説明

吸水性樹脂の製造方法

【課題】 他の吸水性能を落とさずに、吸水量が格段に向上した吸水性樹脂の製造方法の提供。
【解決手段】 下記工程(i)及び(ii)を有する、吸水性樹脂の製造方法。
工程(i):アクリル酸系モノマーを含む水溶液を調製する工程
工程(ii):重合調整剤を含む有機溶媒中に、工程(i)で調製した水溶液を添加して重合する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は良好な吸水性能を有する吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は衛生用品分野では幼児用、大人用あるいは失禁者用の使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収体、農園芸分野での保水剤や、土木建築分野での汚泥の凝固剤、結露防止剤、止水剤等として幅広く使用されている。
【0003】
これら吸水性樹脂、特に衛生用品分野に用いられる吸水性樹脂の吸水性能としては、体液を吸収・保持する能力(吸水量)、着用者の体圧がかかった状態での体液のポリマー間通液速度(加圧下通液速度)等があり、これら吸水性能の更なる向上が求められている。
【0004】
吸水性能を向上させた吸水性樹脂を製造する技術として、特許文献1には、水溶性連鎖移動剤をモノマーに添加して逆相懸濁重合を行う、水や電解質溶液に対する吸水能に優れ、特に液戻り現象が低減された高吸水性ポリマーの製造方法が開示されている。また、特許文献2には、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、次亜リン酸塩類などの水溶性連鎖移動剤をモノマー水溶液に添加して逆相懸濁重合を行う、保水性及び加圧下での吸水性に優れた吸水性樹脂の製造方法が開示されている。しかし、吸水量において十分満足できる吸水性樹脂を得ることができず、更なる改良が求められていた。
【特許文献1】特開2002−284805号公報
【特許文献2】国際公開第2004/101628号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、他の吸水性能を落とさずに、吸水量が格段に向上した吸水性樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記工程(i)及び(ii)を有する、吸水性樹脂の製造方法を提供する。
工程(i):アクリル酸系モノマーを含む水溶液[以下、(A)成分という]を調製する工程
工程(ii):重合調整剤を含む有機溶媒[以下、(B)成分という]中に、(A)成分を添加して重合する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法により、吸水量を格段に向上させた吸水性樹脂を得ることができる。本発明の方法により得られる吸水性樹脂は、例えばおむつなどの衛生用品の吸収体中に含有させることで、体液の吸水性や保持性を向上させ、衛生用品の薄型化、及びコストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[工程(i)]
本発明の工程(i)は、(A)成分、即ちアクリル酸系モノマーを含む水溶液を調製する工程である。
【0009】
本発明に用いられるアクリル酸系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸もしくはこれらのアルカリ塩等が挙げられる。使用に際しては、単独もしくは2種以上の混合物として用いることができる。また、アルカリ塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩等が挙げられ、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0010】
(A)成分中のアクリル酸系モノマーの濃度は、1〜70重量%が好ましく、10〜65重量%がより好ましく、30〜60重量%が更に好ましい。
【0011】
(A)成分は、吸水性樹脂の吸水性能を低下させない範囲で、アクリル酸系モノマー以外のモノマーを含有することもできる。アクリル酸系モノマー以外のモノマーとしては、アクリル酸系モノマーと共重合しうるモノマーであれば特に限定されず、例えば、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル又はメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0012】
また(A)成分は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては、特に限定されないが、アゾ系重合開始剤、酸化性重合開始剤、レドックス系重合開始剤等を用いることができる。
【0013】
アゾ系重合開始剤としては、特開平8−337726号公報の第4頁第5欄第4〜19行に記載のものを例示することができる。これらの中では、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロハライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロハライド、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドからなる群より選択される1種以上が本発明の目的を達成するために好ましい。また、上記の化合物において、ハライドはクロリドであることが経済面より好ましい。
