説明

吸液性連続多孔体

【課題】耐熱性に優れるとともに、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる、吸液性連続多孔体を提供する。
【解決手段】本発明の吸液性連続多孔体は、球状気泡を有する多孔体を含み、油分および水分の吸液率がいずれも100重量%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸液性連続多孔体に関する。詳細には、耐熱性に優れるとともに、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる、吸液性連続多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
油分や水分を吸収させて回収する吸液材として、吸油性樹脂や吸水性樹脂を用いた様々な吸液材が報告されている。しかし、ほとんどの吸液材は、液体の吸収により大きく体積膨張することによって液戻りなどの問題が生じる。また、ほとんどの吸液材は、1回しか使用できず、再利用が困難であるという問題が生じる。
【0003】
そこで、吸液材をポリオレフィン系樹脂の多孔質構造体とすることにより、液体の保液性を高めるとともに、使用後の再吸収性を付与することが報告されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、特許文献1の多孔質構造体は、油分のみを吸収するものであるため、油分と水分の両方を吸収する必要がある場面では使用できない。また、特許文献1の多孔質構造体は、多孔質構造が十分に制御されていないので、液体の保液性も十分ではない。さらに、使用後に吸収液を除放した後に、十分な再吸収性が発現できるほどの、多孔質構造の復元性を備えていない。加えて、耐熱性が十分に備わっていないため、高温下に置かれた場合の寸法安定性に劣るという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−231194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐熱性に優れるとともに、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる、吸液性連続多孔体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸液性連続多孔体は、
球状気泡を有する多孔体を含み、
油分および水分の吸液率がいずれも100重量%以上である。
【0008】
好ましい実施形態においては、本発明の吸液性連続多孔体は、吸液率A重量%で液体Lを吸液させた後に加熱乾燥によって吸液された液体Lを除放し、その後、再び液体Lを吸液させたときの吸液率が、0.9A重量%以上である。
【0009】
好ましい実施形態においては、本発明の吸液性連続多孔体は、油分の吸液後の寸法変化率が50%以下である。
【0010】
好ましい実施形態においては、本発明の吸液性連続多孔体は、水分の吸液後の寸法変化率が10%以下である。
【0011】
好ましい実施形態においては、125℃で22時間保存したときの寸法変化率が±5%未満である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記多孔体が親水性ポリウレタン系重合体を含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記球状気泡の平均孔径が20μm未満である。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記多孔体が、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記貫通孔の平均孔径が5μm以下である。
【0016】
好ましい実施形態においては、上記多孔体の密度が0.15〜0.5g/cmである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性に優れるとともに、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる、吸液性連続多孔体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の吸液性連続多孔体の好ましい実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の吸液性連続多孔体の別の好ましい実施形態を示す概略断面図である。
【図3】実施例1において作製した吸液性連続多孔体を斜めから撮影した表面/断面SEM写真の写真図である。
【図4】本発明の吸液性連続多孔体の断面SEM写真の写真図であって、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を明確に表す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪≪A.吸液性連続多孔体≫≫
本発明の吸液性連続多孔体は、球状気泡を有する多孔体を含む。本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体は、好ましくは、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する。代表的な構造としては、多孔体10からなる吸液性連続多孔体100(図1)や、多孔体10aと多孔体10bの間に基材20(後述する)を含む吸液性連続多孔体100(図2)が挙げられる。なお、図1および図2においては、吸液性連続多孔体の表面の保護のために剥離フィルム30が設けられているが、該剥離フィルムは設けられていなくても良い。
【0020】
本明細書において「球状気泡」とは、厳密な真球状の気泡でなくても良く、例えば、部分的にひずみのある略球状の気泡や、大きなひずみを有する空間からなる気泡であっても良い。
【0021】
本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体が有し得る球状気泡の平均孔径は、20μm未満であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体が有する球状気泡の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.1μmであり、さらに好ましくは1μmである。
【0022】
本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体が有する球状気泡の平均孔径が上記範囲内に収まることにより、本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体の球状気泡の平均孔径を精密に小さく制御でき、耐熱性に優れるとともに、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる、吸液性連続多孔体を提供することができる。
【0023】
本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体の密度は、好ましくは0.15〜0.5g/cmであり、より好ましくは0.15g/cm〜0.45g/cmであり、さらに好ましくは0.15g/cm〜0.4g/cmである。本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体の密度が上記範囲内に収まることにより、本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体の密度の範囲を広く制御した上で、耐熱性に優れるとともに、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる、吸液性連続多孔体を提供することができる。
【0024】
本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体は、好ましくは、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有している。この連続気泡構造は、ほとんどまたは全ての隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造であっても良いし、該貫通孔の数が比較的少ない半独立半連続気泡構造であっても良い。
【0025】
隣接する球状気泡間に有する貫通孔は、吸液性連続多孔体の物性に影響する。例えば、貫通孔の平均孔径が小さいほど、吸液性連続多孔体の強度が高くなる傾向がある。図4に、本発明の吸液性連続多孔体の断面SEM写真の写真図であって、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を明確に表す写真図を示す。
【0026】
