説明

吸水剤およびそれを用いた衛生材料

【課題】尿等の液体に対して優れた吸収性能を発揮する粒子状吸水剤及びそれを用いた衛生材料を提供する。
【解決手段】粒子状吸水剤は、水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を主成分として含有し、106μm以上、850μm未満の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、吸水性樹脂の全質量に対して90質量%以上含まれている。
(塩濃度吸収指数)=(一定塩濃度水溶液に対する4.83kPaでの加圧下吸収倍率)/(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式1)
にて、一定塩濃度水溶液がイオン交換水である場合の塩濃度吸収指数である第一塩濃度吸収指数が、0.60以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤に関するものであり、さらに詳しくは、尿等の液体に対して優れた吸収性能を発揮する吸水剤およびそれを用いた衛生材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、紙おむつや生理用ナプキン、いわゆる失禁パットなどの衛生材料には、その構成材として、体液を吸水させることを目的とした吸水性樹脂が幅広く使用されている。吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、およびカチオン性モノマーの架橋重合体等が知られている。
【0003】
このような吸水性樹脂に対しては、体液などの水性液体に接した際に優れた吸液量や吸水速度、ゲル強度、ゲル通液性、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引力などに優れた物性を備えることが要求されている。さらに、近年は、非常に粒度分布が狭い吸水性樹脂粉末や、吸収倍率が高く水可溶分が少ない吸水性樹脂粉末が求められ、高い加圧下吸収倍率や加圧下通液性などを備えていることが必須に求められるようになっている。
【0004】
例えば、これら吸水性樹脂の諸物性を規定した多くのパラメータ特許や測定法が下記特許文献1〜24に開示されている。
【0005】
すなわち、特許文献1「米国再発行特許32649号」には、ゲル強度,可溶分,吸水倍率に優れた吸水性樹脂が提案されている。特許文献2「英国特許2267094B号」には、無加圧通液性,吸水速度,吸水倍率に優れた吸水性樹脂が提案されている。特定の粒度分布を規定した技術として、特許文献3「米国特許5051259号」、特許文献4「米国特許5419956号」、特許文献5「米国特許6087002号」、特許文献6「欧州特許629441号」などに記載された技術がある。
【0006】
また、各種荷重での加圧下吸水倍率に優れた吸水性樹脂やその測定法も多く提案され、加圧吸水倍率単独ないし他の物性との組み合わせた吸水性樹脂が、特許文献7「欧州特許0707603号」、特許文献8「欧州特許0712659号」、特許文献9「欧州特許1029886号」、特許文献10「米国特許5462972号」、特許文献11「米国特許5453323号」、特許文献12「米国特許5797893号」、特許文献13「米国特許6127454号」、特許文献14「米国特許6184433号」、特許文献15「米国特許6297335号」、特許文献16「米国再発行特許Re37021号」などで提案されている。
【0007】
また、物性低下の耐衝撃性に優れた吸水性樹脂が、特許文献17「米国特許5140076号」や、特許文献18「米国特許6414214B1号」などに提案されている。粉塵量を規定した吸水性樹脂が、特許文献19「米国特許5994440号」などに提案され、着色の少ない吸水性樹脂が、特許文献20「米国特許6444744号」などに提案されている。耐尿性については、L−アスコルビン酸水溶液などへのゲル耐久性や吸水能に優れた吸水性樹脂が、特許文献21「米国特許6194531号」、特許文献22「欧州特許0940148号」で提案され、通気性に優れた吸水性樹脂が、特許文献23「欧州特許1153656号」で提案されている。残存モノマーの少ない吸水性樹脂は、特許文献24「欧州特許0605215号」に提案されている。
【0008】
さらに特定の物性を持った吸水性樹脂が、特定物性や特定構成ないし特定ポリマー濃度の吸水性物品(おむつ)に好適であることは、特許文献25「米国特許5147343号」、特許文献26「米国特許5149335号」、特許文献27「欧州特許532002号」、特許文献28「米国特許5601452号」、特許文献29「米国特許5562646号」、特許文献30「米国特許5669894号」、特許文献31「米国特許6150582号」、特許文献32「国際特許WO02/053198号」、特許文献33「米国特許5843059号」、特許文献34「米国特許公開2001/4951号」などで提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国再発行特許32649号
【特許文献2】英国特許2267094B号
【特許文献3】米国特許5051259号
【特許文献4】米国特許5419956号
【特許文献5】米国特許6087002号
【特許文献6】欧州特許629441号
【特許文献7】欧州特許0707603号
【特許文献8】欧州特許0712659号
【特許文献9】欧州特許1029886号
【特許文献10】米国特許5462972号
【特許文献11】米国特許5453323号
【特許文献12】米国特許5797893号
【特許文献13】米国特許6127454号
【特許文献14】米国特許6184433号
【特許文献15】米国特許6297335号
【特許文献16】米国再発行特許Re37021号
【特許文献17】米国特許5140076号
【特許文献18】米国特許6414214B1号
【特許文献19】米国特許5994440号
【特許文献20】米国特許6444744号
【特許文献21】米国特許6194531号
【特許文献22】欧州特許0940148号
【特許文献23】欧州特許1153656号
【特許文献24】欧州特許0605215号
【特許文献25】米国特許5147343号
【特許文献26】米国特許5149335号
【特許文献27】欧州特許532002号
【特許文献28】米国特許5601452号
【特許文献29】米国特許5562646号
【特許文献30】米国特許5669894号
【特許文献31】米国特許6150582号
【特許文献32】国際特許WO02/053198号
【特許文献33】米国特許5843059号
【特許文献34】米国特許公開2001/4951号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の多くの物性に着目されて開発されてきた吸水性樹脂は、上記の物性をターゲットないしスペックしたものも製造され使用されてきてはいるが、これら特定物性(性能)をコントロールしても、いまだ紙おむつなどの実使用に際して十分な性能を発揮しているとは言い難いという問題がある。特に、吸水性樹脂の使用量を増加させ、代わりに繊維材料を減らした濃度(高い吸水性樹脂の濃度)での衛生材料では実使用に十分な性能を発揮しているとは言えない。
【0011】
本発明の目的は、従来、数多く物性(吸水速度、無加圧下(無荷重下)吸水倍率、加圧下(荷重下)吸水倍率、ゲル強度、耐久性、可溶分、粒度など)に着目した吸水性樹脂が開発され使用されてきたにもかかわらず、これらの制御ないし設計によって製造しても、実使用に対して十分な性能を発揮し得ないという、従来の吸水性樹脂の問題点を解決し、実使用に好適な吸水性樹脂を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、従来の数多くの物性の中でも何ら着目されていなかった、塩濃度による吸水倍率の差、それも特定の加圧下における加圧下吸水倍率の変化がおむつ等での実使用に大きな影響を与えることを見出すとともに、塩濃度の変化によらず一定の吸収性(加圧下吸収性)と通液性とを与える吸水剤が、従来のモデル以上の優れた吸水剤であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の粒子状吸水剤は、上記課題を解決するために、水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を主成分として含有する粒子状吸水剤であって、106μm以上、850μm未満の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、吸水性樹脂の全質量に対して90〜100質量%含まれており、下記(式1)
(塩濃度吸収指数)=(一定塩濃度水溶液に対する4.83kPaでの加圧下吸収倍率)/(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式1)
(式中、上記加圧下吸収倍率は、4.83kPaの加圧下にて、一定塩濃度水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率であり、上記無荷重下吸収倍率は、無加圧下にて、一定塩濃度水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率である)にて、上記一定塩濃度水溶液がイオン交換水である場合の塩濃度吸収指数である第一塩濃度吸収指数が、0.60以上であるものである。
【0014】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記課題を解決するために、水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を主成分として含有する粒子状吸水剤であって、106μm以上、850μm未満の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、吸水性樹脂の全質量に対して90質量%以上含まれており、4.83kPaの加圧下にて、イオン交換水に60分間浸漬した場合の吸収倍率である加圧下吸収倍率が、50g/g以上であるものである。
【0015】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、上記(式1)中の一定塩濃度水溶液が0.10質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数である第二塩濃度吸収指数が、0.80以上であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、上記(式1)中の一定塩濃度水溶液が0.30質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数である第三塩濃度吸収指数、上記(式1)中の一定塩濃度水溶液が0.50質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数である第四塩濃度吸収指数、上記(式1)中の一定塩濃度水溶液が0.70質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数である第五塩濃度吸収指数、上記(式1)中の一定塩濃度水溶液が0.90質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数である第六塩濃度吸収指数、のうちの少なくとも1つが、0.90以上であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、上記第一塩濃度吸収指数、第二塩濃度吸収指数、第三塩濃度吸収指数、第四塩濃度吸収指数、第五塩濃度吸収指数、第六塩濃度吸収指数の平均値である平均塩濃度吸収指数指数が0.90以上である、または、上記平均塩濃度吸収指数指数の標準偏差が、0〜0.100の範囲内にあることが好ましい。
【0018】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、下記(式2)
(耐塩性指数)=(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率)/(イオン交換水に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式2)
(式中、無荷重下吸収倍率は、一定塩濃度水溶液またはイオン交換水に、60分間浸漬した場合の吸収倍率である)にて、上記一定塩濃度が0.10質量%塩化ナトリム水溶液である場合の耐塩性指数である第一耐塩性指数が、0.40以上であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、無加圧下にて、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率である無荷重下吸収倍率が、10〜27g/gであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、4.83kPaの加圧下にて、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率である加圧下吸収倍率が、10〜27g/gであるが好ましい。
