説明

吸収性物品

【課題】排泄された尿が着用者の肌を伝わり拡散する場合であっても肌が濡れた状態のままにならない吸収性物品を提供する。
【解決手段】本発明の吸収性物品は、前後の長手方向が前ウエスト域11と、後ウエスト域12と、これらの領域間に位置するクロッチ域13とで構成されており、吸収性ポリマー61が2枚の液透過性シート62,63に挟持された吸収性シート60がトップシート20とセカンドシート50との間に存在する吸収性物品1であって、セカンドシート50は、トップシート20よりも液拡散性が高く、トップシート20、バックシート30、吸収体40およびセカンドシート50は、前ウエスト域11、クロッチ域13および後ウエスト域12にわたって配置され、吸収性シート60は、クロッチ域13の長手方向の中央から後ウエスト域12にわたる領域における、少なくとも後ウエスト域12の一部の領域に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関し、とくに尿取りパッド、使い捨ておむつ、排泄トレーニングパンツ、失禁ブリーフなどの吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収体と、吸収体の表面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、吸収体の裏面に配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備え、吸収体は、少なくとも着用者の排泄部位に対応する領域(排泄領域)に吸収体の表面から裏面に向けて孔部が形成されたものであり、吸収体の表面にはトップシートが配置されるとともに、吸収体の裏面には、少なくとも排泄領域における孔部の開口部を覆うように拡散シートが配置されており、拡散シートよりも上部で、かつ排泄領域よりも着用時における後方の領域に撥水性シートが配置されている吸収性物品が従来技術として知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
この吸収性物品は、排泄液の吸収性に優れたものであるとともに、排泄液の逆戻りを有効に防止することができる。すなわち、この吸収性物品は、排泄液を吸収体のトップシート側の面(表面)における排泄部位にて吸収させるとともに、その排泄液の一部を吸収体の孔部を通過させて拡散シートに浸透させることにより、この拡散シートを経由させて吸収体の裏面から排泄液を吸収させることができる。このように、排泄液をより広い領域で吸収させることができるため、排泄液の吸収速度が高く、吸収性に優れている。また、この吸収体には、拡散シートよりも上部で、かつ排泄領域よりも着用時における後方の領域に撥水性シートが配置されているため、着用時に体圧がかかりやすく、排泄液が逆戻りしやすい臀部の領域においては、吸収体の表面に排泄液がしみ出すことを制限することができ、排泄液の逆戻りを有効に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−28186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来の吸収性物品では、着用者の排尿口が吸収性物品に接していない場合、排泄された尿が着用者の肌を伝わり拡散し、その結果、後部の撥水性シート上に尿が拡散し、肌が尿で濡れた状態のままになるという問題が生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明は、液透過性のトップシートと、バックシートと、これら両シート間に介在する吸収体と、吸収体およびトップシートの間に配置されたセカンドシートとを含み、前後の長手方向が前ウエスト域と、後ウエスト域と、これらの領域間に位置するクロッチ域とで構成されており、吸収性ポリマーが2枚の液透過性シートに挟持された吸収性シートがトップシートとセカンドシートとの間に存在する吸収性物品であって、セカンドシートは、トップシートよりも液拡散性が高く、トップシート、バックシート、吸収体およびセカンドシートは、前ウエスト域、クロッチ域および後ウエスト域にわたって配置され、吸収性シートは、クロッチ域の長手方向の中央から後ウエスト域にわたる領域における、少なくとも後ウエスト域の一部の領域に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排泄された尿が着用者の肌を伝わり拡散する場合であっても臀部の肌が尿で濡れた状態のままにならない。すなわち、着用者の肌をさらさらな状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、着用者の肌側から見たときの本発明の一実施形態の吸収性物品の平面図である。
【図2】図2は、図1のA−A断面の概略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態の吸収性物品の分解図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態の吸収性物品の着用状態を示す図である。
【図5】図5は、着用者の排尿口が吸収性物品に接している場合の、本発明の一実施形態における吸収性物品の排泄された尿の吸収を説明するための図である。
【図6】図6は、着用者の排尿口が吸収性物品に接していない場合の、本発明の一実施形態における吸収性物品の排泄された尿の吸収を説明するための図である。
