説明

吸気ダクトの取付装置

【課題】吸気ダクトを取り付けるための取付具の脱落などを確実に防止しながら、吸気ダクトを車体に容易に着脱することができる吸気ダクトの取付装置を提供する。
【解決手段】内燃機関3の気筒#1〜#4に吸入される空気を取り入れる吸気ダクト4を取付孔6aを有する車体6に取り付けるための吸気ダクト4の取付装置1であって、互いに対向する一対のフランジ受け13,13を有し、吸気ダクト4に固定されたホルダ10と、フランジ34を有し、フランジ34が一対のフランジ受け13,13の間に挟持された状態でホルダ10に取り付けられ、一対のフランジ受け13,13の対向方向に沿って車体6の取付孔6aに差し込まれることによって、ホルダ10を介して吸気ダクト4を車体6に取り付けるクリップ30と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の気筒に吸入される空気を取り入れる吸気ダクトを車体に取り付けるための吸気ダクトの取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の取付装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この取付装置は、吸気ホースの一端部に取り付けられた吸気口部材と、吸気口部材に設けられたブラケットと、吸気ホースを固定するためのボルトなどで構成されている。吸気口部材は、ボックス状のものであり、前面が開口している。ブラケットは、水平に延びる板状のものであり、中間部において吸気口部材の内側底面に固定されており、両端部が吸気口部材から前方に突出している。ブラケットの各端部には、取付孔が形成されている。吸気ホースを車体に取り付ける際には、吸気口部材を車体の上面に載せた状態で、ボルトをブラケットの取付孔に通した後、車体の下面に溶接されたナットにねじ込む。これにより、吸気ホースが吸気口部材およびブラケットを介して車体に取り付けられる。
【0003】
以上のように、従来の取付装置では、吸気口部材およびブラケットとは別個のボルトを車体にねじ込むことによって、吸気ホースが車体に取り付けられる。このため、吸気ホースの取付時、ボルトを取付孔に通す際に、ボルトが誤って落下することがある。また、吸気ホースを取り外す際にも、ボルトが取付孔から誤って外れ、落下することがある。これらの場合、落下したボルトが吸気ホースに入り込むことがあり、その場合には、その取り出し作業に余分な手間がかかる。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、吸気ダクトを車体に取り付けるための取付具の脱落などを確実に防止しながら、吸気ダクトを容易に着脱することができる吸気ダクトの取付装置を提供することを目的とする。
【0005】
【特許文献1】特開2001−227422号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、内燃機関3の気筒#1〜#4に吸入される空気を取り入れる吸気ダクト4を取付孔6aを有する車体6に取り付けるための吸気ダクト4の取付装置1であって、互いに対向する一対のフランジ受け13,13を有し、吸気ダクト4に固定されたホルダ10と、フランジ34を有し、フランジ34が一対のフランジ受け13,13の間に挟持された状態でホルダ10に取り付けられ、一対のフランジ受け13,13の対向方向に沿って車体6の取付孔6aに差し込まれることによって、ホルダ10を介して吸気ダクト4を車体6に取り付けるクリップ30と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この吸気ダクトの取付装置によれば、吸気ダクトにホルダが固定されており、このホルダには、互いに対向する一対のフランジ受けが設けられ、この一対のフランジ受けの間にクリップのフランジが挟持されている。これにより、クリップがフランジを介してホルダに一体に固定される。そして、このクリップを、一対のフランジ受けの対向方向に沿って車体の取付孔に差し込むことによって、ホルダを介して吸気ダクトが車体に取り付けられる。以上のように、クリップのフランジは、取付孔に差し込む方向においてホルダのフランジ受けに挟持されているので、吸気ダクトを車体に着脱する際に、取付具としてのクリップの脱落などを確実に防止することができる。このため、クリップが吸気ダクトに入り込むことがないので、それを取り出すための余分な作業が不要になる。また、クリップを車体の取付孔に差し込むだけで吸気ダクトが車体に取り付けられるので、その着脱を容易に行うことができる。