説明

吸引保持ハンド、搬送装置の制御方法、搬送装置および検査装置

【課題】コンパクトに構成することができると共に、ICデバイスの保持状態を維持したまま、保持形態を非接触保持と吸着保持との間で円滑に切り替えることができる吸引保持ハンド等を提供すること。
【解決手段】ICデバイス1を非接触保持する専用ベルヌーイチャック62aと、ICデバイス1を非接触保持および吸着保持が選択的に為される兼用ベルヌーイチャック62bと、専用ベルヌーイチャック62aおよび気体供給源101を接続した専用チューブ111aと、兼用ベルヌーイチャック62bおよび気体供給源101を接続した兼用チューブと、兼用ベルヌーイチャック62bおよび真空吸引源102を接続した真空吸引流路と、第2気体供給流路に介設された分岐部開閉バルブ125と、真空吸引流路に介設された真空部開閉バルブ126と、両開閉手段125,126を制御する制御装置105と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回流の中心部に生ずる負圧を利用して電子部品を非接触状態で保持する吸引保持ハンド、搬送装置の制御方法、搬送装置および検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送装置(吸引保持ハンド)として、ウェーハ等の薄手のワークを非接触状態で保持する4個のベルヌーイノズルと、ワークを吸着状態で保持する4個の真空吸着ノズルと、4個のベルヌーイノズルおよび4個の真空吸着ノズルをその吸引面が同一平面上に位置するように保持する円板状の板状部材と、を有するものが知られている(特許文献1参照)。
この搬送装置では、ワークをカセットからピックアップし、いったん位置測定エリアに搬送し、ここでカメラによりワークの位置情報を取得し、続いてワークを貼付エリアに搬送し、上記の位置情報に基づいて、ワークを貼付エリアに設けた粘着テープに貼付する(落下させる)ようにしている。
この場合、ピックアップから位置測定エリアに至るワークの搬送では、4個のベルヌーイノズルを作動させてワークを非接触で保持し、位置測定エリアにおける位置情報の取得から貼付エリアへのワークを搬送、および貼付エリアにおける下降途中までは、4個の真空吸着ノズルを作動させてワークを吸着保持し、最後の落下時では、再度、ワークを非接触で保持するようにしている。これにより、ワークの破損を防止しつつ、ワークを精度良く位置決めして粘着テープに貼付するようにしている。
【特許文献1】特開2004−193195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の搬送装置では、非接触状態で保持するベルヌーイノズルと、吸着状態で保持する真空吸着ノズルと、がそれぞれ専用ノズルとして設けられているため、ノズルの配置面積が必然的に大きくなってしまう。このため、小さなワークを非接触状態で搬送すると、慣性によりワークの保持面がベルヌーイノズルの吸引面からずれてしまい、落下してしまう問題があった。また、ベルヌーイノズルの作動と真空吸着ノズルの作動とを円滑に切り替えないと、切替え時にワークが落下するおそれがあった。
【0004】
本発明は、コンパクトに構成することができると共に、電子部品の保持状態を維持したまま、保持形態を非接触保持と吸着保持との間で円滑に切り替えることができる吸引保持ハンド、搬送装置の制御方法、搬送装置および検査装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の吸引保持ハンドは、旋回流発生室に対し、電子部品を非接触で吸引保持するための気体が供給される複数の専用ベルヌーイチャックと、旋回流発生室に対し、電子部品を非接触で吸引保持するための気体の供給および電子部品を吸着保持するための気体の吸引が選択的に為される複数の兼用ベルヌーイチャックと、一端が複数の専用ベルヌーイチャックに接続され、他端が気体供給源に接続された第1気体供給流路と、一端が複数の兼用ベルヌーイチャックに接続され、他端が気体供給源に接続された第2気体供給流路と、一端が複数の兼用ベルヌーイチャックに接続され、他端が真空吸引源に接続された真空吸引流路と、第2気体供給流路に介設された第2供給流路開閉手段と、真空吸引流路に介設された吸引流路開閉手段と、第2供給流路開閉手段および吸引流路開閉手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、第2供給流路開閉手段により第2気体供給流路を閉塞し、吸引流路開閉手段により真空吸引流路を開放することにより、兼用ベルヌーイチャックにおいて、電子部品を非接触保持から吸着保持へ保持形態を変更することができる。その際、専用ベルヌーイチャックにより電子部品を非接触で吸引保持しているため、電子部品が落下することがなく、保持形態の変更後は電子部品を強く保持することができる。また、この状態から、吸引流路開閉手段により真空吸引流路を閉塞し、第2供給流路開閉手段により第2気体供給流路を開放することにより、電子部品を吸着保持から非接触保持へ保持形態を変更することができる。その際、専用ベルヌーイチャックにより電子部品を非接触で吸引保持しているため、電子部品が落下することがなく、保持形態の変更後は電子部品を平面内の動きに自由度をもって保持することができる。この場合、兼用ベルヌーイチャックは、非接触保持と吸着保持のいずれにも使用することができるため、電子部品の吸着に必要な吸着面積(両ベルヌーイチャックの設置面積)を小さくすることができ、全体としてコンパクトに構成することができる。また、非接触保持と吸着保持との切り替えに際し、電子部品が落下することがなく、電子部品の保持形態を非接触保持と吸着保持との間で円滑に切り替えることができる。
【0007】