【図7】図7は、液透過性シートの浸透性の評価方法を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態の吸収性物品の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明の一実施形態の吸収性物品を説明する。本発明の一実施形態の吸収性物品は、尿取りパッドである。
図1は、着用者の肌側から見たときの本発明の一実施形態の吸収性物品の平面図であり、図2は、図1のA−A断面の概略図であり、図3は、本発明の一実施形態の吸収性物品の分解図であり、図4は、本発明の一実施形態の吸収性物品の着用状態を示した図である。ここで、図に示されたx軸方向を吸収性物品1の幅方向とし、y軸方向を吸収性物品1の長手方向とする。また、xy方向を吸収性物品1の平面方向とする。
【0010】
図1に示すように、吸収性物品1は、前ウエスト域11と、後ウエスト域12と、前ウエスト域11および後ウエスト域12の間のクロッチ域13とに分けられる。ここで、吸収性物品1の前ウエスト域11側を前側とし、吸収性物品1の後ウエスト域12側を後側とする。図4に示すように、クロッチ域13は、吸収性物品の着用時に着用者100の股部にあてがわれる領域であり、前ウエスト域11は、クロッチ域13に対して前側の領域であり、後ウエスト域12は、クロッチ域13に対して後側の領域である。クロッチ域13では、吸収性物品1の幅方向の長さが小さくなるように側部14が屈曲または湾曲している。ここで、股部とは、着用者が直立したとき、着用者の両大腿部に挟まれる股の領域である。したがって、前ウエスト域11は着用者の腹側を覆い、後ウエスト域12は、着用者の臀部を覆うことになる。すなわち、クロッチ域13は着用者の股部にあてがう領域であり、前ウエスト域11は、着用者の股部に対して前側を覆う領域であり、後ウエスト域12は、着用者の股部に対して後側を覆う領域である。
【0011】
本発明の一実施形態における吸収性物品1は、透液性のトップシート20と、トップシート20と対向する位置に設けられたバックシート30と、トップシート20およびバックシート30の間に設けられた吸収体40とを含む。トップシート20と吸収体40との間には、セカンドシート50が配置され、トップシート20とセカンドシート50との間には吸収性シート60が配置される。吸収性物品1の幅方向両側には、漏れ防止カフ70が配置されている。
【0012】
トップシート20は、排泄された尿を透過する液透過性のシートであり、着用者が吸収性物品1を装着したときに、着用者の肌と接触する表面に設けられる。したがって、トップシート20は、肌触りを良好にする機能を有していることが好ましい。たとえば、トップシート20は、細い繊維で作製され、表面が平滑で、変形に対して自由度が大きいことが必要である。トップシート20には、一般に不織布が用いられる。トップシート20に用いられる不織布には、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布などが挙げられる。トップシート20は、前ウエスト域11、クロッチ域13および後ウエスト域12にわたって配置されている。
【0013】
バックシート30は、尿を透過しない液不透過性シートであり、排泄された尿が外に漏れないようにするために設けられている。バックシート30の材料は、排泄された尿を透過しない材料であれば、とくに限定されない。たとえば、防水処理を施した不織布、ポリエチレンなどから構成されるプラスチックフィルム、不織布とプラスチックフィルムとの複合材料などをバックシート30に用いることができる。また、水蒸気がバックシート30を通って発散することによって着用時の吸収性物品1の蒸れを防止するために、バックシート30に通気性フィルムを使用してもよい。なお、おむつの内側に用いる尿取りパッドなどの場合は、バックシートは液不透過性でなくてもよい。バックシート30は、前ウエスト域11、クロッチ域13および後ウエスト域12にわたって配置されている。
【0014】
吸収体40は排泄された尿を吸収し保持する機能を有する。吸収体40には、たとえば、フラッフ状パルプやエアレイド不織布と高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer:SAP)とからなる吸収体が挙げられる。また、吸収体40には、フラッフ状パルプの代わりに、たとえば、化学パルプ、セルロース繊維、レーヨン、アセテートなどの人工セルロース繊維、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維(複合繊維も含む)を用いた繊維ネットワーク吸収体、ポリウレタン等のフォーム材を用いた発泡吸収体などが挙げられる。
【0015】
吸収体40は、バックシート30の略相似形であり、吸収体40の大きさはバックシート30に比べて小さい。吸収体40は、前ウエスト域11、クロッチ域13および後ウエスト域12にわたって配置されている。吸収体40は、貫通部41と圧搾溝42とを有する。貫通部41は、吸収体40を厚さ方向に貫通する穴であり、貫通部41は、吸収体40の幅方向の中央の位置で、前ウエスト域11からクロッチ域13にかけて長さ方向に延びている。しかし、貫通部41は、吸収性シート60と厚さ方向で重なる位置までは長手方向に延びてない。すなわち、吸収性物品1の厚さ方向に貫通部41を投影した場合の貫通部41の投影像は、吸収性物品1の厚さ方向に吸収性シート60を投影した場合の吸収性シート61の投影像と重ならない。圧搾溝42は、貫通部41の両脇に並べて配置され、前ウエスト域11からクロッチ域13にかけて長さ方向に延び、吸収体40のトップシート側の面から凹んでいる溝である。圧搾溝42の長手方向の長さは、貫通部41の長手方向の長さに比べて短い。吸収体40のトップシート20側の面からバックシート30側の面へ吸収体40を加熱・加圧することによって、圧搾溝42は形成される。吸収体40は、ホットメルト接着剤(Hot Melt Adhesive:HMA)81によりバックシート30と接着している。吸収体40は、バックシート30の略相似形にせず、矩形、長円形などに換えることもできる。
