説明

吸引器用吸引液体収容袋

【課題】医療事故が未然に防止され、更には、吸引液体を収容する廃棄用の袋の容積を最大限に使用することができるようにした吸引器用吸引液体収容袋の提供。
【解決手段】可撓性合成樹脂フィルムにより筒状に成形された胴部2の下端側が閉鎖され、上端側が開放された袋本体1を有し、袋本体1の開口部に、吸引液体貯留容器と蓋体との間に挟みこまれる保持片部4を一体に有し、保持片部4より下側の袋本体内周面に密封構造式のファスナー10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療や現場において使用される吸引器に装着し、該吸引器によって吸引された体液などの液体を処理するために収容する吸引器用吸引液体収容袋に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、痰、鼻汁、血液などの体液を吸引する吸引器が医療現場において広く使用されている。この吸引器は、プラスチックやガラス製の吸引液体貯留容器の頂部の蓋に、吸引ノズルに通じる吸引パイプと、減圧機に通じる減圧パイプとを連通させておき、減圧機によって吸引液体貯留容器内を減圧することによって吸引ノズルより体液を吸引させ、吸引された体液が吸引液体貯留容器内に吐出して底部に溜まり、空気は減圧パイプから排出されるようにしている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、この種の従来の吸引器において、吸引された体液等の液体を吸引液体貯留容器内に装着した廃棄用袋内に入れ、その袋内に吸水性材料を収納しておき、これに吸収させるようにした技術が知られている。(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−49706号公報
【特許文献2】特開平8−112344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に示されているように、吸引された体液等を直接吸引液体貯留容器に貯留させる方式では、吸引された体液等の液体を廃棄する際に、吸引液体貯留容器自体を洗浄する必要があり、体液にウィルスや病原菌感染の恐れがある場合、処理時の不注意によって医療事故が発生し易いという問題があるとともに、洗浄に手数を要するという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2に示されているように、吸引液体貯留容器内に廃棄用のための袋を収容し、その中に吸引液体を収容し、袋ごと廃棄する方式のものは、前述したように吸引液体貯留容器を使用の度に洗浄作業を行う手間が省けるが、袋の着脱作業に手数を要し、また、袋内には吸水材料が収容されるものであるため、その分コスト高となり、廃棄の際に開口部が開いたまま状態である為、吸水材料を収容せずに使用すると、廃棄時に医療事故が発生し易いという問題があった。また、廃棄用の袋内を減圧させて液体を吸引させるものであるため、吸引液体貯留容器と袋との間に空気が多く残った状態で使用すると、その空気が袋内が減圧された分だけ膨張し、袋内の貯留許容量が少なくなるという問題があった。
【0007】
本発明は上述のような問題に鑑み、低コストで簡単に吸引液体を廃棄することができ、医療事故が未然に防止され、更には、吸引液体を収容する廃棄用の袋の容積を最大限に使用することができるようにした吸引器用吸引液体収容袋の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、上方開口型の吸引液体貯留容器と、該吸引液体貯留容器の開口部に嵌合されてこれを閉鎖する蓋体と、該蓋体に、液体吸引パイプを連結する連結具と、減圧器に通じる減圧パイプを連結させる連結具とをそれぞれ備えてなる吸引器にあって、前記吸引液体貯留容器内に耐圧着脱自在に装着され、前記液体吸引パイプから吸引した吸引液体を収容する吸引器用吸引液体収容袋において、可撓性合成樹脂フィルムにより筒状に成形された胴部の下端側が閉鎖され、上端側が開放された袋本体を有し、該袋本体の開口部に、前記吸引液体貯留容器と蓋体との間に挟みこまれる保持片部を一体に有し、該保持片部より下側の前記袋本体内周面に密封構造式のファスナーを備えたことにある。
【0009】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記袋本体のファスナーと保持片部との間の部分に袋本体内外を連通させる通気部を備えたことにある。
