説明

吸水体

【課題】 傾斜した場合であっても、食品接触面から水分を吸収することができる吸水体を提供する。
【解決手段】 ドリップシート1は、上面シート2と、下面シート3と、これら上下面シート2,3の間に位置する吸水シート4とを含む。上面シート2は、透液可能な複数の上面開孔21が形成された開孔領域22と、非開孔領域23とを含む。非開孔領域23には、上面シート2の上面側から視認可能な表示要素6が形成されている。上面シート2には、凹条部7が形成され、上面シート2の上面側から吸水シート4と対向する面へと凹み、少なくともその一部が上面開孔21に重なるように形成されている。凹条部7は、仮想縦中心線P−Pに沿って形成される第1部分71と、第1部分71に交差する第2および第3部分72,73とを有している。下面シート3には、通気性かつ透液可能な複数の下面開孔31が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体を吸収可能な吸水体に関し、さらに詳細には、刺身を含む鮮魚切り身、肉等の食品をトレーに入れてこれら食品の水分を吸収することができるシート状の吸水体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刺身等を載せる食品トレーにおいて、刺身等の下に敷く吸水体として、ドリップシートが知られている。例えば、特許文献1によれば、ドリップシートは、熱可塑性の上面および下面シートと、これら上下面シートの間に配置された吸収シートとを有し、上下面シートには、複数の開口が形成されている。刺身等から出たドリップは、上面シートまたは下面シートの開口を透過して、吸収シートに吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−265798号公報(JP 2008−2657998 A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなドリップシートでは、開口が上面シートおよび下面シートのほぼ全域に形成されている。このドリップシートが、例えば刺身に添えられたツマの上に載せられて、その上に刺身が載せられたような場合には、ドリップシートは容器の底面に対して傾斜し、刺身から出たドリップは、ドリップシートの上を流れてしまう。したがって、ドリップはドリップシートに吸収されることなく、容器の底面にたまったり、ツマを汚してしまったりする可能性がある。
【0005】
この発明は、傾斜した場合であっても、食品接触面から水分を吸収することができる吸水体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上面シートと、前記上面シートの下面側に積層された吸水シートとを含むシート状の吸水体の改良に関わる。
【0007】
この発明は、前記吸水体において、前記上面シートは、透液可能な複数の上面開孔と、前記吸水シート側へと凹む凹条部とを有することを特徴とする。
【0008】
この発明の実施態様のひとつとして、前記凹条部は、前記上面開孔の少なくとも一部に重なって形成される。凹条部と上面開孔とは、完全に一致して重なる場合のほか、凹条部が上面開孔の一部と重なる場合を含む。
【0009】
他の実施態様のひとつとして、前記凹条部は、前記上面開孔を結ぶ直線に重なって形成される。凹条部と、上面開孔を結ぶ直線とが完全に一致して重なる場合のほか、前記直線から僅かにずれる場合であっても、実質的にこれに重なる場合を含む。
【0010】
他の実施態様のひとつとして、前記凹条部は、互いに交差する方向に延びる部分を有する。
【0011】
他の実施態様のひとつとして、前記凹条部は、前記上面シートから前記吸水シートの厚さ方向へと凹んで形成される。
【0012】
他の実施態様のひとつとして、前記上面開孔が形成される開孔領域と、非開孔領域とを有し、前記非開孔領域には、前記上面シート側から視認可能な表示要素が形成される。
【0013】
他の実施態様のひとつとして、前記上面シートは、不透液性のプラスチックシートによって形成される。
【0014】
他の実施態様のひとつとして、前記吸水シートの下面側に通気性の下面シートをさらに含む。
【0015】
他の実施態様のひとつとして、前記下面シートには、透液可能な複数の下面開孔が形成される。
【0016】
他の実施態様のひとつとして、吸水体は少なくとも一部において植物の葉を模した外形を有し、前記凹条部が葉脈を模した形状を有する。
【発明の効果】
【0017】
