説明

吸引装置、シートの搬送方法、吸収体の製造方法及び不織布の嵩回復方法

【課題】構造が複雑とならずに回転ドラムの周面の幅方向の吸引力の差を抑えることができる吸引装置を提供すること。
【解決手段】本発明の吸引装置は、周面に吸気口を有する回転ドラム30と、回転ドラム30内を負圧に維持する吸引ダクト31とを備えている。吸引ダクト31は、内部に管体31Aを備えており、管体31Aは回転ドラム30の側面から内部に延出して配置され、管体31Aの吸引口310Aが回転ドラム30内に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周面に部材を吸着して回転する回転ドラムを備えた吸引装置、シートの搬送方法、吸収体の製造方法及び不織布の嵩回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品は、吸収性ポリマーとパルプの混合物を台紙で包んだ吸収体を備えているものが多い。このような吸収体は、例えば、通気性を有する第1シートを周面に吸着しながら回転する回転ドラムと、第1シートの前記回転ドラムからの離間位置に合わせて第2シートを供給する第2シート供給手段と、前記周面に吸着された第1シートの表面に粉砕パルプ及び吸収性ポリマーを含む吸収性材料を供給する吸収性材料供給手段とを備えた、積繊装置と称される装置を使用し、前記第1シートを介して前記吸収性材料を該第1シートの表面に吸着させた後、該吸収性材料を該第1シートとともに前記回転ドラムから離間させ、第1シートと第2シートとの間に前記吸収性材料を配することで製造されている。
【0003】
上述の製造工程において使用されている積繊装置は、周面に吸気口を有する回転ドラムと、前記回転ドラムの駆動源と、一端部が前記回転ドラムの片側面から該回転ドラム内に通じるように挿設された管路と、前記管路の他端部に接続される負圧源とを備えており、前記吸気口及び前記管路を通じた前記負圧源による吸引によって前記部材を前記周面に吸着しながら回転し、前記部材を搬送している。このため、回転ドラムの周面の幅が広くなると、当該幅方向において、吸引力に差が生じ、吸収性材料の吸着量に差が生じる課題を有していた。
【0004】
このような課題を解決する技術として、下記特許文献2に記載の技術が提案されている。この技術は、内面側から吸引を行うことにより、回転する積繊ドラムの表面に、空気流に乗って搬送された粉砕パルプを積繊させ吸収体を成形する積繊装置において、前記積繊ドラムの内側に配設される吸引チャンバを、流れ方向に沿う縦方向断面で複数の吸引チャンバに区画するとともに、吸引チャンバ毎に吸引手段を設けたものである。
【0005】
【特許文献1】特開平10−137286号公報
【特許文献2】特開2002−272782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の特許文献1、特許文献2においては、ドラム内を複数の吸引チャンバに区画した上で、吸引チャンバ毎に吸引手段を設ける必要があるが、このような設備の場合には、装置の構造が複雑となる課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、構造が複雑とならずに回転ドラムの周面の幅方向の吸引力の差を抑えることができる吸引装置及びシートの搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、周面に吸気口を有する回転ドラムと、前記回転ドラム内を負圧に維持する吸引ダクトを備えた吸引装置であって、前記吸引ダクトは、内部に管体を備えており、前記管体は前記回転ドラムの側面から内部に延出して配置され、前記管体の吸引口が回転ドラム内に位置している吸引装置を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、内部に管体を備えた吸引ダクトを、周面に吸気口を有する回転ドラムの側面から内部に延出させるとともに、前記管体の吸引口を前記回転ドラム内に位置させて配置し、前記吸引ダクトで前記回転ドラム内を負圧に維持しつつ該回転ドラムを回転させ、前記周面にシートを吸着させて搬送するシートの搬送方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