説明

吸引型創傷被覆材

創傷部位に接触または対面する創傷界面領域と、創傷滲出液の吸引のための吸引力を受容する吸引ポートと、吸引ポートから創傷界面領域への陰圧の印加を実質的に防ぐために、創傷界面触領域と吸引ポートとの間に配置される液体透過性圧力障壁と、創傷界面領域における圧力を大気と等しくする少なくとも1つの大気通気孔と、吸引ユニットによる吸引力の印加を制御するために創傷被覆材内の液体を感知する液体センサとを備える、吸引型創傷被覆材システムのための創傷被覆材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、創傷滲出液を除去するために吸引を使用する創傷被覆材の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
止血が達成されると、創傷滲出液は、慢性の創傷、瘻孔、または急性の創傷から産生される液体として説明することができる。何世紀にもわたって、滲出液の産生は、特定の種類の創傷に不可避であり、創傷治癒に関して重要ではないとされていた。
【0003】
最近になって、創傷内の大量の液体の蓄積を防ぎ、周囲の健康な組織にわたって液体がまん延することも防ぐ創傷被覆材の開発が大きな関心となっている。これは、過剰な創傷滲出液が、創傷周囲の皮膚の解離を引き起こす可能性があり、このことは、同時に感染につながる可能性がある。当該分野に公知の技法の1つは、創傷部位に陰圧を作り出し、維持するための、創傷被覆材を通した吸引力の印加である。陰圧とは、周囲の大気圧以下の圧力という意味である。このような技法は、局所的陰圧(TNP)として、当該分野で称される。これは、一部の研究者により、創傷床を避けた創傷滲出液の排出を補助し、感染率を低下し、局部血流を増加すると考えられている。
【0004】
創傷部位での陰圧の維持は、幾つかの特定の問題を生じる場合がある。
(i)陰圧は、組織成長を創傷被覆材の内部の気泡片の細孔の中に引き込む可能性がある場合がある。これは、デバイスの使用中、特に、被覆材を取る、または交換するときに、患者に不快感をもたらす可能性がある。被覆材の除去、または交換も、その新しく成長した組織に損傷を生じる場合がある。
(ii)創傷は、創傷滲出液の乾燥に弱い。本状態は、滲出液が正および負の両方の作用を有する生理活性分子の複合混合物を含有すると考えられるので、望ましくない場合がある。過剰な滲出液の除去は望ましいが、全滲出液の除去は、むしろ創傷治癒の補助を妨げる場合がある。創傷被覆材の適切な使用は、創傷部位での創傷滲出液の産生量を決定し、それに従い陰圧を調整する、医療従事者の専門知識に大きく依存する場合がある。頻繁な被覆材の除去が、創傷の状態を決定するのに必要である場合、これは、単に、上記(i)の欠点により生じる不快感を悪化させる。
【0005】
幾つかの潜在的な欠点は、特許文献1に記載されるハイドロファイバの使用によって部分的に緩和される場合がある。
【0006】
本発明は、潜在的な問題を念頭に置いて考案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0100594号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
概して、本発明の一態様は、創傷部位での実質的な陰圧の生成を回避する様式で、創傷滲出液を除去するための吸引力を印加することである。
【0009】
このような技法は、局所的陰圧の潜在的な欠点なしに、滲出液の効果的な除去を可能にする。特に、組織の創傷被覆材自体への成長、および関連する患者の不快感の問題は、回避することができる。
【0010】
一形態において、創傷被覆材は、吸引力が印加される場所と創傷部位に接触する領域との間に、液体透過性圧力障壁を備える。障壁は、例えば、気泡体を備えてもよい。吸引力は、障壁全体に圧力差および/または圧力障壁内に局部圧力勾配を形成し、これにより、創傷部位を実質的な陰圧に曝すことなく、圧力障壁と接触する、またはそれに吸収される液体滲出液の効率的な除去を可能にする。
【0011】
加えて、または代替的に、創傷被覆材は、周囲大気圧で、創傷被覆材の内部空間および/または創傷界面領域を等しくする、および/または安定化するための1つ以上の通気孔通路を備える。通気孔通路は、例えば、空気通気裏地または被覆等の創傷被覆材の空気通気部分に、細孔、細管、または多孔質材を備えてもよい。
【0012】
本発明の別の独立した態様は、吸引型創傷被覆材の空気通気部分用の多孔質材の使用である。多孔質材は、空気に透過性であるが、水分および液体に実質的に不透過性である。これは、(i)被覆材の被覆層が、材料を通して水分の蒸散を可能にする半透過性材料で作製されるか、または(ii)被覆層が、気体および液体の両方に一般に不透過性であるかのいずれかの従来の技法と対照的である。「半透過性」(米国特許第4,969,880号の実施例に使用される)という用語は、材料が、水分透過性であるが、液体に不透過性であることを意味する。水分透過性膜の以前の目的は、正常な皮膚と創傷の両方の解離を防ぐことにより、治癒を促進する方式として、膜を通して滲出液の湿分を蒸発させることであった。
【0013】
逆に、本発明の本態様は、既存技術によって検討されなかった重要で意外な利点を提供してもよい。外部大気圧に対して圧力を等しくする、または安定化させるために、創傷被覆材への空気の進入を可能にし、これは、上に説明するように、創傷を実質的な陰圧に曝すのを回避するために重要である。同時に、外部源の湿分および水分が被覆材に浸入することを防ぎ、これにより、汚染および感染のリスクを低下する。全湿分の除去は、吸引システムを介して生じ、外部の湿分または水分の浸入がなく、これにより、被覆材の湿分レベルを制御可能で、予測可能な態様で管理することを容易にする。
【0014】
本発明の本態様は、液体センサが、創傷被覆材内の液体を感知するために使用されるとき、さらなる相乗効果を有する。センサによる液体の検出に応答して吸引を制御するための液体センサと組み合わせて、水分および液体のそこを通る通路を遮る空気透過性材料の概念は、湿分および滲出液について根本的に新しいアプローチを表し、一方、内部圧力を外部の大気圧と等しくするか、または安定化させるために、空気の被覆材への進入を可能にし、TNPの負の作用を回避することができる。
【0015】
一形態において、水分の透過度が、わずか10mbarにおいて1gm/分であるとき、かつcc/分での空気の透過度が、水分の透過度(gm/分でMVTR)より少なくとも10倍大きい、より好ましくは、少なくとも20倍大きい、より好ましくは、少なくとも50倍大きい、より好ましくは、100倍大きいとき、材料は、空気透過性であり、水分および液体に実質的に不透過性であると考えられる。好ましくは、水分の透過度は、10mbarにおいてわずか0.5gm/分である。より好ましくは、水分の透過度は、10mbarにおいてわずか0.1gm/分である。より好ましくは、水分の透過度は、10mbarにおいてわずか0.01gm/分である。
