説明

吸気温度センサおよびそれを有する熱式空気流量計

【課題】吸気温度を高精度且つ高速に検出できる吸気温度センサを提供する。
【解決手段】本発明による吸気温度センサは、吸気流を取込む副通路7と、副通路7の内部に配置される流量検出素子13と、副通路の外部に設けられた吸気温度検出素子4と、吸気温度検出素子4の取付け部の温度を検出する温度センサ9と、筐体内部に配置される回路基板11と、吸気温度検出素子4の出力を温度センサ9および流量検出素子13の出力信号に基づいて補正処理する集積回路10とにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸気温度センサに係り、特にセンサ固定部の温度や回路部の自己発熱の影響が小さい吸気温度センサおよびそれを有する熱式空気流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
吸気温度センサは例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には流量測定素子に配置した第1温度センサと、筐体内に配置した第2温度センサの情報を基に吸気温度を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−9965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では副通路構造体の温度による副通路内の空気の温度変化、筐体内に配置される回路の自己発熱による第2温度センサへの影響、筐体の熱時定数が数十秒から数分あることなどに対して配慮が欠けていた。
【0005】
副通路の構造体はセンサ固定部からの熱や回路の自己発熱によって被測定空気流とは異なる温度となる。このため、副通路の構造体からの熱影響を受けて副通路内の空気の温度は変化し、被測定空気流とは異なる温度となり、上記技術では吸気温度センサの出力に誤差を生じてしまうという問題がある。
【0006】
更に、副通路の構造体の温度変化は筐体の熱時定数の影響を受けるので副通路の構造体の温度が安定するまでの時間は数十秒から数分の時間を必要としてしまう。このため、上記技術では吸気温度が変化してから数十秒から数分間、吸気温度センサの出力は不安定になってしまうという問題が生じていた。
【0007】
また、空気流量が変化すると空気流量センサを駆動する駆動回路の消費電力が変化し、回路の自己発熱が変化する。この時に筐体の温度が安定するまでの時間もやはり筐体の熱時定数の影響を受けるので第2温度センサの出力が安定するまでの時間は数十秒から数分の時間を必要とする。このため、第2温度センサの出力に基づいて補正される吸気温度センサの出力も空気流量が変化してから数十秒から数分の間は不安定になってしまうという問題が生じていた。
【0008】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は吸気温度を高精度且つ高速に検出できる吸気温度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の吸気温度センサは、吸気流の一部を取込む開口部を有する副通路と、前記副通路内に設けられた流量検出素子と、前記流量検出素子と電気的に接続された電子回路と、前記電子回路を配置する回路実装板と、を有し、少なくとも前記回路実装板の一部を収納する筐体とを備えた吸気温度センサにおいて、前記副通路外部に設けられた吸気温度検出素子と、前記吸気温度検出素子の取付け部周辺の温度を検出する温度センサと、を有し、前記温度センサの出力および前記流量検出素子の出力に基づいて前記吸気温度検出素子の出力を補正する手段を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸気温度センサの取付け部の温度および回路部の自己発熱の影響を低減できるので、吸気温度の計測をより高精度且つ高速に検出できる吸気温度センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施例の吸気温度センサを吸気管に実装した状態を示した実装図。
【図2】図1におけるA−A′の断面。
【図3】吸気温度検出素子4の特性。
【図4】第1の実施例の吸気温度センサ8の熱等価回路。
【図5】吸気温度検出素子4の補正方法。
【図6】特性変換回路19の入出力特性。
【図7】応答補償回路14の周波数特性。
【図8】応答補償回路14のカットオフ周波数。
【図9】第2の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面。
【図10】第3の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面。
【図11】第4の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面。
【図12】第4の実施例の吸気温度センサの斜視図。