記本発明のシートの搬送方法を具備する吸収体の製造方法であって、前記回転ドラムの周面に吸着させた前記シートの表面に吸収性材料を吸着させた後、前記吸収性材料を前記シートとともに回転ドラムから離間させ、それらの上に重ねるように他のシートを供給し、これら両シートの間に前記吸収性材料が配された吸収体を製造する吸収体の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記本発明のシートの搬送方法を具備する不織布の嵩回復方法であって、前記回転ドラムの周面に吸着させた嵩回復性の不織布に熱風を吹き付けた後、前記不織布を冷却し、前記回転ドラムから離間させる不織布の嵩回復方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸引装置によれば、回転ドラムの周面の幅方向における吸引力の差を抑えて部材を吸引することができる。また、本発明のシートの搬送方法によれば、回転ドラムの周面の幅方向における吸引力の差を抑えてシートを搬送することができる。よって、本発明のシートの搬送方法を例えば吸収体の製造に適用した場合には、吸収性材料の積層むらのない吸収体を製造することができる。また、本発明のシートの搬送方法を不織布の嵩回復に適用した場合には、嵩の回復むらが抑えられた均一な嵩高の不織布を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の吸引装置を吸収性物品の吸収体の製造装置に適用した一実施形態を示した模式図であり、図1において符号1は吸収体の製造装置(以下、単に製造装置ともいう。)を示している。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の製造装置1は、通気性を有する帯状の第1シート11を供給する第1シート供給手段2と、第1シート11を周面300に吸着しながら回転する回転ドラム30を具備する吸引装置3と、第1シート11の回転ドラム30からの離間位置に合わせて第2シート12を供給する第2シート供給手段4と、周面300に吸着された第1シート11の表面に粉砕パルプ131及び吸収性ポリマー132を含む吸収性材料13を供給する吸収性材料供給手段5とを備えている。
【0015】
製造装置1は、第1シート11を介して吸収性材料13を回転ドラム30の周面300に吸着された第1シート11の表面に吸着させた後、吸収性材料13を第1シート11とともに回転ドラム30から離間させ、それらの上に重ねるように第2シートを供給し、第1シート11と第2シート12との間に吸収性材料13が配された吸収体10を製造する。
【0016】
第1シート供給手段2は、第1シート11の原反110から当該第1シート11を繰り出す繰り出し装置20と、繰り出し装置20から繰り出された第1シート11を回転ドラム30の周面300に案内するガイドローラー21、22とを備えている。
【0017】
図2に示すように、吸引装置3は、周面300に吸気口302(図3参照)を有する回転ドラム30と、回転ドラム30内を負圧に維持する吸引ダクト31と、吸引ダクト31の他端部に接続される負圧源(図示せず)と、回転ドラム30の駆動源(図示せず)とを備えている。斯かる吸引装置3は、吸気口302及び吸引ダクト31を通じた前記負圧源による吸引によって、第1シート11及び吸収性材料13を周面300に吸着し、前記駆動源によって回転ドラム30のみを回転させることによって、第1シート11及びその表面に吸着された吸収性材料13を搬送する。
【0018】
吸引装置3の吸引ダクト31は、内部に管体31Aを備えている。吸引ダクト31は、端部が回転ドラム30の側面に接してはいるが、固定はされていないので、連動して回ることはない。管体31Aは、その吸引口310Aが吸引ダクト31の吸引口310よりも突出する位置、即ち、回転ドラム30の内に配されている。吸引ダクト31と管体31Aは、回転ドラム30の回転軸32と軸心が同心に配置されている。管体31Aは、吸引ダクト31に設けた挿通孔(図示せず)を通してボルトで固定することで、位置決めされる。本実施形態の吸引装置3では、前記ボルトによる管体31Aの固定位置を変えることで、管体31Aの吸引口の位置が調整可能に設けられている。このようにして管体31Aの吸引口310Aの位置が調整できるので、回転ドラム30の周面300の幅方向における風量(吸引量の分布)を任意に調整することができる。