以上のように、吸気ダクトを車体に取り付けるための取付具としてのクリップの着脱などを確実に防止しながら、吸気ダクトを容易に着脱することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の吸気ダクト4の取付装置1において、車体6側のフランジ受け13には、対向方向と交差する方向に開口する切欠き15が形成されており、クリップ30は、フランジ34から車体6側に向かって延び、切欠き15に嵌合する円筒部33を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、切欠きは、車体側のフランジ受けに形成されており、一対のフランジ受けの対向方向と交差する方向に開口している。このため、クリップの円筒部を、この開口を介して切欠きに挿入し、対向方向と交差する方向にスライドさせるだけで、クリップをホルダに容易に取り付けることができる。また、切欠きは一対のフランジ受けのうちの車体側のものに形成されているので、切欠きの形成によるこのフランジ受けの剛性の低下分を、車体の剛性によって補強することができる。これにより、クリップの保持力を維持し、吸気ダクトを強固に取り付けることができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の吸気ダクト4の取付装置1において、クリップ30は、複数のクリップ30で構成され、切欠き15は、互いに異なる方向に開口し、複数のクリップ30がそれぞれ嵌合する複数の切欠き15L,15Rで構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、複数のクリップがそれぞれ嵌合する複数の切欠きは、互いに異なる方向に開口している。このため、複数のクリップに外力が作用した場合でも、複数のクリップが同時に外れるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態による取付装置1を、吸気装置2および内燃機関3とともに示している。この内燃機関(以下「エンジン」という)3は、複数(例えば4つ)の気筒#1〜#4を有するガソリンエンジンであり、車両Vのエンジンルーム7内に搭載されている。
【0013】
吸気装置2は、吸気ダクト4およびエアクリーナ5などで構成されている。吸気ダクト4は、エンジン3の気筒#1〜#4に吸入される空気を取り入れるためのものである。吸気ダクト4は、その一端部において、エンジン3の吸気マニホルド3aに接続されるとともに、他端部において、取付装置1を介して車両Vの車体6に取り付けられている。この吸気ダクト4が取り付けられる車体6のエンジンルーム7の前縁の部分は、板金6bになっており、この板金6bには、上下方向に貫通する取付孔6aが形成されている(図5参照)。
【0014】
エアクリーナ5は、吸気ダクト4の途中に取り付けられている。吸気ダクト4に取り込まれた空気は、それに含まれる塵や異物がエアクリーナ5によって取り除かれた後、気筒#1〜#4に吸入される。
【0015】
以下、図2〜図6を参照しながら、取付装置1の構成を説明する。なお、以下では、図2の矢印C−C’のC側を「前」、C’側を「後」とし、矢印D−D’のD側を「左」、D’側を「右」として、説明を行うものとする。この取付装置1は、ホルダ10、カバー20および2つのクリップ30,30などで構成されている。
【0016】
ホルダ10は、吸気ダクト4の一端部に固定されるものであり、合成樹脂、例えばポリプロピレンの成形品で構成されている。ホルダ10は、本体部11と、本体部11から上方に延びる延出部12と、延出部12から前方に延び、上下方向に対向する上下一対のフランジ受け13,13と、このフランジ受け13の右端から上方に直角に延びる嵌合部16などを一体に有している。
【0017】
本体部11は、短い円筒状に形成されており、上面および下面が開口している。延出部12は、本体部11の前部から右部にわたる部分に延びている。
【0018】
上フランジ受け13には、図3に示すような、外方に向かって広がる左右2つの切欠き14,14が形成されている。また、下フランジ受け13には、切欠き14,14の下側に、左右2つの切欠き15(15L,15R)が形成されている。
【0019】