【0016】
本発明に従う、吸引型創傷被覆材システムのための創傷被覆材の実施形態は、
創傷部位に接触、またはそれに対面する創傷界面領域と、
創傷滲出液の吸引のための吸引力を受容するための吸引ポートと、
吸引ポートから創傷界面領域への陰圧の印加を実質的に防ぐために、創傷界面領域と吸引ポートとの間に配置される液体透過性圧力障壁と、
創傷界面領域において、圧力を大気圧と等しくする少なくとも1つの大気通気孔または多孔質と、
吸引ユニットによる陰圧の適用を制御するために、創傷被覆材内の液体を感知する液体センサとを含む。
【0017】
本発明のこれら、および他の態様は、特許請求の範囲で定義される。特定の特色および概念が、上記および特許請求の範囲で定義されるが、本明細書に開示されるあらゆる新規特色もしくは概念ならびに/または図面について、そこに強調が置かれるかどうかに関わらず、保護が主張される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、創傷被覆材から過剰な滲出液を吸引するための創傷被覆材および吸引ユニットを含む、創傷管理システムの第1の実施形態の概略ブロックダイヤグラムであり、ダイヤグラムは、創傷被覆材構成要素の概略断面図を含む。
【図2】図2は、図1の創傷被覆材の修正版を示す概略断面図である。
【図3】図3は、創傷被覆材の第2の実施形態についての、被覆の真空解放手段を図示する概略ダイヤグラムである。
【図4】図4は、真空解放手段の修正した配置を示す概略ダイヤグラムである。
【図5】図5は、創傷被覆材の第3の実施形態内の流動抵抗および圧下を図示する概略ダイヤグラムである。
【図6】図6は、第5の実施形態における、液体センサからの信号と陰圧の印加への応答との間の関係を示す概略ダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。同じ参照番号は、各実施形態において、同じまたは同等の特色を示すために使用される。
【0020】
(第1の実施形態)
図1を参照すると、創傷管理システム10は、一般に、過剰な滲出液を吸引するために、創傷被覆材14に吸引力を印加するための創傷被覆材14と吸引ユニット12とを備える。滲出液の吸引を伴う創傷被覆材の分野は、かなり独特であり、例えば、尿の除去の分野とは非常に異なる。尿は、通常、液体の急増として排出され、尿除去システムは、刺激および感染を回避するために、皮膚を乾燥させておくよう全ての尿を除去しなければならない。逆に、創傷滲出液は急激に排出されず、創傷滲出液の全てを除去することは望ましくない。滲出液は、正と負の両方の作用を有する生理活性分子の複合混合物を含有する。過剰な滲出液の除去は望ましいが、全ての除去は、むしろ創傷治癒の補助を妨げる場合がある。代わりに、本実施形態は、創傷の滲出液量の管理、および創傷部位から過剰分を除去することを目標とする。また、本実施形態は、局所的陰圧に関連する合併症の可能性を回避するために、創傷部位での陰圧の維持を回避することを目標とする。
【0021】
創傷被覆材14は、好ましくは、接着剤パッド26を用いて、患者の皮膚に装着可能である。創傷部位18において実質的な陰圧がないことは、創傷被覆材14が、実質的な吸引力によって適所に保持されず、接着剤パッド26が、創傷被覆材14の確実な設置を補償することを意味する。図1に図示する形態において、接着剤パッド26は、創傷部位18を超えて延在し、創傷部位18から創傷被覆材14への滲出液の通過を可能にする穿孔または開口部27を有する。図2に図示する形態において、接着剤パッド26は、創傷部位18の周囲を囲む閉鎖ループ形状を有する。接着剤パッド26は、皮膚にやさしい医療等級の接着剤で作製される。適切な接着剤の例としては、親水コロイド、ポリウレタン、アクリル、熱可塑性エラストマー(TPE)、ヒドロゲル、またはシリコーン系のいずれかであり得る感圧性接着剤が挙げられる。創傷部位18と連絡する創傷被覆材14の部分は、本明細書において、創傷界面領域14aと呼ばれる。
【0022】
創傷被覆材14は、一般に、カバー16と、液体処理材24(24a、24b)と、吸引ポート22とを備える。接着剤パッド26も、創傷被覆材14の一体部分を形成するか、または別個の構成要素であってもよい。カバー16は、創傷部位18を超えて延在し、健全な創傷周囲組織を覆う。カバー16は、滲出液を含有し、かつ外部液体の浸入を防ぐために、液体および/または水分に対して不透過性である。カバーは、例えば、可撓性のポリウレタン(PU)気泡体、フィルムでラミネートされたポリウレタン(PU)気泡体、または低デュロメータポリエチレン(PE)気泡体で作製される。
【0023】
液体処理材24は、(i)圧力障壁、(ii)吸収によって液体滲出液を採取し、吸引力下で滲出液をポンプ排出できる材料、(iii)吸引力の下で過剰な滲出液をポンプ排出できる一方で、創傷表面の湿った環境を維持するための材料のいずれか1つ、または2つ以上のあらゆる組み合わせで機能を果たしてもよい。
【0024】
液体処理材24(24a、24b)は、例えば、ゲル化せずに滲出液を収着(吸着または吸収)するための材料であってもよい。このような材料は、不織布および/または気泡体であってもよい。このような不織布は、疎水性もしくは親水性、合成もしくは天然であり得る。液体処理材24(24a、24b)は、液体処理材24(24a、24b)内の液体の吸引場所への移動を可能にするために、液体を全方向に逃がすことが可能であってもよい。液体処理材24(24a、24b)は、代替的に、創傷滲出液で湿潤化されると、粘着性ゲルを形成する材料であるか、またはそれを含んでもよい。このようなゲル化材料は、繊維混合または繊維材料(例えば、不織布)であってもよい。例としては、Versiva(登録商標)被覆材(ConvaTec Inc.,Skillman,NJ)の創傷接触層、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムの繊維マットである。カルボキシメチルセルロースナトリウムの繊維マットは、さらに銀を含有する同様の被覆材として、ConvaTec Inc.からAQUACEL(登録商標)被覆材として入手可能である。液体処理材24の他の代表的な材料としては、Medicel(登録商標)およびCarboxflex(登録商標)(臭気吸収剤から液体を逃がすための繊維材料を用いて臭気吸収剤層を提供する)が挙げられる。
【0025】
