説明

吸水剤及びその製造方法

【課題】高い加圧下吸水倍率(AAP)や吸水速度(Vortex)で、かつ、吸湿時の耐ブッロクキング性を有する吸水剤を提供する。また、高い加圧下吸水倍率(AAP)や吸水速度(Vortex)で、所定量の水分(好ましくは0.01−20重量%)を有する吸水剤を提供する。
【解決手段】吸水性樹脂粒子に、金属石鹸及び分散安定剤を含有する水分散体を混合することを特徴とする、吸水剤の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつや生理ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料等に好適に用いられる吸水剤とその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料には、体液を吸収させることを目的として、パルプ等の親水性繊維と吸水性樹脂とをその構成材料とする吸収体が幅広く利用されている。
【0003】
近年、これら衛生材料は、高機能かつ薄型化が進み、衛生材料一枚あたりの吸水性樹脂の使用量や、吸水性樹脂と親水性繊維とからなる吸収体全体に対する吸水性樹脂の比率が増加する傾向にある。つまり、かさ比重の小さい親水性繊維を少なくし、吸水性に優れ且つかさ比重の大きい吸水性樹脂を多く使用することにより、吸収体中における吸水性樹脂の比率を高め、吸水量を低下させることなく衛生材料の薄型化を図っている。
【0004】
そのため、吸水性樹脂を用いて、紙おむつをはじめとする、種々の吸水性物品を製造する際には、吸湿性の高い吸水性樹脂を多量に繊維基材に組み込む必要があり、その作業環境、気候条件によっては樹脂粒子同士がポッパーやラインの途中でブロッキングを起こしたり装置に付着したりして安定な製造が出来ないという問題が大きくなってきた。
【0005】
吸湿時の流動性に優れる吸水剤を得るための手段として、吸水性樹脂に非晶質二酸化ケイ素やカオリン等の無機物質等を添加させる技術が知られている(特許文献1〜4)。しかし、特許文献1〜4に記載の技術では、吸水剤の加圧下吸水倍率が低下するという問題があった。
【0006】
また、ポリシロキサンや特定の界面活性剤等で吸水性樹脂の表面を被覆する技術も提案されている(特許文献5〜8)が、これらも吸水性樹脂を過度に疎水性にしたり、表面張力を低下させたりして、おむつでの戻り量(Re−Wet)を増加させる問題を有する。
【0007】
加圧下吸水倍率を低下させずに吸湿時の流動性(耐ブロッキング性)に優れる吸水剤を得るための手段として、吸水性樹脂と金属石鹸とをドライブレンドにより添加させる技術が知られている(特許文献9,10)。
【0008】
しかし、特許文献9に記載の技術では、金属石鹸は疎水性であるために、吸水剤の吸水速度が低下するという問題があった。このため、特許文献9に記載の吸水剤を用いた吸収物品は、十分な吸水性能が発揮することができなかった。さらに、金属石鹸を紛体状で取り扱うことから、その粉塵による作業環境の悪化や粉塵爆発の発生の可能性が高い等、安全衛生上の問題があった。
【0009】
また、特許文献11,12等で吸湿時の流動性に優れた表面架橋剤も提案されているが、近年の高物性(例えば、高い加圧下吸水倍率)を得るには不十分な面もあった。
【0010】
さらには、吸水性樹脂の粒度を狭く制御したうえに、界面活性剤や滑剤を使用する技術(特許文献13)も知られているが、粒度制御することによって収率や生産性が低下するといった問題があった。
【0011】
上記特許文献1〜13に記載の吸湿時の流動性(耐ブロッキング性)に加えて、表面架橋後の吸水性樹脂は一般に含水率が低く、粒子としての耐衝撃安定性等の問題を有していた。そこで、耐衝撃安定性や粉塵防止等のために、表面架橋後の吸水性樹脂に数%程度の水を添加する技術(特許文献14〜16)が提案されているが、水やその助剤(例えば、無機塩)の添加で吸水性樹脂の物性(例えば、加圧下吸水倍率)が低下する問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭59−80459号
【特許文献2】特開2000−093792号
【特許文献3】特開2001−137704号
【特許文献4】国際公開第2000/010619号パンフレット
【特許文献5】国際公開第95/033558号パンフレット
【特許文献6】特開2003−082250号
【特許文献7】国際公開第2002/034384号パンフレット
【特許文献8】国際公開第97/37695号パンフレット
【特許文献9】特開2004−261796号
【特許文献10】特開昭61−51658号
【特許文献11】特開平6−220227号
【特許文献12】特開平8−027278号
【特許文献13】国際公開第2005/075070号パンフレット
【特許文献14】特表平2003−511489号
【特許文献15】特表平2001−523287号
【特許文献16】特開平9−124879号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、特許文献1〜13に対して、吸水速度に優れ、かつ、吸湿時の流動性、加圧下吸水倍率に優れる吸水剤及びその製造方法を提供することにある。また、特許文献14〜16に対して、一定量の水を含有する吸水剤であって、物性を維持向上させた吸水剤及びその製造方法を提供することにある。さらに、粉塵による作業環境の悪化や粉塵爆発の発生を伴うことなく容易に、かつ効率的に吸水剤を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、吸水性樹脂粒子に、金属石鹸及び分散安定剤を含有する水分散体を添加し混合することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0015】
本発明に係る粒子状吸水剤の製法は、吸水性樹脂粒子に、金属石鹸及び分散安定剤を含有する水分散体を混合することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る粒子状吸水剤は、吸水性樹脂粒子と、金属石鹸と、水と、分散安定剤とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸水速度に優れ、かつ、吸湿時の流動性、加圧下吸水倍率に優れる吸水剤及びその製造方法を提供できる。また、一定量の水を含有する高物性の吸水剤を提供できる。
【0018】
しかも、本発明の方法では、金属石鹸を水分散体の状態で取り扱うことから、粉塵発生等の心配がなく、安全衛生の面で極めて好適である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明で拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0020】
なお、本明細書において、特に断りのない限り、「質量」と「重量」とは同義であり、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上Y以下」であることを意味し、「〜酸(塩)」は、「〜酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0021】
(1)吸水性樹脂
本発明に係る吸水性樹脂とは、ヒドロゲルを形成し得る、水膨潤性及び水不溶性を有する架橋性重合体である。ここで、水膨潤性とは、イオン交換水に吸水性樹脂粒子を浸漬することにより、吸水性樹脂粒子自体の重量の5倍以上、好ましくは50倍〜1000倍の重量の水性溶液を吸収するものを指す。また、水不溶性とは、吸水性樹脂粒子中の実質的に未架橋の水可溶性成分(水溶性高分子)が、通常0〜50質量%であり、好ましくは0〜30質量%であり、より好ましくは0〜25質量%であり、このうち特に好ましくは0〜15質量%であり、最も好ましくは0〜10質量%で含有されるものを指す。上記水可溶性成分の含有量の測定法は、後述の実施例で規定する。
【0022】
また、上記架橋性重合体とは、良好な吸収特性を得るために、不飽和単量体を重合することによって得られる重合体の内部に架橋構造(以下、内部架橋構造)を有する重合体をいう。さらに、上記吸水性樹脂粒子は、該吸水性樹脂粒子表面に架橋構造を形成する表面架橋処理が施されていてもよく、該表面架橋処理が施されていなくてもよい。このうち、優れた吸収特性を得るためには、表面架橋処理が施されていることが好ましい。なお、以下では、表面架橋処理が施されていない吸水性樹脂粒子を、吸水性樹脂前駆体と記載することがある。
【0023】
上記の架橋性重合体からなる吸水性樹脂粒子としては、例えば、ポリアクリル酸(塩)架橋重合体、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物又はこれらの架橋体、カルボキシル基含有架橋ポリビニルアルコール変性物、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等のうちの1種又は2種以上を挙げることができる。このうち、物性面から上記ポリアクリル酸(塩)架橋重合体を用いることが好ましい。
【0024】
上記の架橋性重合体からなる吸水性樹脂粒子は、不飽和単量体を重合及び架橋することによって得られ、必要に応じて表面架橋処理が施される。以下、吸水性樹脂粒子の製造に用いられる不飽和単量体、架橋性単量体、重合開始剤、不飽和単量体の製造方法(重合方法、乾燥処理、表面架橋処理)について説明する。
【0025】
(2)吸水剤
吸水剤とは、吸水性樹脂を主成分とする水性液のゲル化剤を意味する。なお、前記水性液としては、水に限らず、尿、血液、糞、廃液、湿気や蒸気、氷、水と有機溶媒及び/又は無機溶媒との混合物、雨水、地下水等であってもよく、水を含めば特に制限されるものではない。中でも前記水性液としては、より好ましくは、尿、特に人尿を挙げることができる。
【0026】
本発明に係る吸水性樹脂の含有量は、吸水剤の重量全体に対して、好ましくは70〜99.9重量%であり、より好ましくは80〜99.7重量%であり、さらに好ましくは90〜99.5重量%である。吸水性樹脂以外のその他の成分としては、後述の金属石鹸、分散安定剤、さらには水が含まれる。
【0027】
(3)粒子