この発明は上面シートと、上面シートに積層された吸水シートとを含み、上面シートには、透液可能な複数の上面開孔と、吸水シート側へと向かう凹条部とが形成される。したがって、吸水体が傾斜されたような場合であっても、上面シートの上に載せた食品の水分が凹条部に留まるとともに、上面開孔から吸収可能とすることができる。吸水体が傾斜した場合であっても、食品接触面から水分を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の吸水体の一例であるドリップシートの平面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図1の分解組立図。
【図4】他の実施形態のドリップシートの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の吸水体の一例として、食品トレー等の容器に敷かれ、刺身等の食品から流出する液体を吸収するドリップシートを用いる。図1は、ドリップシート1の平面図、図2は、図1のII−II線断面図、図3は、図1の分解組立図である。
【0020】
ドリップシート1は、縦方向Yおよびこれに直交する横方向Xと、横方向Xの長さ寸法を二等分する仮想縦中心線P−Pとを有するとともに、上面シート2と、下面シート3と、これら上下面シート2,3の間に位置する吸水シート4とを含む。上下面シート2,3および吸水シート4は、ほぼ同形同大にされ、その外形の一部が、大葉等の植物の葉を模した形状をしている。この実施形態では、縦方向Yの図面上方においては植物の一例として大葉の形状を有し、下方においてはほぼ矩形を有している。
【0021】
上面シート2は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂によって形成された、疎水性かつ熱可塑性フィルムを用いることができる。また、上面シート2は、大葉の色彩を模して、緑色に着色されたシートを用いることができる。下面シート3としてはポリエチレン等の合成樹脂を含む疎水性かつ熱可塑性フィルムを用いることができる。吸水シート4は、吸水性のパルプを含み、単位面積当たりの質量が約50g/mとされている。吸水シート4は、ドット、ストライプ、スパイラル、ジグザグ等のパターンに間欠的に塗布されたホットメルト接着剤等の接着手段によって上下面シート2,3に接合されている。
【0022】
上面シート2は、透液可能な複数の上面開孔21が形成された開孔領域22と、非開孔領域23とを含む。開孔領域22と非開孔領域23とは、横方向Xに延びる仮想線24によって区画されている。開孔領域22における上面開孔21の開孔率は約2〜30%、この実施形態では約10%とされており、その直径は約0.2〜5.0mm、この実施形態では約0.9mmとされている。上面開孔21の縦方向Yおよび横方向Xのピッチは、それぞれ約0.5〜20.0mm、この実施形態では約2.5mmとされている。上面開孔21は、針穴加工によって形成することができ、上面シート2のみに形成することもでき、上面シート2と吸水シート4とを積層させてから形成することもできる。なお、上面開孔21は、上面シート2の上面から下面へ向かって開孔面積が狭くなるようにテーパ状に形成されていてもよい。
【0023】
非開孔領域23には、上面シート2の上面側から視認可能な表示要素6が形成されている。表示要素としては、文字、図形等を用いることができ、これを印刷等によって、上面シート2の上面側または吸水シート4と対向する面側に形成することができる。非開孔領域23に表示要素6を形成することによって、表示要素6が上面開孔21の形成によって見え難くなるのを防止することができる。また、上面シート2を複数層のラミネートシートにすることもでき、これら複数層のシートを水密にラミネート加工するとともに、表示要素6をラミネートシートの間に位置させることによって、印刷した表示要素6が上面シート2側または吸水シート4側に滲み出るのを防止することができる。
【0024】
上面シート2および吸水シート4には、凹条部7を形成している。凹条部7は、上面シート2の上面側から吸水シート4の厚さ方向へと凹み、少なくともその一部が上面開孔21に重なるように形成されている。この実施形態において、凹条部7は、横方向Xの長さ寸法を二等分する仮想縦中心線P−Pに沿って形成される第1部分71と、第1部分71に交差する第2および第3部分72,73とを有している。第2および第3部分72,73は、仮想縦中心線P−Pにほぼ対称にされている。また、凹条部7は、複数の上面開孔21を互いに結ぶ直線上に形成されている。このような凹条部7は、大葉の葉脈を模して形成することができる。