本発明の他の吸引保持ハンドは、旋回流発生室に対し、電子部品を非接触で吸引保持するための気体が供給される複数の専用ベルヌーイチャックと、旋回流発生室に対し、電子部品を非接触で吸引保持するための気体の供給および電子部品を吸着保持するための気体の吸引が選択的に為される複数の兼用ベルヌーイチャックと、一端が複数の専用ベルヌーイチャックに接続され、他端が気体供給源に接続された第1気体供給流路と、一端が複数の兼用ベルヌーイチャックに接続され、他端が気体供給源および真空吸引源に接続された供給・吸引兼用流路と、供給・吸引兼用流路に介設され、供給・吸引兼用流路を真空吸引源と気体供給源との間で流路切替えする流路切替え手段と、流路切替え手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、流路切替え手段により気体供給源に接続された供給・吸引兼用流路を閉塞すると共に、真空吸引源に接続された供給・吸引兼用流路を開放することにより、兼用ベルヌーイチャックにおいて、電子部品を非接触保持から吸着保持へ保持形態を変更することができる。その際、専用ベルヌーイチャックにより電子部品を非接触で吸引保持しているため、電子部品が落下することがなく、保持形態の変更後は電子部品を強く保持することができる。また、この状態から、流路切替え手段により真空吸引源に接続された供給・吸引兼用流路を閉塞し、流路切替え手段により気体供給源に接続された供給・吸引兼用流路を開放することにより、電子部品を吸着保持から非接触保持へ保持形態を変更することができる。その際、専用ベルヌーイチャックにより電子部品を非接触で吸引保持しているため、電子部品が落下することがなく、保持形態の変更後は電子部品を平面内の動きに自由度をもって保持することができる。この場合、兼用ベルヌーイチャックは、非接触保持と吸着保持のいずれにも使用することができるため、電子部品の吸着に必要な吸着面積(両ベルヌーイチャックの設置面積)を小さくすることができ、全体としてコンパクトに構成することができる。また、非接触保持と吸着保持との切り替えに際し、電子部品が落下することがなく、電子部品の保持形態を非接触保持と吸着保持との間で円滑に切り替えることができる。
【0009】
この場合、複数の専用ベルヌーイチャックと複数の兼用ベルヌーイチャックとを一体的に保持するホルダを、更に備えたことが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、複数の専用ベルヌーイチャック、複数の兼用ベルヌーイチャックおよびホルダをユニット化しておくことで、流路等を兼用させることができ、よりコンパクト化を促進することができる。
【0011】
この場合、ホルダには、複数の専用ベルヌーイチャックと複数の兼用ベルヌーイチャックとが、混在した状態でマトリクス状に配設されていることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、非接触保持および吸着保持における保持力のバランスを維持しつつ、複数の専用ベルヌーイチャックと複数の兼用ベルヌーイチャックとを集約的に配置することができる。したがって、コンパクト化をさらに促進することができる。
【0013】
この場合、ホルダには、複数の専用ベルヌーイチャックにおけるそれぞれの旋回流発生室に連通する気体供給専用の専用気体室と、複数の兼用ベルヌーイチャックにおけるそれぞれの旋回流発生室に連通する気体供給および気体吸引兼用の兼用気体室と、が形成されていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、気体供給および気体吸引における圧力損失を抑えることができると共に、流路の複雑な引き回しを防止することができる。
【0015】
この場合、複数の専用ベルヌーイチャックは、旋回流の旋回方向が正逆異なる少なくとも一対のもので構成され、複数の兼用ベルヌーイチャックは、旋回流の旋回方向が正逆異なる少なくとも一対のもので構成されていることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、電子部品は、非接触保持時に旋回流の旋回方向が正逆異なる少なくとも一対のベルヌーイチャックによって保持される。このため、保持された電子部品に対してθ方向の力が作用することが無く、平面内において電子部品を安定に吸引保持することができる。
【0017】
本発明の搬送装置の制御方法は、制御手段により、第2気体供給流路を「開」とし真空吸引流路を「閉」として、電子部品を非接触で吸引保持する非接触保持運転と、第2気体供給流路を「閉」とし真空吸引流路を「開」として、電子部品を吸着保持する吸着保持運転と、を実施する上記の吸引保持ハンドを用い、電子部品を受取り部から受け取って受取り部の直上位置まで上昇させる受取り工程と、受取り工程の後、電子部品を受取り部の直上位置から受渡し部の直上位置まで水平移動させる移動工程と、移動工程の後、電子部品を受渡し部の直上位置から下降させて受渡し部に受け渡す受渡し工程と、を実施する搬送装置の制御方法であって、受取り工程および受渡し工程において、非接触保持運転を実施し、移動工程において、吸着保持運転を実施することを特徴とする。
【0018】
本発明の搬送装置は、制御手段により、第2気体供給流路を「開」とし真空吸引流路を「閉」として、電子部品を非接触で吸引保持する非接触保持運転と、第2気体供給流路を「閉」とし真空吸引流路を「開」として、電子部品を吸着保持する吸着保持運転と、を実施可能に構成された上記の吸引保持ハンドと、吸引保持ハンドを介して、電子部品を受取り部から受け取って受取り部の直上位置まで上昇させる受取り動作と、受取り動作の後、電子部品を受取り部の直上位置から受渡し部の直上位置まで水平移動させる移動動作と、移動動作の後、電子部品を受渡し部の直上位置から下降させて受渡し部に受け渡す受渡し動作と、を行なう搬送手段と、を備え、制御手段は、受取り動作および受渡し動作において、非接触保持運転を実施し、移動動作において、吸着保持運転を実施することを特徴とする。
【0019】
これらの構成によれば、受取り動作(受取り工程)時および受渡し動作(受渡し工程)時には、電子部品を非接触保持するため、電子部品の破損を防止することができると共に電子部品の位置決めも容易に行うことができる。一方、移動動作(移動工程)時には、電子部品を強固に吸着保持するため、移動開始や移動停止時の慣性による電子部品の落下を防止することができる。したがって、電子部品の破損防止等を図りつつ、電子部品を迅速に搬送することができる。
【0020】