【0014】
酸化性重合開始剤としては、特開平8−337726号公報の第3頁第4欄第43行〜第4頁第5欄第3行に記載のものを例示することができ、レドックス系重合開始剤としては、過酸化水素/第1鉄塩、過硫酸塩/亜硫酸塩、クメンヒドロパーオキシド/第1鉄塩、過酸化水素/L−アスコルビン酸等を例示することができる。これらの中では、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩が本発明の目的を達成するために好ましい。
【0015】
重合開始剤の使用に際しては、1種又は2種以上を選択して使用することができ、アゾ系重合開始剤、酸化性重合開始剤、レドックス系重合開始剤を併用することもできる。
【0016】
(A)成分中の重合開始剤の含有量は、モノマーに対して、通常0.001〜10重量%が好ましく、0.01〜5重量%がより好ましい。(A)成分中に重合開始剤を含有させる方法は、特に制限されず、アクリル酸系モノマーを含む水溶液中に重合開始剤を添加しても、アクリル酸系モノマーを含む水溶液とは別に重合開始剤の水溶液を調製しておき、両方の水溶液を混合しても良い。また、アクリル酸系モノマーを含む水溶液を分割し、分割したそれぞれの水溶液に、異なる種類の重合開始剤の水溶液を添加、混合しても良く、反応の初期に用いられるアクリル酸系モノマーを含む水溶液にアゾ系重合開始剤を添加し、反応の後半に用いられるアクリル酸系モノマーを含む水溶液に過硫酸塩系重合開始剤を添加しておくことが好ましい。
【0017】
また本発明の(A)成分は分散剤を含有することが好ましい。(A)成分に含有される分散剤としては、重合槽への付着量の低減などの観点から陰イオン界面活性剤(以下陰イオン界面活性剤(a)という)が好ましい。陰イオン界面活性剤(a)としては、天然由来のアミノ酸と、天然由来の脂肪酸とを原料とする陰イオン界面活性剤が好ましく、一般式(II)で表される化合物がより好ましい。
【0018】
【化2】

【0019】
[式中、R2は直鎖又は分岐鎖の炭素数5〜29のアルキル基、アルケニル基もしくは2−ヒドロキシアルキル基を示し、M1及びM2は同一又は異なって、水素原子、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを示し、mは1又は2を示す。]
一般式(II)において、R2の炭素数は、7〜23が好ましく、11〜23が更に好ましい。また、R2はアルキル基が好ましい。M1及びM2は、水素原子、ナトリウムイオン又はカリウムイオンが好ましい。mは2が好ましい。
【0020】
一般式(II)で表される化合物としては、N−パルミトイルアスパラギン酸モノナトリウム塩、N−パルミトイルアスパラギン酸ジナトリウム塩、N−パルミトイルアスパラギン酸、N−ミリストイルグルタミン酸モノナトリウム塩、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム塩、N−ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム塩、N−ミリストイルグルタミン酸モノナトリウム塩、N−ヤシ油脂防酸アシルグルタミン酸モノナトリウム塩、N−パーム油脂肪酸アシルグルタミン酸モノナトリウム塩、N−硬化牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸モノナトリウム塩、N−ステアロイルグルタミン酸、N−ステアロイルグルタミン酸モノカリウム塩等が挙げられる。これらの使用に際しては、単独若しくは混合物として用いることができる。また一般式(II)で表される化合物としては、味の素株式会社製のアミソフト(登録商標)シリーズの商品名「HS−11」、商品名「LS−11」,商品名「MS−11」,商品名「GS−11」,商品名「HK−11」,商品名「HS−21」,商品名「GS−21」,商品名「GS−11P」,商品名「PS−11」、及び旭フーズ株式会社製のアミノサーファクト(登録商標)シリーズ等の市販品を使用してもよく、また、公知の方法によって合成されるものを用いることもできる。
【0021】
(A)成分中の陰イオン界面活性剤(a)の含有量は、安定に吸水性樹脂を得、生成した吸水性樹脂の分解劣化を十分に防止し、更に経済的な観点から、モノマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜2重量部、更に好ましくは0.01〜1重量部である。
【0022】
本発明の工程(i)においては、重合に悪影響を与えない範囲で各種添加剤を(A)成分中に共存させることができる。かかる添加剤の具体例としては、澱粉−セルロ−ス、澱粉−セルロ−スの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等の分散助剤等が挙げられる。
【0023】
[工程(ii)]
本発明の工程(ii)は、(B)成分、即ち重合調整剤を含む有機溶媒中に、(A)成分を添加して重合する工程である。