【図13】図11におけるB−B′の断面。
【図14】第5の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面。
【図15】第5の実施例の回路基板11の平面図。
【図16】切り欠きの第1の変形例を示す回路基板11の平面図。
【図17】切り欠きの第2の変形例を示す回路基板11の平面図。
【図18】切り欠きの第3の変形例を示す回路基板11の平面図。
【図19】切り欠きの第4の変形例を示す回路基板11の平面図。
【図20】切り欠きの第5の変形例を示す回路基板11の平面図。
【図21】第6の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面。
【図22】第7の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面。
【図23】集積回路42の内部ブロック図。
【図24】サーミスタ抵抗の使用例。
【図25】固定抵抗の抵抗値を用いた吸気温度出力の補正方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【0013】
まず、本発明の第1の実施例である吸気温度センサを図1乃至図8を用いて説明する。なお、図1は第1の実施例の吸気温度センサを吸気管に実装した状態を示した実装図、図2は図1におけるA−A′断面図、図3は吸気温度検出素子4の特性を示した図、図4は第1の実施例の吸気温度センサ8の熱等価回路図、図5は吸気温度検出素子4の補正方法、図6は特性変換回路19の入出力特性を示した図、図7は応答補償回路14の周波数特性を示した図、図8は応答補償回路14のカットオフ周波数を示した図である。
【0014】
本発明の第1の実施例の吸気温度センサ8は図1に示すように吸気管3に設けられた開口部に挿入する形で実装され、吸気温度センサ8はセンサ固定部2により吸気管3に固定される。また、吸気温度センサ8から外部への電気的接続はコネクタ部1を介して行われる。また、吸気温度センサ8には副通路7が設けられ、副通路7には吸気流の一部を取込むように開口部が設けられている。
【0015】
図2に示されるように、副通路7の内部には流量検出素子13が配置され、吸気管3を流れる吸気流の流量を測定できるようにしている。また、吸気温度検出素子4は吸気流に曝されるように取付け金具5,6を介して固定される。また、吸気温度検出素子4の取付け部の温度を検出するために温度センサ9を吸気温度検出素子4の取付け部の根元に配置した。筐体50内部には回路を実装する回路基板11を配置し、回路基板11には吸気温度検出素子4,温度センサ9および流量検出素子13の出力信号を処理する集積回路10を配置した。なお、流量検出素子13は金線12により回路基板11に接続される。また、吸気温度検出素子4および温度センサ9はサーミスタ,白金抵抗体,熱電対,温度係数の大きい抵抗などで構成した。
【0016】
次に、吸気温度検出素子4の特性について図3により説明する。吸気温度検出素子4は吸気温度と吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度差と空気流量Qに応じて誤差が生じる。これは空気流量が小さいほど吸気温度検出素子4の表面から空気流への放熱が小さくなるため、吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度の影響を受けるからである。
【0017】
また、吸気温度と吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度差が大きくなる程、誤差は大きくなる。本実施例の吸気温度センサ8の熱等価回路は図4に示すように表され、吸気温度検出素子4の温度は吸気流と吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度と、吸気流と吸気温度検出素子4の取付け根元部からの熱抵抗によって決まる。つまり、吸気温度検出素子4の温度は吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度と吸気流の温度差に応じて誤差を生じさせる。また、吸気流からの熱抵抗は空気流量Qに応じて変化し、低流量では特にこの熱抵抗が高くなるので吸気温度検出素子4の取付け根元部からの温度の影響が大きくなる。また、吸気温度検出素子4の温度は吸気流からの熱抵抗と吸気温度検出素子4の熱容量で決まるので低流量では応答性が悪化する。
【0018】
次に、吸気温度検出素子4の補正方法について図5により説明する。本補正手段は吸気温度検出素子4の出力を応答補償する応答補償回路14と、応答補償回路14の出力と温度センサ9の出力の差分を求める差分回路16と、流量検出素子13の出力を絶対値化する絶対値化回路18と、絶対値化回路18の出力を所定の特性に変換する特性変換回路19と、特性変換回路19と差分回路16との乗算を行う乗算回路17と、乗算回路17と応答補償回路14の出力を加算して吸気温度出力を得る加算回路15と、流量検出素子13の出力を特性調整して空気流量出力を得る特性調整回路20により構成される。なお、本補正は集積回路10によって処理される。