隣接する球状気泡間に有する貫通孔の平均孔径は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは4μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。隣接する球状気泡間に有する貫通孔の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.001μmであり、より好ましくは0.01μmである。隣接する球状気泡間に有する貫通孔の平均孔径が上記範囲内に収まることにより、耐熱性に優れるとともに、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる、吸液性連続多孔体を提供することができる。
【0027】
本発明の吸液性連続多孔体は、好ましくは、表面に表面開口部を有する。この表面開口部の平均孔径は、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは20μm未満であり、さらに好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは4μm以下であり、最も好ましくは3μm以下である。表面開口部の平均孔径の下限値は特に限定されず、例えば、好ましくは0.001μmであり、より好ましくは0.01μmである。本発明の吸液性連続多孔体が表面開口部を有し、且つ、該表面開口部の平均孔径が上記範囲内に収まることにより、耐熱性に優れるとともに、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる、吸液性連続多孔体を提供することができる。
【0028】
本発明の吸液性連続多孔体は、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる。ここで、本発明において「油分」とは、いわゆる油性の液体をいい、「水分」とは、いわゆる水性の液体をいう。
【0029】
本発明の吸液性連続多孔体は、油分および水分の吸液率がいずれも100重量%以上である。
【0030】
本発明の吸液性連続多孔体は、油分の吸液率が、好ましくは150重量%以上であり、より好ましくは200重量%以上であり、さらに好ましくは250重量%以上であり、特に好ましくは300重量%以上である。油分の吸液率の上限は特に限定されず、大きければ大きいほど好ましいが、現実的には、好ましくは200重量%である。
【0031】
本発明の吸液性連続多孔体は、水分の吸液率が、好ましくは120重量%以上であり、より好ましくは150重量%以上であり、さらに好ましくは170重量%以上であり、特に好ましくは200重量%以上である。水分の吸液率の上限は特に限定されず、大きければ大きいほど好ましいが、現実的には、好ましくは150重量%である。
【0032】
本発明の吸液性連続多孔体は、油分および水分の吸液率がいずれも非常に高いので、油分および水分を、連続して吸液することができる。すなわち、例えば、まず水分を100重量%以上の吸液率で吸液した後、引き続き(吸液された吸収液を除放することなく)、油分を100重量%以上の吸液率で吸液することができる。この場合、油分の吸液時に、予め吸液された水分が分離することは実質的にない。
【0033】
上記のように、本発明の吸液性連続多孔体において油分および水分の吸液率がいずれも非常に高いのは、本発明の吸液性連続多孔体が、極めて精密に制御された多孔構造を有するためと推察される。このような極めて精密に制御された多孔構造は、例えば、後述するような特定のW/O型エマルションを賦形および重合することによって製造し得る。
【0034】
なお、吸液率の具体的な測定方法は後述する。
【0035】
本発明の吸液性連続多孔体は、好ましくは、非常に優れた吸液回復性を有する。具体的には、まず液体を100重量%以上の吸液率で吸液させた(1回目の吸液)後、吸液された吸収液を除放し、その後、再び液体を吸液させた場合(2回目の吸液)に、1回目の吸液率と同等のレベルで吸液することができる。
【0036】
すなわち、本発明の吸液性連続多孔体は、吸液率A重量%で液体Lを吸液させた後に加熱乾燥によって吸液された液体Lを除放し、その後、再び液体Lを吸液させたときの吸液率が、好ましくは0.9A重量%以上であり、より好ましくは0.92A重量%以上であり、さらに好ましくは0.95A重量%以上であり、特に好ましくは0.97A重量%以上であり、最も好ましくは0.99A重量%以上である。再び液体Lを吸液させたときの吸液率の上限値は、通常はA重量%であるが、条件によっては1.1A重量%程度となることもある。
【0037】
上記のように、本発明の吸液性連続多孔体において、好ましくは非常に優れた吸液回復性を有するのは、本発明の吸液性連続多孔体が、極めて精密に制御された多孔構造を有するためと推察される。このような極めて精密に制御された多孔構造は、例えば、後述するような特定のW/O型エマルションを賦形および重合することによって製造し得る。
【0038】
本発明の吸液性連続多孔体は、油分の吸液後の寸法変化率が、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。油分の吸液後の寸法変化率の下限値は、好ましくは0%である。上記油分の吸液後の寸法変化率が上記範囲内に収まることにより、吸液による体積膨張を低減でき、液戻りなどの問題を抑制できる。
【0039】
本発明の吸液性連続多孔体は、水分の吸液後の寸法変化率が、好ましくは10%以下であり、より好ましくは7%以下であり、さらに好ましくは5%以下であり、特に好ましくは3%以下である。水分の吸液後の寸法変化率の下限値は、好ましくは0%である。上記水分の吸液後の寸法変化率が上記範囲内に収まることにより、吸液による体積膨張を低減でき、液戻りなどの問題を抑制できる。
【0040】
本発明の吸液性連続多孔体は、125℃で22時間保存したときの寸法変化率が、好ましくは±5%未満であり、より好ましくは±3%以下であり、さらに好ましくは±1%以下である。本発明の吸液性連続多孔体において125℃で22時間保存したときの寸法変化率が上記範囲内に収まることにより、本発明の吸液性連続多孔体は優れた耐熱性を有し得る。
【0041】
本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体は、気泡率が、好ましくは30%以上であり、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。本発明の吸液性連続多孔体において気泡率が上記範囲内に収まることにより、耐熱性に優れるとともに、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる、吸液性連続多孔体を提供することができる。
【0042】
本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体は、好ましくは、親水性ポリウレタン系重合体を含む。本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体が親水性ポリウレタン系重合体を含むことにより、気泡構造が精密に制御されており、気泡率が高く、精密に制御された多数の微細な表面開口部を有し、耐熱性に優れるとともに、油分および水分の両方に対する吸液性に優れる、吸液性連続多孔体を提供することができる。
【0043】
本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体の詳細や、それに含まれる親水性ポリウレタン系重合体の詳細については、後述の製造方法の説明において言及する。
【0044】
本発明の吸液性連続多孔体は、任意の適切な形状を採り得る。本発明の吸液性連続多孔体における、厚み、長辺および短辺等の長さは、任意の適切な値を採り得る。
【0045】
本発明の吸液性連続多孔体は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な基材を含有していても良い。本発明の吸液性連続多孔体に基材が含有される形態としては、例えば、吸液性連続多孔体の内部に基材の層が設けられている形態が挙げられる。このような基材としては、例えば、繊維織布、繊維不織布、繊維積層布、繊維編布、樹脂シート、金属箔膜シート、無機繊維などが挙げられる。
【0046】
繊維織布としては、任意の適切な繊維から形成される織布を採用し得る。このような繊維としては、例えば、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維などの天然繊維;再生繊維、合成繊維、半合成繊維、人造無機繊維などの人造繊維;などが挙げられる。合成繊維としては、例えば、熱可塑性繊維を溶融紡糸した繊維などが挙げられる。また、繊維織布は、メッキやスパッタリングなどによってメタリック加工されていても良い。
【0047】
繊維不織布としては、任意の適切な繊維から形成される不織布を採用し得る。このような繊維としては、例えば、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維などの天然繊維;再生繊維、合成繊維、半合成繊維、人造無機繊維などの人造繊維;などが挙げられる。合成繊維としては、例えば、熱可塑性繊維を溶融紡糸した繊維などが挙げられる。また、繊維不織布は、メッキやスパッタリングなどによってメタリック加工されていても良い。より具体的には、例えば、スパンボンド不織布が挙げられる。