【0024】
本発明において重合調整剤とは、重合速度をコントロールする剤である。本発明に用いられる重合調整剤としては、重合禁止剤、連鎖移動剤、ラジカル補足剤、キレート剤等が挙げられ、一般式(I)で表される化合物などの重合禁止剤;チオール化合物、2級アルコール類、アミン類、次亜リン酸化合物などの連鎖移動剤が好ましく、重合禁止剤が更に好ましい。
【0025】
【化3】

【0026】
[式中、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を示す。]
一般式(I)において、R1は水素原子又はメチル基が好ましい。一般式(I)で表される化合物としては、メトキノン(p−メトキシフェノール)、ハイドロキノン(1,4-ベンゼンジオール)が好ましく、メトキノンが更に好ましい。
【0027】
(B)成分中の重合調整剤の含有量は、本発明の反応に用いられるモノマー1モルに対して、本発明の効果を得る観点及び吸水性樹脂粒子の粗大化を防止する観点から、0.0001〜1モルが好ましく、0.001〜0.5モルがより好ましく、0.002〜0.2モルが更に好ましい。
【0028】
本発明の(B)成分中の有機溶媒としては、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール等の脂肪族アルコール系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等の脂肪族ケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等の脂肪族エステル系溶媒等を挙げることができ、使用に際しては1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0029】
(B)成分中の有機溶媒は、水と共沸することが好ましい。その中でも、1気圧(101kPa)における水との共沸組成物中、水の割合が、5重量%以上となるものが好ましく、8重量%以上となるものがより好ましく、11重量%以上となるものが更に好ましい。共沸組成物中の水の割合が多いと、吸水性樹脂の脱水を効率良く行うことができる。また、1気圧(101kPa)における水との共沸温度が、95℃以下となるものが好ましく、88℃以下となるものがより好ましく、81℃以下となるものが更に好ましい。水との共沸温度が低いと、モノマーの重合速度を制御しやすい。なお、水との共沸組成及び共沸温度については、例えばAmerican Chemical Society出版のAzeotropic Data−III(Advances in Chemistry Series 116)等、公知の文献を参照することができる。
【0030】
本発明に用いられる有機溶媒の中では、脂肪族炭化水素系溶媒が好ましく、シクロヘキサン、n−ヘプタン又はこれらの混合溶媒がより好ましく、n−ヘプタンが更に好ましい。また、脂肪族炭化水素系溶媒と共に両親媒性及び/又は疎水性の有機溶媒を混合して用いることも好ましい。該両親媒性及び/又は疎水性の有機溶媒としては、上記脂肪族アルコール系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族エステル系溶媒が挙げられる。
【0031】
本発明の(B)成分中の有機溶媒の含有量は、(A)成分に対して50〜500重量%の範囲が好ましく、100〜500重量%の範囲がより好ましい。
【0032】
本発明の(B)成分は分散剤を含有することが好ましい。(B)成分に含有される分散剤としては、重合槽への付着量の低減などの観点から陰イオン界面活性剤(以下陰イオン界面活性剤(b)という)が好ましい。陰イオン界面活性剤(b)としては、一般式(III)又は(IV)で表される化合物がより好ましい。
【0033】
3−O−(A1n1−SO33 (III)
[式中、R3は直鎖又は分岐鎖の炭素数6〜22のアルキル基あるいはアルケニル基、もしくは総炭素数12〜28のアリール基を示し、A1は直鎖又は分岐鎖の炭素数2又は3のアルキレン基もしくはオキシアルキレン基を示し、M3は水素原子、アルカリ金属イオンもしくはアンモニウムイオンを示し、n1は平均値で0〜22の数を示す。n1個のA1は同一でも異なっていても良い。]
[R4−O−(A2n2−]xPO(OM4y (IV)
[式中、R4は直鎖又は分岐鎖の炭素数6〜22のアルキル基あるいはアルケニル基、もしくは総炭素数12〜28のアリール基を示し、A2は直鎖又は分岐鎖の炭素数2又は3のアルキレン基もしくはオキシアルキレン基を示し、M4は水素原子、アルカリ金属イオンもしくはアンモニウムイオンを示し、n2は平均値が0〜22の数を示し、x及びyはそれぞれ独立に1又は2を示し、x+y=3である。また複数個のA2及びM4は同一でも異なっていても良い。]
一般式(III)及び(IV)において、R3及びR4はそれぞれ炭素数6〜22のアルキル基が好ましく、炭素数8〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数10〜18のアルキル基が更に好ましい。A1及びA2はそれぞれ炭素数2又は3のオキシアルキレン基が好ましい。M3及びM4はそれぞれ水素原子、ナトリウムイオン又はカリウムイオンが好ましい。
【0034】