【0010】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の何れか1の請求項の構成に加え、 前記通気部は、袋本体に切れ目を形成することによって表裏貫通孔部とこれを開閉する舌片状部を一体に備えたことにある。
【0011】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1、2又は3の何れか1の請求項の構成に加え、前記袋本体の外周面は、多数の微細凹凸を設けた粗面となっていることにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る吸引器用吸引液体収容袋は、可撓性合成樹脂フィルムにより筒状に成形された胴部の下端側が閉鎖され、上端側が開放された袋本体を有し、該袋本体の開口部に、前記吸引液体貯留容器と蓋体との間に挟みこまれる保持片部を一体に有し、該保持片部より下側の前記袋本体内周面に密封構造式のファスナーを備えたことにより、吸引液体貯留容器内への装着は、保持片部を吸引液体貯留容器開口部に蓋体を嵌め合わせる際に保持片部を挟み込むのみで容易にでき、吸引液体貯留容器内から取り出す際には、ファスナーを閉じることによって袋本体内が密閉され、吸引液体貯留容器からの取り出し時に内部の液体が漏れ出ることがなくなり、医療事故を未然荷防止することができる。
【0013】
また、本発明は、袋本体のファスナーと保持片部との間の部分に袋本体内外を連通させる通気部を備えることにより、袋本体をその保持片を吸引液体貯留容器と蓋体に挟み込んで装着した状態で通気部が該吸引液体貯留容器内にあることとなり、吸引液体貯留容器内を減圧した際に、袋本体と吸引液体貯留容器との間に残されている空気も減圧されることなり、これが吸引液体貯留容器内の減圧によって膨張することが無いため、容器本体内の容積が減少せず、効率よく使用できる。
【0014】
更に、前記通気部は、袋本体に切れ目を形成することによって表裏貫通孔部とこれを開閉する舌片状部を一体に備えたことにより、常時は舌片上部によって通気部が略閉じられた状態となり、仮に吸引された液体が飛散することがあったとしても、通気部から大量に漏れ出ることが防止される。
【0015】
更に、本発明は、前記袋本体の外周面に、多数の微細凹凸を設けた粗面加工を施しておくことにより、吸引液体貯留容器と袋本体との間には空気が通過できる微細隙間が存在することとなり、減圧時に、吸引液体貯留容器と袋本体との間に残された空気が、この微細隙間を通じて減圧され、該空気が部分的に滞留して膨張することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る吸引器用吸引液体収容袋の一例の全体を示す平面図である。
【図2】同上の縦断面図である。
【図3】図1に示す実施例における密封構造式のファスナーを示す断面図である。
【図4】同上のチャック部の易開放側の開き状態を示す拡大断面図である。
【図5】同上のチャック部の難開放側の開き状態を示す拡大断面図である。
【図6】本発明に係る吸引器用吸引液体収容袋の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明に係るおける吸引器用吸引液体収容袋の実施の形態を、図面に示した実施例に基づいて説明する。
【0018】
図1、図2は、本発明に係る吸引器用吸引液体収容袋の実施例を示しており、図において符号1は袋本体である。この袋本体1は、ポリエチレンなどの柔軟性のある合成樹脂フィルムによって形成されており、円筒状の胴部2の下端が底シート部3によって閉鎖され、上端側が開閉可能な開口部となっている。開口部には、一対の保持片部4,4が延長配置に一体成形されている。
【0019】
開口部の稍下側には、通気部形成用スペースを隔てた位置の内周面に、密封構造式のレールファスナー10が一体に形成されている。
【0020】
通気部形成用スペースには、袋本体1にV字状の切れ目5を形成することによって表裏貫通孔部とこれを開閉する舌片状部6を一体に形成した複数の通気部7が形成されている。尚、この切れ目5はV字状の他、U字状、コ字状、半円形状等の各種形状とし得る。
【0021】
底シート部3は、中央が上側に山折された待ち部を構成している。また、袋本体1の両縁にはシール部8,8が形成されることによって底部に待ち部を構成する底シートで閉鎖された筒状に形成されている。
【0022】