【0016】
セカンドシート50は、トップシート20の一部の領域から浸透してきた尿を平面方向に拡散させるためのシートである。これにより、吸収体40は、トップシート20の一部の領域から浸透してきた尿を、吸収体40のトップシート20側の面の広い領域で吸収することができる。セカンドシート50は、前ウエスト域11、クロッチ域13および後ウエスト域12にわたって配置されている。
【0017】
セカンドシート50には、ティッシュ、ポイントボンド不織布、レーヨン入りのスパンレース不織布など、液拡散性の高い不織布が好ましくは用いられる。とくにセカンドシート50の液拡散性は、トップシート20の液拡散性よりも高いことが好ましい。たとえば、トップシート20にスパンボンド不織布を用いた場合、スパンボンド不織布よりも液拡散性の高いティッシュ、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布(とくにレーヨン入り)またはそれらを組み合わせたものをセカンドシート50に用いることが好ましい。
【0018】
シートの液拡散性は、たとえば、JIS P8141「紙及び板紙−吸水度試験方法−クレム法」に準拠して測定したシートのクレム吸水度で評価することができる。クレム吸水度とは、試験片の下端を鉛直に水の中に浸漬し、毛管現象によって、10分間に水が上昇した高さであり、シートのクレム吸水度が高いほど、シートの拡散性は高い。たとえば、目付が15g/m2のティッシュでは、クレム吸水度が28mmであり、目付が38g/m2のスパンレース不織布(レーヨン入り)では、クレム吸水度が118mmであり、目付が23g/m2のポイントボンド不織布では、クレム吸水度が36mmであり、目付が25g/m2のエアスルー不織布では、クレム吸水度が3mmであり、目付が20g/m2のスパンボンド不織布では、クレム吸水度が2mmであった。したがって、上記不織布の中で、セカンドシート50に用いるシートとして、クレム吸水度がもっとも高いスパンレース不織布(レーヨン入り)がもっとも好ましく、クレム吸水度が高いティッシュおよびポイントボンド不織布も好ましい。しかし、セカンドシート50に用いるシートとして、クレム吸水度が低いエアスルー不織布およびスパンボンド不織布は好ましくない。クレム吸水度は、一般に不織布の密度が高いほど高くなり、レーヨンなどの吸水性繊維を含むとさらに高くなる。
【0019】
吸収性シート60は、吸収性ポリマー61を2枚の液透過性シート62,63で挟持した複合シートである。液透過性シート62,63には、たとえば不織布が用いられる。なお、吸収性ポリマーを3枚以上の液透過性シートで挟持して吸収性シートを作製してもよい。吸収性ポリマーは、水を吸収するポリマーであり、たとえば、水溶性高分子が適度に架橋された三次元網目構造を有する吸収性高分子ポリマーである。このような吸収性高分子ポリマーは、水を吸収する前の体積の数百倍〜千倍の水を吸収するが本質的に水不溶性であり、一旦吸収された水は多少の圧力を加えても離水しない。吸収性ポリマーには、たとえば、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状または繊維状のポリマーが挙げられる。吸収性ポリマー61を2枚の液透過性シート62,63で挟持した後、2枚の液透過性シート62,63を接合することで、吸収性シート60は作製される。したがって、吸収性ポリマー61を2枚の液透過性シート62,63で挟持した後、吸収性ポリマーがこぼれてしまうのを防ぐために吸収性ポリマーの粒径は、液透過性シート62,63の繊維間隙に比べて細かくない方が好ましい。液透過性シート62,63には、たとえば、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、SMS(Spun bond-Melt blown- Spun bond)不織布などを用いることができる。液透過性シート62,63は、尿に対して透過性を有することが必要であるので、親水化処理がなされていることが好ましい。
【0020】
液透過性シート62,63の吸収性ポリマー61を挟持する面には、長手方向に延び、幅方向に複数並ぶ接着部82、83が設けられている。液透過性シート62,63の吸収性ポリマー61を挟持する面には、長手方向に延び、幅方向に複数並ぶ接着部82、83が設けられている。なお、液透過性シート62,63のうちの一方の液透過性シート62,63の吸収性ポリマー61を挟持する面に接着部82、83を設けてもよい。接着部82、83は、たとえば、ホットメルト接着剤を筋状に塗工することによって形成される。これにより、吸収性ポリマー61は、液透過性シート62,63に固定される。接着部82、83が長手方向に延び、幅方向に複数並ぶのは、すなわち、接着部82、83が筋状であるのは、接着部82、83における尿の透過性はよくないため、接着部82、83の存在しない領域を設けるためである。したがって、接着部の存在しない領域を設けることができる塗工方法であれば、すなわち、接着部を間欠的に配置できる塗工方法であれば、筋状塗工方法に限定されず、オメガ塗工などの非接触塗工方法でもよい。接着部82,83は、後述の吸収性ポリマー存在領域64に間欠的に設けられているので、吸収性ポリマー61が吸収性ポリマー存在領域64の中で偏るのを防止することができる。セカンドシート50側の液透過性シート63に設けられた接着部83の隣接する接着部同士の間の接着部間距離は、トップシート20側の液透過性シート62に設けられた接着部82の接着部間距離に比べて小さい。これにより、吸収性ポリマー61が、セカンドシート50側の液透過性シート63に均等に固定される。