【0025】
凹条部7は、上面シート2と吸水シート4とを積層させた状態で、上面シート2側から加熱加圧することで賦形することができる。このような凹条部7は、上面シート2および吸水シート4に形成されるが、下面シート3には賦形されないようにしている。下面シート3は、上面シート2および吸水シート4に凹条部7が形成された後に、吸水シート4に積層してもよいし、吸水シート4を積層させた状態で上面シート2および吸水シート4に凹条部7を形成してもよい。凹条部7は上面シート2から吸水シート4へと断面形状が小さくなるテーパ状に形成されることが好ましい。
【0026】
下面シート3には、通気性かつ透液可能な複数の下面開孔31が形成されている。下面開孔31は、下面シート3の全域に等間隔で形成され、その直径が約0.2〜0.3mm、開孔率は約50〜95%とされている。下面開孔31は、例えば、真空吸引、熱プレス等によって形成することができる。また、下面開孔31は、下面シート3の下面から上面へ向かって開孔面積が狭くなるようにテーパ状に形成されていてもよい。
【0027】
上記のようなドリップシート1において、上面シート2には、上面開孔21を形成しているので、この上面開孔21を介して食品から流出したドリップが吸水シート4に吸収される。また、上面シート2および吸水シート4には、凹条部7を形成しているので、ドリップシート1が刺身のツマの上に載置されて傾斜したような場合には、ドリップは凹条部7で一時留まる。凹条部7の一部は上面開孔21に重なっているので、凹条部7に留まったドリップは、これに重なった上面開孔21に流入し吸水シート4に吸収される。
【0028】
凹条部7は吸水シート4にも形成され、この部分では、他の部分に比べて吸水シート4の吸水性材料の密度が大きくなっている。したがって、他の部分に比べて水分を吸収し易くすることができる。また、吸水シート4に凹条部7を形成することによって、吸水シート4の吸水面積を大きくすることもできる。この実施形態では、凹条部7において複数の上面開孔21が形成されているので、より一層速やかな吸水が可能となる。したがって、ドリップシート1の上面をドリップが流れ落ちるのを防止することができる。ただし、凹条部7は、上面シート2のみに形成されるものであってもよく、すなわち、吸水シート4には凹条部7が形成されない場合を含む。
【0029】
凹条部7を形成することによって、上面シート2にさらに刺身等を載せたような場合には、載せた刺身がドリップシート1から移動するのを防止することができる。特に、ドリップシート1がツマ等によって傾斜した際には、この上に載せた刺身が滑り落ちやすいが、凹条部7を形成することによって、上面シート2の摩擦抵抗を大きくすることができ、このような移動を防止することができる。また、凹条部7にドリップが溜まって一時的に保持され、上面開孔21から吸収されることで、上面シート2の凹条部7以外の部分に水分が溜まり難い。上面シート2の凹条部7以外の部分に水分が溜まった場合には、刺身等が滑りやすくなるが、これを防止することができる。
【0030】
凹条部7は、第1部分71と、これに交差する第2および第3部分72,73とを有しているので、ドリップシート1がどのような向きに傾斜されたとしてもドリップの流れを遮るように凹条部7が配置される。したがって、ドリップがドリップシート1の上面シート2上を流れ、上面開孔21を透過することなく落ちてしまうというのを防止することができる。
【0031】
下面シート3にも下面開孔31を形成することとしたので、下面シート3からも吸水シート4へとドリップ等の水分を吸収することができる。したがって、容器の底面にたまってしまったドリップがあったとしても、これを吸収することができる。また、食品と食品との間にドリップシート1を配置した場合には、上下に位置するそれぞれの食品のドリップを速やかに吸収することができる。
【0032】
下面シート3には凹条部7が形成されないから、ドリップシート1を容器の底面に敷いた際には、下面シート3の全面が容器の底面に接触し、底面に溜まったドリップを速やかに吸収することができる。ただし、下面シート3に凹条部7が形成されないものに限定するものではなく、その上面シート2および吸水シート4ともに、下面シート3にも凹条部7が形成されてもよい。下面シート3にも凹条部7が形成される場合には、下面シート3の下面側に配置された刺身やツマとの位置ずれを防止することができる。
