率は、剥離音の低減とショーツ等に対する粘着性の兼ね合いから、粘着剤全量に対して20〜45質量%が好ましく、より好ましくは24〜38質量%、さらに好ましくは28〜32質量%である。軟化剤の含有量が28〜32質量%であると、装着時のズレ難さと剥離音低減のバランスが特に良い。粘着剤層の坪量は、10〜100g/m2とすることができ、好ましくは30〜60g/m2である。
また、スチレン系ブロックポリマー、粘着付与剤樹脂及び軟化剤以外に、安定剤等を配合することもできる。
【0033】
本発明の裏面シートは、不織布からなる面に粘着剤層が形成されて吸収性物品の裏面シートとして使用されたときに、優れた剥離音低減効果が得られる。
即ち、ショーツ等の衣類から吸収性物品を剥離する際の剥離音は、上述したように、引き伸ばされた粘着剤の一部がショーツ等から剥がれて元の状態に戻る際に裏面シートに打ち付けられて音を発生させていたが、粘着剤層と接触する裏面シートの面が不織布からなるため、粘着剤層がショーツ等の衣類から剥がれて裏面シートを打ち付ける際の相手の実質的な面積が減少しており、不織布に生じる振動が少ない。また、上述したように、2000Hzにおけるtanδが高い液不透過性シートを用いていることによって、不織布から液不透過性シートに伝わった振動が、液不透過性シート内で効率よく熱エネルギーに変換されることも、液不透過性シートからの音の発生が低減させ、剥離音の低減に大きく寄与したものと考えられる。
また、本発明の裏面シートは、肌に触れる外側に不織布を用いていることから感触も良好である。
【0034】
本発明の裏面シートを用いた吸収性物品又は本発明に係る吸収性物品は、通常、裏面シートの衣類当接面に設けられる粘着剤層又は設けられた粘着剤層を介してショーツ等の衣類に固定され、その状態で着用者に装着される。本発明の裏面シート及び吸収性物品は、衣類の素材を選ばずに剥離音の低減効果があり、例えば天竺編、フライス編、スムース編、トリコット編等の素材からなる衣類に固定して用いることができるが、クロッチ部が天竺編の布、特に綿の天竺編の布からなるショーツと組み合わせて用いた場合に一層剥離音が低減される。
【0035】
生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品は、一般に、ショーツとは別個に流通(市販等)されているため、消費者が、クロッチ部が天竺編の布からなるショーツとの組み合わせで使用できるようにする観点から、本発明の裏面シートを用いた吸収性物品又は本発明に係る吸収性物品は、クロッチ部が天竺編の布からなるショーツと組み合わせて使用することを推奨する表示を付した包装材(樹脂フィルム材からなる包装袋や、紙等からなる箱等)に収納し、吸収性物品の包装体として流通(市販等)させることが好ましい。クロッチ部が天竺編の布からなるショーツと組み合わせて使用することを推奨する表示は、そのようなショーツを商品名や品番等で特定し、該商品名や品番等のショーツの使用を勧める表示であっても良い。
また、これに代えて、本発明の裏面シートを用いた吸収性物品又は本発明に係る吸収性物品と、クロッチ部が天竺編の布からなるショーツとを組み合わせて、吸収性物品セットとして流通(市販等)させることもできる。
【0036】
本発明における吸収性物品は、生理用ナプキンの他、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等であっても良い。吸収性物品の裏面シート以外の構成は、特に制限されず、公知のものと同様とすることができる。例えば、表面シートとしては、各種製法による不織布や開孔フィルム等を用いることができ、吸収体としては、親水性繊維の繊維集合体又はこれと高分子吸水ポリマーとを併用したもの等を用いることができる。また、吸収性物品は、いわゆるウイングを有するものであっても有しないものであっても良く、また、表面シートの両側部が吸収体4と裏面シート3との間に巻き下げられておらずに、吸収体4の周縁部外方で裏面シート3に接合されていても良い。
【0037】
粘着剤層の平面視形状も、適宜の形態とすることができ、従来公知の各種形態のものと同様の形態とすることもできる。例えば、上述した矩形状の粘着剤層に代えて、楕円形、円形、菱形、正方形、五角形、六角形等の形状の粘着剤層を設けることもできる。また、ナプキンの幅方向及び/又は長手方向に離間させて複数の粘着剤層を形成しても良く、例えば、ナプキンの幅方向に延びる帯状の粘着剤層及び/又は長手方向に延びる帯状の粘着剤層を多数設けても良いし、粘着剤層をドット状(散点模様状)あるいは市松模様状に分散配置することもできる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0039】
〔裏面シート及び粘着剤層の構成材料等〕