本発明の搬送装置の制御方法は、制御手段により、供給・吸引兼用流路を気体供給源に流路切替えして、電子部品を非接触で吸引保持する非接触保持運転と、供給・吸引兼用流路を真空吸引源に流路切替えして、電子部品を吸着保持する吸着保持運転と、を実施する上記の吸引保持ハンドを用い、電子部品を受取り部から受け取って受取り部の直上位置まで上昇させる受取り工程と、受取り工程の後、電子部品を受取り部の直上位置から受渡し部の直上位置まで水平移動させる移動工程と、移動工程の後、電子部品を受渡し部の直上位置から下降させて受渡し部に受け渡す受渡し工程と、を実施する搬送装置の制御方法であって、受取り工程および受渡し工程において、非接触保持運転を実施し、移動工程において、吸着保持運転を実施することを特徴とする。
【0021】
本発明の搬送装置は、制御手段により、供給・吸引兼用流路を気体供給源に流路切替えして、電子部品を非接触で吸引保持する非接触保持運転と、供給・吸引兼用流路を真空吸引源に流路切替えして、電子部品を吸着保持する吸着保持運転と、を実施可能に構成された上記の吸引保持ハンドと、吸引保持ハンドを介して、電子部品を受取り部から受け取って受取り部の直上位置まで上昇させる受取り動作と、受取り動作の後、電子部品を受取り部の直上位置から受渡し部の直上位置まで水平移動させる移動動作と、移動動作の後、電子部品を受渡し部の直上位置から下降させて受渡し部に受け渡す受渡し動作と、を行なう搬送手段と、を備え、制御手段は、受取り動作および受渡し動作において、非接触保持運転を実施し、移動動作において、吸着保持運転を実施することを特徴とする。
【0022】
これらの構成によれば、受取り動作(受取り工程)時および受渡し動作(受渡し工程)時には、電子部品を非接触保持するため、電子部品の破損を防止することができると共に電子部品の位置決めも容易に行うことができる。一方、移動動作(移動工程)時には、電子部品を強固に吸着保持するため、移動開始や移動停止時の慣性による電子部品の落下を防止することができる。したがって、電子部品の破損防止等を図りつつ、電子部品を迅速に搬送することができる。
【0023】
本発明の検査装置は、電子部品が、複数のリード端子を有するICデバイスであり、受取り部が、複数のICデバイスを搭載した給材トレイであり、受渡し部が、複数のリード端子が接続される複数のプローブを有し、複数のプローブを介して載置したICデバイスを検査する検査ステージである上記の搬送装置を備え、ICデバイスを給材トレイから検査ステージに移載して、ICデバイスの電気的な検査を行うことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、給材トレイから非接触で保持したICデバイスを、吸着保持に切り替えて、高速で検査ステージ上に搬送することができる。そして、再度、非接触保持に切り替えた後、リード端子がプローブに接続するように載置する。よって、ICデバイスを一度保持することにより、給材トレイから検査ステージまでの搬送を行うことができるため、全体として検査時間(サイクルタイム)を大幅に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本発明の吸引保持ハンドおよび搬送装置を適用した検査装置について説明する。この検査装置は、ICチップをSOPパッケージにパッケージングした電子部品(ICデバイス)を、チャックヘッドにベルヌーイチャックを用いた搬送ロボットにより給材トレイ(受取り部)から検査ステージ(受渡し部)に持ち込んで、正常に作動するか否かを電気的に検査するものである。そこで、先ず検査対象となるICデバイスから説明する。
【0026】
図1に示すように、ICデバイス1は、ICチップ2を平面方形のケース3に収容した表面実装型のものであり、ケース3の両長辺には、それぞれクランク形状の複数のリード端子4が等間隔に突設されている。なお、実施形態のICデバイス1は、いわゆるSOPパッケージとなっているが、QFP等の他の形態のパッケージであっても検査対象とすることが可能である。
【0027】
図2に示すように、検査装置11は、クリーンルーム12内に検査のための主装置を収容すると共に、クリーンルーム12に併設した部品搬入部13および部品搬出部14を備えている。部品搬入部13には、検査前の多数のICデバイス1が、複数の搬入・搬出トレイ15に搭載されて搬入される。一方、部品搬出部14からは、検査後の多数のICデバイス1が、複数の搬入・搬出トレイ15に搭載されて搬出される。
【0028】
クリーンルーム12の給材側には、部品搬入部13の近傍に位置してICデバイス1を検査温度に加熱する一対のホットプレート21が配設され、中央には検査装置本体を構成するICハンドラ(請求項に言う「検査装置」)22が配設されている。さらに、一対のホットプレート21とICハンドラ22との間には、給材トレイ23を搭載した一対のシャトル搬送機構24が配設されており、一対のシャトル搬送機構24は、ホットプレート21により加熱したICデバイス1を、給材トレイ23を介して複数個ずつICハンドラ22に交互に給材する。
【0029】
一方、クリーンルーム12の除材側には、部品搬出部14に対峙して複数台のコンベア搬送機構31が設けられており、部品搬出部14に持ち込んだ空の搬入・搬出トレイ15を、クリーンルーム12内の除材エリア32に搬送すると共に、検査後のICデバイス1を搬入・搬出トレイ15を介して部品搬出部14に搬送する。また、部品搬入部13と一対のホットプレート21との間には、第1の搬送ロボット33が、一対のホットプレート21と一対のシャトル搬送機構24との間には、第2の搬送ロボット34が、ICハンドラ22と除材エリア32との間には第3の搬送ロボット35が、それぞれ配設されている。さらに、ICハンドラ22には、ICデバイス1を検査する検査ステージ36と両シャトル搬送機構24との間でICデバイス1を搬送する搬送ロボット37が組み込まれている。
【0030】
一対のホットプレート21は交互運転を行い、第1の搬送ロボット33は運転休止状態の一方のホットプレート21にICデバイス1を搬送し、第2の搬送ロボット34はICデバイス1を加熱が完了した一方のホットプレート21から待機状態の一方のシャトル搬送機構24に搬送する。そして、一対のシャトル搬送機構24は、ICハンドラ22に交互に臨むようになっている。第3の搬送ロボット35は、ICハンドラ22の検査結果を受けて、ICデバイス1を良品・不良品に分けて除材エリア32の搬入・搬出トレイ15に搬送する。