陰イオン界面活性剤(b)は1種又は2種以上を用いることができる。陰イオン界面活性剤(b)としては、一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0035】
(B)成分中の陰イオン界面活性剤(b)の含有量は、安定に吸水性樹脂を得、生成した吸水性樹脂の分解劣化を十分に防止し、更に経済的な観点から、モノマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜2重量部、更に好ましくは0.01〜1重量部である。
【0036】
また、本発明においては、陰イオン界面活性剤以外に、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤若しくは高分子分散剤等の他の分散剤を併用してもよい。他の分散剤としては、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン脂肪酸エステル;アルキルグルコシド等のグリコシド化合物;エチルセルロース、ベンジルセルロース等のセルロースエーテル;セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル;トリメチルステアリルアンモニムクロリド、カルボキシメチルジメチルセチルアンモニウム等の陽イオン性及び両性の界面活性剤;マレイン化ポリブタジエン、マレイン化ポリエチレン、スチレン−ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩共重合体、イソプロピルメタクリレート−ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩共重合体等の高分子分散剤を挙げることができる。
【0037】
本発明における吸水性樹脂には、必要に応じて架橋構造を導入してもよい。架橋構造を導入する方法として、架橋剤を使用しない自己架橋によって導入する方法や、1分子中に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性基を有する架橋剤を共重合又は反応させて導入する方法等を例示できる。架橋剤としては、多価アルコール(特開平4−214735号公報)、ジビニル化合物(特開平4−34810号公報)、ポリエポキシ化合物(特開昭61−48521号公報)等が知られている。架橋剤は1種のみ用いてもよいし2種以上使用してもよい。中でも、得られる吸水性樹脂の吸水特性などから、2個以上の反応性基を有する化合物を架橋剤として用いることが好ましく、さらに、吸水性樹脂中のイオン基に作用する多価イオンを併用して用いることが好ましい。これらの架橋剤の中では、クエン酸チタン、塩化カルシウム等の多価金属化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリビニル化合物が好ましい。
【0038】
本発明においては、架橋剤は、(A)成分の添加前、添加時及び添加後の少なくともいずれかに添加することができ、重合段階で(A)成分と混合する方法、重合段階で反応系内に混合する方法、重合して得られる重合体に固体、水溶液又は分散液として噴霧する方法等が挙げられる。架橋剤を添加することで、吸水性樹脂内部や吸水性樹脂表面に架橋構造を構築することができる。架橋剤やその水溶液を使用する際には、親水性有機溶媒や,酸やpH緩衝剤を混合して使用してもよい。
【0039】
架橋剤の使用量としては、最終生成物の吸水性樹脂が所望している性能に従い任意の量とすることができるが、全モノマー(2個以上の重合性不飽和基を有する架橋剤以外のモノマー)に対して0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜1重量%がさらに好ましい。
【0040】
本発明の工程(ii)においては、(B)成分中に、(A)成分を添加して重合を行うが、(A)成分の添加方法としては、(A)成分を(B)成分に一括で添加混合し、その後重合させる方法、(A)成分を(B)成分中に逐次的に又は連続的に添加しながら重合させる方法等を挙げることができ、(B)成分中に、共沸下、(A)成分を逐次的に又は連続的に供給しながら重合させる方法がより好ましい。
【0041】
工程(ii)における重合温度は、重合速度を高め、良好な吸水能を有する吸水性樹脂を得る観点から、20〜120℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。(A)成分の温度は、0〜100℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。
【0042】
本発明の性能発現機構は明らかではないが、重合調整剤をあらかじめ有機溶媒に含有させておくことで、(B)成分中に添加される(A)成分中のアクリル酸系モノマーに対して、高濃度の重合調整剤が瞬時に反応に関与し、得られる吸水性樹脂の一次分子量を低下させる(粒子の粗大化を抑える)ことにより、格段に吸水量を向上させることができると考えられる。
【0043】
本発明の製造方法においては、吸水性樹脂の通液性向上の観点から、吸水性樹脂の表面を表面処理剤により処理することが好ましい。
【0044】