さらなる形態において、非ゲル化液体処理材24aおよび(繊維)ゲル化材24bの両方の組み合わせは、例えば、異なる層において使用されてもよい。材料24a、24bは、相互に結合されるか、または創傷被覆材14内の別個の層の構成要素として含有されてもよい。創傷部位18に最も近い層、例えば、ゲル化材24bは、過剰の滲出液が別の層、例えば、非ゲル化材24aによって吸収されるように穿孔されてもよい。このような混合配置において、ゲル化材24bは、主に、上述の性質(iii)を提供し、一方、非ゲル化剤24aは、主に、性質(i)および/または(ii)を提供する。
【0026】
吸引ポート22は、吸引ユニット12からの吸引吸気を送達するために、創傷被覆材14の中に延在する適切なチューブ22a(例えば、シリコーンチューブ)を備える。チューブ22は、カバー16の開口部を通過する等、あらゆる適切な場所で創傷被覆材14に進入することができるが、図示される形態において、チューブ22aは、創傷被覆材14の外周側縁部を通って延在する。チューブ22aは、1つ以上の開口部または穿孔を備えている吸引界面部22bを備えており、開口部または穿孔を通して吸引力が過剰な滲出液を引き出すために創傷被覆材14に印加される。
【0027】
本実施形態の好ましい特色では、創傷界面領域14aが、吸引ポート22に印加される陰圧に実質的に曝されず、したがって、創傷部位18もそのような陰圧に実質的に曝されないように、創傷被覆材14が構成される。本明細書で使用される陰圧は、周囲大気圧に対する圧力差として定義される。陰圧の大きさは、周囲大気圧に対する大きさの差を指す。陰圧が大きいと、大気圧との圧力差が大きいことを意味し、陰圧が小さいと、大気圧に近い圧力を意味する。従来のTNPデバイスは、連続的に、または断続的に、75mmHgから125mmHgまでの間の陰圧を維持する。大気圧は、760mmHg(すなわち、101Kパスカル、または1,013mbar)に等しい。創傷被覆材14は、使用中、創傷界面領域14aにおける任意の陰圧が、吸引ポート22において印加される陰圧のわずか約10%(好ましくはそれ未満)(75mmHg)、好ましくは、わずか約5%(38mmHg)、より好ましくは、わずか約4%(30mmHg)、より好ましくは、わずか約3%(23mmHg)、より好ましくは、わずか約2%(15mmHg)、より好ましくは、わずか約1%(7.6mmHg)であるように構成される。
【0028】
実質的な陰圧への創傷部位18(創傷界面領域14a)の曝露の回避は、従来の問題の多くを回避することができる。特に、創傷被覆材構成要素に引き込まれる新しい組織成長に関連する問題、ならびに創傷被覆材14の除去、または交換時の痛みおよび組織損傷の可能性を回避することができる。組織滲出液の乾燥も回避することができる。
【0029】
本実施形態は、
(i)創傷被覆材14内に圧力障壁を提供すること、および/または
(ii)創傷界面領域14aにおける圧力を等しくするために、1つ以上の大気通気孔または多孔質材を提供すること
のうちの1つ、または両方により、創傷界面領域14aにおける陰圧を回避する。
【0030】
上述のように、圧力障壁は、液体処理材24の少なくとも一部により実装されてもよい。ポートチューブ22aの吸引界面部22bは、液体処理材24の少なくとも一部、例えば、非ゲル化材24aにより創傷界面領域14aから分離される。圧力障壁の特徴は、例えば、液体処理材の適切に小さい細孔によって提供される。図1に図示される形態において、吸引界面部22bは、滲出液取扱層24内、例えば、非ゲル化層24aに配置される。図2に図示される形態において、吸引界面部22bは、滲出液取扱材24の後ろに配置され、吸引界面部22bが、液体処理材24を介してのみ創傷被覆材14の内部と連絡するように、不透過性膜22cにより密封される。
【0031】
加えて、または代替的に、大気通気孔28は、創傷界面領域14aにおける圧力を等しくするために提供される。大気通気孔28は、カバー16の細管または細孔であってもよい。大気通気孔28は、空気通気性膜、空気通気性不織布、空気通気性気泡等の多孔質材からも作製することができる。これらの多孔質材のうち、空気通気性膜および空気通気性不織布は、空気を通過させるが、液体および水分が流入するのを防ぐ(例えば、疎水性処理を使用して)それらの能力のため、好まれる。空気通気性膜は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)から選択されるポリマーから作製することができる。これらのポリマーは、空気を流入させるように多孔質構造を作製するように、焼結または伸長することができる。膜および不織布等の多孔質材は、任意に、液体(すなわち、滲出液)、および水分に対する耐性を付与する、または増加するように疎水性処理することができるが、材料は、空気への透過性を保つ。これらの多孔質材は、低収縮の剛性部、半剛性部、または可撓性膜等の、種々の形態に作製することもできる。大気通気孔および多孔質材の空気流量は、10mbarにおいて少なくとも5cc/分、好ましくは、10mbarにおいて50少なくともcc/分、より好ましくは、10mbarにおいて少なくとも100cc/分である。被覆は、創傷被覆材14の中への液体の浸入を防ぐ、および滲出液の通路を停止するために、水分または液体に不透過性である。大気通気孔28は、創傷被覆材14の内部、特に、創傷界面領域14aと連絡する。
【0032】
使用中、創傷滲出液は、液体処理材24によって吸収(吸着および/または吸収)される。ポート22を介した吸引力の印加時において、液体処理材24の少なくとも一部の局部的な圧力勾配は、滲出液がポート22を介して吸引される吸引界面部22bに過剰な滲出液を引き込むか、または逃がす。創傷界面領域14aでの圧力は、液体処理材24の圧力障壁特徴、または大気通気孔もしくは多孔質材28、または上記の組み合わせによって、実質的な大気圧の状態を保つ。創傷界面領域14aでの実質的な陰圧の不在において、液体処理材24は、創傷表面から滲出液を採取し、滲出液を吸引界面部22bに輸送する重要な機能を果たす。
【0033】
液体センサ30は、創傷被覆材14内の滲出液を感知し、吸引ユニット12を制御するためのセンサ信号32を生成するために提供される。液体センサ30は、液体の近接度および/または量に応答してもよい。液体センサ30は、創傷被覆材14から分離していても、分離可能であってもよく、これは、新しいセンサ30を使用する必要なく、創傷被覆材14の交換を可能にする。このような場合において、センサ30を創傷被覆材14に解放可能に取り付けるための手段が、好ましくは、提供される。代替的に、液体センサ30は、創傷被覆材14に永久に取り付けられ、統合ユニットを形成してもよい。永久的取付けでは、液体センサ30は、創傷被覆材14と共に処分されることを意図する。
【0034】
加えて、または代替的に、センサ30は、創傷部位18(創傷折衝領域14a)の実質的な陰圧への曝露を回避するために、所定の設定値に応答する圧力感知ユニットであり得る。