【0021】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、水不溶性微粒子をさらに含むことが好ましい。
【0022】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、2.07kPaの圧力下にて、イオン交換水に対するゲル通液指数が15以上であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、2.07kPaの圧力下にて、0.30質量%塩化ナトリウム水溶液に対するゲル通液指数が50以上であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、4.83kPaの圧力下にて、0.70質量%塩化ナトリウム水溶液に対するゲル通液指数が15以上であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の粒子状吸水剤において、上記水溶性不飽和単量体は、アクリル酸および/またはその塩を含んでなり、上記粒子状の吸水性樹脂は、表面改質処理が施されていることが好ましい。
【0026】
また、本発明の衛生材料は、上記課題を解決するために、体液を吸収するための衛生材料であって、上記の粒子状吸水剤のいずれかを含むものである。
【0027】
また、本発明の衛生材料は、上記の衛生材料において、上記体液を吸収する吸収層を備え、上記吸収層は、下記(式3)
(コア濃度比)=(粒子状吸水剤の質量)/((粒子状吸水剤の質量)+(繊維材料の質量)) ・・(式3)
で規定されるコア濃度が、0.3以上、1.0以下であるとよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る粒子状吸水剤は、以上のように、水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、850μm未満で106μm以上の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、上記粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂の全質量に対して、90質量%以上、100質量%以下含まれており、上記(式1)で規定される、一定塩濃度水溶液がイオン交換水である場合の塩濃度吸収指数である第一塩濃度吸収指数が、0.60以上であるものである。
【0029】
それゆえ、上記粒子状吸水剤は、塩濃度の変化によらず水性溶液の一定の吸収が可能であるという効果を奏する。また、上記粒子状吸水剤は、塩濃度変化や圧力変化によらず、優れたゲル通液指数を有する。そのため、衛生材料等の吸収物品に上記粒子状吸水剤を使用した場合に、吸収物品全体に液を十分に行き渡らせ、吸液量を増大させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ゲル通液指数の測定に用いる測定装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明にかかる粒子状吸水剤(吸水剤)について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜実施し得る。
【0032】
吸水性樹脂の諸物性の評価に際し、尿のモデルとして、生理食塩水(0.9質量(質量)%塩化ナトリウム水溶液)ないし各種人工尿を用いることが提案されている。しかしながら、人尿の尿組成は、上記した各特許文献においても、まちまちであるのが実情である。この事実からも理解できることであるが、実際の尿の組成は一定ではなく、生活環境、食生活、年齢、季節、さらに同じ人でも時間や体調によって刻々と大きく変化しているのが実情である。
【0033】
そこで、本発明者らは、従来の吸水性樹脂の評価では、モデルとして一定の吸水液(生理食塩水、人工尿など)を使用して評価して物性を決定していたという問題点、すなわち、尿の組成の変化に対応できないため、従来の吸水性樹脂は実使用で十分な性能を発揮できなかったことを見出し、本発明では、尿の塩濃度の差に注目した。
【0034】
すなわち、成人尿の場合、イオン強度としては0.8〜1.0質量%の塩化ナトリウム水溶液とほぼ同等であるのに対し、乳幼児の場合、イオン強度としては0.3〜0.7質量%の塩化ナトリウム水溶液とほぼ同等であり、特に新生児尿の場合は、イオン強度としては0.2〜0.4質量%の塩化ナトリウム水溶液とほぼ同等であり、従来の、生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)を用いた吸水性樹脂の物性の評価では、実際の尿の塩濃度に対応していなかったため、必ずしも生理食塩水による吸水性樹脂の評価結果が実使用に対応していないことに問題があることを見出した。
【0035】
また、一点から排尿された尿は、オムツ中で拡散するにつれて、吸水性樹脂でイオン交換されて塩濃度が徐々に変化(低下)しており、そのオムツ中での尿の拡散に伴う尿の塩濃度変化がオムツ中の各部で変化するために、実使用での十分な物性を与えない原因であることを見出した。
【0036】
そこで、本発明では、水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、850μm未満で106μm以上の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、上記粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂の全質量に対して、90質量%以上、100質量%以下含まれており、後述する(式1)で規定される、一定塩濃度水溶液がイオン交換水である場合の塩濃度吸収指数である第一塩濃度吸収指数が、0.60以上である粒子状吸水剤が、塩濃度の変化によらず一定の吸収が可能なため、従来以上の優れた粒子状吸水剤であることを見出した。
【0037】
また、本発明の粒子状吸水剤は、塩濃度変化や圧力変化によらず、優れたゲル通液指数を有する。そのため、吸収体に本発明の吸水剤を使用した場合に、吸収体全体に液を十分に行き渡らせ、吸液量を増大させることができる。それゆえ、液の漏れを防止するという効果が著しく向上することを見出した。
【0038】
以下、本発明の粒子状吸水剤について、詳細に説明する。
【0039】
〔水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂〕
本発明における吸水剤とは、吸水性樹脂を主成分として、必要により若干の添加剤や水等の吸水性樹脂以外の成分を含んでいてもよく、吸水剤中で通常50〜100質量%、好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは85〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%が吸水性樹脂の樹脂純分よりなり、その形状は後述の粒子状である。また、上記吸水剤は、特定物性パラメータを有する特定物性以上のものである。
【0040】
本発明で吸水性樹脂とは、水膨潤性かつ実質水不溶性の架橋重合体で、アニオン性、ノニオン性、またはカチオン性の実質水不溶性ヒドロゲルを形成する従来公知の水膨潤性架橋重合体のことである。これら吸水性樹脂は、重合体の内部架橋以外に表面がさらに架橋ないし処理されていてもよく、それらを総称して本発明では吸水性樹脂と呼ぶが、必要により、吸水性樹脂と、表面がさらに架橋された吸水性樹脂と、呼び分ける場合がある。
【0041】
本発明で水膨潤性とは、イオン交換水中において5g/g以上の水を吸収することが必須であり、好ましくは50〜1000g/gという多量の水を吸収することを指す。また、本発明で実質水不溶性とは、吸水性樹脂中の水可溶性成分(水溶性高分子)が0〜50質量(重量)%、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0.01〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%であり、このうち、特に好ましくは0.1〜5質量%であり、最も好ましくは0.1〜3質量%であることを指す(なお、上記吸収倍率や水可溶性成分の測定法は、後述の実施例で規定する)。
【0042】
上記吸水性樹脂は、1種または2種以上の混合物であり、中でも酸基含有の吸水性樹脂、さらには、カルボン酸またはその塩であるカルボキシル基含有の吸水性樹脂の1種またはその混合物であることが好ましい。より具体的には、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分とする水溶性不飽和単量体を重合することによって得られる架橋重合体、すなわち、必要によりグラフト成分を含むポリアクリル酸塩架橋重合体が主成分であることが好ましい。
【0043】
上記吸水性樹脂は、その構成単位で、アクリル酸0〜50モル%およびアクリル酸塩100〜50モル%(但し、両者の合計量は100モル%以下とする)の範囲にあるものが好ましく、アクリル酸10〜40モル%およびアクリル酸塩90〜60モル%(但し、両者の合計量は100モル%以下とする)の範囲にあるものがより好ましい。なお、このアクリル酸とアクリル酸塩との合計量に対するアクリル酸塩のモル比を中和率と呼ぶ。
【0044】
上記吸水性樹脂の構成単位としてのアクリル酸塩を形成するために、吸水性樹脂に含まれるアクリル酸の中和を行うが、該アクリル酸の中和は、単量体の重合前に単量体の状態で行っても良く、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良く、これらを併用してもよい。吸水性樹脂に構成単位として含まれる塩としては、(ポリ)アクリル酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、およびアミン塩等を例示することができる。
【0045】
また、本発明で水溶性不飽和単量体として用いられるアクリル酸は、重合促進や低着色の点から、p−メトキシフェノール(別称、ヒドロキノンモノメチルエーテル)を含有することが好ましい。該p−メトキシフェノールの含有量は、アクリル酸に対して、200質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10〜160質量ppmであり、さらに好ましくは20〜140質量ppmであり、よりさらに好ましくは30〜120質量ppmであり、このうち、特に好ましくは40〜100質量ppmであり、50〜90質量ppmであることが最も好ましい。また、アクリル酸中のプロトアネモニンおよび/またはフルフラールの含有量は、アクリル酸に対して、0〜20質量ppmであることが好ましく、0〜10質量ppmであることがより好ましく、このうち、0〜5質量ppmであることが特に好ましく、0〜1質量ppmであることが最も好ましい。
【0046】
本発明における吸水性樹脂を得るための水溶性不飽和単量体は、実質的にアクリル酸(塩)のみでもよく、上記アクリル酸(塩)以外の他の水溶性不飽和単量体でもよく、また、該他の水溶性不飽和単量体とアクリル酸(塩)とを併用してもよい。アクリル酸(塩)以外の他の水溶性不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミド等のノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびこれらの四級塩等のカチオン性不飽和単量体等が挙げられる。これらの不飽和単量体は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。
【0047】
本発明においては、吸水性樹脂の良好な物性を得るために、主成分として、アクリル酸およびその塩を用い、さらに必要に応じて、通常0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%で、上記他の水溶性不飽和単量体を併用すればよい。
【0048】
本発明における吸水性樹脂を得るために行う、上述の各単量体の重合に際しては、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、吸水性樹脂の性能や重合の制御の容易さ、さらに膨潤ゲルの吸収特性の観点から、上記単量体を水溶液とすることによる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、上記の各単量体を水溶液とする場合の該水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体の濃度は、水溶液の温度や単量体の種類によって決まり、特に限定されるものではないが、10〜70質量%の範囲内が好ましく、20〜60質量%の範囲内がさらに好ましい。また、上記水溶液を用いて重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0049】
上記水溶液重合の方法としては、双腕型ニーダー中で単量体水溶液を得られる含水ゲル状架橋重合体を砕きながら重合する、あるいは、所定の容器中や駆動するベルト上に単量体水溶液を供給し、重合して得られたゲルをミートチョッパー等で粉砕する方法等が挙げられる。