1.液不透過性シート(樹脂フィルム)
表1に示す7種類の液不透過性シート(1A〜1G)を作製して試験に供した。各シートは、表1の樹脂の欄に示す樹脂をTダイ押出成形機に投入し、ダイ温度180〜300℃の温度範囲で溶融成形して得た。
尚、ハイブラー7350はスチレン含量50質量%、ハイブラー7311Sはスチレン含量12質量%のAB型スチレン系エラストマーである。
【0040】
【表1】

【0041】
各液不透過性シートのtanδは以下のようにして求めた。
各液不透過性シートを、幅5mm、長さ20mmに裁断し、得られた試料の動的粘弾性を、動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製 DMS6100)で測定した。測定条件は以下の通りである。測定結果を表1に示した。
変形モード : フィルムずりモード
測定周波数 : 0.5、1、2、5、10Hz
測定温度範囲 : −130℃〜+120℃
昇温速度 : 2℃/分
雰囲気 : 窒素ガス200mL/分
得られた測定結果を用い、温度時間換算則によって作成されたマスターカーブ(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 マスターカーブ解析プログラムにより作成)から、2000HzにおけるE’およびtanδを導いた。
【0042】
尚、得られた7種類の液不透過性シートの透湿度(JIS Z 0208)を測定したところ、いずれも0.02g/100cm2・h未満であり、実質的に通気性を有しないものであった。
【0043】
2.不織布
表2に示す5種類の不織布(2A〜2E)を試験に供した
【0044】
【表2】

【0045】
3.粘着剤層形成用の粘着剤組成物
樹脂としてスチレン−ブタジエン共重合体(Firestone社製、商品名;Stereon840)、粘着付与剤として芳香族テルペン系粘着剤(Arizona Chemical社製、商品名;Zonatac105)、軟化剤として白鉱油(試薬)を用い、それらを表3に示す2種類の配合割合で配合し、表3に示す粘着剤組成物(3A、3B)を作製した。
【0046】
【表3】

【0047】
〔実施例1〕
表1中の液不透過性シート1Aに、表2中の不織布2Aを積層し、これらを全面ヒートシールにより一体化させて裏面シートを得た。
この裏面シートの厚みを、裏面シートに0.5g/cm2の荷重をかけて、その時の厚みをレーザー変位計(キーエンス(株)製 LK−2110)によって求めた後、生理用ナプキンを製造した。裏面シートは、液不透過性シート側の面が吸収体側を向き、不織布側の面が吸収体とは反対側に向くように配置し、該不織布からなる面に、表3中の粘着剤組成物3Bを塗布して粘着剤層を形成した。
【0048】
尚、表面シートには、芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンの芯鞘構造の複合繊維からなるエアレイド不織布(坪量25g/m2)を用い、吸収体にフラッフパルプと高吸収性ポリマーとの積層体をティッシュペーパーで包んだものを用いた。ティッシュペーパーの坪量は15g/m2、吸収体全体の坪量は700g/m2とした。フラッフパルプと高吸収性ポリマーとの質量比は3.5:1とした。
【0049】
〔実施例2〜10〕
液不透過性シート、不織布、及び粘着剤層形成用の粘着剤として、表4に示すものを用いた以外は、実施例1と同様にして、生理用ナプキンを製造した。
【0050】
〔比較例1〕
裏面シートとして、表1中の液不透過性シート(ポリエチレンフィルム)1Gのみを用いる以外は、実施例1と同様にして生理用ナプキンを製造した。
【0051】
〔比較例2〜4〕
液不透過性シート、不織布、及び粘着剤層形成用の粘着剤として、表4に示すものを用いた以外は、実施例1と同様にして、生理用ナプキンを製造した。
【0052】
<評価方法>
(1)剥離音低減効果
実施例及び比較例で得られたナプキンを、天竺編又はトリコット編(表4参照)のショーツに固定し、次いでナプキンを引き剥がしたときの剥離音を次の手順で測定した。先ず、質量2kgのローラー(直径60mm、幅65mm)を用い、該ローラーを1往復させてナプキンをショーツの股布に圧着した。次に無音室において、ナプキンをショーツから手で速やかに引き剥がした時に発生する音の大小を10人のパネラーに評価させた。パネラー全員が、比較例1に対して剥離音が低減したと答えた場合を「◎」、8〜9人が剥離音が低減したと答えた場合を「○」、5〜7人が剥離音が低減したと答えた場合を「△」、4人以下が剥離音が低減したと答えた場合を「×」と評価した。本評価では、「△」以上で効果があると判断した。
【0053】
(2)感触