【0033】
下面シート3は必須の構成要素ではなく、これを有しないドリップシート1であってもよい。また、下面シート3として、プラスチックフィルムのほか、繊維不織布を用いることもできる。繊維不織布としては、例えば、スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド繊維不織布を用いることができる。
【0034】
図4は、この実施形態の他の例を示したものである。図示したように、凹条部7は、横方向Xに複数延びるようにしている。凹条部7は、互いに平行に並ぶとともに、横方向Xに間欠的に形成されるようにしているが、これが連続して延びるようにしてもよい。また、縦方向Yに延びるようにしてもよいし、これら縦方向Yおよび横方向Xに交差するように延びていてもよい。このような凹条部7は、上面シート2上を流れる水分を遮るということに対しては、上面開孔21に重なる必要はない。しかし、凹条部7の水分を速やかに吸収するという意味においては、上面開孔21と凹条部7とが重なっていることが好ましい。
【0035】
この発明の実施形態では、凹条部7が上面開孔21に完全に重なる場合について説明しているが、凹条部7は上面開孔21の少なくとも一部に重なればよい。また、凹条部7は、複数の上面開孔21を互いに結ぶ直線上に形成される場合について説明しているが、実質的にこの直線上に形成されればよく、その一部が直線上に重ならない場合、僅かに直線上からずれてしまう場合等を排除するものではない。
【0036】
ドリップシート1の形状は、この実施形態に限定されるものではなく、種々の形状を選択し得る。上面開孔21および下面開孔31の開孔率等は、食品の種類・量等に応じて設計変更可能である。ドリップシート1を構成する各構成部材には、この明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。また、特許請求の範囲および明細書において、用語「第1」および「第2」の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いられている。
【符号の説明】
【0037】
1 ドリップシート(吸水体)
2 上面シート
3 下面シート
4 吸水シート
6 表示要素
7 凹条部
21 上面開孔
22 開孔領域
23 非開孔領域
31 下面開孔
71 第1部分
72 第2部分
73 第3部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面シートと、前記上面シートの下面側に積層された吸水シートとを含むシート状の吸水体において、
前記上面シートは、透液可能な複数の上面開孔と、前記吸水シート側へと凹む凹条部とを有することを特徴とする前記吸水体。
【請求項2】
前記凹条部は、前記上面開孔の少なくとも一部に重なって形成される請求項1記載の吸水体。
【請求項3】
前記凹条部は、前記上面開孔を結ぶ直線に重なって形成される請求項1または2記載の吸水体。
【請求項4】
前記凹条部は、互いに交差する方向に延びる部分を有する請求項1〜3のいずれかに記載の吸水体。
【請求項5】
前記凹条部は、前記上面シートから前記吸水シートの厚さ方向へと凹んで形成される請求項1〜4のいずれかに記載の吸水体。
【請求項6】
前記上面開孔が形成される開孔領域と、非開孔領域とを有し、前記非開孔領域には、前記上面シート側から視認可能な表示要素が形成される請求項1〜5のいずれかに記載の吸水体。
【請求項7】
前記上面シートは、不透液性のプラスチックシートによって形成される請求項1〜6のいずれかに記載の吸水体。
【請求項8】
前記吸水シートの下面側に通気性の下面シートをさらに含む請求項1〜7のいずれかに記載の吸水体。
【請求項9】
前記下面シートには、透液可能な複数の下面開孔が形成される請求項8記載の吸水体。
【請求項10】
少なくとも一部において植物の葉を模した外形を有し、前記凹条部が葉脈を模した形状を有する請求項1〜9のいずれかに記載の吸水体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−51170(P2012−51170A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194235(P2010−194235)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】