【0050】
上記の重合を開始させる際には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤を用いることができる。さらに、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用し、両者を組み合わせたレドックス系開始剤としてもよい。上記の還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、アミン類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤の使用量は残存モノマーや吸水特性などの物性面から通常0.001〜2モル%(対単量体)、好ましくは0.01〜0.1モル%である。
【0051】
また、反応系に放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより重合反応の開始を行ってもよいし、さらに、上記重合開始剤を併用してもよい。なお、上記重合反応における反応温度は、特に限定されるものではないが、15〜130℃の範囲内が好ましく、20〜120℃の範囲内がより好ましい。また、反応時間や重合圧力も特に限定されるものではなく、単量体や重合開始剤の種類、反応温度等に応じて適宜設定すればよい。
【0052】
本発明における吸水性樹脂は、その内部に架橋構造を有する(いわゆる内部架橋)。該内部架橋は、得られる吸水性樹脂が水不溶性となるように行われればその手法は特に問わず、架橋剤を使用しないで形成させたもの(自己架橋型)であってもよいが、一分子中に2個以上の重合性不飽和基や2個以上の反応性基を有する架橋剤(内部架橋剤)を共重合または反応させて形成させたものであることがさらに好ましい。
【0053】
これら内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0054】
これら内部架橋剤は単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、これら内部架橋剤は、反応系に一括して添加してもよく、分割して添加してもよい。1種または2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、最終的に得られる吸水剤の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に必ず用いることが好ましい。
【0055】
これら内部架橋剤の使用量は、吸水性樹脂や吸水剤の良好な物性を得る観点から、前記水溶性不飽和単量体(内部架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.001〜2モル%であり、より好ましくは0.005〜1モル%であり、さらに好ましくは0.005〜0.7モル%であり、よりさらに好ましくは0.01〜0.5モル%であり、このうち、特に好ましくは0.01〜0.2モル%であり、最も好ましくは0.03〜0.15モル%の範囲内である。
【0056】
上記内部架橋剤を用いて架橋構造を吸水性樹脂内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記水溶性不飽和単量体の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後に反応系に添加するようにすればよい。
【0057】
なお、上記重合に際しては、反応系に、澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子0〜50質量%(対水溶性不飽和単量体の質量)や、その他0〜10質量%(対水溶性不飽和単量体の質量)の、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒等の各種発泡剤;各種界面活性剤;キレート剤;次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤などを添加してもよい。
【0058】
上記重合工程において得られた含水ゲル状架橋重合体は、重合と同時または別途に乾燥され、その乾燥は、通常60〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、さらに好ましくは120〜200℃の温度範囲で行われる。乾燥時間は、重合体の表面積、含水率、乾燥機の種類などに依存し、通常1分〜3時間、好ましくは10分〜2時間の範囲で、目的とする含水率になるように選択される。本発明における吸水性樹脂の含水率(吸水性樹脂中に含まれる水分量で規定/吸水性樹脂1gを180℃で3時間乾燥した場合の減量を測定し、該減量を、乾燥前の吸水性樹脂の質量に対する比率で表したもの)は特に限定されないが、得られる吸水性樹脂製品の物性面から室温でも流動性を示す粉末であり、より好ましくは含水率が0.2〜30質量%、さらに好ましくは0.3〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%の粉末状態である(なお、30質量%以下などの少量の水を含む場合も本発明では吸水性樹脂と総称する)。
【0059】
本発明にかかる製造方法には、重合工程により得られた含水ゲル状架橋重合体を上記乾燥工程において乾燥した後、粉砕機で粉砕して粒子状の吸水性樹脂にする粉砕工程が含まれる。このようにして得られた吸水性樹脂の粒子形状は、球状、破砕状、不定形状等特に限定されるものではないが、粉砕工程を経て得られた不定形破砕状のものが好ましく使用できる。
【0060】
本発明における粒子状吸水剤ないし吸水性樹脂は、微粉末(好ましくは106μm未満、より好ましくは150μm未満)の割合が少ない方が好ましく、具体的には10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは2質量%未満、特に1質量%未満である。また、本発明における吸水性樹脂は、粗大粒子(好ましくは850μm篩以上、さらに好ましくは500μm篩以上)の割合が少ない方が好ましい。よって、本発明の吸水性樹脂は、850〜106μm(好ましくは850〜150μm)の粒子状の吸水性樹脂が90〜100質量%、好ましくは97〜100質量%、さらに好ましくは98〜100質量%、特に好ましくは99〜100質量%の範囲とされる。
【0061】
かくして得られた粒子状の吸水性樹脂は、通常さらに表面改質されて本発明の粒子状吸水剤とされる。本発明での表面改質とは、粒子の表面ないしその近傍(0.001μm〜数10μmの表層)をさらに架橋処理するか、無機粉末など不活性添加剤で被覆処理することを指す。
【0062】
吸水性樹脂の物性を考慮すると、表面改質剤(表面架橋剤や、水不溶性微粒子など不活性添加剤)の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部の範囲、好ましくは0.01〜8質量部の範囲、より好ましくは0.05〜5質量部、最も好ましくは0.1〜2質量部の範囲である。
【0063】
表面架橋は、吸水性樹脂の表面近傍の架橋密度を粒子内部より高めて、吸水性樹脂の諸物性の改良を行う操作であり、1種又は2種以上の種々の表面架橋剤(上記した内部架橋剤とは別の第二の架橋剤となる)を吸水性樹脂に加えて表面のみを架橋する。
【0064】
このような表面架橋剤としては、脱水反応性の架橋剤が用いられ、具体的には、例えば、吸水性樹脂がカルボキシル基を含有する場合は、多価アルコールなどのヒドロキシル基含有の架橋剤;多価アミンなどのアミノ基含有の架橋剤;アルキレンカーボネートや、モノオキサゾリジノン化合物、ジオキサゾリジノン化合物またはポリオキサゾリジノン化合物、3−メチル−3−オキセタンメタノール等のオキセタン化合物などの環状架橋剤であって、その環状架橋剤の開環反応に伴ってヒドロキシル基やアミノ基を生成し、該ヒドロキシル基やアミノ基が架橋反応を行う環状架橋剤;などを挙げることができる。
【0065】
脱水反応性架橋剤をより一層具体的に述べると、例えば、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの多価アルコール化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン2−オンのアルキレンカーボネート化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール等のオキセタン化合物ならびに多価オキセタン化合物などである。これらの中でも本発明の効果を最大限に発揮するため多価アルコール、アルキレンカーボネート、オキサゾリジノン化合物、(多価)オキセタン化合物から選ばれる脱水反応性架橋剤の1種以上が好ましく、多価アルコールを必須に用いることが特に好ましい。
【0066】
表面架橋剤としては、上記脱水反応性の架橋剤のほかに、エチレングリコールジグリシジルエーテル、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]などの多価アジリジン化合物;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、クロム、マンガン、チタン、ジルコニウムなどの多価金属の非脱水反応性架橋剤;などが例示される。
【0067】
吸水性樹脂に上記の表面架橋剤を混合する際には、水および/または親水性有機溶媒などの溶媒を用いて、混合してもよい。
【0068】
溶媒としての水の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜8質量部であり、さらに好ましくは1〜5質量部の範囲である。
【0069】
上記親水性有機溶媒としては、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;アセトン等のケトン類;ジオキサン、アルコキシ(ポリ)エチレングリコール、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ε−カプロラクタムのアミド類;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類;などが挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して0〜10質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0〜5質量部の範囲であり、さらに好ましくは0〜3質量部の範囲である。
【0070】
表面架橋剤の混合方法は特に限定されるものではない。したがって、上記した表面架橋剤と、水や親水性有機溶媒などの溶媒とを、吸水性樹脂に対して別々に混合してもよく、一括で混合してもよく、数回に分けて混合してもよいが、好ましくは、上記表面架橋剤および上記溶媒を全て、予め混合した後に、この混合物を吸水性樹脂に添加して、水溶液化しておくことがより好ましい。
【0071】
上記表面架橋剤の混合に際し、本発明の粒子状吸水剤が奏する効果を妨げない範囲で、無機粉末、水不溶性微粒子粉末や界面活性剤、親水性ないし疎水性高分子化合物を共存させてもよい。
【0072】
上記種々の混合方法の中では、表面架橋剤と、必要に応じて水および/または親水性有機溶媒とを、吸水性樹脂に滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは0.01〜300μmが好ましく、0.1〜200μmがより好ましい。この際に噴霧される溶液の温度は、混合性や安定性の点から、0℃〜沸点が好ましく、より好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは10〜30℃である。混合前の吸水性樹脂粉末の温度は、混合性の点から、好ましくは0〜80℃、より好ましくは40〜70℃である。
【0073】
前記混合に用いられる好適な混合装置は、均一な混合を確実にするため大きな混合力を生み出せる装置であればよい。このような混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型炉ロータリーディスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機などを挙げることができる。
【0074】
この混合工程において、加熱処理を行う場合、処理時間は1〜180分が好ましく、3〜120分がより好ましく、5〜100分が特に好ましい。加熱処理温度(熱媒温度ないし材料温度で規定)は、100〜250℃の範囲が好ましく、140〜220℃の範囲がより好ましく、150〜230℃の範囲がさらに好ましく、160〜220℃の範囲が特に好ましい。
【0075】
加熱処理は、通常の乾燥機または加熱炉を用いて行うことができ、溝型混合乾燥機、ロータリー乾燥機、ディスク乾燥機、流動層乾燥機、気流型乾燥機、および赤外線乾燥機が例示される。
【0076】
本発明の吸水性樹脂の製造方法で行う表面改質では、表面架橋に加えて、あるいは、表面架橋は起こさずに、実質的には吸水性樹脂に反応しないという意味での不活性な界面活性剤、不活性な消臭剤や不活性な無機微粒子粉末などの添加剤を添加してもよい。このとき用いられる界面活性剤や不活性無機微粒子粉末としては、好ましくは、後述の無機ないし有機の微粒子や、脂肪酸(例えば、長鎖脂肪酸ないし塩)などが使用され、その際には、表面架橋も同時または別途に行うことが好ましい。
