説明

吸水性ジオポリマー素材、それを用いた吸水性無機多孔質建材及びこれらの製造方法

【課題】高い吸水率を持ちながら、二酸化炭素排出量の少ない工程で製造が可能である、ジオポリマー素材と、その製造方法を提供する。
【解決手段】Al−SiO系粉体、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、水、発泡剤、骨材からなり、吸水率が30wt%以上であり、最大空孔径が1mm以下であり、含まれる空孔のうち40%以上が吸水に関与する空孔であり、分散性に優れる吸水性ジオポリマー素材である。このジオポリマー素材は、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と水との混合溶液に、Al−SiO系粉体と骨材を添加する工程(a)と、発泡剤を添加する工程(b)と、前記発泡剤を発泡させる工程(c)と、前記混合溶液を硬化させる工程(d)と、を具備し、フィラー濃度Aと液体材料粘度Bとが、以下の関係式にある製造方法により提供される。
A≧−1.5log10(B)+45.5 (1)
A≦ 6log10(B)+65 (2)
B≦ 0.05 (3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水ブロック、保水性外壁材、屋上用保水板、導水部材などの保水性建材として使用可能な吸水性ジオポリマー素材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、都市部の歩道やビルの屋上、あるいは公園内の一部は、アスファルトやコンクリートで固められている。気温が高く、照り返しの強い夏季の日中においては、そのような場所の温度上昇は周囲に比較し一段と著しい。このような環境下において歩道を歩いたり、屋上等で過ごしたりすることはとても厳しい状況下にある。特に温暖化現象が顕著になってきた昨今においては、日中のみならず夜間においても、この熱がアスファルトやビルの屋上から放熱されて、いわゆるヒートアイランド現象を引き起こす要因の一つにもなっている。そこで、従来のアスファルト舗装やコンクリート被覆に代わり、保水性舗装や保水性建材が注目されている。
【0003】
また、二酸化炭素削減は各産業で取り組むべく課題となっている。これまで舗装や建材に広く使用されていたセメント系素材は、製造工程の化学反応で二酸化炭素を除去して製造するため、二酸化炭素発生量が多い。また、セラミック系素材も、高温での焼成工程があるため、エネルギーを大量に消費する。一方、製造過程の化学反応で二酸化炭素を発生せず、高温での焼成工程が不要であるジオポリマー素材は、セメント系素材やセラミック系素材に比べて製造時の二酸化炭素排出量が少ないため、注目されている。
【0004】
ジオポリマーとはアルカリ金属ケイ酸塩と活性フィラーを含む硬化体であり、活性フィラーから溶出した金属がアルカリ金属ケイ酸塩水溶液と接すると、アルカリ金属ケイ酸塩のケイ酸錯体(SiO)を架橋してポリマー化して得られる。
【0005】
これまで、ジオポリマー硬化体は耐火材や断熱材などに利用されてきた(例えば、特許文献1を参照)。また、最近では、コンクリートやモルタルなどの建設用・土木用・構造体用の材料や、コンクリート枕木の代替としても検討されており、次第に、用途範囲が拡大されている(例えば、特許文献2、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−044132号公報
【特許文献2】特開2008−239446号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】相原直樹、外3名、「鉄道用材料のLCAによる環境評価」、鉄道総研報告、財団法人鉄道総合技術研究所、平成21年6月、第23巻、第6号、p5〜10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2、非特許文献1記載のジオポリマー硬化体は吸水、保水、揚水目的で製造されていないため、保水力、揚水力を有していないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、高い吸水率を持ちながら、二酸化炭素排出量の少ない工程で製造が可能である、ジオポリマー素材と、そのジオポリマー素材を用いた吸水性無機多孔質建材の製造方法を提供することである。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