【0048】
繊維積層布としては、任意の適切な繊維から形成される積層布を採用し得る。このような繊維としては、例えば、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維などの天然繊維;再生繊維、合成繊維、半合成繊維、人造無機繊維などの人造繊維;などが挙げられる。合成繊維としては、例えば、熱可塑性繊維を溶融紡糸した繊維などが挙げられる。また、繊維積層布は、メッキやスパッタリングなどによってメタリック加工されていても良い。より具体的には、例えば、ポリエステル繊維積層布が挙げられる。
【0049】
繊維編布としては、例えば、任意の適切な繊維から形成される編布を採用し得る。このような繊維としては、例えば、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維などの天然繊維;再生繊維、合成繊維、半合成繊維、人造無機繊維などの人造繊維;などが挙げられる。合成繊維としては、例えば、熱可塑性繊維を溶融紡糸した繊維などが挙げられる。また、繊維編布は、メッキやスパッタリングなどによってメタリック加工されていても良い。
【0050】
樹脂シートとしては、任意の適切な樹脂から形成されるシートを採用し得る。このような樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂シートは、メッキやスパッタリングなどによってメタリック加工されていても良い。
【0051】
金属箔膜シートとしては、任意の適切な金属の箔膜から形成されるシートを採用し得る。
【0052】
無機繊維としては、任意の適切な無機繊維を採用し得る。このような無機繊維としては、具体的には、例えば、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0053】
本発明の吸液性連続多孔体は、基材中に空隙が存在する場合、該空隙の一部または全部に吸液性連続多孔体と同じ材料が存在していても良い。
【0054】
基材は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0055】
≪≪B.吸液性連続多孔体の製造方法≫≫
本発明の吸液性連続多孔体は、任意の適切な方法で製造し得る。本発明の吸液性連続多孔体は、好ましくは、W/O型エマルションを賦形および重合することによって製造し得る。
【0056】
本発明の吸液性連続多孔体の製造方法としては、例えば、連続的に連続油相成分と水相成分を乳化機に供給して本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションを調製し、続いて、得られたW/O型エマルションを重合して含水重合体を製造し、続いて、得られた含水重合体を脱水する、「連続法」が挙げられる。本発明の吸液性連続多孔体の製造方法としては、また、例えば、連続油相成分に対して適当な量の水相成分を乳化機に仕込み、攪拌しながら連続的に水相成分を供給することで本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションを調製し、得られたW/O型エマルションを重合して含水重合体を製造し、続いて、得られた含水重合体を脱水する、「バッチ法」が挙げられる。
【0057】
W/O型エマルションを連続的に重合する連続重合法は生産効率が高く、重合時間の短縮効果と重合装置の短縮化とを最も有効に利用できるので好ましい方法である。
【0058】
本発明の吸液性連続多孔体は、より具体的には、好ましくは、
本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションを調製する工程(I)と、
得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)と、
賦形されたW/O型エマルションを重合する工程(III)と、
得られた含水重合体を脱水する工程(IV)と、
を含む製造方法によって製造することができる。ここで、得られたW/O型エマルションを賦形する工程(II)と賦形されたW/O型エマルションを重合する工程(III)とは少なくとも一部を同時に行っても良い。
【0059】
≪B−1.W/O型エマルションを調製する工程(I)≫
本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションは、連続油相成分と該連続油相成分と不混和性の水相成分を含むW/O型エマルションである。W/O型エマルションは、より具体的に説明すると、連続油相成分中に水相成分が分散したものである。
【0060】
本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションにおける、水相成分と連続油相成分との比率は、W/O型エマルションを形成し得る範囲で任意の適切な比率を採り得る。本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションにおける、水相成分と連続油相成分との比率は、該W/O型エマルションの重合によって得られる多孔体の構造的、機械的、および性能的特性を決定する上で重要な因子となり得る。具体的には、本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションにおける、水相成分と連続油相成分との比率は、該W/O型エマルションの重合によって得られる多孔体の密度、気泡サイズ、気泡構造、および多孔構造を形成する壁体の寸法などを決定する上で重要な因子となり得る。
【0061】
本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルション中の水相成分の比率は、下限値として、好ましくは30重量%であり、より好ましくは40重量%であり、さらに好ましくは50重量%であり、特に好ましくは55重量%であり、上限値として、好ましくは95重量%であり、より好ましくは90重量%であり、さらに好ましくは85重量%であり、特に好ましくは80重量%である。本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルション中の水相成分の比率が上記範囲内にあれば、本発明の効果を十分に発現し得る。
【0062】
本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、粘着付与樹脂;タルク;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸やその塩類、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、亜鉛華、ベントナイン、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉などの充填剤;顔料;染料;などが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。
【0063】
本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する方法としては、例えば、連続油相成分と水相成分を連続的に乳化機に供給することでW/O型エマルションを形成する「連続法」や、連続油相成分に対して適当な量の水相成分を乳化機に仕込み、攪拌しながら連続的に水相成分を供給することでW/O型エマルションを形成する「バッチ法」などが挙げられる。
【0064】
本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションを製造する際、エマルション状態を得るための剪断手段としては、例えば、ローターステーターミキサー、ホモジナイザー、ミクロ流動化装置などを用いた高剪断条件の適用が挙げられる。また、エマルション状態を得るための別の剪断手段としては、例えば、動翼ミキサーまたはピンミキサーを使用した振盪、電磁撹拌棒などを用いた低剪断条件の適用による連続および分散相の穏やかな混合が挙げられる。
【0065】
「連続法」によってW/O型エマルションを調製するための装置としては、例えば、静的ミキサー、ローターステーターミキサー、ピンミキサーなどが挙げられる。撹拌速度を上げることで、または、混合方法でW/O型エマルション中に水相成分をより微細に分散するようデザインされた装置を使用することで、より激しい撹拌を達成しても良い。
【0066】
「バッチ法」によってW/O型エマルションを調製するための装置としては、例えば、手動での混合や振盪、被動動翼ミキサー、3枚プロペラ混合羽根などが挙げられる。
【0067】
連続油相成分を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。連続油相成分を調製する方法としては、代表的には、例えば、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含む混合シロップを調製し、続いて、該混合シロップに、重合開始剤、架橋剤、その他の任意の適切な成分を配合し、連続油相成分を調製することが好ましい。