【0031】
ICハンドラ22は、ICデバイス1を検査するための複数のプローブ56を有する検査ステージ36と、検査ステージ36と両シャトル搬送機構24との間でICデバイス1を移載する搬送ロボット37(搬送装置)と、キーボードおよびディスプレイ付の本体(図示省略)と、を有している。詳細は図示していないが、搬送ロボット37は天吊り型のものであり、そのロボットアームの先端には、チャックヘッド(図示省略)を介して、ICデバイス1を吸引保持する吸引保持ハンド61が装着されている。一方、シャトル搬送機構24に搭載された給材トレイ23には、複数の収容溝41が形成され、この各収容溝41にリード端子4を下向きにした状態でICデバイス1が投入されている。搬送ロボット37は、その吸引保持ハンド61を上側から収容溝41に接近させ、収容溝41内のICデバイス1を吸引保持し、この状態でICデバイス1を給材トレイ23からピックアップし、さらに検査ステージ36の直上部まで横移動させ、ここで下動してICデバイス1を検査ステージ36上に載置する。
【0032】
図3に示すように、給材トレイ23は、複数の収容溝41を有して一体に形成されている。各収容溝41は、中央部に貫通するように設けた開口部42と、開口部42を囲繞するように設けた平坦部43と、平坦部43の外側に設けた一対の支持突起44と、各支持突起44の外側に設けた一対の段部45と、から構成されている。ICデバイス1は、その両側のリード端子4の基部を、一対の支持突起44に支持させるようにし、本体部分を平坦部43から僅かに浮かせ、且つ両側のリード端子4の先端部分を一対の段部45から僅かに浮かせた状態で、収容されている。
【0033】
図4に示すように、検査ステージ36は、ステージ本体51の周縁部に立設された位置決めガイド52と、位置決めガイド52の内側に位置してステージ本体51の中央部に配設され、ICデバイス1がセットされるセット部53と、から構成されている。位置決めガイド52は、1の対角に位置するように各辺に1つずつ、計4ヶ所に形成された複数の位置決めガイド片54で構成されており、位置決めガイド片54が存しないセット部53の周縁部から、後述するベルヌーイチャック62の作動エアーが逃げるようになっている。また、各位置決めガイド片54は、検査ステージ36の外側から内側に向って傾斜する接続斜面55を有しており、ICデバイス1の下端(リード端子4の下端)が、接続斜面55によって、載置時の載置姿勢になるように位置修正されながら載置位置に向かってガイドされる(図4(b)参照)。また、セット部53には、セットされたICデバイス1の各リード端子4が接触する(導通)する複数のプローブ56が埋め込まれており、接続斜面55にガイドされて載置位置にセットされたICデバイス1は、そのリード端子4がプローブ56に精度良く接触するようになっている。
【0034】
搬送ロボット(搬送装置)37は、ICデバイス1を吸引保持する吸引保持ハンド61と、吸引保持ハンド61を介してICデバイス1を移動させるロボットアームと、ロボットアームを支持するロボット本体(共に図示省略)と、を備えている。そして、搬送ロボット37は、給材トレイ23からICデバイス1を受け取り、検査ステージ36に高速搬送し、検査ステージ36に受け渡すよう動作する。詳細は後述するが、本実施形態の吸引保持ハンド61は、ICデバイス1を非接触保持と吸着保持との間で保持状態を切り替え得るようになっており、上記の受け取りおよび受け渡し動作ではICデバイス1を非接触保持し、高速搬送の際にはICデバイス1を吸着保持する。
【0035】
図5および図6に示すように、吸引保持ハンド61は、ICデバイス1を吸引保持する複数(図示のものは、4個)のベルヌーイチャック62と、ベルヌーイチャック62を保持するチャックホルダ63と、チャックホルダ63を支持する装置取付部64と、を備えている。また、吸引保持ハンド61は、非接触保持用のエアーを供給する気体供給源101および吸着保持用のエアーを吸引する真空吸引源102に接続した作動配管系103と、この作動配管系103を制御すると共に搬送ロボット37のロボットコントローラ104とリンクする制御装置(制御手段)105と、を備えている。
【0036】
4個のベルヌーイチャック62は、全て同一のものであるが、機能別に分けられており、ICデバイス1を非接触で吸引保持する2個の専用ベルヌーイチャック62aと、ICデバイス1を非接触で吸引保持および吸着保持が選択的になされる2個の兼用ベルヌーイチャック62bと、から構成されている(詳細は後述する。)。このため、2個の専用ベルヌーイチャック62aには、作動配管系103を介して気体供給源101が連通しており、2個の兼用ベルヌーイチャック62bには、作動配管系103を介して気体供給源101および真空吸引源102が選択的に連通する。
【0037】
作動配管系103は、気体供給源101からの圧縮エアーの供給に用いる専用チューブ(第1気体供給流路)111aと、気体供給源101からの圧縮エアーの供給および真空吸引源102へのエアー吸引に用いる兼用チューブ111bと、を有している。専用チューブ111aは、気体供給源101側の上流側主供給チューブ112と、チャックホルダ63側の下流側主供給チューブ113と、上流側主供給チューブ112および下流側主供給チューブ113を接続する分岐用のT字継手114と、から構成されている。
【0038】
兼用チューブ111bは、真空吸引源102側の真空チューブ121と、チャックホルダ63側の共有チューブ122と、真空チューブ121および共有チューブ122を接続する合流用のT字継手114と、この合流用のT字継手114および上記の分岐用のT字継手114間に配設した分岐供給チューブ123と、から構成されている。また、上流側主供給チューブ112には供給部開閉バルブ124が介設され、分岐供給チューブ123には分岐部開閉バルブ125が介設されている。さらに真空チューブ121には、真空部開閉バルブ126が介設されている。
【0039】
そして、供給部開閉バルブ124、分岐部開閉バルブ125および真空部開閉バルブ126は、上記の制御装置105に接続されている。なお、請求項に言う「供給・吸引兼用流路」は、共有チューブ122で構成され、「流路切り替え手段」は、分岐部開閉バルブ125および真空部開閉バルブ126で構成されている。したがって、分岐部開閉バルブ125および真空部開閉バルブ126に代えて、合流用のT字継手114の位置に三方弁(流路切り替え手段)を設けるようにしてもよい。