(ア)Al−SiO系粉体、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、水、発泡剤、骨材からなり、吸水率が30wt%以上であり、最大空孔径が1mm以下であり、含まれる空孔のうち、40%以上が吸水に関与する空孔であることを特徴とする分散性に優れる吸水性ジオポリマー素材。
(イ)前記Al−SiO系粉体が、メタカオリン、ムライト、礬土頁岩、フライアッシュ、白土、焼成汚泥、ガラス粉砕品、高炉スラグの群から選ばれる1種以上の粉体であることを特徴とする(ア)に記載の吸水性ジオポリマー素材。
(ウ)前記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液に含まれるアルカリ金属ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムであることを特徴とする(ア)または(イ)に記載の吸水性ジオポリマー素材。
(エ)前記発泡剤が、過酸化水素水、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過ホウ酸ナトリウムの群から選ばれる1種以上の過酸化物であることを特徴とする請求項(ア)〜(ウ)のいずれかに記載の吸水性ジオポリマー素材。
(オ)前記発泡剤が、Mg、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sn、Si、フェロシリコンの群から選ばれる1種以上の金属の粉末であることを特徴とする(ア)〜(ウ)のいずれかに記載の吸水性ジオポリマー素材。
(カ)前記骨材が、ケイ砂、ケイ石粉、シリカヒューム、マイカ、タルク、ワラストナイト、炭酸カルシウム、ファイバスートの群から選ばれる1種以上の材料であることを特徴とする(ア)〜(オ)のいずれかに記載の吸水性ジオポリマー素材。
(キ)(ア)〜(カ)のいずれかに記載のジオポリマー素材を成型してなる吸水性無機多孔質建材。
(ク)アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と水との混合溶液に、Al−SiO系粉体と骨材を添加する工程(a)と、発泡剤を添加する工程(b)と、前記発泡剤を発泡させる工程(c)と、前記混合溶液を硬化させる工程(d)と、を具備し、液体原料と固体原料の合計の容積に対する固体原料の合計の容積の割合を、フィラー濃度A[vol%]とし、液体原料の混合物の粘度を液体材料粘度B[Pa・s]としたとき、BとAとが、以下の関係式にあることを特徴とする吸水性ジオポリマー素材の製造方法。
A≧−1.5log10(B)+45.5 (1)
A≦ 6log10(B)+65 (2)
B≦ 0.05 (3)
(ケ)(ク)の工程に加えて、さらに、前記工程(b)と前記工程(c)の間に、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と水と反応性無機粉体と骨材と発泡剤の混合溶液を、所定の型枠に加える工程(e)を有し、前記工程(d)の後に、型枠より離型する工程(f)を有することを特徴とする吸水性無機多孔質建材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、高い吸水率を持ちながら、二酸化炭素排出量の少ない工程で製造が可能である、ジオポリマー素材と、そのジオポリマー素材を用いた吸水性無機多孔質建材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】液体材料粘度と吸水率の関係を示す図。
【図2】液体材料粘度とフィラー濃度と外観の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。第1の実施形態に係るジオポリマー素材について説明する。本発明において、吸水性ジオポリマー素材は、Al−SiO系粉体、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、水、発泡剤、骨材からなる。
【0014】
Al−SiO系粉体は、活性フィラーとも呼ばれ、水に接すると金属(主としてアルミニウム)を溶出する粉体である。金属を溶出する粉体であれば、特に限定されるものではないが、例えば、メタカオリン、ムライト、礬土頁岩、フライアッシュ、白土、焼成汚泥などの粘土鉱物や、ガラス粉砕品、高炉スラグなどを使用することができる。