左側の切欠き15Lは、円形の嵌合部15Laと、この嵌合部15Laから前方に延び、開口するガイド部15Lbで構成されている。嵌合部15Laは、上フランジ受け13の左側の切欠き14の内端部の真下に位置している。ガイド部15Lbの幅は、嵌合部15Laの径よりも若干小さい。また、フランジ受け13には、ガイド部15Lbの開口付近にRが付けられている。右側の切欠き15Rは、左側の切欠き15Lと同様に構成され、上フランジ受け13の右側の切欠き14の内端部の真下に位置する嵌合部15Raと、この嵌合部15Raから右方に延び、開口するガイド部15Rbで構成されている。
【0020】
カバー20は、ホルダ10に取り付けられ、吸気ダクト4への吸気の取入れ口を構成するとともに、吸気ダクト4への水の侵入を防止するなどの機能を有するものである。カバー20は、ラバーで構成されており、取付部21と、取付部21から上方に延びるキャップ22などを備えている。取付部21は、短い円筒状に形成されており、上面および下面が開口している。この取付部21の内径は、ホルダ10の外径とほぼ同じ大きさに設定されている。キャップ22の前面は、大きく開口しており、吸気取入れ口24になっている。また、キャップ22の右側の上部には、下方に開口するスリット23が形成されている。
【0021】
各クリップ30は、ホルダ10と同様、ポリプロピレンで構成されている。図5および図6に示すように、クリップ30は、押込み部材31と係止部材32から成る組立品で構成されている。
【0022】
押込み部材31は、上下方向に延びる断面円形の軸状のものである。押込み部材31には、上下方向の3か所にくびれ部31aが形成されており、上側のくびれ部31aよりも上側の部分が頭部31bになっている。また、下側のくびれ部31aよりも下側の部分が下側に向かって凸の円錐状の先端部31cになっている。
【0023】
係止部材32は、円筒部33と、円筒部33と一体のフランジ34などで構成されている。円筒部33は、底壁33aを有し、上面が開放した中空状に形成されており、その内径は、押込み部材31のくびれ部31a以外の部分の径と等しく、また、外径は、フランジ受け13の切欠き15の嵌合部15aの径よりも若干小さい。また、円筒部33には、底壁33aの中央に孔が形成されるとともに、4つのスリット35(1つのみ図示)が形成されている。各スリット35は、円筒部33の底壁33aの孔から径方向に外方に延びるとともに、周壁33bの途中の位置まで上方に延びている。フランジ34は、円筒部33の周壁33bの上端部から径方向の外方に突出する円板状のものである。このフランジ34の厚さは、前述した上下のフランジ受け13,13間の距離とほぼ同じである。
【0024】
以上の構成のクリップ30は、押込み部材31を円筒部33に上方から差し込むことによって組み立てられている。この状態では、押込み部材31の先端部31cが底壁33aを乗り越え、下側のくびれ部31aが底壁33aの孔に係合しているので、押込み部材31は係止部材32から容易には抜けにくくなっている(図5参照)。
【0025】
次に、以上の構成の取付装置1による吸気ダクト4の取付方法を説明する。まず、ホルダ10にカバー20を上方から被せ、カバー20の吸気取入れ口24からホルダ10のフランジ受け13を前方に突出させる。また、ホルダ10の嵌合部16をカバー20のスリット23に嵌合させる。これにより、ホルダ10とカバー20が互いに位置決めされた状態で組み立てられる。
【0026】
次いで、クリップ30をホルダ10に取り付ける。具体的には、係止部材32の円筒部33を図3(a)に示す矢印方向から開口を介して下フランジ受け13の切欠き15に位置合わせし、フランジ34を上下のフランジ受け13,13の間に係合させた後、クリップ30を、切欠き15のガイド部15bに沿って、嵌合部15aの内縁に当接するまでスライドさせる。これにより、クリップ30は、そのフランジ34が上下のフランジ受け13,13の間に挟持されることで、上下方向に抜け止め状態で、ホルダ10に固定される。以上により、取付装置1の組立が完了する(図4参照)。
【0027】
次に、組み立てた取付装置1のホルダ10を吸気ダクト4の一端部に嵌合させ、固定することによって、吸気ダクト4に取付装置1を連結する。次に、取付装置1のフランジ受け13を車体6の板金6bに載せた後、クリップ30を板金6bの取付孔6aに挿入する(図5参照)。次いで、クリップ30の押込み部材31を頭部31bを介して下方に押圧する。これにより、押込み部材31が下方に押し込まれ、係止部材32の円筒部33の板金6bよりも下側の部分を押し広げることによって、クリップ30が板金6bに抜け止め状態でしっかりと固定される(図6参照)。なお、空気は、カバー20の吸気取入れ口24を介して前方から取り込まれ、ホルダ10の円筒状の本体部11を通って吸気ダクト4に導入され、気筒#1〜#4に吸入される。
【0028】