【0035】
センサ信号32は、典型的に、電気信号または電子信号である。しかしながら、他の信号形態、例えば、光信号が、所望に応じて使用されてもよい。
【0036】
センサ30は、感知したパラメータに従い変動する出力信号32を生成してもよい。例えば、出力信号32は、可変アナログ信号(例えば、可変電流または電圧)であるか、または出力信号32は、デジタル信号(例えば、量子化した表示または可変パルス表示)であってもよい。代替的に、センサ信号32は、感知したパラメータが1つ以上の閾値を超えるか、またはそれ以下であるかを示す、論理(例えば、バイナリまたはオン/オフ)であってもよい。
【0037】
液体センサ30は、好ましくは、液体と接触することなく、液体の存在または近接度を検出することができる、非接触センサである。非接触センサである液体センサ30の特色は、(i)非接触アプローチは、皮膚20および創傷部位18と接触する液体への電流の通過についてのあらゆる懸念を自動的に回避するため、重要な利点を提供する。代わりに、液体センサ30と液体との間に直接的な接触がない場合、(ii)非接触アプローチは、液体センサ30が、液体滲出液に触れることにより汚染されないことを意味する。これは、液体センサ30が異なる創傷被覆材14で再使用されることを容易にし、(iii)非接触アプローチは、液体センサ30自体が、使用前に無菌状態である必要がなく、したがって、身体と密接に接触しない創傷管理システム10を殺菌するときの困難、またはそのときの損傷のリスクを回避することを意味する。電気コネクタによって吸引ユニット12に結合される液体センサ30の特色は、光ファイバ接続の使用に関連する費用および易損性を回避する。
【0038】
本発明の任意の特色は、液体センサ30が、創傷被覆材14から分離しているか、またはそれから少なくとも分離可能であることである。創傷被覆材14は、安価に製造され、1回の使用後、または限られた数の使用後、処分されてもよい使い捨て商品であってもよい。液体センサ30は、より高価であってもよいが、複数回、好ましくは、創傷治療中使用される一連の異なる創傷被覆材14で使用されるように意図されてもよい。使い捨て構成要素は、一般に安価であるため、これは、創傷管理システム10が非常に費用効率良く産生され、使用されることを可能にする。より高価な構成要素は、複数回使用されてもよく、頻繁な交換を必要とする場合がある。一形態において、液体センサ30は、複数の異なる種類の創傷14のいずれかと使用されてもよい汎用デバイスである。
【0039】
代替的に、非接触センサ30は、創傷被覆材14に永久に取り付けられ、再使用可能な商品でなくてもよい。
【0040】
液体センサ30は、種々の異なる形態を取ることできる。液体センサ30は、任意に、容量センサ、超音波センサ、および圧電気(または圧電共鳴)センサから選択される。容量センサは、空気近接と比較して、液体近接の誘電作用の変化により液体の近接を検出する。誘電作用は、センサの周りの活性区域、したがって、センサの有効容量の電場に影響を及ぼす。容量は、振動周波数および/または振動が生じるかは、センサの有効容量と組み合わせた抵抗器の値に依存するRC発振器等の、あらゆる適切な容量感知回路(図示せず)により監視される。振動は、同時に、液体の存在を示す出力信号を生成するために、出力増幅器に結合される、出力段階を始動させる。容量感知回路は、好ましくは、液体センサ30の近く、またはそこに配置されるか(例えば、液体センサ30自体の一部として)、または容量感知回路は、吸引ユニット12に、または電気コネクタに沿った場所に配置することができる。適切な容量センサおよび容量検知回路は、米国特許第5,576,619号に記載されており、その内容は、参照により本明細書に援用される。
【0041】
液体を検出する能力は、SIE Sensorsからの容量「スマート」センサを使用して検査された。寸法35mm(長さ)×22mm(幅)×10mm(高さ)のセンサ30を創傷被覆材14の外壁に固定した。センサ30は、液体が導入されるとすぐに、水と生理食塩溶液の2つの検査液の存在を検出し、数ミリ秒内に吸引ユニット12に作動信号を提供した。センサ30からの電場は、高感度で、透明および不透明の広範なプラスチック構成要素(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびアクリル)を貫通することができる。
【0042】
超音波センサは、超音波周波数範囲で、ソナーの原理を使用して作動する。変換器は、電気エネルギーを超音波周波数範囲音響エネルギーに変換するために、設定周波数で共鳴する。超音波音響波は、液体採取領域に向かって放射される。エネルギーは、領域に液体がなければ壁から、領域に存在すれば液体からの、いずれかから反射する。反射した波が到着する時間遅延を測定することにより、かつこれを液体採取領域が空のときに取得した1つ以上の前較正した時間遅延と比較することにより、液体の存在を、確実に、かつ迅速に検出することができる。超音波液体センサの例は、米国特許第3,960,007号に記載されており、その内容は、参照により本明細書に援用される。商業的に入手可能な超音波センサは、ZEVEX Incから入手可能である。
【0043】
圧電気または圧電共鳴センサも、上述の超音波センサと同様の方式で、高周波数、例えば、超音波エネルギーまたは音響信号を使用する。超音波または音響信号は、透明または不透明のプラスチック壁のいずれかを貫通することができる。圧電気センサの例は、米国特許第3,948,098号に記載されており、その内容は、参照により本明細書に援用される。
【0044】
液体を検出する能力は、GEMS Sensorsから入手した圧電共鳴センサで検査された。寸法40mmのセンサ30は、創傷被覆材14の外壁に取り付けられ、液体が導入されるとすぐに、液体の存在を検出した。
【0045】
図1および2に図示する配置で、液体センサ30は、創傷被覆材14の外側、または創傷被覆材14の液体採取領域の少なくとも外側に配置される。カバー16は、典型的に、容量センサの場合、感知電場が通過できる、または超音波および/もしくは圧電気センサの場合、超音波振動が通過できる材料で作製される。カバー16は、創傷被覆材14内の液体に対して所望の感度でセンサ30を提供するように、適切に薄く作製される。代替的に、カバー16は、カバー16全体がこのような材料で作製されない場合、電場または超音波振動が容易に通過できる材料で作製される窓部を含んでもよい。代替えの実施形態において、創傷被覆材14の格納は、容量、超音波、または圧電気非接触液体センサ30を受容し、保持するための膜を伴うか、または伴わないポケットに成形することができる。このような設計は、センサ30と創傷被覆材14の液体採取領域との間の界面積も増加する。
【0046】