【0068】
親水性ポリウレタン系重合体を調製する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。親水性ポリウレタン系重合体を調製する方法としては、代表的には、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物とをウレタン反応触媒の存在下で反応させることにより得られる。
【0069】
<B−1−1.水相成分>
水相成分としては、実質的に連続油相成分と不混和性のあらゆる水性流体を採用し得る。取り扱いやすさや低コストの観点から、好ましくは、イオン交換水などの水である。
【0070】
水相成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤が含まれ得る。このような添加剤としては、例えば、重合開始剤、水溶性の塩などが挙げられる。水溶性の塩は、W/O型エマルションをより安定化させるために有効な添加剤となり得る。このような水溶性の塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。このような添加剤は、1種のみ含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。水相成分に含まれ得る添加剤は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。
【0071】
<B−1−2.連続油相成分>
連続油相成分は、好ましくは、親水性ポリウレタン系重合体とエチレン性不飽和モノマーを含む。連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採り得る。
【0072】
親水性ポリウレタン系重合体は、該親水性ポリウレタン系重合体を構成するポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール単位中のポリオキシエチレン比率、または、配合する水相成分量にもよるが、例えば、好ましくは、エチレン性不飽和モノマー70〜90重量部に対して親水性ポリウレタン系重合体が10〜30重量部の範囲であり、より好ましくは、エチレン性不飽和モノマー75〜90重量部に対して親水性ポリウレタン系重合体が10〜25重量部の範囲である。また、例えば、水相成分100重量部に対し、好ましくは、親水性ポリウレタン系重合体が1〜30重量部の範囲であり、より好ましくは、親水性ポリウレタン系重合体が1〜25重量部の範囲である。親水性ポリウレタン系重合体の含有割合が上記範囲内にあれば、本発明の効果を十分に発現し得る。
【0073】
(B−1−2−1.親水性ポリウレタン系重合体)
親水性ポリウレタン系重合体は、好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール由来のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位を含み、該ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中の5重量%〜25重量%がポリオキシエチレンである。
【0074】
上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合は、上記のように、好ましくは5重量%〜25重量%であり、下限値として、より好ましくは10重量%であり、上限値として、より好ましくは25重量%であり、さらに好ましくは20重量%である。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンは、連続油相成分中に水相成分を安定に分散させる効果を発現するものである。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合が5重量%未満の場合、連続油相成分中に水相成分を安定に分散させることが困難になるおそれがある。上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位中のポリオキシエチレンの含有割合が25重量%を超える場合、HIPE条件に近づくにつれてW/O型エマルションからO/W型(水中油型)エマルションに転相するおそれがある。
【0075】
従来の親水性ポリウレタン系重合体は、ジイソシアネート化合物と疎水性長鎖ジオール、ポリオキシエチレングリコールならびにその誘導体、低分子活性水素化合物(鎖伸長剤)を反応させることによって得られるが、このような方法で得られる親水性ポリウレタン系重合体中に含まれるポリオキシエチレン基の数は不均一であるため、このような親水性ポリウレタン系重合体を含むW/O型エマルションは乳化安定性が低下するおそれがある。一方、本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションの連続油相成分に含まれる親水性ポリウレタン系重合体は、上記のような特徴的な構造を有することにより、W/O型エマルションの連続油相成分に含ませた場合に、乳化剤等を積極的に添加せずとも、優れた乳化性および優れた静置保存安定性を発現することができる。
【0076】
親水性ポリウレタン系重合体は、好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる。この場合、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとジイソシアネート化合物との比率は、NCO/OH(当量比)で、下限値として、好ましくは1であり、より好ましくは1.2であり、さらに好ましくは1.4であり、特に好ましくは1.6であり、上限値として、好ましくは3であり、より好ましくは2.5であり、さらに好ましくは2である。NCO/OH(当量比)が1未満の場合は、親水性ポリウレタン系重合体を製造する際にゲル化物が生成しやすくなるおそれがある。NCO/OH(当量比)が3を超える場合は、残存ジイソシアネート化合物が多くなってしまい、本発明の吸液性連続多孔体を得るために用い得るW/O型エマルションが不安定になるおそれがある。
【0077】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、例えば、ADEKA株式会社製のポリエーテルポリオール(アデカ(登録商標)プルロニックL−31、L−61、L−71、L−101、L−121、L−42、L−62、L−72、L−122、25R−1、25R−2、17R−2)や、日本油脂株式会社製のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(プロノン(登録商標)052、102、202)などが挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0078】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体や三量体、ポリフェニルメタンポリイソシアネートなどが挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。ジイソシアネートの三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられる。ジイソシアネート化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0079】
ジイソシアネート化合物は、ポリオールとのウレタン反応性などの観点から、その種類や組み合わせ等を適宜選択すれば良い。ポリオールとの速やかなウレタン反応性や水との反応の抑制などの観点からは、脂環族ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0080】
親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は、下限値として、好ましくは5000であり、より好ましくは7000であり、さらに好ましくは8000であり、特に好ましくは10000であり、上限値として、好ましくは50000であり、より好ましくは40000であり、さらに好ましくは30000であり、特に好ましくは20000である。
【0081】
親水性ポリウレタン系重合体は、末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有していても良い。親水性ポリウレタン系重合体の末端にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有することにより、本発明の効果がより一層発現され得る。
【0082】
(B−1−2−2.エチレン性不飽和モノマー)