また、袋本体1の外周面は、底シート部3の外面を含め、図には示してないが多数の微細凹凸を設けた粗面となっている。この粗面は、例えばフィルム成形時に片面にシボ加工を施すことによって形成することができる。
【0023】
レールファスナー10は開口部外側からの開き力に対する開き抵抗より該開口部内側からの開き抵抗が大きい構造のものが使用されている。
【0024】
更に具体的には、図1、図2に示すように胴部2の開口部を構成している互いに重ね合せ配置のフィルムの各半周部分を基台部11,12(図3に示す)とし、その両基台部間を開閉するチャック部13が備えられている。
【0025】
チャック部13は、図3に示すように、一方の基台部11の表面に一体に突設された雌封止レール部14内に、他方の基台部12に一体に突設された雄封止レール部15が挿入されることによって封止されるようになっている。
【0026】
雌封止レール部14は、基台部11に突設され、先端部内側面に断面が鈎状の鈎爪部16を有する一対の雌鈎レール部17a,17bを備えている。雄封止レール部15は、他方の基台部12の表面に一体に突設され、先端部外側面に断面が鈎状の鈎爪部18,18を有し雌鈎レール部17a,17b間に挿入される一対の雄鈎レール部19,19を備えている。
【0027】
また、一方の基台部11の両雌鈎レール部17a,17bの中間位置に、他方の基台部12の両雄鈎レール部19,19間に圧入される密封用レール部20が一体に突設され、雄封止レール部15を雌封止レール部14内に挿入することによって両者間の両鈎爪部16と18とが互いに系合されるとともに前記密封用レール部20が前記雄鈎レール部19,19の背面19a,19a間に圧入されるようになっている。
【0028】
密封用レール部20はその先端部分に両面側を膨出させた形状の頭部20aを備え、該頭部20aの両側面が両雄鈎レール部19,19の背面19a,19aを押圧することによって互いに線接触状態となり、気液密性が維持されるようになっている。
【0029】
また、雌封止レール部14の一方の雌鈎レール部17aの根元部の断面形状は、基台部11側に至るに従って厚くしたテーパ状に成型されており、これによって該雌鈎レール部17aが突設されている基台部11に対する曲げ力がこの雌鈎レール部17aに伝わり易く、従って図5に示すように、基台部11を外側に曲げることによって、雌鈎レール部17aが容易に雄鈎レール部19から離れる方向に曲げられて、互いに係合状態にある鈎爪部16と18とを容易に外すことが可能な易開放側係合部を構成している。
【0030】
これに対し、他方の雌鈎レール部17bの根元部は、その外側面が基台部11に至るに従って内側面と同様に一方の雌鈎レール部17a側に湾曲させた形状となっており、該根元部は、その厚さa(図3に示す)が基台部11の厚さbより厚く成型され、断面形状が円弧状に成型された円弧状部21を有している。このため、基台部11に開き方向の曲げ力が作用した場合、図4に示すように、基台部11が雌鈎レール部17bの根元部外側位置で曲がり、前記曲げ力が雌鈎レール部17bに容易には伝わらず、互いに係合状態にある鈎爪部16,18の係合が容易には外れない難開放側係合部を構成している。
【0031】
尚、この実施例では、合成樹脂フィルムの成形時にその長さ方向に向けてレールファスナー10を構成する各レール部を一体に成形し、これを折りたたんでシール部8,8を融着形成するとともにその中央を切断することによってレールファスナー付きの袋本体1を形成しているが、レールファスナーを個別に成形し、これをフィルムに融着させたものであっても良い。
【0032】
更に、前述した実施例では、開口部内側からの開き抵抗が外側からのそれよりも大きい構造のレールファスナーを使用しているが、通常の密閉式レールファスナーを使用しても良い。
【0033】
次に上述した吸引器用吸引液体収容袋の使用例について説明する。
【0034】
図5は、本発明に係る吸引器用吸引液体収容袋Aを装着した吸引器を示しており、図において、30は吸引器を構成する上方開口型の吸引液体貯留容器であり、31は吸引液体貯留容器30の開口部に嵌合されてこれを閉鎖する蓋体である。蓋体31には液体吸引パイプを連結する筒状の連結具32と、減圧器に通じる減圧パイプを連結させる筒状の連結具33とが一体に形成されており、それぞれ蓋体31を貫通した吸い込み孔32a及び吸出し孔33a開口されている。
【0035】
連結具32には先端に液体吸引ノズル34を連結した吸引パイプ35が連結され、連結具33には減圧タンク36に通じる減圧パイプ37が連結されている。減圧タンク36内は減圧ポンプ38によって減圧されるようになっている。