代替の実施形態において、センサ30は、電子光学センサである。カバー16は、電子光学センサによって使用される光放射線に透過的である材料で作製される窓領域(図示せず)を備える。例えば、光放射線は、赤外線域、および/または可視域、および/または紫外域であってもよい。本明細書で使用される「光学」という用語は、放射線が、実質的に光学の法則に従う周波数域に位置することを意味する。電子光学センサは、電子光学放射体と、電子光学受信機と、電子光学受信機の電気出力による液体の存在を検出するための感知回路とを備える。感知回路は、好ましくは、液体センサ30(例えば、液体センサ30の一部として)に配置されるか、または感知回路は、吸引ユニット12、もしくは電気コネクタ35に沿った場所に配置される。代表的な電子光学液体センサは、米国特許第4,354,180号に記載されており、その内容は、参照により本明細書に援用される。
【0047】
好適な場合、液体センサ30は、センサ30が、液体を検出するための直接的な接触に依存していない場合でも、創傷被覆材14の内部の滲出液と接触する位置(図示せず)に配置されてもよい。このような可能性は、非接触センサ30の代わりに、接触型センサ30の使用も可能にする。接触型センサ30の例は、液体と接触する電極間のコンダクタンスによって液体を検出する電気抵抗センサである。
【0048】
液体センサ30が創傷被覆材14から分離しているか、または少なくとも分離可能である場合において、液体センサ30は、液体センサ30を創傷被覆材14に解放可能に取り付けるための着脱可能な取付けデバイス(図示せず)によって、創傷被覆材14に対して操作可能な位置に保持されてもよい。例えば、着脱可能な取付けデバイスは、剥離可能な接着剤、またはVelcro(登録商標)等の剥離可能な機械式締結具、または干渉嵌合に基づく機械式結合、もしくは機械式手段を備えることができる。
【0049】
可撓性の電気コネクタまたは導管35は、創傷被覆材14を吸引ユニット12に結合する。解放可能なコネクタまたは解放が容易なカップリングは、可撓性の電気コネクタ35の一端、または両端に提供されてもよい。可撓性の電気コネクタ35は、吸引ユニット12の一部として、および/または創傷被覆材14の一部として扱われてもよい。可撓性の導管35は、吸引ユニット12内の吸気源40にポート22を連結する。吸引ユニット12は、電源38と、電子制御ユニット44と、吸気源40とを備える。電源38は、交換可能な電池、充電式電池、放射線収集パネル、および主電源のうちの1つ以上として選択される。好ましくは、電源38は、充電式電池と主電源との組み合わせを含み、このような組み合わせは、創傷管理システム10が、主電源に接続されていないときの携帯型操作、ならびに創傷管理システム10が主電源に結合されているときの電池の自動充電を可能にする。加えて、または代替的に、電源38は、周囲照明から電気を生成するための光起電性パネルまたはセル等の放射線収集パネルを含み、これは、操作の自律、または充電式電池の充電を向上することができる。電源38は、電子制御ユニット44、液体センサ(必要な場合)30、および吸気源40により必要とされるあらゆる電力のうちのいずれか1つ以上に電力を提供してもよい。本実施形態において、吸気源40は、電子制御ユニット44の制御下で操作される電気ポンプである。ポンプ40は、ダイヤフラム式、蠕動、容量移動、スプリング、重力、サイホン式、熱回収金属駆動式、または、列形のポンプに基づく吸気デバイスであり得る。可撓性導管35は、創傷被覆材14から除去された滲出液を採取するために、ポンプ40を通って液体採取チャンバ42に結合される。液体採取チャンバ42は、吸引ユニット12から分離され(図示するように)、適切なコネクタでそこに結合されるか、または液体採取チャンバ42は、吸引ユニット12に統合され、かつ/または格納される(配置は示さず)かのいずれかであり得る。代替えの形態において、ポンプ40が吸気を可撓性導管35に直接適用する代わりに、吸気源40は、低圧真空で充填された真空チャンバと、真空チャンバから可撓性導管35への吸気の適用を制御するための電子的に制御した弁とを備えてもよい。ポンプは、真空によって真空チャンバを充填するために提供されてもよい。
【0050】
本実施形態において、吸引吸気の適用が、センサ信号32に応答して制御されることが好ましい。センサ30が創傷被覆材14内に十分な液体滲出液の存在を検出しない限り、これは、創傷被覆材14を陰圧に曝すことをさらに回避する。したがって、創傷被覆材14が、創傷部位18を吸引ポート22からの実質的な陰圧に曝さないように構成されるだけでなく、任意に、吸引ポート自体22での陰圧の印加も低減でき、吸引力は、液体センサ30からのセンサ信号32に応答して、必要と判断されたときにのみ印加される。
【0051】
図1および2に示される創傷被覆材14は2つの観点において異なるが(すなわち、吸引界面部22bの位置、および接着剤パッド26の構成)、これらの構成は、所望のように混合されてもよいことを理解されたい。
【0052】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、上述と同じ構造を有するが、大気通気孔28の性質をさらに改良する。図3および4は、裏地またはカバー16等の通気孔28を有する材料のみを図示し、創傷被覆材14の他の要素は、他の実施形態のいずれかと同じである。前述の通気孔に加えて、または代替的に、大気通気孔28は、創傷被覆材14の内部の陰圧量が設定値より高いときに、創傷被覆材14の内部空間を平均化、および安定化させるために、創傷被覆材14の中に空気が流入することを可能にする1つ以上の真空解放手段28a(すなわち、圧力解放手段)を備える。真空解放手段28aは、例えば、チェック弁、ダックビル弁、傘状弁、電磁弁、ミニ弁ボール、またはこれらの組み合わせを備えてもよい。図3において、真空解放手段28aは、前の多孔質通気孔配置28を交換する。図4において、真空解放手段28aは、内部陰圧が事前に選択された極限を超えると平行の通気孔路を介して追加の圧力解放を提供するために、前述の多孔質通気孔配置28に加えて使用される。加えて、または代替的に、点線で図示されるように、真空解放手段28aは、大気通気孔28と共に使用され、カバー16および/もしくは通気孔28の内側、または好ましい場合、外側に装着される。
【0053】
従来のTNPデバイスは、連続的に、または断続的に、75mmHgから125mmHgの間の陰圧を維持する。大気圧は、760mmHg(すなわち、101Kパスカル、または1,013mbar)に等しい。創傷被覆材14は、使用中、創傷界面領域14aでのあらゆる陰圧が、吸引ポート22で印加される陰圧のわずか約10%(75mmHgまたは100mbar)、好ましくは、わずか約5%(38mmHgまたは50mbar)、より好ましくは、わずか約4%(30mmHgまたは40mbar)、より好ましくは、約3%(23mmHgまたは30mbar)、より好ましくは、わずか約2%(15mmHgまたは20mbar)、より好ましくは、わずか約1%(7.6mmHgまたは10mbar)であるように構成される。