エチレン性不飽和モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであれば、任意の適切なモノマーを採用し得る。エチレン性不飽和モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0083】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルを含む。エチレン性不飽和モノマー中の(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、下限値として、好ましくは80重量%であり、より好ましくは85重量%であり、上限値として、好ましくは100重量%であり、より好ましくは98重量%である。(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0084】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、炭素数が1〜20のアルキル基(シクロアルキル基、アルキル(シクロアルキル)基、(シクロアルキル)アルキル基も含む概念)を有するアルキル(メタ)アクリレートである。上記アルキル基の炭素数は、好ましくは4〜18である。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルの意味であり、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートの意味である。
【0085】
炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。炭素数が1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0086】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な極性モノマーをさらに含む。エチレン性不飽和モノマー中の極性モノマーの含有割合は、下限値として、好ましくは0重量%であり、より好ましくは2重量%であり、上限値として、好ましくは20重量%であり、より好ましくは15重量%である。極性モノマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0087】
極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;などが挙げられる。
【0088】
(B−1−2−3.重合開始剤)
連続油相成分には、好ましくは、重合開始剤が含まれる。
【0089】
重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、レドックス重合開始剤などが挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。
【0090】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物、ペルオキシ炭酸、ペルオキシカルボン酸、過硫酸カリウム、t−ブチルペルオキシイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0091】
光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−2959)、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュア−1173)、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−651)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−184)などのアセトフェノン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤;その他のハロゲン化ケトン;アシルフォスフィンオキサイド(例として、チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア−819);などを挙げることができる。
【0092】
重合開始剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0093】
重合開始剤の含有割合は、連続油相成分全体に対し、下限値として、好ましくは0.05重量%であり、より好ましくは0.1重量%であり、上限値として、好ましくは5.0重量%であり、より好ましくは1.0重量%である。重合開始剤の含有割合が連続油相成分全体に対して0.05重量%未満の場合には、未反応のモノマー成分が多くなり、得られる吸液性連続多孔体中の残存モノマー量が増加するおそれがある。重合開始剤の含有割合が連続油相成分全体に対して5.0重量%を超える場合には、得られる吸液性連続多孔体の機械的物性が低下するおそれがある。
【0094】
なお、光重合開始剤によるラジカル発生量は、照射する光の種類や強度や照射時間、モノマーおよび溶剤混合物中の溶存酸素量などによっても変化する。そして、溶存酸素が多い場合には、光重合開始剤によるラジカル発生量が抑制され、重合が十分に進行せず、未反応物が多くなることがある。したがって、光照射の前に、反応系中に窒素等の不活性ガスを吹き込み、酸素を不活性ガスで置換しておくことが好ましい。
【0095】
(B−1−2−4.架橋剤)
連続油相成分には、好ましくは、架橋剤が含まれる。
【0096】
架橋剤は、典型的には、ポリマー鎖同士を連結して、より三次元的な分子構造を構築するために用いられる。架橋剤の種類と含有量の選択は、得られる吸液性連続多孔体に所望される構造的特性、機械的特性、および流体処理特性に左右される。架橋剤の具体的な種類および含有量の選択は、吸液性連続多孔体の構造的特性、機械的特性、および流体処理特性の望ましい組み合わせを実現する上で重要となる。
【0097】
本発明の吸液性連続多孔体を製造する上では、好ましくは、架橋剤として、重量平均分子量の異なる少なくとも2種類の架橋剤を用いる。
【0098】
本発明の吸液性連続多孔体を製造する上では、より好ましくは、架橋剤として、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」と「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」とを併用する。ここで、多官能(メタ)アクリレートとは、具体的には、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリレートであり、多官能(メタ)アクリルアミドとは、具体的には、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリルアミドである。
【0099】
多官能(メタ)アクリレートとしては、ジアクリレート類、トリアクリレート類、テトラアクリレート類、ジメタクリレート類、トリメタクリレート類、テトラメタクリレート類などが挙げられる。
【0100】
多官能(メタ)アクリルアミドとしては、ジアクリルアミド類、トリアクリルアミド類、テトラアクリルアミド類、ジメタクリルアミド類、トリメタクリルアミド類、テトラメタクリルアミド類などが挙げられる。
【0101】
多官能(メタ)アクリレートは、例えば、ジオール類、トリオール類、テトラオール類、ビスフェノールA類などから誘導できる。具体的には、例えば、1,10−デカンジオール、1,8−オクタンジオール、1,6ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ブタン−2−エンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性物などから誘導できる。
【0102】
多官能(メタ)アクリルアミドは、例えば、対応するジアミン類、トリアミン類、テトラアミン類などから誘導できる。
【0103】
重合反応性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、コポリエステル(メタ)アクリレート、オリゴマージ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましくは、疎水性ウレタン(メタ)アクリレートである。
【0104】
重合反応性オリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは1500以上、より好ましくは2000以上である。重合反応性オリゴマーの重量平均分子量の上限は特に限定されないが、例えば、好ましくは10000以下である。
【0105】
架橋剤として、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」と「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」とを併用する場合、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」の使用量は、連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して、下限値として、好ましくは40重量%であり、上限値として、好ましくは100重量%であり、より好ましくは80重量%である。「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して40重量%未満の場合、得られる吸液性連続多孔体の凝集力が低下してしまうおそれがあり、じん性と柔軟性の両立が困難になるおそれがある。「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して100重量%を超える場合、W/O型エマルションは乳化安定性が低下してしまい、所望の吸液性連続多孔体が得られないおそれがある。