表面処理剤としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミンなどの官能基を有する高分子化合物、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬、(ポリ)塩化アルミニウム、これらの水和物などの多価金属化合物;ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどのポリカチオン化合物;メチルシロキサン(メチコンとも呼ばれる)、ジメチルシロキサン(ジメチコンとも呼ばれる)、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンなどのシリコーン化合物;シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、ベントナイトなどの無機微粒子などが挙げられ、これらの1種のみ用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリカなどの無機微粒子が、吸水性樹脂の通液性を向上させる点で好ましい。
【0045】
本発明において、表面処理は、架橋前、同時、架橋後のいずれに行っても良いが、本発明の効果をより発揮するために、架橋後であることが好ましい。表面処理剤の添加方法は、特に限定されず、ドライブレンドでもよいし、水溶液や分散液として添加しても良い。表面処理剤は、吸水性樹脂に対して、0.001〜10重量%の割合で用いることが好ましく、0.01〜5重量%の割合で用いることがより好ましい。
【0046】
本発明の方法において、重合終了後の吸水性樹脂は、必要に応じ通常の後処理、例えば、共沸脱水、デカンテーションや遠心分離による溶媒の除去、減圧乾燥機、流動乾燥機などの手段を用いた乾燥、粉砕処理、造粒処理、分級処理を施す等して、所望の吸水性樹脂粒子として得ることができる。
【0047】
[吸水性樹脂]
本発明の製造方法により得られる吸水性樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系架橋重合体が好ましい。特に(メタ)アクリル酸及び/又はその塩由来の構成単位の含有量が全構成単位中50〜100モル%のものが好ましく、70〜100モル%のものがより好ましく、90〜100モル%のものが更に好ましい。また、重合体中の酸基は、その25〜100モル%が中和されていることが好ましく、50〜99モル%が中和されていることがより好ましく、55〜80モル%が中和されていることが更に好ましい。塩としてはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、エタノールアミン塩(モノ体、ジ体、若しくはトリ体を含む)などの1種又は2種以上を例示する事ができる。塩を形成させるための酸基の中和は、重合前にモノマーの状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよい。
【0048】
本発明の吸水性樹脂は、優れた通液性、吸水量を得る観点及び実使用の場面において例えば人体に触れた場合に不快感を与えない観点から、例えば、さらに分級することなどによって、平均粒径を200〜600μm、更に250〜550μmに調整することが好ましい。なお、本発明の吸水性樹脂粒子の平均粒径は、実施例に示す方法により測定した値である。
【0049】
本発明の吸水性樹脂粒子の嵩比重は、優れた通液性、吸水量を得る観点から、0.6〜0.9g/mLの範囲が好ましく、0.65〜0.80g/mLの範囲がより好ましい。なお、本発明の吸水性樹脂粒子の嵩比重は、実施例に示す方法により測定した値である。
【0050】
本発明の吸水性樹脂粒子の吸水量は、おむつ等の吸収体当たりの吸水性樹脂粒子の使用量を抑え、例えば、おむつ等が厚くなるのを抑制する観点から、27g/g以上が好ましく、30g/g以上がより好ましく、34g/g以上が更に好ましい。なお、本発明の吸水性樹脂粒子の吸水量は、実施例に示す方法により測定した値である。
【0051】
本発明の吸水性樹脂粒子の加圧下通液速度は、膨潤した吸水性樹脂粒子によるゲルブロッキング(ゲル粒子の目詰まり)を抑制して尿等を素早く拡散し、漏れを防止する観点から、31mL/分以上が好ましく、33mL/分以上がより好ましい。
【0052】
加圧下通液速度は、特開2003−235889号公報の段落〔0008〕、〔0009〕及び図1、2に記載されている測定方法・装置を利用して測定できる。なお、本発明の吸水性樹脂粒子の加圧下通液速度は、実施例に示す方法により測定した値である。
【0053】
本発明の吸水性樹脂粒子は、平均粒径が200〜600μm、嵩比重が0.6〜0.9g/mL、吸水量(対生理食塩水)が27g/g以上、加圧下通液速度が31mL/分以上(対生理食塩水)であるといった4つの物性をバランス良く保つことにより、吸水性樹脂粒子としての効果を十分に発揮できる。このため、おむつなどの衛生材料の吸収体、簡易トイレ用の吸水剤、廃液の固化剤、農業用保水剤などの用途に好適に用いられ、特に幼児用、大人用もしくは失禁者用の紙おむつ(使い捨ておむつ)又は婦人用の生理用ナプキン等、衛生用品の吸収体に含有される高吸水性樹脂等として特に有用である。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。例中「%」、「部」は特に説明が無い場合には、全て「重量%」、「重量部」である。