吸水剤や吸水性樹脂は粒子状である。粒子とは流動性のある粉末を指し、好ましくは、Flow Rate(ERT450.2−02)を測定可能である状態、あるいは(ERT420.2−02)で篩分級可能な粉末のことである。好ましい含水率や粒度は後述の範囲であるが、特に限定されない。
【0028】
(4)不飽和単量体
本発明の吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子を得るために用いられる不飽和単量体としては、所望する架橋性重合体を得ることができる単量体を用いればよい。
【0029】
例えば、上記架橋性重合体がポリアクリル酸(塩)架橋重合体、さらには部分中和架橋重合体である場合には、不飽和単量体として、アクリル酸及び/又はその塩(中和物)を主成分として使用すればよく、該アクリル酸及び/又はその塩とともに、アクリル酸及び/又はその塩以外の他の不飽和単量体を共重合成分として用いてもよい。これにより、最終的に得られる吸水性樹脂粒子に対し、吸水特性以外に、抗菌や消臭等の別の特性を付与することができるとともに、吸水性樹脂粒子をより一層安価に得ることができる。
【0030】
上記他の不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等の、水溶性又は疎水性の不飽和単量体等を挙げることができる。
【0031】
なお、上記不飽和単量体及び他の不飽和単量体として、酸基を含有する不飽和単量体を用いる場合には、該不飽和単量体の塩として、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いればよい。このうち、得られる吸水性樹脂粒子の性能、不飽和単量体の塩の工業的な入手の容易さ、安全性等の点から、ナトリウム塩やカリウム塩を用いることが好ましい。
【0032】
上記他の不飽和単量体を併用する場合には、吸水性樹脂粒子を得るために用いる全ての不飽和単量体の総モル数に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%、最も好ましくは0〜5モル%の割合で用いるとよい。言い換えれば、吸水性樹脂粒子を得るために用いる全ての不飽和単量体の総モル数に対して、主成分としてのアクリル酸及びその塩の総モル数は、70〜100モル%であり、好ましくは90〜100モル%であり、より好ましくは95〜100モル%であればよい。
【0033】
また、上記架橋性重合体がポリアクリル酸(塩)架橋重合体である場合、該ポリアクリル酸部分中和物重合体の構成単位は、アクリル酸0〜50モル%及びアクリル酸塩100〜50モル%(ただし、両者の合計は100モル%以下)の範囲であることが好ましく、アクリル酸10〜40モル%及びアクリル酸塩90〜60モル%の範囲であることがより好ましい。言い換えれば、アクリル酸及びアクリル酸塩の合計量に対するアクリル酸塩のモル比である中和率は、50〜100モル%であることが好ましく、60〜90モル%であることがより好ましい。
【0034】
上記アクリル酸の塩を形成するためには、単量体の重合前に単量体の状態でアクリル酸を中和する、重合途中や重合後に重合体の状態で中和を行う、あるいは、これらの操作を併用することによって行えばよい。また、アクリル酸及びアクリル酸塩を混合することによって、アクリル酸の塩を形成してもよい。
【0035】
(5)架橋性単量体(内部架橋剤)
本発明に係る吸水性樹脂粒子は、内部架橋構造を有する架橋性重合体であり、吸水性樹脂粒子が水不溶性及び水膨潤性を有していれば、内部架橋構造を有していると考えることができる。そのため、吸水性樹脂粒子の内部架橋構造は、内部架橋剤である架橋単量体を用いずに、不飽和単量体の自己架橋によって得られるものであってもよいが、好ましくは、上記した不飽和単量体と架橋単量体とを共重合又は反応させて得られるものがよい。ここで、内部架橋剤である架橋単量体とは、一分子中に2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有するものである。
【0036】
上記内部架橋剤としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0037】
上記内部架橋剤は単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、上記内部架橋剤は、反応系に一括して添加してもよく、分割して添加してもよい。1種又は2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、最終的に得られる吸水剤の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する架橋製単量体を重合時に必ず用いることが好ましい。
【0038】
上記内部架橋剤の使用量は、吸水性樹脂粒子の良好な物性を得る観点から、前記した、吸水性樹脂粒子を得るために用いる全ての不飽和単量体の総モル数に対して、好ましくは0.001〜2モル%であり、より好ましくは0.005〜0.5モル%であり、さらに好ましくは0.01〜0.2モル%であり、特に好ましくは0.03〜0.15モル%の範囲内である。上記内部架橋剤の使用量が、0.001モル%よりも少ない場合や、2モル%を超える場合には、吸水性樹脂粒子の十分な吸収特性が得られない可能性があるため、好ましくない。
【0039】
上記内部架橋剤を用いて、内部架橋構造を吸水性樹脂粒子内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記不飽和単量体の重合前もしくは重合途中、又は重合後、あるいは中和後に反応系に添加するようにすればよい。
【0040】
(6)重合開始剤
本発明に係る吸水性樹脂粒子を得るために上記の不飽和単量体を重合する際には、重合開始剤を使用すればよい。該重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤を用いることができる。
【0041】
上記重合開始剤の使用量は、吸水性樹脂粒子を得るために用いる全ての不飽和単量体の総モル数に対して、通常0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.1モル%であることが好ましい。上記重合開始剤が0.001モル%未満の場合には未反応の残存単量体が多くなり、2モル%を超える場合には重合の制御が困難となるので好ましくない。
【0042】
(7)吸水性樹脂粒子の製造方法
(重合方法)
本発明における吸水性樹脂粒子を得るために行う、上述の各単量体(不飽和単量体、他の不飽和単量体、架橋性重合体等)の重合に際しては、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、吸水性樹脂粒子の性能や重合の制御の容易さ、さらに膨潤ゲルの吸収特性の観点から、上記単量体を水溶液とすることによる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0043】
上記の各単量体を水溶液とする場合の該水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体の濃度は、水溶液の温度や単量体の種類によって決まり、特に限定されるものではないが、10〜70質量%の範囲内が好ましく、20〜60質量%の範囲内がさらに好ましい。
【0044】
上記の単量体の重合を開始させる際には、前述の重合開始剤を使用して開始させる。また、上記重合開始剤の他にも、紫外線や電子線、γ線等の活性エネルギー線の照射によって行ってもよく、該活性エネルギー線の照射と重合開始剤の使用とを併用してもよい。
【0045】
なお、上記重合反応における反応温度は、用いる重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよく、15〜130℃の範囲内が好ましく、20〜120℃の範囲内がより好ましい。重合開始時の温度が上記範囲外となると、得られる吸水性樹脂粒子の残存単量体の増加や、過度の自己架橋反応が進行して、吸水性樹脂粒子の吸水性能が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0046】
上記逆相懸濁重合とは、上記単量体水溶液を、疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法である。該逆相懸濁重合については、例えば、米国特許4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号等の文献に記載されている。
【0047】
また、上記水溶液重合は、分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法である。該水溶液重合については、例えば、米国特許4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号等の文献や、欧州特許0811636号、同0955086号,同0922717号等の文献に記載されている。なお、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0048】
従って、上記の各文献に記載の重合法にて、上記例示の単量体や重合開始剤を用いれば、本発明に係る吸水性樹脂粒子を得ることができる。
【0049】
(乾燥処理)
上記の重合方法によって単量体を重合して得られる重合体は、通常、含水ゲル状架橋性重合体であるため、必要に応じて該含水ゲル状架橋性重合体を乾燥させる。なお、特に水溶液重合を行う場合には、含水ゲル状架橋性重合体の乾燥前及び/又は乾燥後に、通常、粉砕処理を行う。
【0050】
上記乾燥処理にて、熱風乾燥を行う場合には、通常60℃〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、より好ましくは120℃〜200℃の温度範囲の熱風で乾燥すればよい。また、乾燥時間は、含水ゲル状架橋性重合体の表面積や含水率、乾燥機の種類に依存するため、目的とする含水率となるように、例えば、1分〜5時間の範囲内等で適宜選択すればよい。
【0051】