【0015】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液に含まれるアルカリ金属ケイ酸塩は1モルのKOまたはNaO中に1〜5モルのSiOを含む、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムが好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液としては、水ガラスを使用することができる。
【0016】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、少なくなるとジオポリマー素材の硬化が十分になされず、多くなるとジオポリマー素材の耐水性が低下するので、Al−SiO系粉体100重量部に対して100〜400重量部が好ましく、131〜269重量部がより好ましい。
【0017】
発泡剤は、過酸化物又は金属粉末を用いる。過酸化物としては過酸化水素水や過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過ホウ酸ナトリウム等の過酸化物系粉末を使用できる。金属粉末としてはMg、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sn、Si、フェロシリコン等の金属粉末を使用することが出来る。取り扱い、コストの面より過酸化水素水を選択することが好ましい。発泡剤に過酸化水素を選択することにより、常温発泡が容易になる。上記過酸化水素は水で希釈したものを用い、1〜50%、好ましくは5〜30%の濃度に調製したものが添加される。発泡剤の添加量は、Al−SiO系粉体100重量部に対して10〜60重量部が好ましく、17〜58重量部がより好ましい。
【0018】
水はアルカリ金属ケイ酸塩水溶液、過酸化水素の希釈に用いられる。本発明に使用される水は、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液として添加されてもよいし、独立して添加されてもよい。水の量は少なくなると、十分に硬化せず、また混合が困難となり、多くなると硬化体の強度が低下しやすくなるので、上記Al−SiO系粉体100重量部に対して10〜100重量部が好ましく、12〜91重量部がより好ましい。
【0019】
骨材は、充填剤とも呼ばれ、SiOを有する微粒骨材を用いる。骨材としては、SiOを50wt%以上、好ましくは90wt%以上含み、好ましくは骨材粒径の90%以上が500μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。具体的にはケイ砂(特に8号ケイ砂、9号ケイ砂)、ケイ石粉、シリカヒューム、マイカ、タルク、ワラストナイト、炭酸カルシウムなどがあり、光ファイバを製造する際の廃棄物であるファイバスートを用いてもよい。骨材の量は、多くなると本発明の組成物から得られる無機質発泡体の強度が低下するのでAl−SiO系粉体100重量部に対して100〜1000重量部であり、さらに好ましくは208〜695重量部である。
【0020】
必要に応じて強度や耐凍害性を付与させる為、添加剤として、普通ポルトランドセメント、アルカリセメント、繊維、炭酸マンガン、界面活性剤、起泡剤を添加してもよい。
【0021】
これらのジオポリマー素材を、製造時に型枠に注入し、乾燥・硬化することで型枠に沿った形状のジオポリマー素材成形体が得られる。特に、保水ブロック、保水性外壁材、屋上保水板、インターロッキングブロックなどの無機多孔質建材に使用することができる。
【0022】
これらのジオポリマー素材、無機多孔質建材の製造方法について、以下説明する。
【0023】
まず、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と水とを混合する。その後、この混合溶液に、Al−SiO系粉体と骨材を添加する。次に、これらのアルカリ金属ケイ酸塩水溶液と水とAl−SiO系粉体と骨材の混合溶液に、発泡剤を添加する。次に、発泡剤を発泡させる。発泡剤は、40℃程度に加熱して発泡させても良いし、常温で発泡させてもよい。次に、この混合溶液を硬化させるとジオポリマー素材が得られる。この硬化工程も、100℃〜200℃程度にまで加熱しても良いし、常温で硬化させてもよい。
【0024】
また、無機多孔質建材の製造方法としては、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と水とAl−SiO系粉体と骨材と発泡剤の混合溶液を型枠に注入して成型し、その後、発泡剤の発泡と、混合溶液の硬化をした後、型枠より硬化後のジオポリマー素材を脱型し、例えば板状の無機多孔質建材を得る。