【0054】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、前実施形態のいずれかに記載するものと同じ構造を有するが、圧力障壁および大気通気孔28の特性をさらに改良する。空気流動抵抗は、流速によって分割される試料を横断する圧力の低下として定義される。高い空気流動抵抗の材料は、同じ空気流速を達成するために、高圧の勾配を必要とする。図5を参照すると、圧力障壁は、液体処理材24の非ゲル化材24aによって提供され、これは、気体流が制限される材料の小さい細孔によって、そこを通る気体流に対して第1の抵抗R1を有する。第1の抵抗R1は、吸引界面部22bと創傷界面領域14aとの間で測定される。大気通気孔28は、カバー16の通気性の細孔または多孔質によって提供され、これは、それらの開口部の大きさ、多孔質の構造、または設計によって、そこを通る気体流に対して第2の抵抗R2を有する。第2の抵抗R2は、カバー16の一つの面から他の面までで測定される。第3の実施形態の特色は、第1の抵抗R1が、第2の抵抗R2よりも実質的に大きいことである。好ましくは、第1の抵抗R1は、第2の抵抗R2より少なくとも10倍大きいか、より好ましくは、少なくとも100倍大きいか、より好ましくは、少なくとも500倍大きい。
【0055】
図5に示されるように、第1および第2の流動抵抗R1およびR2は、吸引界面部22bから第1の流動抵抗R1(液体処理材24aの)を通って創傷界面領域14aまで、および第2の流動抵抗R2(カバー16の)を通って創傷被覆材14の外の周囲大気圧までの一連の流路を定義してもよい。陰圧(−P)は、吸引界面部22bにおいて印加される。創傷界面領域14aでの圧力は、2つの隣接する圧力、つまり、液体処理材24aの流動抵抗R1によって分離される陰圧−P、および大気通気孔または多孔質材28の流動抵抗R2によって分離される周囲の外圧に影響される。創傷部位18からの流れがないと仮定すると、それぞれの陰圧低下は、それぞれ、これらの流動抵抗(R1)/(R1+R2)および(R2)/(R1+R2)の比率に相対比例して、流動抵抗R1およびR2のそれぞれにわたり生じる。創傷界面領域14aが受ける圧力は、(−P)(R2)/(R1+R2)である。しかしながら、第2の抵抗R2(カバー16の)は、第1の抵抗R1(液体処理材24aの)より非常に小さいため、これは、創傷界面領域14aでの圧力が、大気に非常に近いことを確実なものとする。陰圧の大部分は、液体処理材24aの第1の流動抵抗R1にわたって低下し、圧力障壁としての作用を立証する。第2の流動抵抗R2(カバー16の)にわたって低下する圧力差は事実上なく、カバー16は、大気通気孔28として作用し、創傷界面領域14aでの圧力は、大気に近いことを立証する。
【0056】
液体処理材24aが液体滲出液を含有するとき、流れに対する第1の抵抗R1は、空気流に使用できる開口面積が小さいことによりさらに増加し、吸引力の損失は、吸引界面部22bに向かって滲出液を移動する動作により生じることを理解されたい。
【0057】
典型的な大気通気孔28または多孔質材の空気流速の典型的な値は、10mbarにおいて少なくとも5cc/分、好ましくは、10mbarにおいて少なくとも50cc/分、より好ましくは、10mbarにおいて少なくとも100cc/分である。したがって、第2の空気流動抵抗R2は、2mbar分/cc未満、好ましくは、1mbar分/cc未満、より好ましくは、0.1mbar分/cc未満である。第1の空気流動抵抗R1は、第2の抵抗R2より少なくとも10倍大きい、より好ましくは、少なくとも100倍大きい、より好ましくは、少なくとも500倍大きい。したがって、圧力障壁全体の第1の空気流動抵抗R1は、20mbar分/cc未満、好ましくは、200mbarmin分/cc未満、より好ましくは、1,000mbar分/cc未満である。
【0058】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第1、第2、および/または第3の実施形態と同じ構造を有するが、液体捕捉圧力障壁の性質をさらに包含する。このような障壁は、液体滲出液で湿潤すると、空気流に対する障壁として作用する液体の表面張力によって閉鎖される小さい細孔を包含する。細孔の大きさは、約5から約30ミクロン程度、より好ましくは、約15から約20ミクロン程度であってもよい。障壁が湿潤すると、空気を通過させることなく、典型的には5インチから60インチの水の陰圧差を保持し得る。細孔の大きさにより、空気が障壁を通過せずに印加され得る吸引力の圧力は変動する。このような液体捕捉圧力障壁は、液体に対して透過性であるが、空気流に対して不透過性である。したがって、陰圧が圧力障壁の一側面に印加され、障壁が湿潤した場合、液体滲出液が障壁と接触するたびに、創傷界面領域14aに著しい陰圧を印加することなく、障壁を通して陰圧によって引き込まれる。このような液体捕捉圧力障壁の使用は、著しい陰圧の印加を伴わずに、創傷被覆材14全体の滲出液の効率的な除去を可能にする。加えて、または代替的に、微孔質の空孔、細管空孔、多孔質材、または真空解放弁から選択される大気通気孔28は、液体処理材24での圧力を維持するために使用することができ、したがって、著しい陰圧を生成することなく、創傷被覆材14から滲出液を効果的に除去する。
【0059】
液体捕捉圧力障壁は、非ゲル化材24a等の、液体処理層材24の一部によって提供されてもよい。代替的に、液体捕捉圧力障壁は、吸引界面部22bと創傷界面領域14aとの間の適切な位置、例えば、ゲル化材24bと非ゲル化材24aとの間に挟まれた追加の膜によって実装されてもよい。ゲル化材24bは、一般に、膜が乾燥することを防ぐために、湿潤環境を維持することができる。
【0060】
液体捕捉圧力障壁が湿潤し、かつ陰圧が障壁の気泡閾値(液体捕捉の作用が破壊される)を超えない限り、吸引ポート22で印加される陰圧から創傷界面領域14aを分離する圧力障壁を実装し得る。液体捕捉圧力障壁は、事前に湿潤されるか(製造中または介護者によって調製されるかのいずれか)、または創傷被覆材14の使用中に自然に湿潤してもよい。液体センサ30の存在は、さらに、創傷被覆材14内の「湿潤」の監視を可能にし得、障壁を湿潤することに十分な量の液体が創傷被覆材14内で検出されたときにのみ、陰圧が吸引ユニット12から印加されることを確実にし得る。
【0061】
液体捕捉圧力障壁の特徴のさらなる詳細は、米国特許第5,678,564号に見出され、その内容は、参照により本明細書に援用される。