上記のように乾燥処理を行って得られる吸水性樹脂粒子の含水率(吸水性樹脂粒子中に含まれる水分量で規定/吸水性樹脂粒子1gを180℃で3時間乾燥した場合の減量を測定し、該減量を、乾燥前の吸水性樹脂粒子の質量に対する比率で表したもの)は特に限定されないが、該吸水性樹脂粒子を主成分として含む本発明の吸水剤の良好な物性を得るためには、室温でも流動性を示す粉末となるように含水率を制御することが好ましい。すなわち、上記吸水剤の含水率(吸水剤中に含まれる水分量で規定/吸水剤1gを180℃で3時間乾燥した場合の減量を測定し、該減量を、乾燥前の吸水剤の質量に対する比率で表したもの)は、通常0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0.3〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%である。そのため、上記の範囲内の含水率を有する吸水剤が得られるように、含水ゲル状架橋性重合体を乾燥して、吸水性樹脂粒子を得ればよい。
【0052】
なお、上記逆相懸濁重合による重合方法を用いた場合には、重合反応終了後に得られる含水ゲル状架橋性重合体を、特に粉砕することなく、次の手順で乾燥してもよい。すなわち、例えば、ヘキサン等の炭化水素系の有機溶媒中に、含水ゲル状架橋性重合体を分散させて共沸脱水し、含水ゲル状架橋性重合体の含水率を40質量%以下、好ましくは30質量%以下とする。その後、デカンテーションあるいは蒸発によって、有機溶媒と含水ゲル状架橋性重合体とを分離して、本発明に係る吸水性樹脂粒子を得る。なお、有機溶媒から分離された吸水性樹脂粒子に対し、必要に応じて、さらに乾燥処理を施してもよい。
【0053】
上記乾燥処理は、目的の含水率とすることができる手法であれば特に限定されず、種々の手法を採用することができる。具体的には、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等を用いればよい。
【0054】
(表面架橋処理)
以上のように、架橋重合及び乾燥処理が施され、必要に応じて粉砕されて本発明に係る吸水性樹脂粒子が得られる。また、さらに、該吸水性樹脂粒子の表面に架橋(二次架橋)処理を施すことによって表面近傍の架橋密度を高めて、吸水性樹脂粒子の諸物性の改良を行うことが好ましい。
【0055】
以下、表面架橋前の吸水性樹脂粒子を、吸水性樹脂前駆体と称し、表面架橋された吸水性樹脂粒子と区別する。なお、本発明に係る吸水性樹脂粒子とは、吸水性樹脂前駆体、及び/又は、表面架橋された吸水性樹脂粒子を指す。
【0056】
上記表面架橋処理に用いられる表面架橋剤としては、種々のものを挙げることができるが、得られる吸水性樹脂粒子の物性を良好なものとするためには、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物、多価アミン化合物とハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノオキサゾリジノン化合物、ジオキサゾリジノン化合物、ポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物等を1種又は2種以上用いることが好ましい。
【0057】
より具体的には、米国特許6228930号、同6071976号、同6254990号等に例示されている表面架橋剤を用いるとよい。すなわち、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物;2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン化合物;エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート化合物等を挙げることができる。
【0058】
また、上記共有結合性の表面架橋剤に加えて、イオン結合性表面架橋剤、多価金属塩やポリアミンポリマーを使用してもよい。また、上記有機表面架橋剤以外に無機表面架橋剤を使用して通液性等を向上させてもよい。
【0059】
使用される無機表面架橋剤は2価以上、好ましくは3価もしくは4価値の多価金属の塩(有機塩又は無機塩)又は水酸化物が例示できる。使用できる多価金属としてはアルミニウム、ジルコニウム等が挙げられ、乳酸アルミニムや硫酸アルミニムが挙げられる。これら無機表面架橋は有機表面架橋剤と同時又は別途に使用される。
【0060】
多価金属による表面架橋は国際公開第2007/121037号パンフレット、国際公開第2008/09843号パンフレット、国際公開第2008/09842号パンフレット、米国特許7157141号、同6605673号、同6620889号、米国特許公開2005−0288182号、同2005−0070671号、同2007−0106013号、同2006−0073969号に示されている。
【0061】
また、上記有機表面架橋剤以外にポリアミンポリマー、特に重量平均分子量5000〜100万程度のものを、同時又は別途で使用して通液性等を向上させてもよい。使用されるポリアミンポリマーは、例えば、米国特許7098284号、国際公開第2006/082188号パンフレット、国際公開第2006/082189号パンフレット、国際公開第2006/082197号パンフレット、国際公開第2006/111402号パンフレット、国際公開第2006/111403号パンフレット、国際公開第2006/111404号パンフレット等に例示されている。
【0062】
これらの表面架橋剤のうち、吸水性樹脂粒子の各種特性をできるだけ良好なものとするために、共有結合性の表面架橋剤、さらには、オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート及び多価アルコールからなる群から選ばれる脱水反応性表面架橋剤を用いることが好ましく、少なくとも多価アルコールをさらに用いることがより好ましい。該多価アルコールとして、炭素数2〜10、好ましくは炭素数3〜8の多価アルコールを用いることが好ましい。
【0063】
上記表面架橋剤の使用量は、用いる表面架橋剤の種類や、吸水性樹脂前駆体と表面架橋剤との組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂前駆体100質量部に対して、表面架橋剤が0.001質量部〜10質量部の範囲内であることが好ましく、0.01質量部〜5質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0064】
上記表面架橋処理に際しては、上記表面架橋剤とともに、水を用いることが好ましい。このときに使用される水の量は、使用する吸水性樹脂前駆体の含水率にもよるが、通常、吸水性樹脂前駆体100質量部に対して0.5〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部の範囲内の水を用いることが好ましい。
【0065】
表面架橋剤やその水溶液を混合する際には、親水性有機溶媒や、第三物質を混合助剤として用いてもよい。
【0066】
親水性有機溶媒を用いる場合には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、メトキシ(ポリ)エチレングリコール等のエーテル類;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール等が挙げられる。なお、多価アルコールは吸水性樹脂と反応する条件の場合、表面架橋剤に分類され、反応しない場合、親水性有機溶媒に分類される。反応の有無は多価アルコールの残存量やエステル(IR分析等)の増加で容易に判別できる。
【0067】
親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂粒子の種類や粒径、含水率等にもよるが、吸水性樹脂粒子の固形分100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、0.1質量部〜5質量部の範囲内がより好ましい。また、第三物質として欧州特許第0668080号明細書に示された無機酸、有機酸、ポリアミノ酸等を存在させてもよい。これらの混合助剤は表面架橋剤として作用してもよいが、表面架橋後に吸水性樹脂粒子の吸水性能を低下させないものが好ましい。特に沸点が150℃未満の揮発性アルコール類は表面架橋処理時に揮発してしまうので、残存物が残らず望ましい。
【0068】
吸水性樹脂前駆体と表面架橋剤とをより均一に混合するため、非架橋性の水溶性無機塩基類(好ましくは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、及び、アンモニアあるいはその水酸化物)や、非還元性アルカリ金属塩pH緩衝剤(好ましくは炭酸水素塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩等)を、吸水性樹脂前駆体と表面架橋剤とを混合する際に共存させてもよい。これらの使用量は、吸水性樹脂前駆体の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂前駆体の固形分100質量部に対して0.005〜10質量部の範囲内が好ましく、0.05〜5質量部の範囲内がより好ましい。
【0069】
上記表面架橋剤の添加は、種々の手法で行うことができるが、表面架橋剤を、必要に応じて水及び/又は親水性有機溶媒と予め混合して、吸水性樹脂前駆体に滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均液滴径が0.1〜300μmであることが好ましく、1〜200μmであることがより好ましい。
【0070】
上記吸水性樹脂前駆体、表面架橋剤、水や親水性有機溶媒を混合する際に用いられる混合装置としては、これらの化合物を均一にかつ確実に混合するために、大きな混合力を備えていることが好ましい。このような混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型ニーダー、粉砕型ニーダー、回転式混合機、気流型混合機、タービュライザー、バッチ式レディゲミキサー、連続式レディゲミキサー等が好適に用いられる。
【0071】