【0040】
吸引保持ハンド61の作動時(チャック動作時)には、供給部開閉バルブ124は常に「開」となっており、気体供給源101から専用チューブ111aを通って供給されたエアーは、チャックホルダ63を介して専用ベルヌーイチャック62aに供給される。また、この状態で、分岐部開閉バルブ125を「開」とし、真空部開閉バルブ126を「閉」とすると、分岐供給チューブ123および共有チューブ122を通って供給された圧縮エアーが、チャックホルダ63を介して兼用ベルヌーイチャック62bにも供給される(非接触保持運転)。すなわち、2個の専用ベルヌーイチャック62aおよび2個の兼用ベルヌーイチャック62bは、いずれもICデバイス1を非接触で吸引保持するように作動する。
【0041】
一方、供給部開閉バルブ124が「開」の状態から、分岐部開閉バルブ125を「閉」とし、真空部開閉バルブ126を「開」とすると、兼用ベルヌーイチャック62bから共有チューブ122および真空チューブ121を通って、真空吸引源102にエアーが吸引される。すなわち、2個の兼用ベルヌーイチャック62bは、ICデバイス1を吸着保持するように作動する(吸着保持運転)。この場合、専用ベルヌーイチャック62aには、圧縮エアーが継続的に供給されているが、専用ベルヌーイチャック62aから流出するエアーの圧力は弱いため、兼用ベルヌーイチャック62bが吸引作動すると、ICデバイス1は兼用ベルヌーイチャック62bに吸着保持された状態となる。
【0042】
装置取付部64は、略円筒状に形成され、上半部の内部には太径の取付孔71が、下半部の内部には細径の装着孔72がそれぞれ形成されている。取付孔71および装着孔72は同軸上に配設されており、取付孔71は、吸引保持ハンド61を搬送ロボットのロボットアームに取付けるための部位として機能し、装着孔72にはジョイント部材67が差込み装着されている。なお、図5中の符号73は、吸引保持ハンド61をロボットアームに取付けるための止めネジ用の上ネジ孔であり、符号74は、ジョイント部材67を固定する止めネジ用の下ネジ孔である。
【0043】
チャックホルダ63は、4個のベルヌーイチャック62を下向きに直接保持するホルダ本体(ホルダ)65と、ホルダ本体65を垂設支持する部品ガイド66と、ホルダ本体65および部品ガイド66を垂設支持するジョイント部材67と、を同軸上に重ねるようにして構成されている。この場合、4個のベルヌーイチャック62およびホルダ本体65は、ユニット化されており、これに対して形状の異なるICデバイス1に応じた部品ガイド66を組み合わせるようになっている。これにより、流路等を兼用させることができ、ベルヌーイチャック62およびホルダ本体65を汎用的な部品とすることができる。そして、ジョイント部材67には、上記の作動配管系103が接続されている。
【0044】
ジョイント部材67は、細径に形成された上半部の装着部81および太径に形成された下半部の垂設部82で構成されている。装着部81には、上記の止めネジが突き当てられる弦状の平坦部43が形成されており、この装着部81を装置取付部64の装着孔72に嵌合し、止めネジを下ネジ孔74から螺合することにより、ジョイント部材67が装置取付部64に装着されるようになっている。
【0045】
垂設部82の内部には、専用チューブ111aが接続されると共に専用ベルヌーイチャック62aに連なる「L」字状の専用ジョイント部流路91aと、兼用チューブ111bが接続されると共に兼用ベルヌーイチャック62bに連なる「L」字状の兼用ジョイント部流路91bと、がそれぞれ形成されている。また、垂設部82の下端面には、角を面取りした略方形の台座131が突設されており、この台座131に部品ガイド66が嵌合するようにして、位置決め固定されるようになっている。
【0046】
専用ジョイント部流路91aは、垂設部82の軸心に下端面から穿孔した専用縦流路132aおよび外周面から専用縦流路132aの上端部に向って穿孔した専用横流路133aから構成されている。また、専用ジョイント部流路91aの上流端は、気体供給源101に連なる専用チューブ111aに接続されており、下流端は、部品ガイド66に連通している。そして、この専用ジョイント部流路91aを通って供給される圧縮エアーは、ホルダ本体65に導かれ、ホルダ本体65から専用ベルヌーイチャック62aに供給される。
【0047】
同様に、兼用ジョイント部流路91bは、垂設部82の軸心から偏心した位置に下端面から穿孔した兼用縦流路132bおよび外周面から兼用縦流路132bの上端部に向って穿孔した兼用横流路133bから構成されている。また、兼用ジョイント部流路91bの上流端は、気体供給源101および真空吸引源102に連なる兼用チューブ111bに接続されており、下流端は、部品ガイド66を介してホルダ本体65に連通している。そして、この兼用ジョイント部流路91bを通って供給される圧縮エアーは、ホルダ本体65に導かれ、ホルダ本体65から兼用ベルヌーイチャック62bに供給される。一方、兼用ベルヌーイチャック62bから吸引されるエアーは、ホルダ本体65から兼用ジョイント部流路91bを通って真空吸引源102に導かれる。
【0048】
部品ガイド66は、略方形の厚板状に形成されたガイド本体141と、ガイド本体141の下面周縁部に下向きに突設した複数(図示のものは、4個)のガイド片142と、で一体に形成されている。また、部品ガイド66の上面には、上記の台座131が着座する着座部143が窪入形成されており、同軸上においてジョイント部材(垂設部82)67の下端面に形成された台座131が着座部143に係合して接着固定されている。
【0049】