【0062】
(第5の実施形)
第1の実施形態(および任意に、第2、第3、ならびに第4の実施形態)において、吸引ユニット12によって印加される陰圧は、一般に、製造者、またはユーザ調節可能圧力制御器のいずれかによって事前決定される。液体センサ30からのセンサ信号32は、創傷被覆材14への陰圧の印加をオンおよび/またはオフにするタイミングを制御するために使用される。
【0063】
第5の実施形態は、一般に、電子制御ユニット44が、追加として、センサ信号32に応答して、吸引ユニット12での陰圧の大きさを調節するように構成されることを除き、前の実施形態のいずれかと同じ構造を有する。陰圧の大きさは、吸引ポンプ40の速度を制御することによって、または絞り弁の開口部を制御することによって調節されてもよい。絞り弁は、調整可能な量に開くアナログ式であるか、または有効開口がマーク:スペース比、および/または開閉状態間で弁を交番させるデジタルパルス制御の変調によって制御されるデジタルパルス式であってもよい。
【0064】
図6を参照すると、陰圧(−P)の大きさは、センサ信号32に従って、約ゼロ(すなわち大気圧に相当する)から事前決定された最大値(−Pmax)まで調節されてもよい。所望する場合、他の対応関係またはマッピングが使用されてもよいが、対応関係は、選択的に、ほぼ線形であってもよく、陰圧の大きさは、事前決定された最大値(−Pmax)において平坦になる。
【0065】
液体センサ30からのセンサ信号32に応答して陰圧(−P)の大きさを調節する能力は、過剰な滲出液を除去するために必要とされる吸引ポート22での陰圧以上の印加をさらに回避する。創傷被覆材14の設計によって、長期間であっても、吸引ポート22において適度の陰圧を保持、およびこのような適度な陰圧から創傷界面領域14aを分離することができる創傷被覆材14内の圧力障壁を維持することは、短期間、比較的高い陰圧を支持および分離することよりも容易である場合がある。
【0066】
本明細書に説明される創傷被覆材14および/または創傷管理システム10は、従来の技術と比較して、重要な利点の可能性を提供し、特に、創傷部位18を実質的な陰圧に曝すことなく、創傷滲出液の効率的な吸引に関する従来の技術の欠点の多くに、対処または軽減することができることを理解されたい。創傷部位18においてこのような陰圧を回避することは、創傷被覆材14の構成要素の中への組織成長、ならびに創傷被覆材14の除去または交換時に関連する不快感および損傷の可能性を回避することができる。本発明は、創傷部位18の滲出液の乾燥を回避しながら、過剰な滲出液の効果的な除去も提供することができる。
【0067】
多くの修正、改善、および等価物が、主張される本発明の範囲内であり得ることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引型創傷被覆材システムのための創傷被覆材であって、該創傷被覆材は、
創傷部位に接触または対面する創傷界面領域と、
創傷滲出液の吸引のための吸引力を受容する吸引ポートと、
該吸引ポートから該創傷界面領域への陰圧の印加を実質的に防ぐために、該創傷界面領域と該吸引ポートとの間に配置される液体透過性圧力障壁と、
該創傷被覆材内の創傷滲出液を感知し、該吸引ポートを通した吸引力の印加を制御する液体センサと
を備える、創傷被覆材。
【請求項2】
前記創傷被覆材内に配置される液体処理材をさらに備え、該液体処理材は、創傷滲出液を吸収し、材料内の該滲出液の前記吸引ポートに向かう輸送を可能にする、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項3】
前記液体処理材は、非ゲル化材および液体ゲル化材から選択される1つ以上を備える、請求項2に記載の創傷被覆材。
【請求項4】
前記液体処理材は、前記創傷界面領域に隣接して配置されるゲル化材の層と、前記吸引ポートに隣接して配置される非ゲル化材の層とを備える、請求項3に記載の創傷被覆材。
【請求項5】
前記圧力障壁は、前記液体処理材の少なくとも一部を備える、請求項2に記載の創傷被覆材。
【請求項6】
前記創傷界面領域における圧力を周囲大気と等しくするために、該創傷界面領域と連絡する少なくとも1つの大気通気孔をさらに備える、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項7】
被覆層をさらに備える、請求項6に記載の創傷被覆材。
【請求項8】
細孔は、液体の通過を実質的に可能にすることなく空気の通過を可能にするように寸法決定され、構成される、請求項7に記載の創傷被覆材。
【請求項9】
前記大気通気孔は、空気通気性膜または空気通気性不織布から選択される多孔質材に基づいている、請求項6に記載の創傷被覆材。
【請求項10】
前記空気通気性膜は、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレンのうちの1つ以上から選択されるポリマーから作製される、請求項9に記載の創傷被覆材。
【請求項11】
前記創傷被覆材から周囲大気への空気流速は、10mbarの圧力勾配において少なくとも5cc/分である、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項12】
前記大気通気孔の前記空気流速は、10mbarの圧力勾配において少なくとも5cc/分である、請求項9に記載の創傷被覆材。
【請求項13】
前記多孔質材は、疎水性処理されている、請求項9に記載の創傷被覆材。
【請求項14】
前記陰圧が事前選択された値を超えることを防ぐために、前記創傷被覆材に真空解放手段をさらに備えている、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項15】
前記陰圧は、75mmHgしかない、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項16】
前記圧力障壁は、第1の空気流動抵抗を有し、前記大気通気孔は、該第1の空気流動抵抗よりも実質的に小さい第2の空気流動抵抗を有し、それにより、陰圧が実質的に該圧力障壁にわたって減少する、請求項6に記載の創傷被覆材。
【請求項17】
前記圧力障壁は、液体捕捉圧力障壁を備える、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項18】
前記液体捕捉圧力障壁は、液体に対して透過性であるが、空気に対して不透過性である、請求項17に記載の創傷被覆材。
【請求項19】
前記創傷被覆材を創傷周囲の皮膚に貼付する皮膚接着剤をさらに備える、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項20】