【0025】
混合で用いられる攪拌機には一般的な攪拌機が使用できるが、例えば、自公転ミキサー、アイリッヒミキサー、オーエムミキサー、ダルトンミキサー、スタティックミキサーなどが使用できる。
【0026】
上記材料は(1)、(2)、(3)式を満たすよう、フィラー濃度A、液体材料の粘度Bを調製する。
A≧−1.5log10(B)+45.5 (1)
A≦ 6log10(B)+65 (2)
B≦ 0.05 (3)
ここで、フィラー濃度A[vol%]は、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と前記水と前記発泡剤などの液体原料の合計の容積に対する前記反応性無機粉体と前記骨材などの固体原料の合計の容積の割合である。
また、ここで、液体材料粘度B[Pa・s]は、前記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と前記水と前記発泡剤との混合物の粘度である。
【0027】
(1)式を満たさない場合、サンプルが固まり状になってしまい、(2)式を満たさない場合、サンプル下部に比重・粒径の大きな材料が溜まりやすくなる。よって、得られたサンプルの材料分散性が悪く、その結果外観が悪くなる。
また、(3)式を満たさない場合、安定的に連通孔が生成されず、独立な空孔が生成されたり、過発泡状態になったりしてしまう。
【0028】
上記成型方法は押出成形、押圧成形、注型、などがあり、特に指定はしないが、発泡後に所望の形状になるような形状の枠体を用いるか、発泡後に所望の形状に加工するのが望ましい。
【0029】
上記発泡方法は20℃〜100℃で、1分〜48時間発泡させることが好ましい。
上記硬化方法は20℃〜130℃で4〜30時間で硬化させることが好ましい。低温でも硬化反応は進行するが、硬化時間が長くなり生産性を低下させる。
上記製造方法で作製された、本発明に係るジオポリマー素材は、吸水率が30wt%以上であり、また少なくとも全空孔の40%以上が吸水する空孔であり、分散性に優れるため、外観に優れる。
【0030】
また、本発明に係るジオポリマー素材は、最大空孔径が1mm以下である。最大空孔径は、試料断面を顕微鏡で観測したときの最大の空孔径である。毛細管径と高さの管径は、以下の式で表される。
h=2γ・cosθ/(ρ・g・r)
ここで、r:毛細管径[m]、h:揚水高さ[m]、θ:接触角、γ:水の表面張力[N/m]、ρ:水の密度[kg/m]、g:重力加速度[m/s]である。毛細管径1mmを超えると、揚水高さhは3mm程度以下となり、保水材としての使用が困難になってしまう。
【0031】
また、吸水率の体積割合は、以下の式により計算可能である。
吸水率[vol%]=吸水率[wt%]×かさ密度[g/cm
【0032】
また、全空孔の中で水を取り込むことが可能な空孔の割合は、以下のように計算される。
吸水に関与する空孔の割合[%]=吸水率[vol%]/気孔率[%]×100
気孔率[%]=(1−かさ密度[g/cm]/骨格密度[g/cm])×100
【0033】
本発明により、吸水性が高く、均一なジオポリマー素材とこれを用いた無機多孔質建材を得ることが出来る。この吸水性無機多孔質建材は、焼成工程を経ずに硬化が可能であり、二酸化炭素の排出量は、セラミック系素材やセメント系素材に比べて格段に少ない。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
まず、アルカリケイ酸塩水溶液と水と界面活性剤とを混ぜ、1分間攪拌した。その後、事前に骨材とAl−SiO系粉体と普通ポルトランドセメントを1分間攪拌して混合した粉体を加え、1分間攪拌した。その後、過酸化水素水を加え、15秒間攪拌した。その後、型枠に注入し、発泡工程と硬化工程を経たのち、型枠から取り出し、吸水性ジオポリマー素材を得た。
【0035】
実施例・比較例に使用した材料は、以下のとおりである。
Al−SiO系粉体として、メタカオリン(BASF社製:hurber2000c(比重:2.5))、アルカリケイ酸塩水溶液(A)として、SiO/NaOのモル比が2.15である水ガラス(富士化学社製:1号ケイ酸ソーダ(比重:1.6))、アルカリケイ酸塩水溶液(B)として、SiO/NaOのモル比が2.5である水ガラス(富士化学社製:2号ケイ酸ソーダ(比重:1.5))、発泡剤として、過酸化水素水(純正化学社製:特級過酸化水素(30%)(比重:1.1))、骨材として90%以上が75μm以下である9号ケイ砂(丸東窯材社製:9号ケイ砂(比重:2.5))、その他、添加剤として界面活性剤(C)(AE減水剤(花王社製:マイティ3000s(比重1.1)))、界面活性剤(D)(アルキルアリススルホン酸塩(竹本油脂社製:エアーセットA(比重:1.0)))、普通ポルトランドセメント(家庭化学社製(比重:3.0))を表1及び表2に示す配合割合で使用した。