【0019】
管体31Aの吸引口310Aは、回転ドラム30の幅方向中央(図2のP2の位置)近傍からさらに前方に(同P3側に)突出するように配置されていることが好ましい。その突出量は、有効吸引面長Wの1/2に対して、0〜20%にあることが好ましい。ここで、回転ドラム30の幅方向中央とは、有効吸引面長幅の中央をいう。また、有効吸引面長とは、周面300の吸気口の外寸法をいう。
【0020】
回転ドラム30は、吸収性材料13の配置パターンに対応する外形を有し且つ第1シート11とともに吸収性材料13を吸着する凹部301を周面300に有している。
【0021】
図3に示すように、回転ドラム30の周面300は、凹部301の輪郭を有する吸気口302を形成するパターンリング300Aと、パターンリング300Aの下側に配され、凹部301の底面部を形成するメッシュプレート300Bと、さらにその下側に配された押さえプレート300Cの3層構造とされている。
【0022】
上述のような構成により、吸引装置3は、回転ドラム30の内部に凹部301の底面部から吸引力(負圧)を作用させて第1シート11及び吸収性材料13を周面300に吸着させる。回転ドラム30内は、図1に示すように、前記負圧源からの吸引力が作用する空間30Aと、吸引力が作用しない空間30Bが設けられている。空間30Aでは前記負圧源による吸引力が作用することにより第1シート11及び吸収性材料13が周面300に吸着される。空間30Bでは周面300近傍に規制板303が配されており、前記負圧源による吸引力が及ばない。よって、自重及び、後述する搬送手段6のバキュームボックスの吸引力によって、第1シート11及び吸収性材料13が周面300から離間される。
【0023】
回転ドラム30は、図示しないモーター等の駆動手段によって回転軸に駆動力が伝達されて回転するように設けられている。ただし、管路31は、回転ドラム30とは連動して回ることはない。
【0024】
第2シート供給手段4は、第2シート12の原反120から当該第2シート12を繰り出す繰り出し装置40と、繰り出し装置40から繰り出された第2シート12を第1シート11及び吸収性材料13の回転ドラム30の周面300からの離間位置に合わせて回転ドラム30の周面300に案内するガイドローラー(図示せず)とを備えている。
【0025】
吸収性材料供給手段5は、パルプシート130を粉砕する粉砕機51と、粉砕機51で粉砕された粉砕パルプ131に吸収性ポリマー132を混入させるフィーダー52と、粉砕パルプ131及び吸収性ポリマー132を分散状態で回転ドラム30の周面300に導くダクト53とを備えている。
【0026】
製造装置1は、図1に示したように、回転ドラム30から離間された第1シート11及び吸収性材料13と、第2シート12とに吸引力を及ぼしてこれらを搬送する搬送手段6を備えている。搬送手段6は、通気性の無端状のコンベアベルト61と、その内部に配されたバキュームボックス62とを備えている。
【0027】
製造装置1は、回転ドラム30の周面300に供給される第1シート11及び回転ドラム30から離間された第1シート11及び吸収性材料13に合流される第2シート12にそれぞれ接着剤を塗工する塗工手段7を備えている。塗工手段7には、ホットメルトガン等の従来からこの種の吸収体の製造に使用される接着剤に応じた通常の塗工手段が使用される。塗工手段7によって第1シート11に予め接着材を塗工することで、吸収性材料13の位置ずれが防がれるほか、また吸収性材料13が第1シート11から浮きあがることが防がれる。
【0028】
製造装置1は、シーケンサーを搭載した制御手段(図示せず)を備えており、前記回転ドラムや各手段は、当該シーケンサーの具備するシーケンスプログラムに従って、例えば後述するように自動で作動する。
【0029】
次に、本発明のシートの搬送方法を具備する吸収体の製造方法の好ましい実施形態を、前記製造装置1による製造工程に基づいて説明する。
【0030】