感知のための前記液体センサは、創傷滲出液と直接接触する、請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項21】
前記液体センサは、感知される液体と直接接触することなく、液体を感知する非接触液体センサである、請求項20に記載の創傷被覆材。
【請求項22】
創傷吸引管理システムであって、
創傷滲出液の吸引のための吸引力を生成する吸引ユニットと、
創傷被覆材であって、
創傷部位に接触または対面する創傷界面領域と、
該吸引ユニットに結合して、そこから吸引力を受容する吸引ポートと、
該吸引ポートから該創傷界面領域への陰圧の印加を実質的に防ぐために、該創傷界面領域と前記吸引ポートとの間に配置される液体透過性圧力障壁と、
該創傷被覆材内の創傷滲出液を感知、および該吸引ポートを通した該吸引力の印加を制御する液体センサと
を含む、創傷被覆材と
を備える、創傷吸引管理システム。
【請求項23】
前記創傷被覆材は、該創傷被覆材内に配置される液体処理材をさらに備え、該液体処理剤は、創傷滲出液を吸収し、材料内の該滲出液の前記吸引ポートに向かう輸送を可能にする、請求項22に記載の創傷管理システム。
【請求項24】
前記圧力障壁は、前記液体処理材の少なくとも一部を備える、請求項23に記載の創傷管理システム。
【請求項25】
前記創傷被覆材は、前記創傷界面領域と連絡する少なくとも1つの大気通気孔をさらに備え、該大気通気孔は、該創傷界面領域における圧力を周囲大気と等しくする、請求項22に記載の創傷管理システム。
【請求項26】
前記大気通気孔は、空気通気性膜または空気通気性不織布から選択される、多孔質材に基づいている、請求項22に記載の創傷管理システム。
【請求項27】
前記空気通気性膜は、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)から選択される、ポリマーから作製される、請求項22に記載の創傷管理システム。
【請求項28】
前記創傷被覆材から周囲大気への空気流速は、10mbarの圧力勾配において、少なくとも5cc/分である、請求項22に記載の創傷管理システム。
【請求項29】
前記創傷被覆材の前記大気通気孔は、多孔質膜である、請求項22に記載の創傷管理システム。
【請求項30】
前記陰圧が事前選択された値を超えることを防ぐために、前記創傷被覆材に真空解放手段をさらに備える、請求項22に記載の創傷管理システム。
【請求項31】
前記陰圧は、75mmHgしかない、請求項22に記載の創傷管理システム。
【請求項32】
被覆層をさらに備え、前記空気大気通気孔は、前記被覆層に細孔を備える、請求項22に記載の創傷被覆材。
【請求項33】
前記創傷被覆材に配置される液体センサをさらに備え、該液体センサは、該創傷被覆材によって感知された滲出液に応答してセンサ信号を生成し、前記吸引ユニットは、該センサ信号に応答して、該創傷被覆材への吸引力の印加を制御するように構成される、請求項22に記載の創傷管理システム。
【請求項34】
前記吸引ユニットは、前記センサ信号に応答して、吸引力の印加のタイミングを制御するように構成される、請求項33に記載の創傷管理システム。
【請求項35】
前記吸引ユニットは、前記センサ信号に応答して、前記陰圧の大きさを制御するように構成される、請求項33に記載の創傷管理システム。
【請求項36】
創傷滲出液を創傷部位から除去する方法であって、該方法は、
創傷被覆材を提供することと、
該創傷被覆材を吸引ユニットに結合して、吸引力を印加することと、
実質的な陰圧に該創傷部位を曝すことなく、該創傷被覆材から創傷滲出液を除去するために、該創傷被覆材に吸引力を印加するように該吸引ユニットを操作することと、
該創傷被覆材の創傷滲出液を感知し、吸引力を産生するように該吸引ユニットを操作するために、液体感知ユニットを利用することと
を含む、方法。
【請求項37】
吸引型創傷管理システムのための創傷被覆材であって、該創傷被覆材は、
創傷部位に接触または対面する創傷界面領域と、
創傷滲出液の吸引のための吸引力を受容する吸引ポートと、
該創傷被覆材の内部と連絡する大気通気孔であって、該大気通気孔は、空気に対して透過性であり、水分および液体に対して実質的に不透過性である多孔質材を備える、大気通気孔と、
該創傷被覆材内の創傷滲出液を感知し、該吸引ポートを通した吸引力の印加を制御する液体センサと
を備える、創傷被覆材。
【請求項38】
前記多孔質材は、空気通気性膜または空気通気性不織布から選択される、請求項37に記載の創傷被覆材。
【請求項39】
前記空気通気性膜は、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)のうちの1つ以上から選択される、ポリマーから作製される、請求項38に記載の創傷被覆材。
【請求項40】
前記大気通気孔の前記空気流速は、10mbarの圧力勾配において少なくとも5cc/分である、請求項37に記載の創傷被覆材。
【請求項41】
前記多孔質材は、疎水性処理されている、請求項37に記載の創傷被覆材。
【請求項42】
前記大気通気孔は,空気を入れることにより、前記創傷界面領域において、前記吸引ポートへの吸引の印加に起因する陰圧を軽減するように構成される、請求項37に記載の創傷被覆材。
【請求項43】
吸引型創傷管理システムのための創傷被覆材であって、該創傷被覆材は、
創傷部位に接触または対面するための、該被覆材の第1の面上の創傷界面領域と、
該第1の面の反対側の該被覆材の第2の面上に配置される被覆と、
創傷滲出液の吸引のための吸引力を受容する吸引ポートと、
該創傷被覆材内の創傷滲出液を感知し、該吸引ポートを通した吸引力の印加を制御する液体センサと
を備え、該創傷被覆材は、使用中、(i)水分が、該吸引ポートを経るときを除いて、該被覆材から流出することを実質的に妨げられ、および(ii)大気中の空気が、空気透過性であり、実質的に水分不透過性である大気通気孔を経て該被覆材に進入することが可能であるように構成される、創傷被覆材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−515051(P2012−515051A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546293(P2011−546293)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/020694
【国際公開番号】WO2010/083135
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(509146126)コンバテック・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】CONVATEC TECHNOLOGIES INC
【Fターム(参考)】