【0036】
この吸引液体貯留容器30内に袋Aを装着する際には、図5に示すように、袋本体開口縁部上の保持片部4,4を吸引液体貯留容器30開口縁部に巻きかけるようにして外側に出し、この状態で蓋体31を嵌め合わせることにより、保持片部4,4を挟み込んで保持させる。
【0037】
この時、袋本体1の胴部及び底部を吸引液体貯留容器30の内面に沿わせて拡げた状態とするとともに通気部7が吸引液体貯留容器30内にあるようにする。
【0038】
このように袋Aを装着して施蓋した状態で、吸引液体貯留容器30内を減圧させ、吸引ノズル34から痰等の液体を吸引させる。吸引された液体は吸引液体貯留容器30内で、自重によって袋Aの底部に溜まり、空気は減圧パイプ37から排出される。
【0039】
この吸引液体貯留容器30内を減圧した際に、通気部7を通して袋Aと吸引液体貯留容器30の内面間にある空気も減圧されるが、袋Aの外周面が粗面となっているため、粗面によって形成される隙間を通じて全域が均等に減圧されこととなり、袋Aは縮むことなく装着時の拡開状態が維持される。
【0040】
このようにして袋A内に溜められた液体を廃棄する際には、蓋体31を外し、両保持片部4,4を重ねて持ち、レールファスナー10が吸引液体貯留容器30の開口部より稍上に至るまで持ち上げ、レールファスナー10を閉じて袋本体1内を密閉する。この状態で袋Aを取り出して廃棄する。これにより、袋内に収容された液体を外部に漏らすことなく廃棄処分することができる。
【0041】
また、ファスナーは袋内部の圧力によっては開き難いものが使用されているため、搬送途中において落下事故があったとしても容易に開くことがない。
【符号の説明】
【0042】
A 吸引器用吸引液体収容袋
1 袋本体
2 胴部
3 底シート部
4 保持片部
5 切れ目
6 舌片状部
7 通気部
8 シール部
10 レールファスナー
11 基台部
11a 縁部背面
12 基台部
12a 縁部背面
12b 縁部背面
13 チャック部
14 雌封止レール部
15 雄封止レール部
16 鈎爪部
17a 雌鈎レール部
17b 雌鈎レール部
18 鈎爪部
19 雄鈎レール部
19a 背面
20 密封用レール部
20a 頭部
21 円弧状部
30 吸引液体貯留容器
31 蓋体
32 連結具
32a 吸い込み孔
33 連結具
33a 吸出し孔
34 液体吸引ノズル
35 吸引パイプ
36 減圧タンク
37 減圧パイプ
38 減圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方開口型の吸引液体貯留容器と、該吸引液体貯留容器の開口部に嵌合されてこれを閉鎖する蓋体と、該蓋体に、液体吸引パイプを連結する連結具と、減圧器に通じる減圧パイプを連結させる連結具とをそれぞれ備えてなる吸引器にあって、前記吸引液体貯留容器内に耐圧着脱自在に装着され、前記液体吸引パイプから吸引した吸引液体を収容する吸引器用吸引液体収容袋において、
可撓性合成樹脂フィルムにより筒状に成形された胴部の下端側が閉鎖され、上端側が開放された袋本体を有し、該袋本体の開口部に、前記吸引液体貯留容器と蓋体との間に挟みこまれる保持片部を一体に有し、該保持片部より下側の前記袋本体内周面に密封構造式のファスナーを備えたことを特徴としてなる吸引器用吸引液体収容袋。
【請求項2】
前記袋本体のファスナーと保持片部との間の部分に袋本体内外を連通させる通気部を備えてなる請求項1に記載の吸引器用吸引液体収容袋。
【請求項3】
前記通気部は、袋本体に切れ目を形成することによって表裏貫通孔部とこれを開閉する舌片状部を一体に備えてなる請求項2に記載の吸引器用吸引液体収容袋。
【請求項4】
前記袋本体の外周面は、多数の微細凹凸を設けた粗面となっている請求項1、2又は3の何れかに記載の有する吸引器用吸引液体収容袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−24616(P2011−24616A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170194(P2009−170194)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(507131159)ハイパック株式会社 (9)
【出願人】(509205629)新鋭工業販売株式会社 (1)
【Fターム(参考)】