【0077】
本発明において、吸水性樹脂の表面改質に用いられる添加剤としてのカチオン性高分子化合物は、衛生材料への固定性などを向上でき、好ましくは質量平均分子量が2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは5,000〜500,000であり、最も好ましくは10,000〜500,000である。吸水性樹脂の表面改質に用いられる添加剤としての有機化合物としては、脂肪酸ないしその塩、好ましくは長鎖脂肪酸ないしその塩である。
【0078】
カチオン性高分子化合物の混合は、単独あるいは溶液(水溶液)で添加され、好ましくは、カチオン性高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアミドアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物、ポリアミジン、ポリ(N−ビニルホルムアルデヒド)の部分加水分解物またはこれらの塩などが例示される。
【0079】
上記添加剤として水不溶性微粒子を用いると、吸水性樹脂の通液性や吸湿時の耐ブロッキング性などを改善することができる。水不溶性微粒子としては、平均値にて、好ましくは0.0001〜10μmであり、さらには0.001〜1μmであり、特に0.001〜0.1μm(粒子径は例えばコールターカウンター法で測定)の無機または有機の水不溶性微粒子が用いられる。具体的には酸化珪素(商品名、Aerosil、日本アエロジル社製)、酸化チタン、酸化アルミ、などが用いられる。混合は、粉末混合(Dry−Blend)やスラリー混合で行えばよい。
【0080】
これらの添加剤の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.001〜5質量部であり、さらに好ましくは0.01〜2質量部である。
【0081】
〔粒子状吸水剤の製造方法〕
本発明での粒子状吸水剤の製造法の好ましい一例は、下記1〜3などである。
【0082】
(製法1)
上記のように重合した、好ましくはメトキシフェノール存在下にてプロトアネモネンが低減された水溶性不飽和単量体を用いて重合したポリアクリル酸(塩)系架橋重合体(吸水性樹脂)を、前記した特定の粒子径に制御するとともに、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無荷重下吸収倍率(60分値)を15〜27g/gとなるように制御する。その後、得られる吸水剤の吸水倍率が、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無荷重下吸収倍率(60分値)にて、通常10〜27g/g、好ましくは12〜27g/g、より好ましくは15〜27g/g、さらに好ましくは17〜25g/g、特に好ましくは18〜22g/gの範囲となるように、上記吸水性樹脂の表面改質、好ましくは表面架橋を行って、本発明の粒子状吸水剤を製造する。
【0083】
(製法2)
上記のように重合、好ましくはメトキシフェノール存在下にてプロトアネモネンが低減された水溶性不飽和を用いて重合したポリアクリル酸(塩)系架橋重合体(吸水性樹脂)を、前記した特定の粒子径に制御するとともに、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無荷重下吸収倍率(60分値)を、通常10〜27g/g、好ましくは12〜27g/g、より好ましくは15〜27g/g、さらに好ましくは17〜25g/g、特に好ましくは18〜22g/gに制御する。その後、該粒子系および無荷重下吸収倍率(60分値)が制御された上記吸水性樹脂を、前記した範囲で無機微粉末によって表面被覆して、本発明の粒子状吸水剤を製造する。
【0084】
(製法3)
上記のように重合、好ましくはメトキシフェノール存在下にてプロトアネモネンが低減された水溶性不飽和を用いて重合したポリアクリル酸(塩)系架橋重合体(吸水性樹脂)を、前記した特定の粒子径に制御するとともに、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無荷重下吸収倍率(60分値)を17〜25g/g、好ましくは18〜22g/gに制御する。その後、該粒子系および無荷重下吸収倍率(60分値)が制御された上記吸水性樹脂を、脂肪酸ないしその塩で表面被覆して、本発明の粒子状吸水剤を製造する。
【0085】
さらに、上記の製法2,3によって得られた吸水性樹脂が表面被覆されてなる粒子状吸水剤の吸水倍率が、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無荷重下吸収倍率(60分値)にて、通常10〜27g/g、好ましくは12〜27g/g、より好ましくは15〜27g/g、さらに好ましくは17〜25g/g、特に好ましくは18〜22g/gの範囲となるように、架橋されることが好ましい。
【0086】
ここで、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無荷重下吸収倍率(60分値)とは、無加圧下にて、粒子状吸水剤によって全て吸収されてしまうことのない、大過剰の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に、粒子状吸水剤(吸水性樹脂)を60分間浸漬した場合の吸収倍率をいう。
【0087】
なお、従来、吸水剤(吸水性樹脂)の吸収倍率が高倍率であることは当然であり、市販品では通常30g/g以上であり、好ましくは35g/g以上、さらには40g/g以上のものが主流であったが、本発明では、あえて無荷重下吸収倍率を従来の吸水性樹脂より低倍率の狭い範囲に制御することで、本発明の新規な粒子状吸水剤を与えることが見出された。
【0088】
さらに、従来と同様に、表面処理後の吸水剤の、0.90質量%塩化ナトリウム
水溶液に対する加圧下吸収倍率(60分値)が、15〜27g/g、好ましくは17〜25g/gであるように制御されることが好ましい。ここで、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する加圧下吸収倍率(60分値)とは、4.83kPaの加圧下にて、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に、粒子状吸水剤(吸水性樹脂)を60分間浸漬(接触)した場合の吸収倍率をいう。
【0089】
粒子状吸水剤の吸水倍率の制御は、表面処理剤の量や反応条件などを適宜制御することで達成されるので、好ましくは表面処理前の吸水性樹脂の無加圧下での0.9質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無荷重下吸水倍率を40〜15g/g、さらには35〜16g/g、30〜17g/gの範囲となるように架橋密度を調整して重合し、かつ、表面処理前の上記吸水性樹脂の粒子径を上記範囲に制御すればよい。
【0090】
〔本発明の粒子状吸水剤〕
上記のようにして得られた本発明の粒子状吸水剤は、4.83kPaという高加圧下での加圧下吸水倍率(Absorbency against pressure /略称AAP)にて、被吸収液の塩濃度の影響を殆ど受けないという優れた吸水剤である。すなわち、実用において、尿の塩濃度にかかわらず一定の吸水性能を示すため、使用時の塩濃度のふれやオムツ中での塩濃度の変化に拘らず、一定の吸水を示すといった常に高い物性を備えている。
【0091】
本発明の粒子状吸水剤は、水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、850μm未満で106μm以上(好ましくは150μm以上)の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、上記粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂の全質量に対して、90〜100質量%であり、より好ましくは850μm未満で150μm以上の粒子状の吸水性樹脂(以下、粒子と記載することがある)が吸水性樹脂全体の95質量%以上、さらには98質量%以上とされる。また、粒子状の吸水性樹脂の質量平均粒子径は、好ましくは200〜700μm、さらに好ましくは300〜600μmであり、このうち特に好ましくは、350〜550μmであり、最も好ましくは400〜500μmである。
【0092】
150μm未満の粒子が10質量%を超える場合、吸水時に血液や尿等の体液の、吸収体への拡散性が阻害され、また、吸収体としての使用時に空気との接触面積が増加して、粒子状吸水剤が可溶化しやすくなるので好ましくない。850μmを超える粒子が10質量%を超える場合は、吸水剤の吸水速度が遅くなるので好ましくない。
【0093】
さらに、上記の特定の粒子径に加えて、本発明の粒子状吸水剤は塩濃度にかかわず一定の加圧下吸収倍率を示す。加圧下吸収倍率は、種々の塩濃度(0〜0.90質量%の塩化ナトリウム水溶液)の吸収溶液で、荷重4.83kPaが付与された場合の所定時間後の吸収倍率として評価される。本発明の粒子状吸水剤は、この特定の加圧下吸収倍率が、実使用での尿などの体液の濃度の変化に最も対応していることが見出された。
【0094】
すなわち、本発明の吸水剤は、上記の特定の粒子径に加えて、さらに必須に、下記(式1)
(塩濃度吸収指数)=(一定塩濃度水溶液に対する4.83kPaでの加圧下吸収倍率)/(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式1)
(式中、上記加圧下吸収倍率は、4.83kPaの加圧下にて、一定塩濃度水溶液に60分間浸漬(接触)した場合の吸収倍率であり、上記無荷重下吸収倍率は、無加圧下にて、大過剰の一定塩濃度水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率である)で規定される塩濃度吸収指数にて、一定塩濃度水溶液がイオン交換水である場合の塩濃度吸収指数である第一塩濃度吸収指数が0.60以上である吸水剤である。
【0095】
上記第一塩濃度吸収指数は、好ましくは0.70以上、さらに好ましくは0.80以上、より好ましくは0.90以上であり、特に好ましくは0.95以上である。第一塩濃度吸収指数が0.60未満である場合、尿の塩濃度の変化やオムツ中での尿拡散にともなう塩濃度の変化(低下)にともなって、吸水性樹脂(吸水塩濃度による加圧下吸収倍率の変化(フレ)が大きく、実使用での十分な性能を発揮できず好ましくない。第一塩濃度吸収指数の上限が高すぎても、同様の現象が見られるので、上限は、通常1.20以下、さらには1.10以下であることが好ましい(なお、上記の指数0.60は0.600と同義語であり、以下、塩濃度吸収指数ないし耐塩性指数で小数点2桁目よりも小さい桁は省略する)。
【0096】
さらに、好ましくは、本発明の粒子状吸水剤は、上記の特定粒子径と第一塩濃度吸収指数とに加えて下記の物性をさらに示すことで、より尿の塩濃度の変化やオムツ中での尿拡散にともなう塩濃度の変化(低下)に対しても、安定的な尿の吸収を示す。
【0097】
すなわち、本発明の粒子状吸水剤は、好ましくは、第二塩濃度吸収指数(上記(式1)で該一定塩濃度水溶液が0.1質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数)が0.80以上である。第二塩濃度吸収指数は、より好ましくは0.90以上であり、特に好ましくは0.95以上であり、その上限は通常1.20以下、さらには1.10以下である。
【0098】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の特定の粒子径と第一塩濃度吸収指数とに加えて、さらに好ましくは、第三塩濃度吸収指数(上記(式1)で一定塩濃度水溶液が0.3質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数)、第四塩濃度吸収指数(上記(式1)で一定塩濃度水溶液が0.5質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数)、第五塩濃度吸収指数(上記(式1)で一定塩濃度水溶液が0.7質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数)、第六塩濃度吸収指数(上記(式1)で該一定塩濃度水溶液が0.9質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数)のうちの少なくとも1つが、0.90以上である、吸水剤である。これら第三〜第六塩濃度吸収指数にて、その値は特に好ましくは0.95以上であり、その上限は通常1.20以下、さらには1.10以下である。
【0099】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の特定の粒子径と第一塩濃度吸収指数とに加えて、さらに好ましくは、第一塩濃度吸収指数から第六塩濃度吸収指数までの平均値である平均塩濃度吸収指数指数が0.90以上であり、その値は特に好ましくは0.95以上であり、その上限は通常1.20以下、さらには1.10以下である。さらに、上記の平均塩濃度吸収指数の標準偏差は、好ましくは0〜0.100の範囲内であり、より好ましくは0〜0.50の範囲内である。