【0055】
なお、実施例及び比較例で行った試験方法は次の通りである。
【0056】
・平均粒径の測定法
吸水性樹脂粒子100gをJIS Z−8801−1982準拠のフルイを用いて分級し、各フラクションの重量分率より平均粒径を求めた。
【0057】
・嵩比重の測定法
筒井理化学器械(株)製カサ比重測定器(JIS K−3362)を用いて、吸水性樹脂粒子のゆるめ嵩比重を求めた。
【0058】
・吸水量の測定法
吸水性樹脂粒子1gを生理食塩水(0.9%NaCl水溶液、大塚製薬製)150mLで30分間膨潤させた後、250メッシュの不織布袋に入れ、遠心分離機にて143Gで10分間脱水し、脱水後の総重量(全体重量)を測定する。そして、次式(1)に従って、遠心脱水後の水の保持量を測定し、この値を吸水量とする。
【0059】
【数1】

【0060】
ここで、不織布袋液残り量=(遠心脱水後の不織布袋重量)−(不織布袋重量)である。
【0061】
・加圧下通液速度(mL/分)の測定法
100mLのガラスビーカーに、吸水性樹脂粒子0.32±0.005gを膨潤するに十分な量の生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水、例えば吸水性樹脂粒子の飽和吸収量の5倍以上の生理食塩水)に浸して30分間放置する。別途、垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に、金網(目開き150μm、株式会社三商販売のバイオカラム焼結ステンレスフィルター30SUS)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とが備えられた濾過円筒管を用意し、コックを閉鎖した状態で該円筒管内に、膨潤した吸水性樹脂粒子を含む上記ビーカーの内容物全てを投入する。
【0062】
次いで、目開きが150μmで直径25mmの金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒を濾過円筒管内に挿入して、該金網と吸水性樹脂粒子とが接するようにし、更に吸水性樹脂粒子に2.0kPaの荷重が加わるようにおもりを載せる。この状態で1分間放置した後、コックを開いて液を流し、濾過円筒管内の液面が60mLの目盛り線から40mLの目盛り線に達する(20mLの液が通過する)までの時間(T1)(秒)を計測し、下記式(2)により2.0kPaでの加圧下における通液速度を算出した。なお、T0(秒)は、濾過円筒管内に吸水性樹脂粒子を入れない状態で、生理食塩水20mLが通過するのに要する時間を示す。
【0063】
加圧下通液速度(mL/分)=20×60/(T1−T0) (2)
実施例1
撹拌機,還流冷却管,モノマー滴下口,窒素ガス導入管,温度計を取り付けたSUS304製5L反応容器(アンカー翼使用)に分散剤として下記式(IV−1)で表される陰イオン界面活性剤と式(IV−2)で表される陰イオン界面活性剤との1/1(重量比)混合物を0.12%[対アクリル酸重量]仕込み、重合溶媒ヘプタン1440mLを加えた。溶存酸素を追い出す目的で窒素ガスを吹き込み、アンカー翼を300r/分で撹拌し、内温88℃まで昇温した。さらに、0.00144g(対アクリル酸0.002モル)のメトキノンを添加した。
【0064】
RO(EO)4.8(PO)4.4(EO)4.8PO(OH)2 (IV−1)
[RO(EO)4.8(PO)4.4(EO)4.82PO(OH) (IV−2)
(式中、RはC12/C14=7/3の混合アルキル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基である。)
一方、2L三つ口フラスコ中に、東亞合成(株)製80%アクリル酸506.2g、イオン交換水219.2gを仕込み、氷冷しながら旭硝子(株)製48%苛性ソーダ水溶液328.1gを滴下し、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム水溶液1053.5gを得た。このモノマー水溶液に、N−パーム油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ソーダ(味の素(株)製、商品名 アミソフトPS−11)0.245gをイオン交換水3gに溶解させたものを添加し、暫く撹拌した後、528gずつ、全量を2分割した。
【0065】
次いで、和光純薬工業(株)製2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(商品名V−50)0.0612g、花王(株)製ポリエチレングリコール(PEG6000)0.204g、イオン交換水6gを混合溶解し、開始剤水溶液(以下開始剤水溶液(a1)という)を調製した。また、和光純薬工業(株)製過硫酸ナトリウム0.571gをイオン交換水10gに溶解し、開始剤水溶液(以下開始剤水溶液(a2)という)を調製した。
【0066】
2分割したモノマー水溶液の1つ(528g)に、開始剤水溶液(a1)10.26gを加えた(以下、モノマー水溶液(a1)という)。また、2分割した残りのモノマー水溶液(528g)に、開始剤水溶液(a2)10.57g加えた(以下、モノマー水溶液(a2)という)。