ガイド片142は、1の対角に位置するように各辺1個、計4個設けられており、それぞれのガイド斜面144を内向きとした状態で設けられている(図4参照)。そして、この4個のガイド斜面144を結んだ方形の領域がICデバイス1の外形と略合致しており、この4個のガイド片142により、ICデバイス1の平面姿勢を矯正しつつ所定の位置に吸引するようになっている。また、部品ガイド66の中心位置(軸心位置)には、上記の専用縦流路132aに連通する専用貫通流路151aが形成されており、その1つの隅部には、上記の兼用縦流路132bに連通する兼用貫通流路151bが形成されている。兼用貫通流路151bは、図6に示すように、ガイド本体141の上面から見ると略楕円形に形成されており、下面から見ると円形に形成されている。すなわち、兼用貫通流路151bは、上半分が楕円柱状に形成された楕円形貫通流路152と、下半分が円柱状に形成された円形貫通孔153と、から構成されており、エアーが通過する軸心を側方にずらすように構成されている。
【0050】
ホルダ本体65は、本体ケース161およびこれに気密に接合した蓋ケース162から構成されており、内部には、専用ベルヌーイチャック62aに連なる専用エアー室(専用気体室)163aおよび兼用ベルヌーイチャック62bに連なる兼用エアー室(兼用気体室)163bがそれぞれ形成されている。蓋ケース162は、本体ケース161の周縁部に設けた突設枠部164(図6参照)に嵌合するようにして接着され、その中心位置(軸心位置)には、専用貫通流路151aに連通する専用導入孔165aが形成されており、1つの隅部には、兼用貫通流路151bに連通する兼用導入孔165bが形成されている。一方、本体ケース161には、蓋ケース162との間に専用エアー室163aを構成するための専用エアー溝166aおよび兼用エアー室163bを構成する兼用エアー溝166bが形成されている(図7参照)。
【0051】
本体ケース161は、ベルヌーイチャック62を下方に突出させ、且つそれぞれの旋回流発生室181の下端が同一平面内に位置するように一体的に保持している。具体的には、本体ケース161には、略長円形の4個の固定装着穴167がマトリクス状に形成されており、ベルヌーイチャック62は、その上半分を固定装着穴に下側から嵌合するようにして接着固定されている(図5参照)。そして、4個のベルヌーイチャック62のうちの対角に位置する2つのベルヌーイチャック62が、旋回流の旋回方向が正逆異なる専用ベルヌーイチャック62aであり、他方の対角に位置する2つのベルヌーイチャック62が、旋回流の旋回方向が正逆異なる兼用ベルヌーイチャック62bとなっている。すなわち、本体ケース161には、2個の専用ベルヌーイチャック62aおよび2個の兼用ベルヌーイチャック62bが、混在した状態でマトリクス状に配設されている。これにより、ICデバイス1の保持形態を切り替える際に、ICデバイス1に対して均等に、非接触あるいは吸着による保持力が働くため、ICデバイス1を安定に保持することができる。また、2個の専用ベルヌーイチャック62aおよび2個の兼用ベルヌーイチャック62bを集約的に配置することができる。
【0052】
なお、兼用ベルヌーイチャック62bは、圧縮エアーの供給により本来のベルヌーイチャック62として機能するが、エアー吸引の場合には、単なる吸着コレットとして機能する。
【0053】
次に、図8を参照して、ベルヌーイチャック62について説明する。ベルヌーイチャック62は、円柱状の旋回流発生室181と、旋回流発生室181の開口側端に連なり、ICデバイス1を吸引保持する吸引保持面182と、旋回流発生室181の内周面184に圧縮エアーを噴出させて、旋回流を発生させる一対の気体噴出流路183と、各気体噴出流路183の上流端に連通し、気体供給源101からの圧縮エアーを供給する一対のチャンバ流路185と、から構成されている。気体供給源101から供給された圧縮エアーは、一対のチャンバ流路185に同時に流入し、それぞれ気体噴出流路183を通って旋回流発生室181に噴出される。
【0054】
旋回流発生室181は、その内周面184の一端が閉塞された円柱状に形成されており、旋回流発生室181の閉塞側には、一対の気体噴出流路183が形成されている。旋回流発生室181に流入した圧縮エアーは、その内周面184に沿うように流れ、強い旋回流となってやがて開放端から側方に流出する。そして、旋回流の中心部には、ベルヌーイの定理に従って負圧が生じ、この負圧によりICデバイス1を吸引するようになっている。
【0055】
吸引保持面182は、旋回流発生室181の開口側端に連なり、旋回流の旋回軸に対して直交するように形成されている。旋回流発生室181で発生した旋回流は、旋回流発生室181の開放端に達した次の瞬間、その遠心力により吸引保持面182に沿って内周側から外周側に向って渦流となって流れ出す。そして、吸引保持面182上を流れ出すエアーにより、ICデバイス1と吸引保持面182との間隙が維持される。なお、旋回流発生室181の開口端が徐々に広がるようにベルマウス形状としてもよいし、吸引保持面182に渦流を維持する渦形の溝を形成するようにしてもよい。
【0056】
そして、このように構成されたベルヌーイチャック62のうち、2個の専用ベルヌーイチャック62aにおける一対のチャンバ流路185が、上記の専用エアー室163aにそれぞれ連通し、2個の兼用ベルヌーイチャック62bにおける一対のチャンバ流路185が、上記の兼用エアー室163bにそれぞれ連通している。
【0057】
ここで、ICデバイス1を給材トレイ23から受取り、検査ステージ36に受け渡す、ICデバイス1の移載動作における搬送ロボット37および吸引保持ハンド61の制御方法について説明する。この制御方法は、ロボットコントローラ104とリンクする制御装置105によって実施され、ICデバイス1を給材トレイ23から受け取って、給材トレイ23の直上位置まで上昇させる受取り工程(受取り動作)と、受取り工程の後、ICデバイス1を給材トレイ23の直上位置から検査ステージ36の直上位置まで水平移動させる移動工程(移動動作)と、移動工程の後、ICデバイス1を検査ステージ36の直上位置から下降させて検査ステージ36に受け渡す受渡し工程(受渡し動作)と、から成っている。
【0058】
受取り工程では、搬送ロボット37が吸引保持ハンド61を下降させ、吸引保持ハンド61にICデバイス1を吸引保持した後、上昇させる。その際、吸引保持ハンド61は、供給部開閉バルブ124が「開」の状態で、分岐部開閉バルブ125を「開」とし、真空部開閉バルブ126を「閉」とするバルブ切替えを行って非接触保持運転を実施する。すなわち、専用ベルヌーイチャック62aおよび兼用ベルヌーイチャック62bに作動エアーが流入し、これにより、吸引保持ハンド61は、ICデバイス1を非接触で吸引保持することになり、ICデバイス1の破損を有効に防止することができる。また、吸引保持ハンド1は、ICデバイス1をガイド片142でガイドして吸引保持するため、ICデバイス1をベルヌーイチャック62に対して位置決めされた状態で吸引保持することができる。