【0100】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の特定の粒子径と第一塩濃度吸収指数とに加えて、さらに好ましくは、下記(式2)
(耐塩性指数)=(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率)/(イオン交換水に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式2)
(式中、無荷重下吸収倍率は、大過剰の一定塩濃度水溶液またはイオン交換水に、60分間浸漬した場合の吸収倍率である)にて、一定塩濃度が0.10質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の耐塩性指数である第一耐塩性指数が、0.40以上である。上記第一耐塩性指数の下限は、好ましくは0.50以上であり、その上限は通常1.20以下、さらには1.10以下の範囲である。
【0101】
本発明の粒子状吸水剤の無荷重下吸収倍率は、前述の範囲(15〜27g/g)に調整される。また、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無荷重下吸収倍率(60分値)が、通常10〜27g/g、好ましくは12〜27g/g、より好ましくは15〜27g/g、さらに好ましくは17〜25g/g、特に好ましくは18〜22g/gである。
【0102】
さらに本発明の粒子状吸水剤は、ゲル通液指数(Gel Permeability Index/略称GPI、単位:10―7×cm×s×g―1、以下では単位を省略する)が10以上であることが好ましい。本発明者は、従来の吸水剤の問題を鋭意検討した結果、従来の吸水剤では前記ゲル通液指数(GPI)が塩濃度(生活環境や吸収体中での液の移動とイオン交換に伴う塩濃度変化)や圧力(体重や姿勢による荷重変化)の上昇で大きく低下し、膨潤後、尿等の吸収液に対する通液性に非常に大きな影響を与えることが見出された。しかし、本発明の粒子状吸水剤では、塩濃度の変化や圧力の変化(有無)に関わらず、ゲル間の通液性が安定的に良好であり、よって、本発明の粒子状吸水剤を用いた場合、吸収体に液を十分に行き渡らせ(液拡散面積の向上)、さらに、吸収体の吸液量を増大させ、液の漏れを防止することができる。GPIは、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上である。なお、GPIについては実施例で後述する。
【0103】
本発明の粒子状吸水剤は、GPIが2.07kPaでイオン交換水に対して10以上、好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上を示し、従来の吸水剤のGPI値である0〜1に比べて格段に高いGPI値を示し、加圧力の増加に対する低下も少ない。また、2.07kPaでの0.3〜0.9質量%での塩化ナトリウム水溶液に対しても、GPIが10以上、好ましくは20以上であり、より好ましくは50以上であり、さらに好ましくは100以上であり、特に好ましくは150以上であり、従来のGPI値である0〜数十に比べて格段に高いGPI値を示し、上記塩濃度の増加に対する低下も少ない。さらに、4.83kPaでの0.7質量%の塩化ナトリウム水溶液に対して、GPIが10以上、好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上を示し、従来の吸水剤のGPI値である0〜1に比べて格段に高いGPI値を示し、上記塩濃度の増加に対する低下も少ない。特に、2.07kPaでの0.3〜0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液に対するGPI値は変化が少なく安定し、かつ150以上と高い値を示す。このように、本発明の粒子状吸水剤は圧力や塩濃度の変化に関わらず、安定的に高いGPIを示し、吸収体として実使用した場合も優れた吸収性能(高い拡散面積と高い吸収量)を発揮する。
【0104】
さらに、本発明の粒子状吸水剤は、好ましくはイオン交換水に対する4.83kPaでの加圧下吸収倍率(60分値)が50g/g以上、より好ましくは60g/g以上、さらに好ましくは70g/g以上という優れた吸水能を示す。なお、加圧下吸収倍率の上限値は特に限定されず高い値であることが好ましいが、製造コスト等の経済性とのバランスから、上限値は200g/gであることが好ましく、150g/gであることがより好ましい。
【0105】
すなわち、本発明は、以下の新規な粒子状吸水剤をも提供する。水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、850μm未満で106μm以上の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、上記粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂の全質量に対して、90質量%以上であり、4.83kPaの加圧下にて、イオン交換水に60分間浸漬した場合の吸収倍率である加圧下吸収倍率が、50g/g以上である粒子状吸水剤を提供する。かかる粒子状吸水剤は、イオン交換水に対して従来になく高い吸水能を有し、低い塩濃度で特に優れた吸水能を示す。かかる粒子状吸水剤は、好ましくは、前述の塩濃度吸収指数、耐塩性指数、平均塩濃度吸収指数およびその標準偏差、ゲル通液指数を示す。
【0106】
〔他の添加剤〕
本発明においては、表面処理としての表面架橋とは別に、必要に応じてさらにその他の添加剤(以下、他の添加剤と記載する)を加えてもよい。すなわち、上記他の添加剤としては、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールやポリエチレンイミンなどの親水性高分子、パラフィンなどの疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を添加する等、吸水性樹脂に種々の機能を付与するための添加工程、好ましくは表面への添加工程を含んでいてもよい。
【0107】
これらの添加剤の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して通常0〜30質量部、好ましくは0〜10質量部の範囲、より好ましくは0〜1質量部の範囲である。
【0108】
〔粒子状吸水剤の用途〕
本発明の粒子状吸水剤は、塩濃度にかかわらず安定的に吸収を示す。そのため、農園芸保水剤、工業用保水剤、吸湿剤、除湿剤、建材などで広く用いられるが、特に好ましくは、紙おむつ、生理用ナプキンなどに代表される、糞、尿ないし血液の吸収用衛生材料として用いられる。
【0109】
すなわち、本発明の粒子状吸水剤は各種物性にバランスよく優れ安定しているため、吸収用衛生材料としては、コア濃度比(下記(式3))で規定される粒子状吸水剤の濃度(吸水性樹脂および繊維基材の合計に対する吸水性樹脂の重量比)が高濃度、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは40〜100質量%の範囲、さらに好ましくは50〜95質量%で使用可能である。
【0110】
(コア濃度比)=(粒子状吸水剤の質量)/((粒子状吸水剤の質量)+(繊維材料の質量)) ・・(式3)
また、衛生材料中の吸収体(吸収コア/吸水剤を複合化して成型したものを指す)の構造は特に制限はなく、例えば、シート状に成形した親水性繊維材料の間に吸水剤を配する、いわゆるサンドイッチ構造の吸収体や、親水性繊維材料と吸水剤を混合したものを成形した、いわゆるブレンド構造の吸収体が挙げられる。
【0111】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例および比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例等に限定されるものではない。また、特に記載のない場合、「部」は質量部(重量部)を意味する。
【0113】
なお、特に記載のない場合、測定は25℃±1℃の気温および液温で行い、部屋の雰囲気は常圧、50%未満の相対湿度で行った。
【0114】
さらに、後述する吸水剤又は吸水性樹脂の上記のパラメータ測定に際しては、通常そのままの吸水剤または吸水性樹脂を用いて測定を行った。ただし、吸水剤または吸水性樹脂が過度に吸湿している場合、すなわち、例えば、おむつ等の吸収物品から採取した吸水剤または吸水性樹脂については、例えば60℃で恒量になるまで減圧乾燥する等によって、適宜乾燥し、含水率を7±1質量%以下、好ましくは5±1質量%以下に調整して測定を行った。
【0115】
<吸収溶液の調製>
本発明では、吸水性樹脂ないし吸水剤(粒子状吸水剤)の吸収特性を評価するために、下記濃度を有する塩濃度の異なるイオン交換水ないし塩化ナトリウム水溶液を使用した。
【0116】
吸収溶液S0:イオン交換水
吸収溶液S1:0.10質量(重量)%塩化ナトリウム水溶液
吸収溶液S2:0.20質量(重量)%塩化ナトリウム水溶液
吸収溶液S3:0.30質量(重量)%塩化ナトリウム水溶液
吸収溶液S4:0.40質量(重量)%塩化ナトリウム水溶液
吸収溶液S5:0.50質量(重量)%塩化ナトリウム水溶液
吸収溶液S6:0.70質量(重量)%塩化ナトリウム水溶液
吸収溶液S7:0.90質量(重量)%塩化ナトリウム水溶液
<吸収倍率(無加圧下で60分の吸収倍率(GV,Gel Volume))>
吸水性樹脂(または吸水剤)0.20gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、大過剰(100g以上)の前記S0〜S7の吸収溶液中に浸漬した。そして、60分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の重量W2(g)を測定した。
【0117】
なお、上記袋の重量W2(g)が15(g)を超えるといった、吸水性樹脂(または吸水剤)の膨潤倍率が高い場合には、上記不織布製の袋に投入する吸水性樹脂(または吸水剤)の投入量を0.20g以下となるように適宜調整した。すなわち、前記吸収溶液S0〜S3を用いる場合には、上記袋への吸水性樹脂(または吸水剤)の投入量を0.01〜0.05gとし、前記吸収溶液S4・S5を用いる場合には、上記袋への吸水性樹脂(または吸水剤)の投入量を0.05〜0.15gとし、前記吸収溶液S6・S7を用いる場合には、上記袋への吸水性樹脂(または吸水剤)の投入量を0.10〜0.20gとして、上記袋の重量W2(g)が5〜15(g)となるように調整した。
【0118】
また、同様の操作を吸水性樹脂(吸水剤)を用いないで行い、そのときの重量W1(g)を測定した。そして、これら重量W1、W2から、下記(式4)に従って吸収倍率(g/g)を算出した。
【0119】
吸収倍率(g/g)=(重量W2(g)−重量W1(g))/吸水性樹脂(または吸水剤)の重量(g) ・・(式4)
<加圧下吸収倍率(AAP)>
内径60mmのプラスチック支持円筒の底に、ステンレス製400メッシュ標準篩(目開き38μm)を融着させ、該篩上に吸水性樹脂ないし吸水剤0.9000gを均一に散布した。該吸水性樹脂ないし吸水剤に対して4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるように調整された、外径が60mmよりわずかに小さく、支持円筒に隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストンと荷重とをこの順に、吸水性樹脂ないし吸水剤上に載置し、この測定一式の質量Wa(g)を測定した。直径150mmのぺトリ皿の内側に、直径90mmのガラスフィルター(株式会社相互理化学硝子製作所製、細孔直径100〜120μm)を置き、前記吸収溶液をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。
【0120】
その上に、直径90mmのろ紙1枚(ADVANTAEC 東洋株式会社、品名:定量ろ紙 Qualitative Filter Papers(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を載せ、ろ紙表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0121】
上記測定装置一式を、前記湿ったろ紙上に載せ、接触した液を荷重下で吸収させた。1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その質量Wb(g)測定した。そしてWa、Wbから、下記(式5)に従って、加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0122】
加圧下吸収倍率(g/g)=(Wb(g)−Wa(g))/吸水性樹脂ないし吸水剤の質量(0.9000)g) ・・(式5)
<塩濃度吸収指数>
本発明の塩濃度吸収指数は、前記した手法で求めた各吸収溶液(S0、S1〜S7)の加圧下吸収倍率と、無荷重下吸収倍率とに基づき、下式