【0021】
液透過性シート62,63に、青色などに着色された筋状の接着部82を設けることによって、吸収性物品1に青色などの色の縞状の模様が付されるので、吸収性物品1の外観がよくなる。なお、セカンドシート50側の液透過性シート63における吸収性ポリマー61を挟持する面のみに接着部82を設けるようにしてもよい。液透過性シート62および/または63に接着部82を設けることによって、吸収性ポリマー61が膨潤する前に吸収性ポリマー61が吸収性シート60内を移動するのを抑制することができる。
【0022】
吸収性シート60は、クロッチ域13の長手方向の中央から後ウエスト域12にわたる、少なくとも後ウエスト域12の一部の領域に配置されることが好ましい。これにより、着用者の排尿口が吸収性物品1に接している場合は、吸収性シート60を透過せずに排出された尿を吸収体40に直接吸収させることができ、着用者の排尿口が吸収性物品1に接していない場合に、吸収性シート60に尿を吸収させることができる。
【0023】
吸収性シート60では、吸収性ポリマー61は、複数の領域64(以下、吸収性ポリマー存在領域と呼ぶ)に分けて配置され、それぞれの吸収性ポリマー存在領域64の間に吸収性ポリマー61が配置されていない領域(以下、吸収性ポリマー非存在領域と呼ぶ)65を設けられている。これにより、吸収性ポリマー存在領域64の吸収性ポリマー61が尿を吸収して膨潤しきってしまい、尿をさらに吸収できなくなった場合でも、尿は吸収性ポリマー非存在領域65を通過して、吸収体40に吸収される。なお、吸収性ポリマーが膨潤しきるまで使用し続けることのない吸収性物品については、吸収性シートに吸収性ポリマー非存在領域を設ける必要はない。
【0024】
吸収性ポリマー存在領域64における幅方向の中央の部分は、吸収性ポリマー存在領域64における、幅方向の中央の部分に対して幅方向外側にあるそれぞれの部分に比べて、後側に存在する。これにより、着用者の排尿口が吸収性物品1に接している場合は、排出された尿が、吸収性ポリマー存在領域64の吸収性ポリマー61に吸収されないで、吸収体40に直接吸収させることができ、着用者の排尿口が吸収性物品1に接していない場合に、吸収性ポリマー存在領域64の吸収性ポリマー61に尿を吸収させることができる。
【0025】
吸収性ポリマー存在領域64の平面方向の形状は、吸収性物品1の長手方向で前ウエスト域11から後ウエスト域12への方向に凸であり、かつ吸収性物品1の幅方向に延びる略V字形状である。すなわち、吸収性ポリマー存在領域64の平面方向の形状は、吸収性物品1の長手方向で前ウエスト域11から後ウエスト域12への方向に頂点が向いた略V字形状である。ただし、前ウエスト域11からもっとも離れている吸収性ポリマー存在領域64は、略V字形状または略円弧形状において幅方向の中央を切り欠いて2つの領域に分けられることによって形成される形状である。吸収性ポリマー存在領域64の略V字形状は、着用者の臀部に沿った形状であるので、吸収性ポリマー存在領域64は着用者の臀部にフィットし、着用者と吸収性物品1との間の隙間が生じにくくなる。なお、吸収性ポリマー非存在領域が存在すれば、吸収性ポリマー存在領域の形状は略V字形状に限定されない。たとえば、吸収性ポリマー存在領域の形状は、円弧形状、円形、矩形形状、三角形などでもよい。
【0026】
上述したように、吸収性ポリマー61を2枚の液透過性シート62,63で挟持した後、2枚の液透過性シート62,63を接合することで吸収性シート60は作製される。したがって、2枚の液透過性シート62,63の間に吸収性ポリマー61が挟持されている領域が吸収性ポリマー存在領域64であり、2枚の液透過性シート62,63の間に吸収性ポリマー61が挟持されておらず、2枚の液透過性シート62,63同士が接合されている領域が吸収性ポリマー非存在領域65である。この2枚の液透過性シート62,63同士の接合には吸収性ポリマー61の膨潤による膨張力に耐えうる強度が必要である。そうしないと、吸収性ポリマー61の膨潤によって、2枚の液透過性シート62,63同士がはがれて2枚の液透過性シート62,63の間に隙間が生じ、その隙間に吸収性ポリマー61が入り込んで、吸収性ポリマー非存在領域65がなくなってしまう場合がある。この液透過性シート62,63同士の接合には、ヒートシール、ソニックシール、接着剤などを用いることができる。
【0027】
ヒートシールによって液透過性シート62,63同士を接合する場合、ヒートシールの幅方向の線圧が一定になるほど、全体に均一なシール強度になる。このため、ヒートシールの幅方向の線圧は一定であることが好ましい。ヒートシールの幅方向の線圧を均一にするためには、シールされる領域の幅方向の長さの合計を一定にする必要がある。たとえば、上述のように、吸収性ポリマー存在領域64を略V字形状または略円弧形状にし、長手方向に並べることによって吸収性ポリマー非存在領域65の幅方向の長さの合計をほぼ一定にすることができる。接着剤を用いて液透過性シート62,63同士を接合させる場合、吸収性ポリマー61が膨潤しているとき液透過性シート62,63は、湿潤状態であるので、接着剤は、湿潤時においても強度を発揮するタイプが好ましい。