【0106】
架橋剤として、「重量平均分子量が800以上である多官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド、および重合反応性オリゴマーから選ばれる1種以上」と「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」とを併用する場合、「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」の使用量は、連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して、下限値として、好ましくは1重量%であり、より好ましくは5重量%であり、上限値として、好ましくは30重量%であり、より好ましくは20重量%である。「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して1重量%未満の場合、耐熱性が低下してしまい、含水重合体を脱水する工程(IV)において収縮によって気泡構造が潰れてしまうおそれがある。「重量平均分子量が500以下である多官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上」の使用量が連続油相成分中の親水性ポリウレタン系重合体およびエチレン性不飽和モノマーの合計量に対して30重量%を超える場合、得られる吸液性連続多孔体のじん性が低下してしまい、脆性を示してしまうおそれがある。
【0107】
架橋剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0108】
(B−1−2−5.連続油相成分中のその他の成分)
連続油相成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分が含まれ得る。このようなその他の成分としては、代表的には、好ましくは、触媒、酸化防止剤、有機溶媒などが挙げられる。このようなその他の成分は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0109】
触媒としては、例えば、ウレタン反応触媒が挙げられる。ウレタン反応触媒としては、任意の適切な触媒を採用し得る。具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウリレートが挙げられる。
【0110】
触媒の含有割合は、目的とする触媒反応に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0111】
触媒は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0112】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0113】
酸化防止剤の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0114】
酸化防止剤は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0115】
有機溶媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な有機溶媒を採用し得る。
【0116】
有機溶媒の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0117】
有機溶媒は、1種のみを含んでいても良く、2種以上を含んでいてもよい。
【0118】
≪B−2.W/O型エマルションを賦形する工程(II)≫
工程(II)において、W/O型エマルションを賦形する方法としては、任意の適切な賦形方法を採用し得る。例えば、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形する方法が挙げられる。また、熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工して賦形する方法が挙げられる。
【0119】
工程(II)において、W/O型エマルションを賦形する方法として、熱可塑性樹脂フィルムの一面に塗工して賦形する方法を採用する場合、塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーターなどを用いる方法が挙げられる。
【0120】
≪B−3.賦形されたW/O型エマルションを重合する工程(III)≫
工程(III)において、賦形されたW/O型エマルションを重合する方法としては、任意の適切な重合方法を採用し得る。例えば、加熱装置によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ加熱によって重合する方法や、活性エネルギー線の照射によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造の、走行するベルト上にW/O型エマルションを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状に賦形しつつ活性エネルギー線の照射によって重合する方法が挙げられる。
【0121】
加熱によって重合する場合、重合温度(加熱温度)は、下限値として、好ましくは23℃であり、より好ましくは50℃であり、さらに好ましくは70℃であり、特に好ましくは80℃であり、最も好ましくは90℃であり、上限値としては、好ましくは150℃であり、より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは110℃である。重合温度が23℃未満の場合は、重合に長時間を要し、工業的な生産性が低下するおそれがある。重合温度が150℃を越える場合は、得られる吸液性連続多孔体の孔径が不均一となるおそれや、吸液性連続多孔体の強度が低下するおそれがある。なお、重合温度は、一定である必要はなく、例えば、重合中に2段階や多段階で変動させてもよい。
【0122】
活性エネルギー線の照射によって重合する場合、活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線などが挙げられる。活性エネルギー線としては、好ましくは、紫外線、可視光線であり、より好ましくは、波長が200nm〜800nmの可視〜紫外の光である。W/O型エマルションは光を散乱させる傾向が強いため、波長が200nm〜800nmの可視〜紫外の光を用いればW/O型エマルションに光を貫通させることができる。また、200nm〜800nmの波長で活性化できる光重合開始剤は入手しやすく、光源が入手しやすい。
【0123】
活性エネルギー線の波長は、下限値として、好ましくは200nmであり、より好ましくは300nmであり、上限値として、好ましくは800nmであり、より好ましくは450nmである。
【0124】
活性エネルギー線の照射に用いられる代表的な装置としては、例えば、紫外線照射を行うことができる紫外線ランプとして、波長300〜400nm領域にスペクトル分布を持つ装置が挙げられ、その例としては、ケミカルランプ、ブラックライト(東芝ライテック(株)製の商品名)、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0125】
活性エネルギー線の照射を行う際の照度は、照射装置から被照射物までの距離や電圧の調節によって、任意の適切な照度に設定され得る。例えば、特開2003-13015号公報に開示された方法によって、各工程における紫外線照射をそれぞれ複数段階に分割して行い、それにより粘着性能を精密に調節することができる。
【0126】
紫外線照射は、重合禁止作用のある酸素が及ぼす悪影響を防ぐために、例えば、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後に不活性ガス雰囲気下で行うことや、熱可塑性樹脂フィルム等の基材の一面にW/O型エマルションを塗工して賦形した後にシリコーン等の剥離剤をコートしたポリエチレンテレフタレート等の紫外線は通過するが酸素を遮断するフィルムを被覆させて行うことが好ましい。
【0127】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、一面にW/O型エマルションを塗工して賦形できるものであれば、任意の適切な熱可塑性樹脂フィルムを採用し得る。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやシートが挙げられる。
【0128】
不活性ガス雰囲気とは、光照射ゾーン中の酸素を不活性ガスにより置換した雰囲気をいう。したがって、不活性ガス雰囲気においては、できるだけ酸素が存在しないことが必要であり、酸素濃度で5000ppm以下であることが好ましい。