【0067】
前述の5L反応容器の内温が88℃であることを確認した後、モノマー滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、モノマー水溶液(a1)を30分かけて滴下し重合した。引き続き、モノマー水溶液(a2)を30分かけて滴下し重合した。重合終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、吸水性樹脂粒子の含水量を吸水性樹脂粒子100部に対して60部に調整した。その後、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセ化成工業(株)製、商品名デナコールEX−810)0.245gを水10gに溶解したものを添加した。その後、更に共沸脱水を行い、吸水性樹脂粒子の含水量を吸水性樹脂粒子100部に対して40部に調整した。冷却後、ヘプタンをデカンテーションで除き、130℃、約6.7kPa、14時間の条件で乾燥させることにより吸水性樹脂粒子を得た。得られた吸水性樹脂粒子について、平均粒径及び嵩比重を測定した。
【0068】
またこの吸水性樹脂粒子100部に対し日本アエロジル(株)製アエロジル200 0.5部をドライブレンドすることにより表面処理を行った。この表面処理後の吸水性樹脂粒子について、吸水量及び加圧下通液速度を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0069】
実施例2
反応容器内に添加するメトキノン量を0.0144g(対アクリル酸0.020モル)とする以外は実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子を製造し、同様に平均粒径、嵩比重、吸水量及び加圧下通液速度を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
実施例3
反応容器内に添加するメトキノン量を0.144g(対アクリル酸0.200モル)とする以外は実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子を製造し、同様に平均粒径、嵩比重、吸水量及び加圧下通液速度を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
実施例4
反応容器内に添加するメトキノン量を0.288g(対アクリル酸0.400モル)とする以外は実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子を製造し、同様に平均粒径、嵩比重、吸水量及び加圧下通液速度を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
比較例1
反応容器内にメトキノンを添加しない以外は実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子を製造し、同様に平均粒径、嵩比重、吸水量及び加圧下通液速度を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
比較例2
メトキノンを反応容器内にあらかじめ添加する代わりに、モノマー相にあらかじめ添加する以外は実施例と同様にして吸水性樹脂粒子を製造し、同様に平均粒径、嵩比重、吸水量及び加圧下通液速度を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(i)及び(ii)を有する、吸水性樹脂の製造方法。
工程(i):アクリル酸系モノマーを含む水溶液[以下、(A)成分という]を調製する工程
工程(ii):重合調整剤を含む有機溶媒[以下、(B)成分という]中に、(A)成分を添加して重合する工程
【請求項2】
重合調整剤が、重合禁止剤である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
重合禁止剤が、一般式(I)で表される化合物である、請求項2記載の製造方法。
【化1】


[式中、R1は水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を示す。]
【請求項4】
(A)成分の添加前、添加時及び添加後の少なくともいずれかに、架橋剤を添加する、請求項1〜3いずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
(B)成分中に、重合開始剤を含む(A)成分を添加して重合する、請求項1〜4いずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
(A)成分及び/又は(B)成分が分散剤を含む、請求項1〜5いずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−95607(P2010−95607A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267275(P2008−267275)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】