(塩濃度吸収指数)=(一定塩濃度水溶液に対する4.83kPaでの加圧下吸収倍率)/(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式1)
に従って算出した。なお、上記(式1)中、加圧下吸収倍率は、4.83kPaの加圧下にて、一定塩濃度水溶液に60分間浸漬(接触)した場合の吸収倍率であり、上記無荷重下吸収倍率は、無加圧下にて、大過剰の一定塩濃度水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率である。
【0123】
ここで、第一塩濃度吸収指数は、上記(式1)にて、一定塩濃度水溶液がイオン交換水である場合の塩濃度吸収指数である。以下、同様に、第二塩濃度吸収指数は、(式1)にて、一定塩濃度水溶液が0.10質量%塩化ナトリウム水溶液である場合、第三塩濃度吸収指数は、(式1)にて、一定塩濃度水溶液が0.30質量%塩化ナトリウム水溶液である場合、第四塩濃度吸収指数は、(式1)にて、一定塩濃度水溶液が0.50質量%塩化ナトリウム水溶液である場合、第五塩濃度吸収指数は、(式1)にて、一定塩濃度水溶液が0.70質量%塩化ナトリウム水溶液である場合、第六塩濃度吸収指数は、(式1)にて、一定塩濃度水溶液が0.90質量%塩化ナトリウム水溶液である場合、の塩濃度吸収指数である。
【0124】
<耐塩性指数>
前記した手法による無荷重下での吸収倍率の測定結果をもとに、下記(式2)
(耐塩性指数)=(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率)/(イオン交換水に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式2)
(式中、無荷重下吸収倍率は、大過剰の一定塩濃度水溶液またはイオン交換水に、60分間浸漬した場合の吸収倍率である)に従って、耐塩性指数を求めた。ここで、第一耐塩性指数とは、上記(式2)にて、一定塩濃度が0.10質量%塩化ナトリム水溶液である場合の耐塩性指数である。
【0125】
<重量(質量)平均粒子径>
吸水性樹脂ないし吸水剤を、850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmなどのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率を対数確率紙にプロットした。これにより、重量平均粒子径(D50)を読み取った。
【0126】
篩い分けは、吸水性樹脂粉末ないし吸水剤10.00gを、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmなどのJIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm)に仕込み、ロータップ型のふるい振盪機(株式会社飯田製作所製ES−65型ふるい振盪機)により10分間分級した。なお、重量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報などにあるように、上記ふるい振盪機で10分間分級した場合に、粒子全体の50重量%が分級される際に使用された、標準ふるいの粒子径のことである。
【0127】
<水可溶分成分量(可溶分量)>
250mL容量の蓋付きプラスチック容器に、0.900質量%塩化ナトリウム水溶液184.3gを測り取り、該水溶液中に吸水性樹脂ないし吸水剤1.00gを加えて、全長40mm×直径8mmの大きさの撹拌子(例えば、株式会社相互理化学硝子製の撹拌子A)を用いて渦の深みが約2cmになるように(例えば、250〜350rpm)、マグネチックスターラーによって16時間攪拌することにより吸水性樹脂ないし吸水剤中の可溶分を抽出した。この抽出液を、濾紙1枚(ADVANTAEC 東洋株式会社、品名:定量ろ紙 Qualitative Filter Papers(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り、測定溶液とした。
【0128】
次いで、吸水性樹脂ないし吸水剤が添加されていない生理食塩水を、まず、0.1NのNaOH水溶液を用いて、pH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して、空滴定量([bNaOH]mL、[bHCl]mL)を得た。
【0129】
上記と同様の滴定操作を、上記の測定溶液についても行うことにより、滴定量([NaOH]mL、[HCl]mL)を求めた。
【0130】
その後、上記空滴定量、および、測定溶液の滴定量に基づいて、吸水性樹脂ないし吸水剤中の可溶分量を算出した。すなわち、例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂ないし吸水剤の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂ないし吸水剤中の可溶分量を下記(式6.1)により算出することができる。
【0131】
可溶分(重量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0 ・・(式6.1)
また、未知量の成分からなる吸水性樹脂ないし吸水剤を用いる場合には、上記の滴定から、下記(式6.2)に基づいて求めた中和率を用いて、モノマーの平均分子量を算出し、吸水性樹脂ないし吸水剤中の可溶分量を上記(式6.1)によって算出する。
【0132】
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100 ・・(式6.2)
<吸収物品の性能評価(キューピー人形テスト)>
性能評価用の吸収物品は、下記の方法により作成した。すなわち、まず、後述の実施例および比較例で得られた吸水性樹脂(吸水剤)50重量部と、木材粉砕パルプ50重量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上に、バッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、120mm×400mmの大きさのウェブに成形した。さらに、このウェブを圧力2kg/cm(196.14kPa)で5秒間プレスすることにより、坪量が約0.047g/cmの吸収体を得た。
【0133】
続いて、不透液性のポリプロピレンからなり、いわゆるレッグギャザーを有するバックシート(液不透過性シート)、上記の吸収体、および、透液性のポリプロピレンからなるトップシート(液透過性シート)を、両面テープを用いてこの順に互いに貼着すると共に、この貼着物に2つのいわゆるテープファスナーを取り付けることにより、吸収物品(紙オムツ)を得た。
【0134】
上記の吸収物品を、いわゆるキューピー人形(Kewpie Doll、体長55cm、重量5kg)に装着し、該キューピー人形をうつ伏せ状態にした後、吸収物品とキューピー人形との間にチューブを差込み、人体にて排尿を行う位置に相当する位置に、前記S0〜S7から選ばれるいずれかの吸収溶液を37℃に加温した後、1回当たり50mLとして、20分間隔で注入した。そして、注入した吸収溶液が吸収物品に吸収されなくなって外部に漏れ出した時点で、上記の注入動作を終了し、このときまでに注入した吸収溶液の量を測定した。
【0135】
上記S0〜S7の吸収溶液のそれぞれについて、上記の測定を4回繰り返し、得られた4つの測定値の平均値を求め、この平均値を、上記S0〜S7の吸収溶液に対する吸収溶液の吸収量(以下、QP吸収量(g))として、それぞれ算出した。そして、キューピー人形テストでの上記QP吸収量が多い程、吸収物品の性能が良好であると評価した。
【0136】
さらに、上記吸収溶液の注入後、吸収物品の四隅を粘着テープで固定し、吸収物品の上記トップシートだけを切り出して除去し、液注入側から、使用後の吸収体が観察できるような状態にした。続いて、液注入側から見て、吸収体中で吸収に使用された吸収体部分の寸法を測定し、拡散率(%)を求めた。該拡散率(%)は、吸収体中に使用された部分の面積を、吸収体の全体の面積で除することにより算出した。
【0137】
上記したように、QP吸収量の算出のために、吸収溶液の量の測定を4回繰り返し行っているので、該測定毎に上記の拡散率(%)を求め、得られた4つの拡散率(%)の平均値を、上記S0〜S7の吸収溶液に対するQP拡散率(%)として、それぞれ算出した。そして、QP拡散率(%)が高い程、吸収物品の性能が良好であると評価した。
【0138】
<ゲル通液指数(Gel Permeability Index/GPI)>
国際特許WO9522356(日本国公表特許公報「特表平9−509591号公報」に対応)に記載の生理食塩水流れ誘導性試験装置を使用し、膨潤溶液および通液溶液として、上記したイオン交換水および塩化ナトリウム水溶液S0〜S7を使用して、ゲル通液指数(GPI)を算出した。
【0139】
すなわち、図1に示すように、GPI測定用の測定装置は、通液溶液33を収容するタンク31と、吸水性樹脂または吸水剤を膨潤させてなるゲル層44に対する通液を行うセル41と、ゲルを通過した通液溶液を捕集する捕集容器48と、捕集された通液溶液の重量を測定する上皿天秤49とを備えている。
【0140】
上記タンク31には、ガラス管32が挿入されており、該ガラス管32の下端は、セル41内に供給された通液溶液が、ゲル層44の底部から5cm上の高さに維持されるように、配置した。また、上記タンク31中の通液溶液33は、コック35を備えたL字管34を通じて、セル41へ供給される。
【0141】
上記セル41は、吸水性樹脂または吸水剤を膨潤して得られたゲル層44に通液溶液を通過させるための容器である。該セル41は、内径が6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されている。また、上記セル41には、ゲル層44表面に押し当てられるピストン46が設けられている。該ピストン46は、その下部には、通液溶液が通過するのに十分な穴47が設けられ、底部には、吸水性樹脂または吸水剤、あるいは、その膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてある。なお、上記セル41は、該セル41を乗せるための台の上に置かれ、該セルと接する台の面は、通液溶液の透過を妨げないステンレス製の金網43となっている。
【0142】
上記セル41が配置される上記金網43の下には、通過した通液溶液を補集する捕集容器48が配置されており、該補集容器48は上皿天秤49の上に設置されている。上記捕集容器48に捕集された通液溶液の重量は、上皿天秤49で測定される。
【0143】
上記の測定装置を用いて、GPIを測定する場合には、以下のように行う。すなわち、セル41内にて均一の高さとなるように入れた吸水性樹脂または吸水剤(0.900g)を、膨潤溶液中、所定の加圧下(0.3psi(2.07kPa)または0.7psi(4.83kPa))で60分間膨潤させ、該膨潤によって吸水性樹脂または吸水剤がゲル化してなるゲル層44の高さを記録した。続いて、上記膨潤時の圧力と同じ加圧下にて、一定の静水圧でタンク31から通液溶液を供給して、上記ゲル層44中を通液させる。なお、使用する通液溶液は、膨潤時に使用した膨潤溶液と同じもの(イオン交換水または同じ濃度の塩化ナトリウム水溶液)を使用した。例えば、膨潤時にS0溶液を使用した場合は、通液溶液にS0溶液を使用した。
【0144】
次に、コンピューターと天秤を用い、時間の関数として20秒間隔で、ゲル層44(図1)を通過する通液溶液の量(g)を10分間記録する。膨潤してなるゲル層44(主に、ゲルの粒子間)を通過する通液溶液の流速F(t)は、所定時間内にゲル層44を通過した通液溶液の重量である増加重量(g)を、上記所定時間である増加時間(s)で除したものであり、単位はg/sである。
【0145】
ゲル通液指数(GPI)は、一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をtとし、tと通液溶液の量を記録した10分間との間に得たデータ(流速F(t))だけを使用して、下記(式7)に基づいて、算出する。なお、(式7)中のF(t=0)の値、つまりゲル層44を通る最初の流速F(t=0)は、上記流速F(t)対時間t(tと上記10分間との間の時間)のプロットを、最小2乗法によって外挿して得られるt=0での値を用いる。
【0146】
GPI=(F(t=0)×L)/(ρ×A×ΔP)
=(F(t=0)×L)/139506 ・・(式7)
ここで、GPI値の単位は、10−7×cm×s×g−1であり、
:ゲル層の高さ(cm)
ρ:NaCl溶液の密度(g/cm
A:セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm
を表す。
【0147】
<参考例1>
プロトアネモネンおよびフルフラールがND(non-Detactable/1ppm未満)で、且つ、p−メトキシフェノール50ppm(対アクリル酸の重量)を含有するアクリル酸を、苛性ソーダで中和して得られた、71.3モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液4500g(単量体濃度39重量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)14.6gを溶解し、反応液(1)とした。