【0059】
移動工程では、搬送ロボット37がICデバイス1を給材トレイ23の直上位置から検査ステージ36の直上位置まで水平に高速搬送する。この高速搬送は、ICデバイス1をその姿勢を維持しつつ平行移動するものであり、その際、吸引保持ハンド61は、供給部開閉バルブ124が「開」の状態で、分岐部開閉バルブ125を「閉」とし、真空部開閉バルブ126を「開」とするバルブ切替えを行って吸着保持運転を実施する。すなわち、専用ベルヌーイチャック62aには、作動エアーが供給されるものの、兼用ベルヌーイチャック62bからエアーが強く吸引される。これにより、吸引保持ハンド61は、ICデバイス1を強固に吸着保持することになり、移動開始や移動停止時の慣性によるICデバイス1の落下を防止することができる。
【0060】
受渡し工程では、搬送ロボット37がICデバイス1を検査ステージ36の直上位置から下降させて、リード端子4がプローブ56に当接するように、検査ステージ36に受け渡す。その際、再度バルブ切替えを行って、上記した吸着保持運転から非接触保持運転に切り替える。これにより、ICデバイス1を検査ステージ36に対し位置決めされた状態で受け渡すことができる。
【0061】
以上の構成によれば、専用ベルヌーイチャック62aおよび兼用ベルヌーイチャック62bを用い、ICデバイス1の搬送動作の段階に応じて、非接触保持運転と吸着保持運転とを相互に切り替えるようにしているため、位置決め状態に保持したICデバイス1を、給材トレイ23から検査ステージ36まで高速搬送することができ、全体として検査時間(サイクルタイム)を大幅に短縮することができる。また、兼用ベルヌーイチャック62bは、非接触保持と吸着保持のいずれにも使用することができるため、ICデバイス1の吸着に必要な吸着面積を小さくすることができ、吸引保持ハンド1を全体としてコンパクトに構成することができる。また、ICデバイス1の保持形態を非接触保持と吸着保持との間で円滑に切り替えることができる。
【0062】
なお、特に図示しないが、気体供給源101およびベルヌーイチャック62を繋ぐ流路と、真空吸引源102および兼用ベルヌーイチャック62bを繋ぐ真空吸引流路と、をそれぞれ別流路としてもよい。かかる場合には、専用チューブ111aを下流側で二分岐させて、一方が第2気体供給流路としてジョイント部材67に接続されるように構成する。そして、第2気体供給流路には、分岐部開閉バルブ125を介設し、真空吸引流路には、真空部開閉バルブ126を介設する。また、部品ガイド66内には、分岐した副専用チューブと連通する流路を形成し、下流端が兼用エアー室163bに接続するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ICデバイスを模式的に表した斜視図である。
【図2】ICハンドラの模式図である。
【図3】給材トレイの断面模式図である。
【図4】検査ステージの断面模式図である。
【図5】吸引保持ハンドを斜め下方から見た分解斜視図である。
【図6】吸引保持ハンドの一部を斜め上方から見た分解斜視図である。
【図7】本体ケースの平面図である。
【図8】ベルヌーイチャックの外観斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1…ICデバイス 4…リード端子 23…給材トレイ 36…検査ステージ 37…搬送ロボット 56…プローブ 61…吸引保持ハンド 62…ベルヌーイチャック 62a…専用ベルヌーイチャック 62b…兼用ベルヌーイチャック 101…気体供給源 102…真空吸引源 105…制御装置 111a…専用チューブ 111b・・・兼用チューブ 112…上流側主供給チューブ 113…下流側主供給チューブ 122…共有チューブ 124…供給部開閉バルブ 125…分岐部開閉バルブ 126・・・真空部開閉バルブ 163a…専用エアー室 163b…兼用エアー室 181…旋回流発生室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回流発生室に対し、電子部品を非接触で吸引保持するための気体が供給される複数の専用ベルヌーイチャックと、
前記旋回流発生室に対し、前記電子部品を非接触で吸引保持するための気体の供給および前記電子部品を吸着保持するための気体の吸引が選択的に為される複数の兼用ベルヌーイチャックと、
一端が前記複数の専用ベルヌーイチャックに接続され、他端が気体供給源に接続された第1気体供給流路と、
一端が前記複数の兼用ベルヌーイチャックに接続され、他端が前記気体供給源に接続された第2気体供給流路と、
一端が前記複数の兼用ベルヌーイチャックに接続され、他端が真空吸引源に接続された真空吸引流路と、
前記第2気体供給流路に介設された第2供給流路開閉手段と、
前記真空吸引流路に介設された吸引流路開閉手段と、
前記第2供給流路開閉手段および前記吸引流路開閉手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする吸引保持ハンド。
【請求項2】
旋回流発生室に対し、電子部品を非接触で吸引保持するための気体が供給される複数の専用ベルヌーイチャックと、
前記旋回流発生室に対し、前記電子部品を非接触で吸引保持するための気体の供給および前記電子部品を吸着保持するための気体の吸引が選択的に為される複数の兼用ベルヌーイチャックと、
一端が前記複数の専用ベルヌーイチャックに接続され、他端が気体供給源に接続された第1気体供給流路と、
一端が前記複数の兼用ベルヌーイチャックに接続され、他端が前記気体供給源および真空吸引源に接続された供給・吸引兼用流路と、
前記供給・吸引兼用流路に介設され、前記供給・吸引兼用流路を前記真空吸引源と前記気体供給源との間で流路切替えする流路切替え手段と、
前記流路切替え手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする吸引保持ハンド。