以上のように、本実施形態によれば、クリップ30のフランジ34が、上下方向においてホルダ10のフランジ受け13に挟持されているので、吸気ダクト4を車体6に着脱する際に、クリップ30の脱落などを確実に防止することができる。このため、クリップ30が吸気ダクト4に入り込むことがないので、それを取り出すための余分な作業が不要になる。また、クリップ30を車体6の取付孔6aに差し込むだけで吸気ダクト4が車体6に取り付けられるので、その着脱を容易に行うことができる。
【0029】
また、切欠き15が前方または右方に開口しているので、クリップ30の円筒部33を開口を介して切欠き15に挿入し、スライドさせるだけで、クリップ30をホルダ10に容易に取り付けることができる。さらに、切欠き15が上下のフランジ受け13,13のうちの下側のものに形成されているので、切欠き15の形成によるフランジ受け13の剛性の低下分を、車体6の剛性によって補強することができる。これにより、クリップ30の保持力を維持し、吸気ダクト4を強固に取り付けることができる。
【0030】
さらに、切欠き15L,15Rが互いに異なる方向に開口しているので、2つのクリップ30に外力が作用した場合でも、これらのクリップ30が同時に外れるのを防止することができる。
【0031】
また、切欠き15のガイド部15bの幅が嵌合部15aの径よりも小さいので、嵌合部15aに嵌合しているクリップ30がホルダ10から抜けにくくなる。
【0032】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、クリップ30の数が2つであるが、1つまたは3つ以上でもよい。3つ以上の場合には、それらが嵌合する切欠きが互いに異なる方向に開口していることが好ましい。また、実施形態のクリップ30はあくまで例示であり、ホルダに取り付けられ、車体に差し込まれることによって吸気ダクトを車体に取り付けるなどの所定の要件を満たすものであれば、その構成は任意である。さらに、実施形態では、ホルダ10とカバー20を互いに別体に構成しているが、一体に構成してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部を適宜、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態による取付装置を、吸気装置および内燃機関とともに示す図である。
【図2】取付装置の分解斜視図である。
【図3】ホルダのフランジ受けへのクリップの取付状況((a)取付前、(b)取付後)を示す平面図である。
【図4】組み立てられた取付装置の斜視図である。
【図5】取付装置を車体に配置した状態の部分断面図である。
【図6】取付装置を車体に取り付けた状態の部分断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 取付装置
3 エンジン
#1〜#4 気筒
4 吸気ダクト
6 車体
6a 取付孔
10 ホルダ
13 フランジ受け
15 切欠き
30 クリップ
33 円筒部
34 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の気筒に吸入される空気を取り入れる吸気ダクトを取付孔を有する車体に取り付けるための吸気ダクトの取付装置であって、
互いに対向する一対のフランジ受けを有し、前記吸気ダクトに固定されたホルダと、
フランジを有し、当該フランジが前記一対のフランジ受けの間に挟持された状態で前記ホルダに取り付けられ、前記一対のフランジ受けの対向方向に沿って前記車体の前記取付孔に差し込まれることによって、前記ホルダを介して前記吸気ダクトを前記車体に取り付けるクリップと、
を備えることを特徴とする吸気ダクトの取付装置。
【請求項2】
前記車体側の前記フランジ受けには、前記対向方向と交差する方向に開口する切欠きが形成されており、
前記クリップは、前記フランジから前記車体側に向かって延び、前記切欠きに嵌合する円筒部を有することを特徴とする、請求項1に記載の吸気ダクトの取付装置。
【請求項3】
前記クリップは、複数のクリップで構成され、
前記切欠きは、互いに異なる方向に開口し、前記複数のクリップがそれぞれ嵌合する複数の切欠きで構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の吸気ダクトの取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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