【0148】
次に、この反応液(1)を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。続いて、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、脱気した上記反応液(1)を供給し、該反応液(1)を30℃に保ちながら、窒素ガス置換した。その後、窒素ガス置換した反応液(1)を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.46gおよびL−アスコルビン酸0.10gを水溶液で添加したところ、約1分後に重合が開始された。そして、30℃〜90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に、含水ゲル状架橋重合体(1)を得た。
【0149】
得られた含水ゲル状架橋重合体(1)は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体(1)を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。得られた乾燥重合体(1)を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級および調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(a)を得た。
【0150】
<参考例2>
プロトアネモネンおよびフルフラールがNDで、且つ、p−メトキシフェノール50ppm(対アクリル酸の重量)を含有するアクリル酸を、苛性ソーダで中和して得られた、60.0モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5200g(単量体濃度39重量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)11.7gを溶解し、反応液(2)とした。
【0151】
次に、この反応液(2)を上記参考例1と同様に脱気した後、参考例1で説明したステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、30℃に保ちながら、窒素ガス置換した。その後、窒素ガス置換した反応液(2)を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.88gおよびL−アスコルビン酸0.10gを水溶液で添加したところ、約1分後に重合が開始された。そして、30℃〜90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に、含水ゲル状架橋重合体(2)(約5mmに細分化)を得、次いで参考例1と同様に乾燥した。
【0152】
得られた乾燥重合体(2)を振動ミルで粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級・調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(b)を得た。
【0153】
<参考例3>
プロトアネモネンおよびフルフラールがNDで、且つ、p−メトキシフェノール50ppm(対アクリル酸の重量)を含有するアクリル酸を、苛性ソーダで中和して得られた、75.0モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5650g(単量体濃度37重量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)58.5gを溶解し、反応液(3)とした。
【0154】
次に、この反応液(3)を上記参考例1,2と同様に脱気した後、参考例1,2で説明したステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、30℃に保ちながら、窒素ガス置換した。その後、窒素ガス置換した反応液(3)を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.88gおよびL−アスコルビン酸0.10gを水溶液で添加したところ、約1分後に重合が開始された。そして、30℃〜90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状架橋重合体(3)(約5mmに細分化)を得、次いで参考例1,2と同様に乾燥した。
【0155】
得られた乾燥重合体(3)を振動ミルで粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級・調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(c)を得た。
【0156】
<参考例4>
プロトアネモネンおよびフルフラールがNDで、且つ、p−メトキシフェノール50ppm(対アクリル酸の重量)を含有するアクリル酸を、苛性ソーダで中和して得られた、75.0モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5330g(単量体濃度33重量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.4gを溶解し、反応液(4)とした。
【0157】
次に、この反応液(4)を参考例1〜3と同様に脱気した後、参考例1〜3で説明したステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、30℃に保ちながら、窒素ガス置換した。その後、窒素ガス置換した反応液(4)を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.88gおよびL−アスコルビン酸0.10gを水溶液で添加したところ、約1分後に重合が開始された。そして、30℃〜90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状架橋重合体(4)(約5mmに細分化)を得、次いで参考例1〜3と同様に乾燥した。
【0158】
得られた乾燥重合体(4)を振動ミルで粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級・調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(d)を得た。
【0159】
<参考例5>
プロトアネモネンおよびフルフラールがNDで、且つ、p−メトキシフェノール50ppm(対アクリル酸の重量)を含有するアクリル酸を、苛性ソーダで中和して得られた、60.0モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5650g(単量体濃度37重量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)63.0gを溶解し、反応液(5)とした。
【0160】
次に、この反応液(5)を上記参考例1〜4と同様に脱気した後、参考例1〜4で説明したステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、30℃に保ちながら、窒素ガス置換した。その後、窒素ガス置換した反応液(3)を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.88gおよびL−アスコルビン酸0.10gを水溶液で添加したところ、約1分後に重合が開始された。そして、30℃〜90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状架橋重合体(5)(約5mmに細分化)を得、次いで参考例1〜4と同様に乾燥した。
【0161】
得られた乾燥重合体(5)を振動ミルで粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級・調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(e)を得た。
【0162】
<参考例6>
反応液(5)を得るために用いたポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)を、88.2gとする以外は、参考例5と同様の操作を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(f)を得た。
【0163】
<実施例1>
参考例1で得られた吸水性樹脂(a)100部に、プロピレングリコール0.5部と、1,4−ブタンジオール0.3部と、水3部とからなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を220℃で90分間加熱処理することにより、表面処理された吸水性樹脂よりなる吸水剤(1)を得た。
【0164】
<実施例2>
吸水性樹脂(a)を用いる代わりに、参考例2で得られた吸水性樹脂(b)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行い、表面処理された吸水性樹脂よりなる吸水剤(2)を得た。
【0165】
<実施例3>
参考例3で得られた吸水性樹脂(c)100部に対して、親水性二酸化珪素(商品名アエロジル200;日本アエロジル株式会社製)0.3部をレディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に投入し、330rpmで15秒間攪拌することにより、表面処理された吸水性樹脂よりなる吸水剤(3)を得た。
【0166】
<実施例4>
親水性二酸化珪素の代わりに、ステアリン酸カルシウムを使用する以外は、実施例3と同様の操作を行い、表面処理された吸水性樹脂よりなる吸水剤(4)を得た。
【0167】
<実施例5>
参考例5で得られた吸水性樹脂(e)100部に、プロピレングリコール0.5部と、1,4−ブタンジオール0.3部と、水3部とからなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を220℃で40分間加熱処理することにより、表面処理された吸水性樹脂よりなる吸水剤(5)を得た。
【0168】
<実施例6>
吸水性樹脂(e)を用いる代わりに、参考例6で得られた吸水性樹脂(f)を使用する以外は、実施例5と同様の操作を行い、表面処理された吸水性樹脂よりなる吸水剤(6)を得た。
【0169】
<比較例1>
参考例1で得られた吸水性樹脂(a)100部に、プロピレングリコール0.5部と、1,4−ブタンジオール0.3部と、水3部とからなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を210℃で40分間加熱処理することにより、表面処理された吸水性樹脂よりなる比較吸水剤(1)を得た。
【0170】
<比較例2>
参考例4で得られた吸水性樹脂(d)100部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02部と、1,4−ブタンジオール0.3部と、プロピレングリコール0.4部と水2部とを混合した。上記混合物を195℃で50分加熱処理することにより、表面処理された吸水性樹脂よりなる比較吸水剤(2)を得た。
【0171】
<比較例3>
210℃で40分加熱処理する以外は、比較例2と同様の操作を行い、表面処理された吸水性樹脂よりなる比較吸水剤(3)を得た。
【0172】
<比較例4>
参考例3で得られた吸水性樹脂(c)を、表面架橋剤を混合せずに220℃で90分間加熱処理することにより、比較吸水剤(4)を得た。
【0173】
<結果>
吸水性樹脂(a)〜(f)の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液の無荷重下吸収倍率、可溶分量(重量(wt)%)、および粒度(重量(wt)%)を、表1に示す。
【0174】
また、表面処理された吸水性樹脂よりなる吸水剤(1)〜(6)、比較吸水剤(1)〜(4)、および比較として吸水性樹脂(c)の前記吸収溶液S0〜S7に対する無荷重下吸水倍率を表2・3に、加圧下吸収倍率(AAP)、塩濃度吸収指数、塩濃度吸収指数の平均値および標準偏差を表4〜7に示す。
【0175】
また、吸水剤(1)(2)および比較吸水剤(1)(2)(3)を用いた吸収物品の性能評価(QP吸収量)結果を表8に示す。吸収溶液S6(0.7質量(重量)%塩化ナトリウム水溶液)を使用した場合の、吸水剤(1)と比較吸水剤(3)の圧力(0.3psi(2.07kPa)および0.7psi(4.83kPa))でのゲル通液指数を表9に示す。吸水剤(1)および比較吸水剤(3)の吸収溶液S0、S3、S6、S7を使用した場合の圧力0.3psi(2.07kPa)におけるゲル通液指数を表10に示す。吸水剤(1)および比較吸水剤(1)(3)を用いた吸収物品の性能評価(QP拡散率)結果を表11に示す。
【0176】
さらに、表面処理された吸水性樹脂よりなる吸水剤(1)〜(6)、比較吸水剤(1)〜(4)、および比較として吸水性樹脂(c)の耐塩性指数を表12・13に示す。
【0177】
【表1】