上記表面架橋剤と吸水性樹脂前駆体とを混合した後、好ましくは加熱処理が施される。上記加熱処理を行う際の条件としては、吸水性樹脂前駆体の温度若しくは加熱処理に用いる熱媒の温度が、好ましくは100〜250℃であり、より好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは170〜210℃であるとよい。また、上記加熱処理の加熱時間は、好ましくは1分〜2時間の範囲である。上記加熱温度と加熱時間との組み合わせの好適例としては、180℃で0.1〜1.5時間、200℃で0.1〜1時間を挙げることができる。
【0072】
これら表面架橋、特に脱水反応性表面架橋剤や高温表面架橋(例えば、150〜250℃)では得られた吸水性樹脂が高物性ではあるが、その含水率が0〜5%、0〜3%、0〜1%と低くなる。かかる低い含水率の吸水性樹脂では耐衝撃安定性の問題があり、表面架橋後の吸水性樹脂に数%程度の水を添加する技術(特許文献13〜16)が提案されているが、水やその助剤(例えば、無機塩)の添加で吸水性樹脂の物性(例えば、加圧下吸水倍率)が低下する問題を有していた。本発明では低含水率(0〜5重量%、0〜3重量%、0〜1重量%)の表面架橋された吸水性樹脂への水の添加でも好適に使用できる。
【0073】
なお、吸水性樹脂前駆体が逆相懸濁重合で得られる場合には、重合終了後の共沸脱水途中及び/又は共沸脱水終了後等の、例えば、含水ゲル状架橋重合体の含水率が50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下であるときに、逆相懸濁重合で用いられる疎水性有機溶媒中に上記表面架橋剤を分散させることにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子を得ることができる。
【0074】
(8)表面架橋前及び表面架橋後の吸水性樹脂の粒度と、吸水剤の粒度
上記のように、必要に応じて表面架橋処理を施されてなる、本発明に係る吸水性樹脂粒子は、吸湿時の流動性を確保し、機械的衝撃力による吸水性能や吸湿時の流動性の低下を抑制するために、特定の粒子径に調整される。具体的には、本発明に係る吸水性樹脂粒子は、吸水剤に含まれる全吸水性樹脂粒子100質量%に対して、850μm未満で106μm以の粒子径を有する吸水性樹脂粒子が90〜100質量%であり、300μm以上の粒子径を有する吸水性樹脂粒子が60質量%以上である。このうち、好ましくは、850μm未満で106μm以上の粒子径を有する吸水性樹脂粒子が、吸水剤に含まれる全吸水性樹脂粒子100質量%に対して、95〜100質量%であり、特に98〜100質量%であることが好ましい。また、300μm以上の粒子径を有する吸水性樹脂粒子が、吸水剤に含まれる全吸水性樹脂粒子100質量%に対して、65〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、特に75〜100質量%であることが好ましい。
【0075】
また、吸水性樹脂粒子の質量(重量)平均粒子径は、好ましくは200〜700μmであり、さらに好ましくは300〜600μmであり、特に好ましくは400〜500μmである。さらに、吸水性樹脂粒子の粒度分布について、均一性の指標となる対数標準偏差(σζ値)は、0〜0.40であることが好ましく、より好ましくは0〜0.35であり、最も好ましくは0〜0.30である。
【0076】
粒子径が850μm以上の吸水性樹脂粒子が、吸水剤に含まれる全吸水性樹脂粒子100質量%に対して10質量%を超えると、オムツ等の衛生材料を作製した場合に異物感が発生し、手触りが悪くなる等、使用者に対して不快感を与えることになる。また、粒子径が106μm未満の吸水性樹脂粒子が、吸水剤に含まれる全吸水性樹脂粒子100質量%に対して10質量%を超える場合や、上記対数標準偏差σζが0.40を超える場合には、加圧下における吸水倍率の大幅な低下や吸湿時の流動性低下、吸水性樹脂粒子やオムツ等の衛生材料の製造作業中に粉塵が発生することによる作業環境の劣悪化、幅広い粒度分布を有することによる偏析の増大等の多くの問題が発生することになり好ましくない。
【0077】
(9)表面架橋後の吸水性樹脂粒子のCRC、及び吸水剤のCRC
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、遠心分離機保持容量(CRC)が、好ましくは10(g/g)以上であり、より好ましくは15g/g以上であり、さらに好ましくは25g/g以上であり、特に好ましくは28g/g以上である。上限値は、特に限定されないが、好ましくは50g/g以下であり、より好ましくは45g/g以下であり、さらに好ましくは40g/g以下である。遠心分離機保持容量(CRC)が10g/g未満の場合、吸収量が少なすぎ、オムツ等の衛生材料の使用に適さない。また、遠心分離機保持容量(CRC)が50g/gよりも大きい場合、吸収体に使用された時に、吸収体への液の取り込み速度に優れる吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0078】
(10)表面架橋後の吸水性樹脂粒子のAAP、及び吸水剤のAAP
本発明で用いる吸水性樹脂粒子は、4.83kPaの圧力下(荷重下)での加圧下吸水倍率が15g/g以上、好ましくは18g/g以上、より好ましくは20g/g以上、さらに好ましくは23g/g以上、最も好ましくは25g/g以上である。上限値は、特に限定されないが、好ましくは30g/g以下である。4.83kPaの圧力に対する吸収力(AAP)が15g/g未満の場合、吸収体に使用された時に、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り(通称Re−Wet、リウエットといわれる)が少ない吸水剤を得ることができなくなるおそれがある。
【0079】
かかるAAPには、例えば、上記粒度の吸水性樹脂粒子を、表面架橋、特に所定のCRC値に制御するように高温で表面架橋することで得ることができるが、特に限定されない。
【0080】
(11)金属石鹸
本発明で用いる金属石鹸は、有機酸多価金属塩のことであり、分子内の炭素数が7個以上であり、かつ、脂肪酸、石油酸、高分子酸等のアルカリ金属塩以外の金属塩からなる。
【0081】
上記有機酸多価金属塩を構成する有機酸としては、多価金属と塩を形成する有機物であればよく、好ましくは、有機カルボン酸、有機スルホン酸、有機スルフィン酸であり、このうち分子内にカルボキシル基を有する有機カルボン酸であることが特に好ましい。また、上記有機酸多価金属塩は、炭素数が7以上であり、より好ましくは炭素数が7〜20の範囲内であり、さらに好ましくは炭素数が12〜20であるとよい。
【0082】
上記有機酸に、炭素数が分子内に7個未満の有機酸を使用した場合、有機酸多価金属塩の水への溶解度が高くなり、紙おむつや吸収体等の使用時に、有機酸多価金属塩が尿や血液等の吸収液に溶出するおそれがあるので好ましくない。また、炭素数が分子内に7個未満の、例えば、シュウ酸やクエン酸のような酸を用いた場合、これら有機酸の多価金属塩の硬度が高いため、機械的衝撃力を受けた場合に吸水特性の低下を招くおそれがあるという問題もある。さらに、シュウ酸を使用した場合には、安全性の面からも好ましくない。
【0083】
上記有機カルボン酸は、飽和又は不飽和の有機カルボン酸や芳香族カルボン酸であり、カルボン酸以外の置換基、例えば、水酸基、ハロゲン等を有してもよい。また、上記有機カルボン酸は、一分子中に複数のカルボキシル基を有する多価カルボン酸であってもよいが、好ましくは、モノカルボン酸がよい。
【0084】
具体的には、上記有機カルボン酸としては、例えば、カプロン酸、オクチル酸、オクチン酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の長鎖又は分枝の脂肪酸; 安息香酸、ミリスチン酸、ナフテン酸、ナフトエ酸、ナフトキシ酢酸等の石油酸;ポリ(メタ)アクリル酸やポリスルホン酸等の高分子酸を挙げることができる。このうち、カプロン酸、オクチル酸、オクチン酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、牛脂肪酸やヒマシ硬化脂肪酸等の脂肪酸が好ましく、カプロン酸、オクチル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の分子内に不飽和結合を有しない脂肪酸(長鎖飽和脂肪酸)がより好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の、炭素数が12〜20の分子内に不飽和結合を有しない長鎖脂肪酸(長鎖飽和脂肪酸)が最も好ましい。この理由は、分子内に不飽和結合を有する脂肪酸を用いた場合、吸水剤は貯蔵時に熱や酸化を受けると、着色や臭気等を発生させるおそれがあるためである。
【0085】
一方、上記有機酸多価金属塩を構成する金属塩は、アルカリ土類金属塩や遷移金属塩等のアルカリ金属塩以外の金属塩であれば特に限定されるものではないが、入手の容易さから、バリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が好ましく、このうち、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩がより好ましい。
【0086】
従って、上記有機酸多価金属塩としては、具体的には、例えば、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸アルミニウム、ミリスチン酸カルシウム塩、ミリスチン酸マグネシウム塩、ミリスチン酸アルミニウム塩、ミリスチン酸亜鉛塩、パルミチン酸カルシウム塩、パルミチン酸マグネシウム塩、パルミチン酸アルミニウム塩、パルミチン酸亜鉛塩、ステアリン酸カルシウム塩、ステアリン酸マグネシウム塩、ステアリン酸亜鉛塩、ステアリン酸アルミニウム塩を挙げることができる。
【0087】
また、上記有機酸多価金属塩は、その一部が水酸化物等になっていてもよく、より具体的には、(有機酸)n+(OH)n−x等で表される塩構造を有していてもよい。ここで、Mn+はn価金属イオン種を示し、xは1〜nまでの整数、nは2以上の整数を表す。
【0088】
さらに、上記有機酸多価金属塩を構成する上記有機酸と上記金属塩との組み合わせについては、特に限定されるものではない。また、上記有機酸多価金属塩は、1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0089】