【0028】
吸収性ポリマー61は、尿を吸収すると膨潤するので、吸収性ポリマー存在領域64では、吸収性ポリマー61は、2枚の液透過性シート62,63の間に、吸収性ポリマー61が十分に膨潤できるだけの容積を確保していることが望ましい。2枚の液透過性シート62,63の間に、吸収性ポリマー61を稠密に詰め込み過ぎてしまうと、吸収性ポリマー61が完全には膨潤できないため、吸収性ポリマー61の吸収能を十分に利用できない場合がある。
【0029】
吸収性シート60における吸収性ポリマー存在領域64の数を多くすると、吸収性ポリマー非存在領域65の面積は増えるが、吸収性シート60における吸収性ポリマー61の合計量容積が少なくなるので、吸収性シート60が尿を吸収できる量が小さくなる。一方、吸収性シート60における吸収性ポリマー存在領域64の数を少なくすると、吸収性シート60における吸収性ポリマー61の合計量容積量が多くなり、吸収性シート60が尿を吸収できる量が大きくなるが、吸収性ポリマー非存在領域65の面積は小さくなり、吸収性ポリマーが膨潤したあと、尿が吸収性シート60を透過して吸収体40に吸収されることが起こらなくなってしまう場合がある。したがって、吸収性シート60が吸収できる尿の量と、吸収性ポリマー61が膨潤した後の吸収性シート60の尿の透過性との間のバランスを考慮して、さらに吸収性ポリマー61の種類および投入量からくる膨潤後の容積を考慮して、吸収性ポリマー存在領域64の数を選択する必要がある。たとえば、180mm×130mmの大きさの吸収性シートの場合、1g当たり生理食塩水を60g吸収する吸収性ポリマー2gを、5つの吸収性ポリマー存在領域に分けて配置することによって、尿の吸収性と、吸収性ポリマーが膨潤した後の尿透過性との間のバランスが良好な吸収性シートを得ることができる。
【0030】
漏れ防止カフ70は、排泄された尿が吸収性物品1の幅方向の位置から外部へ漏れるのを防止する。吸収性物品1の幅方向両側部には、長手方向に延びる漏れ防止カフ70が配置されている。漏れ防止カフ70には、SMS不織布などの疎水性の不織布が用いられる。SMS不織布に代えて、防水フィルムなどの防漏性材料を用いることもできる。漏れ防止カフ70は、吸収性物品1の幅方向側部においてトップシート20またはバックシート30と接着剤を用いて接合され、基端部74と、自由端部75とを有する。基端部74は、吸収性物品1の幅方向側部と接合している。接着剤に換えて、ヒートシールで固定することもできる。また、基端部74は、吸収性物品1の側縁やバックシート表面に位置させることもできる。自由端部75は、基端部74に対して、吸収性物品1の幅方向の内側に位置している。漏れ防止カフ70の自由端部75の近傍には、長手方向に延びるとともに伸長状態で取り付けられた弾性体72が設けられている。また、漏れ防止カフ70の長手方向の端側の領域73が、トップシート20と、接着剤を用いて接合されている。弾性体72の収縮力が発現すると、漏れ防止カフ70の長手方向の端側の領域73を除く漏れ防止カフ70の自由端部75が、トップシート20から起立して、排泄された尿が吸収性物品1の幅方向の位置から漏れるのを防止する。漏れ防止カフ70は、吸収性物品1の全長にわたって配置されている必要はなく、少なくともクロッチ域13から後ウエスト域12にわたって配置されていればよい。
【0031】
図1に示したように、弾性体72が収縮していない状態、すなわち漏れ防止カフ70を伸長させた状態では、吸収性シート60のそれぞれの幅方向縁部66は、漏れ防止カフ70のそれぞれの自由端部75よりも幅方向外側にある。着用者が吸収性物品1を装着すると、漏れ防止カフ70はトップシート20上に倒れるので、吸収性シート60の幅方向の両縁部66の幅方向外側は漏れ防止カフ70に覆われる。液透過性が低い漏れ防止カフ70があるので、吸収体40から尿がしみ出してきたとしても、肌に接するのを防ぐことができる。吸収性シート60と漏れ防止カフ70とが重なっている領域では、吸収性シート60から尿が染み出してきたとしても、漏れ防止カフ70が肌に接するのを防ぐことができる。とくに、漏れ防止カフ70の長手方向の端側の領域73では、漏れ防止カフ70はトップシート20またはバックシート30と、接着剤を用いて接着されているので、吸収性シート60の両縁部66と漏れ防止カフ70とが確実に重なるように固定できる。また、これにより、後述の吸収性シート60の体圧によって吸収体40からしみ出した尿が着用者の肌に届かないようにする効果および着用者の肌を伝わって拡散した尿を吸収する効果が大きくなる。
【0032】
次に図を参照して、本発明の一実施形態における吸収性物品1の排泄された尿の吸収について説明する。
【0033】
着用者の排尿口が吸収性物品1に接している場合、図5に示すように、排泄された尿は、クロッチ域13の吸収性シート60が配置されていない部分からトップシート20およびセカンドシート50を通過し(矢印210)、吸収体40に到達する。吸収体40に到達した尿は吸収体40のセカンドシート50側の面から吸収される。吸収体40の貫通部41に到達した一部の尿(矢印210)は、貫通部41の側壁から吸収され(矢印220)、吸収体40の圧搾溝42に到達した一部の尿は、圧搾溝42の側壁から吸収される。貫通部41および/または圧搾溝42を吸収体40に設けることによって、排泄された尿が長手方向へ移動しやすくなるので、排泄された尿の吸収体40への拡散が速くなる。また、排泄された尿の一部は、トップシート20を通過した後、セカンドシート50内を拡散し(矢印230)、吸収体40に吸収される。排泄された尿がセカンドシート50を拡散することによって、排泄された尿は吸収体40のセカンドシート50側の面に大きく広がる。これにより排泄された尿を吸収する、吸収体40の面の面積が増えるので、排泄された尿の吸収体40への拡散が速くなる。