本実施形態においては、通気性を有する第1シート11、第2シート12、吸収性材料13及び接着剤には、従来からこの種の吸収体の製造に使用されているものを使用することができる。第1シート11、第2シート12の好ましい材料としては、従来から吸収体の構成シートとして使用されている台紙、不織布、多孔性の樹脂フィルム等が挙げられる。吸収性材料13には、従来から吸収体に使用されているパルプ、吸収性ポリマーのほか、活性炭、ベントナイト及びその誘導体、カオリナイト、カネマイト、ゼオライト、アモルファスシリカ等の吸収体に使用可能な粉体成分を含ませることができる。好ましい接着剤としては、ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0031】
先ず、図1に示すように、製造装置1に使用する材料をセットする。そして、製造装置1を作動させ、塗工手段7によって接着剤が塗工された第1シート11を回転ドラム30の周面300に吸着させ、回転ドラム30を回転させて当該第1シート11を吸着した状態で移動させる。
【0032】
次に、回転ドラム30の周面300に吸着された第1シート11の表面に粉砕パルプ131及び吸収性ポリマー132を含む吸収性材料13を供給し、第1シート11を介して吸収性材料13を第1シート11の表面に吸着させる。
【0033】
その後、吸収性材料13を第1シート11とともに回転ドラム30の周面300から離間させ、塗工手段7によって接着剤が塗工された第2シート12と合流させる。そして、第1シート11と第2シート11との間に吸収性材料13が配された吸収体10の連続体に、搬送手段6の吸引力を作用させてベルト71で搬送し、その後切断して吸収体10を連続的に製造する。
【0034】
このように、本実施形態の吸引装置3を具備する吸収体の製造装置1並びにそれを使用したシートの搬送方法を具備する吸収体の製造方法によれば、回転ドラム30内を負圧に維持する吸引ダクト31内に管体31Aを配し、管体31Aを回転ドラム30の側面から内部に延出させるという簡単な構造で、回転ドラム30の周面の幅方向における吸引風速の均一化を図ることができる。よって、回転ドラムの周面に吸引力を均一に作用させた状態でシートを搬送することができる。従って、吸収材料13の積層状態を幅方向に均一にすることが可能となり、吸収材料13の積層むら(坪量のばらつき)が抑えられた吸収体10を、好適に製造することができる。また、管体31Aの吸引口310Aの位置を調整できるので、回転ドラム30の周面300の幅方向における風量(吸引量の分布)を任意に調整することができる。
【0035】
図4は、本発明の吸引装置を不織布の嵩回復装置に適用した一実施形態を示した模式図であり、図4において符号1’は、嵩回復装置を示している。なお、以下の説明において、前記実施形態における吸引装置と共通する部分については同一符号を付し、その説明は省略する。よって、特に説明のない部分については、前記実施形態の吸引装置の説明が適宜適用される。
【0036】
図4に示す嵩回復装置1’は、嵩回復処理が施される嵩回復性の不織布(以下、単に不織布ともいう。)10’を供給するシート供給手段2’と、不織布10’を周面300に吸着しながら回転する回転ドラム30を具備する吸引装置3と、回転ドラム30の周面300に向けて熱風を吹き付けるブロワー8と、嵩回復処理が施された不織布10’を搬送する搬送手段6’とを備えている。
【0037】
吸引装置3は、前記実施形態における吸引装置3と同じ構成である。回転ドラム30内は負圧源(図示せず)からの吸引力が作用する空間30Aと、吸引力が作用しない空間30Bが設けられている。周面300が空間30Aを臨んで移動する部分は、加熱ゾーン30H及び冷却ゾーン30Cに分けられている。加熱ゾーン30Hは、回転ドラム30の回転方向に関して上流側に位置している。冷却ゾーン30Cは下流側に位置している。加熱ゾーン30Hは、回転ドラム周面の面積の約1/2を占めており、冷却ゾーン30Cは約1/8を占めている。回転ドラム30はその上部がブロワー8のフード80で覆われている。回転ドラム30におけるフード80で覆われている部分は、加熱ゾーン30Hに相当する。
【0038】
加熱ゾーン30Hにおいては、ブロワー8のフード80から、回転ドラム30へ向けて熱風が吹き付けられる。吹き付けられた熱風は、加熱ゾーン30Hにおいて回転ドラム30内に吸引される。冷却ゾーン30Cにおいては、回転ドラム外から回転ドラム内へ向けて外気(空気)が吸引される。