【0019】
次に、本補正手段の動作について説明する。本補正手段では流量検出素子13の出力を絶対値化する。これは、吸気温度検出素子4の誤差が空気流量の絶対値に依存し極性には依存しないためであり、絶対値化することで特性変換回路19の構成を簡素化できる。即ち、両極のデータ持つ必要が無く単極のデータを持てば良いのでデータ量を半分にできる。
【0020】
次に、特性変換回路19では図3に示した特性を補正する様に図3の特性の逆関数として図6の様な入出力特性を持たせた。このことにより図3に示したような低流量で補正量を大きくする補正を実現し、吸気温度センサ出力の誤差を低減可能にした。
【0021】
また、所定流量Qth以上では0を出力し、吸気温度検出素子4の出力に影響は与えない様にして所定流量Qth以下では図3に示した特性を補正する様に出力信号を出力させた。この様に所定の流量Qth以下でのみ補正をかける様にすることで特性変換回路19の簡素化と信頼性の向上を図った。
【0022】
また、吸気温度検出素子4の出力と温度センサ9の出力の差分に応じて補正量を変える様に差分回路16を設け、差分回路16の出力と特性変換回路19の乗算を乗算回路17で行うことで、吸気温度検出素子4の出力と温度センサ9の出力の差分に応じて変化し、且つ、空気流量に応じて任意の特性を持つ補正量を生成した。このことにより図3に示した複雑な特性を補正できる補正手段を実現し、吸気温度センサ出力の誤差を低減した。
【0023】
次に、応答補償回路14の動作について説明する。応答補償回路14は図7に示す様に1次のHPF(ハイ・パス・フィルタ)とし、このHPFのカットオフ周波数fcは図8に示すように流量検出素子13の出力に応じて変更するようにした。こうすることで、低速の空気流量で吸気温度センサの応答性が悪化することを防ぐことができる。
【0024】
本実施例では吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度を温度センサ9により検出することで、吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度による影響を補正できる様にした。また、吸気温度検出素子4と温度センサ9を近接して配置することで筐体の熱時定数の影響を小さくした。
【0025】
本実施例の吸気温度センサ8の熱等価回路は図3に示すように表され、吸気流と吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度と、吸気流と吸気温度検出素子4の取付け根元部からの熱抵抗によって決まる。また、吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度はセンサ固定部2の温度とセンサ固定部2からの熱抵抗および回路基板11の温度と回路基板11からの熱抵抗に依存する。また、その応答性は筐体の熱容量の影響を受ける。本実施例では吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度を温度センサ9によって計測することでセンサ固定部2および回路基板11の温度の影響を排除できる。また、筐体の熱容量は非常に大きく数分の熱時定数を生じさせ、吸気温度検出素子4の応答性を非常に悪化させるが、温度センサ9によって吸気温度検出素子4の取付け部根元の温度を測定することで吸気温度検出素子4の特性を筐体の熱時定数の影響を受けずに補正できる。
【0026】
また、吸気温度センサ8の筐体に凹部を設け、この凹部に吸気温度検出素子4を配置することで副通路7の空気流の乱れを生じさせることなく、吸気温度検出素子4を吸気温度センサ8の上流側に配置すると共に、吸気温度検出素子4の機械的保護を実現した。まず、副通路7の空気流の乱れに関しては、凹部を設けることで副通路7の開口部を吸気温度検出素子4よりも上流側に配置することができる。この結果、吸気温度検出素子4による空気の乱れが副通路7の内部の空気の流れを乱すことが無く、空気流量の測定に吸気温度検出素子4が悪影響を与えない。
【0027】
また、吸気温度検出素子4は吸気温度センサ8の上流側に配置したので筐体の脇を流れ筐体の温度影響を受けた空気が吸気温度検出素子4には当たらず、吸気流が他の温度の影響を受けずに吸気温度検出素子4に当たるので吸気温度をより正確に検出することができる。また、吸気温度検出素子4を筐体の凹部に配置することで吸気温度センサ8を落下させても吸気温度検出素子4に機械的衝撃が加わることを防ぐことができる。
【0028】
また、本実施例の吸気温度センサは流量検出素子13を持つので、流量検出素子13の特性調整をすることで空気流量信号を容易に出力することができるので吸気温度センサ付き空気流量計としても使える。
【0029】