上記有機酸多価金属塩は、全ての酸基が塩になったものに限らず、該有機酸多価金属塩中に少量の有機酸が含まれているもの、過剰の多価金属が含まれているものであってもよい。このうち、好ましくは、酸基(カルボキシル基)の全モル数のうち、90モル%以上が中和された塩、さらに好ましくは95〜105モル%が中和された塩、より好ましくは98〜102モル%が中和された塩、特に好ましくは99〜101モル%が中和された中和塩が好適に用いられる。
【0090】
なお、上記有機酸として、例えばポリアクリル酸のような高分子酸を用いる場合には、該高分子酸が有する酸基(カルボキシル基)の全モル数のうち、95モル%以上が多価金属と塩を形成した中和塩であることが好ましく、より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上の酸基が中和されているとよい。また、使用する高分子酸の分子量は通常、重量平均分子量で10,000〜5,000,000、好ましくは50,000〜1,000,000のものが用いられる。
【0091】
また、上記有機酸多価金属塩は、粉末の形状であり、その粒子径は特に限定されるものではないが、通常、吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径よりも小さいものが好ましい。具体的には、本発明の吸水剤に含まれる有機酸多価金属塩の粒子径は、メジアン径で0を超えて100μmであり、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.01〜10μmであるとよい。なお、メジアン径とは、粒子体の一つの集団の全体積を100%として累積曲線を求めた時、累積曲線が50%となる点の粒子径(累積平均径)であり、有機酸多価金属塩をメタノール等の溶媒に分散させ、粒度分布測定装置LS−920(株式会社堀場製作所)等を用いて測定することができる。
【0092】
さらに、上記有機酸多価金属塩の融点は、好ましくは20℃以上250℃以下であり、より好ましくは40℃以上250℃以下、さらに好ましくは50℃以上250℃以下である。このうち、特に好ましくは60℃以上250℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上250℃以下であり、最も好ましくは80℃以上250℃以下である。上記有機酸多価金属塩の融点が250℃以上である場合には、吸水性樹脂粒子の表面への該有機酸多価金属塩の付着性が低下し、吸水性樹脂粒子から脱落する有機酸多価金属塩が増加するおそれがある。また、融点が20℃以下である場合には、得られる吸水剤の流動性が低下し、取り扱い性が低下するため、好ましくない。
【0093】
すなわち、吸水剤を工業的に取り扱う場合には、一般的には、該吸水剤が吸湿することを防ぐために吸水剤や吸水性樹脂粒子を保管するホッパー、輸送ライン、定量フィーダー等を加熱保温する手法が用いられ、これらは、通常30〜80℃に維持(加熱又は保温)される。
【0094】
従来、吸湿時又は含水率0〜20質量%未満の粉体特性の改善、特に流動性の改善に使用されているポリエチレングリコールや界面活性剤等の添加物は、一般に融点若しくはガラス転移温度の低いものが多い。そのため、室温での吸水剤の流動性が優れていても、吸水剤やおむつ等の製造時等には、製造装置や輸送ライン等による加温によって、上記添加物が溶融して、吸水剤の粉体としての流動性が低下し、取り扱い性が低下するという問題があった。しかしながら、本発明では、上記の融点を有する有機酸多価金属塩を用いているので、加温時の吸水剤の工業的な取り扱い性が低下することはない。
【0095】
なお、上記有機酸多価金属塩の融点については、実測してもよく、例えば、化学大辞典(化学大辞典編集委員会編、共立出版株式会社発行)等に記載されている値を用いてもよい。例えば、ステアリン酸亜鉛は128〜130℃であり、ステアリン酸アルミニウムは103℃であり、ステアリン酸カルシウムは180℃であり、ステアリン酸マグネシウムは200℃である。そのため、これらの有機酸多価金属塩は、本発明の吸水剤として用いる場合に最適な融点を有するため、好適に用いられる。また、用いる有機酸多価金属塩を適宜選択すれば、広範囲に融点を調整することも可能である。ただし、実際の使用にあたっては、本発明の吸水剤が使用される温度以上の融点を有する有機酸多価金属塩を選択して使用することが好ましい。
【0096】
また、上記有機酸多価金属塩は、25℃での脱イオン水に対する溶解度が、難溶性又は不溶性であることが好ましく、例えば、脱イオン水1000mLに対して、0g/L以上10g/L以下であることが好ましく、より好ましくは0g/L以上5g/L以下、さらに好ましくは0g/L以上2g/L以下であるとよい。上記有機酸多価金属塩の溶解度が10g/Lを超えると、前述したように、尿や血液等の吸収液に有機酸多価金属塩が溶出する可能性があるので好ましくない。
【0097】
(12)分散安定剤
本発明においては、金属石鹸を水中で凝集させることなく安定に分散させるために分散安定剤を用いる。本発明において用いられる分散安定剤としては、従来から水不溶性微粒子を水中に安定的に分散させるために使用されているものであれば、特に制限なく使用できる。本発明で使用する分散安定剤としては、例えば、水溶性高分子、親水性有機溶媒、界面活性剤等が挙げられる。
【0098】
(13)水溶性高分子
本発明において金属石鹸の分散安定剤として使用する水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、(カルボキシ)メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸(塩)等が挙げられる。ここで、用いられる水溶性高分子は水(25℃)に1重量%以上、さらには5重量%以上、特に10重量%以上溶解するものが用いられ、その分子量は通常500〜5000万、好ましくは1000〜500万、さらには1〜100万の範囲である。
【0099】
(14)親水性有機溶媒
本発明において金属石鹸の分散安定剤として使用する親水性有機溶媒としては、前述の表面架橋処理で併用してもよい親水性有機溶媒が挙げられる。特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、特に炭素数が2〜10、さらに好ましくは炭素数が3〜8の多価アルコールが好ましく、これら多価アルコールは水酸基の一部がアルコシ化(例えば、メトキシポリアエチレングリコール)されてよい。これら多価アルコールの中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0100】
(15)界面活性剤
本発明において、金属石鹸の分散安定剤として使用する界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド等のグリセリン脂肪酸エステルに代表される非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸塩、アルキルリン酸カリウム等のリン酸エステル塩に代表される陰イオン性界面活性剤、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩に代表される陽イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらから選ばれた1種もしくは2種以上が使用できる。
【0101】
これら界面活性剤の中でも、非イオン性界面活性剤又は陰イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0102】
(16)金属石鹸水分散体
本発明を実施するに当たって、金属石鹸は水分散体として用いる。ここでいう水分散体とは、金属石鹸を上記分散安定剤を使用して水に均一分散させたものであり、流動性を有するものである。好ましい様態としては、粘度の上限が10000cps(25℃)の水分散体であり、低粘度であるものは本発明に支障はないが、実質的に水の粘度と同等のものまで使用できる。例えば、スラリー状物、懸濁液状物、乳化液状物等も本発明における水分散体に含まれる。また、金属石鹸が水分散体の状態で製造される場合には、乾燥させずにそのまま、あるいはある程度濃縮もしくは希釈させた状態で使用できる。
【0103】
本発明で使用する金属石鹸水分散体に含まれる金属石鹸の濃度は、1〜90重量%が好ましく、より好ましくは1〜60重量%、さらに好ましくは1〜40重量%であって、かつ、金属石鹸水分散体に含まれる分散安定剤の濃度は、0を超え10重量%以下が好ましく、より好ましくは0を超え5重量%以下、さらに好ましくは0を超え3重量%以下である。
【0104】
本発明において、吸水性樹脂粒子及び金属石鹸、水、分散安定剤の好ましい添加量としては、前記吸水性樹脂粒子100重量部に対して、金属石鹸が0.001〜5重量部、より好ましくは0.005〜4重量部、水が0.01〜20重量部、より好ましくは0.05〜15重量部、分散安定剤が0.0001〜1重量部、より好ましくは0.0005〜1重量部とされる。吸水性樹脂粒子に対する前記の金属石鹸、水、分散安定剤を添加することで、より一層、本願の課題が解決される。
【0105】
金属石鹸の分散安定剤としては、界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤を分散安定剤として使用した金属石鹸の水分散体の製造方法は、例えば、特開昭59−219400号、特公平4−7260号に記載されている方法でもよい。また、ジンクステアレートN(日油株式会社製)等市販の分散体をそのまま使用してもよい。
【0106】
(17)吸水剤
(吸水剤の製造方法)
本発明の吸水剤を製造する際に使用される吸水性樹脂粒子、金属石鹸及び分散安定剤を含有する水分散体は先に説明したとおりである。
【0107】
本発明に係る吸水剤の製造方法においては、前記吸水性樹脂粒子に、金属石鹸及び分散安定剤を含有する水分散体を添加し混合することを特徴とする。
【0108】