【0034】
セカンドシート50は、吸収性シート60の着用者側の反対側に配置されているので、セカンドシート50を拡散した尿は、吸収性シート60によって着用者の肌側に到達しにくくなる。なぜならば、着用者が仰向けに寝て、着用者の臀部から吸収性物品1の後ウエスト域12に体圧が加えられた場合、吸収体40に吸収された尿はしみ出すが、しみ出した尿は吸収性シート60によって着用者の肌側に到達しにくくなるからである。一方、クロッチ域13における吸収性シート60が配置されていない領域および前ウエスト域11では、吸収性物品1に対して圧力が加えられることがあまりないので、セカンドシート50に拡散した尿が着用者の肌に到達したり、吸収体40に吸収された尿が吸収体40からしみ出したりすることは少ない。したがって、尿が排泄された後も着用者の臀部付近の肌はサラッとしており、排泄された尿による着用者の肌のかぶれを抑制することができる。
【0035】
着用者の排尿口が吸収性物品1に接していない場合、たとえば、着用者が仰向けに寝ている場合、図6に示すように、排泄された尿は、着用者の肌を伝わって、クロッチ域13および/または後ウエスト域12における吸収性シート60が配置されている部分のトップシート20に到達する(矢印240)。トップシート20に到達した尿は、吸収性シート60によって吸収される。また、上述したように、吸収性ポリマーは一旦吸収された水は多少の圧力を加えても離水しない性質を有するので、着用者が仰向けに寝て、着用者の臀部から吸収性物品1の後ウエスト域12に体圧が加えられた場合でも、吸収性シート60に吸収された尿は体圧によって吸収性シート60からしみ出すことは少ない。したがって、尿が排泄された後も着用者の肌はサラッとしており、排泄された尿による着用者の肌のかぶれを抑制することができる。
【0036】
以上の一実施形態による吸収性物品1を次のように変形することができる。
(1)以上の一実施形態の吸収性物品1では、吸収体40の幅方向の中央の位置で、前ウエスト域11からクロッチ域13にかけて長さ方向に延びている貫通部41を吸収体40に設けたが、貫通部41の代わりに、吸収体40のトップシート20側の面から凹んで、吸収体40が薄くなっている溝部を設けてもよい。
【0037】
(2)以上の一実施形態の吸収性物品1では、吸収性物品1に配置されている吸収体40は1つであった。しかし、2つ以上の吸収体を吸収性物品に配置してもよい。たとえば、吸収体40の代わりに、2つの吸収体を厚さ方向に重ねたものを吸収性物品に配置してもよい。また、この場合、2つの吸収体のうち、セカンドシート側の吸収体のみに、またはトップシート側の吸収体のみに貫通部または溝部を設けるようにしてもよい。
【0038】
(3)吸収体の貫通部または溝部は、吸収体の吸収性シート60が配置されている領域内まで、長手方向に延びるようにしてもよい。これにより、排泄された尿が、吸収性シート60の下側に早く移動できるので、吸収体40に吸収された尿のより多くが、吸収性シート60によって着用者の肌側に到達しにくくなる。
【0039】
(4)吸収性シート60における吸収性ポリマー61を挟持する2枚の液透過性シート62,63のうちのセカンドシート50側の液透過性シート63の浸透性が、セカンドシート50の浸透性よりも小さくするようにしてもよい。これにより、着用者が仰向けに寝て、着用者の臀部から吸収性物品1の後ウエスト域12に体圧が加えられた場合、吸収体40からしみ出た尿は、吸収性シート60の液透過性シート63によって吸収性シート60を通過しづらくなり、着用者の肌に到達しにくくなる。吸収性シート60のセカンドシート50側の液透過性シート63には、たとえば、親水性のSMS不織布を用いることができる。SMS不織布は、2層のスパンボンド層の間にスプレーを吹き付けられて形成されたメルトブローン層を有しているため、繊維間の隙間が少なく、液体が浸透しにくいので、吸収性シート60のセカンドシート50側の液透過性シート63に適している。また、SMS不織布の他に、不織布を作製するときに添加する油剤の量を、通常の50〜60%と少なくし、親水性のスパンボンド不織布の親水度を下げたものを使用してもよい。また、高目付(たとえば、25〜35g/m2の目付)のスパンボンド不織布またはポイントボンド不織布を使用してもよい。不織布は、目付が高いほど繊維間の隙間が小さくなり、浸透性が小さくなる。
【0040】
液透過性シートの浸透性は、たとえば、図7に示すような浸透性評価装置300を用いて評価することができる。浸透性評価装置300による浸透性の評価は以下のようにして行う。
(i)10°の傾きを有する試料台310の上に、液透過性シート320を置く。試料台310の液透過性シート320を置く面には、直径65mmの円形の穴311が設けられている。
(ii)直径が5mmのチューブ330を使用して、80mmの高さから25mlの人工尿340を3.75秒間かけて滴下する。滴下した人工尿340は、液透過性シート320を透過して、試料台310の穴311を通過して回収皿350に入る。
(iii)回収皿350に入った人工尿の重さを測定する。