次に、本発明の第2の実施例である吸気温度センサを図9により説明する。なお、図9は第2の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面である。
【0030】
第2の実施例の吸気温度センサは第1の実施例の吸気温度センサと基本的に同じ構造であるが、以下の改良を加えた。本実施例では吸気温度検出素子4を固定する取付け金具5,6を回路基板11にまで延長し、回路基板11に熱的に結合させ、取付け金具5,6の近傍の回路基板11に温度センサ21を配置した。こうすることで、吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度を温度センサ21にて計測可能にした。本実施例では第1の実施例に比べて温度センサ21の取付けが容易であり、回路基板11に直接配置できるのでチップ部品を使用でき、配線も容易なので低コスト化が可能である。また、取付け金具5,6を回路基板11にまで延長したので吸気温度検出素子4の接続も容易にできる。
【0031】
次に、本発明の第3の実施例である吸気温度センサを図10により説明する。なお、図10は第3の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面である。
【0032】
第3の実施例の吸気温度センサは第2の実施例の吸気温度センサと基本的に同じ構造であるが、以下の改良を加えた。本実施例では回路基板11に温度センサ21の周囲を囲むようにコの字状に切り欠き22を設けて、温度センサ21を熱的に絶縁した。こうすることで、回路基板11に配置された集積回路10などの電子部品の発熱からの影響を低減することができるので吸気温度検出素子4の取付け根元部の温度を温度センサ21により正確に計測できる。
【0033】
次に、本発明の第4の実施例である吸気温度センサを図11,図12,図13により説明する。なお、図11は第4の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面、図12は第4の実施例の吸気温度センサの斜視図、図13は図11におけるB−B′の断面ある。
【0034】
第4の実施例の吸気温度センサは第1の実施例の吸気温度センサと基本的に同じ構造であるが、以下の改良を加えた。本実施例では筐体に設けられた凹部に回路基板11の一部を露出させ、この部分に吸気温度検出素子23を配置し、回路基板11の筐体内部に温度センサ24を配置した。こうすることで、吸気温度検出素子23の取付けが容易であり、回路基板11に直接配置できるのでチップ部品を使用でき、且つ、配線も容易になるので低コスト化が可能である。
【0035】
なお、吸気温度検出素子23は図13に示すように回路基板11に対して浮かせて実装し、半田25,26で機械的且つ電気的に接続した。また、回路基板11に対して浮かせて吸気温度検出素子23を実装することで吸気温度検出素子23から回路基板11への熱抵抗の増加を図った。この場合、回路基板11の温度が吸気温度検出素子23の取付け部根元の温度になるので、吸気温度検出素子23に回路基板11の温度を温度センサ24で計測することが可能である。このことにより第1の実施例で示した補正処理を行うことが可能なのでより正確に吸気温度を検出できる。なお、筐体に凹部を設けることで第1の実施例に示した効果もある。
【0036】
次に、本発明の第5の実施例である吸気温度センサを図14から図20により説明する。
【0037】
なお、図14は第5の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面、図15は第5の実施例の回路基板11の平面図、図16は切り欠きの第1の変形例を示す回路基板11の平面図、図17は切り欠きの第2の変形例を示す回路基板11の平面図、図18は切り欠きの第3の変形例を示す回路基板11の平面図、図19は切り欠きの第4の変形例を示す回路基板11の平面図、図20は切り欠きの第5の変形例を示す回路基板11の平面図である。
【0038】
第5の実施例の吸気温度センサは第4の実施例の吸気温度センサと基本的に同じ構造であるが、以下の改良を加えた。本実施例では回路基板11と筐体との接着部28の外側、すなわち、吸気温度検出素子23と接着部28との間の回路基板11に切り欠き27を設けて、吸気温度検出素子23を熱的に絶縁した。こうすることで、回路基板11に配置された集積回路10などの電子部品の発熱からの影響を低減することができるので吸気温度検出素子23の温度がより吸気温度に近づくのでより正確に吸気温度を計測できる。また、本実施例でも回路基板11の温度が吸気温度検出素子23の取付け部根元の温度になるので、回路基板11の温度を温度センサ24で計測することが可能である。つまり、吸気温度検出素子23の周辺に温度センサ24を配置することで少なくとも吸気温度検出素子23の取付け部根元の温度に応じた温度を検出できる。このことから、第1の実施例で示した補正処理を行うことで吸気温度検出素子23の出力信号を補正でき、より正確に吸気温度を検出できる。なお、筐体との接着部28から筐体の熱が回路基板11に伝わるので筐体の熱影響を下げるために筐体は熱伝導率の小さい材料にすることが望ましい。