実施例及び比較例で生理用ナプキンの製造に用いた裏面シートについて、それぞれ粘着剤層を設けていない状態において、手で触った時の感触を10人のパネラーに評価させた。
パネラー全員が、比較例1のものに対して肌触りが良いと答えた場合を「◎」、8〜9人が肌触りが良いと答えた場合を「○」、5〜7人が肌触りが良いと答えた場合を「△」、4人以下が肌触りがよいと答えた場合を「×」と評価した。本評価では、「△」以上で効果があると判断した。
【0054】
(3)フィット性
実施例及び比較例で作製した生理用ナプキンを、10人のパネラーに実際に装着してもらい、フィット性を評価させた。パネラー全員が、比較例4と比較してフィット性が良いと答えた場合を「◎」、8〜9人がフィット性が良いと答えた場合を「○」、5〜7人がフィット性が良いと答えた場合を「△」、4人以下がフィット性がよいと答えた場合を「×」と評価した。本評価では、「△」以上で効果があると判断した。
【0055】
【表4】

【0056】
表4に示す結果から、実施例の生理用ナプキン(裏面シート)においては、裏面シートが液不透過性シートのみからなる比較例1に対して剥離音が低減しており、また、感触も良好であることが判る。これに対して、tanδが0.2未満のポリエチレンフィルムを用いた比較例2では、剥離音の低減効果が認められなかった。また、坪量3.5g/m2の不織布を用いた比較例3も、剥離音の低減効果が認められず、坪量370g/m2の不織布を用いた比較例4はフィット性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明に係る裏面シートの一部を、不織布側の面に粘着剤層を設けた状態として示す部分拡大断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る吸収性物品の一例である生理用ナプキンの幅方向断面を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
31 液不透過性シート
32 不織布
34 不織布側の面
4 吸収体
5 吸収層
6 粘着剤層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液不透過性シートと不織布とが積層されて一体化された構造を有し、該不織布からなる面に衣類に固定するための粘着剤層が設けられる、吸収性物品の裏面シートであって、
前記液不透過性シートは、温度25℃、周波数2000Hzにおける損失正接(tanδ)が0.2〜3.0であり、
前記不織布は、坪量5〜300g/m2である、吸収性物品の裏面シート。
【請求項2】
前記液不透過性シートは、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びウレタン系エラストマーからなる群から選択される1種以上の熱可塑性エラストマーを含有し、該熱可塑性エラストマーの含有率が、該液不透過性シート中50質量%以上である請求項1又は2記載の吸収性物品の裏面シート。
【請求項3】
前記液不透過性シートが、スチレン系熱可塑性エラストマーを含有し、該スチレン系熱可塑性エラストマーの含有率が、該液不透過性シート中50質量%以上である請求項2記載の吸収性物品の裏面シート。
【請求項4】
前記裏面シートの厚みが150〜700μmである請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品の裏面シート。
【請求項5】
吸収層及び請求項1〜4の何れかに記載の裏面シートを備え、該裏面シートにおける前記不織布からなる面に粘着剤層が設けられている吸収性物品であって、
前記粘着剤層が、軟化剤を20〜45質量%含むホットメルト型の粘着剤を用いて形成されている吸収性物品。
【請求項6】
吸収層及び請求項1〜4の何れかに記載の裏面シートを備え、該裏面シートにおける前記不織布からなる面に粘着剤層が設けられている吸収性物品を、クロッチ部が天竺編の布からなるショーツと組み合わせて使用することを推奨する表示を有する包装材に収納してなる、吸収性物品の包装体。
【請求項7】
吸収層及び請求項1〜4の何れかに記載の裏面シートを備え、該裏面シートにおける前記不織布からなる面に粘着剤層が設けられている吸収性物品と、クロッチ部が天竺編の布からなるショーツとを組み合わせてなる、吸収性物品セット。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−105185(P2007−105185A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298121(P2005−298121)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】