【0129】
≪B−4.得られた含水重合体を脱水する工程(IV)≫
工程(IV)では、得られた含水重合体を脱水する。工程(III)で得られた含水重合体中には水相成分が分散状態で存在する。この水相成分を脱水により除去して乾燥することにより、本発明の吸液性連続多孔体に含まれる多孔体が得られる。得られた多孔体は、そのまま本発明の吸液性連続多孔体となり得る。また、後述するように、基材と組み合わせることによって、本発明の吸液性連続多孔体となり得る。
【0130】
工程(IV)における脱水方法としては、任意の適切な乾燥方法を採用し得る。このような乾燥方法としては、例えば、真空乾燥、凍結乾燥、圧搾乾燥、電子レンジ乾燥、熱オーブン内での乾燥、赤外線による乾燥、またはこれらの技術の組み合わせ、などが挙げられる。
【0131】
≪B−5.本発明の吸液性連続多孔体が基材を含有する場合≫
本発明の吸液性連続多孔体が基材を含有する場合、本発明の吸液性連続多孔体の製造方法の好ましい実施形態の一つとして、W/O型エマルションを基材の一面に塗工し、不活性ガス雰囲気下あるいはシリコーン等の剥離剤をコートした紫外線透過性のフィルムにより被覆して酸素が遮断された状態において、加熱または活性エネルギー線の照射を行うことによってW/O型エマルションを重合させて含水重合体とし、得られた含水重合体を脱水することで、基材/多孔層の積層構造を有する吸液性連続多孔体とする形態が挙げられる。
【0132】
本発明の吸液性連続多孔体の製造方法の好ましい別の実施形態の一つとして、W/O型エマルションをシリコーン等の剥離剤をコートした紫外線透過性のフィルムの一面に塗布したものを2枚準備し、該2枚のうちの1枚のW/O型エマルション塗布シートの塗布面に基材を積層し、積層した該基材の他方の面に、もう1枚のW/O型エマルション塗布シートの塗布面を合わせるように積層した状態において、加熱または活性エネルギー線の照射を行うことによってW/O型エマルションを重合させて含水重合体とし、得られた含水重合体を脱水することで、多孔層/基材/多孔層の積層構造を有する吸液性連続多孔体とする形態が挙げられる。
【0133】
W/O型エマルションを基材またはシリコーン等の剥離剤をコートした紫外線透過性のフィルムの一面に塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーターなどが挙げられる。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、常温とは23℃を意味する。
【0135】
(分子量測定)
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー(株)製「HLC−8020」
カラム:東ソー(株)製「TSKgel GMHHR−H(20)」
溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
【0136】
(平均孔径の測定)
得られた多孔体をミクロトームカッターで厚み方向に切断したものを測定用試料とした。測定用試料の切断面を走査型電子顕微鏡(日立製、S−3400N)で800〜5000倍にて撮影した。撮影した画像を用いて、任意範囲の球状気泡の孔径や、任意範囲の球状気泡間を貫通する貫通孔の孔径や、任意範囲の表面開口部の孔径を測定し、その測定値から球状気泡の平均孔径や貫通孔の平均孔径や表面開口部の平均孔径を算出した。
【0137】
(吸液率の測定)
得られた多孔体を25mm×25mmに切断し、試験片とした。予め試験片の重量(初期重量:W0(g))を計測した。試験片が十分に浸る程度の量の液体に、30分、1時間、または24時間浸漬した。浸漬後、液体から試験片を取り出し、ウエス上で常温下、1分間放置した。1分間の放置後、再度、試験片の重量(吸液した多孔体の重量:W1(g))を計測した。吸液率は下記式に基づいて算出した。
吸液率(重量%)=[(W1−W0)/W0]×100
【0138】
(吸液(浸漬試験)後の寸法変化率の測定)
吸液(浸漬試験)後、液体が吸収された試験片の端部長さを測定し、吸液(浸漬試験)後の寸法変化率を下記式に基づいて算出した。なお、吸液(浸漬試験)前の試験片の端部長さをL1(mm)、吸液(浸漬試験)後の試験片の端部長さをL2(mm)とした。
吸液(浸漬試験)後の寸法変化率(%)=[(L2−L1)/L1]×100
【0139】
(再浸漬試験)
得られた多孔体を25mm×25mmに切断し、試験片とした。予め試験片の重量(初期重量:W0(g))を計測した。試験片が十分に浸る程度の量の液体に24時間浸漬した。浸漬後、液体から試験片を取り出し、ウエス上で常温下、1分間放置した。1分間の放置後、再度、試験片の重量(吸液した多孔体の重量:W1(g))を計測した。ここで、吸液率を前述の式に基づいて算出した(1次浸漬試験)。
続いて、吸液率の測定が終了した試験片について、水に1時間浸漬した後、130℃のオーブン中に2時間保存して、多孔体に吸収された液体を加熱乾燥により除去し、さらに125℃のオーブン中に22時間保存処理した後、再度、上記吸液率の測定方法に従って、吸液率を測定した(再浸漬試験)。
【0140】
(加熱寸法変化率の測定)
多孔体の加熱寸法変化を、JIS−K−6767の高温時の寸法安定性評価に準拠して測定した。すなわち、得られた多孔体を100mm×100mmの大きさに切りだして試験片とし、125℃のオーブンに22時間保存した後に、JIS−K−6767の高温時の寸法安定性評価に準拠して、該加熱保存処理の前後における寸法の変化率を求めた。
【0141】
(密度の測定)
得られた多孔体を100mm×100mmの大きさに5枚切りだして試験片とし、重量を体積で除して見掛け密度を求めた。得られた見掛け密度の平均値を多孔体の密度とした。
【0142】
(気泡率の測定)
エマルションを製造する際の油相成分のみを重合し、得られた重合体シートを100mm×100mmの大きさに5枚切りだして試験片とし、重量を体積で除して見掛け密度を求めた。得られた見掛け密度の平均値を、多孔体を構成する樹脂成分の密度とした。多孔体の気泡率は、多孔体の密度を上記樹脂成分の密度で除した相対密度を用いて、下記式のように算出した。
気泡率=(1−相対密度)×100
【0143】
〔製造例1〕:混合シロップ1の調製
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、エチレン性不飽和モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル(東亜合成(株)製、以下「2EHA」と略す)からなるモノマー溶液173.2重量部と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしてアデカ(登録商標)プルロニックL−62(分子量2500、ADEKA(株)製、ポリエーテルポリオール)100重量部と、ウレタン反応触媒としてジブチル錫ジラウレート(キシダ化学(株)製、以下「DBTL」と略す)0.014重量部とを投入し、攪拌しながら、水素化キシリレンジイソシアネート(武田薬品(株)製、タケネート600、以下「HXDI」と略す)12.4重量部を滴下し、65℃で4時間反応させた。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.6であった。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート(キシダ化学(株)製、以下「HEA」と略す)5.6重量部を滴下し、65℃で2時間反応させ、両末端にアクリロイル基を有する親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップを得た。得られた親水性ポリウレタン系重合体の重量平均分子量は1.5万であった。得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ100重量部に対して2EHAを25重量部、n−ブチルアクリレート(東亜合成社製、以下「BA」と略す)56重量部、イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製、以下「IBXA」と略す)17.9重量部、極性モノマーとしてアクリル酸(東亜合成社製、以下、「AA」と略す)10.7重量部を加え、親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1とした。
【0144】
〔実施例1〕:試験片1の製造