【0039】
次に、切り欠きの第1の変形例をして図16に示すコの字型の切り欠き29にすることでより吸気温度検出素子23の熱絶縁をより高くすることもできる。また、切り欠きの第2の変形例をして図17に示すL字型の切り欠き30,31にすることで吸気温度検出素子23の熱絶縁性を高めると共に温度センサ24への熱の通路を作り吸気温度検出素子23の取付け根元部の温度をより正確に計測できる、さらに、コの字型の切り欠き32を設けることで温度センサ24の熱絶縁性が向上され、回路基板11に配置された集積回路10などの電子部品の発熱からの影響を低減することができる。これにより、吸気温度検出素子23の取付け根元部の温度をより正確に計測でき、第1の実施例で示した補正処理により、より正確に吸気温度を検出できる。
【0040】
また、切り欠きの第3の変形例をして図18に示すL字型の切り欠き33にすることで吸気温度検出素子23の熱絶縁性を高めると共に温度センサ24への熱の通路を作り、且つ、温度センサ24を回路基板11の角に配置することで回路基板11に配置された集積回路10などの電子部品の発熱からの影響を低減することができる。これにより、吸気温度検出素子23の取付け根元部の温度をより正確に計測でき、第1の実施例で示した補正処理により、より正確に吸気温度を検出できる。
【0041】
また、切り欠きの第4の変形例をして図19に示す切り欠き34,35,36にすることで吸気温度検出素子23の熱絶縁性を高めると共に温度センサ24への熱の通路を作り吸気温度検出素子23の取付け根元部の温度をより正確に計測できる。これにより、第1の実施例で示した補正処理により、より正確に吸気温度を検出できる。
【0042】
また、切り欠きの第5の変形例をして図20に示す切り欠き37、すなわち、スリット状の切り欠きを吸気温度検出素子23の周りに複数設けることで吸気温度検出素子23の熱絶縁性を高めると共に切り欠き37を放熱フィンとして機能させ吸気流への放熱抵抗を低減することでより正確に吸気温度を検出することができる。
【0043】
次に、本発明の第6の実施例である吸気温度センサを図21により説明する。なお、図21は第6の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面である。
【0044】
第6の実施例の吸気温度センサは第4の実施例の吸気温度センサと基本的に同じ構造であるが、以下の改良を加えた。本実施例では温度センサ38を集積化した集積回路39を配置し、温度センサ38によって吸気温度検出素子23の取付け根元部の温度を検出した。こうすることで、部品数の低減と信頼性の向上を図ることが可能である。なお、この場合、集積回路39の発熱は低消費電力化を図り、温度センサ38への影響を低減する必要がある。
【0045】
次に、本発明の第7の実施例である吸気温度センサを図22,図23,図24,図25により説明する。なお、図22は第7の実施例の吸気温度センサの図1におけるA−A′の断面、図23は集積回路42の内部ブロック図、図24はサーミスタ抵抗の使用例、図25は固定抵抗45の抵抗値を用いた吸気温度出力の補正方法である。
【0046】
第7の実施例の吸気温度センサは第1の実施例の吸気温度センサと基本的に同じ構造であるが、以下の改良を加えた。本実施例では回路基板11の代わりにリードフレーム43,44を使用し、リードフレーム43,44を使用して吸気温度検出素子40を固定し、リードフレーム43に温度センサ41を集積化した集積回路42を配置した。
【0047】
本実施例では吸気温度検出素子40の取付け部を構成するリードフレーム43上に温度センサ41を配置し、且つリードフレーム43を幅広くすることで、吸気温度検出素子40の取付け根元部の温度をより正確に検出することで第1の実施例で示した補正手段により高精度に吸気温度を計測できるようにした。
【0048】
また、本実施例では吸気温度検出素子40にサーミスタ抵抗を想定し、サーミスタ抵抗に直列に接続される固定抵抗45を集積回路42に集積化した。こうすることで図23中のP点の断線検出を容易にした。
【0049】
図24はサーミスタ抵抗の使用例であるが、図24のP点が断線した場合、吸気温度出力はフローティングとなり電位が不安定であるため断線検出が困難である。これに対して図23ではP点が断線した場合、吸気温度出力の電位は固定抵抗45によって電源電圧に固定され、サーミスタが正常に接続されている時には出得ない電圧を出力するので、このことを検出することでP点の断線を検出することができる。
【0050】