(iv)以下の式から浸透率を算出する。
浸透率(%)=回収皿に入った人工尿の重さ(g)/25(g)×100
浸透率の高い液透過性シートは浸透性が高く、浸透率の低い液透過性シートは浸透性が低い。
【0041】
上述の浸透性評価装置300による浸透性の評価結果を表1に示す。
【表1】

この結果より、目付が15g/m2のティッシュをセカンドシート50に用いた場合、セカンドシート50側の液透過性シート63には、目付が10g/m2の親水性のSMS不織布、目付が23g/m2の親水性のポイントボンド不織布または目付が38g/m2のスパンレース不織布が適することがわかる。また、目付が38g/m2のスパンレース不織布をセカンドシート50に用いた場合、セカンドシート50側の液透過性シート63には、目付が23g/m2の親水性のポイントボンド不織布が適することがわかる。
【0042】
(5)吸収性シート60の液透過性シート62,63に、着色された筋状の接着部82を設ける場合、吸収性シート60の幅方向中央で、接着剤の塗工を少なくしてもよい。たとえば、吸収性シート60の幅方向中央で、接着剤の塗工をしないようにしてもよい。着色された接着部82が設けられていない領域を着目することによって、吸収性物品の幅方向の中央(センターライン)がわかりやすくなる。
【0043】
(6)図8に示す吸収性物品1Aのように、吸収性シート60Aの幅方向の中央の領域68Aの両側にある幅方向の外側の領域67Aが、吸収性シート60Aの幅方向の中央の領域68Aよりも前ウエスト域11側に延出するようにしてもよい。この場合、吸収性シート60Aの幅方向の中央の領域68Aよりも延出させた領域67Aに吸収性ポリマー存在領域を配置する。これにより、吸収性シート60Aの幅方向の中央の領域68Aよりも延出させた領域67Aにおいても尿を吸収させることができる。着用者の排尿口が吸収性物品1に接している場合、排泄された尿は、できるだけ吸収体40によって吸収されることが好ましい。したがって、着用者の排尿口が吸収性物品1に接している場合に排泄された尿がトップシート上を流れて、直接的に吸収性シート60によってあまり吸収されないようにするため、吸収性シート60は、着用者の排尿口が吸収性物品1に接するポイントから、ある程度離れていることが好ましい。一方、着用者の体圧により吸収体40からしみ出した尿が着用者の肌に到達しないようにするためには、吸収性シート60の面積は広い方が好ましい。図8に示す吸収性物品1Aのように、吸収性シート60Aの幅方向の両端側の領域67Aが、吸収性シート60Aの幅方向の中央の領域68Aよりも前ウエスト域11側に延出するようにすることによって、着用者の排尿口が吸収性物品1に接するポイント21Aと吸収性シート60Aとの間の距離を保ちつつ吸収性シート60Aの面積を広くすることができる。
【0044】
本発明は尿取りパッドに限定されない。本発明は、たとえば、使い捨ておむつ、排泄トレーニングパンツ、失禁ブリーフなどの吸収性物品であってもよい。
【0045】
実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
【0046】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。なお、下記の実施例は本発明を限定するものではない。
【0048】
着用者の排尿口が吸収性物品に接している場合および着用者の排尿口が吸収性物品に接していない場合において、排泄された尿が吸収性物品からしみ出して、着用者の臀部が濡れてしまう(リウエット)ことがないことを、以下の試料および試験方法で確認した。
【0049】
試料
以下の構成要素を有する吸収性物品を用いて、リウエット試験をおこなった。
トップシート:目付が20g/m2の親水性のスパンボンド不織布。
吸収体:目付が220g/m2のパルプと目付が82g/m2の吸収性ポリマーとを有する上層吸収体を目付が180g/m2のパルプと目付が33g/m2の吸収性ポリマーとを有する下層吸収体の上に重ねたもの(保水量:450g)。
吸収性シート:2gの吸収性ポリマーを目付が20g/m2の親水性のスパンボンド不織布ではさんで接合したもの。
セカンドシート:目付が15g/m2のティッシュ。
【0050】
試験方法
吸収性物品に5分ごとに人工尿を80ml投入する。これを5回行う。したがって、400mlの人工尿が投入されることになる。人工尿とは、イオン交換水10リットルに、尿素200g、塩化ナトリウム80g、硫酸マグネシウム80g、塩化カルシウム8gおよび色素:青色1号約1gを溶解させた水溶液である。400mlの人工尿を投入してから5分経過後、リウエット測定位置に70gろ紙(100mm×100mm)を載せ、その上に底面の大きさが100mm×100mmである3.5kgの重りを載せ、吸収性物品からしみ出る人工尿をろ紙に吸収させる。そして、人工尿を吸収させたろ紙の重さから人工尿を吸収させる前のろ紙の重さを引き算し、しみ出した人工尿の量、すなわち、リウエット量を算出する。吸収性シートを取り除いたものについても同様の試験を行う。リウエット量が少ないほど、排泄された尿が吸収性物品1からしみ出して、着用者の臀部が濡れてしまうことが少ない。
【0051】
結果
着用者の排尿口が吸収性物品に接する位置に人工尿を投入したときの吸収性シートが配置されている部分のリウエット量は0.1gであった。吸収性物品から吸収性シートを除いて同じ試験を行うと、リウエット量は1.0gに増えた。これより、吸収性シートを配置することによって、着用者の排尿口が吸収性物品に接している場合に排泄された尿が吸収性物品からしみ出して着用者の臀部が濡れるのを改善できることを確認できた。