【0039】
次に、本発明の不織布の嵩回復方法の好ましい実施形態を、前記嵩回復装置1’を使用した不織布の嵩回復方法に基づいて説明する。
【0040】
本実施形態において使用される不織布10’は、本出願人の先の出願に係る特開2002−187228号公報に記載されている構成繊維で構成され且つ該公報に記載の製造方法で製造された不織布が使用される。
【0041】
先ず、ロール状に巻回された不織布10’を、供給手段2’によって、回転している回転ドラム30の周面300に向けて供給する。そして、空間30Aを臨む部分において不織布10’を回転ドラム30の周面300に吸着させる。
【0042】
回転ドラム30の回転に伴って、不織布10’が加熱ゾーン30Hに搬送されると、不織布10’に所定温度の熱風が吹き付けられる。吹き付けられた熱風は、不織布10’を貫通し、回転ドラム30内に吸引される。このとき、嵩が減じられた状態にある不織布10’の嵩が増加し、巻回前の嵩と同程度にまで回復する。
【0043】
熱風の温度、吹き付け時間は、本出願人の先の出願に係る特開2004−137655号公報に記載の不織布の嵩回復方法と同様とする。
【0044】
また、熱風の風速は、その温度や不織布10’の坪量及び搬送速度にもよるが、0.5〜10m/s、特に1〜5m/sであることが、熱風のコスト及び装置の小型化の点から好ましい。
【0045】
また回転ドラム30の前記負圧源による吸引力は、回転ドラム周面への不織布の追随性又は不織布へのダメージ防止を観点に不織布の坪量などを考慮すると、風速で0.5〜10m/s、特に1〜5m/sが好ましい。ここで、風速は、回転ドラム半径方向に流れる風速であり、市販の風速計により測定される値である。よって、この範囲の風速において、回転ドラム30の周面の幅方向において略均一な風速となるように、吸引ダクト31内に配置する管体31Aの位置を調整する。
【0046】
以上の操作によって、不織布10’の嵩は熱風の吹き付け前の嵩の約2〜10倍にまで回復する。また、不織布10’の厚さは、ロール状に巻回する前の厚さの約50〜100%にまで回復する。
【0047】
次に、熱風の吹き付けによる不織布10’の嵩の回復後直ちに該不織布を冷却する。ここで、熱風の吹き付けによる不織布10’の嵩の回復後直ちに該不織布に冷却するとは、不織布10’に熱風を吹き付ける工程とその後に冷却する工程との間に、何らの操作も行わないことを意味し、熱風の吹き付けと冷却との間に時間差がないことを必ずしも意味するものではない。
【0048】
本実施形態の不織布の嵩回復方法においては、不織布10’の冷却は、回転ドラム3の冷却ゾーン30Cにおいて行われる。冷却ゾーン30Cにおいては、吸引装置3の前記負圧源の吸引力によって、外気が不織布10’を貫通して回転ドラム30内に吸引される。外気の温度は、不織布を構成する繊維の種類にもよるが50℃以下、特に30℃以下であれば十分な冷却効果が得られる。外気温度の下限値に特に制限はないが、エネルギーコストや装置1’の簡素化の点からは、20〜25℃程度の室温であることが適切である。
【0049】
熱風が吹き付けられて高温となっている不織布10’を十分に冷却させる観点から、吸引力は、風速で0.5〜10m/s、特に1〜5m/sであることが好ましい。ここで、風速は、前述の加熱ゾーンにおける風速と同様にして測定される。この範囲の風速であれば、十分な冷却効果が発現する。また風速が高くなることに起因して不織布10の安定な搬送が妨げられるおそれが低減する。この範囲の風速において、回転ドラム30の周面の幅方向において略均一な風速となるように、吸引ダクト31内に配置する管体31Aの位置を調整する。
【0050】
外気の吸引による冷却時間は、0.02〜1秒、特に0.05〜0.5秒が好ましい。不織布内の外気の貫通によって短時間でも不織布10’が十分に冷却される。
【0051】