上記材料の攪拌・混合には、自転公転ミキサー(シンキー社製:泡取り練り太郎)を用い、発泡工程と硬化工程は、表1及び表2に示す温度と時間にて、攪拌混合後の材料を発泡させ、硬化させた。
【0036】
(フィラー濃度Aの算出方法)
フィラー濃度Aは、ジオポリマー素材の製造に使用する固体成分と液体成分の容積比を示すもので、本実施例においては、全成分(アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と水と発泡剤と界面活性剤とAl−SiO系粉体と骨材と普通ポルトランドセメント)の合計の容積に対する固体原料(Al−SiO系粉体と骨材と普通ポルトランドセメント)の合計の容積の割合を示すもので、各固体原料の容積は、使用した重量を比重で割って求める。ここで求められたAl−SiO系粉体と骨材の容積は、粉体であっても見た目の容積ではなく、各成分の真の体積であり、粉体の粒子サイズや空隙率によらない。
【0037】
(液体材料粘度Bの算出方法)
液体材料粘度Bは、液体原料(アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と水と発泡剤と界面活性剤)の混合物の粘度である。実際の実施例・比較例においては、発泡剤の添加前にAl−SiO系粉体等を加えるため、液体材料粘度Bは、別途、各液体原料を、実施例・比較例と同じ材料と割合で混合した溶液を、粘度計を用いて計測した。
【0038】
(吸水率の算出方法)
吸水率は、以下のように(4)式を用いて算出した。
1:試料の吸水前重量(g)を測定
2:水中に投入し、気泡が出なくなるまで放置する。
3:静かに水中より取り出し、水滴が落ちなくなるまで待つ
4:重量(吸水後重量(g))を測定する
吸水率[wt%]=(吸水後重量[g]−吸水前重量[g]/吸水前重量[g])×100 (4)式
【0039】
(分散性の評価方法)
ジオポリマーの材料の分散性は硬化後のジオポリマーの外観と相関があり、外観から十分評価することができるので、材料の分散性を目視で外観から評価した。すなわち、具体的には、攪拌後の材料について分散状態のばらつきがあるか、粒径の大きな粉体や密度の高い粉体が均一に分散しているか、について外観を確認した。具体的には、30cm離れた場所から目視にて硬化後のジオポリマー素材を観察し、同一ジオポリマー素材内で色が異なっている部分がないか、粒径の大きい粉体又は比重の大きい粉体が一部に沈殿していないかを確認した。同一ジオポリマー素材内で色が異なっている部分がなく、一部に特定粉体が沈殿していないジオポリマー素材について、外観○とし、分散性が良好と判断した。一方、色が異なっている部分があるか、一部に特定粉体が沈殿しているジオポリマー素材について、外観×とし、分散性が悪いものとして判断した。
【0040】
また、水銀ポロシメータによる細孔分布測定により、かさ密度、骨格密度、気孔率を測定した。実施例1では、かさ密度0.80g/ml、骨格密度2.6g/ml、気孔率69%であり、吸水率とあわせて計算すると、全空孔の73%が吸水に関与する空孔である。
さらに、顕微鏡にて各試料の断面を観察し、空孔径を測定したところ、全実施例・比較例において、最大空孔径は1mm以下であった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
得られた結果を表1〜表4にまとめて示した。
また、図1に、実施例・比較例の液体材料粘度と吸水率をプロットした。分散性の良いものを外観○とし、分散性の悪いものを外観×とした。
また、図2に、実施例・比較例の液体材料粘度とフィラー濃度をプロットした。分散性の良いものを外観○とし、分散性の悪いものを外観×とした。
また、(1)式、(2)式及び(3)式を満たしているか否かも表1及び表2に示す。
【0046】
図1より、液体材料粘度=0.05[Pa・s]を境に、吸水率が変化していることが分かる。つまり、B≦ 0.05であることが好ましい。
流体中の気泡の浮上に関する式として、以下の式が知られている。
ν=A×r/η
ここで、ν:気泡浮上速度、A:定数、r:気泡半径、η:粘度である。
この式より、粘度ηが低いと、気泡浮上速度νが大きくなり、発泡・硬化中に気泡が浮上しやすくなり、孔がつながった連通孔を形成しやすくなる。連通孔の形成は、吸水率の向上に有利である。