【請求項3】
前記複数の専用ベルヌーイチャックと前記複数の兼用ベルヌーイチャックとを一体的に保持するホルダを、更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の吸引保持ハンド。
【請求項4】
前記ホルダには、前記複数の専用ベルヌーイチャックと前記複数の兼用ベルヌーイチャックとが、混在した状態でマトリクス状に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の吸引保持ハンド。
【請求項5】
前記ホルダには、前記複数の専用ベルヌーイチャックにおけるそれぞれの前記旋回流発生室に連通する気体供給専用の専用気体室と、
前記複数の兼用ベルヌーイチャックにおけるそれぞれの前記旋回流発生室に連通する気体供給および気体吸引兼用の兼用気体室と、が形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の吸引保持ハンド。
【請求項6】
前記複数の専用ベルヌーイチャックは、前記旋回流の旋回方向が正逆異なる少なくとも一対のもので構成され、
前記複数の兼用ベルヌーイチャックは、前記旋回流の旋回方向が正逆異なる少なくとも一対のもので構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の吸引保持ハンド。
【請求項7】
前記制御手段により、前記第2気体供給流路を「開」とし前記真空吸引流路を「閉」として、前記電子部品を非接触で吸引保持する非接触保持運転と、前記第2気体供給流路を「閉」とし前記真空吸引流路を「開」として、前記電子部品を吸着保持する吸着保持運転と、を実施する請求項1に記載の吸引保持ハンドを用い、
前記電子部品を受取り部から受け取って前記受取り部の直上位置まで上昇させる受取り工程と、前記受取り工程の後、前記電子部品を前記受取り部の直上位置から受渡し部の直上位置まで水平移動させる移動工程と、前記移動工程の後、前記電子部品を前記受渡し部の直上位置から下降させて前記受渡し部に受け渡す受渡し工程と、を実施する搬送装置の制御方法であって、
前記受取り工程および前記受渡し工程において、前記非接触保持運転を実施し、
前記移動工程において、前記吸着保持運転を実施することを特徴とする搬送装置の制御方法。
【請求項8】
前記制御手段により、前記供給・吸引兼用流路を前記気体供給源に流路切替えして、前記電子部品を非接触で吸引保持する非接触保持運転と、前記供給・吸引兼用流路を前記真空吸引源に流路切替えして、前記電子部品を吸着保持する吸着保持運転と、を実施する請求項2に記載の吸引保持ハンドを用い、
前記電子部品を受取り部から受け取って前記受取り部の直上位置まで上昇させる受取り工程と、前記受取り工程の後、前記電子部品を前記受取り部の直上位置から受渡し部の直上位置まで水平移動させる移動工程と、前記移動工程の後、前記電子部品を前記受渡し部の直上位置から下降させて前記受渡し部に受け渡す受渡し工程と、を実施する搬送装置の制御方法であって、
前記受取り工程および前記受渡し工程において、前記非接触保持運転を実施し、
前記移動工程において、前記吸着保持運転を実施することを特徴とする搬送装置の制御方法。
【請求項9】
前記制御手段により、前記第2気体供給流路を「開」とし前記真空吸引流路を「閉」として、前記電子部品を非接触で吸引保持する非接触保持運転と、前記第2気体供給流路を「閉」とし前記真空吸引流路を「開」として、前記電子部品を吸着保持する吸着保持運転と、を実施可能に構成された請求項1に記載の吸引保持ハンドと、
前記吸引保持ハンドを介して、前記電子部品を受取り部から受け取って前記受取り部の直上位置まで上昇させる受取り動作と、前記受取り動作の後、前記電子部品を前記受取り部の直上位置から受渡し部の直上位置まで水平移動させる移動動作と、前記移動動作の後、前記電子部品を前記受渡し部の直上位置から下降させて前記受渡し部に受け渡す受渡し動作と、を行なう搬送手段と、を備え、
前記制御手段は、前記受取り動作および前記受渡し動作において、前記非接触保持運転を実施し、
前記移動動作において、前記吸着保持運転を実施することを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
前記制御手段により、前記供給・吸引兼用流路を前記気体供給源に流路切替えして、前記電子部品を非接触で吸引保持する非接触保持運転と、前記供給・吸引兼用流路を前記真空吸引源に流路切替えして、前記電子部品を吸着保持する吸着保持運転と、を実施可能に構成された請求項2に記載の吸引保持ハンドと、
前記吸引保持ハンドを介して、前記電子部品を受取り部から受け取って前記受取り部の直上位置まで上昇させる受取り動作と、前記受取り動作の後、前記電子部品を前記受取り部の直上位置から受渡し部の直上位置まで水平移動させる移動動作と、前記移動動作の後、前記電子部品を前記受渡し部の直上位置から下降させて前記受渡し部に受け渡す受渡し動作と、を行なう搬送手段と、を備え、
前記制御手段は、前記受取り動作および前記受渡し動作において、前記非接触保持運転を実施し、
前記移動動作において、前記吸着保持運転を実施することを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
前記電子部品が、複数のリード端子を有するICデバイスであり、前記受取り部が、複数の前記ICデバイスを搭載した給材トレイであり、前記受渡し部が、前記複数のリード端子が接続される複数のプローブを有し、前記複数のプローブを介して載置した前記ICデバイスを検査する検査ステージである請求項9または10に記載の搬送装置を備え、
前記ICデバイスを前記給材トレイから前記検査ステージに移載して、前記ICデバイスの電気的な検査を行うことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−64172(P2010−64172A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231753(P2008−231753)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】