製造例1で得られた親水性ポリウレタン系重合体/エチレン性不飽和モノマー混合シロップ1の100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名「NKエステルA−HD−N」)(分子量226)11.9重量部、反応性オリゴマーとして、ポリテトラメチレングリコール(以下、「PTMG」と略す)とイソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略す)から合成されるポリウレタンの両末端がHEAで処理された、両末端にエチレン性不飽和基を有するウレタンアクリレート(以下、「UA」と略す)(分子量3720)47.7重量部、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名「ルシリンTPO」)0.41重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン社製、商品名「イルガノックス1010」)0.69重量部を均一混合し、連続油相成分(以下、「油相」と称する)とした。一方、上記油相100重量部に対して水相成分(以下、「水相」と称する)としてイオン交換水300重量部を常温下、上記油相を仕込んだ乳化機である攪拌混合機内に連続的に滴下供給し、安定なW/O型エマルションを調製した。なお、水相と油相の重量比は75/25であった。
得られたW/O型エマルションを常温で1時間静置保存した後、光照射後の厚さが1mmとなるように離型処理された基材上に塗布し連続的に成形した。さらにその上に厚さ38μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ1mmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて20分間に亘って加熱することによって、厚さ約1mmの吸液性連続多孔体(1)を得た。これを試験片1とした。
得られた吸液性連続多孔体(1)を斜めから撮影した表面/断面SEM写真の写真図を図3に示した。
【0145】
〔実施例2〕:試験片2の製造
実施例1と同様にして、安定なW/O型エマルションを調製した。
調製から室温下で30分間静置保存したW/O型エマルションを、離型処理された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」と称する)上に、光照射後の多孔層の厚さが150μmとなるように塗布し、連続的にシート状に成形した。さらにその上に、ポリエステル長繊維をタテヨコに整列させて積層させた厚さ70μmのポリエステル繊維積層布(JX日鉱日石ANCI社製、商品名「ミライフ(登録商標)TY0505FE」)を積層した。さらに、別途、調製から室温下で30分間静置保存したW/O型エマルションを、離型処理された厚さ38μmのPETフィルム上に、光照射後の多孔層の厚さが150μmとなるように塗布したものを用意し、塗布面を上記ポリエステル繊維積層布に被せた。このシートにブラックライト(15W/cm)を用いて光照度5mW/cm(ピーク感度最大波350nmのトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を照射し、厚さ300μmの高含水架橋重合体を得た。次に上面フィルムを剥離し、上記高含水架橋重合体を130℃にて20分間に亘って加熱することによって、厚さ約300μmの吸液性連続多孔体(2)を得た。これを試験片2とした。
【0146】
〔実施例3〕:試験片3の製造
実施例1において、水相としてイオン交換水186重量部を常温下、連続的に滴下供給した以外は、実施例1と同様の操作を行い、安定なW/O型エマルションを調製した。なお、水相と油相の重量比は65/35であった。
次に、得られたW/O型エマルションについて、実施例2と同様の操作を行い、厚さ約300μmの吸液性連続多孔体(3)を得た。これを試験片3とした。
【0147】
〔実施例4〕:試験片4の製造
実施例1において、水相としてイオン交換水566.7重量部を常温下、連続的に滴下供給した以外は、実施例1と同様の操作を行い、安定なW/O型エマルションを調製した。なお、水相と油相の重量比は85/15であった。
次に、得られたW/O型エマルションについて、実施例2と同様の操作を行い、厚さ約400μmの吸液性連続多孔体(4)を得た。これを試験片4とした。
【0148】
〔実施例5〕
試験片1について、イオン交換水に30分間浸漬し、吸液率(浸漬時間=30分)の測定(1次浸漬試験)、吸液(1次浸漬試験)後の寸法変化率の測定、吸液(1次浸漬試験)後の外観の観察を行った。
続いて、1次浸漬試験後のイオン交換水が吸液された試験片1について、イオン交換水に引き続き30分間浸漬し、吸液率(浸漬時間=30分)の測定(2次浸漬試験)、吸液(2次浸漬試験)後の寸法変化率の測定、吸液(2次浸漬試験)後の外観の観察を行った。
結果を表1に示した。
【0149】
〔実施例6〕
試験片1について、トルエンに30分間浸漬し、吸液率(浸漬時間=30分)の測定(1次浸漬試験)、吸液(1次浸漬試験)後の寸法変化率の測定、吸液(1次浸漬試験)後の外観の観察を行った。
続いて、1次浸漬試験後のトルエンが吸液された試験片1について、トルエンに引き続き30分間浸漬し、吸液率(浸漬時間=30分)の測定(2次浸漬試験)、吸液(2次浸漬試験)後の寸法変化率の測定、吸液(2次浸漬試験)後の外観の観察を行った。
結果を表1に示した。
【0150】
〔実施例7〕
試験片1について、イオン交換水に30分間浸漬し、吸液率(浸漬時間=30分)の測定(1次浸漬試験)、吸液(1次浸漬試験)後の寸法変化率の測定、吸液(1次浸漬試験)後の外観の観察を行った。
続いて、1次浸漬試験後のイオン交換水が吸液された試験片1について、トルエンに引き続き30分間浸漬し、吸液率(浸漬時間=30分)の測定(2次浸漬試験)、吸液(2次浸漬試験)後の寸法変化率の測定、吸液(2次浸漬試験)後の外観の観察を行った。
1次浸漬試験後のイオン交換水が吸液された試験片1について、トルエンに引き続き30分間浸漬しても、イオン交換水が分離してくる様子は観察されなかった。
結果を表1に示した。
【0151】
【表1】

【0152】
〔実施例8〕
試験片2を用い、エタノール、塩酸(10%水溶液)、塩酸(3%水溶液)、イオン交換水のそれぞれについて、再浸漬試験を行った。また、1次浸漬試験後の寸法変化率の測定も行った。
結果を表2に示した。
【0153】
〔実施例9〕
試験片3を用い、エタノール、塩酸(10%水溶液)、塩酸(3%水溶液)、イオン交換水のそれぞれについて、再浸漬試験を行った。また、1次浸漬試験後の寸法変化率の測定も行った。
結果を表2に示した。
【0154】
〔実施例10〕
試験片4を用い、エタノール、塩酸(10%水溶液)、塩酸(3%水溶液)、イオン交換水のそれぞれについて、再浸漬試験を行った。また、1次浸漬試験後の寸法変化率の測定も行った。
結果を表2に示した。
【0155】
〔比較例1〕
市販のウレタン発泡体(株式会社ロジャースイノアック製、「PORON(登録商標)」)を用い、エタノール、塩酸(10%水溶液)、塩酸(3%水溶液)、イオン交換水のそれぞれについて、再浸漬試験を行った。また、1次浸漬試験後の寸法変化率の測定も行った。
結果を表2に示した。
【0156】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の吸液性連続多孔体は、廃液処理用吸液材など、各種吸液用部材に好ましく利用できる。
【符号の説明】
【0158】
100 吸液性連続多孔体
10 多孔体
10a 多孔体
10b 多孔体
20 基材
30 剥離フィルム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状気泡を有する多孔体を含み、
油分および水分の吸液率がいずれも100重量%以上である、
吸液性連続多孔体。
【請求項2】
吸液率A重量%で液体Lを吸液させた後に加熱乾燥によって吸液された液体Lを除放し、その後、再び液体Lを吸液させたときの吸液率が、0.9A重量%以上である、請求項1に記載の吸液性連続多孔体。
【請求項3】
油分の吸液後の寸法変化率が50%以下である、請求項1または2に記載の吸液性連続多孔体。
【請求項4】
水分の吸液後の寸法変化率が10%以下である、請求項1から3までのいずれかに記載の吸液性連続多孔体。
【請求項5】
125℃で22時間保存したときの寸法変化率が±5%未満である、請求項1から4までのいずれかに記載の吸液性連続多孔体。
【請求項6】
前記多孔体が親水性ポリウレタン系重合体を含む、請求項1から5までのいずれかに記載の吸液性連続多孔体。
【請求項7】
前記球状気泡の平均孔径が20μm未満である、請求項1から6までのいずれかに記載の吸液性連続多孔体。
【請求項8】
前記多孔体が、隣接する球状気泡間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する、請求項1から7までのいずれかに記載の吸液性連続多孔体。
【請求項9】
前記貫通孔の平均孔径が5μm以下である、請求項8に記載の吸液性連続多孔体。
【請求項10】
前記多孔体の密度が0.15〜0.5g/cmである、請求項1から9までのいずれかに記載の吸液性連続多孔体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−82258(P2012−82258A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227424(P2010−227424)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】