【0047】
また、図2より、外観○の点は、ある一定の範囲内にあることが分かり、線を引くと、
A≧−1.5log10(B)+45.5 (1)
A≦ 6log10(B)+65 (2)
の二つ関係式が得られた。
(1)式は、同じ粘度でも、分散物の量が減ると、分散物自体の凝集が解けず、分散物が固まり状となってしまうことを意味する。
(2)式は、分散媒である液体材料の粘度が高まると、分散物であるフィラーが多量になっても均一に分散可能になることを意味する。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al−SiO系粉体、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、水、発泡剤、骨材からなり、
吸水率が30wt%以上であり、
最大空孔径が1mm以下であり、
含まれる空孔のうち、40%以上が吸水に関与する空孔である
ことを特徴とする分散性に優れる吸水性ジオポリマー素材。
【請求項2】
前記Al−SiO系粉体が、メタカオリン、ムライト、礬土頁岩、フライアッシュ、白土、焼成汚泥、ガラス粉砕品、高炉スラグの群から選ばれる1種以上の粉体であることを特徴とする請求項1に記載の吸水性ジオポリマー素材。
【請求項3】
前記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液に含まれるアルカリ金属ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸水性ジオポリマー素材。
【請求項4】
前記発泡剤が、過酸化水素水、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過ホウ酸ナトリウムの群から選ばれる1種以上の過酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸水性ジオポリマー素材。
【請求項5】
前記発泡剤が、Mg、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sn、Si、フェロシリコンの群から選ばれる1種以上の金属の粉末であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸水性ジオポリマー素材。
【請求項6】
前記骨材が、ケイ砂、ケイ石粉、シリカヒューム、マイカ、タルク、ワラストナイト、炭酸カルシウム、ファイバスートの群から選ばれる1種以上の材料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸水性ジオポリマー素材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のジオポリマー素材を成型してなる吸水性無機多孔質建材。
【請求項8】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と水との混合溶液に、Al−SiO系粉体と骨材を添加する工程(a)と、
発泡剤を添加する工程(b)と、
前記発泡剤を発泡させる工程(c)と、
前記混合溶液を硬化させる工程(d)と、
を具備し、
液体原料と固体原料の合計の容積に対する固体原料の合計の容積の割合を、フィラー濃度A[vol%]とし、
液体原料の混合物の粘度を液体材料粘度B[Pa・s]としたとき、
BとAとが、以下の関係式にあることを特徴とする吸水性ジオポリマー素材の製造方法。
A≧−1.5log10(B)+45.5 (1)
A≦ 6log10(B)+65 (2)
B≦ 0.05 (3)
【請求項9】
請求項8の工程に加えて、さらに、
前記工程(b)と前記工程(c)の間に、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と水と反応性無機粉体と骨材と発泡剤の混合溶液を、所定の型枠に加える工程(e)を有し、
前記工程(d)の後に、型枠より離型する工程(f)を有することを特徴とする吸水性無機多孔質建材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−219281(P2011−219281A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86718(P2010−86718)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】