本発明の吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子は、表面架橋が施されていない吸水性樹脂前駆体、表面架橋が施されている吸水性樹脂粒子の何れであってもよい。このうち、吸水剤の製造に際して、表面架橋された吸水性樹脂を用いる場合には、吸水性樹脂前駆体を得た後、該吸水性樹脂前駆体に、表面架橋剤と前記金属石鹸水分散体とを混合して添加して表面架橋された吸水性樹脂を得てもよく、あるいは、表面架橋された吸水性樹脂を得た後に、該表面架橋された吸水性樹脂と前記金属石鹸水分散体とを混合してもよい。
【0109】
添加する金属石鹸水分散体は下記量の水、界面活性剤、分散剤(好ましくは界面活性剤)を含むことが好ましく、該範囲を含む吸水剤とされる。また、金属石鹸水分散体の添加後又は添加前の吸水性樹脂粒子は、必要に応じて水や分散剤を乾燥したり、別途、水や分散剤を添加したりしてもよいが、好ましくは、金属石鹸と同時に添加された水や分散剤(界面活性剤)はそのまま下記範囲で吸水剤に含有されて、使用される。
【0110】
また、本発明で使用される、金属石鹸及び分散安定剤を含有する水分散体には、その他成分として、後述の添加剤(例えば、キレート剤、消臭剤、着色防止剤等)を後述の範囲で溶解又は分散させて、さらに吸水剤を改質してもよい。また、金属石鹸水分散体を添加することで造粒や微粉低減(例えば150μm未満)を行ってもよい。
【0111】
造粒する場合、加熱して必要により破砕して必須に分級すればよい。また、造粒する場合は、金属石鹸水分散の添加前に比べて吸水剤の重量平均粒子径が、好ましくは1.01〜10倍、より好ましくは1.02〜2倍、特に好ましくは1.05〜1.5倍となるように行う。なお、造粒とは複数の吸水性樹脂粒子が表面で結着するする状態を指す。
【0112】
本発明で用いる吸水性樹脂粒子としては、表面架橋された吸水性樹脂粒子を用いることが好ましい。
【0113】
本発明によって得られる吸水剤は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して金属石鹸を、好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.001〜3質量部、さらに好ましくは0.01〜3質量部を含む、及び/又は添加する。金属石鹸を含む及び/又は添加することで、吸湿流動性が飛躍的に向上する。
【0114】
本発明によって得られる吸水剤は、分散安定剤を吸水性樹脂粒子100質量部に対して0.0001〜1質量部を含む及び/又は添加することが好ましく、より好ましくは0.001〜1質量部である。分散安定剤を所定量含む及び/又は添加することで、吸水速度が飛躍的に向上する。
【0115】
本発明によって得られる吸水剤は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して水を、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部含む及び/又は添加する。金属石鹸及び水を所定量含む及び/又は添加することで、耐衝撃性(例えば、特許文献14〜16)が飛躍的に向上する。
【0116】
本発明において、前記吸水性樹脂粒子に対して、金属石鹸及び分散安定剤を含有する水分散体を添加し、その後混合する装置としては、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機、レディゲミキサー等を挙げることができる。混合方法としては、バッチ式、連続式、その併用の何れの形態も採用できる。工業的生産の観点から連続混合がより好ましい。混合の際の回転数は特に制限はないが、吸水性樹脂粒子がダメージを受けない程度の回転数が好ましい。具体的には1〜3000rpmの範囲が好ましく、より好ましくは2〜500rpm、さらに好ましくは5〜300rpmである。3000rpmを超えると吸水性樹脂粒子の粉化が生じ、吸水特性が低下する点で好ましくない。また1rpmを下回ると混合性が十分でなく、目的とする吸湿流動性の向上効果が得られない。
【0117】
また、前記溶液を混合する前の吸水性樹脂粒子の粉温としては特に制限はないが、室温〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは50〜100℃である。
【0118】
本発明において、吸水性樹脂粒子と金属石鹸水分散体とを混合する際の混合時間としては、特に制限はないが、好ましくは1秒〜20分、より好ましくは10秒〜10分、さらに好ましくは20秒〜5分である。混合時間が20分を越えてもそれに見合うだけの効果が得られず、逆に吸水性樹脂粒子の粉化を引き起こすおそれがある。
【0119】
よって、本発明の吸水剤を得るための混合条件としては、吸水性樹脂粒子の粉温が50〜100℃、回転数は5〜300rpm、混合時間は20秒〜5分であることが最も好ましい。本条件下で得られた混合後の吸水剤は取り扱い性に優れ、付着や凝集等の問題を引き起こさない。よって、その後の吸水剤の取り扱い性を向上させるための乾燥工程を必要としない。
【0120】
上記金属石鹸分散体を混合後の吸水性樹脂は必要により加熱したり乾燥したりしてもよい。加熱することで、吸水性樹脂への水の浸透が促進されて、表面が乾燥して迅速に粒子状となりうる。乾燥はしてもよく、そのまま所定量(例えば上記添加量の水)の水を吸水剤に残してもよい。水を所定量残すことで、帯電も押さえられ、かつ耐衝撃性(耐磨耗性)に優れた吸水剤とすることができる。
【0121】
加熱温度は30〜250℃、さらには50〜150℃、特に60〜100℃であり、時間も適宜1秒〜3時間、さらには1分〜1時間で決定される。必要により加熱されることで、粒子状となった吸水剤はそのまま使用してもよく、さらに必要により解砕、分級や造粒してもよい。
【0122】
(吸水剤に含まれるその他の成分)
本発明の吸水剤には、上記した成分(吸水性樹脂粒子、有機酸多価金属塩、内部架橋剤、重合開始剤、表面架橋剤等)の他に、さらに各種の性能を付与するために、無機粉末等の不溶性微粒子や水等の親水性溶媒を添加して、吸水性樹脂粒子等の造粒を行ってもよい。
【0123】
例えば、上記無機粉末としては、具体的には、例えば、二酸化珪素や酸化チタン等の金属酸化物、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩)、カオリン、タルク、クレー、ベントナイト等が挙げられる。このうち、二酸化珪素及び珪酸(塩)がより好ましく、コールターカウンター法により測定された平均粒子径が200μm以下の二酸化珪素及び珪酸(塩)が好ましい。
【0124】
上記無機粉末の添加量は、吸水剤に含まれる各種成分と無機粉体との組み合わせにもよるが、吸水性樹脂粒子100質量部に対し、0〜6質量部であればよく、0.001〜5質量部であることがより好ましく、0.01〜3質量部であることが特に好ましい。上記無機粉末の添加量が上記の範囲を超えると、有機酸多価金属塩による衝撃吸収能力を超えてしまい、衝撃力を受けたときの吸水特性の低下を防止することが困難となるおそれがある。
【0125】
吸水性樹脂粒子と無機粉体との混合方法は、特に限定されるものではなく、金属石鹸水分散体と同時でもよく、別途でもよい。例えば、粉体同士を混合するドライブレンド法、湿式混合法等を採用することができるが、ドライブレンド法がより好ましい。
【0126】
また、本発明の吸水剤には、さらに、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールやポリエチレンイミン等の親水性高分子、パラフィン等の疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂等の熱硬化性樹脂等を、金属石鹸水分散体と同時又は別途に添加する等、種々の機能を付与するために種々の添加剤を添加する工程を含んでいてもよい。これらの添加剤の添加量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、0〜30質量部であればよく、好ましくは0〜10質量部であり、より好ましくは0〜1質量部であるとよい。
【0127】
(18)吸水剤の加圧下吸水倍率
上記製造方法では金属石鹸の添加で大きな物性変化がないため、前記加圧下吸水倍率の吸水剤が得られる。本発明の吸水剤は、2.06kPa及び/又は4.83kPaの圧力下(荷重下)での加圧下吸水倍率が、15g/g以上、好ましくは18g/g以上、より好ましくは20g/g以上、さらに好ましくは23g/g以上、最も好ましくは25g/g以上である。また、加圧下吸水倍率の上限は特に限定されず高い方が好ましいが、製造コスト等の経済性とのバランスにより、上限は50g/g以下、好ましくは45g/g以下であるとよい。
【0128】
なお、2.06kPa及び4.83kPaの荷重下での加圧下吸水倍率を用いたのは、本発明の吸水剤を紙おむつ等の衛生材料として使用した場合に、乳幼児の寝ている状態及び座った状態で、吸水剤に付与される荷重を想定したためである。
【0129】
(19)吸水剤の吸湿流動性
本発明の吸水剤の、吸湿時の流動性である吸湿流動性とは、25℃相対湿度90%RHにて放置したブロッキング、ケーキング、又は粉体としての流動性について評価したものである。
【0130】
上記吸湿流動性を評価するために用いる吸湿ブロッキング率は、本発明の吸水剤では、0質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上2質量%以下である。
【0131】
吸湿ブロッキング率が10質量%を超える場合は、高湿下において、吸水剤の取り扱い性が悪く、衛生材料向けの薄型吸収体の作製時等に、製造プラントで、吸水剤及び/又は吸水性樹脂粒子が、搬送パイプ内で凝集し詰まりを発生するという問題や、親水性繊維と均一に混合できないという問題が生じる可能性がある。
【0132】
(20)吸水剤の粒度及びCRC
吸水剤の粒度や遠心保持容量(CRC)は、好ましくは前記した吸水性樹脂粒子の範囲である。前記粒度やCRCとすることで、好適な吸収物品を提供することができる。上記製造方法では金属石鹸の添加で大きな粒度変化やCRCの変化がないため、前記粒度の吸水剤が得られるが、その際に必要により分級や造粒してもよい。
【0133】
(21)吸収体・吸収物品
本発明の吸水剤は、吸水を目的とした用途に用いられ、吸収体や吸収物品として広く使用されるが、特に、尿や血液等の体液の吸収のための衛生材料として好適に用いられる。本発明の吸収体や吸収物品は、本発明の吸水剤を含んでなるものである。