しかし、集積回路42内部に集積化できる抵抗の温度係数は大きく、これを補正する必要がある。本実施例では図23に示す様に集積回路42の温度を温度センサ41で検出し、温度センサ41の出力をAD変換器47でデジタル化して固定抵抗値予測回路48で固定抵抗45の抵抗値を予測する。そして、吸気温度出力をAD変換器46でデジタル化した値を固定抵抗値予測回路48で予測した固定抵抗45の予測値を用いて吸気温度補正回路49で補正する。なお、吸気温度補正回路49は図25で示す演算処理をすることで固定抵抗45の影響を排除する。
【符号の説明】
【0051】
1 コネクタ部
2 センサ固定部
3 吸気管
4,23,40 吸気温度検出素子
5,6 取付け金具
7 副通路
8 吸気温度センサ
9 温度センサ
10,39,42 集積回路
11 回路基板
12 金線
13 流量検出素子
14 応答補償回路
15 加算回路
16 差分回路
17 乗算回路
18 絶対値化回路
19 特性変換回路
20 特性調整回路
21,24,38,41 温度センサ
22,27,29,30,31,32,33,34,35,36,37 切り欠き
25,26 半田
28 接着部
43,44 リードフレーム
45 固定抵抗
46,47 AD変換器
48 固定抵抗値予測回路
49 吸気温度補正回路
50 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気流の一部を取込む開口部を有する副通路と、前記副通路内に設けられた流量検出素子と、前記流量検出素子と電気的に接続された電子回路と、前記電子回路を配置する回路実装板と、を有し、少なくとも前記回路実装板の一部を収納する筐体とを備えた吸気温度センサにおいて、
前記副通路外部に設けられた吸気温度検出素子と、
前記吸気温度検出素子の取付け部周辺の温度を検出する温度センサと、を有し、
前記温度センサの出力および前記流量検出素子の出力に基づいて前記吸気温度検出素子の出力を補正する手段を有することを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気温度センサにおいて、
前記筐体内部の前記回路実装板に前記温度センサを配置したことを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸気温度センサにおいて、
前記筐体外部の前記回路実装板に前記吸気温度検出素子が配置されていることを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の吸気温度センサにおいて、
前記吸気温度検出素子の周辺の回路実装板に切り欠きが設けられていることを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項5】
請求項3,4に記載の吸気温度センサにおいて、
前記筐体の一部に凹部を設け、この凹部に前記回路実装板の一部を露出させたことを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の吸気温度センサにおいて、
前記筐体は、熱伝導率が小さい材料であることを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の吸気温度センサにおいて、
前記温度センサが検出した温度と前記吸気温度検出素子が検出した温度との差分に応じて前記吸気温度検出素子の出力を補正する温度差補正手段を有することを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項8】
請求項7に記載の吸気温度センサにおいて、
前記流量検出素子が検出した流量が所定の流量よりも小さい場合、前記温度差補正手段のゲインを変更する手段を有することを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の吸気温度センサにおいて、
前記吸気温度検出素子の出力を前記流量検出素子が検出した流量信号に応じて応答補償する手段を有することを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の吸気温度センサにおいて、
前記吸気温度検出素子に直列に接続される固定抵抗と、
前記固定抵抗の抵抗値を前記温度センサの値に基づいて補正する固定抵抗補正手段と、
前記固定抵抗補正手段の出力に基づいて前記吸気温度検出素子の出力を補正する手段を有することを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項11】
請求項10に記載の吸気温度センサにおいて、
前記固定抵抗を集積回路内部に配置したことを特徴とする吸気温度センサ。
【請求項12】
請求項1〜11に記載の吸気温度センサを有することを特徴とする空気流量計

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−159314(P2012−159314A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17381(P2011−17381)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】