【0178】
【表2】

【0179】
【表3】

【0180】
【表4】

【0181】
【表5】

【0182】
【表6】

【0183】
【表7】

【0184】
【表8】

【0185】
【表9】

【0186】
【表10】

【0187】
【表11】

【0188】
【表12】

【0189】
【表13】

【0190】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明の粒子状吸水剤は、使用条件にかかわらず高性能を示すため、農園芸保水剤、工業用保水剤、吸湿剤、除湿剤、建材などで広く用いられる。このうち、特に好ましくは、紙おむつ、生理用ナプキンなどに代表される、糞、尿ないし血液の吸収用衛生材料用いられる。
【符号の説明】
【0192】
31 タンク
32 ガラス管
33 通液溶液
34 L字管
35 コック
41 セル
42 ステンレス製金網
43 金網
44 ゲル層
45 ガラスフィルター
46 ピストン
47 穴
48 捕集容器
49 上皿天秤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を含有する粒子状吸水剤であって、
106μm以上、850μm未満の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、吸水性樹脂の全質量に対して90質量%以上含まれており、下記(式1)
(塩濃度吸収指数)=(一定塩濃度水溶液に対する4.83kPaでの加圧下吸収倍率)/(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式1)
(式中、上記加圧下吸収倍率は、4.83kPaの加圧下にて、一定塩濃度水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率であり、上記無荷重下吸収倍率は、無加圧下にて、一定塩濃度水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率である)にて、上記一定塩濃度水溶液がイオン交換水である場合の塩濃度吸収指数である第一塩濃度吸収指数が、0.60以上であることを特徴とする粒子状吸水剤。
【請求項2】
水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を含有する粒子状吸水剤であって、
106μm以上、850μm未満の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、吸水性樹脂の全質量に対して90質量%以上含まれており、
4.83kPaの加圧下にて、イオン交換水に60分間浸漬した場合の吸収倍率である加圧下吸収倍率が、50g/g以上であることを特徴とする粒子状吸水剤。
【請求項3】
上記(式1)中の一定塩濃度水溶液が0.10質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数である第二塩濃度吸収指数が、0.80以上であることを特徴とする請求項1記載の粒子状吸水剤。
【請求項4】
上記(式1)中の一定塩濃度水溶液が0.30質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数である第三塩濃度吸収指数、
上記(式1)中の一定塩濃度水溶液が0.50質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数である第四塩濃度吸収指数、
上記(式1)中の一定塩濃度水溶液が0.70質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数である第五塩濃度吸収指数、
上記(式1)中の一定塩濃度水溶液が0.90質量%塩化ナトリウム水溶液である場合の塩濃度吸収指数である第六塩濃度吸収指数、
のうちの少なくとも1つが、0.90以上であることを特徴とする請求項1または3記載の粒子状吸水剤。
【請求項5】
上記第一塩濃度吸収指数、第二塩濃度吸収指数、第三塩濃度吸収指数、第四塩濃度吸収指数、第五塩濃度吸収指数、第六塩濃度吸収指数の平均値である平均塩濃度吸収指数指数が0.90以上である、または、
上記平均塩濃度吸収指数指数の標準偏差が、0〜0.100の範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載の粒子状吸水剤。
【請求項6】
下記(式2)
(耐塩性指数)=(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率)/(イオン交換水に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式2)
(式中、無荷重下吸収倍率は、一定塩濃度水溶液またはイオン交換水に、60分間浸漬した場合の吸収倍率である)にて、上記一定塩濃度が0.10質量%塩化ナトリム水溶液である場合の耐塩性指数である第一耐塩性指数が、0.40以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項7】
無加圧下にて、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率である無荷重下吸収倍率が、10〜27g/gであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項8】
4.83kPaの加圧下にて、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率である加圧下吸収倍率が、10〜27g/gであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項9】
水不溶性微粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項10】
2.07kPaの圧力下にて、イオン交換水に対するゲル通液指数が15以上であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項11】
2.07kPaの圧力下にて、0.30質量%塩化ナトリウム水溶液に対するゲル通液指数が50以上であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項12】
4.83kPaの圧力下にて、0.70質量%塩化ナトリウム水溶液に対するゲル通液指数が15以上であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項13】
上記水溶性不飽和単量体は、アクリル酸および/またはその塩を含んでなり、
上記粒子状の吸水性樹脂は、表面改質処理が施されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項14】
体液を吸収するための衛生材料であって、請求項1から7のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤を含むことを特徴とする衛生材料。
【請求項15】
上記体液を吸収する吸収層を備え、
上記吸収層は、下記(式3)
(コア濃度比)=(粒子状吸水剤の質量)/((粒子状吸水剤の質量)+(繊維材料の質量)) ・・(式3)
で規定されるコア濃度が、0.3以上、1.0以下であることを特徴とする請求項14記載の衛生材料。

【図1】
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【公開番号】特開2010−234368(P2010−234368A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95899(P2010−95899)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【分割の表示】特願2004−32501(P2004−32501)の分割
【原出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】