【0134】
ここで、上記吸収体とは、吸水性樹脂粒子と親水性繊維とを主成分して成型された吸収材をいう。上記吸収体は、吸水剤と親水性繊維との合計質量に対する吸水剤の含有量(コア濃度)が20〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましく、特に好ましくは40〜100質量%の範囲である。本発明の吸水剤は、コア濃度が高いほど、吸収体や吸収物品等の作製時における吸水剤の吸収特性低下効果が顕著に表れてくるものとなる。
【0135】
また、上記吸収物品とは、上記吸収体、液透過性を有する表面シート、及び液不透過性を有する背面シートを備えてなるものである。上記吸収性物品は、まず、例えば、親水性繊維等の繊維基材と吸水剤とをブレンド又はサンドイッチして吸収体(吸収コア)を作製し、該吸収コアを、液透過性を有する表面シートと液不透過性を有する背面シートとでサンドイッチする。その後、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することにより、大人用紙オムツや生理用ナプキン等の吸収物品が得られる。なお、このとき、上記吸収コアは、密度0.06〜0.50g/cm3、坪量0.01〜0.20g/cmの範囲に圧縮成形される。また、用いられる繊維基材としては、例えば、粉砕された木材パルプ等の親水性繊維、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等を例示できる。これらの繊維基材は、好ましくはエアレイドしてなるものがよい。
【実施例】
【0136】
以下に、実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例及び比較例において使用される電気機器は、全て100V、60Hzの条件で使用した。さらに、特に指定がない限り25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下で使用した。
【0137】
本発明の特許請求の範囲や実施例に記載の諸物性は、以下の測定法に従って求めた。なお、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがあり、「質量%」を「wt%」と記すことがある。
【0138】
<遠心分離機保持容量(CRC)>
遠心分離機保持容量(CRC)は0.90質量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸水倍率を示す。なお、CRCは、無加圧下吸水倍率と称されることもある。
【0139】
吸水性樹脂粒子又は吸水剤0.200gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.90質量%食塩水(塩化ナトリウム水溶液)中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水剤を用いずに行い、その時の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式に従って遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)を算出した。
【0140】
遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)
=(W1(g)−W0(g))/(吸水剤の質量(g))−1
<加圧下吸水倍率(AAP4.83kPa)>
国際公開第2006/109844号パンフレットを参照し、0.9gの吸水性樹脂粒子又は吸水剤を測定装置に投入し、測定装置一式の重量W3(g)を測定し、0.9%塩化ナトリウム水溶液に対する1時間での4.83kPaの加圧下(荷重下)の吸水倍率を測定した。1時間後のW4(g)を測定し、そして、W3、W4から、下記の式に従って圧力に対する加圧下吸水倍率(g/g)を算出した。
【0141】
AAP=(W4−W3)/0.9
<水可溶分(水可溶成分)量>
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に0.90質量%食塩水184.3gをはかり取り、その水溶液中に吸水剤1.00gを加え16時間、スターラーを回転させ攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り測定溶液とした。
【0142】
次に、0.90質量%食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。
【0143】
同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。
【0144】
例えば、既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩が主成分の吸水性樹脂又は吸水剤の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂又は吸水剤中の可溶分量を以下の計算式により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
【0145】
可溶分(質量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100
<粒度>
国際公開第2004/069404号パンフレットに準じて、吸水性樹脂(又は吸水剤)を850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、45μmのJIS標準ふるい(JIS Z8801−1(2000))又はその相当ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50重量%に相当する粒径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0146】
σζ = 0.5 × ln(X2/X1)
(X1はR=84.1%、X2は15.9%に相当するそれぞれの粒径)
<吸水剤の固形分>
吸水剤において、180℃で揮発しない成分が占める割合を表す。含水率との関係は以下のようになる。
【0147】
固形分(質量%)=100−含水率(質量%)
固形分の測定方法は、以下のように行った。
【0148】
底面の直径が約5cmのアルミカップ(質量W0)に、約1gの吸水性樹脂を量り取り(質量W1)、180℃の無風乾燥機中において3時間静置し、乾燥させる。乾燥後のアルミカップ+吸水性樹脂の質量(W2)を測定し、以下の式より固形分を求めた。
【0149】
固形分(質量%)=((W2−W0)/W1)×100
<ペイントシェーカーテスト>
ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂又は吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。
【0150】
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とする。浸透後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂又は吸水剤が得られる。
【0151】
<Vortex(吸水速度)>
JIS K7224−1996に準拠するが、試験液(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)の温度は、30℃±1℃で行い、スターラーチップの長さは、40mmのものを用いて測定した。
【0152】
<吸湿ブロッキング率>
直径52mmのアルミカップに、吸水剤又は吸水性樹脂約2gを均一に散布した後、温度25℃、相対湿度90±5%RH下の恒温恒湿機(PLATINOUS LUCIFERPL−2Gタバイエスペック(TABAI ESPEC)社製)中で1時間放置した。1時間後、上記アルミカップに入った吸水剤又は吸水性樹脂を、JIS8.6メッシュ(目開き2000μm)のJIS標準ふるい(The IIDA TESTINGSIEVE:内径80mm)の上に静かに移し、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製ES−65型ふるい振盪機;回転数230rpm、衝撃数130rpm)を用いて、室温(20〜25℃)、相対湿度50%RHの条件下で5秒間分級し、上記メッシュ上に残存した吸水剤又は吸水性樹脂の重量(i(g))と該メッシュを通過した吸水剤又は吸水性樹脂の重量(j(g))を測定した。そして、下記式に従って、吸湿時の流動性指数である吸湿ブロッキング率を算出した。なお、本発明で用いられる吸湿ブロッキング率は、下記式によって定義されるものを指す。
【0153】
吸湿ブロッキング率(重量%)=((j(g))/(i(g)+j(g)))×100
吸湿ブロッキング率が低いほど、吸湿流動性に優れている。
【0154】
[参考例1]
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸257.6g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.84g(0.045モル%:対アクリル酸)、及び、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.58gを混合した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液215.2g及び50℃に調温したイオン交換水210.4gを混合した溶液(B)とを、マグネチィックスターラーで攪拌しながら溶液(A)に溶液(B)を開放系ですばやく加えて混合した。中和熱と溶解熱で液温が約102℃まで上昇した単量体水溶液が得られた。
【0155】
得られた単量体水溶液が95℃になるまで待って、3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.30gを加え、数秒攪した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に、得られた混合物を開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されていた。