【0052】
着用者の排尿口が吸収性物品に接していない場合に、排泄された尿が着用者の肌を伝わって浸入する領域のトップシート、すなわち、吸収性シートが配置されている領域のトップシートに人工尿を投入したときの吸収性シートが配置されている部分のリウエット量は39gであった。同じ吸収性物品から吸収性シートを除いて同じ試験を行うと、吸収体から人工尿がしみ出し、リウエット量が72gに増えた。これより、吸収性シートを配置することによって、着用者の排尿口が吸収性物品1に接していない場合に排泄された尿が吸収性物品に吸収され、その後、吸収性物品からしみ出して着用者の臀部が濡れるのを改善できることを確認できた。
【符号の説明】
【0053】
1,1A 吸収性物
20 トップシート
30 バックシート
40 吸収体
41 貫通部
42 圧搾溝
50 セカンドシート
60,60A 吸収性シート
61 吸収性ポリマー
62,63 液透過性シート
64 吸収性ポリマー存在領域
65 吸収性ポリマー非存在領域
66 縁部
70 漏れ防止カフ
71 縁部
72 弾性体
300 浸透性評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、バックシートと、これら両シート間に介在する吸収体と、前記吸収体および前記トップシートの間に配置されたセカンドシートとを含み、前後の長手方向が前ウエスト域と、後ウエスト域と、これらの領域間に位置するクロッチ域とで構成されており、吸収性ポリマーが2枚の液透過性シートに挟持された吸収性シートが前記トップシートと前記セカンドシートとの間に存在する吸収性物品であって、
前記セカンドシートは、前記トップシートよりも液拡散性が高く、
前記トップシート、前記バックシート、前記吸収体および前記セカンドシートは、前記前ウエスト域、前記クロッチ域および前記後ウエスト域にわたって配置され、
前記吸収性シートは、前記クロッチ域の長手方向の中央から前記後ウエスト域にわたる領域における、少なくとも前記後ウエスト域の一部の領域に配置される吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性シートは、前記2枚の液透過性シートに前記吸収性ポリマーが挟持されている吸収性ポリマー存在領域と、前記2枚の液透過性シートに前記吸収性ポリマーが挟持されていない吸収性ポリマー非存在領域とを有する請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性ポリマー存在領域における前記幅方向の中央の部分は、前記吸収性ポリマー存在領域における、前記幅方向の中央の部分に対して幅方向外にあるそれぞれの部分に比べて、後側に位置している請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性シートの前記液透過性シートの前記吸収性ポリマーを挟持するそれぞれの面に、前記吸収性物品の長手方向に延び、前記吸収性物品の幅方向に複数並ぶ接着部が設けられ、
前記吸収性シートにおける前記セカンドシート側の液透過性シートに設けられた接着部の隣接する接着部同士の間の接着部間距離は、前記吸収性シートにおける前記トップシート側の液透過性シートに設けられた接着部の接着部間距離に比べて小さい請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、前記クロッチ域の少なくとも一部の領域に、長手方向に延びる貫通部または溝部を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の前記貫通部または前記溝部は、前記吸収体の前記吸収性シートが配置されている領域内まで、長手方向に延びる請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性シートにおける前記吸収性ポリマーを挟持する2枚の液透過性シートのうちの前記セカンドシート側の液透過性シートの浸透性が、前記セカンドシートの浸透性よりも小さい請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品の幅方向両側部には、長手方向に延びる漏れ防止カフが配置され、
前記漏れ防止カフは、前記吸収性物品の幅方向側部と接合している基端部と、接合していない自由端部とを有し、
前記自由端部は、前記基端部に対して、前記吸収性物品の幅方向の内側にあり、
前記自由端部の近傍には、長手方向に延びるとともに伸長状態で取り付けられた弾性体が設けられ、
前記漏れ防止カフを伸長させた状態において、前記吸収性シートのそれぞれの幅方向縁部は、前記漏れ防止カフのそれぞれの自由端部よりも幅方向外側にある請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性シートは、幅方向の中央の領域と、該幅方向の中央の領域の両側にある幅方向の外側の領域とを有し、
前記幅方向の外側の領域が、前記幅方向の中央の領域よりも前記前ウエスト域側に延出している請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−110364(P2012−110364A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259340(P2010−259340)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】