不織布10’に熱収縮性繊維が含まれている場合、加熱ゾーン30Hにおける熱風の吹き付けによって、不織布10’が収縮する場合がある。特に不織布10’の幅方向、つまり不織布10’の搬送方向と直交する方向の収縮が起こりやすい。これを防止するため、熱風を吹き付ける前における不織布10’の幅(つまり加熱ゾーン30Hに入る前の不織布10’の幅)に対する、冷却後における不織布10’の幅(つまり、冷却ゾーン30Cを出た後の不織布10’の幅)が95%以上、特に97%以上となるように、不織布10’における幅方向の収縮を抑えることが好ましい。収縮を抑える方法としては、例えば、不織布10’の搬送方向両側部を所定の把持手段によって把持して不織布10の幅が変化しないようにした状態下に不織布10’を加熱ゾーン30H及び冷却ゾーン30Cに導入する方法が挙げられる。特に簡便な方法は、加熱ゾーン30H及び冷却ゾーン30Cにおいてそれぞれ加熱及び冷却するときに、熱風及び外気を吸引する風速を調整して不織布10’を回転ドラム30の周面300上に押さえつけ、不織布10’の幅が変化しないようにした状態下に搬送する方法が挙げられる。熱風及び外気を吸引する風速は前述した通りであり、その範囲内で不織布10’の坪量や搬送速度に応じて風速を決定する。
【0052】
以上の嵩回復処理によって、巻回圧によって嵩が減じられていた不織布10’はその嵩が回復する。嵩が回復した不織布10’は、回転ドラム30から離間され、搬送手段6’によって引き続き次工程である各種加工工程に付される。この加工工程へ付す場合には、不織布10’を巻き取らずに、厚みが回復した状態のままで搬送することが好ましい。加工工程としては、不織布10’の用途に応じて様々な工程があるが、その典型的な一例としては、生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の製造工程が挙げられる。
【0053】
このように、吸引装置3を具備する嵩回復装置1’及びシートの搬送方法を具備する不織布の嵩回復方法によれば、回転ドラム30の周面の幅方向における吸引風速の均一化が図られているので、回転ドラム30の加熱ゾーン30Hにおける熱風の吸引量及び冷却ゾーン30Cにおける外気の吸引量を回転ドラム30の幅方向に均一にすることができる。よって、回転ドラムの周面に吸引力を均一に作用させた状態でシートを搬送することができる。また、嵩回復処理において加熱ゾーンにおける熱風の吸引及びその後の冷却ゾーンにおける外気の吸引を回転ドラムの周面の幅方向において均一に行うことができる。よって、嵩回復処理後の嵩のむらが抑えられた不織布10’を好適に製造することができる。
【0054】
本発明は、前記実施形態に何ら制限されない。
本発明は、前記実施形態のように、吸引ダクトの内部に一本の管体を備えている構成としたが、回転ドラムの周面の幅に応じて、2本以上の管体を備えている構成とすることもできる。
【0055】
また、本発明の吸引装置は、吸引ダクトとその内部に備えた管体の断面積比を任意に変えることができる。これにより、各管体の流量比を変えることができるので、回転ドラムの周面における吸引風量に差を与えて吸引することができる。
【0056】
また、本発明の吸引装置は、吸引ダクト及びその内部に配する管体の断面形状は、任意に設定することができる。前記実施形態におけるような、円形断面以外に、矩形、六角形や三角形等の断面形状を採用することもできる。
【0057】
また、本発明の吸引装置は、吸引ダクトの内部に配する管体の吸引口の形態は任意に設定することができる。例えば、管体先端部の半径方向にツバが伸びた形態、あるいは、管体先端部が閉じられているが、管体の円周方向に開口部を持つ管体の形態など(開口部の広さを変更する)である。
【0058】
また、前記各実施形態では、本発明を吸収性物品の製造装置や不織布の嵩回復装置に適用したが、本発明の吸引装置の適用例はこれに限られるものではない。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は本実施例に何ら制限されるものではない。
【0060】
図1、2に示す吸引装置において、吸引ダクトの内部に下記の内径の管体を配置し、該管体の先端位置を変化させたときに、回転ドラムの周面の三カ所(周面の中央P2、その両側80mmP1、P3の位置における吸引力を市販の風速計による風速を指標として測定した。それぞれの管体の先端配置において、P1、P2、P3の最大風速と最小風速の差を求め、風速差とした。その結果を表1に示した。
【0061】
<測定条件>
吸引ダクト31の内径φ31:φ121mm
管体31Aの内径φ31A1:φ83mm