【0156】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0157】
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得た。このときゲル投入量は約340g/min、ゲル投入と並行して脱イオン水を48g/minで添加しながら解砕を行った。
【0158】
解砕後のゲルの不揮発分量は50〜55質量%であった。
【0159】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で35分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径360μmの不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得た。吸水性樹脂(1)の遠心分離機保持容量(CRC)は36.0g/g、水可溶分は12.0質量%であった。
【0160】
得られた吸水性樹脂(1)100質量部に、1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、及び純水3.0質量部の混合液からなる表面処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(A)を得た。
【0161】
[実施例1]
吸水性樹脂粒子(A)100質量部に、ジンクステアレートN(商品名、日油株式会社製、ステアリン酸亜鉛水分散体、固形分30質量%、界面活性剤を含む)2質量部を撹拌下均一に混合し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、吸水剤(1)を得た。
【0162】
[実施例2]
吸水性樹脂(A)100質量部に、ステアリン酸亜鉛水分散体(商品名:ジンクステアレートN;日油株式会社製;固形分30質量%、界面活性剤を含む)3.33質量部を撹拌下均一に混合し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、吸水剤(2)を得た。
【0163】
[実施例3]
20質量部のステアリン酸亜鉛(関東化学株式会社製)と、8質量部のポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(製品名:エマール20C、花王株式会社性、固形分25質量%)と、72質量部の水とを混合し、ステアリン酸亜鉛水分散体を得た。
【0164】
吸水性樹脂粒子(A)100質量部に、上記ステアリン酸亜鉛水分散体5.0質量部を撹拌下均一に混合し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、吸水剤(3)を得た。
【0165】
[実施例4]
20質量部のステアリン酸亜鉛(関東化学株式会社製)と、2質量部のドデシル硫酸ナトリウム(関東化学株式会社製)と、78質量部の水とを混合し、ステアリン酸亜鉛水分散体を得た。
【0166】
吸水性樹脂粒子(A)100質量部に、上記ステアリン酸亜鉛水分散体5.0質量部を撹拌下均一に混合し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。こうして、吸水剤(4)を得た。
【0167】
[比較例1]
特許文献9に準じて、吸水性樹脂粒子(A)100質量部と、0.6質量部のステアリン酸亜鉛(関東化学株式会社製)とをそれぞれレディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に投入し、330rpmで15秒間攪拌した。こうして、比較吸水剤(1)を得た。
【0168】
[比較例2]
特許文献9に準じて、吸水性樹脂粒子(A)100質量部と、1.0質量部のステアリン酸亜鉛(関東化学株式会社製)とをそれぞれレディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に投入し、330rpmで15秒間攪拌した。こうして、比較吸水剤(2)を得た。
【0169】
[比較例3]
吸水性樹脂粒子(A)100質量部に、水1.4質量部を撹拌下均一に混合し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、得られた解砕物とステアリン酸亜鉛(関東化学株式会社製)0.6質量部とをそれぞれレディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に投入し、330rpmで15秒間攪拌した。こうして、比較吸水剤(3)を得た。
【0170】
[比較例4]
特許文献1〜4に準じて、ステアリン酸亜鉛を用いる代わりに、親水性二酸化珪素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル株式会社製)を0.5質量部使用すること以外は、比較例1と同様の操作を行い、比較吸水剤(4)を得た。
【0171】
[比較例5]
特許文献1〜4に準じて、ステアリン酸亜鉛を用いる代わりに、親水性二酸化珪素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル株式会社製)を1.0質量部使用すること以外は、比較例1と同様の操作を行い、比較吸水剤(5)を得た。
【0172】
吸水性樹脂粒子(A)、吸水剤(1)〜(4)、比較吸水剤(1)〜(5)の各種物性を表1に記す。
【0173】
【表1】

【0174】
(まとめ)
表1に示すように、吸水性樹脂粒子(A)に金属石鹸及び分散安定剤を含有する水分散体を混合した吸水剤(1)〜(4)は、加圧下吸水倍率(AAP)、吸湿時の流動性(ブロッキング率)に優れ、かつ優れた吸水速度(Vortex)を有していることがわかる。
【0175】
特許文献9に準じて、吸水性樹脂粒子(A)に金属石鹸を混合した比較吸水剤(1)〜(3)は吸水速度(Vortex)が大きく(約10秒)低下する。なお、金属石鹸と水を別々に混合した比較吸水剤(3)も同様に吸水速度(Vortex)が大きく(約10秒)低下する。また、特許文献1〜4に準じて、吸水性樹脂粒子(A)に親水性二酸化珪素を混合した比較吸水剤(4)及び(5)は加圧下吸水倍率(AAP)が大きく(約4〜5g/g)低下する。
【0176】
特許文献14〜16と異なり、本発明では、高い加圧下吸水倍率(AAP)や吸水速度(Vortex)で、所定量の水分(好ましくは0.01〜20重量%)を有する吸水剤を提供する。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明の吸水剤の製造方法は、高物性の吸水性樹脂を主成分とする吸水剤の製造に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂粒子に、金属石鹸及び分散安定剤を含有する水分散体を混合することを特徴とする、粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項2】
前記吸水性樹脂粒子100重量部に対して、金属石鹸0.001〜5重量部、水0.01〜20重量部、及び分散安定剤0.0001〜1重量部を添加する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記金属石鹸及び分散安定剤を含有する水分散体における、金属石鹸の濃度が1〜90重量%であり、分散安定剤の濃度が0を超えて10重量%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記分散安定剤が界面活性剤である、請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記吸水性樹脂粒子は、表面架橋処理されたものである、請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記吸水性樹脂粒子がポリアクリル酸(塩)架橋重合体である、請求項1〜5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記吸水性樹脂粒子の加圧下吸水倍率(AAP4.83kPa)が15g/g以上である、請求項1〜6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記吸水性樹脂粒子に前記水分散体を混合後、当該混合物を加熱し、解砕し、分級する、請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
吸水性樹脂粒子と、金属石鹸と、水と、分散安定剤とを含む粒子状吸水剤。
【請求項10】
前記吸水性樹脂粒子100重量部に対して、金属石鹸0.001〜5重量部、水0.01〜20重量部、分散安定剤0.0001〜1重量部を含む、請求項9に記載の粒子状吸水剤。
【請求項11】
前記分散安定剤が界面活性剤である、請求項9又は10に記載の粒子状吸水剤。
【請求項12】
前記吸水性樹脂粒子は、表面架橋処理されたものである、請求項9〜11の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項13】
前記吸水性樹脂粒子がポリアクリル酸(塩)架橋重合体である、請求項9〜12の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項14】
前記吸水性樹脂粒子の加圧下吸水倍率(AAP4.83kPa)が15g/g以上である、請求項9〜13の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項15】
前記吸水性樹脂粒子が造粒されたものである、請求項9〜14の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項16】
請求項9〜14の何れか1項に記載の粒子状吸水剤を含む吸収物品。

【公開番号】特開2011−92930(P2011−92930A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217629(P2010−217629)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】