管体31Aの外径φ31A2:φ85mm
回転ドラムの吸引有効面長W:210mm
回転ドラム30の外径:φ200mm
管体31Aの先端位置(Wの中央からの距離。Wの中央を0(ゼロ)とし、P1側を−(マイナス)で表した。):−10〜50mm(10mmおき)
負圧源のブロワー:昭和電気(株)製、EM125M2、最大風量33(m3/分)
ブロワーの設定周波数:30Hz
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示したように、管体31Aを使用しない場合は、P1とP3の風速差は1.1(m/s)であり、風速測定値に対する割合は非常に大きいが、管体を導入することによって風速差は格段に少なくなる。さらに、管体の位置を調整することによって、3つの測定点における風速差は0.21m/sに抑えることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の吸引装置を吸収体の製造装置に適用した一実施形態を製造工程とともに示す模式図である。
【図2】前記実施形態の吸引装置の効果を確認するために吸引ダクト内部に管体を配し、風速差が小さくなること(表1のデータ)を確認したときの模式図である。
【図3】前記実施形態の吸引装置の回転ドラムにおける周面の断面構造を示す模式図である。
【図4】本発明の吸引装置を不織布の嵩回復装置に適用した一実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 吸収体の製造装置
1’ 不織布の嵩回復装置
2、2’ 第1シート供給手段
3 吸引装置
30 回転ドラム
300 周面
301 凹部
31 吸引ダクト
31A 管体
310、310A 吸引口
4 第2シート供給手段
5 吸収性材料供給手段
6、6’ 搬送手段
7 塗工手段
10 吸収体
11 第1シート
12 第2シート
13 吸収性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に吸気口を有する回転ドラムと、前記回転ドラム内を負圧に維持する吸引ダクトとを備えた吸引装置であって、
前記吸引ダクトは、内部に管体を備えており、前記管体は前記回転ドラムの側面から内部に延出して配置され、前記管体の吸引口が回転ドラム内に位置している吸引装置。
【請求項2】
前記各管体の軸心が同心とされている請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
内側の前記管体の吸引口の位置が調整可能に設けられている請求項1又は2に記載の吸引装置。
【請求項4】
内側の前記管体の吸引口が前記回転ドラムの幅方向中央近傍からさらに前方に突出するように配置されている請求項1〜3の何れかに記載の吸引装置。
【請求項5】
内部に管体を備えた吸引ダクトを、周面に吸気口を有する回転ドラムの側面から内部に延出させるとともに、前記管体の吸引口を前記回転ドラム内に位置させて配置し、前記吸引ダクトで前記回転ドラム内を負圧に維持しつつ該回転ドラムを回転させ、前記周面にシートを吸着させて搬送するシートの搬送方法。
【請求項6】
請求項5に記載のシートの搬送方法を具備する吸収体の製造方法であって、
前記回転ドラムの周面に吸着させた前記シートの表面に吸収性材料を吸着させた後、前記吸収性材料を前記シートとともに回転ドラムから離間させ、それらの上に重ねるように他のシートを供給し、これら両シートの間に前記吸収性材料が配された吸収体を製造する吸収体の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載のシートの搬送方法を具備する不織布の嵩回復方法であって、
前記回転ドラムの周面に吸着させた嵩回復性の不織布に熱風を吹き付けた後、前記不織布を冷却し、前記回転ドラムから離間させる不織布の嵩回復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−231609(P2008−231609A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72710(P2007−72710)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】